以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態に係る生産計画立案支援システム1は、製品の生産に要する各工程の情報および各工程で使用するリソースごとのリソース消費量を含む生産基本情報を製品モデル別に用意し、生産基本情報に基づいて生産計画を立案する。
したがって、本実施形態によれば、部品構成表を作成する手間がかからない。さらに、本実施形態によれば、受注製品に類似する製品モデルの生産基本情報を選択するだけで、その受注製品の生産に関する計画を立案することができ、顧客要求の詳細が不明な段階でも生産計画を立案することができる。
さらに、本実施形態によれば、受注製品と製品モデルとの間に存在するリソース消費量の差異が明確な場合、生産基本情報に規定されたリソース消費量に代えて計画値を用いることができる。これにより、生産基本情報を用いて効率的に生産計画を立案できるとともに、実際の製品と製品モデルとの相違を生産計画に反映させることができ、使い勝手が向上する。
図1〜図8を用いて第1実施例を説明する。図1は、生産計画立案支援システム1の全体概要を示す説明図である。図1に示す構成は、本発明を具現化するための一つの例示に過ぎず、図1に示す構成例に限定されない。本実施例は、例えば、一品一様の製品、カスタマイズ製品、試作品などの多品種少量生産に好適に用いられる。しかし、本実施例は、多品種少量生産以外の生産方式にも用いることができる。
生産計画立案支援システム1は、それぞれ後述するように、例えば、生産計画立案部11と、データベース記憶部12と、顧客要求情報取得部13と、生産進捗情報取得部14と、日程計画情報記憶部15と、選択部16と、情報提供部17と、生産計画反映部18と、生産計画記憶部19と、負荷積み上げ部20と、修正部21と、モデル別生産基本情報自動生成部22と、自動設定部23と、を備えることができる。修正部21、モデル別生産基本情報自動生成部22、および自動設定部23は、後述する他の実施例で用いる構成である。
生産計画立案部11は、後述のように、顧客要求情報から選択された生産基本情報と、生産現場4(図2参照)の生産能力情報と、生産現場4での生産進捗情報とに基づいて、生産計画を立案する。生産計画立案部11で生成された生産計画は、ユーザの承認を受けることにより正式に生産計画として採用され、生産計画記憶部19へ記憶される。そこで、ユーザの承認を受ける前の生産計画を生産計画案と呼び、ユーザの承認を受けた後の生産計画と区別する場合がある。なお、顧客要求情報に変更が生じた場合、生産計画立案部11は、その変更に応じて生産計画を再立案する。
生産計画立案部11は、ユーザの指定する任意の期間について、例えば設計者、生産現場4の作業エリア、作業者グループ、設備、製造ライン、試験場、電力などの各種リソースを共用する製品群の生産が生産現場4の全体として最適となるように、生産計画案を立案する。「設計者」とは、生産対象の製品についての案件をとりまとめる設計者の工数を管理するリソースである。
「記憶部」としてのデータベース記憶部12は、生産計画の立案に使用する複数の所定の情報を格納する。データベース記憶部12(以下、記憶部12とも呼ぶ)は、例えば、モデル別生産基本情報121と、生産能力情報122と、製品構成情報123とを記憶している。記憶部12には、例えば、フラッシュメモリデバイス、ハードディスクデバイスといった不揮発性の記憶装置を用いることができる。
モデル別生産基本情報121は、製品のモデル別に生成されるものであって、例えば、製品の生産に要する各工程の情報と、各工程で使用するリソースごとのリソース消費量とを含む。さらに、モデル別生産基本情報121は、原単位コード、作成者名、作成日、更新日などの管理情報を含むことができる。本実施例では、モデル別生産基本情報121を、原単位情報121または原単位121と呼ぶことがある。
生産能力情報122は、生産現場4の生産能力を示す情報である。生産能力情報122は、例えば、各工程で使用可能なリソースの最大消費量(上限値)を含む。
製品構成情報123は、過去に生産された製品の構成を示す情報と、これから生産しようとする製品の構成を示す。製品構成情報123には、部品構成表を作成できるほどの正確さは要求されない。
顧客要求情報取得部13は、顧客要求情報を取得する機能である。顧客要求情報とは、製品の発注主である顧客が製品に対して要求する情報であり、例えば、製品仕様や製作数といった情報を含む。例えば、生産計画立案支援システム1のユーザは、後述するユーザインターフェース部105(図2参照)を用いることにより、顧客要求情報を生産計画立案支援システム1へ入力することができる。なお、顧客要求情報は、適宜変更することもできる。顧客要求情報が変更された場合、その変更内容などに基づいて生産計画を修正することができる。
