JP2019101021A - 生体物質保持装置、および生体物質の検出方法 - Google Patents

生体物質保持装置、および生体物質の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、生体物質保持装置において、生体物質を含んだ試料を効率よく撹拌させる装置を提供することにある。【解決手段】生体物質を保持可能な保持部を設けた基板と、前記基板の上に被せられた開口部を有するスペーサと、磁力発生部と、を備え、前記基板と前記スペーサとによって形成された空隙内に投入された磁性粒子に対して、前記磁力発生部からの磁力を垂直方向又は水平方向に移動させながら作用させることを特徴とする生体物質保持装置を提供する。【選択図】 なし

Description

本発明は、生体物質保持装置、および生体物質のより高精度な検出方法に関する。
近年、血液などの体液や、臓器などの組織を溶液に懸濁もしくは分散して得られる組織懸濁液や、細胞培養液といった試料から細胞を選択的に分離回収し、当該分離回収した細胞を基礎研究や臨床診断、治療へ応用する研究が進められている。例えば、癌患者より採取した血液から腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell、以下CTCと表記)を採取し、当該細胞について形態学的分析、組織型分析や遺伝子分析を行ない、前記分析により得られた知見に基づき治療方針を判断する研究が進められている。
しかしながら、CTCは存在確率が非常に低く(試料が癌患者由来の全血の場合、全血1mLあたり数個程度)、高感度な検出を必要とする。CTCは通常、DAPI(4’,6−DiAmidino−2−PhenylIndole)などの核標識試薬で標識され、サイトケラチン(CK)やEpCAM(Epithelial cell adhesion molecule)など上皮系細胞に特異的に有するタンパク質に対する標識抗体で標識され、かつCD45など白血球に特異的に有するタンパク質に対する標識抗体では標識されない細胞をCTCとして判定している。しかしながら、CTCの中には前記上皮系細胞に特異的に有するタンパク質の発現量が低い細胞が存在し(例えば、特許文献1参照)、希少なCTCを取りこぼし無く検出するには、CTCを明瞭かつ正確に標識して白血球などの夾雑細胞と区別し、高精度に細胞を検出する必要がある。
WO2015/112955号
本発明の課題は、生体物質保持装置において、生体物質を含んだ試料を効率よく撹拌させる装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち本発明の第一の態様は、
生体物質を保持可能な保持部を設けた基板と、
前記基板の上に被せられた開口部を有するスペーサと、
磁力発生部と、
を備え、
前記基板と前記スペーサとによって形成された空隙内に投入された磁性粒子に対して、前記磁力発生部からの磁力を垂直方向又は水平方向に移動させながら作用させることを特徴とする生体物質保持装置である。
また、本発明の第二の態様は、前記保持部が水平面に対し垂直方向に設けた凹部であり、前記磁力発生部が前記基板の水平方向かつ短軸方向に移動可能とする移動手段を有することを特徴とする。
また、本発明の第三の態様は、
生体物質を保持可能な保持部を設けた基板に前記生体物質を含む試料を導入する工程と、
前記生体物質を前記保持部に保持させる工程と、
前記生体物質を認識する物質および磁性粒子を含む溶液を前記基板に導入する工程と、
前記磁性粒子を磁力により移動させることで前記試料を撹拌し、前記生体物質を前記認識物質で標識する工程と、
前記標識の有無に基づき、生体物質を検出する工程と、
を含む、検出方法である。
本発明は、試料中に含まれる生体物質の検出を、基板に設けた保持部に生体物質を保持し、前記生体物質を標識後、前記標識の有無に基づき行なう場合、試料を均一に撹拌することができ、認識物質の生体物質への標識効率が向上する。例えば、本発明を血液中に含まれる血中循環腫瘍細胞(CTC)の検出に適用することで、CTC検出結果に対する信
