上記特許文献1に開示されている形態の搬出装置には、多数の被搬送物を搬送方向にずれ寸法ずつずらしてコンベア上に手動で積層配列することが必要であり、かかる作業が相当煩雑である、ずれ寸法に比較的大きな誤差が発生すると1個ずつ分離することができず2個又はそれ以上の被搬送物を同時に搬出してしまうという事態が発生する傾向がある、コンベア上に多数の被搬送物を積層配列するためにはコンベアの搬送方向長さを相当長くすることが必要である、という問題が存在する。
他方、上記特許文献2に開示されている形態の搬出装置には、支持手段上に積層される被搬送物の数を増大せしめると、被搬送物全体の重量が増大し、従って最下層の被搬送物の下面と支持手段の底壁との摩擦抵抗が増大し、これに起因して搬出開口を通して被搬送物を搬出することが困難になる或いは2個又はそれ以上の被搬送物を同時に搬出してしまう虞がある、という問題が存在する。
上記事実に鑑み、本発明者等は、先に、特願2016−211652の明細書及び図面において、従来の搬出装置に存在する上述したとおりの問題を解決する搬出装置として、片側縁規制部材(支持手段)上に多数の被搬送物を所定搬送経路に沿って起立並列配置し、最先端の被搬送物を順次に搬出すると共に1個又は複数個の被搬送物の搬出に応じて並列配置された多数の被搬送物を適宜に搬送方向下流側に移動することができる独特な形態の搬出装置を提案した(以下「先行搬出装置」という)。この先行搬出装置は、多数の平板状被搬送物を積層状態で且つ被搬送物の両端縁及び片側縁を規制して搬出端に向けて強制する搬送手段、最前端の被搬送物の前面片端縁部が当接される前面片端縁部規制手段、及び最前端の被搬送物を前面片端縁部規制手段から離脱し且つ次の被搬送物から分離して搬送手段から搬出する分離搬出手段を具備する。上記搬送手段は被搬送物の片側縁を規制する片側縁規制部材と共に、被搬送物の片端縁を規制する片端縁規制部材及び被搬送物の他端縁を規制する他端縁規制部材を含んでいる。分離搬出手段は選択的に作動状態に設定される少なくとも1個の吸引具を含み、かかる吸引具は最前端の被搬送物前面に当接する前進位置と最前端の被搬送物から離隔する後退位置との間を前進後退移動自在であると共に被搬送物の延在方向(即ち片端縁から他端縁に向かう方向及び他端縁から片端縁に向かう方向)に往復移動自在である。最前端の被搬送物を分離搬出する際には、吸引具が前進位置に前進され作動状態にある吸引具が被搬送物の前面を吸引する。次いで、吸引具が被搬送物の他端縁に向けて移動され、他端縁規制部材と吸引具との間で最前端の被搬送物が撓まされ、これによって最前端の被搬送物が次の搬送物から分離され、しかる後に吸引具が後退位置に後退されて最前端の被搬送物が搬出される。
而して、上記先行搬送装置も充分に満足し得るものではなく、次のとおりの解決すべき問題を有する。異なった寸法の被搬送物を取り扱う場合には、被搬送物の延在長さに応じて片端縁規制部材に対する他端縁規制部材の位置を変動して片端縁規制部材と他端縁規制部材との間の寸法を調整することが必要であり、異なった寸法の被搬送物を取り扱う毎に、煩雑な調整操作を必要とする。かかる調整操作を回避するために他端縁規制部材の配設を省略すると、本発明者等の経験によれば、最前端の被搬送物を次の被搬送物から分離することに失敗し、2個乃至それ以上の被搬送物を同時に搬出してしまう傾向が発生する。
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、上述した煩雑な調整操作を回避するために他端縁規制部材の配設を省略しても、最前端の被搬送物を次の被搬送物から確実に分離して搬出することができる、新規且つ改良された搬出装置を提供することである。
本発明者等は、更に鋭意検討及び実験を続け、被搬送物の規制されている片側縁から他側縁に向かう方向に間隔をおいて配設された少なくとも2個の吸引具を含む分離搬出手段を配設し、2個の吸引具のうちの少なくとも被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の吸引具は被搬送物の規制されている片端縁から遠ざかり且つ規制されている片側縁に接近する分離方向及びその反対方向に移動自在であり、最前端の被搬送物を分離搬出する際には2個の吸引具が前進位置に前進されて最前端の被搬送物の前面を吸着し、次いで2個の吸引具における被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の吸引具が上記分離方向に移動されると共に2個の吸引具が後退位置に後退されるように構成することによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
そしてまた、被搬送物の規制されている片側縁から他側縁に向かう方向に延在する吸引具を含む分離搬出手段を配設し、吸引具は被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の端が被搬送物の規制されている片端縁から遠ざかり且つ規制されている片側縁に接近する分離方向及びその反対方向に移動自在であり、最前端の被搬送物を分離搬出する際には吸引具が該進位置に前進されて最前端の被搬送物の前面を吸着し、次いで吸引具が上記分離方向に移動されると共に後退位置に後退されるように構成することによっても、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
本発明の一局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する搬送装置として、多数の平板状被搬送物を積層状態で且つ被搬送物の片端縁及び片側縁を規制して搬出端に向けて強制する搬送手段、最前端の被搬送物の前面片端縁部が当接される前面片端縁部規制手段、及び最前端の被搬送物を該前面片端縁部規制手段から離脱し且つ次の被搬送物から分離して該搬送手段から搬出する分離搬出手段を具備する搬出装置において、