生産進捗情報取得部14は、生産現場4の各工程での進捗を示す情報を生産管理システム3(図2参照)から取得する。取得された生産進捗情報は、生産計画記憶部19を介して生産計画立案部11に提供される。
日程計画情報記憶部15は、日程計画情報を記憶する。日程計画情報は、中期間または長期間の生産計画日程を示す情報であり、いつ設計を開始し、いつ終了するか(出荷するか)といった日程を保持する。さらに、日程計画情報には、リソース消費量について特別に指示するための計画値を含めることができる。日程計画情報に計画値が設定されている場合、計画値は生産基本情報121に定義されたリソース消費量に優先する。
選択部16は、「生産基本情報選択部」の例である。選択部16は、ユーザの手動操作により、または後述する実施例のように自動的に、顧客要求情報に応じた生産基本情報を記憶部12に記憶された生産基本情報121の中から少なくとも一つ選択する。
情報提供部17は、生産計画立案部11で作成された生産計画案をユーザに提示する機能である。ユーザは、提示された生産計画案について生産計画立案支援システム1に修正指示を与えたり、承認指示を与えたりする。
生産計画反映部18は、生産計画案がユーザにより承認されると、その生産計画案を生産計画として生産計画記憶部19に記憶させる機能である。
生産計画記憶部19は、製品ごとの生産計画を記憶する機能である。生産計画のモデルについては図3で述べる。
負荷積み上げ部20は、所定の時間単位(例えば一日単位)で、各工程での生産負荷を積み上げる機能である。以下では、生産負荷を負荷と略記する場合がある。上述したリソースには、それぞれ最大消費量(上限値)が設定される。図3では、この上限値を能力線として示す。
なお、本明細書では、各工程で消費するリソース量(負荷)を時間帯ごとに積み上げることを「山積み」と呼ぶ。積み上げられた負荷を分散させて配置し直すことを「山崩し」と呼ぶ。
生産計画立案部11は、負荷積み上げ部20の処理結果(山積み処理の結果)に基づいて、各工程の全体として最適な生産計画となるように、生産計画を作成する。
修正部21は、記憶部12に記憶された生産基本情報121をリソース消費量の実績値に基づいて修正する機能である。
「生産基本情報生成部」としてのモデル別生産基本情報自動生成部22は、モデル別生産基本情報121をリソース消費量の実績値に基づき自動的に生成する機能である。
「計画値設定部」としての自動設定部22は、リソース消費量の実績値と製品構成情報123とに基づき、計画値を自動的に算出して日程計画情報に設定する機能である。図1では、自動設定部23と記憶部12内の製品構成情報123とが結ばれていないが、自動設定部23は、製品構成情報123を参照可能である。
図1の下側には、生産管理システム3で管理される生産進捗状況が示されている。生産管理システム3は、生産計画立案支援システム1から受領した生産計画に従って製品を製造する。或る製品が設計されて出荷されるまでに、例えば、「設計」、「調達」、「製造」、「検査」、「出荷」といった段階(工程)を経る。生産進捗状況は、仕掛中の製品が現在どの工程に位置するのかを示す。生産進捗状況を示す情報は、生産進捗情報として、定期的にまたは不定期に生産計画立案支援システム1へ送られる。
図2は、生産計画立案支援システムのハードウェア構成図である。生産計画立案支援システム1は、例えば、コンピュータシステムとして構成されており、通信ネットワークCN1を介して、生産管理システム3に接続されている。生産管理システム3は、他の通信ネットワークCN2を介して、生産現場4と接続されている。
生産計画立案支援システム1は、例えば、マイクロプロセッサ(CPU)101と、メモリ102と、記憶装置103と、通信インターフェース104と、ユーザインターフェース部105とを備える。
記憶装置103には、所定のコンピュータプログラム1031が記憶されている。マイクロプロセッサ101は、コンピュータプログラム1031をメモリ102に読み出して実行することにより、生産計画立案支援システム1としての機能を実現する。
通信インターフェース104は、生産計画立案支援システム1と生産管理システム3とが双方向通信するための装置である。