頼性が向上し、癌検査を精度高く行なえる。
本発明における生体物質保持装置の一例を示す図である。 本発明における生体物質保持装置の別の態様を示す図である。 図1に示す保持装置を用いた、細胞の保持および検出を示した図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において生体物質とは、試料中に含まれる生体に由来する物質であれば該当し、具体的には、細胞、ウイルス、タンパク質、核酸、糖鎖、金属イオン等があげられる。
本発明における生体物質を含む試料の一例として、全血、希釈血液、血清、血漿、髄液、臍帯血、成分採血液、尿、唾液、精液、糞便、痰、羊水、腹水、腹腔洗浄液などの生体試料や、肝臓、肺、脾臓、腎臓、皮膚、腫瘍、リンパ節などの組織の一片を懸濁して得られる組織懸濁液等があげられる。
試料が全血、血清、血漿、髄液、臍帯血、成分採血液といった血液試料である場合の、試料中に含まれる好ましい生体物質の一例としては、血液循環腫瘍細胞(CTC)などの腫瘍細胞、循環血液内皮細胞(CEC)、循環血管内皮細胞(CEP)、循環胎児細胞(CFC)、各種幹細胞があげられる。一方、試料中に含まれる夾雑物質は前述した生体物質以外の物質を指す。
保持部に保持された生体物質を標識する場合、基板とスペーサとによって形成された空隙(以下、単に「空隙」ということがある)は極めて狭いため、前記標識工程を効率的に実施するには、空隙中の組成が均一となるよう、撹拌する必要がある。本発明は、空隙中に磁性粒子を投入し、磁力発生部によって空隙中の液体を組成が均一になるまで十分に撹拌できる。
生体物質保持装置の基板に設ける保持部は、生体物質が保持できる態様であればよく、前記物質を収納可能な凹部や、前記物質を固定可能な材料(例えば生体物質が細胞の場合、ポリ−L−リジンやBAM(Biocompatible Anchor for cell Membrane))で覆われた面があげられる。なお、前記保持装置で保持させる生体物質が細胞などの粒子状物質の場合、保持部を凹部とし、かつその大きさが前記粒子状物質を一つだけ保持可能な大きさとすると、目的とする生体物質の採取および解析(細胞の場合、形態学的分析、組織型分析、遺伝子分析など)を容易に行なえる点で好ましい。
前記基板の上に被せられたスペーサはその中央に開口部を有しており、さらに生体試料の導入部および排出部を有していることが好ましい。前述した空隙は、基板の保持部及びスペーサの開口部分によって形成されている。なお、試料の飛散や蒸発を防止するためスペーサの上には電極等で蓋をしておくことが好ましい。
磁力発生部は、空隙中に存在する磁性粒子を移動させることが可能な磁力を発生可能な手段であれば、その態様に限定はない。一例として、生体物質保持装置の垂直方向または水平方向に複数の電磁石を設け、当該電磁石に一定の周期で電流を印加することで励磁させる(磁力を発生させる)態様があげられる。また、別の例として、生体物質保持装置の垂直方向または水平方向に永久磁石を設け、当該磁石を移動手段を通して垂直方向または水平方向に移動させる態様もあげられる。なお、生体物質保持装置に備える基板に設けた保持部が凹部であり、かつ当該凹部が水平面に対し垂直方向(すなわち重力と同じ方向)に設けている場合、磁力発生部を生体物質保持装置の水平方向に備えると、重力と垂直方向(基板と水平方向)に磁性粒子が動き、より効率的に撹拌できるため好ましい。また、前記基板の平面形状が長方形、角丸長方形、楕円形である場合、磁力発生部を当該基板の短軸方向に挟むように備えると、より速やかに磁性粒子を移動させることができ、空隙中をより効率的に撹拌できるため好ましい。
