以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
図面には、便宜上、D1軸、D2軸およびD3軸からなる直交座標系を付すことがある。本開示に係る弾性波デバイスは、いずれの方向が上方または下方とされてもよい。ただし、便宜上、D3軸方向を上下方向として上面または下面の語を用いることがある。なお、D1軸は、後述する圧電基板19の上面に沿って伝搬するSAWの伝搬方向に平行になるように定義され、D2軸は、圧電基板19の上面に平行かつD1軸に直交するように定義され、D3軸は、圧電基板19の上面に直交するように定義されている。
第2実施形態以降において、既に説明された実施形態の構成と共通または類似する構成について、既に説明された実施形態の構成に付した符号を用い、また、図示や説明を省略することがある。なお、既に説明された実施形態の構成と対応(類似)する構成については、既に説明された実施形態の構成と異なる符号を付した場合においても、特に断りがない点は、既に説明された実施形態の構成と同様とされてよい。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るSAW装置1が有しているSAWチップ3の斜視図である。図2は、SAW装置1の断面図であり、図1のII−II線に対応している。
SAW装置1は、例えば、SAWを利用するSAWチップ3と、SAWチップ3が実装されている実装基体5と、SAWチップ3を封止している封止部7とを有している。なお、SAWチップ3に関しては、+D3側を上方として上面等の語を用いることがあり、実装基体5および封止部7については、−D3側を上方として上面等の語を用いることがある。
SAW装置1は、例えば、実装基体5にSAWチップ3以外の他の電子素子(不図示)も実装されて構成されたモジュールであってよい。また、例えば、SAW装置1は、SAWチップ3以外の電子素子を基本的に有さないものであってもよい。換言すれば、実装基体5および封止部7は、SAWチップ3を単にパッケージングするだけの部材であってもよい。SAW装置1が、モジュールでもあっても、パッケージされた電子部品であってもよいことから理解されるように、SAW装置1の大きさは適宜に設定されてよい。
(SAWチップ)
SAWチップ3は、例えば、概略、薄型の直方体状のチップ型電子部品として構成されている。SAWチップ3は、例えば、チップ基板9と、チップ基板9の+D3側の主面(第1主面9a)上に位置している導体層(符号省略)とを有している。
導体層は、例えば、電気信号とSAWとの変換を直接的に担うSAW素子11と、SAW素子11と接続されている複数の配線13と、少なくとも一部は複数の配線13と接続されている複数の端子15A〜15D(以下、A〜Dを省略することがある。)とを構成している。
導体層は、例えば、金属からなり、また、1つの金属層から構成されていてもよいし、複数の金属層から構成されていてもよい。導電層は、例えば、SAW素子11、配線13および端子15それぞれにおいて(部位毎に)、同一の材料および一定の厚さで構成されている。また、上記の部位間において、材料および/または厚さは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。所定の部位の導体層が複数の金属層から構成されている場合において、その複数の金属層の一部のみが他の部位の金属層と共通していてもよい。
なお、特に図示しないが、SAWチップ3は、上記の他、例えば、導体層(端子15を除く)を覆う絶縁性の保護膜(例えばSiO2膜)を有していてもよい。保護膜は、比較的薄い、単に導体層を腐食等から保護する目的のものであってもよいし、比較的厚い、SAW素子11の温度補償に寄与するものであってもよい。また、例えば、チップ基板9の−D3側の主面を覆う導電層および/または絶縁層(ただし、これはチップ基板9の一部と捉えられてもよい。)が設けられていてもよい。
(チップ基板)
チップ基板9は、例えば、概略、薄型の直方体状に形成されている。すなわち、チップ基板9は、第1主面9aと、その背面の第2主面9bと、第1主面9aの外縁および第2主面9bの外縁をこれらの全周に亘ってつないでいる外周面9cとを有している。外周面9cは、例えば、4つの側面9dを含んでいる。なお、本実施形態では、SAWチップ3の外形は、概略、チップ基板9の外形と同一である。
チップ基板9は、例えば、いわゆる貼り合わせ基板によって構成されている。すなわち、チップ基板9は、圧電基板19と、圧電基板19の一主面に貼り合わされた支持基板21とを有している。
圧電基板19は、チップ基板9の第1主面9aを構成している。従って、第1主面9aは、圧電性を有している。支持基板21は、圧電基板19の第1主面9aとは反対側に貼り合わされている。なお、第2主面9bは、支持基板21によって構成されていてもよいし、既述のように支持基板21の圧電基板19とは反対側に導電層および/または絶縁層が設けられ、これらが第2主面9bを構成していてもよい。
圧電基板19は、例えば、圧電性を有する単結晶基板によって構成されている。単結晶基板は、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)または水晶(SiO2)からなる。カット角は適宜に設定されてよい。例えば、圧電基板19は、回転YカットX伝搬のものである。すなわち、X軸は圧電基板19の上面(D1軸)に平行であり、Y軸は、圧電基板19の上面の法線に対して所定の角度で傾斜している。
圧電基板19の形状は、例えば、概略、薄型の直方体状である。その寸法は適宜に設定されてよい。圧電基板19の厚さは、例えば、一定である。当該厚さの具体的な値は、SAW装置1が適用される技術分野および/またはSAW装置1に要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよい。一例として、圧電基板19の厚さは、0.5μm以上30μm以下である
支持基板21は、例えば、圧電基板19の材料よりも線膨張係数(いずれかに異方性がある場合は、例えば、D1軸方向における線膨張係数)が小さい材料によって形成されている。このような材料としては、例えば、シリコン等の半導体、サファイア等の単結晶および酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックを挙げることができる。なお、支持基板21は、互いに異なる材料からなる複数の層が積層されて構成されていてもよい。
支持基板21の形状は、例えば、概略、薄型の直方体状であり、また、平面視において圧電基板19に一致する形状および寸法である。支持基板21の厚みは、例えば、一定であり、また、圧電基板19の厚みよりも厚い。支持基板21の厚さの具体的な値は、圧電基板19の厚みと同様に適宜に設定されてよい。一例として、圧電基板19の厚さが0.5μm以上30μm以下であるのに対して、支持基板21の厚さは100μm以上300μm以下である。
圧電基板19および支持基板21は、例えば、不図示の接着層を介して互いに貼り合わされている。接着層の材料は、有機材料であってもよいし、無機材料であってもよい。有機材料としては、例えば、熱硬化性樹脂等の樹脂が挙げられる。無機材料としては、例えば、SiO2が挙げられる。接着層は複数の層が積層されていてもよい。また、圧電基板19および支持基板21は、接着面をプラズマなどで活性化処理した後に接着層無しに貼り合わせる、いわゆる直接接合によって貼り合わされていても良い。
(SAW共振子(SAW素子))
SAW素子11は、第1主面9a上に電圧を印加することによってSAWを励振する励振電極を有する種々の構成のものとされてよい。図1および図2では、SAW素子11の一例として、SAW共振子17が模式的に示されている。SAW共振子17は、いわゆる1ポートSAW共振子を構成しており、例えば、2つの端子15Aおよび15Bの一方から所定の周波数の電気信号が入力されると共振を生じ、その共振を生じた信号を2つの端子15Aおよび15Bの他方から出力する。
このようなSAW共振子17は、例えば、第1主面9a上に位置している励振電極としてのIDT(interdigitated transducer)電極23と、第1主面9a上にてIDT電極23の両側に位置している1対の反射器25とを有している。
なお、厳密には、SAW共振子17(SAW素子11)は、圧電基板19を含んで構成される。ただし、一の圧電基板19上に、IDT電極23および1対の反射器25の組み合わせが複数設けられ、複数のSAW共振子17が構成されることがある。そこで、本開示の説明では、便宜上、IDT電極23および1つの反射器25の組み合わせ(SAW共振子17の電極部)をSAW共振子17という。
IDT電極23および反射器25は、例えば、互いに同一の材料および厚さで構成されている。既述のように、SAW共振子17を構成する導体層は、1層の金属層から構成されていてもよいし、複数の金属層から構成されていてもよい。また、当該導体層の厚さは、SAW共振子17に要求される電気特性等に応じて適宜に設定される。なお、特に図示しないが、IDT電極23および/または反射器25の上面または下面には、SAWの反射係数を向上させるために、絶縁体または金属からなる付加膜が設けられていてもよい。
IDT電極23は、1対の櫛歯電極27を有している。各櫛歯電極27は、バスバー29と、バスバー29から互いに並列に延びる複数の電極指31とを有している。なお、特に図示しないが、各櫛歯電極27は、この他、複数の電極指31の間においてバスバー29から突出し、他方の櫛歯電極27の複数の電極指31の先端と対向する複数のダミー電極を有していてもよい。
1対の櫛歯電極27は、複数の電極指31が互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。すなわち、1対の櫛歯電極27の2本のバスバー29は互いに対向して配置され、一方の櫛歯電極27の電極指31と他方の櫛歯電極27の電極指31とは、基本的には、その幅方向(D1軸方向)に交互に配列されている。
バスバー29は、例えば、概略、一定の幅でSAWの伝搬方向(D1軸方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。そして、1対のバスバー29は、SAWの伝搬方向に直交する方向(D2軸方向)において互いに対向している。なお、バスバー29は、幅が変化していたり、SAWの伝搬方向に対して傾斜していたりしてもよい。
各電極指31は、例えば、概略、一定の幅でSAWの伝搬方向に直交する方向(D2軸方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。複数の電極指31は、例えば、SAWの伝搬方向に配列されており、また、互いに同等の長さである。なお、IDT電極23は、複数の電極指31の長さ(別の観点では交差幅:一方の櫛歯電極27の電極指31の先端と、当該電極指31と隣り合う他方の櫛歯電極27の電極指31の先端とのD2軸方向における距離)が伝搬方向の位置に応じて変化する、いわゆるアポダイズが施されていてもよい。