ユーザインターフェース部105は、生産計画立案支援システム1とユーザとが情報を交換するための装置である。ユーザインターフェース部105は、情報入力装置と情報出力装置とを備える。情報入力装置としては、例えば、キーボード、タッチパネル、ポインティングデバイス、音声入力装置などがある。情報出力装置としては、例えば、ディスプレイ、プリンタ、音声合成装置などがある。ユーザインターフェース部105を生産計画立案支援システム1とは別体のコンピュータ端末として構成し、ユーザインターフェース部105と生産計画立案支援システム1とを無線または有線で接続してもよい。
生産管理システム3も、コンピュータシステムとして構成されており、マイクロプロセッサやメモリなどを有する。生産管理システム3の詳細は割愛する。
図3は、生産計画立案部(工場シミュレータ)11で使用する生産計画モデルの概要を示す説明図である。カスタマイズ製品などのような受注生産品、多品種少量生産品は、受注から出荷にわたって、受注案件別のプロジェクト型で生産される。そこで、本実施例では、例えば、プロジェクト型の日程計画手法であるPERT(Program Evaluation and Review Technique)に基づいて、案件別・工程別の逐次日程計画方法を採用する。
本実施例で採用する方法では、製番または製作枝番に設定された原単位コードに基づき、各工程の単位期間当りのリソース消費量をリソース制約とみなして、各工程・リソースにおける生産負荷の山積み/山崩しを行い、平準化した計画を立案する。
工場シミュレータ11は、例えば、「フォワード」、「バックワード」、「ハイブリッド」のうちいずれかの方法で、案件別・工程別の日程を計画することができる。
「フォワード」とは、計画開始日から納期(計画終了日)に向かって、製番または製作枝番別の工程順序に従い、順次日程を計画する計画モードである。例えば、案件受注時や工程見直しの際の納期予測などを実施したい場合に、この計画モードを採用する。
「バックワード」とは、納期から計画開始日に向かって、工程順序の逆順に遡って日程を計画するモードである。例えば納期確定後に、実行可能かつ最短の日程で生産する計画を立案したい場合に、この計画モードを採用する。
「ハイブリッド(フォワード&バックワード)」とは、工程順序の最初から途中までをフォワードで計画し、以降をバックワードで計画するモードである。例えば、設計工程をフォワードで計画して長納期部品などの先行調達を行い、加工・組立以降のモノづくり工程を納期引き付けで実施したい場合に、採用することができる。
図3では、計画モードとして「バックワード」を採用した例を示す。リソース消費量の計算方法を説明する。
図3(1)に示すバックワードの計画モードで計画した案件別・工程の日程に対し、各種リソースの消費量を計算する場合を説明する。ここでは、「納期(出荷)」および「総合試験工程」は割付済みであるとし、その前の工程である「単体試験」は、リードタイム(LT) が10 日であり、試験場Z(作業エリア)を一日当たり20 m^2使用することとする。この場合、試験場Z の作業エリアAZは、AZ=[u]/[bm]×(3[m]+2)として求めることができる。
ここで、リソース消費値[u]は「20 m^2/台」、製作数[m]は「2 台」であり、基準台数[bm]を1 台とすると、160[m^2]の作業エリアAZを確保する必要があることがわかる。
他リソースの消費量は、以下の通り計算することができる。「設計」工程で消費するリソース「設計部X(作番取纏)」は、例えば(製作枝番)1[件]と求められる。「加工」工程で消費するリソース「製造ラインY(加工時間)」は、例えば「20h/台」×「2 台」=40hとして求めらる。「組立」工程で消費するリソース「製造ラインY(作業時間)」は、例えば[組立計画ST]として求められる。図3の例では、「製作枝番C−1」の組立計画ST として「50h」が設定されているものとする。STとは、標準作業時間(Standard Time)を意味する。標準作業時間を標準時間と呼ぶこともできる。
次に、生産負荷の山積み/山崩し方法について述べる。算出されたリソース消費量(生産負荷)を各リソースに対して山積みし、生産負荷の合計値が上限値に達したかチェックし、必要に応じて生産負荷を分散させる(山崩し処理を実施する)。
山崩しあり/山崩しなしは、リソースごとに設定可能である。「山崩しあり」に設定した場合、各リソースの上限値(図3下側のグラフ中の能力線)を超過すると、工程の割付日程を前倒し(バックワード時)、または後倒し(フォワード時)する。