該分離搬出手段は、被搬送物の規制されている片側縁から他側縁に向かう方向に間隔をおいて配設され且つ最前端の被搬送物に対向して位置し且つ選択的に吸引作動状態に設定される少なくとも2個の吸引具を含み、該2個の吸引具は最前端の被搬送物の前面に当接する前進位置と最前端の被搬送物から離隔する方向に該前進位置から後退した後退位置との間を前進後退移動自在であると共に、
該2個の吸引具のうちの少なくとも被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の吸引具は被搬送物の規制されている片端縁から遠ざかり且つ規制されている片側縁に接近する分離方向及びその反対方向に移動自在であり、
該2個の吸引具が該前進位置に前進されて最前端の被搬送物の前面を吸着し、次いで該2個の吸引具における被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の吸引具が該分離方向に移動されると共に該2個の吸引具が該後退位置に後退される、
ことを特徴とする搬出装置が提供される。
好ましくは、該2個の吸引具のうちの少なくとも被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の吸引具はそれよりも被搬送物の規制されている片側縁に近い旋回中心軸線を中心として旋回自在であり、該旋回中心軸線を中心として所定方向に所定角度旋回されることによって該分離方向に移動される。該分離搬出手段は該2個の吸引具が装着された共通支持部材を有し、該共通支持部材が旋回中心軸線を中心として所定方向に所定角度旋回されることによって該2個の吸引具のうちの被搬送物の規制される片側縁から遠い方の吸引具が該分離方向に移動されるのが好適である。該分離搬出手段の該共通支持部材は最前端の被搬送物の規制されている片端縁から他端縁に向かう方向に移動されると共に該分離方向に旋回され、しかる後に該後退位置に後退されるのが望ましい。該搬送手段は上方に向かって横方向外方に傾斜した傾斜規制内面を有する片端縁規制部材と該片端縁規制部材の該傾斜規制内面に向かって下方に傾斜した傾斜規制上面を有する片側縁規制部材を含み、被搬送物の片端縁が該片端縁規制部材の該傾斜規制内面によって規制され、被搬送物の片側縁が該片側縁規制部材の該傾斜規制上面によって規制されるのが好都合である。
本発明の他の局面によれば、上記主たる技術的課題を達成する搬送装置として、多数の平板状被搬送物を積層状態で且つ被搬送物の片側縁及び片端縁を規制して搬出端に向けて強制する搬送手段、最前端の被搬送物の前面片端縁部が当接される前面片端縁部規制手段、及び最前端の被搬送物を該前面片端縁部規制手段から離脱し且つ次の被搬送物から分離して該搬送手段から搬出する分離搬出手段を具備する搬出装置において、
該分離搬出手段は、最前端の被搬送物に対向して位置し、選択的に吸引作動状態に設定され且つ被搬送物の規制されている片側縁から他側縁に向かう方向に延在する吸引具を含み、該吸引具は最前端の被搬送物の前面に当接する前進位置と最前端の被搬送物から離隔する方向に該前進位置から後退した後退位置との間を前進後退移動自在であると共に、被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の端が被搬送物の規制されている片端縁から遠ざかり且つ規制されている片側縁に接近する分離方向及びその反対方向に移動自在であり、
該吸引具が該前進位置に前進されて最前端の被搬送物の前面を吸着し、次いで該吸引具が該分離方向に移動されると共に該後退位置に後退される、
ことを特徴とする搬出装置が提供される。
好ましくは、該吸引具は被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の端よりも被搬送物の規制されている片側縁に近い旋回中心軸線を中心として旋回自在であり、該旋回中心軸線を中心として所定方向に所定角度旋回されることによって該分離方向に移動される。該分離搬出手段の該吸引具は最前端の被搬送物の規制されている片端縁から他端縁に向かう方向に移動されると共に該分離方向に旋回され、しかる後に該後退位置に後退されるのが好適である。該搬送手段は上方に向かって横方向外方に傾斜した傾斜規制内面を有する片端縁規制部材と該片端縁規制部材の該傾斜規制内面に向かって下方に傾斜した傾斜規制上面を有する片側縁規制部材を含み、被搬送物の片端縁が該片端縁規制部材の該傾斜規制内面によって規制され、被搬送物の片側縁が該片側縁規制部材の該傾斜規制上面によって規制されるのが好都合である。
本発明の一の局面における搬出装置では、被搬送物の他端縁を規制する部材が存在するか否かに拘わらず、被搬送物の規制されている片側縁から他側縁に向かう方向に間隔をおいて配設された少なくとも2個の吸引具を最前端の被搬送物の前面に吸着した状態で、2個の吸引具のうちの少なくとも被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の吸引具が被搬送物の規制されている片端縁から遠ざかり且つ規制されている片側縁に接近する分離方向に移動することによって、被搬送物を圧縮してその一部を前方に湾曲突出させて、最前端の被搬送物の片端縁部を前面片端縁部規制手段から離脱せしめることができる。
本発明の他の局面における搬出装置においても、被搬送物の他端縁を規制する部材が存在するか否かに拘わらず、被搬送物の規制されている片側縁から他側縁に向かう方向に延在する吸引具を最前端の被搬送物の前面に吸着した状態で、被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の端が被搬送物の規制されている片端縁から遠ざかり且つ規制されている片側縁に接近する分離方向に移動することによって、被搬送物を圧縮してその一部を前方に湾曲突出させて、最前端の被搬送物の片端縁部を前面片端縁部規制手段から離脱せしめることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された搬出装置の好適実施形態について、更に詳述する。
