JP2019131908A - 積層不織布シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明の積層不織布シートとは、乾式不織布と湿式不織布を積層させたものである。乾式不織布は、抄紙機を用いずに製造される不織布であり、湿式不織布は、抄紙機を用いて製造される不織布である。この製造方法の違いにより、乾式不織布と湿式不織布は、それぞれ異なった特徴をもつ。以下に、これらの不織布について具体的に説明する。
乾式不織布は、繊維ウェブを製造する工程を空気中で行って製造される不織布をさし、ウェブ形成後の繊維間の接着工程に水溶液を用いて製造される不織布及び水流で絡合接着させて製造される不織布も、この乾式不織布に含まれる。乾式不織布の製造方法としては、例えば、スパンボンド法・スパンレース法・ニードルパンチ法・スプリットファイバー法・チェーンステッチング法・スプレイドファイバー法等がある。繊維ウェブを構成する原料繊維としては、木材パルプ繊維、レーヨン・ポリノジック・キュプラ等の再生繊維、アセテート・トリアセテート・プロミックス等の半合成繊維、ナイロン・アクリル・ポリエステル・ビニロン・ポリプロピレン・ポリエチンレン・ポリウレタン等の合成繊維、ガラスファイバー・ロックウール・金属繊維等の無機繊維の1種類以上を使用することができる。
湿式不織布は、主原料に合成繊維を用いて、製紙過程と同様に水に分散させた原料を抄紙機により抄紙することにより製造された不織布をさす。主原料として使用することのできる合成繊維としては、延伸ポリエステル系繊維、未延伸ポリエステル系繊維、ポリエステル系芯鞘型複合繊維、ポロプロピレン系芯鞘型複合繊維等があり、その他の繊維として、レーヨン・ポリノジック・キュプラ等の再生繊維、アセテート・トリアセテート・プロミックス等の半合成繊維を含有してもよい。湿式不織布は、乾式不織布との接着性の観点から熱融着性を有するバインダー繊維(未延伸ポリエステル系繊維、ポリエステル系芯鞘型複合繊維、ポリプロピレン芯鞘型複合繊維の1種類以上)を含む。また、延伸ポリエステル系繊維及び未延伸ポリエステル系繊維を主成分とすることで、引裂強度と積層時の接着強度を両立することができる。
延伸ポリエステル系繊維とは、紡糸した未延伸糸を延伸機にて数倍に倍速して、延伸させ巻き取ったフィラメントをいう。延伸ポリエステル系繊維を構成するポリエステル樹脂としては、基本的に多価カルボン酸とポリアルコールの重縮合体である。ポリエステル樹脂としては、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートなどが挙げられる。また、ポリ乳酸としては、L−乳酸、D−乳酸のいずれかの乳酸単位の縮合体、または、それらの縮合体の混合物が挙げられる。これらのなかでもポリエチレンテレフタレートが好ましい。延伸ポリエステル系繊維を主体繊維として含有することにより、厚さの変動(標準偏差)を低減でき、積層不織布シートにした際に、カレンダー工程での外観不良を抑制することができる。
未延伸ポリエステル系繊維とは、紡糸した未延伸糸のフィラメントをいう。未延伸ポリエステル系繊維を構成するポリエステル樹脂としては、延伸ポリエステル系繊維で挙げたものを使用することができる。湿式不織布が未延伸ポリエステル系繊維を含有することにより、積層不織布シートにした際に、積層間の接着強度の向上及びカレンダー工程での外観不良を抑制することができる。
ポリエステル系芯鞘型複合繊維とは、繊維の構造が芯鞘構造を有しており、芯部の材質及び鞘部の材質がポリエステル系樹脂である繊維をいう。ポリエステル系芯鞘型複合繊維を構成するポリエステル樹脂は、延伸ポリエステル系繊維を構成するポリエステル樹脂と同様のものを使用することができる。ポリエステル系芯鞘型複合繊維としては、例えば、芯部の材質がポリエチレンテレフタレートであり、鞘部の材質がポリエステル樹脂を変性させることで融点を低下させた低融点ポリエチレンテレフタレートである芯鞘構造の繊維が挙げられる。低融点ポリエチレンテレフタレートは、ポリエステル樹脂を変性させることで融点を低下させた変性ポリエチレンテレフタレートであり、例えば共重合ポリエチレンテレフタレートである