電極指31の本数、長さおよび幅は、SAW共振子17に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。なお、図1等は模式図であることから、電極指31の本数は少なく示されている。実際には、図示よりも多く(例えば100本以上)の電極指31が配列されてよい。後述する反射器25のストリップ電極35およびSAW素子11の他の例(図8および図9(a))についても同様である。
複数の電極指31のピッチは、例えば、IDT電極23全体に亘って概ね一定とされている。なお、ピッチは、例えば、互いに隣り合う2本の電極指31(または後述するストリップ電極35)の中心間距離である。ピッチは、基本的には、圧電基板19上を伝搬するSAWのうち共振させたい周波数と同等の周波数を有するSAWの波長の半分とされている。
反射器25は、例えば、格子状に形成されている。すなわち、反射器25は、互いに対向する1対のバスバー33と、1対のバスバー33間において延びる複数のストリップ電極35とを有している。
バスバー33およびストリップ電極35の形状は、ストリップ電極35の両端が1対のバスバー33に接続されていることを除いては、IDT電極23のバスバー29および電極指31と同様とされてよい。
1対の反射器25は、例えば、SAWの伝搬方向においてIDT電極23の両側に隣接している。従って、複数のストリップ電極35は、複数の電極指31の配列に続いて配列されている。反射器25とIDT電極23との間で互いに隣接するストリップ電極35と電極指31とのピッチは、例えば、複数の電極指31(および複数のストリップ電極35)のピッチと同等である。
なお、図示の例では、反射器25は、いずれの端子15にも接続されておらず、電気的に浮遊状態とされている。ただし、反射器25は、例えば、いずれかの端子15に接続されて、基準電位が付与されてもよい。
1対の櫛歯電極27に電圧が印加されると、電極指31によって圧電基板19に電圧が印加され、圧電基板19の上面付近において当該上面に沿ってD1軸方向に伝搬する所定のモードのSAWが励起される。励起されたSAWは、電極指31によって機械的に反射される。その結果、電極指31のピッチを半波長とする定在波が形成される。定在波は、当該定在波と同一周波数の電気信号に変換され、電極指31によって取り出される。このようにしてSAW共振子17は共振子として機能する。その共振周波数は、電極指ピッチを半波長として圧電基板19上を伝搬するSAWの周波数と概ね同一の周波数である。
IDT電極23において励起されたSAWは、反射器25のストリップ電極35によって機械的に反射される。また、互いに隣接するストリップ電極35がバスバー33によって互いに接続されていることから、IDT電極23からのSAWは、電気的にもストリップ電極35によって反射される。これにより、SAWの発散が抑制され、IDT電極23における定在波が強く立ち、SAW共振子17の共振子としての機能が向上する。
(SAWチップの配線および端子)
配線13の経路(形状および位置)および各種の寸法、ならびに端子15の数、形状および各種の寸法は、SAW素子11の構成に応じて適宜に設定されてよい。
図示の例では、SAW素子11が1ポート型のSAW共振子17であることに対応して、1対のバスバー29に接続されている2本の配線13が設けられている。また、複数の端子15のうち2つ(15Aおよび15B)は、2本の配線13に接続されている。複数の端子15のうち他の2つ(15Cおよび15D)は、SAW共振子17に非接続であり、SAWチップ3の実装基体5に対する実装(接合)に利用されるダミーの端子となっている。
また、図示の例では、配線13は、一定の幅で延びている。なお、特に図示しないが、配線13は、幅が変化してもよいし、バスバー29の長さ(D1方向)と同等の幅を少なくとも一部に有していてもよい。また、複数の配線13は、絶縁層を介して互いに立体的に交差する部分を有していてもよい。
図示の例では、複数の端子15は、第1主面9aの外縁に沿って配列されている。より具体的には、複数の端子15は、第1主面9aの4隅に位置している。また、端子15は、配線13の幅と同等の径を有する円形とされている。なお、端子15は、配線13の幅よりも小さい、または大きい径を有していてもよいし、矩形等の円形以外の形状を有していてもよい。
なお、端子15は、必ずしもそれ自体の構成(形状または材料等)によって配線13と区別可能である必要はなく、配線13の一部のようになっていてもよい。例えば、端子15の位置または範囲は、配線13を覆い、端子15を覆わない絶縁層によって特定されたり、パッケージングまたは実装によって、端子15に当接する部材(例えばバンプ)によって特定されたりしてもよい。
(実装基体)
実装基体5は、例えば、概略、薄型の直方体状に形成されており、一方の主面は、SAWチップ3が実装される実装面5aを構成している。実装基体5は、例えば、リジッド式のプリント配線板によって構成されており、絶縁基体37と、絶縁基体37の表面上または内部に設けられた各種の導体とを有している。
なお、特に図示しないが、実装基体5は、上記の他、例えば、絶縁基体37の主面上の導体層の一部を覆うソルダーレジストを有していてもよい(ただし、これは絶縁基体37の一部と捉えてもよい。)。ただし、以下の説明では、便宜上、絶縁基体37の表面によって実装面5aが構成されているものとして説明することがある。
絶縁基体37は、例えば、概略、薄型の直方体状に形成されている。絶縁基体37は、例えば、樹脂、セラミックおよび/またはアモルファス状態の無機材料を含んで形成されている。絶縁基体37は、単一の材料からなるものであってもよいし、基材に樹脂を含浸させた基板のように複合材料からなるものであってもよい。絶縁基体37は、チップ基板9、圧電基板19および支持基板21のそれぞれに比較して、線膨張係数(いずれかに異方性がある場合は、D1軸方向の線膨張係数)が大きくてもよいし、同等でもよいし、小さくてもよい。
実装基体5の各種の導体は、例えば、SAWチップ3を実装するための複数のランド39を含んでいる。複数のランド39は、例えば、絶縁基体37の主面上に位置する導体層によって構成されている。当該導体層は、SAWチップ3の導体層と同様に、適宜な金属によって構成されてよく、また、1層から構成されても、複数層から構成されてもよい。複数のランド39の位置は、複数の端子15の位置に対応する位置とされている。ランド39の平面形状および各種の寸法は適宜に設定されてよい。
実装基体5におけるその他の導体は、実装基体5の用途に応じて適宜に設けられてよい。
例えば、SAW装置1がSAWチップ3および不図示の他の電子部品(例えばIC:Integrated Circuit)を含むモジュールである場合においては、絶縁基体37の主面上に、前記電子部品を実装するための不図示のランド、および当該不図示のランドとランド39とを接続する不図示の配線が設けられてよい。
また、例えば、SAW装置1が基本的にSAWチップ3のみを含む電子部品である場合(実装基体5が単にSAWチップ3をパッケージングするパッケージの一部である場合)、絶縁基体37の実装面5aとは反対側の主面に設けられた不図示の外部端子、および絶縁基体37を貫通して前記の外部端子とランド39とを接続する不図示の貫通導体とが設けられてよい。
また、例えば、SAW装置1がモジュールまたは基本的にSAWチップ3のみを含む電子部品である場合において、抵抗素子、キャパシタまたはインダクタを構成する配線パターンが絶縁基体37の表面または内部に設けられてもよい。
(SAWチップの実装基体への実装)
SAWチップ3は、例えば、第1主面9aを実装基体5の実装面5aに対向させて配置されている。また、複数の端子15と複数のランド39とは対向している。そして、端子15と、ランド39とは、その間に介在するバンプ41によって接合されている。これにより、SAWチップ3は、実装基体5に対して固定されるとともに、実装基体5と電気的に接続されている。
なお、図2では、ダミーの端子15(15Cおよび15D)とランド39との接続を図示しているが、SAW素子11と接続されている端子15(15Aおよび15B)とランド39との接続も図2と同様である。
実装基体5の実装面5aとSAWチップ3の第1主面9aとは、例えば、ランド39、バンプ41および端子15の厚さの合計の厚さで互いに離間しており、両者の間には隙間が形成されている。この隙間は、後述するように封止部7が配置されずに、振動空間43を構成している。振動空間43は、例えば、第1主面9aの振動(SAWの伝搬)を容易化することに寄与している。
バンプ41は、例えば、はんだにより構成されている。はんだは、鉛を用いたはんだであってもよいし、鉛フリーはんだであってもよい。なお、バンプ41は、導電性接着剤によって形成されていてもよい。バンプ41の高さ等は適宜に設定されてよい。
(封止部)
封止部7は、例えば、樹脂によって構成されている(樹脂を少なくとも母材としている。)。樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂であり、熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂もしくはフェノール樹脂である。樹脂には、当該樹脂よりも線膨張係数が低い材料により形成された絶縁性粒子からなるフィラーが混入されていてもよい。絶縁性粒子の材料は、例えば、シリカ、アルミナ、フェノール、ポリエチレン、グラスファイバー、グラファイトフィラーである。
封止部7は、例えば、チップ基板9、圧電基板19および支持基板21のそれぞれに比較して、線膨張係数(いずれかに異方性がある場合は、D1軸方向の線膨張係数)が大きい材料によって構成されている。なお、チップ基板9の線膨張係数は、圧電基板19および支持基板21の全体としての線膨張係数である。封止部7および実装基体5(絶縁基体37)は、いずれの線膨張係数が大きくてもよい。
封止部7は、例えば、SAWチップ3の上から実装基体5の実装面5aを覆っており、SAWチップ3の周囲において実装面5aに接合されている。これにより、SAWチップ3は封止されている。
また、封止部7は、実装基体5の実装面5aとSAWチップ3の第1主面9aとの隙間には充填されていない。すなわち、当該隙間は、空間(振動空間43)とされており(中実ではなく)、また、密閉されている。振動空間43内は、真空とされていてもよいし、適宜な気体が封入されていてもよい。
封止部7は、例えば、SAWチップ3の第2主面9bの大部分(例えば8割以上。図示の例では全面)に接合されている。一方で、封止部7は、SAWチップ3の外周面9cに対して、外周面9cの半分以上または2/3以上の面積について非接合とされている。図示の例では、非接合の一態様として、封止部7が外周面9cから離れている状態(封止部7と外周面9cとの間に空間が形成されている状態)が示されている。また、非接合とされる領域は、例えば、少なくとも外周面9cのうちの第1主面9a側の領域を含み、図示の例では、外周面9c(4つの側面9d)の全面とされている。
