JP2019117364A - 画像形成装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】感光ドラムの表面に機械的研磨を施した構成で、トナーのすり抜けを抑制できる構成を提供する。【解決手段】感光ドラムの表面に当接するクリーニングブレード60は、ゴム部材61と板金部材62とを有し、長手方向の単位長さ当たりの当接力(線圧)が0.196N/cm以上、0.490N/cm以下となるように感光ドラムに当接させている。ゴム部材61は、以下の条件を満たす。まず、表面に深さ0.7μm、半径15μmの部分球形状の測定用凹部を複数有した測定用対向物に、自由長が8mmのゴム部材を線圧が0.196N/cmと0.490N/cm、測定用対向物との当接角度を25°となるように当接させる。このときに、測定用凹部におけるゴム部材の接触幅が0.196N/cmのときに4μm以上8μm以下、0.490N/cmのときに4μm以上13.5μm以下となる。【選択図】図3

Description

本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置に関する。
画像形成装置として、感光ドラムの表面にトナー像を形成し、中間転写ベルトや記録材にトナー像を転写し、転写後に感光ドラム上に残ったトナーをクリーニングブレードにより清掃する構成が従来から知られている。
このようなクリーニングブレードとして、特許文献1、2に記載されたような構成が提案されている。また、感光ドラムとして、例えば特許文献3に記載されているように、表面に機械的研磨を施すものが提案されている。
特許第6094780号公報 特表2016−208601号公報 特開平2−129647号公報
ここで、特許文献3に記載のように、像担持体としての感光ドラムの表面に機械的研磨を施した場合、研磨処理する過程で発生した削れ粉が感光ドラム表面に残る場合がある。削れ粉が表面に残った状態で感光ドラムを回転駆動させると、感光ドラムとクリーニングブレードとのニップ内に削れ粉が蓄積する。そして、蓄積した削れ粉がクリーニングブレードを押し上げ、その隙間からトナーがすり抜ける現象が発生し易くなる。
本発明は、像担持体の表面に機械的研磨を施した構成で、トナーのすり抜けを抑制できる構成を提供することを目的とする。
本発明は、トナー像を担持して回転する像担持体と、前記像担持体の表面に当接するクリーニングブレードと、を備え、前記像担持体は、表面に機械的研磨を施されたものであり、前記クリーニングブレードは、先端部が前記像担持体の表面に当接する板状のゴム部材と、前記ゴム部材の基端側を支持する支持部材と、を有し、前記像担持体の表面に対して前記クリーニングブレードの長手方向の単位長さ当たりの当接力が0.196N/cm以上、0.490N/cm以下となるように当接させており、前記ゴム部材は、表面に深さ0.7μm、半径15μmの部分球形状の測定用凹部を複数有した測定用対向物に、前記支持部材に支持された位置から先端までの自由長が8mmの前記ゴム部材を、長手方向の単位長さ当たりの当接力が0.196N/cmと0.490N/cm、前記測定用対向物との当接角度を25°となるように当接させたときに、前記測定用凹部における前記ゴム部材と前記測定用対向物との接触幅が0.196N/cmのときに4μm以上8μm以下、0.490N/cmのときに4μm以上13.5μm以下となることを特徴とする画像形成装置にある。
本発明によれば、像担持体の表面に機械的研磨を施した構成で、トナーのすり抜けを抑制できる。
第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。 第1の実施形態に係る感光ドラムの層構成を示す模式図。 第1の実施形態に係るクリーニングブレードの概略構成側面図。 削れ粉によるトナーすり抜けのメカニズムを説明するための模式図。 接触幅測定装置の模式図で、(a)ゴム部材をガラス板に当接させる前の状態を、(b)ゴム部材をガラス板に当接させた後の状態をそれぞれ示す図。 クリーニングブレードの侵入量を説明するための模式図。 測定用凹部の、(a)開口形状を、(b)断面形状をそれぞれ示す図。 接触幅を説明するための模式図。 第1の実施形態の変形例に係るクリーニングブレードの概略構成側面図。 W/aに対する接触幅の関係を示す図。 第2の実施形態に係る中間転写ベルトの一部を示す断面図。
<第1の実施形態>
第1の実施形態について、図1ないし図10を用いて説明する。まず、本実施形態の画像形成装置について、図1を用いて説明する。
[画像形成装置]
画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に対応して設けられ4つの画像形成部PY、PM、PC、PKを有する電子写真方式のフルカラープリンタである。本実施形態では、画像形成部PY、PM、PC、PKを後述する中間転写ベルト7の回転方向に沿って配置したタンデム型としている。画像形成装置100は、画像形成装置本体に接続された原稿読み取り装置(図示せず)又は画像形成装置本体に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)を記録材Sに形成する。記録材としては、用紙、プラスチックフィルム、布などのシート材が挙げられる。
このような画像形成プロセスの概略を説明すると、まず、各画像形成部PY、PM、PC、PKでは、それぞれ、像担持体としての感光ドラム(電子写真感光体)1Y、1M、1C、1K上に各色のトナー像を形成する。このように形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト7上へ転写され、続いて中間転写ベルト7から記録材S上に転写される。トナー像が転写された記録材Sは、定着装置10に搬送されて、トナー像が記録材に定着される。以下、詳しく説明する。
なお、画像形成装置100が備える4つの画像形成部PY、PM、PC、PKは、現像色が異なることを除いて実質的に同一の構成を有する。したがって、以下、代表して画像形成部PYについて説明し、他の画像形成部の説明を省略する。
画像形成部PYには、像担持体として円筒型の感光体、即ち、感光ドラム1Yが配設されている。感光ドラム1Yは、図中矢印方向に回転駆動される。感光ドラム1Yの周囲には帯電ローラ2Y(帯電装置)、現像装置4Y、一次転写ローラ5Y、ドラムクリーナ6Yが配置されている。感光ドラム1Yの図中下方にはレーザスキャナ(露光装置)3Yが配置されている。