ポリプロピレン系芯鞘型複合繊維とは、繊維の構造が芯鞘構造を有しており、芯部の材質及び鞘部の材質がポリプロピレン系樹脂である繊維をいう。ポリプロピレン系芯鞘型複合繊維としては、例えば芯部の材質がポリプロピレン系樹脂であり、鞘部の材質がポリプロピレン系樹脂を変性させることで融点を低下させた低融点ポリプロピレン系樹脂である芯鞘構造の繊維が挙げられる。
湿式不織布においては、例えば顔料、界面活性剤、ワックス、サイズ剤、填料、防錆剤、導電剤、消泡剤、分散剤、粘性調整剤、凝集剤、凝結剤、紙力向上成分、歩留まり向上剤、紙粉脱落防止剤、嵩高剤、増粘剤等の内添剤を内添させることができる。
乾式不織布と湿式不織布の積層は、例えば、ハードニップカレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー等のカレンダー設備を用いて行うことができ、好ましくは最終の積層工程に金属ロールと弾性ロールの組み合わせたカレンダー設備で行い、(カレンダー工程)更に好ましくは、金属ロールと弾性ロールの1組の組み合わせからなるカレンダー設備(カレンダー工程)で行うことで、積層工程の効率化及び引裂強度の低下率を抑制することが可能である。
積層不織布シートの坪量は、「紙及び板紙−坪量の測定方法」JIS P8124(2011)に準拠して測定した数値である。本発明の積層不織布シートの坪量は、強度特性及び厚さの均一性を満たす観点から、20.0〜120.0g/m2であり、30.0〜70.0g/m2であることが好ましい。坪量が、20.0g/m2未満の場合、工業用工程紙や包装材に求められる引裂強度が得られなくなる場合がある。一方、坪量が120.0g/m2を越える場合、積層不織布シートの厚みが大きくなり、本発明で規定するカレンダー条件では不織布層間の熱融着が出来なくなる。尚、積層不織布シートの坪量は、積層させる湿式不織布と乾式不織布の坪量の組み合わせで調整することが可能である。
積層不織布シートの厚さは、「紙及び板紙−厚さ、密度及び比容積の試験方法」JIS−P8118(2014)に準拠して、測定圧は50kPaにて測定した数値である。
積層不織布シートの厚さの標準偏差は、厚さを抄紙機の巾方向(CD)に20点以上測定し、その測定値から求めた値である。
引裂強度は、「紙及び板紙−引裂強さ試験方法」 JIS P8116(2000)に準拠して測定した値であり、縦方向の引裂強度は、積層不織布シートに予め入れた切れ目の方向を湿式不織布の縦方向(MD方向)として測定した値であり、横方向の引裂強度は、積層不織布シートに予め入れた切れ目の方向を湿式不織布の横方向(CD方向)として測定した値である。
表1に記載の乾式不織布(市販品:スパンポンド不織布)及び湿式不織布を金属ロールと弾性ロール(ショア硬さD90)の組み合わせを用いた1組のカレンダー工程にて積層し、実施例1〜14に係る積層不織布シートを得た。カレンダー工程においては、乾式不織布を金属ロール側、湿式不織布を弾性ロール側とし、金属ロールを表2に記載の温度に加熱すると共に、表2に記載の線圧で加圧した。
表1に記載の湿式不織布2枚を実施例1〜14と同じ金属ロールと弾性ロールの組み合わせを用い、表2に記載の加工条件でカレンダー工程により積層し、比較例1に係る積層不織布シートを得た。
表1に記載の乾式不織布2枚を実施例1〜14と同じ金属ロールと弾性ロールの組み合わせを用い、表2に記載の加工条件でカレンダー工程により積層しようとしたが、貼り合わされず、積層不織布シートを得ることができなかった。
