JP2015148510A - 磁性粒子の撹拌方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶液と共に容器に収められている磁性粒子を、溶液中で、短時間内に良好に撹拌する。【解決手段】磁性粒子Mと溶液Sとを内部に有する容器10bに、当該容器10bの外側から磁石31により磁界を作用させて、当該容器10b内の磁性粒子Mを溶液Sの液面SL近傍位置に集める。そして、液面SLよりも上方において略水平方向に延びる揺動軸Cの周りに容器10bを往復揺動させて磁性粒子Mを撹拌する。【選択図】図8

Description

本発明は磁性粒子の撹拌方法、より詳しくは、溶液と共に容器に収められている磁性粒子を溶液中で撹拌する方法に関するものである。
従来、臨床検査や診断薬開発の分野において、生体由来試料中の多種の測定対象物質を短時間で簡便に測定する方法の一つとして、免疫反応を利用した測定方法が公知となっている。この免疫反応を利用した測定方法においては、測定対象物質に特異的に結合する物質(レセプター、抗原あるいは抗体等)を固定化した担体を用いて、該物質と測定対象物質とを結合させ、得られた結合物の量を計測する等により測定対象物質を測定している。
上記担体としては多くの場合、固相(固体)が用いられるが、近時、この固相として磁性粒子を用いる測定方法が広く研究、開発されており、例えば特許文献1、2にはその種の測定方法の例が示されている。この磁性粒子を用いる測定方法においては、上記特許文献1、2にも記載されているように、磁力を利用して良好にB/F分離を行うことができる。
ところで、B/F分離を良好に行うためには、あるいは、特にイライザ法(ELISA法:サンドイッチ法)により測定を行う際に、固相の一次抗体に結合した測定対象物質を、標識された二次抗体と満遍なく接触させるためには、反応槽等の容器内に緩衝液等からなる溶液と共に収められた磁性粒子を、溶液中で良好に撹拌させることが必要になる。従来、そのように磁性粒子を撹拌する方法として、特許文献1に示されているようにスターラーや撹拌棒を用いる方法や、特許文献2に示されているように容器の下方に設置した磁石を水平円運動させる方法が知られている。
特開2005−134351号公報 特開平11−326338号公報
しかし、溶液に接触するスターラーや撹拌棒等を用いる撹拌方法には、それらに付着した試薬や試料等が、その撹拌後のさらなる撹拌工程において、本来それらが添加されてはならない別の試料等に混入するおそれが有るという問題が認められる。この問題は特に、自動機器を用いて測定を行う場合に発生しやすい。この問題を防止するには、スターラーや撹拌棒等を使用後にその都度洗浄すればよいが、そのような洗浄工程が入ることにより測定作業が煩雑になり、また測定に要する時間も長くなってしまう。他方、磁石を水平円運動させる撹拌方法においては、撹拌作用が十分ではないため、良好に撹拌するために長い時間を要するという問題が認められる。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、容器内の磁性粒子を非接触で撹拌することができ、そして短時間内で十分な撹拌作用が得られる、磁性粒子の撹拌方法を提供することを目的とする。
本発明による磁性粒子の撹拌方法は、磁性粒子と溶液とを内部に有する容器に、当該容器の外側から磁界を作用させて、当該容器内の磁性粒子を溶液の液面近傍位置に集め、当該液面よりも上方において略水平方向に延びる揺動軸の周りに容器を往復揺動させて、磁性粒子を撹拌することを特徴とするものである。
容器内の磁性粒子を溶液の液面近傍位置に集める方法としては、容器の外側から溶液の液面近傍位置に磁石を作用させて磁性粒子を集めることにより行っても、容器の外側から磁石を作用させて磁性粒子を集め、該磁石を溶液の液面近傍位置に移動させることにより行ってもよい。容器内の溶液中に磁性粒子が分散している場合には、前者が好ましく、容器底面に磁性粒子が沈澱している場合には、後者が好ましい。