図1には、本発明に従って構成された搬出装置の好適実施形態の全体が簡略的に図示されている。かかる搬出装置は、多数の平板状被搬送物を積層状態で且つ被搬送物の片端縁及び片側縁を規制して搬出端に向けて強制する搬送手段2、最前端の被搬送物の前面片端縁部が当接される前面片端縁部規制手段4、及び最前端の被搬送物を前面片端縁部規制手段4から離脱し且つ次の被搬送物から分離して搬送手段2から搬出する分離搬出手段6を具備している。
搬送手段2は更に、第一の支持部材8aと、第二の支持部材8bと、バックプレート10と、搬送スタンド12と、保持部材14とを備えている。
図1と共に図2乃至図4を参照して説明を続けると、第一の支持部材8aは矩形形状の板状部材であって、その4隅が棒状の脚16aによって支持されている。そして、第一の支持部材8aは、長手方向に延びる一方側縁18及び他方側縁20が共に実質上水平であって且つ一方側縁18が他方側縁20よりも下方になるように全体が水平に対して傾斜角度αで傾斜している(図5も併せて参照されたい)。傾斜角度αは10乃至45度であるのが好ましく、図示の実施形態においては20度である。第一の支持部材8aには、多数の平板状被搬送物が積層状態で載置されてこれらの片側縁を規制する片側縁規制部材22が設けられており、片側縁規制部材22には上方に向かって幅方向外方に(即ち一方側縁18から他方側縁20に向かって)傾斜した傾斜規制上面24が規定されている。片側縁規制部材22には、その長手方向即ち図2及び図3において矢印で示す方向(これを搬送方向といい、以下では前後方向ということもある)に搬送経路Lが規定されている。搬送経路Lは後述するとおりにして被搬送物が搬送される経路であり、図示の実施形態においては水平且つ直線である。図1及び図3を参照することによって明確に理解されるとおり、片側縁規制部材22には、搬送方向の上流端部から下流端部まで搬送方向に沿って直線状に延びる溝26が複数形成されている。図示の実施形態においては、溝26は3本形成されており、夫々を番号26a、b、cで示す。溝26の夫々は相互に平行であって、片側縁規制部材22の上面から下面にかけて貫通している。図3を参照することによって明確に理解されるとおり、幅方向において溝26aと溝26bとの間には、円形貫通孔である小孔28が搬送方向に沿って等間隔をおいて複数個、図示の実施形態においては6個、形成されている。夫々の小孔28は、搬送方向に見てバックプレート10の後述する後退位置(図1乃至4に示す状態(特に図3を参照されたい))から搬送方向上流側に後述するXだけ移動した位置を始点として、搬送方向上流側に向かってXの間隔をおいて順次形成されている。所望ならば、小孔28を、溝26aと溝26bとの間に形成することに代えて、又はこれと共に、溝26bと溝26cとの間に形成してもよい。
第一の支持部材8aは更に、実質上平坦な矩形形状の平板であって、被搬送物の片端縁を規制する片端縁規制部材30を含んでいる。片端縁規制部材30は、第一の支持部材8aの一方側縁18側の端部において、第一の支持部材8aの上面から上方に垂直に起立した状態で搬送方向に沿ってその上流端部から下流端にかけて延設せしめられている。そして、片端縁規制部材30には片側縁規制部材22の傾斜規制上面24に向かって下方に傾斜した傾斜規制内面32が設けられており、傾斜規制内面32と傾斜規制上面24とは垂直である。このことから、片端縁規制部材30と片側縁規制部材22も垂直である(図5も参照されたい)。
前面片端縁部規制手段4は片端縁規制部材30の搬送方向下流端に配設されている。図示の実施形態においては、前面片端縁部規制手段4は、片端縁規制部材30の搬送方向下流端面に固着されて傾斜規制内面32に対して垂直に幅方向内側に向かって(換言すると一方側縁18から他方側縁20に向かって)延びる断面矩形の平板状部材である。図5を参照することによって明確に理解されるとおり、前面片端縁部規制手段4は、傾斜規制内面32から離隔するにつれて先細りする台形形状である。更に、前面片端縁部規制手段4は傾斜規制内面32の幅方向(つまり図5において傾斜規制内面32に沿った上下方向)に見た中央部分に設けられており、前面片端縁部規制手段4の下端は傾斜規制内面32の下端よりも幾分上方に離隔して位置すると共に、前面片端縁部規制手段4の上端は傾斜規制内面32の上端よりも幾分下方に位置する。前面片端縁部規制手段4の搬送方向上流側には最前端の被搬送物の前面片端縁部と当接する当接面34が設けられており、被搬送物が搬送手段2によって当接面34を超えて搬送されることはない。図示の実施形態では更に、バックプレート10を設置するための後述する設置台の脚の搬送方向上流側面において、後述する最前端の被搬送物の前面が当接される前面規制手段36も設けられている。この前面規制手段36は、上下方向に延びる断面矩形の棒状部材であって、搬送方向上流側面が搬送方向において当接面34と合致することで、被搬送物が当接面34を超えて下流側に移動することが防止される。
第二の支持部材8bは第一の支持部材8aの搬送方向下流側に隣接して設けられている。第二の支持部材8bは矩形形状である板状部材であって、その4隅が棒状の脚16bによって実質上水平に支持されている。
図1乃至図4を参照して説明を続けると、バックプレート10は搬送方向において溝26の下流端部と当接面34との間に配置されている。バックプレート10は3つのプレート片38a乃至38cから構成される。プレート片38a乃至38cは何れも鉛直方向に延びる棒状部材であり、これらの下端部の搬送方向幅は何れも下方に向かって漸次低減せしめられている。プレート片38aの下端部を除く断面形状は、幅方向長さが搬送方向長さよりも略2倍程度長い略矩形である。プレート片38b及び38cの下端部を除く断面形状は、共に搬送方向長さがプレート片38aのそれと同一な略正方形である。プレート片38aの搬送方向下流側面には、被搬送物が当接することによって閉成される検出スイッチ39が配設されている。プレート片38a乃至38cは、プレート片38aとプレート片38bとの幅方向間隔が、プレート片38bとプレート片38cとの幅方向間隔の略2倍となるように幅方向に並列した状態でプレート片固定部材40に固定されている。