表1に記載の乾式不織布及び湿式不織布を実施例1〜14と同じ金属ロールと弾性ロールの組み合わせを用い、表2に記載の加工条件でカレンダー工程により積層しようとしたが、乾式不織布の坪量が大きすぎるために表1のカレンダー加工条件では貼り合わされず、積層不織布シートを得ることができなかった。
表1に記載の乾式不織布及び湿式不織布を実施例1〜14と同じ金属ロールと弾性ロールの組み合わせを用い、表2に記載の加工条件でカレンダー工程により積層しようとしたが、積層後のシートが金属ロールに貼り付いて剥がれず、積層不織布シートを得ることができなかった。
(1)坪量は、JIS P8124(2011)に準拠して測定した。
(2)厚さは、JIS−P8118(2014)に準拠し、測定圧50kPaにて測定した。
(3)厚さの標準偏差は、積層不織布シートの厚さを抄紙機の巾方向(CD)に20点測定し、その測定値から算出した。
(4)引裂強度は、JIS P8116(2000)に準拠して測定した。縦方向の引裂強度は、積層不織布シートに予め入れた切れ目の方向を湿式不織布の縦方向(MD方向)として測定し、横方向の引裂強度は、積層不織布シートに予め入れた切れ目の方向を湿式不織布の横方向(CD方向)として測定した。
(5)外観は、得られた積層不織布シートを目視で観察し、以下の3段階で評価した。
○:積層不織布シートにシワや収縮がない。
△:積層不織布シートにシワまたは収縮が僅かにあるが、実用上問題がない。
×:積層不織布シートにシワまたは収縮があり、実用に適さない。
(6)貼合性は、得られた不織布シートを構成する乾式不織布及び湿式不織布の剥離を試み、手で剥離できたか否かを以下の3段階で官能評価した。
○:乾式不織布及び湿式不織布を剥離できない。
△:強い力を加えれば乾式不織布及び湿式不織布を剥離できるが、実用上問題がない。
×:乾式不織布及び湿式不織布が貼合しない、または、乾式不織布及び湿式不織布を手で容易に剥離でき、実用に適さない。
Claims (6)
- 乾式不織布と湿式不織布が熱融着により積層された積層不織布シートの製造方法であって、
前記湿式不織布が、ポリエステル系未延伸繊維、ポリエステル系芯鞘型複合繊維及びポリプロピレン系芯鞘型複合繊維のうち1種以上の繊維を含み、
前記積層不織布シートの坪量が20.0〜120.0g/m2あり、
前記乾式不織布と前記湿式不織布が1組以上の金属ロールと弾性ロールの組み合わせを用いたカレンダー工程で積層され、
前記カレンダー工程の金属ロールの温度が120〜250℃であることを特徴とする、積層不織布シートの製造方法。 - 前記積層不織布シートの坪量を100%としたときの前記乾式不織布の坪量と前記湿式不織布の坪量の比率が、40:60〜60:40%である、請求項1に記載の積層不織布シートの製造方法。
- 前記湿式不織布がポリエステル系延伸繊維と、ポリエステル系未延伸繊維、ポリエステル系芯鞘型複合繊維、ポリプロピレン系芯鞘型複合繊維の少なくとも1種類からなるバインダー繊維とで構成され、
前記ポリエステル系延伸繊維と前記バインダー繊維の配合率が30:70〜80:20質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層不織布シートの製造方法。 - 前記カレンダー工程における加圧圧力が50〜350kg/cmである、請求項1〜3のいずれかに記載の積層不織布シートの製造方法。
- 前記弾性ロールのショア硬さがD80〜D95である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層不織布シートの製造方法。
- 前記カレンダー工程が、金属ロールに乾式不織布を接触させ、弾性ロールに湿式不織布を接触させることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の積層不織布シートの製造方法。
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