磁性粒子は、前述した磁力発生部により発生した磁力により空隙中を移動可能な磁力を有した粒子であり、かつ生体物質に対する結合性を有さない粒子であれば、材質や粒径などの限定はない。ただし、空隙中を撹拌後、基板に設けた凹部に保持された生体物質を、当該空間内に磁性粒子を有したまま光学的に検出する場合、前記検出系では検出できない大きさの磁性粒子や、自家蛍光がない、または低い磁性粒子を用いるとよい。
次に、溶液中に含まれる生体物質の検出について具体的に説明する。
(1)生体物質を保持可能な保持部を設けた基板に前記生体物質を含む試料を導入する工程
(2)前記生体物質を前記保持部に保持させる工程
(3)前記生体物質を認識する物質および磁性粒子を含む溶液を前記基板に導入する工程
(4)前記磁性粒子を磁力により移動させることで前記試料を撹拌し、前記生体物質を前記認識物質で標識する工程
(5)前記標識の有無に基づき、生体物質を検出する工程
少なくとも、以上の工程を行えば問題なく、更に(5)の工程に加え、追加の検出を行なってもよい。細胞を検出対象(生体物質)としたときの追加検出の一例として、DAPI(4’,6−DiAmidino−2−PhenylIndole)、ヘマトキシリン、Hoechst 33342(商品名)などの核標識試薬を用いた有核細胞の検出や、オレンジG、ライトグリーン、エオシンなどの細胞質標識試薬を用いた細胞検出や、明視野像に基づく細胞の大きさ/形状/模様の違いによる検出があげられる。
また、本発明の検出方法を、例えば血液試料中に含まれるCTCの検出のような、試料中に含まれる生体物質量が少ない、および/または夾雑物質量が極めて多い系に適用する場合、(1)の工程の前に、試料中に含まれる生体物質を濃縮する、および/または夾雑物質を低減させる工程(以下、単に「濃縮工程」という)を行なうと、生体物質の検出を効率的に行なえる点で好ましい。濃縮工程は、試料中に含まれる夾雑物質を低減することで生体物質をより選択的に回収できれば特に制限はない。
前記(3)の工程で基板に導入する生体物質を認識する物質の一例として、前記生体物質と特異的に結合可能な物質(以下、特異的結合物質、とも表記する)と光学的に検出可能なシグナルを発することが可能な標識物質との複合体があげられる。特異的結合物質の一例として、前記生体物質(当該生体物質が特異的に有するタンパク質も含む、以下同じ)に対する抗体や、前記生体物質と特異的に結合可能なリガンド/レクチンがあげられる。
生体物質が細胞である場合の、本発明における生体物質保持装置の一例として、図1から図3に示す細胞保持装置があげられる。
図1および図3に示す細胞保持装置100は、
貫通孔111を有した平板状の絶縁膜110と、
貫通孔121を有した平板状の遮光膜120と、
導入部131および排出部132を有した平板状のスペーサ130と、
遮光膜120の下面およびスペーサ130の上面と密着するよう設けた電極141・142と、
電極141・142同士を接続する導線150と、
電極141・142に信号を印加する交流電源160と、
を備えている。絶縁膜110が有する貫通口111と遮光膜120が有する貫通孔121とは互いに同一の寸法および形状であり、かつそれぞれの貫通孔の位置が一致するよう絶縁膜110および遮光膜120を備えている。
貫通孔111、貫通孔121および遮光膜120の下部に密着して設けた電極141により、細胞保持装置100内に細胞を保持可能な保持部170が構成され、導入部131から細胞を含む液体を導入すると保持部170へ細胞が導入される。遮光膜120は、絶縁膜110自体の自家蛍光に起因するバックグラウンドノイズや隣接する保持部170からの漏れ光に起因するクロストークノイズなどの光ノイズを低減することができ、各保持部170に保持された細胞由来の光のみを高感度かつ高精度に検出することができる。電極142はスペーサ130上面に密着して備えており、導入部131から導入した、目的細胞を含む試料の飛散や蒸発を防止している。