封止部7の外形は、適宜に設定されてよい。例えば、封止部7の上面(−D3)側の面は、少なくともSAWチップ3上において、または少なくともSAWチップ3およびその周囲に亘って(例えば封止部7の上面全面に亘って)、平面であってもよいし(図示の例)、SAWチップ3上で凸状または凹状となる曲面であってもよい。封止部7の側面は、実装面5aに対して直交していてもよいし、封止部7の裾野を構成するように実装面5aに対して傾斜していてもよい。封止部7の、SAWチップ3上およびSAWチップ3の外周面9cにおける厚さも適宜に設定されてよい。一例を挙げると、例えば、封止部7のSAWチップ3上(第2主面9bに接合されている部分)の厚さは、SAWチップ3またはチップ基板9の厚さの1/2以上または1倍以上とされてよい。
(SAW装置の製造方法)
SAW装置1の製造方法は、例えば、封止部7の形成方法を除いては、公知の種々の方法と同様とされてよい。概要を述べると、SAW装置1は、SAWチップ3および実装基体5がそれぞれ並行して準備され、SAWチップ3が実装基体5にバンプ41によって実装される。その後、例えば、封止部7となる未硬化状態の材料(例えば封止樹脂)がSAWチップ3の上から実装基体5の実装面5a上に供給され、封止樹脂が加熱硬化されることによって、SAW装置1が作製される。なお、上記の工程は、実装基体5の個片化前に行われてもよいし、個片化後に行われてもよい。
ここで、封止部7の形成は、SAWチップ3の外周面9cと封止部7との間に隙間(空間)が形成されるように、従来とは異なる方法によって行われる。
例えば、未硬化状態の封止樹脂は、従来よりも粘度が高い状態でSAWチップ3の上から実装面5a上に供給される。これにより、未硬化状態の封止樹脂が外周面9cに密着することを抑制し、ひいては、外周面9cと硬化後の樹脂(封止部7)との間に隙間を形成することができる。なお、粘度の調整は、例えば、添加剤の調整により行うことができる。未硬化状態の封止樹脂の供給は、例えば、ディスペンサまたはスクリーン印刷によってなされてもよいし、シート状の樹脂をSAWチップ3の上から実装面5aに被せることによってなされてもよい。
また、例えば、未硬化状態の封止樹脂を供給する前に、SAWチップ3の外周面9cを覆うとともに、第1主面9aと実装面5aとの間に充填される犠牲層を形成してもよい。そして、犠牲層の上から未硬化状態の封止樹脂を供給して硬化させて封止部7を形成する。この際、またはその後、封止部7に孔部を形成する。そして、孔部を介して犠牲層を溶解、流出させた後、孔部を塞ぐ。このようにして、外周面9cから離れており、かつ振動空間43を密閉している封止部7を形成してもよい。
以上のとおり、本実施形態では、SAW装置1は、SAWチップ3と、実装基体5と、封止部7とを有している。実装基体5は、SAWチップ3が実装されている実装面5aを有している。封止部7は、SAWチップ3の上から実装面5aを覆っている。SAWチップ3は、チップ基板9と、励振電極(IDT電極23)とを有している。チップ基板9は、圧電性を有している第1主面9a、その背面の第2主面9b、および第1主面9aの外縁および第2主面9bの外縁をこれらの全周に亘ってつないでいる外周面9cを有している。IDT電極23は、第1主面9a上に位置している。SAWチップ3は、第1主面9aと実装面5aとが振動空間43を介して対向している状態で、実装基体5に実装されている。封止部7は、チップ基板9よりも線膨張係数が大きく、かつ第2主面9bに接合されているとともに、外周面9cの半分以上の面積について、外周面9cに対して非接合である。
ここで、SAW装置1の温度が上昇すると、チップ基板9(第1主面9a)が膨張することなどに起因して、SAWチップ3の周波数特性が変化する。また、この際、チップ基板9が第2主面9b側を凹側とする撓み変形を生じると、第1主面9aの膨張が助長され、ひいては、上記の周波数特性の変化が助長される。しかし、チップ基板9よりも線膨張係数が大きい封止部7が第2主面9bに接合されていると、封止部7の熱膨張によって第2主面9bに引張力が加えられる。この引張力は、第2主面9b側を凹側とするチップ基板9の撓み変形を抑制する作用を生じる。これにより、周波数特性の変化が低減される。一方で、封止部7は外周面9cの半分以上の面積について、外周面9cに対して非接合とされている。従って、例えば、封止部7の熱膨張によって引張力が外周面9cに加えられるおそれが低減され、ひいては、第1主面9aの膨張が助長されるおそれが低減される。その結果、周波数特性の変化が低減される。
また、本実施形態では、チップ基板9は、第1主面9aを有している圧電基板19と、圧電基板19の第1主面9aとは反対側に貼り合わされており、圧電基板19よりも線膨張係数が小さい支持基板21と、を有している。
このような構成のチップ基板9においては、圧電基板19の熱膨張が支持基板21によって規制されるから、支持基板21(第2主面9b側)を凹とするチップ基板9の撓み変形が生じやすい。従って、例えば、上述した封止部7による撓み変形抑制の効果が増大する。すなわち、周波数特性の変化の抑制の効果が増大する。
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係るSAW装置201が有しているSAWチップ203の斜視図である。図4は、SAW装置201の断面図であり、図3のIV−IV線に対応している。
第1実施形態のSAW装置1がCSP型であったのに対して、第2実施形態のSAW装置201はWLP型とされている。それ以外は、例えば、第2実施形態は、第1実施形態と同様とされてよい。
具体的には、例えば、SAWチップ203は、概略、第1実施形態のSAWチップ3に対して、第1主面9aを覆うカバー45と、カバー45を貫通する端子215A〜215D(以下、A〜Dを省略することがある。)とを加えた構成である。
なお、以下の説明では、第1実施形態の端子15に相当する部材を、端子215との区別等のために、パッド15ということがある。また、第1実施形態の図1は、第2実施形態のSAWチップ203において、カバー45および端子215を省略した斜視図として参照されてよい。
特に図示しないが、SAWチップ203は、上記の他、例えば、カバー45の天面45a上に重ねられている導体層(補強層)および当該導体層を覆う絶縁層を有していてもよい。ただし、これらは、カバーの一部と捉えられてもよい。
(カバー)
カバー45は、第1主面9a上に振動空間243を構成している。具体的には、例えば、カバー45は、平面視において枠状の枠部47と、枠部47の開口を塞ぐ蓋部49とを有している。枠部47の開口が蓋部49によって塞がれることにより、密閉された振動空間243が構成されている。
枠部47は、例えば、概ね一定の厚さの層に振動空間243となる開口が1以上形成されることにより構成されている。枠部47の厚さ(振動空間243の高さ)は、例えば、5μm以上30μm以下である。蓋部49は、例えば、枠部47上に積層される、概ね一定の厚さの層により構成されている。蓋部49の厚さは、例えば、5μm以上30μm以下である。
枠部47および蓋部49は、同一の材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。図4では、説明の便宜上、枠部47と蓋部49との境界線を明示しているが、現実の製品においては、枠部47と蓋部49とは、同一材料により一体的に形成されていてもよい。また、枠部47および蓋部49それぞれは、複数層から構成されていてもよい。
カバー45(枠部47および蓋部49)は、基本的に絶縁材料によって構成されている。絶縁材料は、例えば、感光性の樹脂である。感光性の樹脂は、例えば、アクリル基やメタクリル基などのラジカル重合により硬化する、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系の樹脂である。なお、カバー45の線膨張係数は、適宜な大きさであってよく、例えば、(異方性がある場合は例えばD1軸方向において)圧電基板19の線膨張係数よりも大きい。また、カバー45の線膨張係数は、封止部7の線膨張係数に対して、小さくてもよいし、同等でもよいし、大きくてもよい。
(端子)
端子215は、例えば、特に符号を付さないが、パッド15上に立っている柱状部と、柱状部の外周面から突出しているフランジ部とを有している。柱状部は、枠部47および蓋部49を貫通しており、上端面がカバー45の天面45a(+D3側の面)から露出している。フランジ部は、天面45a上に位置している。柱状部の上端面およびフランジ部によって、端子215の上面が構成されている。
柱状部およびフランジ部の具体的な形状および寸法は適宜に設定されてよい。フランジ部は設けられていなくてもよい。端子215の材料は、Cu等の適宜な金属とされてよい。部位(例えば、柱状部の内部、柱状部の外周面および端子215の上面)毎に材料が異なっていてもよい。パッド15は、第1実施形態ではバンプ41が接合される端子であり、第2実施形態では、端子215と接合されるものであるから、この相違に伴って、具体的な形状および材料が第1実施形態と異なっていてもよい。
(SAWチップの実装および封止)
SAWチップ203は、例えば、カバー45の天面45aを実装基体5の実装面5aに対向させて配置されている。また、複数の端子215と複数のランド39とは対向している。そして、端子215と、ランド39とは、その間に介在するバンプ41によって接合されている。これにより、SAWチップ203は、実装基体5に対して固定されるとともに、実装基体5と電気的に接続されている。
なお、図4では、ダミーの端子215(215Cおよび215D)とランド39との接続を図示しているが、SAW素子11と接続されている端子215(215Aおよび215B)とランド39との接続も図4と同様である。
実装基体5の実装面5aとカバー45の天面45aとは、例えば、ランド39、バンプ41、および端子215の天面45aからの突出量の合計の厚さで互いに離間しており、両者の間には隙間251が形成されている。
封止部7は、第1実施形態と同様に、SAWチップ203の上から実装面5aを覆っており、少なくともSAWチップ203の周囲において実装面5aに接合されている。これにより、SAWチップ3は封止されている。
また、封止部7は、隙間251には充填されていない(隙間251は、空間とされている。)。別の観点では、封止部7は、天面45aの半分以上または2/3以上の面積(図示の例では全面積)について天面45aに対して非接合とされている。隙間251内は、真空とされていてもよいし、適宜な気体が封入されていてもよい。
封止部7は、第1実施形態と同様に、第2主面9bの大部分(図示の例では全面)に接合されている。一方で、封止部7は、例えば、チップ基板9の外周面9cとカバー45の外周面(符号省略)とを合わせたSAWチップ203全体としての外周面に対して、その半分以上または2/3以上の面積(図示の例では全面積)について非接合(例えば離間している状態)とされている。また、非接合とされる領域は、例えば、少なくともSAWチップ203全体としての外周面のうちのカバー45側の領域を含む。なお、封止部7は、第1実施形態と同様に、チップ基板9の外周面9cの半分以上または2/3以上の面積について、外周面9cに対して非接合とされていてもよい。
(SAW装置の製造方法)
SAW装置201の製造方法は、カバー45および端子215を設ける工程以外は、第1実施形態と同様とされてよい。封止部7をSAWチップ203の一部に対して非接合とする方法も、第1実施形態と同様に、例えば、粘度を高くする方法または犠牲層を設ける方法とされてよい。カバー45および端子215の形成方法は、公知の種々の方法と同様とされてよい。