プレート片固定部材40は幅方向に直線状に延びる上流側部材40a及び下流側部材40bを備えている。上流側部材40a及び下流側部材40bは共に断面矩形の板状部材であって、上流側部材40aの上面と下流側部材40bの上面とはヒンジ部40cにより結合されている。上流側部材40aにはプレート片38a乃至38c夫々の上端部が固定される。一方、下流側部材40bはL字状部材42の起立部42aに設置される。このとき、L字状部材42の起立部42aの搬送方向上流側面には上下方向に直線状に延びるレール44が配設されており、下流側部材40bはレール44に図示しないアクチュエータを介して設置され上下方向に移動自在となる。従って、プレート片固定部材40に固定されたバックプレート10も上下方向に移動自在となる。L字状部材42は第二の支持部材8bに設けられた設置台46に設置される。設置台46は、上下方向に見て傾斜規制上面24の上方に離隔して位置し且つ実質上水平な矩形形状の天板48と、この天板48を支持する複数、図示の実施形態においては5つ、の脚50とを備えている。天板48の上面には搬送方向に直線状に延びるレール52が形成されており、L字状部材42の水平部42bが図示しないアクチュエータを介してレール52に連結され、L字状部材42は搬送方向に移動自在となる。従って、L字状部材42にプレート片固定部材40を介して配設されたバックプレート10も搬送方向に移動自在となる。更にまた、バックプレート10が固定された上流側部材40aとL字状部材42が連結された下流側部材40bとは上面がヒンジ部40cによって結合されているため、バックプレート10はヒンジ部40cを回動中心として搬送方向上流側に弾性的に後退自在でもある。上記アクチュエータは何れも図示しない圧縮空気制御機器の一部であり、圧縮空気を作動動力源とするものである。
図7−1乃至図7−3を参照して説明すると、バックプレート10は上記アクチュエータによって、後述する最前端の被搬送物から後方(即ち搬送方向上流側)に第一の所定距離D1離間した後退位置とこの後退位置から第一の所定距離D1よりも短い第二の所定距離D2前進(即ち搬送方向下流方向に移動)した前進位置との間を移動自在であると共に、後述するとおり、搬送経路Lに沿って順次に起立並列配置された被搬送物における隣接する2個の被搬送物間に進入する作用位置と被搬送物間から離隔する非作用位置との間を移動自在である。搬送方向におけるバックプレート10が後退位置は、バックプレート10は第一の支持部材8aの溝26の下流端部と整合する。図示の実施形態においては、バックプレート10は非作用位置から下方に移動して作用位置に位置する。バックプレート10が非作用位置にあるときには、バックプレート10の下端は片側縁規制部材22に支持される被搬送物よりも上方に位置し、バックプレート10が作用位置にあるときには、バックプレート10の下端は被搬送物の上側縁(即ち他側縁)よりも下方であって片側縁規制部材22の傾斜規制上面24と対向しこれよりも僅かに上方に位置する。然るに、バックプレート10は以下のような経路で周期的に移動する。即ち、バックプレート10は、後退位置であって且つ作用位置である後退作用位置(図7−1(a)及び図7−2(e)乃至図7−3(i))、前進位置であって且つ作用位置である前進作用位置(図7−1(b))、前進位置であって且つ非作用位置である前進非作用位置(図7−1(c))、後退位置であって且つ非作用位置である後退非作用位置(図7−2(d))に順次移動した後に、再度後退作用位置(図7−1(a)及び図7−2(e)乃至図7−3(i))へ移動する。
図1乃至図4を参照して説明を続けると、搬送スタンド12は、搬送方向において溝26の内側に配置されている。搬送スタンド12は複数個の仕切片54と、夫々の仕切片54を支持固定する仕切片支持部材56とを有する。仕切片54は何れも上下方向に延びる棒状部材であり、上端部を除いて断面は略正方形である。仕切片54の上端部は何れも、搬送方向幅が上方に向かって漸次低減せしめられている。仕切片支持部材56は、幅方向に延びる複数(図示の実施形態においては7本)の幅方向支持部58と、搬送方向に延びる一対の搬送方向支持部60とを有する。夫々の幅方向支持部58の搬送方向下流側面には、仕切片54が3つずつ所定位置に固定される。これら3つの仕切片54は、搬送スタンド12が第一の支持部材8aに対して所要とおりに設置された際に、第一の支持部材8aに形成された溝26a乃至cと夫々整合するようにして(図3を参照されたい)、夫々の下端部が固定される。夫々の幅方向支持部58は、相互に平行に且つ仕切片54の搬送方向間隔がバックプレート10の後退位置と前進位置との間隔に対応した間隔(X)となるようにして、一対の搬送方向支持部60の上面に固定される。一対の搬送方向支持部60の各々の下面には搬送方向に延びる一対のレール62が各々形成されており、このレール62は図示しないアクチュエータを介して底板64に連結されている。従って、搬送スタンド12は搬送方向に移動自在となる。更に、底板64の下面にはこれを上下方向に移動自在な昇降用のアクチュエータ66も設けられており、これによって、搬送スタンド12は上下方向にも移動自在である。上記のアクチュエータは何れも図示しない圧縮空気制御機器の一部であり、圧縮空気を作動動力源とするものである。
図7−1乃至図7−3を参照して説明すると、搬送スタンド12は上記アクチュエータによって、搬送方向下流端(最前端)の仕切片54が搬送方向に見てバックプレート10の後退位置からX(=D2)だけ後方に移動して位置する後退位置とこの後退位置から第二の所定距離D2だけ前進した前進位置(従って、前進位置における搬送方向下流端の仕切片54とバックプレート10の後退位置とは搬送方向において同位置である)との間を移動自在であると共に、仕切片54の夫々が、後述するとおり、搬送経路Lに沿って順次に起立並列配置された被搬送物における隣接する2個の被搬送物間に進入する作用位置と被搬送物間から離隔する非作用位置との間を移動自在である。図示の実施形態においては、搬送スタンド12は非作用位置から上方に移動して作用位置に位置する。搬送スタンド12が作用位置にあるときは、仕切片54の上端は片側縁規制部材22の傾斜規制上面24を超えて上方に位置し、搬送スタンド12が非作用位置にあるときは、仕切片54の上端は第一の支持部材8aに支持される被搬送物よりも下方に位置する。然るに、搬送スタンド12は上記アクチュエータによって以下のような経路で周期的に移動する。即ち、搬送スタンド12は、後退位置であって且つ作用位置である後退作用位置(図7−1(a)、図7−3(h)及び(i))、前進位置であって且つ作用位置である前進作用位置(図7−1(b)乃至図7−2(e))、前進位置であって且つ非作用位置である前進非作用位置(図7−2(f))、後退位置であって且つ非作用位置である後退非作用位置(図7−3(g))に順次移動した後に、再度後退作用位置(図7−1(a)、図7−3(h)及び(i))へ移動する。