これに対し、「山崩しなし」と設定した場合、各リソースの上限値を超過しても工程の割付日程は変えずに、そのまま山積みしておく。「山崩しあり」は、例えば、設備などリソース超過した場合の調整余地が少ない工程やリソースで採用することができる。「山崩しなし」は、例えば、部署間や外注などで融通が可能な工程やリソースで採用することができる。
生産負荷の山積み方法は複数ある。本実施例では、図3下側のグラフ内に示すように、例えば4種類の山積み方法について説明する。グラフ中の点線のハッチングが入った領域は、他案件の工程の生産負荷で既に山積みされた領域である。これに対し、グラフ中の車線のハッチングが入った領域は、生産計画の立案対象である「製作枝番C−1」の各工程で山積みされた生産負荷の領域である。
本実施例では、リソースの消費方法である山積み方法として、「全日占有型」、「全日按分型」、「前詰め型」、「初日消費型」の4種類をリソースの性質に応じて使い分けることができる。すなわち本実施例では、リソースの種類(性質)に応じて、リソースを消費するパターン(リソース消費タイプ)を予め複数用意している。これにより、リソースの種類に応じてリソース消費量を分配することができ、より適切な生産計画を作成することができる。
「全日占有型」では、各工程のリードタイムの期間に対し、計算したリソース消費量(生産負荷)をそのまま山積みする。
リソース「設計部X(作業取纏)」の例では、設計工程のリードタイム「10日」にわたって、1件山積みしている。このリソースは「山崩しなし」に設定されているため、上限値「10件/日」を超過してもそのまま山積みしておく。もしも、このリソース「設計部X(作業取纏)」について「山崩しあり」と設定された場合、「バックワード」モードであれば日程の前方向に工程がシフトされ、「フォワード」モードであれば日程の後方向に工程をシフトさせて、リードタイムの全期間でリソース上限値を満たす日程となるように割り付ける。
「全日按分型」では、計算したリソース消費量(生産負荷)を各工程のリードタイムの期間で除算して1日当たりの生産負荷を算出し、各々の日付に山積みする。リソース「製造ラインY(加工時間)」の例では、生産負荷「40h」 を加工工程のリードタイム「5日」で除算し、1日当たり「8h」の負荷を山積みする。このリソースは「山崩しあり」に設定されているため、通常であれば、払出の前日から加工が割付られる。図3の例では、リードタイムの全期間でリソース上限値を満たす日付まで前倒しされている。
「前詰め型」では、計算したリソース消費量(生産負荷)を各工程のリードタイムの期間に対し、前詰めで順次山積みする。リソース「製造ラインY(作業時間)」の例では、リソース消費量「50h」を前詰めで山積みしている。ここで、「山崩しあり」と設定されているとすると、リードタイムの期間で山積みしきれなかった場合、日程の前倒し/後倒しが行われる。なお、「山崩しなし」に設定された場合、リードタイムの初日に全て山積みされる。一方、「山崩しあり」に設定された場合、リードタイム期間の前の日付から順にリソース消費量が入る分だけ山積みされていく。ここで、リードタイム期間でリソース消費量を山積みしきれない場合は、日程の前倒し(バックワード時)/後倒し(フォワード)を実行する。
「初日消費型」では、計算したリソース消費量(生産負荷)を各工程の初日に全て山積みする。「初日消費型」は、例えば、各工程の投入量を制御する場合などに採用することができる。「初日消費型」方式は、リードタイム期間の初日に全て山積みし、「山崩しあり」に設定された場合は、日程の前倒し(バックワード時)/後倒し(フォワード)を実行する。
なお、図3では記載を省略しているが、前後の工程間に所定時間(例えば、所定日数)の空き日程を設けることもできる。例えば、「調達」から「払出」までの間に部品納入日の変動リスクを吸収するための空き日程を設けたり、「組立」から「単体試験」までの間に製品搬送を行うための空き日程を設けたりしてもよい。ここで「払出」とは、対象の製品を生産するのに必要な部品やユニットを供給することを意味する。
図4は、生産計画立案支援処理のフローチャートである。本処理は、生産計画立案支援システム1のマイクロプロセッサ101がコンピュータプログラム1031を実行することにより実現される。そこで、本処理の動作の主体を生産計画立案支援システム1(以下、立案支援システム1と略記する場合がある)であるとして説明する。ここでは、製品モデル別の生産基本情報121を原単位121と呼ぶ。
まず最初に、立案支援システム1の顧客要求情報取得部13は、顧客要求情報を取得する(S11)。立案支援システム1の選択部16は、顧客要求情報に応じた原単位コードを設定する(S12)。