また、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと対向して中間転写ベルト7が配置されている。中間転写ベルト7は、複数の張架ローラにより張架され、複数の張架ローラのうちの駆動ローラの駆動により図中矢印方向に周回移動(回転)する。複数の張架ローラのうちの二次転写内ローラ8aと中間転写ベルト7を挟んで対向する位置には、二次転写外ローラ8bが配置され、中間転写ベルト7上のトナー像を記録材Sに転写する二次転写部T2を構成している。二次転写部T2の記録材搬送方向下流には定着装置10が配置される。
上述のように構成される画像形成装置100により画像を形成するプロセスについて説明する。まず、画像形成動作が開始すると、回転する感光ドラム1Yの表面が帯電ローラ2Yによって一様に帯電される。次いで、感光ドラム1Yは、露光装置3Yから発せられる画像信号に対応したレーザ光により露光される。これにより、感光ドラム1Y上に画像信号に応じた静電潜像が形成される。感光ドラム1Y上の静電潜像は、現像装置4Y内に収容されたトナーによって顕像化され、可視像となる。
感光ドラム1Y上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト7を挟んで配置される一次転写ローラ5Yとの間で構成される一次転写部T1Yにて、中間転写ベルト7に一次転写される。一次転写後に感光ドラム1Y表面に残ったトナー(転写残トナー)は、ドラムクリーナ6Yによって除去される。
このような動作をマゼンタ、シアン、ブラックの各画像形成部でも順次行い、中間転写ベルト7上で4色のトナー像を重ね合わせる。その後、トナー像の形成タイミングに合わせてカセット11に収容された記録材Sがピックアップローラ12にピックアップされて、レジストレーションローラ13に搬送される。そして、レジストレーションローラ13で記録材Sの斜行が補正された後、中間転写ベルト7上のトナー像に合わせて、レジストレーションローラ13により記録材Sが二次転写部T2に搬送される。そして、中間転写ベルト7上の4色のトナー像が、記録材S上に一括で二次転写される。二次転写部T2で転写しきれずに中間転写ベルト7に残留したトナーは、ベルトクリーナ9により除去される。
次いで、記録材Sは定着装置10に搬送される。そして、この定着装置10によって、加熱、加圧されることで、記録材S上のトナーは溶融、混合されて、フルカラーの画像として記録材Sに定着される。その後、記録材Sは機外に排出される。これにより、一連の画像形成プロセスが終了する。なお、所望の画像形成部のみを用いて、所望の色の単色又は複数色の画像を形成することも可能である。
次に、画像形成部PYの帯電ローラ2Y、露光装置3Y、現像装置4Y、一次転写ローラ5Y、及び、中間転写ベルト7の構成について詳しく説明する。なお、感光ドラム1Y、ドラムクリーナ6Y及びベルトクリーナ9については後述する。
[帯電ローラ]
帯電ローラ2Yは、感光ドラム1Yの表面を一様に帯電処理する接触式帯電手段である。本実施形態では、帯電ローラ2Yは、回転軸線方向の長さ330mm、直径14mmであり、ステンレス製の芯金の外回りに、導電ゴム層を形成した構成である。帯電ローラ2Yは、芯金の両端部をそれぞれ軸受け部材により回転自在に保持されると共に、押圧ばねによって感光ドラム1Yに向かって付勢して、感光ドラム1Yの表面に対して所定の押圧力をもって圧接させている。これにより、帯電ローラ2Yは、感光ドラム1Yの回転に従動して(周速度は300mm/sec)回転する。
帯電ローラ2Yは、感光ドラム1Yとの間の微小ギャップにて生じる放電現象を利用して帯電する。帯電ローラ2Yの芯金は、不図示の電源PS1より所定の条件の帯電電圧が印加される。本実施形態では、電源はDC電源及びAC電源からなる構成である。例えば、印加する直流電圧を−500V、交流電圧をその環境における放電開始電圧の2倍以上の値に設定すると、回転する感光ドラム1Yの画像形成領域が約−500Vに一様に帯電処理される。なお、画像形成中に印加される直流電圧は、この値に限定されるものではなく、環境や感光ドラム1Y及び帯電ローラ2Yの使用状況などに応じて、良好な画像形成に適する電位に適宜設定される。
[露光装置]
露光装置3Yは、帯電処理された感光ドラム1Yの表面に静電潜像を形成する情報書き込み手段である。本実施形態では、露光装置3Yは、半導体レーザを用いたレーザビームスキャナである。レーザビームスキャナは、原稿読み取り装置などのホスト機器から画像形成装置100側に送られた画像信号に対応して変調されたレーザ光を出力して、一様に帯電処理された回転する感光ドラム1Yの表面をレーザ走査露光する。このレーザ走査露光により、感光ドラム1Yの表面のレーザ光で照射されたところの電位が低下し、回転する感光ドラム1Yの表面には、画像情報に対応した静電潜像が順次に形成されていく。
[現像装置]
現像装置4Yは、感光ドラム1Y上の静電潜像に従ってトナーを供給し、静電潜像をトナー像として反転現像する現像手段である。現像装置4Yは、非磁性のトナーと磁性体のキャリアとを含む二成分現像剤を収容する現像容器と、現像容器内の現像剤を担持して搬送する現像剤担持体としての現像スリーブとを有する。図1では、現像装置4Yとして、この現像スリーブを図示している。現像スリーブは、感光ドラム1Yと対向して配置され、回転することで担持した現像剤を感光ドラム1Yと対向する現像領域に搬送する。現像スリーブの回転軸線方向の長さは325mmである。
本実施形態においては、現像スリーブは、二成分現像剤による磁気ブラシを保持し、感光ドラム1Yに接触させながら現像を行う。また、トナーは、ポリエステルを主体とした樹脂バインダーに顔料を混練したものを粉砕分級して得られた平均粒径が約6μmのトナーを用いている。また、感光ドラム1Yに付着したトナーの平均帯電量は約−30μC/gである。
現像装置4Yには、不図示の電源から所定の現像電圧が印加される。本実施形態においては、直流電圧(Vdc)と交流電圧(Vac)とを重畳した振動電圧である。例えば、振動電圧は周波数8.0kHz、ピーク間電圧1.8kV、矩形波の交流電圧を重畳した振動電圧である。直流電圧は、現像領域における感光ドラム1Yの電位に対して適正なカブリ取り電位(感光ドラム1Yの表面電位と現像電圧の直流成分との差)になるように適宜設定される。
[1次転写ローラ]
一次転写ローラ5Yは、感光ドラム1Yと中間転写ベルト7を挟む方向に所定の押圧力をもって圧接される一次転写手段であり、その圧接ニップ部が一次転写部T1Yである。一次転写ローラ5Yには、不図示の電源からトナーの正規帯電極性である負極性とは逆極性である正極性の転写電圧、本実施形態では+600Vが印加される。これにより、中間転写ベルト7の表面に感光ドラム1Y〜1K上のトナー像が順次に静電転写されていく。