図1乃至図4を参照して説明を続けると、保持部材14は、幅方向において溝26aと溝26cとの間に配設されている。保持部材14は複数個の第一の保持片68と複数個の第二の保持片70とを含んでいる。第一の保持片68は何れも搬送スタンド12の仕切片54と同一断面形状の棒状部材であり鉛直方向(即ち上下方向)に延びているが、上端部ではなく下端部の搬送方向幅が下方に向かって漸次低減せしめられている。第一の保持片68は第一の支持部材8a、更に詳しくは片側縁規制部材22の傾斜規制上面24の上方において第一の保持片支持部材72によって支持固定されている。第一の保持片支持部材72は、幅方向に延びる複数(図示の実施形態においては6本)の幅方向支持部74と、搬送方向に延びる1つの搬送方向支持部76とを有する。夫々の幅方向支持部74の搬送方向上流側面には、第一の保持片68が2つずつ所定位置に夫々の上端部が固定される。第一の保持片支持部材72が後述する支持フレームに連結された状態にあっては、図3を参照することによって明確に理解されるとおり、第一の保持片68は、幅方向においては片側縁規制部材22に形成された溝26bと溝26cとの間で等間隔になるように、搬送方向においてはバックプレート10の後退位置(図1乃至4に示す状態)から上流側にXだけ移動した位置を始点として、上流側に向かってXの間隔をおいて順次位置せしめられることとなる。
複数個の第一の保持片68を支持固定した第一の保持片支持部材72は、片側縁規制部材22の傾斜規制上面24の上方において支持フレーム78によって上下方向に移動自在に支持される。支持フレーム78は、第一の支持部材8aの搬送方向上流端に隣接して配設され下方が開放されたコの字形状である上流フレーム部80と、上流フレーム部80の上辺の幅方向他端部(図4において右側端部)から搬送方向下流に向かって実質上水平に延びて設置台46に接続固定される直線状の中間フレーム部82と、中間フレーム部82の搬送方向略中間部の上面に固定され下方が開放されたコの字形状の上側フレーム部84とを有する。上側フレーム部84において搬送方向に見て相互に対向する一対の辺の幅方向片側(図4において左側)面には、上下方向に直線状に延びる一対のレール86が形成されており、第一の保持片支持部材72が図示しないアクチュエータを介してレール86に上下方向に移動自在に連結されている。従って、第一の保持片支持部材72に固定された第一の保持片68も上下方向に移動自在である。
第二の保持片70は何れも上方に突出する略半球状の突部88とこの突部88の下面に接続されたロッド90とから構成されている。第二の保持片70は片側縁規制部材22に形成された小孔28に夫々収容され、図示しない連結部材及びアクチュエータにより全ての第二の保持片70は同時に片側縁規制部材22の傾斜規制上面24に対して垂直な方向に移動自在である。上述したとおり、夫々の小孔28は、搬送方向に見てバックプレート10の後退位置(図1乃至4に示す状態)から上流側にXだけ移動した位置から、上流側に向かってXの間隔をおいて順次形成されており、従って、夫々の第二の保持片70は夫々の第一の保持片68と搬送方向において整合している。
図7−1乃至図7−3を参照して説明すると、保持部材14はこれを作動させるアクチュエータによって、後述するとおり、搬送経路Lに沿って順次に起立並列配置された被搬送物における隣接する2個の被搬送物間に進入する作用位置(図7−2(e)乃至図7−3(h))と被搬送物間から離隔する非作用位置(図7−1(a)乃至図7−2(d)、及び図7−3(i))との間を移動自在である。図示の実施形態においては、第一の保持片68は非作用位置から下方に移動して作用位置に位置し、第二の保持片70は非作用位置から上方に移動して作用位置に位置する。第一の保持片68が非作用位置にあるときは、第一の保持片68の下端は第一の支持部材8aに支持される被搬送物よりも上方に離隔して位置し、第一の保持片68が作用位置にあるときは、第一の保持片68の下端は被搬送物の他側縁よりも下方であって片側縁規制部材22の傾斜規制上面24と対向しこれよりも幾分上方に位置する。第二の保持片70が非作用位置にあるときは、突部88の上端は片側縁規制部材22に支持される被搬送物よりも下方、より詳細には突部88の上端が片側縁規制部材22に設けられた小孔28の内部(即ち片側縁規制部材22の上面と下面との間)に位置する。一方、第二の保持片70が作用位置にあるときは、突部88の上端は片端縁規制部材22の傾斜規制上面24を超えて上方に位置する。第一の保持片68及び第二の保持片70は適宜の制御手段により非作用位置から作用位置へ、作用位置から非作用位置へ同時に切り換わることが可能である。