なお、保持部170に保持した細胞の回収を容易にするため、電極142はスペーサ130から取り外し可能な構造となっている。また、電極141・142をITO(酸化インジウムスズ)などの透明電極にすると、保持部170に保持された細胞を、顕微鏡や光学検出器を用いて検出可能となるため好ましい。
前述した細胞保持装置100のうち、電極基板については、図1に示す装置のように絶縁膜110、遮光膜120およびスペーサ130を上下方向に挟むよう備えてもよいし、図2に示す装置のように遮光膜120の下面のみに+極141aおよび−極141bを設けた櫛形電極の態様で電極141を備えてもよい。
保持部170の大きさは、1個の目的細胞のみを保持可能な大きさとすると、検出工程にて標的細胞の検出が容易になる点で好ましい。なお、細胞保持装置100へ展開させる試料中に含まれる細胞数(目的細胞と夾雑細胞との和)が、細胞保持装置100に設けた保持部170の数よりも多いことが予想される場合は、適切な細胞数が展開されるように希釈したり、展開に供する試料をあらかじめ計量するとよい。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
実施例1 本発明による撹拌効果
(1)図1に示す細胞保持装置100における導入部131から、あらかじめ3%(w/v)BSA溶液でブロッキングした磁性粒子(Thermo Fisher Scientific製)を含むトリパンブルー溶液を当該保持装置の容量の3分の1量導入後、当該保持装置の容量の3分の2量のPBS(Phosphate Buffered Saline)を導入した。なお、本操作により、細胞保持装置100内には10個の磁性粒子が含まれている。
(2)細胞保持装置100の上部左端(導入部131)側に永久磁石を設置した後、上部右端(排出部132)側との間を15分間で4往復させた。
(3)トリパンブルー溶液の色から、細胞保持装置100内空間の溶液の撹拌状態を確認した。
比較例1
実施例1の(2)を(A)静置、または以下のいずれかに示す方法で撹拌した他は、実施例1と同様に実施した。
(B)水平旋回式の振盪(300rpm、ASCM−1(アズワン製))
(C)シーソー式の振盪(傾き7度、10rpm、LabnetModel 35 Rocking Platform(Labnet製))
(D)ボルテックス式の振盪(2700rpm、VORTEX−GENIE2(サイエンティフィックインダストリーズ製))
(E)スターラー式の撹拌(1200rpm、HS−50E−B(アズワン製))
実施例1および比較例1の結果を合わせて表1に示す。今回用いた細胞保持装置100における空隙の高さは1mmしかないにもかかわらず、実施例1の方法では全体がトリパンブルーで染色されていることがわかる。このことから、本発明により、均一に撹拌できることがわかる。一方、比較例1の方法はいずれもトリパンブルーで染色されていない領域が存在した。このことから、静置しただけ(比較例1(A))、および比較例1の(B)から(E)に示す撹拌方法では、均一に撹拌できないことがわかる。
実施例2 本発明を利用した細胞検出
(1)一方の末端がメトキシ基であり、もう一方の末端がN−ヒドロオキシスクシンイミドエステル基である、分子量5000のポリエチレングリコール(mPEG−NHS)と、ウシ血清アルブミン(BSA)(300mg、0.3mmol)とを、炭酸水素ナトリウム緩衝液(0.1M、15mL)に溶解後、当該溶液を室温で3時間撹拌することでポリエチレングリコールを結合したBSA(PEG−BSA)を調製した。なお、調製する際、mPEG−NHSとBSAとのモル比(mPEG−NHS/BSA)を2となるようにした。調製後、分画分子量10000の透析膜を用いて、純水への溶液置換を3日間行なった。
