上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分、シリカ及びシランカップリング剤を含み、かつシリカの配合量A、シランカップリング剤の配合量B、シリカのCTAB比表面積CTAB、シリカの体積分率φ、及び、加硫ゴム(加硫済のタイヤ用ゴム組成物)の23℃における100%伸長時応力M100が、上記式(I)の関係を満たすものである。これにより、優れたウェットグリップ性能が得られる。
このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
摩擦の要素として、一般的に(1)粘着摩擦、(2)ヒステリシス摩擦、(3)アンカー摩擦の3つが考えられるが、路面とゴム間に水膜を有するウェットグリップにおいては、特に(2)のヒステリシス摩擦の寄与が高くなると推察される。そして、ヒステリシス摩擦は、路面の凹凸によりゴムが変形を受けた際に失うエネルギーロスで表され、その入力と同様の現象を再現するには、一般に0℃付近のtanδで示すことができると考えられている。
ゴムのtanδを上昇させる手法として、フィラーを多量配合し、ゴムの発熱点を増やすことが有用で、特に、0℃付近のtanδを上昇させる場合には、シリカを配合することが有用と推察される。その際には、ポリマーとシリカの相互作用の強さ(質と量)が重要と推察されるが、配合するシリカとシランカップリング剤との配合比率の数値が低いほど、シランカップリング剤に対するシリカの配合量が少なく、ポリマーとシリカの相互作用の質が高いことを示す。
また、シリカの体積分率φと、シリカのCTAB比表面積CTABと、加硫ゴム(加硫済のタイヤ用ゴム組成物)の23℃における100%伸長時応力M100との積は、シリカ種ごとの特徴を示しており、バウンドラバーの量と良い相関を持つため、ポリマーとシリカの相互作用の強さを示す。
そこで、本発明は、シリカの配合量A、シランカップリング剤の配合量B、シリカのCTAB比表面積CTAB、シリカの体積分率φ、及び、加硫ゴム(加硫済のタイヤ用ゴム組成物)の23℃における100%伸長時応力M100を組み合わせて表した上記式(I)を使用し、その基準値として0.015の上限値を設定することにより、配合におけるウェットグリップの指標とすることができるという知見を見出し、完成したものである。したがって、上記式(I)を満たすゴム組成物は、優れたウェットグリップ性能を有するものと推察される。
上記ゴム組成物は、下記式(I)を満たす。
A/B/CTAB/φ/M100≦0.015 (I)
上記式(I)中のAは、ゴム成分100質量部に対するシリカの配合量(質量部)を表す。Bは、ゴム成分100質量部に対するシランカップリング剤の配合量(質量部)を表す。CTABは、シリカのCTAB比表面積(m2/g)を表す。φは、タイヤ用ゴム組成物中のシリカの体積分率を表す。M100は、タイヤ用ゴム組成物の加硫ゴムの23℃における100%伸長時応力(MPa)を表す。
上限以下とすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる。(A/B/CTAB/φ/M100)の値は、0.014以下が好ましい。下限は特に限定されないが、工程通過性の観点から、0.0005以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.007以上が更に好ましく、0.010以上がより更に好ましく、0.011より大きいのが特に好ましい。
上記式(I)中のM100は、上記タイヤ用ゴム組成物の加硫ゴム(加硫済のタイヤ用ゴム組成物)の23℃における100%伸長時応力(MPa)を表すが、1.5MPa以上が好ましく、2.0MPa以上がより好ましく、2.5MPa以上が更に好ましく、3.0MPa以上がより更に好ましく、3.5MPa以上が特に好ましく、5.0MPa以上が最も好ましい。また、該M100は、20MPa以下が好ましく、18MPa以下がより好ましく、14MPa以下が更に好ましく、10MPa以下が特に好ましい。上記範囲内にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、式(I)の100%伸長時応力M100(MPa)は、JIS K6251に準拠し、23℃、500mm/分で引張試験を行い、100%伸長時の応力を測定した値である。
加硫後のゴム組成物において、上記式(I)の関係、上記M100(MPa)は、後述するゴム成分、シリカ、シランカップリング剤を適宜選択すること、これらの配合量を適宜調整すること、等により付与することが可能である。具体的には、ゴム成分として多量のSBRを使用する方法、シリカの配合量を増加する方法、シリカのCTAB比表面積を大きくする方法、シランカップリング剤の配合量を増加する方法、多量の可塑剤を配合する方法、シリカを分割して混練する方法、等により付与できる。
上記式(I)の関係、上記M100(MPa)を付与する他の手段としては、加硫促進剤の種類及び配合量を選択、調整する方法、加硫時間、加硫温度等の加硫条件を調整する方法、混練時間、混練温度、混練回数等の混練条件を調整する方法、等が挙げられる。
上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分を含み、例えば、ジエン系ゴムを使用できる。
上記ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、上記以外のゴム成分としては、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ゴム成分としては、SBR、BR、イソプレン系ゴムが好ましく、SBRがより好ましい。
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が20万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
なお、本明細書において、Mw、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
ゴム成分は、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムであればよく、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。また、該スチレン含量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、前記効果がより好適に得られる。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H1−NMR測定により算出される。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
SBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性能が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物は、シリカを含有する。シリカを用いることで、良好なウェットグリップ性能が得られる。