以上のとおり、本実施形態では、SAW装置201は、SAWチップ203と、実装基体5と、封止部7と、を有している。実装基体5は、SAWチップ203が実装されている実装面5aを有している。封止部7は、SAWチップ203の上から実装面5aを覆っている。SAWチップ203は、チップ基板9と、励振電極(IDT電極23)と、カバー45とを有している。カバー45は、IDT電極23上に振動空間243を構成しつつIDT電極23を封止している。SAWチップ203は、カバー45の天面45aと実装面5aとが隙間を介して対向している状態で、実装基体5に実装されている。封止部7は、チップ基板9よりも線膨張係数が大きく、かつ第2主面9bに接合されているとともに、天面45aの半分以上の面積について、天面45aに対して非接合である。
ここで、通常、WLP型のSAW装置においては、実装面5aとカバー45の天面45aとの隙間251にも封止樹脂が充填される。この場合、封止樹脂は、チップ基板9よりも線膨張係数が大きいから、SAW装置が熱膨張するときには、隙間251内の封止樹脂からカバー45を介して第1主面9aへ、第1主面9aの膨張を助長する引張力が加えられることになる。しかし、本実施形態では、封止部7がカバー45の天面45aに対して非接合とされていることから、そのような引張力がチップ基板9に加えられるおそれが低減される。ひいては、SAWチップ203の周波数特性の変化が低減される。
(封止部の変形例)
図5(a)〜図7(b)を参照して、封止部の種々の変形例について説明する。なお、これらの図は、基本的に、SAWチップの1つの側面を示す断面図であるが、SAWチップの全周(例えば4つの側面)について、図示と同様の構成が採用されてよい。
図5(a)の変形例では、2つのSAWチップ3が互いに隣り合って実装基体5の実装面5aに実装されている。2つのSAWチップ3の外周面9c(側面9d)は、隙間53を介して互いに対向している。その隙間53には、封止部7が充填されていない。換言すれば、封止部7は、各SAWチップ3の外周面9cの半分以上の面積について外周面9cに対して非接合とされている。
このような構成では、封止部7となる封止樹脂をSAWチップ3の上から実装面5a上に供給したときに、隙間53に封止樹脂が入り込みにくいことを利用して、封止部7を外周面9cに対して非接合とすることができる。すなわち、封止部7と外周面9cとの非接合の実現が容易化される。封止樹脂を入り込みにくくさせるために必要な2つのSAWチップ3の間隔(隙間53の大きさ)は、封止部7の材料の粘度等にもよるが、例えば、実装基体5の外周とSAWチップ3との距離よりも小さくすればよい。またSAWチップの厚みよりも小さくしてもよい。
なお、図示の例では、SAWチップ3同士を隣り合わせているが、一方のSAWチップ3に代えて、他の電子部品が実装されてもよい。他の電子部品は、例えば、IC、または隙間53を構成することなどを目的として設けられたダミーの電子部品である。
図5(b)および図5(c)それぞれの変形例では、チップ基板9の外周面9c(側面9d)の形状が実施形態と相違する。すなわち、これらの変形例では、外周面9cは、第2主面9b側部分が第1主面9a側よりも外側に位置する形状とされている。
具体的には、図5(b)の例では、外周面9cは、第2主面9b側ほど外側に位置するように傾斜面とされている。このような形状は、例えば、チップ基板9が多数個取りされる母基板を第2主面9bに対して斜めにダイシングすることによって実現される。
また、図5(c)の例では、外周面9cは、第2主面9b側の端部に、外側に突出する突部(符号省略)を有している。このような形状は、例えば、チップ基板9が多数個取りされる母基板のダイシングを2回に分けて行うことによって実現される。具体的には、例えば、第1主面9a側から途中までダイシングを行い、次に、ブレード厚を薄くして残りのダイシングを行ってよい。
図5(b)および図5(c)に示す構成では、封止部7となる封止樹脂をSAWチップ3の上から実装面5a上に供給したときに、外周面9cの第2主面9b側の部分の下(第1主面9a側)に封止樹脂が入り込みにくいことを利用して、封止部7を外周面9cの第1主面9a側の部分に対して非接合とすることができる。すなわち、封止部7と外周面9cとの非接合の実現が容易化される。
なお、図5(a)〜図5(c)では、CSP型のSAW装置を例に取っているが、これらの変形例の構成は、WLP型のSAW装置に適用されてもよい。
図6(a)の変形例では、封止部7とSAWチップ203の外周面(符号省略)および天面45aとの間に粉体55が介在している。これにより、封止部7とSAWチップ203の外周面および天面45aとは、非接合とされている。
図示の例では、粉体55は、封止部7とSAWチップ203との間に介在する層を構成している。ただし、粉体55は、これよりも少量で配置されてもよい。例えば、粉体55は、図示のような断面視において視認が困難であってもよく、ひいては、封止部7とSAWチップ203(外周面および/または天面45a)とは接触しているように見えてもよい。
粉体55としては、例えば、モールド樹脂の離型に利用される粉状の離型剤を用いてよい。また、粉体55は、例えば、封止部7となる封止樹脂が供給される前に、スプレイ装置等によってSAWチップ203に塗布されてよい。
このような構成においても、例えば、第1主面9aの熱膨張を助長する引張力がチップ基板9の外周面9cおよび/またはカバー45の天面45aに加えられるおそれが低減される。
なお、粉体55が上記よりも少量で配置されることなどにより、封止部7とSAWチップ203の外周面および/または天面45aとは、粉体55によって接合強度が低くされているものの、互いに接合されていてもよい。すなわち、封止部7は、SAWチップ203の外周面および/または天面45aに対する接合強度が、第2主面9bに対する接合強度よりも低くされている状態であってもよい。
この場合、例えば、比較的大きな熱応力が生じたときに、封止部7とSAWチップ203の外周面および/または天面45aとが剥離して、両者が非接合の状態となることが期待される。ひいては、製造直後から非接合とされた場合と同様の効果が期待される。なお、離型剤は紛体55に限定されることはなく、封止部7との接着強度の弱い層で覆うように膜を形成してもよいし、封止部7との接着強度の弱い官能基を修飾させてもよい。
図6(b)の変形例では、封止部301は、第2主面9bに接合されている第1部分303と、SAWチップ203(チップ基板9)を囲んでいる第2部分305とが互いに異なる材料によって構成されている。第2部分305の材料は、第1部分303の材料に比較して、例えば、ヤング率と線膨張係数との積が小さい。第1部分303の材料および第2部分305の材料は、例えば、互いに組成および/または成分が異なる樹脂である。
従って、例えば、第2部分305は、第1部分303と同じ材料によって構成された場合に比較して、チップ基板9に及ぼす熱応力が小さい。その結果、実施形態と同様に、第1主面9aの熱膨張を助長するチップ基板9の撓み変形を第1部分303の熱膨張によって抑制する一方で、第1主面9aの熱膨張を助長する引張力が第2部分305からチップ基板9に付与されるおそれを低減できる。
図6(c)は、封止部301の材料の一例を示す模式図であり、図6(b)の領域VIcの拡大図に相当している。
この図に示すように、第2部分305の材料として、発泡性の樹脂が用いられてもよい。第2部分305に気孔307が存在することによって、第2部分305の、気孔307を含めた全体としてのヤング率は小さくなりやすい。なお、このように第2部分305の材料として発泡性のものを用いる場合、樹脂自体(気孔307以外の部分)の材料は、第1部分303の材料と同じであってもよい。
第1部分303および第2部分305の材料を互いに異ならせる場合において、ヤング率と線膨張係数との積の相違に加えて、または代えて、第2部分305の材料は、第1部分303の材料よりも外周面9cおよび/または天面45aに対する接合強度が低い材料とされてもよい。
この場合、例えば、比較的大きな熱応力が生じたときに、封止部7とSAWチップ203の外周面および/または天面45aとが剥離して、両者が非接合の状態となることが期待される。ひいては、製造直後から非接合とされた場合と同様の効果が期待される。
図6(c)の例では、気孔307によって、第2部分305の接着面積が減じられ、ひいては、接合強度が低くなる。従って、発泡性の樹脂は、第1部分303の材料よりも外周面9cおよび/または天面45aに対する接合強度が低い材料の例として捉えられてもよい。もちろん、樹脂自体の組成および/または成分によって、第2部分305の材料は、接合強度が低くされていてもよい。
なお、図6(a)〜図6(c)では、WLP型のSAW装置を例に取っているが、これらの変形例の構成は、CSP型のSAW装置に適用されてもよい。
WLP型のSAW装置においては、封止部7(または封止部301)が、カバー45の天面45aに対して非接合であるか、天面45aに対する接合強度が第2主面9bに対する接合強度に対して低ければよい。
従って、例えば、図7(a)および図7(b)それぞれに示すように、封止部7は、チップ基板9の外周面9c(またはSAWチップ203の全体としての外周面)に対して、その半分以上の面積に亘って接合されていてもよい。なお、図示の例では、封止部7は、カバー45の側面に対して非接合とされているが、カバー45の側面に対しても接合されていてもよい。
また、図7(b)の変形例では、封止部7は、カバー45の天面45aと実装基体5の実装面5aとの間に配置されつつも、天面45aとの間に空間を構成して天面45aと非接合とされている。なお、CSP型のSAW装置においても、封止部7は、第1主面9aと実装面5aとの間に配置されつつも、第1主面9aとの間に空間を構成してもよい。
また、上述の例では、支持基板21と圧電基板19との平面視における外形が略一致する場合を例に説明しているが、その限りではない。例えば、平面視で支持基板21の外周よりも内側に圧電基板19が位置するようにしてもよい。この場合には、例えば、WLP型のカバー45を設ける場合には、その枠部47は、圧電基板19から露出する支持基板21上に配置されていてもよい。
チップ基板9のうち、支持基板21の主面(第2主面9b)において封止部7とリジッドに接合され、側面において、封止部7からの引張強度を弱めることができれば、温度補償効果を奏することができる。このため、上述の構成とした場合にも、同様に温度補償効果を奏するものとなる。
(SAW素子の他の例1)
図8は、圧電基板19上に構成されるSAW素子11の他の例を示す平面図である。なお、符号は付さないが、紙面の何も描かれていない領域は、圧電基板19の第1主面9aに相当する。
この例では、SAW素子11は、多重モード(本開示ではダブルモードを含むものとする。)型のSAWフィルタ317によって構成されている。圧電基板19上には、端子15E〜15Gおよび15GND(以下、E〜GおよびGNDを省略することがある。)が設けられており、SAWフィルタ317は、これらに接続されている。