(2)目的細胞としてヒト前立腺癌細胞株(LNCaP)を、5%CO環境下、10%(v/v)FBS(Fetal bovine serum)、2mMグルタミン、1.0mMピルビン酸ナトリウムを含むRPMI−1640培地を用いて37℃で24から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から剥離し、チューブに回収した。回収後、1000rpmで5分間遠心した。なお、本実施例で目的細胞として用いた腫瘍細胞(LNCaP)はサイトケラチン(CK)を発現する細胞株である。
(3)遠心後の上清を除去した後、細胞ペレットを、(1)のPEG−BSA(BSAとして0.1%(w/v))および300mMマンニトールを含む溶液1mLで再懸濁した。
(4)(3)で上清を除去した細胞懸濁液を、以下に示す方法で図1および図3に示す細胞保持装置100に保持した後、腫瘍細胞を検出した。なお、細胞保持装置100には、直径φ30μm、深さ40μmの保持部170を設けている。
(4−1)導入部131から、(3)で回収した細胞の懸濁液を導入した後、交流電源160から各電極141・142に交流電圧(電圧20Vpp、周波数1MHz、矩形波)を印加し、誘電泳動力により前記細胞を保持部170に保持させた。
(4−2)導入部131から、0.01%(w/v)ポリ−L−リジンを含む300mMマンニトール水溶液を、前記交流電圧を印加しながら導入し、3分間静置後、前記交流電圧の印加を停止し、排出部132から前記水溶液を吸引除去した。
(4−3)導入部131から、1%HCHO/50%エタノール溶液を導入し、10分間静置することで細胞を固定および膜透過後、排出部132から前記試薬を吸引除去した。その後、導入部131から、PBSを導入することで、残留した前記試薬を洗浄した。
(4−4)導入部131から、ブロッキング溶液を導入し、10分間静置することで細胞膜を透過した後、排出部132から前記試薬を吸引除去した。その後、導入部131から、PBSを導入することで、残留した前記試薬を洗浄した。
(4−5)導入部131から、目的細胞である腫瘍細胞を標識するためのFITC(フルオレセインイソチオシアネート)標識抗サイトケラチン抗体(Miltenyi Biotec製)(以下、CK−FITCと表記)、白血球を標識するためのPE(フィコエリスリン)標識抗CD45抗体(Beckman−Coulter製)(以下、CD45−PEと表記)、核染色試薬であるDAPI(4’,6−DiAmidino−2−PhenylIndole)(同仁化学研究所製)、および3%(w/v)BSA溶液でブロッキングした磁性粒子(1×10個、Thermo Fisher Scientific製)を含む細胞染色液を導入し、細胞標識を行なった(25℃、30分)。その間、細胞保持装置100の上部に永久磁石を設け、水平方向かつ短軸方向に、当該保持装置を挟むように前記磁石を往復運動させた(5分間隔で計4往復運動)。
(4−6)永久磁石を排出部132に移動させ、磁性粒子を排出してから、導入部131から、PBSを導入することで、残留した前記試薬を洗浄した。
(4−7)保持部170に保持された全ての細胞を観察するために、コンピューター制御式電動ステージおよびCMOSカメラ(浜松ホトニクス製ORCA−Flash4.0)を備えた蛍光顕微鏡(Olympus製IX71)を用いて全ての保持部の明視野像および蛍光画像を撮影した。
(4−8)(4−7)で撮影した画像を解析ソフトウェアLabVIEW(National Instruments製)を用いて解析を行ない、DAPIで染色しない(細胞核を有さない)細胞をLabVIEW上で排除した後、DAPIで染色される細胞を腫瘍細胞(LNCaP)として検出した。
(4−9)(4−8)で検出した腫瘍細胞におけるCKとCD45の輝度分布を0から255の256階調で解析し、検出した細胞に占める輝度値30以上の細胞の割合を算出した。
比較例2
実施例2の(4−5)で導入する細胞染色液に磁性粒子を含んでいない他は、実施例2と同様に行なった。