ゴム成分100質量部に対するシリカの配合量Aは、好ましくは110質量部以上、より好ましくは115質量部以上、更に好ましくは120質量部以上である。該配合量Aは、好ましくは400質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは250質量部以下、より更に好ましくは200質量部以下、特に好ましくは180質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
シリカのCTAB比表面積(臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積、CTAB)は、好ましくは160m2/g以上、より好ましくは170m2/g以上、更に好ましくは180m2/g以上、より更に好ましくは200m2/g以上、特に好ましくは220m2/g以上、最も好ましくは250m2/g以上である。上記CTABは、好ましくは450m2/g以下、より好ましくは400m2/g以下、更に好ましくは350m2/g以下、より更に好ましくは330m2/g以下、特に好ましくは300m2/g以下である。上記範囲内にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
なお、シリカのCTAB比表面積は、JIS K6217−3に準拠して測定される値である。
上記タイヤ用ゴム組成物中のシリカの体積分率φは、タイヤ用ゴム組成物中のシリカの配合量とシリカの比重とから求めることができる値であり、0を超え1未満の実数である。シリカの体積分率φは、例えば、0.10以上が好ましく、0.12以上がより好ましく、0.20以上が更に好ましく、0.25以上がより更に好ましく、0.30以上が特に好ましい。該体積分率φは、0.65以下が好ましく、0.55以下がより好ましく、0.45以下が更に好ましく、0.40以下がより更に好ましく、0.35以下が特に好ましい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
上記ゴム組成物において、充填剤100質量%中のシリカの含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。上限は特に限定されない。
上記ゴム組成物は、シリカと共にシランカップリング剤が配合される。これにより、良好なウェットグリップ性能が得られる。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは12質量部以下、特に好ましくは11質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
また、ゴム成分100質量部に対するシランカップリング剤の配合量Bは、好ましくは12質量部以上、より好ましくは13質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは16質量部以上である。該配合量Bは、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは25質量部以下、特に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT−Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、良好なウェットグリップ性能が得られるという理由から、メルカプト系が好ましい。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、下記式(II−1)で示される結合単位Aと下記式(II−2)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤を好適に使用できる。
上記式(II−1)及び式(II−2)中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。R1は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R2は分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。R1とR2とで環構造を形成してもよい。
上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(II−1)、(II−2)と対応するユニットを形成していればよい。
R1のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などがあげられる。
R1の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などがあげられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R1の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基などがあげられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R1の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などがあげられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R2の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
R2の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などがあげられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
R2の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
式(II−1)で示される結合単位Aと式(II−2)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保できる。
式(II−1)で示される結合単位Aと式(II−2)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60などを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
上記ゴム組成物は、シリカ以外の充填剤(補強性充填剤)を更に配合してもよい。
他の充填剤としては、特に限定されないが、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられる。なかでも、良好なウェットグリップ性能が得られるという理由から、カーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上が更に好ましい。また、カーボンブラックの含有量は、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましく、8質量部以下が特に好ましい。上記範囲内にすることで、良好な低燃費性を確保しながら、優れたウェットグリップ性能を付与できる傾向がある。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、120m2/g以上が好ましく、130m2/g以上がより好ましい。下限以上にすることで、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。また、上記N2SAは、200m2/g以下が好ましく、170m2/g以下がより好ましく、155m2/g以下が更に好ましい。上限以下にすることで、カーボンブラックの良好な分散が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2:2001によって求められる。