SAWフィルタ317は、例えば、端子15Eから入力された信号をフィルタリングして、端子15Fおよび15Gから出力するように構成されている。端子15Eから入力される信号は、例えば、基準電位に対する電位差を信号強度とする不平衡信号である。端子15Fおよび15Gから出力される信号は、例えば、両者の電位差を信号強度とする平衡信号である。なお、入力側と出力側とは上記と逆であってもよいし、入力信号または出力信号を不平衡信号および平衡信号のいずれとするかも任意である。
端子15GNDは、基準電位が付与される端子である。なお、図8では、基準電位点を示す記号で端子15GNDを示している。端子15E〜15Gおよび15GNDは、例えば、図1の端子15と同様の構成である。
SAWフィルタ317は、例えば、D1軸方向に配列された複数(図示の例では5つ)のIDT電極323A〜323Eと、その両側に位置している1対の反射器25とを有している。
通常の多重モード型SAWフィルタにおいては、図1を参照して説明した構成のIDT電極23が1対の反射器25の間に配列される。そして、各IDT電極23においては、1対の櫛歯電極27の一方が入力用の端子15Eまたは出力用の端子15Fもしくは15Gに接続され、1対の櫛歯電極27の他方が基準電位用の端子15GNDに接続される。
SAWフィルタ317においても、IDT電極323Aおよび323Eは、例えば、基本的に(例えば電極指のピッチ、本数および長さ等の具体的な設計値を除いて。以下、同様。)、上記の通常の多重モード型SAWフィルタのIDT電極と同様である。具体的には、例えば、IDT電極323Aは、一方の櫛歯電極27が端子15Fと接続されており、他方の櫛歯電極27が端子15GNDと接続されている。IDT電極323Eは、例えば、一方の櫛歯電極27が端子15Gと接続されており、他方の櫛歯電極27が端子15GNDと接続されている。なお、1対の反射器25も、図1を参照して説明した反射器25と同様である。ここでは、反射器25は、模式的に矩形で示されている。
一方、SAWフィルタ317においては、IDT電極323B〜323Dは、D1軸方向において2つに分割されており、端子15に対する接続も上記の通常のSAWフィルタとは異なる。具体的には、例えば、以下のとおりである。
IDT電極323Bは、D1軸方向において互いに隣り合っている分割IDT電極324Aおよび324B(以下、AおよびBを省略することがある。)を有している。各分割IDT電極324の構成は、基本的に、図1を参照して説明したIDT電極23の構成と同様である。すなわち、各分割IDT電極324は、互いに噛み合っている1対の櫛歯電極27を有している。
分割IDT電極324Aの+D2側の櫛歯電極27は、入力用の端子15Eに接続されている。分割IDT電極324Aの−D2側の櫛歯電極27および分割IDT電極324Bの−D2側の櫛歯電極27は、いずれの端子15にも接続されておらず、電気的に浮遊状態とされており、また、互いに接続されている。両者の接続は、例えば、両者のバスバー29が互いに直線状につながって、1本のバスバーのようになっていることによって実現されている。分割IDT電極324Bの+D2側の櫛歯電極27は、基準電位用の端子15GNDに接続されている。
従って、IDT電極323Bは、全体としては、通常のIDT電極23と同様に、入力用(出力用でもよい)の端子15Eと、基準電位用の端子15GNDとに接続されている。一方で、IDT電極323Bは、2つに分割されることにより、端子15Eと15GNDとの間に、電気的に浮遊状態の2つの櫛歯電極27を含んでいる。
IDT電極323Dは、基本的に、IDT電極323Bと同様の構成である。すなわち、IDT電極323Dは、D1軸方向において互いに隣り合っている分割IDT電極324Cおよび324D(以下、CおよびDを省略することがある。)を有している。分割IDT電極324Cの+D2側の櫛歯電極27は、入力用の端子15Eに接続されている。分割IDT電極324Cの−D2側の櫛歯電極27および分割IDT電極324Dの−D2側の櫛歯電極27は、いずれの端子15にも接続されておらず、電気的に浮遊状態とされており、また、互いに接続されている。分割IDT電極324Dの+D2側の櫛歯電極27は、基準電位用の端子15GNDに接続されている。
IDT電極323Cは、IDT電極323Bと同様に、D1軸方向において互いに隣り合っている分割IDT電極324Eおよび324F(以下、EおよびFを省略することがある。)を有している。ただし、IDT電極323Cは、端子15に対する接続態様がIDT電極323Bと相違する。
具体的には、分割IDT電極324Eの−D2側の櫛歯電極27は、出力用(入力用であってもよい)の端子15Fに接続されている。分割IDT電極324Eの+D2側の櫛歯電極27および分割IDT電極324Fの+D2側の櫛歯電極27は、いずれの端子15にも接続されておらず、電気的に浮遊状態とされており、また、互いに接続されている。分割IDT電極324Fの−D2側の櫛歯電極27は、出力用(入力用であってもよい)の端子15Gに接続されている。
従って、IDT電極323Cは、全体としては、不平衡信号用の2つの端子15Fおよび15Gに接続されている。一方で、IDT電極323Cは、2つに分割されることにより、端子15Fと15Gとの間に、電気的に浮遊状態の櫛歯電極27を含んでいる。
IDT電極323B〜323Dそれぞれにおいて、2つの分割IDT電極324の交差幅は、例えば、互いに同一である。複数のIDT電極323の交差幅は、例えば、互いに同一である。ただし、いわゆるアポダイズが施されていてもよい。
互いに隣り合う2つのIDT電極323において、端部の電極指31同士のピッチは、例えば、各IDT電極323内における電極指31のピッチと概ね同等である。互いに接続される浮遊状態の2つの櫛歯電極27(例えば分割IDT電極324Aの+D2側の櫛歯電極27および分割IDT電極324Bの+D2側の櫛歯電極27)は、例えば、端部の電極指31同士がSAWの半波長の奇数倍の大きさのピッチで隣接している。ただし、両者のピッチは、SAWの半波長の偶数倍であってもよいし、適宜に調整された大きさ(半波長の奇数倍でも偶数倍でもない大きさ)であってもよい。
IDT電極323B〜323Dそれぞれにおいて、4つの櫛歯電極27のうち、電気的に浮遊状態とされる2つの櫛歯電極27は、D2軸方向の互いに同一側に位置している。例えば、IDT電極323Bにおいては、電気的に浮遊状態とされる櫛歯電極27は、いずれも−D2側に位置しており、端子15Eまたは15GNDに接続される櫛歯電極27は+D2側に位置している。
このような構成では、例えば、端子15とSAWフィルタ317とを接続する配線の立体交差の必要性を低減する効果が奏される。例えば、図示の例では、IDT電極323Bを挟んでIDT電極323AとIDT電極323Cとが設けられている。IDT電極323Aの−D2側の櫛歯電極27およびIDT電極323Cの−D2側の櫛歯電極27は、共に端子15Fに接続されている。従って、IDT電極323Bの−D2側には、IDT電極323AからIDT電極323Cまで延びる配線13Fが形成されることになる。ここで、仮に、IDT電極323Bにおいて、端子15Eまたは15GNDに接続される櫛歯電極27が−D2側に位置しているとすれば、当該接続のための配線と、配線13Fとを立体交差させなければならない。しかし、IDT電極323Bにおいて、端子15に接続されずに浮遊状態とされる2つの櫛歯電極27のいずれも−D2側に位置していることから、そのような必要性は低減される。IDT電極323Bを例に挙げたが、IDT電極323Cおよび323Dについても同様の効果が奏される。
以上のとおり、SAW素子11としてSAWフィルタ317を有するSAW装置またはSAWチップは、第1〜第3端子(例えば端子15E、15F、15GND)と、第1主面9a上にてSAWの伝搬方向(D1軸方向)に配列されている複数のIDT電極323と、複数のIDT電極323に対してD1軸方向の両側に位置している1対の反射器25と、を有している。複数のIDT電極323は、第1端子(例えば端子15E)および第3端子(例えば端子15GND)に接続されている第1IDT電極(例えばIDT電極323B)と、IDT電極323Bと隣り合っており、第2端子(例えば端子15F)に接続されている第2IDT電極(例えばIDT電極323C)と、を有している。IDT電極323Bは、D1軸方向に互いに隣り合っている第1分割IDT電極(例えば分割IDT電極324A)および第2分割IDT電極(例えば分割IDT電極324B)を有している。分割IDT電極324Aは、端子15Eに接続されている第1櫛歯電極(分割IDT電極324Aの+D2側の櫛歯電極27)と、これと噛み合っており、いずれの端子にも電気的に接続されておらず、電気的に浮遊状態となっている第2櫛歯電極(分割IDT電極324Aの−D2側の櫛歯電極27)と、を有している。分割IDT電極324Bは、第2櫛歯電極(分割IDT電極324Aの−D2側の櫛歯電極27)に接続されている、電気的に浮遊状態の第3櫛歯電極(分割IDT電極324Bの−D2側の櫛歯電極27)と、これと噛み合っており、端子15GNDに接続されている第4櫛歯電極(分割IDT電極324Bの+D2側の櫛歯電極27)と、を有している。
従って、例えば、端子15Eに高い電圧が印加されたとしても、この電圧に起因する振動強度を2つの分割IDT電極324に分散し、振動強度を半分程度にすることができる。その結果、例えば、IDT電極323の耐電圧性が向上する。当該効果は、例えば、後述するマルチプレクサにおいて、端子15Eがアンテナに接続される受信フィルタをSAWフィルタ317が構成している場合に有用性が増大する。送信フィルタからの相対的に高い電圧が端子15Eに印加されるからである。また、当該効果は、送信フィルタの通過帯域と受信フィルタの通過帯域との周波数間隔が狭い場合に有用性が増大する。送信フィルタから受信フィルタへ流れる信号の周波数と、受信フィルタの共振周波数とが近くなりやすく、ひいては、振動強度が大きくなりやすいからである。
なお、特に図示しないが、分割されるIDT電極323(またはアンテナに接続されるIDT電極323)は、SAWフィルタ317に直列に接続されるSAW共振子17(ここでは不図示)のIDT電極23に比較して、容量が大きくされてもよい。この場合、例えば、SAWフィルタ317に印加される分圧を相対的に小さくして、耐電圧性を向上させることができる。
また、送信フィルタの通過帯域が受信フィルタの通過帯域よりも低周波側に位置する場合に、分割されるIDT電極323(またはアンテナに接続されるIDT電極323)は、他のIDT電極323に比較して、電極指31のピッチ(各IDT電極323においてピッチが一定でない場合は最大値)が小さくされてもよい。この場合、例えば、アンテナに接続されるIDT電極323の共振周波数を送信フィルタの通過帯域から離して、アンテナに接続されるIDT電極323における、送信フィルタからの信号に起因する振動強度を低くすることができる。