揺動軸は、液面よりも上方にあればよく、具体的には、液面より2mm以上上方にあるのが好ましい。また、揺動軸の上限は、容器の上面(上端)より下方であるのが好ましい。
なお、上記磁性粒子は、当該磁性粒子の集合体の少なくとも一部が反応液の液面と同じ高さになるように集めるのが好ましい。容器を往復揺動させると液面上の反応液が最も動くため、液面近傍位置に磁性粒子を集めることで、磁性粒子を効率よく撹拌することができる。
あるいは磁性粒子を、該磁性粒子の集合体の上端が、反応液の液面から下に、容器底面から反応液の液面までの距離の半分以下の距離離れて位置するように集めてもよい。
また、磁性粒子と溶液とを収める容器としては、上記揺動軸と平行な方向の容器内壁の距離の最大値が、揺動軸に直角な方向の容器内壁の距離の最大値よりも短いものを用いることが望ましい。
そのような容器としてより具体的には、深さ方向に直交する面内の内周面の断面形状が略楕円形であるものを好適に用いることができる。そのような容器を用いる場合、上述した2つの容器内壁の距離の最大値についての関係を満足するためには、揺動軸と平行な方向の容器内壁の距離の最大値が楕円の短軸長さとなり、揺動軸に直角な方向の容器内壁の距離の最大値が楕円の長軸長さとなるように容器を配置すればよい。
また、上記2つの容器内壁の距離の最大値についての関係を満足する容器としてはその他に、深さ方向に直交する面内の内周面の断面形状が、略ひし形のもの、略ひし形の向かい合う2つの頂部が面取りされてなる六角形のもの、略三日月形のもの、略長方形のもの等も用いることができる。
また、上述したように揺動軸と平行な方向の容器内壁の距離の最大値が、揺動軸に直角な方向の容器内壁の距離の最大値よりも短い容器を用いる場合は、磁性粒子を、揺動軸と平行な方向の容器内壁の距離の最大値を形成する2つの側壁面の一方の内壁面上に集めることが望ましい。
また、磁性粒子を集める処理は、上記往復揺動の開始前後の適当な時に打ち切るのが好ましく、往復揺動の開始と同時または開始後に打ち切るのが好ましく、開始後に打ち切るのがより好ましく、往復揺動が開始した直後に打ち切るのが特に好ましい。また、磁性粒子を集める処理を往復揺動の開始前に打ち切る場合には、磁性粒子が落下して容器底面に接する前に往復揺動を開始するのが好ましい。ここでいう「磁性粒子を集める処理の打ち切り」とは、容器外側の磁石による磁界が容器内の磁性粒子に影響を及ぼさないことを意味する。例えば、磁界を発生させる磁石を容器から離れた位置に動かす、磁界を発生させる磁石の磁力を弱めるまたは磁力を切ることによりなされる。より具体的には、往復揺動により磁性粒子が十分に撹拌される程度に、磁界を発生させる磁石を容器から離れた位置に動かす、磁石の磁力を弱めるまたは磁力を切ることによりなされる。
また、上記揺動軸は、容器を横方向に貫く位置に設定することが望ましい。
また、本発明の撹拌方法において、磁性粒子と溶液とを収める容器は、直立に配置させて往復揺動させることが望ましい。
さらに、本発明の撹拌方法において上記容器は、該容器の他の少なくとも1つの容器と共に、揺動軸と平行な方向に並設されたものであることが望ましい。
そして、上記少なくとも1つの容器は、試薬貯蔵用容器であることが望ましい。
本発明による磁性粒子の撹拌方法においては、磁界を作用させて容器内の磁性粒子を溶液の液面近傍位置に集めると共に、液面よりも上方において略水平方向に延びる揺動軸の周りに容器を往復揺動させて磁性粒子を撹拌するようにしたので、磁性粒子の溶液中での動きが大きくなり、極めて良好な撹拌効果が得られ、よって、この撹拌処理を短時間で済ませることが可能になる。