トナー像が転写された中間転写ベルト7は、二次転写部T2において、カセット11から所定のタイミングにて給送された記録材Sにトナー像を転写する。本実施形態では、二次転写手段としての二次転写外ローラ8bが中間転写ベルト7と当接するように配置されることで二次転写部T2を形成する。二次転写外ローラ8bには+800Vの転写電圧が印加される。
二次転写部T2にてトナー像が転写された記録材Sは、定着装置10へ搬送される。本実施形態では、定着装置10は、内部に熱源を有する定着ローラと定着ローラと圧接する加圧ローラとを有する熱ローラ定着装置である。記録材Sは、定着ローラと加圧ローラとの圧接ニップ部に搬送されることで、加熱、加圧され、トナー像が定着される。
[中間転写ベルト]
中間転写体としての中間転写ベルト7は、無端状のベルトである。中間転写ベルト7の材料としては、樹脂系、或いは金属芯体入りのゴムベルト、樹脂及びゴムからなるベルトが望ましい。但し、トナーの飛び散りやトナー像の一部が転写されない中抜けなどを抑制すべく、弾性層を有するものを用いても良い。本実施形態の中間転写ベルト7は、PI(ポリイミド)にカーボンを分散し、体積抵抗率を10Ωcmオーダーに制御した樹脂ベルトを用いた。その厚さは80μm、全周は900mmである。
[感光ドラム]
次に、感光体としての感光ドラム1Yについて、図1及び図2を用いて説明する。なお、他の感光ドラム1M、1C、1Kについても同様である。感光ドラム1Yは、帯電特性が負帯電性の回転ドラム型の有機電子写真感光体である。感光ドラム1Yは、図2に示すように、導電性基体(アルミニウム製シリンダ)1aの表面に、下地層1bを介して有機材料からなる電荷発生層1cと、電荷輸送層(厚さ約20μm)1dとを下から順に塗り重ねた層構成を有している。
ここで、感光ドラム1Yの表面層は、結着樹脂として硬化性樹脂を用いた硬化層1eとしている。本実施形態では、感光ドラム1Yの表面硬化処理として硬化性樹脂を用いる硬化層1eを用いた。但し、硬化層は、これに限らず、炭素−炭素二重結合を有するモノマーと炭素−炭素二重結合を有する電荷輸送性モノマーとを熱または光のエネルギーにより硬化重合させることによって形成される電荷輸送性硬化層であっても良い。また、同一分子内に連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を電子線のエネルギーにより硬化重合させることによって形成される電荷輸送性硬化層であっても良い。
感光ドラム1Yの硬化層1eの指標として、ユニバーサル硬さHU及び弾性変形率Weを温度25℃、相対湿度50%の環境下で測定した。HU及び弾性変形率Weは、圧子に連続的に荷重をかけ、荷重下での押し込み深さを直読し連続的硬さを求められる微小硬さ測定装置フィシャースコープH100V(Fischer社製)を用いて測定した。圧子は、対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を使用した。
荷重の条件は、最終荷重(即ち最大荷重)6mNまで段階的に(各点0.1sの保持時間で273点)大きくした。HUは、最大荷重6mNで押し込んだ時の試験荷重を、その試験荷重でのビッカース圧子の表面積で割ったもので規定した。弾性変形率Weは、圧子が硬化層に対して行った仕事量(エネルギー)、即ち、圧子の硬化層に対する荷重の増減によるエネルギーの変化より求めたものである。したがって、弾性変形率Weは、弾性変形率の仕事量Woを全仕事量Wtで割ったものをパーセント表示したものである。
感光ドラム1Yに求められる性能としては、機械的劣化に対する耐久性の向上が挙げられる。即ち、感光ドラムの表面には、帯電、露光、現像、転写、クリーニングにおいて、電気的外力や機械的外力が直接加えられるため、感光ドラムには、これら外力に対する耐久性が要求される。具体的には、これら外力による表面の傷や摩耗の発生に対する耐久性、即ち、耐傷性および耐摩耗性が要求される。一般的に、硬化層の硬度は外部応力に対する変形量が小さいほど高く、感光ドラムも鉛筆硬度やビッカース硬度が高いものが機械的劣化に対する耐久性が向上すると考えられている。
しかしながら、これらの測定により得られる硬度が高いものが必ずしも耐久性の向上を望めたわけではなかった。本発明者らは鋭意検討の末、HUと弾性変形率Weの値が、ある範囲の場合に感光ドラムの表面層の機械的劣化が起り難くなることを見出した。まず、温度25℃、相対湿度50%の環境下でビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて硬度試験を行う。この場合に、最大荷重6mNで押し込んだ時のHUが150N/mm以上、220N/mm以下であり、且つ、弾性変形率Weが40%以上、65%以下である感光ドラム1Yを用いることによって、機械的劣化に対する耐久性が飛躍的に向上した。
また、感光ドラム1Yの更なる耐久性の向上には、HUが160N/mm以上、200N/mm以下であることがより好ましい。HUと弾性変形率Weを切り離してとらえることはできないが、例えば、HUが220N/mmを超えるものであるとき、弾性変形率Weが40%未満であると感光ドラム1Yの弾性力が不足する。一方、弾性変形率Weが65%より大きいと弾性変形率Weは高くても弾性変形量は小さくなってしまう。何れにしても、結果として局部的に大きな圧力がかかり、感光ドラムに深い傷が発生してしまう。よって、HUが高いものが必ずしも感光ドラムとして最適ではないと考えられる。
また、HUが150N/mm未満で弾性変形率Weが65%を超える場合、たとえ弾性変形率Weが高くても塑性変形量も大きくなってしまう。そして、感光ドラム1Yとドラムクリーナ6Yとの間や、感光ドラム1Yと帯電ローラ2Yとの間で挟まれた紙粉やトナーによって、感光ドラム1Yの表面が擦られる。この結果、感光ドラム1Yの表面が削れたり、感光ドラム1Yの表面に細かい傷が発生したりしてしまう。
[感光ドラムの表面形状]
次に、本実施形態における感光ドラム1Yの表面形状について説明する。本実施形態の感光ドラム1Yは、表面に機械的研磨を施されたものである。ここで、感光ドラム1Yの表面の耐摩耗性など機械的劣化に対する耐久性を向上させると、感光ドラム1Y表面に付着する帯電装置の放電により発生する放電生成物やトナーに含有されているワックス成分が、ドラムクリーナ6Yにより除去されにくくなる。感光ドラム1Y表面に放電生成物やワックス成分が蓄積すると、感光ドラム1Yと、感光ドラム1Y表面に接触して感光ドラム1Y上の残留トナーをクリーニングするドラムクリーナ6Yのクリーニングブレード60(後述する図3)との間の摩擦が増加する。この摩擦増加は、クリーニングブレード60の挙動を不安定にし、クリーニングブレード60の不安定挙動に起因する画像不良やクリーニングブレード60の摩耗を発生させる。