実施例2および比較例2の結果を合わせて表2に示す。磁性粒子と永久磁石を用いて撹拌する(実施例2)ことで、前記撹拌を行なわなかったとき(比較例2)と比較し、検出した細胞に占めるCK輝度値30以上の細胞の割合が向上(実施例2:65.8%、比較例2:48.1%)していた。したがって本発明により、癌細胞認識タンパク質に対する標識抗体による癌細胞への標識が効率よく行なえることがわかる。なお、実施例2において、CD45輝度値30以上を示した細胞はなかったことから、本発明による非特異的な標識は発生していないことがわかる。
実施例3 本発明を利用した保持部に含まれる細胞の保持率
(1)LNCaP細胞を、5%CO環境下、10%(v/v)FBS(Fetal bovine serum)、2mMグルタミン、1.0mMピルビン酸ナトリウムを含むRPMI−1640培地を用いて37℃で24から96時間培養後、0.25%トリプシン/1mM EDTAを用いて培地から剥離し、蛍光染色色素(CFSE、同仁化学研究所社製)で標識した。蛍光標識されたLNCaP細胞を目的とする細胞とした。
(2)(1)の細胞懸濁液を1000rpmで5分間遠心し、実施例2の(3)から(4−3)と同様の方法で、細胞を保持部へ保持し、蛍光顕微鏡(検出部200)を用いて目視により保持されたLNCaP細胞数を計測した。
(3)導入部131から、3%(w/v)BSA溶液でブロッキングした磁性粒子(1×10個、Thermo Fisher Scientific製)を含むPBSを導入した。細胞保持装置100の上部に永久磁石を設け、水平方向かつ短軸方向に、当該保持装置を挟むように前記磁石を往復運動させた(25℃、30分。5分間隔で計4往復運動)。
(4)実施例2の(4−6)と同様の方法で、磁性粒子を排出し、蛍光顕微鏡を用いて目視により保持されたLNCaP細胞数を計測し、(2)で計測した値で除することにより磁性粒子処理後の保持率を算出した。
比較例3
実施例3(3)で導入する溶液として磁性粒子を含まないPBSを用いた他は、実施例3と同様に行なった。
実施例3および比較例3の結果を合わせて表3に示す。磁性粒子と永久磁石を用いて撹拌する(実施例3)場合と、前記撹拌を行なわなかった場合(比較例3)を比較し、保持率に変化はみられなかった。したがって磁性粒子と永久磁石を用いた撹拌を行なっても、目的細胞の保持部からの脱離は発生していないことがわかる。
100:細胞保持装置
110:絶縁膜
120:遮光膜
111・121:貫通孔
130:スペーサ
131:導入部
132:排出部
141・142:電極
141a:+極
141b:−極
150:導線
160:交流電源
170:保持部
200:検出部
300:細胞
400:誘電泳動力
500:光

Claims (3)

  1. 生体物質を保持可能な保持部を設けた基板と、
    前記基板の上に被せられた開口部を有するスペーサと、
    磁力発生部と、
    を備え、
    前記基板と前記スペーサとによって形成された空隙内に投入された磁性粒子に対して、前記磁力発生部からの磁力を垂直方向又は水平方向に移動させながら作用させることを特徴とする生体物質保持装置。
  2. 前記保持部が水平面に対し垂直方向に設けた凹部であり、前記磁力発生部が前記基板の水平方向かつ短軸方向に移動可能とする移動手段を有することを特徴とする請求項1に記載の生体物質保持装置。
  3. 生体物質を保持可能な保持部を設けた基板に前記生体物質を含む試料を導入する工程と、
    前記生体物質を前記保持部に保持させる工程と、
    前記生体物質を認識する物質および磁性粒子を含む溶液を前記基板に導入する工程と、
    前記磁性粒子を磁力により移動させることで前記試料を撹拌し、前記生体物質を前記認識
    物質で標識する工程と、
    前記標識の有無に基づき、生体物質を検出する工程と、
    を含む、検出方法。
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