またこの撹拌方法において、特に容器として、揺動軸と平行な方向の容器内壁の最大距離が、揺動軸に直角な方向の容器内壁の最大距離よりも短いものを用いる場合は、以下のさらなる効果も得られる。すなわちその場合は、前者の容器内壁の距離の最大値を形成する2つの側壁(側壁1と2)の一方(例えば側壁1)の外側に磁石を配置することにより、他方の側壁(側壁2)の内面近辺に有る磁性粒子から該磁石までの距離をより短くすることができるので、短時間で効果的に磁性粒子を集めることが可能になる。その一方、揺動軸に直角な方向の容器内壁の距離の最大値が比較的長くなっていれば、容器に求められる必要十分な容積を確保しやすくなる。そして、この容器内壁の距離の最大値が比較的長くなっていても、揺動軸周りの容器の往復揺動は、該容器内壁の距離の最大値を形成する2つの側壁(側壁3と4)が向かい合う方向を含む面内で行われることになるので、それらの側壁間を行き来するような液流が生じ、その結果、溶液や磁性粒子の撹拌が良好になされ得る。
なお、容器内壁の断面形状が長方形である場合について、上記説明中の側壁1〜4を示した概略図を図13の(7)に示す。また、同様に、その他の断面形状における側壁1〜4を示す概略図も図13の(1)〜(6)に示す。これらの図において、Mが磁性粒子、そして31が磁石を示している。
ここで、上記揺動軸に直角な方向の容器内壁の距離の最大値は、上記揺動軸に平行な方向の容器内壁の距離の最大値の1.2〜10倍であれば上記効果を奏することができる。
また上述のような容器として特に、深さ方向に直交する面内の内周面の断面形状が略楕円形であるものを用いる場合は、容器内に磁性粒子が引っ掛かって停滞するような部分が無いことから、より短い時間で確実に撹拌を行うことが可能になる。
本発明による磁性粒子の撹拌方法を実施する装置の一例を示す正面図 図1の装置の要部を示す拡大正面図 図1の装置の要部を示す斜視図 図1の装置において用いられる自動測定用カートリッジを示す斜視図 図1の装置の後面図 図1の装置における磁石が作用位置にあるところを示す後面図 図1の装置における磁石が図6とは異なる高さ位置にあるところを示す後面図 図1の装置における磁石と自動測定用カートリッジとの相対位置関係を示す概略図 上記相対位置関係の別の例を示す概略図 上記相対位置関係のさらに別の例を示す概略図 上記相対位置関係のさらに別の例を示す概略図 本発明の撹拌方法に適用され得る容器の断面形状例を示す概略図 上記容器の断面形状例ごとの容器側壁と、磁石との相対位置関係を例示する概略図
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である方法により磁性粒子を撹拌するようにした測定装置1の正面形状を示すものであり、また図2および図3はそれぞれ、この測定装置1において磁性粒子の撹拌に関わる要部を示す拡大正面図および斜視図である。
図1〜3に示されるように測定装置1は、後述する自動測定用カートリッジ(以下、単に「カートリッジ」という)10をそれぞれ先端部で支持するように互いに水平方向に間隔を置いて配置されたカートリッジ支持台11および12と、これらのカートリッジ支持台11および12を上方において連結する連結ブロック13と、一方のカートリッジ支持台11の後端部下側に固定されて軸Cを中心に回動可能とされた回動部材15と、他方のカートリッジ支持台12の後端部下側に固定されて軸Cを中心に回動可能とされた回動部材16と、回動部材15および16をそれぞれ回動自在に保持する軸受17および18と、回動部材15に連結されて軸Cの周りに回動するシャフト19と、このシャフト19に連結されて該シャフト19を軸Cの周りに所定角度で往復回動させるカートリッジ揺動モータ20とを有している。なお、カートリッジ支持台11の先端にはテーブル11aが形成されて、このカートリッジ支持台11は概略T字形のものとされている。同様にカートリッジ支持台12の先端にはテーブル12aが形成されて、このカートリッジ支持台12も概略T字形のものとされている。
なお説明を容易にするために、垂直方向をZ方向、軸Cに平行な水平方向をY方向、Y方向およびZ方向に直角な方向をX方向と規定する。