このようなクリーニングブレード60の不安定挙動に起因する画像不良やクリーニングブレードの摩耗を抑制するために、感光ドラムの表面層の粗面化がある。表面層を粗面化する技術として、本実施形態では、感光ドラム1Yの表面に機械的研磨を施している。具体的には、感光ドラム1Yは、表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.2μm以上、5.0μm以下の範囲になるような機械的研磨されたものを用いた。なお、本実施形態のクリーニングブレード60を組み合わせた場合、感光ドラム1Yの表面粗さRzを0.2μm以上、3.0μm以下とすることがより好ましい。
Rzが0.2μmより小さい場合、クリーニングブレード60と感光ドラム1Yの表面の接触幅が大きくなりすぎ、ブレードのビビリ、ブレード磨耗、欠け、といった問題が発生し、良好なクリーニング性が得られない可能性がある。一方、Rzが5.0μmより大きい場合、クリーニングブレード60が感光ドラム1Yの表面形状に追従しきれず、接触幅が低下しすぎ、転写残トナーを塞き止めることができにくくなり、トナーのすり抜けといったクリーニング不良が発生し易くなる。
感光ドラム1Yの表面粗さは、接触式面粗さ測定機(商品名:サーフコーダSE3500、(株)小坂研究所製)を用いて以下のように測定を行った。検出器:R2μm、0.7mNのダイヤモンド針、フィルタ:2CR、カットオフ値:0.8mm、測定長さ:2.5mm、送り速さ:0.1mmとし、JIS規格B0601で定義される十点平均粗さRzのデータを処理した。
なお、機械的研磨は、感光ドラム1Y表面の全域に施されていても良いし、表面の一部分に施されていても良い。但し、良好な性能を発揮するためには、少なくともクリーニングブレード60と接触する表面部位に施されていることが望ましい。
本実施形態において、感光ドラム1Yは、軸方向の長さ340mm、外径30mmであり、中心支軸を中心に200mm/secのプロセススピード(周速度)をもって曲線矢印の方向に回転駆動される。
[ドラムクリーナ]
次に、ドラムクリーナ6Yのクリーニングブレード60について、図3を用いて説明する。なお、他のドラムクリーナ6M、6C、6Kのクリーニングブレードについても同様である。ドラムクリーナ6Yは、上述した様に、一次転写部T1Yにおいて中間転写ベルト7へのトナー像転写後に、感光ドラム1Yに若干残留する転写残トナーを感光ドラム1Y表面から除去する。このためにドラムクリーナ6Yは、感光ドラム1Yの表面に当接するクリーニングブレード60、クリーニングブレード60により回収したトナーなどを回収する不図示の回収容器などを備えている。
クリーニングブレード60は、先端部が感光ドラム1Yの表面に当接する板状のゴム部材61と、ゴム部材61の基端側を支持する支持部材としての板金部材62とを有する。本実施形態では、クリーニングブレード6は、平板状のウレタンゴムからなるゴム部材61を板金部材62に接着材で張り付けて構成されている。ゴム部材61は、厚み2mm、板金部材62に支持された位置から先端までの自由長8mmで板金部材62に貼り付けられている。
また、クリーニングブレード60は、長手方向(感光ドラム1Yに当接させた場合の感光ドラム1Yの回転軸線方向と平行な方向)の長さは330mmである。そして、クリーニングブレード60を、感光ドラム1Yの表面に対して長手方向の単位長さ当たりの当接力(線圧)が0.196N/cm以上(20gf/cm以上)、0.490N/cm以下(50gf/cm以下)となるように当接させている。即ち、クリーニングブレード60は、20gf/cmから50gf/cmの範囲の線圧で感光ドラム1Yに押圧されている。
線圧が0.196N/cm(20gf/cm)より小さい場合、クリーニングブレード60と感光ドラム1Yとの当接圧が小さくなって、転写残トナーを十分に塞き止めることができにくくなる。この結果、転写残トナーがクリーニングブレード60をすり抜けるクリーニング不良が発生し易くなる。一方、線圧が0.490N/cm(50gf/cm)より大きい場合は、クリーニングブレード60と感光ドラム1Yとの摩擦力が増大し、ブレードのビビリ、ブレード摩耗、ブレードの欠けといった問題が発生し、良好なクリーニング性が得られない。
また、クリーニングブレード60は線圧を感光ドラム1Yに対する侵入量で割ったW/aを次のように設定している。即ち、クリーニングブレード60は、感光ドラム1Yとの当接角度が25°となるように感光ドラム1Yに当接させたときのW/aが次の条件を満たすようにしている。即ち、W/aが、0.196N/cm/mm以上(20gf/cm/mm以上)、0.441N/cm/mm以下(45gf/cm/mm以下)としている。なお、当接角度及び侵入量については後述する。また、本実施形態では、侵入量を、例えば、0.5mm以上、2mm以下としている。
W/aが0.196N/cm/mm(20gf/cm/mm)より小さい場合、必要な線圧を得るための侵入量が大きくなり、クリーニングブレード60と感光ドラム1Yとの接触幅が広くなることでピーク圧が減少し、トナー融着が発生し易くなる。一方、W/aが0.441N/cm/mm(45gf/cm/mm)より大きい場合、クリーニングブレード60が感光ドラム1Yの表層を研磨する研磨量が増加し、感光ドラム1Yの摩耗寿命が低下する。
[削れ粉によるトナーすり抜けのメカニズム]
ここで、削れ粉によるトナーすり抜けのメカニズムについて、図4を用いて説明する。まず、感光ドラムの表面に凹凸を設けてクリーニングブレードとの接触幅を下げることで、感光ドラムとクリーニングブレードとの間の摩擦力を低減する技術がある。機械的研磨で感光ドラム表面に凹凸を設けると、機械的研磨により発生した削れ粉が感光ドラム上に残留する場合がある。
削れ粉は、研磨工程後の清掃工程により除去されるが、研磨工程の時間や研磨ローラの当接圧、清掃工程の時間や清掃ローラの当接圧等の振れにより増減する。削れ粉が付着した感光ドラムにクリーニングブレードを当接させて駆動すると、削れ粉はクリーニングブレードにかき集められる。削れ粉の直径は1μm前後と通常クリーニングしているトナーより小さく、クリーニングブレードでクリーニングしきれずにすり抜けてしまう。
すり抜けた削れ粉の一部は感光ドラムとクリーニングブレードとの間に付着し、クリーニングブレードを押し上げて、感光ドラムとクリーニングブレードとの間に隙間を発生させる。クリーニングブレードが押し上げられた状態で画像形成が行われると、転写残トナーがその隙間からすり抜けてしまい画像不良が発生する。これが削れ粉によるトナーのすり抜けである。