図1乃至図4と共に図5を参照して説明を続けると、分離搬出手段6は、第二の支持部材8bの搬送方向上流端部において、後述するとおり第一の支持部材8aに支持される多数の被搬送物の最前端の被搬送物に対向して配設される。分離搬出手段6は、被搬送物の規制されている片側縁から他側縁に向かう方向に間隔をおいて配設され且つ最前端の被搬送物に対向して位置する少なくとも2個(図示の実施形態においては4個)の吸引具92と、これらが装着される共通支持部材94とを備えている。吸引具92はエラストマー材の如き可撓性を有する適宜の軟質合成樹脂から形成された椀状であり、その中央頂部には吸引孔96(図4を参照されたい)が形成されている。共通支持部材94は被搬送物の規制されている片側縁から他側縁に向かう方向(従って上下方向)に長い略角柱部材であり、その搬送方向上流側面には複数の図示しない接続バルブが設置されている。夫々の接続バルブは2つの口を有し、一方の口には吸引具92の吸引孔96が接続され、他方の口には図示しないホースを介して図示しない真空ポンプに接続される。吸引具92が接続バルブに接続された状態にあっては、吸引孔96は搬送方向上流側を向き、上記真空ポンプによって吸引具92の内側領域(即ち、椀の内側領域)に負圧を発生させることが可能となる。上記真空ポンプは作動状態と非作動状態とを適宜に切り替え自在であり、真空ポンプの作動を切り替えることで吸引具92を上記負圧が生じる作動状態と生じない非作動状態とに切り替え自在である。図示の実施形態においては、吸引具92は共通支持部材94の上下方向に間隔をおいて直線状に配置されている(夫々の吸引具を、共通支持部材94の上端から下端に向かって順に92a乃至dであらわす)。吸引具92aと92dは共通支持部材94の上端部と下端部に各々配置され、吸引具92b及び92cは共通支持部材94の下側において吸引具92b乃至92dが上下方向に等間隔をなすように夫々配置されている。吸引具92aと吸引具92bとの間隔は吸引具92bと吸引具92cとの間隔(吸引具92cと吸引具92dとの間隔)よりも大きい。共通支持部材94の搬送方向下流側面には、これを作動させるアクチュエータ98が設置されている。ここで、少なくとも吸引具92aは、これよりも被搬送物の規制されている片側縁に近い(従って図5においては下方に位置する)旋回中心軸線を中心として旋回自在であるのが好ましい。図示の実施形態においては、アクチュエータ98は共通支持部材94を、吸引具92aと92bとの間に規定されている旋回中心軸線100において旋回駆動可能に支持しており、従って、吸引具92a乃至dは一体となって旋回中心軸線98を中心に旋回自在である。アクチュエータ98は図示しない圧縮空気制御機器の一部であり、圧縮空気を作動動力源とするものである。
図5を参照して説明すると、吸引具92a乃至dは、これらが装着された共通支持部材94がアクチュエータ98によって作動されることによって、後述する最前端の被搬送物の前面と当接する前進位置と最前端の被搬送物の前面から離隔する方向に後退した後退位置との間で搬送方向(前後方向)に移動自在(即ち前進後退移動自在)となると共に、最前端の被搬送物に作用する作用位置と被搬送物を放出する放出位置との間で搬送方向に対して垂直且つ水平な横方向(左右方向)に移動自在となり、さらに、吸引具92aが片側縁規制部材22から離隔して片端縁規制部材30に接近する接近位置と片端縁規制部材30から離隔して片側縁規制部材22に接近する分離位置との間で旋回中心軸線100を旋回中心として旋回自在となる(吸引具92aが片端縁規制部材30から遠ざかり且つ片側縁規制部材22に接近する方向を分離方向という)。このことから、図示の実施形態においては、吸引具92a乃至dは以下のように周期的に移動する。即ち、吸引具92は、図5(a)に示す基準状態(前後方向において後退位置、分離方向において接近位置、左右方向において作用位置)から前後方向において前進して前進位置に位置し(図5(b))、次いで、分離方向において接近位置から分離位置まで旋回し(図5(c))、その後に前後方向において前進位置から後退位置まで後退し(図5(d))、次いで分離方向において分離位置を維持したまま左右方向において作用位置から放出位置まで横移動し(図5(e))、しかる後に分離方向において分離位置から接近位置まで旋回しながら左右方向において放出位置から作用位置まで横移動して再び図5(a)に示す基準状態となる。
続いて、図5と共に図7−1乃至図7−3を参照して本発明に従って構成された搬出装置の作動について説明する。
先ず、搬出装置を作動させるのに先立って、作業者は手動で多数の被搬送物Cを第一の支持部材8a上に搬送経路Lに沿って順次に起立並列した状態で配置せしめる。図7−1(a)に示すように、被搬送物Cは搬送方向に隣接する仕切片54の間だけでなく、搬送方向下流端の仕切片54とバックプレート10との間、及び、バックプレート10と吸引具92との間にも配置する。かかる作業を行う際には、分離搬出手段6の吸引具92は非作動状態であると共に、バックプレート10は後退作用位置に、搬送スタンド12は後退作用位置に、保持部材14(即ち、第一の保持片68及び第二の保持片70)は非作用位置に、夫々位置する。ここで、平板状被搬送物とは、例えば液体状洗剤或いはレトルト食品等を収容するためのパウチと称される周知の包装体であり、図6に示すとおりの所謂スタンディングパウチと称する片端縁部UP(図6における上端縁部)が他端縁部BP(図6における下端縁部)に比べて薄く、片端縁ULが両側縁(片側縁RL及び他側縁LL、即ち片端縁ULと他端縁BLとを接続する一対の縁であって図6において上下方向に延びる一対の縁)よりも短い形式のものも含む。本発明は上記スタンディングパウチを搬送するのに好適である。スタンディングパウチは、本発明の搬出装置によって搬送されている間においては片端縁部UPが開放せしめられているが、本発明の搬出装置によって搬送され内容物が充填された後には片端縁部UPが閉塞せしめられる。被搬送物Cの夫々は、片側縁RL及び片端縁ULが片側縁規制部材22の傾斜規制上面24及び片端縁規制部材30の傾斜規制内面32によって規制されると共に搬送方向において隣接する被搬送物同士が相互に面接触した状態で、実質上鉛直に起立した直立並列配置で支持される(図5(a)及び図7−1(a)を参照されたい)。
搬出装置の作動を開始させると、分離搬出手段6が作動して、第一の支持部材8aに支持された被搬送物Cの搬送を開始する。分離搬出手段6の作動について図5を参照して説明する。なお、本図(及び後に言及する図8においても同様)においては、搬送方向下流側から上流側を見たときの模式図を左側に上方から見た模式図を右側に夫々配列し、右側に配列された図においては、図の簡略化のために吸引具92は吸引具92a及び92dについてのみ示して他を省略し、吸引具92aと吸引具92dとを区別するために前者には薄墨を付して示してある。