上記連結ブロック13は、水平方向に互いに間隔を置いて配置された縦部材21および22と、これらの縦部材21および22の上端を連結する水平部材23と、一方の縦部材21の内側に保持されたガイドコロ25と、他方の縦部材22の内側に保持されたガイドコロ26とを備えている。これらのガイドコロ25および26はそれぞれ、上述した軸Cと平行な水平軸を中心に回転可能とされると共に、図示外の付勢手段により下方に付勢した状態で保持されている。なお上記縦部材21はカートリッジ支持台11と一体化され、縦部材22はカートリッジ支持台12と一体化されている。また、水平部材23には細長い開口23aが形成されて、この開口23aから後述する試料の供給や、試薬の分注等がなされ得るようになっている。
ここでカートリッジ10について、図4を参照して説明する。このカートリッジ10は一例として、試料中に含まれる微量物質を自動測定するためのものであり、板状の基部10aと、この基部10aに開口した状態で下方に延びる有底筒状の反応槽10bと、同じく基部10aに開口した状態で下方に延びる有底筒状の試薬槽10c、10d、10eおよび10fとを有する。図4の場合、反応槽10bは、その深さ方向に直交する面内の内周面の断面形状が、ほぼ全高に亘って略楕円形である形状とされている。また基部10aの両端部にはそれぞれ切欠10gが形成されている。このような構造のカートリッジ10は、例えば合成樹脂を成形して作製される。上記試料としては、血清、血漿、尿等の生体体液、リンパ液、血球、各種細胞類等の生体由来の試料等が挙げられる。
上記反応槽10bは本発明における「容器」として機能するものであり、その内部には予め、所定の一次抗体を担持した固相としての磁性粒子および、所定の緩衝液が収められ、また試薬槽10c〜10fには予め各々所定の試薬が収められる。そして図4では省略しているが、基部10aの上面には、上記試薬等を収めた各槽10b〜10fの開口を閉じるアルミシートや合成樹脂フィルム等からなるカバーシートが貼着され、カートリッジ10はその状態で取り扱われる。
次に図5〜7は、図1に示す構成を後面側から見た状態を示すものであり、図5は後述する磁石31が待機位置にある状態を、また図6および図7は磁石31が作用位置にある状態を示している。なお図6と図7は、磁石31が互いに異なる高さ位置にある状態をそれぞれ示している。
これらの図5〜7に示される通り、カートリッジ支持台12の下方には、非磁性材料からなる概略L字状の磁石固定部材30が配設され、この磁石固定部材30の上端近傍に磁石31が固定されている。磁石固定部材30は、アーム32の先端部の上に固定されている。アーム32は、前後動ブロック33と一体的に形成された保持部34に、軸35を中心として揺動自在に取り付けられている。アーム32の後端部にはローラ36が軸37を中心として回転可能に取り付けられている。アーム32は、ローラ36が取り付けられた後端側が先端側よりも重い状態に形成されており、それによりローラ36は常に載置台60の上に載った状態を維持する。なおアーム32は、このように重力によって付勢する他、バネ等によって軽く弾力的に付勢するようにしてもよい。
また測定装置本体側のフレーム43には、水平方向に延びる状態にして2本のガイドロッド40、41(図1参照)が固定されており、上記前後動ブロック33はこれらのガイドロッド40、41に沿って前後方向、つまり±Y方向に移動自在とされている。そして、前後動ブロック33にはラック42が一体的に固定され、このラック42には、測定装置本体側のフレーム43に固定された磁石前後動モータ50によって回転されるピニオン(平歯車)44が噛合している。磁石前後動モータ50は正逆回転可能であり、この磁石前後動モータ50が駆動すると、上記ピニオン44およびラック42を介して、前後動ブロック33が±Y方向に移動する。
一方、上記載置台60は、装置本体側のフレーム61に固定されたガイドレール62に沿って上下方向に移動自在に配設され、そしてこの移動台60の下部にはローラ63が回転自在に取り付けられている。また、フレーム61には磁石上下動モータ65(図1参照)が取り付けられ、そしてこの磁石上下動モータ65の出力軸にはカム66が固定されている。このカム66は、その周面が上記ローラ63の周面と接する状態に配設されている。