図4は、クリーニングブレード60のゴム部材61と感光ドラム1Yの当接部分の断面を示す模式図である。削れ粉によるトナーすり抜けを回避する方法として、削れ粉をクリーニングブレード60に付着させないために、削れ粉のクリーニング性を向上させる方法がある。削れ粉のクリーニング性向上させるためには、クリーニングブレード60のゴム部材61の感光ドラム1Yとの接触面の幅(接触幅)を狭めて、ピーク圧を上げることが要求される。これにより、トナーより粒径が小さい削れ粉もクリーニングブレード60によりクリーニングし易くなる。
接触幅を狭めるためには、ゴム部材61と感光ドラム1Yとの接触面で発生するゴム部材61との巻き込みを低減させることが好ましい。ゴム部材61の巻き込みは、感光ドラム1Yに当接させた時に感光ドラム1Yから受ける摩擦力に対して、ゴム部材61が変形することで発生する。
ここで、研磨工程後の清掃工程の時間を短くして、生産性を向上させることが考えられる。この場合、感光ドラム上に残留する削れ粉の量が多くなり、上述のような削れ粉によるトナーすり抜けが発生し易くなる。
[ゴム部材]
そこで、本実施形態では、表面に機械手研磨を施した感光ドラム1Yの表面をクリーニングする構成であっても、削れ粉によるトナーすり抜けの発生を抑制すべく、クリーニングブレード60のゴム部材61を、次のようにしている。
ゴム部材61は、図3に示したように、基層61bの表面に高硬度な表層61aを有する。表層61aは、少なくともゴム部材61と感光ドラム1Yとの当接面に存在しており、深さ方向に対してもゴム部材61表面から1mmの範囲内で存在している。
クリーニングブレード6の表層61aの硬度の指標として、押し込み弾性率を温度25℃、相対湿度50%の環境下で測定した(硬度試験)。押し込み弾性率は、圧子に連続的に荷重をかけ、荷重下での押し込み深さを直読し連続的硬さを求められる微小硬さ測定装置フィシャースコープHM2000LT(Fischer社製)を用いて測定した。圧子は、対面角136°のビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を使用した。荷重の条件は、負荷速度0.14mN/sで最終荷重(即ち、最大荷重)0.98mNまで押圧したのち、最大荷重0.98mNを5秒保持し、負荷速度0.14mN/sで減圧(除荷)した。
硬度試験では、ゴム部材61をクリーニングブレード60から切り出し、厚さ2mmのガラス板に固定して、除荷時の押し込み弾性率を測定した。ここで、ゴム部材61の長手方向(感光ドラム1Yに当接させた場合の感光ドラム1Yの回転軸線方向と平行な方向)と自由長方向(ゴム部材61の基端から先端に向かう方向)とからなる面を自由長面(第一の面)とする。また、ゴム部材61の長手方向と厚み方向からなる面を厚み面(第二の面)とする。
測定点は、自由長面では、クリーニングブレード60が感光ドラム1Yの表面と当接する当接エッジから30μmと自由長中心(本実施形態では当接エッジから4mm)とした。一方、厚み面では、当接エッジから30μmと厚み中心(本実施形態では当接エッジから1mm)とした。
そして、自由長面の2点の測定点での押し込み弾性率の差分と、厚み面上の2点の測定点での押し込み弾性率の差分とで、どちらか大きい方の差分が0.5MPa以上10.0MPa以下になるようにゴム部材61を構成した。具体的には、この条件を満たすように、ウレタンゴムからなるゴム部材61の表面全体かつ深さ方向100μmの範囲を、イソシアネート処理で硬化し、上述の表層61aを有するゴム部材61を形成した。更に好ましくは、押し込み弾性率の差分は0.5MPa以上、3.0MPa以下とする。
しかし、ゴム部材は、これに限定されるものではなく、イソシアヌレートで処理した表面硬化処理したものや、2種類の異なる材料を積層した2層構造としても良い。押し込み弾性率の差分が0.5MPa以下では、表層61aが十分硬化されておらず、接触幅の低減効果が低く、トナー融着の発生を十分に抑制しにくい。一方、押し込み弾性率の差分が10.0MPa以上では、表層61aの耐摩耗性が劣化し、ブレード摩耗やブレード欠けに起因する画像不良が発生する。
上述のように、削れ粉によるトナーすり抜けの原因となるゴム部材61の巻き込みを低減するためには、ゴム部材61の硬度を上げて変形量を小さくする方法や、ゴム部材61の摩擦係数を下げて感光ドラム1Yからの摩擦力を減らす方法がある。本実施形態では、後述の接触幅測定方法で線圧0.196N/cm(20gf/cm)での接触幅が4μm以上、8μm以下、線圧0.490N/cm(50gf/cm)での接触幅が4μm以上、13.5μm以下となるようなゴム部材61を用いた。
接触幅が4μm未満の場合、接触幅が不安定になり、トナーのすり抜けが発生することがある。接触幅が13.5μmよりも大きい場合、ピーク圧が減少し、削れ粉のクリーニング性が低下し、削れ粉によるトナーのすり抜けが発生し易くなる。
[接触幅測定方法]
次に、クリーニングブレード60の感光ドラム1Yとの接触面の幅(接触幅)の測定方法を、図5(a)、(b)及び図6を用いて説明する。図5(a)、図5(b)に接触幅測定装置の模式図である。接触幅測定装置は、測定用対向物としてのガラス板300と、ゴム部材61を保持するホルダ301と、ガラス板300の表面に貼り付けられたシート302とを有する。
接触幅の測定は、クリーニングブレード60のゴム部材61をホルダ301に取り付け、ゴム部材61をシート302が貼り付けられたガラス板300の表面に当接させ、裏面から観察することで行った。図5(a)は、ゴム部材61をガラス板300に当接させる前の状態を示しており、図5(b)は、ゴム部材61をガラス板300に当接させた後の状態を示している。
ゴム部材61は、長手方向の長さ(幅)3mmでクリーニングブレード60から切り出し、自由長8mmになるようにホルダ301に挟み込んで固定した。ホルダ301は、ガラス板300に対して当接角度25°で、ガラス板300に対して垂直な方向(図中の矢印の方向)に侵入し、侵入量は線圧が20gf/cm、50gf/cmになるように調整した。
ここで、ゴム部材61の侵入量について、図6を用いて説明する。図6は、感光ドラム1Yの表面に所定の当接角度(次述する接線αとゴム部材61の自由長面とのなす角度)でクリーニングブレード60を当接させた状態を示している。まず、実線で示すように、クリーニングブレード60を撓まないように感光ドラム1Yの表面に接触させた状態を考える。この場合に、ゴム部材61と感光ドラム1Yの表面との接点を通る感光ドラム1Yの接線をαとし、破線で示すように、接線αに直交する方向βにクリーニングブレード60を感光ドラム1Yに向けて押し込む。すると、ゴム部材61が撓んで、ゴム部材61を保持している板金部材62の位置がβ方向に移動する。このときの板金部材62のβ方向の移動量δを上述のゴム部材61の侵入量と定義する。