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
上記ゴム組成物は、可塑剤を配合してもよい。可塑剤としては特に限定されないが、オイル、液状ポリマー(液状ジエン系重合体)、液状樹脂などが挙げられる。これら可塑剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
可塑剤を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましい。また、該含有量は、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。上記可塑剤の含有量がこのような範囲であると、良好な低燃費性を確保しながら、優れたウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
可塑剤のなかでも、オイル、液状ポリマー、及び液状樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、加工性やウェットグリップ性能の観点からオイルが特に好ましい。
なお、上記可塑剤は、環境の面から、多環式芳香族含有量(PCA)が3質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。該多環式芳香族含有量(PCA)は、英国石油学会346/92法に従って測定される。
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。なかでも、耐摩耗性及び破壊特性の点では、アロマ系プロセスオイルが好ましい。上記アロマ系プロセスオイルとしては、具体的には、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAHシリーズ等が挙げられる。
上記液状ポリマー(液状ジエン系重合体)とは、常温(25℃)で液体状態のジエン系重合体である。
液状ジエン系重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×103〜2.0×105であることが好ましく、3.0×103〜1.5×104であることがより好ましい。
なお、本明細書において、液状ジエン系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
液状ジエン系重合体としては、液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)などが挙げられる。
上記液状樹脂としては、特に制限されないが、例えば、液状の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、テルペン樹脂、ロジン樹脂、またはこれらの水素添加物などが挙げられる。
液状芳香族ビニル重合体とは、α−メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂であり、スチレンの単独重合体、α−メチルスチレンの単独重合体、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体などの液状樹脂が挙げられる。
液状クマロンインデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂であり、クマロン、インデン以外に骨格に含まれていてもよいモノマー成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどの液状樹脂が挙げられる。
液状インデン樹脂とは、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む液状樹脂である。
液状テルペン樹脂とは、αピネン、βピネン、カンフェル、ジペテンなどのテルペン化合物を重合して得られる樹脂や、テルペン化合物とフェノール系化合物とを原料として得られる樹脂であるテルペンフェノールに代表される液状テルペン系樹脂である。
液状ロジン樹脂とは、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、または、これらの水素添加物に代表される液状ロジン系樹脂である。
上記ゴム組成物には、固体樹脂(常温(25℃)で固体状態のポリマー)を配合してもよい。
固体樹脂を含有する場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
固体樹脂としては、特に限定されないが、例えば、固体状のスチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペン系樹脂、p−t−ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
固体状のスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いた固体状ポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
上記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1−ブテン、1−ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β−不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
なかでも、固体状のα−メチルスチレン系樹脂(α−メチルスチレン単独重合体、α−メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましい。
固体状のクマロンインデン樹脂としては、前述の液状状態のクマロンインデン樹脂と同様の構成単位を有する固体樹脂が挙げられる。
固体状のテルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。
ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂及びそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α−フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、1,8−シネオール、1,4−シネオール、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオールなどが挙げられる。
固体状のポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β−ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂等の固体樹脂も挙げられる。