次に、図4に示したカートリッジ10を用いて行う測定について説明する。なお本実施形態においては、磁石31を比較的高い位置と、比較的低い位置のいずれかに選択的に配置可能とされており、以下では最初に、磁石31が比較的高い位置に設定される場合について説明する。
この測定を行う際、磁石固定部材30は先ず図5に示す待機位置に設定されている。そして、前述したカバーシートが例えば自動剥離手段により剥がされて、該カートリッジ10が測定に供される。測定に当たっては先ず検査対象の試料(例えば血清)が所定量、例えば自動ピペット(図示せず)等によって、カートリッジ10の反応槽10bに供給される。反応槽10b内には前述した通り、所定の一次抗体を担持した磁性粒子が緩衝液と共に収められており、もし血清内にこの一次抗体と特異的に結合する抗原等の測定対象物質が存在していれば、それらが反応し互いに結合する。該反応を短時間で進めるため、ピペット等によりこれらの溶液を3〜10回吸い吐きしてもよく、下記で説明する本発明の撹拌方法により撹拌してもよい。
次に、必要に応じて、磁性粒子に付着している測定対象物質以外の物質を生理食塩液等の洗浄液によって洗い落とす洗浄処理がなされる。該洗浄処理は、例えば、(i)試薬容器外部の磁石(例えば磁石31)を使用して磁性粒子を集磁しておいて反応槽10b中の溶液(試料と緩衝液)を吸引ノズルにより吸引した後、(ii)磁性粒子を集磁したまま反応槽10b中に洗浄液を吐出し、吸引及び吐出を繰り返すことにより行えばよい。洗浄処理後、反応槽10b中の溶液は除去される。
その後、カートリッジ10は図示外の公知の供給手段により、カートリッジ支持台11および12に対して側方から、つまりX方向に供給される。このときカートリッジ10は、その基部10aの両端部下面がそれぞれカートリッジ支持台11および12のテーブル11aおよび12aの上に載る状態で供給される。こうしてカートリッジ10が供給されると、基部10aの両端部が、回転するガイドコロ25および26によって上方から弾力的に押圧される。そして、カートリッジ10が所定の位置まで供給されると、該カートリッジ10の基部10aの両端部に形成されている切欠10g、10gにそれぞれガイドコロ25、26が嵌入する。それによりカートリッジ10は、X、YおよびZ方向の位置が全て規定された状態で、テーブル11aおよび12aの上に支持される。
カートリッジ10がこの状態になった後、試薬槽10c〜10fのいずれかに収められている試薬が反応槽10b内に分注される。本実施形態においてこの試薬は、例えば、ペルオキシダーゼ(POD)等の酵素により標識されてなる、抗原である上記測定対象物質と特異的に結合する二次抗体を含むものである。ここで、再現性の良い高精度の測定を行う上では、一次抗体を介して測定対象物質を捕捉している磁性粒子を反応槽10b内の溶液(本実施形態では前記緩衝液、血清および上述したような試薬からなる)中で良く撹拌して、試薬中のPOD等で標識された二次抗体と満遍なく接触させる必要がある。また、測定に要する時間用されるが、この撹拌方法については後に詳述する。
上記撹拌がなされている時あるいはその後に、必要に応じて前述と同様の洗浄処理が行われ、次いで試薬槽10c〜10fのいずれかに収められているルミノールおよび過酸化水素が反応槽10b内に分注される。それにより上記酵素がルミノールを化学発光させ、その発光量(一例として1秒間の化学発光積算量)が例えば図示外の化学発光分析計にて測定される。この発光量は上記標識された二次抗体の量、つまりは測定対象物質の量と対応するので、該発光量に基づいて測定対象物質の量が測を短縮するために、この撹拌を迅速に行うことも求められる。そのために本発明の方法が適定される。
次に、上記撹拌方法について説明する。この撹拌を行う際には、先ず磁石前後動モータ50が正方向、すなわち図1においてピニオン44を時計方向に回転させる方向に所定量回転駆動される。それによりラック42が、つまりは前後動ブロック33が−Y方向に所定距離移動し、図5の状態から図6の状態に移行する。図6の状態になったときの磁石固定部材30とカートリッジ10との相対位置関係を、図8に示す。