ゴム部材61を当接させるガラス板300の表面のシート302は、図7(a)、(b)に示すように、表面に深さ0.7μm、半径15μmの部分球形状(本実施形態ではドーム形状)の測定用凹部としての凹部302aが複数、独立して形成されている。即ち、ガラス板300は、凹部302aを複数有する。図7(a)は、凹部302aの開口形状、図7(b)は、凹部302aの断面形状をそれぞれ示している。
本実施形態の接触幅測定方法では、上述のような侵入量でゴム部材61をガラス板300の表面に当接させ、表面に貼り付けられたシート302の凹部302aに対するゴム部材61の接触幅を測定した。接触部分は、ゴム部材61の陰になるので、ガラス板300の裏面側から観測することで、接触幅を測定することができる。
図8は、ゴム部材61をガラス板300のシート302に当接させたときの接触幅の模式図を示している。ゴム部材61は、ガラス板300に侵入すると接触幅が形成されるが、凹部302aは凹み分、凹部302aが形成されていない平面部よりも侵入量が減少するので、平面部より接触幅が狭くなる。なお、凹部302aは、画像形成による感光ドラム1Yの表面変化を模している。したがって、接触幅の測定を凹部302aで行うことで、画像形成による感光ドラム1Yの表面の変化を通じた接触幅を確認することができる。
[削れ粉によるトナーすり抜け検証実験]
次に、接触幅とトナー融着との関係を示す検証実験について説明する。表1は、トナーすり抜け検証実験に使用したゴム部材の物性と、削れ粉によるトナーすり抜け及び感光ドラム摩耗寿命を調べた結果を示している。検証実験は、表1に記載したゴムA−1〜ゴムD−3の8種類のゴム部材を用いて行った。また、接触幅の測定は前述の方法で行った。なお、表1の接触幅は、線圧が0.490N/cm(50gf/cm)のときの値である。
Figure 2019117364
ここで、ゴムA−1、A−2は、前述の図5で説明した様に、表層61aをイソシアネート処理で硬化させたもので、前述の処理範囲で基層61bの硬度を振ったものである。B−1は、前述の図3で説明した様に、表層61aをイソシアネート処理で硬化させたもので、押し込み弾性率の差分が10MPa以上になるようにイソシアネート処理時間を延長したものである。
ゴムC−1、C−2は、図9に示すように、2種類の異なる材料を積層した2層構造のゴム部材71である。図9は、ゴム部材71を板金部材72に設けたクリーニングブレード70を示している。ゴム部材71は、基層71bに表層71aを積層したものであり、表層71aはゴム部材71と感光ドラム1Yとの当接エッジから自由長方向に1mm、厚み方向に0.5mm存在している。ゴムC−1、C−2は、図9に示す構成で表層71aの硬度を振ったものである。このような図9の構成でも本実施形態のクリーニングブレード60と同様に、削れ粉によるトナーすり抜けを抑制できるが、表層71aの硬度を上げていくと、ブレードの摩耗で不利になることが確認されている。なお、ゴムC−2は、本実施形態の条件を満たす。ゴムD−1、D−2、D−3は、単層のゴム部材であり、単層の硬度を振ったものである。
また、削れ粉によるトナーすり抜けの検証実験を加速的に行うため、検証実験に用いた感光ドラム1Yは機械的研磨後の清掃工程時間を通常よりも半減させた。また、検証実験では、機械的研磨により表面粗さRzが1.0μmの感光ドラム1Yを用いた。
ここで、感光ドラム上に残る削れ粉の量の指標について説明する。本実施形態では、この指標として、清掃工程後の感光ドラムにクリーニングブレードを当接させて駆動し、感光ドラムを200回転駆動した後の、クリーニングブレードの感光ドラムの当接方向の自由長面上に付着した削れ粉の自由長面からの高さを用いた。
本実施形態では、感光ドラムを200回転駆動しているが、機械的研磨を施された感光ドラム表面の削れ粉は、駆動前が最も量が多く、クリーニングブレードの当接では追加で発生しない。このため、機械的研磨後の清掃工程時間が通常通りであれば、実際にはもっと少ない回転回数で、感光ドラムに残った削れ粉をクリーニングブレードにより十分に取り切れる。そこで、以下では、機械的研磨後の清掃工程時間が通常通りの場合と、通常通りの場合よりも半減させた場合について説明する。
また、削れ粉の高さは、200回転駆動後のクリーニングブレードを感光ドラムから取り外し、クリーニングブレードの自由長面を観察し、実際に削れ粉の高さを測定したものである。その際、クリーニングブレードを取り外すときに剥がれ落ちてしまう削れ粉もあるので、削れ粉の高さはクリーニングブレードの長手方向での最大値で示している。
先ず、通常通りの清掃工程時間で作成した感光ドラムに、ゴムD−1を用いたクリーニングブレードを当接させて、上述のように削れ粉の高さを測定した。この場合、クリーニングブレードに付着する削れ粉の高さは、1μm以上、4μm以下であった。
次に、機械的研磨後の清掃工程時間を従来よりも半減させて作成した感光ドラムに、ゴムD−1のクリーニングブレードを当接させて、上述のように削れ粉の高さを測定した。この場合、クリーニングブレードに付着する削れ粉の高さは、13μm以上であった。
なお、機械的研磨を施していない感光ドラムにゴムD−1を用いたクリーニングブレードを当接させて、上述のように削れ粉の高さを測定した場合、削れ粉が発生しないので、クリーニングブレードに付着する削れ粉の高さは、ほぼ0μmであった。
一方、削れ粉によるトナーすり抜け検証実験では、各試料のゴム部材を用いたクリーニングブレードを感光ドラムに当接させて、低温環境(5℃)で感光ドラムを60枚分ベタ白現像させた後に、5枚分ベタ現像をした。そして、感光ドラム上にクリーニングブレードをすり抜けたトナーが、一定量(画像に影響を与える量)以上あるか否かを目視で確認した。すり抜けた量が一定量以上のものは×、すり抜けた量が一定量未満のもの及びすり抜けていないものを○とした。なお、ベタ白現像は、静電潜像を形成せずに現像を行うもので、ベタ現像は、画像比率が100%となるように静電潜像を形成して現像を行うものである。
また、感光ドラムは、クリーニングブレードの摺擦により表面が摩耗すると、帯電性が低下し、例えば、出力された画像に縦スジや横スジなどが生じる画像不良が発生する。このため、検証実験では、感光ドラムの摩耗寿命は、次のように調べた。即ち、低湿環境(温度22℃、相対湿度5%)で、各試料のゴム部材を用いたクリーニングブレードを画像形成装置に組み込んで、画像比率5%で連続して20万枚の画像形成を行い、画像不良の有無を目視で確認した。そして、20万枚未満で例えば縦スジや横スジなどの画像不良が発生した場合には×とし、20万枚で画像不良が発生しなかった場合は○とした。
表1から、接触幅が13.5μm以下である場合に、削れ粉によるトナーすり抜けを抑制できることが分かった。また、W/aが0.441N/cm/mm以下(45gf/cm/mm以下)である場合に、感光ドラムの摩耗寿命が良好であることが分かった。