また、本例では、複数のIDT電極323は、第1IDT電極(例えばIDT電極323B)に対して第2IDT電極(例えばIDT電極323C)とは反対側に位置している第3IDT電極(例えばIDT電極323A)をさらに含んでいる。IDT電極323CおよびIDT電極323Aは、それぞれ、第2端子(例えば端子15F)に接続されている第5櫛歯電極(−D2側の櫛歯電極27)と、第5櫛歯電極に噛み合っている第6櫛歯電極(+D2側の櫛歯電極27)と、を有している。浮遊状態の第2櫛歯電極(分割IDT電極324Aの−D2側の櫛歯電極27)および浮遊状態の第3櫛歯電極(分割IDT電極324Bの−D2側の櫛歯電極27)ならびに第5櫛歯電極は、これらと噛み合う第1櫛歯電極(分割IDT電極324Aの+D2側の櫛歯電極27)、第4櫛歯電極(分割IDT電極324Bの+D2側の櫛歯電極27)および第6櫛歯電極に対して、SAWの伝搬方向に直交する方向(D2軸方向)の同一側(−D2側)に位置している。
すなわち、同一の端子15Fに接続される2つの櫛歯電極27(IDT電極323Aおよび323Cの−D2側の櫛歯電極27)の間に位置する櫛歯電極27(分割IDT電極324Aおよび324Bの−D2側の櫛歯電極27)は、いずれの端子15にも接続される必要がない浮遊状態の櫛歯電極27である。従って、例えば、既に述べたように、立体配線の必要性を低減することができる。
(SAW素子の他の例2)
図9(a)は、圧電基板19上に構成されるSAW素子11のさらに他の例を示す平面図である。
この例では、SAW素子11は、図8の例と同様に、多重モード型のSAWフィルタ417によって構成されている。SAWフィルタ417は、図8のSAWフィルタ317と同様に、1対の反射器25の間に、複数(図示の例では5つ)のIDT電極423A〜423E(以下、A〜Eを省略することがある。)を有している。
IDT電極423A、423Cおよび423Eは、基本的に、SAWフィルタ317のIDT電極323A、323Cおよび323Eと同様の構成である。これらのIDT電極423の端子15に対する接続関係も、SAWフィルタ317における接続関係と同様である。
また、IDT電極423Bおよび423Dは、SAWフィルタ317のIDT電極323Bおよび323Dと同様に、それぞれ分割されている。また、これらのIDT電極423は、全体としては、入力用の端子15Eと基準電位用の端子15GNDとに接続されており、また、その間に電気的に浮遊状態の部分を有している。
ただし、IDT電極323Bおよび323DがD1軸方向に分割されていたのに対して、IDT電極423Bおよび423Dは、D2軸方向に分割されている。具体的には、例えば、以下のとおりである。
IDT電極423Bは、D2軸方向において互いに隣り合っている分割IDT電極424Aおよび424B(以下、AおよびBを省略することがある。)を有している。各分割IDT電極424の構成は、基本的には、図1を参照して説明したIDT電極23の構成と同様である。すなわち、各分割IDT電極424は、互いに噛み合っている1対の櫛歯電極27を有している。
分割IDT電極424Aの+D2側の櫛歯電極27は、入力用の端子15Eに接続されている。分割IDT電極424Aの−D2側の櫛歯電極27および分割IDT電極424Bの+D2側の櫛歯電極27は、いずれの端子15にも接続されておらず、電気的に浮遊状態とされており、また、互いに接続されている。両者の接続は、例えば、両者のバスバー29が共通化されていることによって実現されている。分割IDT電極424Bの−D2側の櫛歯電極27は、基準電位用の端子15GNDに接続されている。
IDT電極423Dは、基本的に、IDT電極423Bと同様の構成である。すなわち、IDT電極423Dは、D1軸方向において互いに隣り合っている分割IDT電極424Cおよび424D(以下、CおよびDを省略することがある。)を有している。分割IDT電極424Cの+D2側の櫛歯電極27は、入力用の端子15Eに接続されている。分割IDT電極424Cの−D2側の櫛歯電極27および分割IDT電極424Dの+D2側の櫛歯電極27は、いずれの端子15にも接続されておらず、電気的に浮遊状態とされており、また、互いに接続されている。分割IDT電極424Dの−D2側の櫛歯電極27は、基準電位用の端子15GNDに接続されている。
IDT電極423Bおよび423Dそれぞれにおいて、電気的に浮遊状態とされる2つの櫛歯電極27は、例えば、電極指31のD1軸方向の位置がSAWの半波長で互いにD1軸方向にずらされている。ただし、図9(b)に示す変形例のように、両者の電極指31のD1軸方向の位置は、互いに同一の位置とされてもよい。また、IDT電極423Bおよび423Dそれぞれにおいて、2つの分割IDT電極424の交差幅は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
IDT電極423Bまたは423Dに対して隣り合っているIDT電極423A、423Cまたは423Eは、D2軸方向において分割されていない。従って、SAWフィルタ417においては、D2軸方向に分割されているIDT電極423と、分割されていないIDT電極423とが混在している。
以上のとおり、SAW素子11としてSAWフィルタ417を有するSAW装置またはSAWチップは、第1〜第3端子(例えば端子15E、15F、15GND)と、第1主面9a上にてSAWの伝搬方向(D1軸方向)に配列されている複数のIDT電極423と、複数のIDT電極423に対してD1軸方向の両側に位置している1対の反射器25と、を有している。複数のIDT電極423は、第1端子(例えば端子15E)および第3端子(例えば端子15GND)に接続されている第4IDT電極(例えばIDT電極423B)と、IDT電極423Bと隣り合っており、第2端子(例えば端子15F)に接続されている第5IDT電極(例えばIDT電極423A)と、を有している。IDT電極423Aは、第7櫛歯電極(例えば+D2側の櫛歯電極27)と、これと噛み合っている第8櫛歯電極(例えば−D2側の櫛歯電極27)と、を有している。IDT電極423Bは、第7櫛歯電極および第8櫛歯電極の、伝搬方向に直交する方向の一方側(+D2側)部分に対して、伝搬方向(D1軸方向)に位置している第3分割IDT電極(例えば分割IDT電極424A)と、第7櫛歯電極および第8櫛歯電極の、伝搬方向に直交する方向の他方側(−D2側)部分に対して、D1軸方向に位置している第4分割IDT電極(例えば分割IDT電極424B)と、を有している。分割IDT電極424Aは、端子15Eに接続されている第9櫛歯電極(+D2側の櫛歯電極27)と、これと噛み合っており、いずれの端子15にも電気的に接続されておらず、電気的に浮遊状態となっている第10櫛歯電極(−D2側の櫛歯電極27)と、を有している。分割IDT電極424Bは、第10櫛歯電極に接続されている、電気的に浮遊状態の第11櫛歯電極(+D2側の櫛歯電極27)と、これと噛み合っており、端子15GNDに接続されている第12櫛歯電極(−D2側の櫛歯電極27)と、を有している。
このような構成においても、例えば、SAWフィルタ317と同様に、端子15Eに高い電圧が印加されたとしても、この電圧に起因する振動強度を2つの分割IDT電極424に分散し、振動強度を半分程度にすることができる。その結果、例えば、IDT電極423の耐電圧性が向上する。
(導体層の構造の例)
図10(a)は、圧電基板19上の導体層の構造の一例を示す模式的な断面図であり、図1のXa−Xa線に対応している。
この例では、IDT電極23、配線13および端子15(パッド)は、互いに異なる厚さにされている。また、別の観点では、圧電基板19上には、複数の導体層が積層されており、部位毎に積層数が異なっている。具体的には、例えば、以下のとおりである。
SAW装置1は、例えば、圧電基板19側から順に、互いに積層された第1導体層57、第2導体層59および第3導体層61を有している。IDT電極23(および反射器25)は、例えば、第1導体層57によって構成されている。配線13は、例えば、第1導体層57および第2導体層59によって構成されている。端子15は、例えば、第1導体層57、第2導体層59および第3導体層61によって構成されている。
(第1導体層)
第1導体層57は、上記のようにIDT電極23および反射器25を構成している。既に述べたように、IDT電極23および反射器25の厚さは、例えば、SAWに係る特性に応じて適宜に設定される。一例を挙げると、第1導体層57の厚さは、概略、50nm以上600nm以下である。
第1導体層57は、例えば、複数の導体層が積層されて構成されている。例えば、第1導体層57は、圧電基板19側から順に、第1下地層57aおよび第1主導体層57bを有している。
第1主導体層57bの厚さは、例えば、第1導体層57の厚さの大部分(例えば8割以上)を占めている。厚さの一例を挙げると、第1主導体層57bの厚さは、50nm以上600nm以下であり、第1下地層57aの厚さは、3nm以上15nm以下である。
第1主導体層57bは、例えば、比較的電気抵抗率が低い(例えば第1下地層57aの材料よりも電気抵抗率が低い)金属によって構成されてよい。例えば、当該金属は、Al、Cuまたはこれらの少なくとも1つを主成分とする合金とされてよい。合金は、例えば、Al−Cu合金である。なお、主成分は、50質量%以上または80質量%以上の成分である(以下、同様。)。
第1下地層57aを構成する材料としては、例えば、第1主導体層57bを直接に圧電基板19に重ねた場合に比較して、第1下地層57aの介在によって第1主導体層57bの圧電基板19からの剥離に対する強度が向上する金属が選択されてよい。例えば、第1主導体層57bの材料が上記に例示したものである場合において、第1下地層57aを構成する材料は、TiまたはTiを主成分とする合金とされてよい。
(第2導体層)
第2導体層59は、例えば、第1導体層57よりも厚く形成されている。これにより、例えば、断線のおそれを低減したり、電気抵抗を低減したりできる。厚さの一例を挙げると、第2導体層59の厚さは、概略、500nm以上6μm以下、または1μm以上3μm以下である。別の観点では、第2導体層59の厚さは、例えば、第1導体層57の厚さの2倍以上30倍以下である。
第2導体層59は、例えば、複数の導体層が積層されて構成されている。例えば、第2導体層59は、圧電基板19側から順に、第2下地層59a、第2主導体層59bおよび第2被覆層59cを有している。
第2主導体層59bの厚さは、例えば、第2導体層59の厚さの大部分(例えば8割以上)を占めている。厚さの一例を挙げると、例えば、第2主導体層59bの厚さは、500nm以上6μm以下、または1μm以上3μm以下である。第2下地層59aの厚さは、5nm以上20nm以下である。第2被覆層59cの厚さは、5nm以上20nm以下である。
第2主導体層59bは、例えば、比較的電気抵抗率が低い(例えば第2下地層59aおよび/または第2被覆層59cの材料よりも電気抵抗率が低い)金属によって構成されてよい。例えば、当該金属は、Al、Cuまたはこれらの少なくとも1つを主成分とする合金である。合金は、例えば、Al−Cu合金とされてよい。
第2下地層59aを構成する材料としては、例えば、第2主導体層59bを直接に第1導体層57(第1主導体層57b)に重ねた場合に比較して、第2下地層59aの介在によって両者の剥離に対する強度が向上する金属が選択されてよい。例えば、第2主導体層59bの材料が上記に例示したものである場合において、第2下地層59aを構成する材料は、TiまたはTiを主成分とする合金とされてよい。