例えば、ユーザは、顧客要求情報に含まれる製品の概略仕様や名称、発注元などの情報に基づいて、対象の製品に最も似ている製品モデルに対応する原単位121を選択することができる。そして、立案支援システム1は、選択された原単位121を特定する原単位コードを設定する。ユーザが立案支援システム1に原単位コードを入力することにより設定してもよい。後述の実施例のように、対象の製品の構成概要と製品構成情報123を比較することにより、対象製品に最も類似する製品モデルの原単位コードを自動的に設定することもできる。
立案支援システム1の生産計画立案部11は、所定のシミュレーション処理を実行することにより、生産計画を立案する(S13)。立案支援システム1は、例えば図3でも述べたように、原単位121に定義された工程毎のリソース消費量に従って、各工程の日程別にリソース消費量を積み上げる(山積み処理)。そして、立案支援システム1は、山崩しが可能なリソース消費量については他の日程に分散させて再配置するなどして、生産計画を作成する。
立案支援システム1の情報提供部17は、ステップS13での処理結果をユーザインターフェース部105を介してユーザに提供する(S14)。ユーザが提示された生産計画を修正した場合、その修正内容はユーザインターフェース部105を介して立案支援システム1に入力される(S15)。
立案支援システム1の生産計画反映部18は、ユーザが生産計画を承認したか監視しており(S16)、ユーザにより承認された場合(S16:YES)、ユーザに承認された生産計画を生産計画記憶部19に登録させる(S17)。
ユーザが生産計画を修正した場合(S16:NO)、立案支援システム1はステップS13に戻り、再度シミュレーション処理を実行する。
いったん生産計画を作成した後に、顧客要求情報が変更される場合もある。立案支援システム1の顧客要求情報取得部13は、顧客要求情報に変更があったことを確認すると(S18:YES)、顧客要求情報のうち変更されたパラメータ(例えば、納期、製作数、仕様)を用いて(S19)、再びシミュレーション処理を実行する(S13)。
顧客要求情報に変更がない場合(S18:NO)、本処理は終了する。なお、ステップS18,S19は別のフローチャートとして表示することができるが、ここでは説明の便宜上、ステップS1〜S17に続く処理として示している。
図5は、生産計画の立案方法の例を示す説明図である。日程計画情報記憶部15は、顧客から受注した製番モデルごとに日程計画情報151を記憶している。生産計画立案部である工場シミュレータ11は、工場シミュレータエンジン111へ所定の情報を入力することにより、生産計画を立案する。
日程計画情報記憶部15に格納された日程計画情報151は、例えば、製番コード1511と、原単位コード1512と、製作数1513と、工程ごとの工程情報1514とを含む。工程情報1514は、その工程の終了予定日15141と、その工程が実際に終了した実績日15142と、計画作業標準時間(計画ST)15143とを含む。
ここで、製番コード1511とは、受注した製品に付与される識別情報である。原単位コード1512とは、製番コード1511で特定される製品(受注製品)に類似する製品モデルに対応する原単位121を示す情報である。製作数1512とは、受注製品の数量、すなわち顧客の発注した製品の数である。工程情報1514は、受注製品の生産に関する工程の管理情報である。例えば、「設計」、「調達」、「製造」、「検査」、「出荷」といった工程ごとに、その工程の終了予定日15141および終了実績日15142が記録される。
計画ST15143には、例えば、原単位121では対応が難しい個別事情が受注製品に存在する場合に、その個別事情を考慮した作業時間を見積もることができるのであればその値が設定される。例えば、原単位121に対応する製品モデルの構成に比べて特殊部品が追加されたとか、特殊な加工が追加されたなどのように、生産工程の作業時間に影響を与える個別事情がある場合、ユーザは、その個別事情を加味した作業時間を計画ST15143へ設定する。したがって、計画ST15143に設定される値は、後述する原単位121の消費リソース12141に含まれる標準作業時間(ST)とは異なる。
記憶部12に格納された原単位121(原単位情報121)は、例えば、原単位コード1211と、基準製作数1212と、工程順序1213と、工程ごとの工程情報1214とを含む。工程情報1214は、その工程で使用する(消費する)各リソース12141の消費量と、標準リードタイム12142と、リードタイム係数条件12143とを含んでいる。