図10に、上述の表1におけるW/aと線圧50gf/cmでの接触幅との相関図を示す。ゴム部材としてゴムD−1〜D−3を用いた場合(従来例)、基層の硬度を上げてW/aを上げると接触幅も下がっていく。但し、削れ粉によるトナーすり抜けが発生しない幅まで接触幅を狭めようとすると、W/aが大きくなり、感光ドラムの摩耗寿命が短くなってしまう。
ゴム部材としてゴムB−1を用いた場合(比較例)、本実施形態と同じような硬化処理であっても、処理時間を延ばして硬化させたので、W/aも上がり、かつ、接触幅も不安定領域まで狭まってしまう。
ゴム部材としてゴムC−1〜C−2を用いた場合(変形例)、基層の硬度は変わらないのでW/aは一定で、表層の硬度を上げると接触幅のみを下げることができる。このため、ゴムC−2を用いた場合、削れ粉によるトナーすり抜けの抑制と感光ドラムの摩耗寿命の低下抑制の両立を図れる。
また、ゴム部材としてゴムA−1、A−2を用いた場合(実施例)、表層に施された硬化処理によりW/aを上げずに接触幅を狭めることができ、削れ粉によるトナーすり抜けの抑制と感光ドラムの摩耗寿命の低下抑制の両立を図れる。
このように本実施形態の場合、削れ粉によるトナーすり抜けの抑制と感光ドラムの摩耗寿命を両立することができる。
また、本実施形態の場合、機械的研磨工程後の清掃工程時間を半減させた感光ドラムであっても、削れ粉によるトナーすり抜けを抑制することが可能になる。例えば、感光ドラム上に残る削れ粉の量の指標で、削れ粉の高さが4μmよりも大きくなる場合、更には、削れ粉の高さが5μm以上、10μm以上、13μm以上となっても、本実施形態の構成を用いることで、削れ粉によるトナーすり抜けを抑制できる。この結果、感光ドラムの機械的研磨工程後の清掃工程を短縮でき、感光ドラムの生産性の向上及び低コスト化を図ることができる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態について、図11を用いて説明する。第1の実施形態では、像担持体として機械的研磨を施された感光ドラム1Yの表面をクリーニングするドラムクリーナ6Yのクリーニングブレード60に本発明を適用した場合について説明した。但し、像担持体として中間転写ベルト7Aの表面7aをクリーニングするベルトクリーナ9(図1参照)のクリーニングブレードとして、上述のクリーニングブレード60(図3参照)を用いても良い。このため、本実施形態では、第1の実施形態と同様のクリーニングブレード60を用いて、中間転写ベルト7Aに残留した転写残トナーをクリーニングする。
中間転写体としての中間転写ベルト7Aは、無端状のベルトであり、樹脂により形成された単層のベルトである。本実施形態では、中間転写ベルト7Aは、PI(ポリイミド)にカーボンを分散し、体積抵抗率を10Ωcmオーダーに制御した樹脂ベルトを用いた。その厚さは80μm、全周は900mmである。
また、本実施形態の中間転写ベルト7Aは、表面(外周面)7aに機械的研磨を施されたものである。この中間転写ベルト7Aの表面7aは、感光ドラムからトナー像が転写され、ベルトクリーナのクリーニングブレード60が当接する面である。
本実施形態では、中間転写ベルト7Aは、表面粗さRz(十点平均粗さ)が0.2μm以上、5.0μm以下の範囲になるような機械的研磨されたものを用いた。なお、本実施形態のクリーニングブレード60を組み合わせた場合、中間転写ベルト7Aの表面粗さRzを0.2μm以上、3.0μm以下とすることが好ましい。
Rzが0.2μmより小さい場合、クリーニングブレード60と中間転写ベルト7Aの表面7aの接触幅が大きくなりすぎ、ブレードのビビリ、ブレード磨耗、欠け、といった問題が発生し、良好なクリーニング性が得られない可能性がある。一方、Rzが5.0μmより大きい場合、クリーニングブレード60が中間転写ベルト7Aの表面形状に追従しきれず、接触幅が低下しすぎ、転写残トナーを塞き止めることができにくくなり、トナーのすり抜けといったクリーニング不良が発生し易くなる。
中間転写ベルト7Aの表面粗さは、接触式面粗さ測定機(商品名:サーフコーダSE3500、(株)小坂研究所製)を用いて以下のように測定を行った。検出器:R2μm、0.7mNのダイヤモンド針、フィルタ:2CR、カットオフ値:0.8mm、測定長さ:2.5mm、送り速さ:0.1mmとし、JIS規格B0601で定義される十点平均粗さRzのデータを処理した。
なお、機械的研磨は、感光ドラム1Y表面の全域に施されていても良いし、表面の一部分に施されていても良い。但し、良好な性能を発揮するためには、少なくともクリーニングブレード60と接触する表面部位に施されていることが望ましい。
また、本実施形態でも、上述の表1で説明したような検証実験を行った。また、加速的な検証実験を行うために、機械的研磨後の清掃工程時間を通常よりも半減して作成したRz1.0μmの中間転写ベルト7Aを用いた。この検証実験でも、表1同様の結果が得られた。
したがって、本実施形態の場合も、削れ粉によるトナーすり抜けの抑制と中間転写ベルトの摩耗寿命を両立することができる。
また、本実施形態の場合、機械的研磨工程後の清掃工程時間を半減させた中間転写ベルトであっても、削れ粉によるトナーすり抜けを抑制することが可能になる。例えば、感光ドラム上に残る削れ粉の量の指標と同様の中間転写ベルト上に残る削れ粉の量の指標で、削れ粉の高さが4μmよりも大きくなる場合でも、本実施形態の構成を用いることで、削れ粉によるトナーすり抜けを抑制できる。更には、削れ粉の高さが5μm以上、10μm以上、13μm以上となっても、本実施形態の構成を用いることで、削れ粉によるトナーすり抜けを抑制できる。この結果、中間転写ベルトの機械的研磨工程後の清掃工程を短縮でき、中間転写ベルトの生産性の向上及び低コスト化を図ることができる。
[他の実施形態]
本発明は、上述のような中間転写体を有した中間転写方式以外に、感光体から記録材に直接転写する直接転写方式の画像形成装置にも適用可能である。また、感光体は、感光ドラム以外に感光ベルトであっても良い。また、中間転写体は、中間転写ベルト以外に中間転写ドラムであっても良い。
また、本発明は、プリンタ以外に、複写機、ファクシミリ、複合機などの画像形成装置にも適用可能である。
1Y、1M、1C、1K・・・感光ドラム(像担持体、感光体)/7、7A・・・中間転写ベルト(像担持体、中間転写体)/60・・・クリーニングブレード/61・・・ゴム部材/62・・・板金部材(支持部材)/100・・・画像形成装置/300・・・ガラス板(測定用対向物)/302a・・・凹部(測定用凹部)
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複数の機能を有する複合機などの画像形成装置及びその製造方法に関する。