第2被覆層59cを構成する材料としては、例えば、第2主導体層59bよりも耐食性が高い金属が選択されてよい。例えば、第2主導体層59bの材料が上記に例示したものである場合において、第2被覆層59cを構成する金属は、TiまたはTiを主成分とする合金やCrまたはCrを主成分とする合金とされてよい。
(第3層体層)
第3導体層61は、例えば、第1導体層57よりも厚く形成されている。また、第3導体層61は、第2導体層59に対して、薄くてもよいし、同等の厚さでもよいし、厚くてもよい。第3導体層61の厚さは、第3導体層61上に設けられるバンプ41(はんだ)または柱状の端子215との接合強度等の観点から適宜に設定されてよい。厚さの一例を挙げると、第3導体層61の厚さは、概略、500nm以上2μm以下である。
第3導体層61は、例えば、複数の導体層が積層されて構成されている。例えば、第3導体層61は、圧電基板19側から順に、第3下地層61a、第3主導体層61bおよび第3被覆層61cを有している。
第3主導体層61bの厚さは、例えば、第3導体層61の厚さの大部分(例えば8割以上)を占めている。厚さの一例を挙げると、例えば、第3主導体層61bの厚さは、500nm以上2μm以下である。第3下地層61aの厚さは、5nm以上20nm以下である。第3被覆層61cの厚さは、50nm以上200nm以下である。
第3主導体層61bは、例えば、比較的電気抵抗率が低い(例えば第3下地層61aおよび/または第3被覆層61cの材料よりも電気抵抗率が低い)、および/またはバンプ41となるはんだとの接合強度が相対的に高い金属によって構成されてよい。例えば、当該金属は、Ni、Cuまたはこれらの少なくとも1つを主成分とする合金とされてよい。
第3下地層61aを構成する材料としては、例えば、第3主導体層61bを直接に第2導体層59(第2主導体層59b)に重ねた場合に比較して、第3下地層61aの介在によって両者の剥離に対する強度が向上する金属が選択されてよい。例えば、第3主導体層61bの材料が上記に例示したものである場合において、第3下地層61aを構成する材料は、TiまたはTiを主成分とする合金や、CrまたはCrを主成分とする合金とされてよい。
第3被覆層61cを構成する材料としては、例えば、第3主導体層61bよりも耐食性が高い、および/またはバンプ41となるはんだの濡れ性が第3主導体層61bよりも高い材料が選択されてよい。例えば、第3主導体層61bの材料が上記に例示したものである場合において、第3被覆層61cを構成する金属は、Au、Agまたはこれらの少なくとも1つを主成分とする合金とされてよい。
なお、平面視において、第3下地層61a、第3主導体層61bおよび第3被覆層61cは、互いに同一の形状および大きさであってもよいし、若干異なっていてもよい。図示の例では、第3下地層61aは、第3主導体層61bおよび第3被覆層61cよりも小さくされており、第3主導体層61bは、外縁側の一部が第2導体層59(第2被覆層59c)に直接に重なっている。特に図示しないが、第3被覆層61cが第3主導体層61bよりも広くされ(第3主導体層61bの全体を覆い)、その外縁側の一部が第2導体層59(第2被覆層59c)に直接に重なっていてもよい。
(パッドにおけるめり込み)
断面視において、第3導体層61の下面側(第2導体層59側)の一部は、第2導体層59の上面側(第3導体層61側)の一部にめり込んでいる。別の観点では、第2導体層59は、端子15の位置に、第2被覆層59cの非配置領域が設けられており、第3導体層61(第3下地層61a)は、第2主導体層59bに直接に重なっている。
第3導体層61が第2導体層59にめり込む広さ(平面視における広さ)は、端子15と同等の広さであってもよいし、端子15よりも狭くてもよく(図示の例)、また、後者の場合の広さおよび平面形状は適宜に設定されてよい。例えば、めり込む広さは、端子15の広さ(第3導体層61を構成する複数の導体層(61a〜61c)の広さが互いに異なる場合は、例えば第3主導体層61bの広さ)の5割以上または8割以上である。
第3導体層61が第2導体層59にめり込む深さは、第2被覆層59cおよび/または第3下地層61aの厚さよりも深くてもよいし、同等でもよい。また、当該深さは、第2主導体層59bの厚さよりも浅く、例えば、第2主導体層59bの厚さの2割以下または1割以下である。
図示の例では、第3導体層61は、第2被覆層59cを貫通して第2主導体層59bにめり込んでいる。ただし、例えば、第3導体層61は、第2被覆層59cを貫通するだけで、第2主導体層59bにめり込んでいなくてもよい。
図10(b)は、第2導体層59および第3導体層61の形状の他の例を示す図であり、図10(a)の領域Xbに相当する領域の拡大図である。
この図に示すように、第3主導体層61bは、外縁側ほど徐々に薄くなる形状とされていてもよい。また、この場合に、第3被覆層61cは、第3主導体層61bの全体を覆っていてもよいし、図示の例とは異なり、第3主導体層61bの外縁を覆っていなくてもよいし、第3主導体層61bの外縁よりもさらに外側まで広がって第2導体層59に接合されていてもよい。
第3導体層61が第2導体層59にめり込む構造は、例えば、第2導体層59の形成後、かつ第3導体層61の形成前に、第2導体層59に対してエッチングを行って、第3導体層61がめり込む凹部を形成することによって実現されてよい。別の観点では、上記エッチングによって第2被覆層59cの一部(必要に応じて第2主導体層59bの上面の一部)を除去することによって実現されてよい。なお、各層の形成方法は、公知の種々の方法と同様でよい。
以上のとおり、図10(a)および図10(b)に示す導体層の構造例では、SAW装置またはSAWチップは、励振電極(IDT電極23)に接続されている、第1主面9a上の配線13と、配線13に接続されている、第1主面9a上のパッド15と、第1主面9a上に位置している配線導体層(例えば第2導体層59)と、第2導体層59上に位置しているパッド導体層(例えば第3導体層61)と、を有している。配線13は、その上面を含む少なくとも一部が第2導体層59によって構成されている(本例では、配線13の全部は第1導体層57および第2導体層59によって構成されている)。パッド15は、その上面を含む少なくとも一部が第2導体層59および第3導体層61によって構成されている(本例では、パッド15の全部は第1導体層57、第2導体層59および第3導体層61によって構成されている)。断面視において、第3導体層61の第2導体層59側の一部は、第2導体層59の第3導体層61側の一部にめり込んでいる。
従って、めり込みが生じていない場合に比較して、接合面積が大きくなる。ひいては、第3導体層61と第2導体層59との接合強度が向上し、SAWチップの機械的強度が向上する。また、本例では、電極導体層(第1導体層57)上に第3導体層61を重ねて第3導体層61を第1導体層57にめり込ませるのではなく、第1導体層57に比較して厚い第2導体層59を設け、この第2導体層59に第3導体層61をめり込ませている。従って、めり込みの深さを確保しやすい。
また、別の観点では、配線導体層(第2導体層59)は、第2主導体層59bと、第2主導体層59bよりも薄く、第2主導体層59bよりも電気抵抗率が大きい、第2主導体層59b上の第2被覆層59cと、を有している。パッド15の位置において、第2被覆層59cの非配置領域が設けられており、第3導体層61が第2主導体層59bに直接に接合されている。
従って、第3導体層61と第2主導体層59bとを直接に接続して、パッド15における電気抵抗を低減することができる。一方で、第2主導体層59bが露出する領域(例えば第3導体層61の非配置領域)においては、第2被覆層59cによって、第2主導体層59bの酸化を抑制することができる。
(分波器)
図11は、SAW装置の一例またはSAW装置の利用例としての分波器101(例えばデュプレクサ)の構成を模式的に示す回路図である。この図の紙面左上に示された符号から理解されるように、この図では、櫛歯電極27が二叉のフォーク形状によって模式的に示され、反射器25は両端が屈曲した1本の線で表わされている。
分波器101は、例えば、送信端子105からの送信信号をフィルタリングしてアンテナ端子103へ出力する送信フィルタ109と、アンテナ端子103からの受信信号をフィルタリングして1対の受信端子107に出力する受信フィルタ111とを有している。
送信フィルタ109は、例えば、いわゆるラダー型のSAWフィルタによって構成されている。すなわち、送信フィルタ109は、送信端子105とアンテナ端子103との間で、互いに直列に接続されている複数の直列共振子17S(1つとすることも可能である)と、その直列のラインと基準電位部(例えば端子15GND)とを接続している1以上の並列共振子17Pとを含んでいる。直列共振子17Sおよび並列共振子17Pそれぞれは、例えば、図1を参照して説明したSAW共振子17と同様の構成である。なお、直列共振子17Sおよび並列共振子17Pは、例えば、同一の圧電基板19(チップ基板9)に設けられている。
受信フィルタ111は、例えば、SAW共振子17と、このSAW共振子17に直列に接続されている多重モード型のSAWフィルタ113とを含んで構成されている。SAWフィルタ113は、弾性波の伝搬方向に配列された複数(図示の例では3つ)のIDT電極23と、その両側に配置された1対の反射器25とを有している。なお、受信フィルタ111を構成するSAW共振子17およびSAWフィルタ113は、例えば、同一の圧電基板19(チップ基板9)に設けられている。
分波器101、送信フィルタ109または受信フィルタ111は、例えば、図1のSAW装置1または図2のSAW装置201の一例である。分波器101、送信フィルタ109または受信フィルタ111は、SAWチップ3(もしくは203)またはSAW素子11の一例と捉えられてもよい。送信フィルタ109および受信フィルタ111は、同一の圧電基板19に設けられていてもよいし、互いに異なる圧電基板19に設けられていてもよい。アンテナ端子103、送信端子105および受信端子107は、圧電基板19上の端子15(または端子215)によって構成されていてもよいし、これとは別の端子であってもよい。
図示の例では、受信フィルタ111のSAWフィルタ113は、図1に示したIDT電極23が配列された構成とされている。ただし、SAWフィルタ113に代えて、図8のSAWフィルタ317または図9(a)のSAWフィルタ417が設けられてもよい。
図11は、あくまで分波器101の構成の一例であり、例えば、受信フィルタ111が送信フィルタ109と同様にラダー型フィルタによって構成されるなどしてもよい。分波器101(マルチプレクサ)は、デュプレクサに限定されず、3以上のフィルタを含んだもの(例えば、トリプレクサまたはクワッドプレクサ)であってもよい。
(弾性波装置の利用例:通信装置)
図12は、SAWチップ、SAW装置または分波器101の利用例としての通信装置151の要部を示すブロック図である。通信装置151は、電波を利用した無線通信を行うものであり、分波器101を含んでいる。