原単位121とは、上述のように、製品モデルごとに予め作成された情報であり、一つの製品モデル(一つの原単位)に、一つまたは複数の製品が対応づけられる。既存の製品モデルのいずれとも似ていない製品を受注した場合は、新たな製品モデル(原単位)を定義することができる。
原単位コード1211とは、原単位121を特定する識別情報である。基準製作数1212とは、基準の製作数である。基準製作数は通常、1個であるが、複数個一セットで製造する製品の場合は、「1」以外の値が設定される。工程順序1213とは、原単位121で特定される製品を生産するための複数工程の順序を示す。工程情報1214は、工程ごとに用意される。消費リソース12141は、その工程で使用するリソースの消費量である。ここでは、作業時間(ST)を例示する。標準リードタイム12142は、その工程の標準的なリードタイムである。リード係数条件12143は、標準リードタイムを計画ST15143の値で補正する場合に使用する係数である。
記憶部12には、リソースごとの生産能力情報122も記憶されている。生産能力情報122は、例えば、最大消費量である能力値(上限値)1221と、リソース消費タイプ1222とを含む。リソース消費タイプ1222とは、例えば、上述した「全日占有型」、「全日按分型」、「前詰め型」、「初日消費型」である。すなわち、本実施例では、各工程で使用される各リソースについて、その性質に応じた消費タイプを定義できるようになっている。
工場シミュレータ11による作業時間(ST)の選択について説明する。工場シミュレータ11は、日程計画情報151に計画ST15143が設定されている場合、計画STを使用する。計画STは、生産計画立案の対象である製品とその製品に類似する製品モデルとの間の差異を反映する値であるため、計画STを用いて生産計画を立案する方が精度が向上するためである。
これに対し、工場シミュレータ11は、日程計画情報151に計画ST15143が設定されていない場合、原単位121に定義されている作業時間(ST)を用いる。つまり、特殊な仕様や加工についての作業時間の見積もりができない場合であっても、工場シミュレータ11は、原単位121を用いることで、ある程度の精度を持った生産計画を生成できる。
リードタイム(LT)の選択について説明する。計画ST15143が設定されている場合、計画ST15143の値と標準リードタイム12142の値とリード係数条件12143とに基づいて、生産計画の立案に使用するリードタイムを算出する。リードタイム係数条件12143には、作業時間(ST)の値に応じて係数が設定されている。
例えば、標準リードタイムが1日であり、計画STが30時間であり、係数は、作業時間が1時間から10時間までは「1」、作業時間が10時間を超えて30時間までは「2」であるとする。
工場シミュレータ11は、計画STが存在する場合は計画STを採用する。計画STの値が30時間なので、係数は「2」となる。工場シミュレータ11は、標準リードタイムの「1日」に係数「2」を乗じて、リードタイム「2日」を得る。なお、計画ST15143が設定されていない場合、工場シミュレータ11は、標準リードタイム12142の値を採用する。
図6は、生産計画の立案対象である製品について既存の原単位121の中から最も類似すると考えられる製品モデルの原単位121を設定する画面G1の例である。
原単位コード設定画面G1は、例えば、案件検索条件部GP11と、検索結果表示部GP12と、検索ボタンB11と、登録ボタンB12とを備える。
ユーザは、例えば、注文番号、製番、製番ステータス(完了、未完了など)といった検索条件を指定することにより、原単位コードを設定したい製品(生産計画の立案対象製品)を検索することができる。
検索結果表示部GP12には、検索条件に該当する製品について、例えば、連番、チェック欄(選択欄)、注文番号、製番、品名、製作数、製番ステータス、原単位コードなどが一覧形式で表示される。ユーザが原単位コード欄を選択すると、図6の下側に示すように、原単位コードを選択するための画面GP13が出現する。
原単位コード選択画面GP13は、例えば、原単位コードと、製品名称とを対応づけて表示する。なお、製品名称は、例えば、製品の種類、概略仕様、仕向先などの情報が含まれるようにして登録されていると使い勝手がよい。ユーザは、製品名称に基づいて、生産計画の立案対象の製品に最も近いと思われる原単位コードを選択する。
図7は、生産計画の立案対象とする製品を選択する画面G2の例である。シミュレーション対象選択画面G2は、例えば、案件検索条件GP21と、検索結果表示部GP22と、検索ボタンB21と、シミュレーション開始ボタンB22とを備える。