固体状のテルペンフェノールとしては、上記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した固体樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した固体樹脂が挙げられ、具体的には、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びホルマリンを縮合させた固体樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。
固体状の芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる固体樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した固体樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
固体状のp−t−ブチルフェノールアセチレン樹脂としては、p−t−ブチルフェノールとアセチレンとを縮合反応させて得られる固体樹脂が挙げられる。
固体状のアクリル系樹脂としては特に限定されないが、不純物が少なく、分子量分布がシャープな樹脂が得られるという点から、無溶剤型アクリル系固体樹脂を好適に使用できる。
固体状の無溶剤型アクリル樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59−6207号公報、特公平5−58005号公報、特開平1−313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42−45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
固体状のアクリル系樹脂は、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないことが好ましい。また、上記アクリル系樹脂は、連続重合により得られる組成分布や分子量分布が比較的狭いものが好ましい。
上述のように、固体状のアクリル系樹脂としては、実質的に副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを含まないもの、すなわち、純度が高いものが好ましい。固体状のアクリル系樹脂の純度(該樹脂中に含まれる樹脂の割合)は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上である。
固体状のアクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
また、固体状のアクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体と共に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
固体状のアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良い。
また、固体状のアクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよい。
可塑剤、固体樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、下記式(1)で表される化合物を含有することが好ましい。
上記式(1)中、R11は、炭素数8〜14のアルキル基又はアルケニル基を表し、該アルキル基及び該アルケニル基は直鎖状、分枝鎖状及び環状の何れでもよい。R12はヒドロキシアルキル基又はオキシアルキレンユニットを有するヒドロキシアルキル基を表す。
該化合物を含有することにより、ゴム中でのシリカの分散性が効率的に向上する。また、シリカ同士の凝集が抑制され、シリカの凝集体に包み込まれたオクルードラバーを減らすことができる。その結果、ゴム組成物の加工性、ウェットグリップ性能等が向上する。
R11としては、例えば、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、イソトリデシル基などのアルキル基;オクテン基、ノネン基、デセン基などのアルケニル基;が挙げられる。
なお、式(1)の化合物の原料となる脂肪酸としては、好ましくは、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸などが挙げられ、アルキル基及び/又はアルケニル基が異なる2種以上の化合物を含むヤシ油脂肪酸なども使用可能である。
R12のヒドロキシアルキル基又はオキシアルキレンユニットを有するヒドロキシアルキル基において、ヒドロキシアルキル基を構成するアルキル基は、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、炭素数2〜3のアルキル基がより好ましい。更にR12は、下記式(1−1)で表される基が好ましい。
−(R13O)n−H (1−1)
(R13はアルキレン基を表す。nは1〜5を表す。)
R13は、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。nは、1〜3が好ましく、1がより好ましい。なお、n個のR13は同一でも異なってもよい。
式(1)で表される具体的な化合物としては、ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、パーム核油脂肪酸N−メチルエタノールアミド、ラウリル酸N−メチルエタノールアミドなどが挙げられる。
式(1)で表される化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、シリカ表面を覆い、粘度低減効果を発現するという理由から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましい。また、該化合物の含有量は、熱酸化劣化を有効に抑制し、ゴム成分と白色充填剤との反応を阻害しないという理由から、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
ステアリン酸を含有する場合、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。上記数値範囲内であると、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′−ビス(α,α′−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N−イソプロピル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス−[メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p−フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
老化防止剤を含有する場合、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