通信装置151において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF−IC(Radio Frequency Integrated Circuit)153によって変調および周波数の引き上げ(搬送波周波数を有する高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ155によって送信用の通過帯以外の不要成分が除去され、増幅器157によって増幅されて分波器101(送信端子105)に入力される。そして、分波器101(送信フィルタ109)は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯以外の不要成分を除去し、その除去後の送信信号TSをアンテナ端子103からアンテナ159に出力する。アンテナ159は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号(電波)に変換して送信する。
また、通信装置151において、アンテナ159によって受信された無線信号(電波)は、アンテナ159によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器101(アンテナ端子103)に入力される。分波器101(受信フィルタ111)は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯以外の不要成分を除去して受信端子107から増幅器161へ出力する。出力された受信信号RSは、増幅器161によって増幅され、バンドパスフィルタ163によって受信用の通過帯以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF−IC153によって周波数の引き下げおよび復調がなされて受信情報信号RISとされる。
なお、送信情報信号TISおよび受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号もしくはデジタル化された音声信号である。無線信号の通過帯は、適宜に設定されてよく、公知の各種の規格に従ってよい。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、ダイレクトコンバージョン方式を例示したが、それ以外の適宜なものとされてよく、例えば、ダブルスーパーヘテロダイン方式であってもよい。また、図12は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
なお、以上の実施形態および変形例において、SAW装置1および201はそれぞれ弾性波装置の一例である。SAWチップ3および203はそれぞれ弾性波チップの一例である。IDT電極23、323および423はそれぞれ励振電極の一例である。
IDT電極323Bは第1IDT電極の一例である。この場合に、端子15Eは第1端子の一例であり、端子15Fは第2端子の一例であり、端子15GNDは第3端子の一例である。IDT電極323AおよびIDT電極323C(または分割IDT電極324E)はそれぞれ第2IDT電極または第3IDT電極の一例である。分割IDT電極324Aは第1分割IDT電極の一例である。分割IDT電極324Bは第2分割IDT電極の一例である。分割IDT電極324Aの+D2側の櫛歯電極27は第1櫛歯電極の一例である。分割IDT電極324Bの−D2側の櫛歯電極27は第2櫛歯電極の一例である。分割IDT電極324Bの−D2側の櫛歯電極27は第3櫛歯電極の一例である。分割IDT電極324Bの+D2側の櫛歯電極27は第4櫛歯電極の一例である。IDT電極323AおよびIDT電極323Cの−D2側の櫛歯電極27はそれぞれ第5櫛歯電極の一例である。IDT電極323AおよびIDT電極323Cの+D2側の櫛歯電極27はそれぞれ第6櫛歯電極の一例である。
なお、上記とは異なり、IDT電極323Bと対称の関係にあるIDT電極323Dを第1IDT電極の一例と捉えることもできる。また、IDT電極323Cが第1IDT電極の一例であり、端子15Fおよび15Gが第1および第3端子の一例であり、端子15Eが第2端子の一例であると捉えることもできる。
IDT電極423Bは第4IDT電極の一例である。この場合に、端子15Eは第1端子の一例であり、端子15Fは第2端子の一例であり、端子15GNDは第3端子の一例である。IDT電極423AおよびIDT電極423Cはそれぞれ第5IDT電極の一例である。IDT電極423AまたはIDT電極423Cの1対の櫛歯電極27は第7および第8櫛歯電極の一例である。分割IDT電極424Aは第3分割IDT電極の一例である。分割IDT電極424Bは第4分割IDT電極の一例である。分割IDT電極424Aの+D2側の櫛歯電極27は第9櫛歯電極の一例である。分割IDT電極424Aの−D2側の櫛歯電極27は第10櫛歯電極の一例である。分割IDT電極424Bの+D2側の櫛歯電極27は第11櫛歯電極の一例である。分割IDT電極424Bの−D2側の櫛歯電極27は第12櫛歯電極の一例である。
なお、上記とは異なり、IDT電極423Bと対称の関係にあるIDT電極423Dを第4IDT電極の一例と捉えることもできる。
第2導体層59は配線導体層の一例である。第3導体層61はパッド導体層の一例である。第2主導体層59bは主導体層の一例である。第2被覆層59cは被覆層の一例である。第1導体層57は電極導体層の一例である。
本開示に係る技術は、以上の実施形態および変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
例えば、弾性波装置は、SAW装置に限定されず、バルク波装置であってもよいし、弾性境界波装置(SAW装置の一種と捉えられてもよい)であってもよいし、圧電薄膜共振器であってもよい。また、チップ基板は、圧電基板と支持基板とが貼り合わされたものに限定されず、基本的に圧電基板のみから構成されるものであってもよい。図10(a)に示した導体の構成はあくまで一例であって、弾性波装置に必ず適用される必要は無い。
図8および図9(a)のSAWフィルタの例において、IDT電極の数は、2以上であればよく、5つに限定されない。また、複数のIDT電極のうち分割されるIDT電極は適宜な位置のものとされてよい。
図10(a)の導体層の例において、第1導体層、第2導体層および第3導体層それぞれは、図示された導体層の数よりも多い、または少ない数の導体層によって構成されていてもよい。配線13の一部または全部は、第2導体層のみによって構成されていてもよい(第2導体層の一部または全部は第1導体層に重ならなくてもよい。)。
なお、本開示からは、以下の概念を抽出可能である。
(第1概念)
第1主面を有している圧電基板と、
前記第1主面上の第1〜第3端子と、
前記第1主面上にて弾性波の伝搬方向に配列されている複数のIDT電極と、
前記複数のIDT電極に対して前記伝搬方向の両側に位置している1対の反射器と、
を有しており、
前記複数のIDT電極は、
前記第1端子および前記第3端子に接続されている第1IDT電極と、
前記第1IDT電極と隣り合っており、前記第2端子に接続されている第2IDT電極と、を有しており、
前記第1IDT電極は、前記伝搬方向に互いに隣り合っている第1分割IDT電極および第2分割IDT電極を有しており、
前記第1分割IDT電極は、
前記第1端子に接続されている第1櫛歯電極と、
前記第1櫛歯電極と噛み合っており、前記第1〜第3端子のいずれにも電気的に接続されておらず、電気的に浮遊状態となっている第2櫛歯電極と、を有しており、
前記第2分割IDT電極は、
前記第2櫛歯電極に接続されている、電気的に浮遊状態の第3櫛歯電極と、
前記第3櫛歯電極と噛み合っており、前記第3端子に接続されている第4櫛歯電極と、を有している
弾性波装置。
(第2概念)
第1主面を有している圧電基板と、
前記第1主面上の第1〜第3端子と、
前記第1主面上にて弾性波の伝搬方向に配列されている複数のIDT電極と、
前記複数のIDT電極に対して前記伝搬方向の両側に位置している1対の反射器と、
を有しており、
前記複数のIDT電極は、
前記第1端子および前記第3端子に接続されている第4IDT電極と、
前記4IDT電極と隣り合っており、前記第2端子に接続されている第5IDT電極と、を有しており、
前記第5IDT電極は、
第7櫛歯電極と、
前記第7櫛歯電極と噛み合っている第8櫛歯電極と、を有しており、
前記第4IDT電極は、
前記第7櫛歯電極および前記第8櫛歯電極の、前記伝搬方向に直交する方向の一方側部分に対して、前記伝搬方向に位置している第3分割IDT電極と、
前記第7櫛歯電極および前記第8櫛歯電極の、前記伝搬方向に直交する方向の他方側部分に対して、前記伝搬方向に位置している第4分割IDT電極と、を有しており、
前記第3分割IDT電極は、
前記第1端子に接続されている第9櫛歯電極と、
前記第9櫛歯電極と噛み合っており、前記第1〜第3端子のいずれにも電気的に接続されておらず、電気的に浮遊状態となっている第10櫛歯電極と、を有しており、
前記第4分割IDT電極は、
前記第10櫛歯電極に接続されている、電気的に浮遊状態の第11櫛歯電極と、
前記第11櫛歯電極と噛み合っており、前記第3端子に接続されている第12櫛歯電極と、を有している
弾性波装置。
(第3概念)
第1主面を有している圧電基板と、
前記第1主面上の励振電極と、
前記励振電極に接続されている、前記第1主面上の配線と、
前記配線に接続されている、前記第1主面上のパッドと、
前記第1主面上に位置している配線導体層と、
前記配線導体層上に位置しているパッド導体層と、
を有しており、
前記配線は、上面を含む少なくとも一部が前記配線導体層によって構成されており、
前記パッドは、上面を含む少なくとも一部が前記配線導体層および前記パッド導体層によって構成されており、
断面視において、前記パッド導体層の前記配線導体層側の一部は、前記配線導体層の前記パッド導体層側の一部にめり込んでいる
弾性波装置。
(第4概念)
第1主面を有している圧電基板と、
前記第1主面上の励振電極と、
前記励振電極に接続されている、前記第1主面上の配線と、
前記配線に接続されている、前記第1主面上のパッドと、
前記第1主面上に位置している配線導体層と、
前記配線導体層上に位置しているパッド導体層と、
を有しており、
前記配線は、その上面を含む少なくとも一部が前記配線導体層によって構成されており、
前記パッドは、その上面を含む少なくとも一部が前記配線導体層および前記パッド導体層によって構成されており、
前記配線導体層は、
主導体層と、
前記主導体層よりも薄く、かつ前記主導体層よりも電気抵抗率が大きい、前記主導体層上の被覆層と、を有しており、
前記パッドの位置において、前記被覆層の非配置領域が設けられており、これにより前記パッド導体層が前記主導体層に直接に接合されている
弾性波装置。
上記の第1〜第4概念において、封止部は、図1〜図6を参照して説明した構成とされている必要は無い。また、上記の第1〜第4概念において、弾性波装置は、弾性波チップのみから構成されていてもよい(実装基体および封止部は第1〜第4概念の弾性波装置の必須要件ではない。)。