本発明は、トナー像を担持して回転する像担持体と、前記像担持体の表面に当接され、前記像担持体をクリーニングするクリーニングブレードと、を備えた画像形成装置において、前記像担持体は、機械的研磨を施された表面を備え、前記クリーニングブレードは、ゴム部材であり、前記像担持体に当接する先端部の方が基端部よりも硬度が高く構成され、前記像担持体の表面に対する前記クリーニングブレードの長手方向の単位長さ当たりの当接力は、0.196N/cm以上、0.490N/cm以下であり、前記クリーニングブレードが支持される位置から先端までの自由長が8mmとなるように前記クリーニングブレードが支持された場合で、表面に深さ0.7μm、半径15μmの部分球形状の測定用凹部を複数有した測定用対向物に、前記測定用対向物との当接角度が25°となるように前記クリーニングブレードを当接させた場合に、前記測定用凹部における前記クリーニングブレードと前記測定用対向物との接触幅は、前記クリーニングブレード長手方向の単位長さ当たりの当接力が0.196N/cmのときに4μm以上、8μm以下であり、0.490N/cmのときに4μm以上、13.5μm以下であることを特徴とする画像形成装置にある。
また、本発明は、トナー像を担持して回転する像担持体と、前記像担持体の表面に当接され、前記像担持体をクリーニングするクリーニングブレードと、を備える画像形成装置の製造方法において、前記像担持体の表面に機械的研磨を施す第1工程と、前記クリーニングブレードが支持される位置から先端までの自由長が8mmとなるように支持された場合で、表面に深さ0.7μm、半径15μmの部分球形状の測定用凹部を複数有した測定用対向物に、前記測定用対向物との当接角度が25°となるように前記クリーニングブレードを当接された場合に、前記測定用凹部における前記クリーニングブレードと前記測定用対向物との接触幅は、前記クリーニングブレードの長手方向の単位長さ当たりの当接力が0.196N/cmのときに4μm以上、8μm以下であり、0.490N/cmのときに4μm以上、13.5μm以下を満たすように前記クリーニングブレードの前記像担持体に当接する先端部の硬度を基端部の硬度よりも高く形成する第2工程と、前記像担持体の表面に対する前記クリーニングブレードの長手方向の単位長さ当たりの当接力が、0.196N/cm以上、0.490N/cm以下となるように前記クリーニングブレードを取り付ける第3工程と、を有することを特徴とする画像形成装置の製造方法にある。

Claims (8)

  1. トナー像を担持して回転する像担持体と、
    前記像担持体の表面に当接するクリーニングブレードと、を備え、
    前記像担持体は、表面に機械的研磨を施されたものであり、
    前記クリーニングブレードは、先端部が前記像担持体の表面に当接する板状のゴム部材と、前記ゴム部材の基端側を支持する支持部材と、を有し、前記像担持体の表面に対して前記クリーニングブレードの長手方向の単位長さ当たりの当接力が0.196N/cm以上、0.490N/cm以下となるように当接させており、
    前記ゴム部材は、表面に深さ0.7μm、半径15μmの部分球形状の測定用凹部を複数有した測定用対向物に、前記支持部材に支持された位置から先端までの自由長が8mmの前記ゴム部材を、長手方向の単位長さ当たりの当接力が0.196N/cmと0.490N/cm、前記測定用対向物との当接角度を25°となるように当接させたときに、前記測定用凹部における前記ゴム部材と前記測定用対向物との接触幅が0.196N/cmのときに4μm以上、8μm以下、0.490N/cmのときに4μm以上、13.5μm以下となる、
    ことを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記クリーニングブレードは、前記像担持体との当接角度が25°となるように前記像担持体に当接させたときの、前記クリーニングブレードの長手方向の単位長さ当たりの当接力を前記クリーニングブレードの前記像担持体に対する侵入量で割ったW/aが、0.196N/cm/mm以上、0.441N/cm/mm以下である、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 前記ゴム部材は、長手方向と自由長方向とからなる面を第一の面、長手方向と厚み方向からなる面を第二の面とした場合に、
    前記第一の面では、前記クリーニングブレードが前記像担持体の表面と当接する当接エッジから30μmと自由長の中心とを測定点とし、
    前記第二の面では、前記当接エッジから30μmと厚みの中心とを測定点とし、
    温度25℃、相対湿度50%の環境下でビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて硬度試験を行い、負荷速度0.14mN/sで負荷し、最大荷重0.98mNで5秒保持した後の除荷時の押し込み弾性率の前記第一の面の2点の前記測定点での差分と、前記第二の面の2点の前記測定点との差分とで、どちらか大きい方の差分が0.5MPa以上、10.0MPa以下である、
    ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像形成装置。
  4. 前記像担持体は、温度25℃、相対湿度50%の環境下でビッカース四角錐ダイヤモンド圧子を用いて硬度試験を行い、最大荷重6mNで押し込んだ時のユニバーサル硬さが150N/mm以上、220N/mm以下であり、かつ弾性変形率Weが40%以上、65%以下である、
    ことを特徴とする請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
  5. 前記ゴム部材は、ウレタンゴムである、
    ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
  6. 前記像担持体の表面粗さは、十点平均粗さRzが0.2μm以上、5.0μm以下である、
    ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
  7. 前記像担持体は、感光体である、
    ことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
  8. 前記像担持体は、感光体に形成されたトナー像が転写される中間転写体である、
    ことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載の画像形成装置。
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