上記ゴム組成物は、ワックスを含むことが好ましい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
上記ゴム組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
硫黄を含有する場合、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、前記効果が良好に得られる傾向がある。
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
加硫促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT−N)等のチウラム系加硫促進剤;N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
加硫促進剤を含有する場合、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記数値範囲内であると、良好なウェットグリップ性能が得られる傾向がある。
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物);等を例示できる。
上記ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
なかでも、特開2016−14095号公報に記載の「タイヤ用ゴム材料にシリカを投入し、バンバリーミキサーを用いて混練りを行うタイヤ用ゴム材料の混練り方法であって、 前記シリカの前記バンバリーミキサーへの投入を少量ずつ分割して行うことを特徴とするタイヤ用ゴム材料の混練り方法。」等の混練法により混練りし、その加硫する方法によりゴム組成物(加硫ゴム)を製造することが好適である。
上記タイヤ用ゴム材料の混練り方法において、配合割合は、原料ゴムの投入量に対して、その他の材料の投入量が100〜400質量部(ゴム成分100質量部に対して)の範囲になるように設定することが好ましい。
混練機へのシリカの投入量は、ゴム成分100質量部に対して、10〜150質量部の範囲内に設定することが好ましい。そして、原料ゴムの混練りを継続しながら、シリカを少量ずつ分割して投入する。
混練室内に投入された原料ゴム、シリカ、カーボンブラックなどの材料は、混練ロータの回転によって混練りされ、混練りを継続しながら、シリカの投入を少量ずつ分割して繰り返して、シリカを混練室内に全て投入する。
原料ゴムとその他の材料の混練りを行いながら、シリカを少量ずつ分割して投入することにより、シリカが凝集することを抑制して、原料ゴム中に均一に分散できる。この結果、所望のゴム物性を有するタイヤ用ゴム材料の混練りを安定して行うことができるため、タイヤ製造工程における材料の廃棄処分を少なくして、歩留まりの低下を防止できる。
なお、シリカの時間あたりの投入量である投入速度は、5〜15kg/5secに設定することが好ましい。5kg/5sec以上にすることで、良好な生産効率が得られ、15kg/5sec以下にすることで、シリカの凝集塊の形成を抑制できる傾向がある。
混練室で混練りされたタイヤ用ゴム材料(未加硫ゴム組成物)は、混練室の底に設けられたドロップドアが開くことにより、混練室外に排出され、作製された混練物(未加硫)を加硫することで、加硫ゴムが作製される。
上記ゴム組成物は、トレッド(キャップトレッド)に好適に用いられるが、トレッド以外のタイヤ部材、例えば、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチエイペックス、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層に用いてもよい。
上記空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。このように上記ゴム組成物を用いてタイヤを製造することにより、該ゴム組成物を用いて作製したタイヤ部材を有するタイヤが得られる。
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、ランフラットタイヤ、競技用タイヤに好適に使用可能である。特に、乗用車用タイヤとしてより好適に使用できる。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例で使用する各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol 1502
NR:天然ゴム、TSR20
BR:ブタジエンゴム、宇部興産(株)製のBR150B
シリカ1:Solyay社製Zeosil 1165MP(CTAB比表面積:155m2/g)
シリカ2:Evonik社製Ultrasil 9000GR(CTAB比表面積:240m2/g)
シリカ3:PPG Industries社製Hisil EZ200G(CTAB比表面積:280m2/g)
シランカップリング剤:Momentive社製のNXT−Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN134(N2SA:148m2/g)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N−フェニル−p−フェニレンジアミン)
加工助剤:ヤシ油脂肪酸N−メチルエタノールアミド
オイル:(株)ジャパンエナジー製のX140(アロマオイル)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(DPG、1,3−ジフェニルグアニジン)
〔実施例及び比較例〕
容量:270L、混練ロータ:4WNのバンバリーミキサーを用いて、タイヤ用ゴム材料(ゴム組成物)の混練りを行う(配合:表1)。
なお、シリカ、シランカップリング剤の計量及び投入を、X練り、Y練り、Z練りの3ステージに分けて行い、シリカ、シランカップリング剤の総投入量、X練り、Y練り、Z練りの各ステージの投入量は、表1に記載のとおりである。また、各ステージにおいて、計量されたシリカの投入速度を5kg/5secに設定して少量ずつ分割して投入する。
得られる未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、150℃の条件下で20分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造する。
上記のようにして得られる試験用タイヤを使用した下記の評価を行うことで、表1又はそれに近い値が得られるようになる。
(引張試験)
試験用タイヤのキャップトレッドから加硫ゴムを採取し試験片を作製し、得られる試験片について、JIS K6251に準拠して、23℃、500mm/分で引張試験を行い、100%伸長時の応力M100(MPa)を測定する。
(ウェットグリップ性能)
各試験用タイヤを車輌(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求める。結果は指数で表し、数字が大きいほどウェットスキッド性能(ウェットグリップ性能)が良好である。指数は次の式で求める。
(ウェットグリップ性能指数)=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100