分離搬出手段6の吸引具92a乃至dは以下のように作動する。即ち、最初に、吸引具92a乃至dは図5(a)に示す基準状態にある。このとき、吸引具92a乃至d作動状態と非作動状態とはどちらであってもよい。次いで、吸引具92a乃至dは前後方向において前進位置に前進せしめられて最前端の被搬送物C1の前面に当接すると共に作動状態にせしめられる(図5(b))。このとき、吸引具92a乃至dは最前端の被搬送物C1の前面片端縁部よりも左右方向において内側の表面に当接せしめられ、吸引具92a乃至dの椀状部位が被搬送物C1と密着して変形せしめられる。そして、吸引具92a乃至dは、図示しない真空ポンプによって生じた負圧により最前端の被搬送部C1を吸引してこれを保持する。次いで、被搬送物Cの規制されている片側縁から遠い位置にある吸引具92aが分離方向に移動される。図示の実施形態においては、吸引具92aは吸引具92b乃至dと共に共通支持部材94に装着されており、共通支持部材94が図5(c)において反時計方向に旋回駆動すると、吸引具92a乃至dは一体となって分離方向において接近位置から分離位置に旋回される(図5(c))。かくすると、吸引具92aと片側縁規制部材22との距離が短くなり、これによって上記被搬送物C1において吸引具92aが吸引保持する部位と片端規制部材30の傾斜規制上面24によって規制される片側縁RLとの距離が短くなることで、被搬送物C1は圧縮されてその一部が前方に湾曲突出せしめられ、最前端の被搬送物C1と、これの直後(即ち前から2番目)に位置する被搬送物C2とが分離せしめられる。その後に、吸引具92a乃至dは分離方向において分離位置の状態を維持したまま前後方向において前進位置から後退位置に後退移動される(図5(d))。この際には、図5(c)に示す状態において被搬送物C1と被搬送物C2とが確実に分離せしめられている故に、吸引具92a乃至dは最前端の被搬送物C1のみを確実に前面片端縁部規制手段4から離脱、即ち搬送手段2から搬出することができる。しかる後に、吸引具92a乃至dは、図5(e)に示すとおり、分離方向において分離位置の状態を維持したまま左右方向において作用位置から放出位置まで移動し、かかる位置にて作動状態から非作動状態に切り換えられる。かくすると、吸引具92a乃至dが吸引していた被搬送物C1は二点鎖線で示されるニップローラーの如き適宜の送り手段102に受け渡され、被搬送物C1が排出される。被搬送物C1を放出した後は、吸引具92a乃至dは、分離方向において分離位置から接近位置に旋回されながら左右方向において放出位置から作用位置まで移動して、再び図5(a)に示す基準状態となる。
従って、本発明の搬出装置においては、被搬送物Cの他端縁を規制する部材が存在するか否かに拘わらず、被搬送物Cの規制されている片側縁から他側縁に向かう方向に間隔をおいて配設された吸引具92a乃至dを最前端の被搬送物C1の前面に吸着した状態で、吸引具92a乃至dが被搬送物の規制されている片端縁から遠ざかり且つ規制されている片側縁に接近する分離方向に移動することによって、被搬送物C1を圧縮してその一部を前方に湾曲突出させて、被搬送物の片端縁部を片端縁部規制手段4から離脱せしめることができる。
分離搬出手段6の上記作動によって被搬送物Cが1個乃至複数個搬出される毎に、バックプレート10及び搬送スタンド12は1個乃至複数個の被搬送物Cの厚さに対応した距離だけ前進する。バックプレート10及び搬送スタンド12は、バックプレート10の搬送方向下流側面に設けられた検出スイッチ39が被搬送物Cに当接せしめられて(即ち検出スイッチ39が被搬送物Cによって相対的に押圧されて)閉成されることで停止する。バックプレート10及び搬送スタンド12が停止した後も分離搬出手段6の上記作動は継続して行われる。バックプレート10及び搬送スタンド12が停止した状態で分離搬出手段6が上記作動を継続すると、分離搬出手段6とバックプレート10との間の被搬送物Cの数が減少して被搬送物Cによる検出スイッチ39への当接(即ち被搬送物Cによる検出スイッチ39の押圧)が解除され、検出スイッチ39は開放される。検出スイッチ39が開放されると、バックプレート10及び搬送スタンド12は再度前進する。このようにすることで、バックプレート10による被搬送物Cへの過剰な押圧に起因して吸引具92の被搬送物Cへの吸着が毀損され、分離搬出手段6が被搬送物Cを適切に搬送することができなくなることが防止される。図示の実施形態においては、バックプレート10及び搬送スタンド12は共にバックプレート10に設けられた検出スイッチ39の切り換えによってその作動が制御されていたが、所望ならば、搬送スタンド12の搬送方向下流端に位置する仕切片54の搬送方向下流側面に第二の検出スイッチを設け、搬送スタンド12の作動が第二の検出スイッチの切り換えによってバックプレート10の作動とは独立して制御されるようにしてもよい。
バックプレート10及び搬送スタンド12が図7−1(a)に示す各々の後退作用位置から図7−1(b)に示す各々の前進作用位置まで前進すると、バックプレート10は前進作用位置から前進非作用位置に移動し(図7−1(c))、次いで後退非作用位置に移動し(図7−2(d))、しかる後に後退作用位置に移動すると共に、保持部材14(即ち、第一の保持片68及び第二の保持片70)は非作用位置から作用位置に移動する(図7−2(e))。保持部材14のこの移動は、バックプレート10が前進作用位置から後退作用位置まで移動する間乃至同移動の完了後であってもよい。図7−2(e)に示す状態にあっては、バックプレート10と搬送スタンド12の最前端の仕切片54とは搬送方向において合致するが、バックプレート10を構成するプレート片38a、補助プレート片38b及び36cと搬送スタンド12の最前端に位置する仕切片54とは幅方向において夫々位置が異なるためプレート片38a、補助プレート片38b及び36cと仕切片54とが干渉することはない。同様に、第一の保持片68及び第二の保持片70と搬送スタンド12の仕切片54とは搬送方向において合致するが、第一の保持片68及び第二の保持片70と搬送スタンド12の仕切片54とは幅方向において夫々位置が異なるため第一の保持片68及び第二の保持片70と仕切片54とが干渉することはない(図3を参照されたい)。バックプレート10及び保持部材14の上記移動の間も分離搬出手段6は第一の支持部材8aに支持された被搬送物Cを継続して搬送し続ける。