ユーザは、注文番号や製番などの検索条件を指定して検索させ、その検索結果の中から生産計画の立案対象となる製品を少なくとも一つ選択する。生産期間が重なる複数の製品の全てを一括して選択することもできる。ユーザが、対象の製品または製品群を選択してから開始ボタンB22を操作すると、シミュレーション開始画面G3へ遷移する。
図8は、シミュレーション開始画面G3の例である。シミュレーション開始画面G3は、例えば、シミュレーションモード選択部GP31と、シミュレーション対象製品表示部GP32と、シミュレーション開始ボタンB31とを備える。
シミュレーションモード選択部GP31は、例えば、スケジューリングモード選択部GP311と、山崩し処理設定部GP312と、シミュレーション順序指定部GP313とを備える。
スケジューリングモード選択部GP311では、例えば「日程計画通り」、「全タスクフォワード」、「全タスクバックワード」、「フォワード&バックワード(ハイブリッド)」の中からいずれか一つ選択可能である。「日程計画通り」とは、既に設定された日程に従ってシミュレーションすることを意味する。タスクとは工程を意味する。他のモードについては、図3で述べた通りである。
山崩し処理設定部GP312は、山崩し処理(負荷分散処理)を実施するか否かを設定する。山崩し処理あり(図中、山崩しあり)に設定された場合、工場シミュレータ11は、各工程の各単位期間において、各リソースの消費量(生産負荷、あるいはリソース負荷)が能力値(上限値)以内となるように、工程の計画を立案する。これに対し、山崩し処理なしに設定された場合、工場シミュレータ11は、各リソースの能力を考慮せずに工程の計画を立案する。すなわち、工場シミュレータ11は、各リソースの能力が無制限であるとみなしてシミュレーションを実施するため、リードタイムが最小となる工程計画を立案することができる。ユーザは、山崩し処理なしでのシミュレーション結果結果から、ボトルネックの有無などを確認することができる。ユーザは、能力値を超えた箇所については、例えば、作業者グループの人数を調整したり、設備を追加したりすることにより、ボトルネックを解消することができる。
シミュレーション順序指定部GP313は、シミュレーション順序を選択する。例えば、注文番号、製番、製作数などの観点からシミュレーション順序を指定できる。シミュレーション順序指定部GP313で指定したシミュレーション順序と、スケジューリングモード選択部GP311で選択されたスケジューリングモードとにより、シミュレーション対象の優先順序が決定される。
シミュレーション対象製品表示部GP32において、ユーザは、抽出された製品の中からシミュレーション処理の対象外とする製品を選択することができる。
図9は、シミュレーション結果画面G4の例である。シミュレーション結果画面G4は、例えば、シミュレーションモード表示部GP41と、表示方法表示部GP42と、ガントチャートGP43と、生産負荷の山積みグラフGP44と、日程計画反映ボタンB41とを備える。
シミュレーションモード表示部GP41には、シミュレーション処理に使用したパラメータ(スケジューリングモードなど)が表示される。表示方法表示部GP42は、ガントチャートGP43に表示する項目の順序を表示する。例えば、注文番号、製番、起点タスクの日付について、昇順または降順のいずれかで表示させることができる。さらに、表示方法表示部GP42は、ガントチャートGP43、山積みグラフGP44、図示せぬ期限情報のうちいずれを表示させるかを選択するためのボタンを備えてもよい。図9では、ガントチャートGP43と山積みグラフGP44の両方を一つの画面G4に表示させるかのように示すが、いずれか選択された方を表示させてもよい。
山積みグラフGP44では、各工程のリソースごとにリソース消費量(生産負荷)を山積みしたグラフを表示することができる。山積みグラフGP44において、符号Th1〜Th3は、能力値を示す閾値である。
このように構成される本実施例によれば、製品モデル別の生産基本情報である原単位121を用意しておき、対象製品に近い製品モデルの原単位121に基づいて、生産計画を立案することができるため、部品構成表を作成する手間がかからず、効率的に生産計画を作成することができる。
さらに本実施例によれば、事前に見積もり可能なリソース消費量については、計画値として設定することができるため、製品モデルとの乖離が大きい製品の場合であっても生産計画を作成することができ、使い勝手が高い。