保持部材14が非作用位置から作用位置に移動した後に、搬送スタンド12は前進作用位置から前進非作用位置に移動し(図7−2(f))、次いで後退非作用位置に移動し(図7−3(g))、しかる後に後退作用位置に移動する(図7−3(h))。そして、搬送スタンド12が後退作用位置まで移動した後に、保持部材14は作用位置から非作用位置に移動する(図7−3(i))。搬送スタンド12及び保持部材14の上記移動の間も分離搬出手段6は第一の支持部材8aに支持された被搬送物Cを連続して搬送し続ける。
図7−3(i)に示す状態と図7−1(a)に示す状態とは、搬送スタンド12の搬送方向最後端に位置する仕切片54と、この仕切片54と搬送方向において隣接する仕切片54との間の領域における被搬送物Cの有無のみが相違するがそれ以外は同じ状態であり、上記作動を繰り返すことにより被搬送物Cを搬送し続けることができる。また、被搬送物Cの空いた上記領域に作業者が新たな被搬送物Cを補充することで被搬送物Cを長時間連続して搬送し続けることが可能となる。
続いて、図8を参照して、本発明の搬出装置における分離搬出手段の作動についての第一の変形例について説明する。
図8に示す実施形態においては、分離搬出手段6のアクチュエータ98は共通支持部材94を前進後退及び左右方向に移動させることはできるが、アクチュエータ98単体では共通支持部材94を旋回中心軸線100の周りに旋回駆動させることはできない。図8に示す実施形態においては更に、共通支持部材94が図8において左方向に移動する際にその下端部の移動を制限する他方下側制限片104aと、共通支持部材94が図8において右方向に移動する際にその下端部及び上端部の移動を制限する一方下側制限片104b及び一方上側制限片104cとが設けられている(他方下側制限片104a、一方下側制限片104b、及び一方上側制限片104cは何れも図8においてのみ図示している)。
図8に示す実施形態においては、分離搬出手段6の吸引具92a乃至dは、最前端の被搬送物C1を吸引保持した状態(図8(b)に示す状態)から以下のように作動する(図8(a)及び図8(b)は共に図5(a)及び図5(b)と同じ状態である)。即ち、吸引具92a乃至dは、図8(c)に示すように、左右方向に見て片端縁規制部材30から離隔する方向に水平移動する。かくすると、共通支持部材94の下端部が他方下側制限片104aに当接して、共通支持部材94は旋回中心軸線100を中心として図8(c)において反時計方向に旋回させられる。これによって、共通支持部材94に設けられた吸引具92a乃至dも分離方向において接近位置から分離位置まで旋回させられる(図8(c))。このとき、上述したとおり、最前端の被搬送物C1と、これの直後(即ち前から2番目)に位置する被搬送物C2とが分離せしめられる。その後に、吸引具92a乃至dは分離方向において分離位置の状態を維持したまま前後方向において前進位置から後退位置に後退移動される(図8(d))。しかる後に、吸引具92a乃至dは、図8(e)に示すとおり、左右方向において作用位置から放出位置に移動する。放出位置においては、共通支持部材94の下端部及び上端部が一方下側制限片104b及び一方上側制限片104cと夫々当接することで、吸引具92a乃至dは分離方向において分離位置にせしめられる。そして、図8(e)に示す状態にて、吸引具92a乃至dは作動状態から非作動状態に切り換えられ、被搬送物C1を放出する。被搬送物C1を放出した後は、吸引具92a乃至dは、ばねによる復元力等の図示しない適宜の姿勢戻し手段によって分離方向において分離位置から接近位置に旋回せしめられながら左右方向において放出位置から作用位置まで移動せしめられ、再び図8(a)に示す基準状態となる。
以上本発明の搬出装置について添付図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。例えば、本実施形態においては、第一の支持部材が幅方向に傾斜せしめられていることよって片側縁規制部材は傾斜せしめられていたが、これに替えて、第一の支持部材を水平として片側縁規制部材も実質上水平にしてもよい。さらに、本実施形態においては、第一の支持部材は1つの平板により構成されこの平板に溝が形成されているが、これに替えて、支持基板を搬送方向に延びる複数の平板を幅方向に間隔をおいて配置せしめ、幅方向に隣接する平板の間に溝が規定されるようにしてもよい。また、本実施形態においては、搬送経路は水平方向に直線状に延在しているが、これに代えて、搬送経路を曲線状又は上下方向に延在するようにしてもよい。更に、本実施形態においては、吸引具は旋回中心軸線を中心として分離方向に旋回自在であったが、これに替えて、吸引具が分離方向に直線状に移動するようにしてもよい。
更にまた、本実施形態においては、吸引具は被搬送物の幅方向に間隔をおい少なくとも2個配設されていたが、これに替えて、吸引具は被搬送物の幅方向に延在する単一のものであってもよい。吸引具を被搬送物の幅方向に延在する単一のものとした場合には、吸引具は、被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の端が被搬送物の規制されている片端縁から遠ざかり且つ規制されている片側縁に接近する分離方向及びその反対方向に移動自在となるようにする。この場合にも、被搬送物の他端縁を規制する部材が存在するか否かに拘わらず、被搬送物の幅方向に延在する吸引具を最前端の被搬送物の前面に吸着した状態で、被搬送物の規制されている片側縁から遠い方の端が被搬送物の規制されている片端縁から遠ざかり且つ規制されている片側縁に接近する分離方向に移動することによって、被搬送物を圧縮してその一部を前方に湾曲突出させて、被搬送物の片端縁部を片端縁部規制手段から離脱せしめることができる。