この図8では、前述した緩衝液、血清および試薬がカートリッジ10の反応槽10b内で混合してなる溶液をS、その液面をSL、磁性粒子をMとして示してある。ここに示される通り溶液Sの量は、液面SLがカートリッジ10の揺動軸Cよりも低い所に位置するように設定されている。上述のように前後動ブロック33が移動することにより磁石固定部材30は反応槽10bに近接した位置に設定され、そこに固定されている磁石31は、その上下方向中心が液面SLとほぼ揃った高さ位置において溶液Sに近接する。
磁石31がこのように近接するまで、磁性粒子Mは図8中に破線で示すように主に反応槽10bの底面に集まっているが、磁石31が近接するとその磁力により引き寄せられて、同図中に実線で示すように、反応槽側壁10jの内面において液面SLの近傍位置に集まって集合体を形成する。
なお反応槽10bは、前述した通りその内周面が略楕円形のものとされている。そこで反応槽10bは、軸Cと平行な方向(Y方向)に向かい合う2つの側壁10j、10k間の距離の最大値が、揺動軸Cに直角な方向(X方向)に向かい合う2つの側壁間の距離の最大値よりも短い状態となっている。このように、2つの側壁10j、10k間の距離が、揺動軸Cに直角な方向に向かい合う2つの側壁間の距離よりも比較的短くなっていることにより、反応槽10b内の磁性粒子Mは迅速かつ確実に、側壁10jの内面まで引き寄せられるようになる。
上述のようにして磁性粒子Mが集合した状態になると、次に、例えばステッピングモータ等からなるカートリッジ揺動モータ20が、その出力軸を所定の角度ずつ正方向、逆方向に往復回動するように駆動される。それにより、上記出力軸と連結されているシャフト19および回動部材15が同様に回動するので、回動部材15に固定されているカートリッジ支持台11が軸Cの周りに往復揺動する。このとき、カートリッジ支持台11と連結ブロック13を介して連結されているカートリッジ支持台12も同様に往復揺動する。そこで、カートリッジ支持台11および12の上に支持されているカートリッジ10も同じように揺動する。このように本実施形態においては、回動部材15の回動軸Cがカートリッジ10の揺動軸となっている。
こうして、カートリッジ10が、つまり反応槽10bが揺動軸Cを中心にして揺動されるとき、この揺動軸Cのやや下に位置する液面SL近辺では、溶液Sが極めて良好に撹拌される。したがって、この液面SLを挟んで上下に存在するように集合していた磁性粒子Mも、磁石31を引き離せば、試薬中に良好に撹拌、分散され、そこに捕捉されている測定対象物質に結合した標識物質が、短時間内に前記試薬と満遍なく接触するようになる。
なお、この撹拌処理を行った後に、前述したものと基本的に同様の洗浄処理を行えば、固相に結合している成分(Bound)から液相成分(Free)を分離させる、いわゆるB/F分離がなされる。
反応槽10bは、前述したように図8中のY方向に向かい合う2つの側壁10j、10k間の最大距離が比較的短い形状となっているので、磁性粒子Mを側壁10jまで引き寄せる上で有利となっている。その上で、反応槽10bの容積を所定量確保するためには、図8中のX方向に向かい合う2つの側壁間の最大距離を比較的長く設定する必要があるので、反応槽10bは前述した通り内周面の断面形状が略楕円形のものとされている。こうして反応槽10bのX方向に向かい合う2つの側壁間の最大距離が比較的長くなっていても、該X方向を含む面内で反応槽10bを揺動させているので、主に該2つの側壁間を行き来するような液流が生じ、その結果、溶液Sや磁性粒子Mの撹拌が良好になされ得る。
なお反応槽10bとしては、内周面の断面形状が略楕円形のものが好ましいが、この形状に限らず、略ひし形、略正方形、略長方形、5〜8角形の略多角形、これらの一部または全ての角が弧となっているもの、円形等その他の断面形状を有するものも適用可能である。ただし、揺動軸Cと平行な方向の容器内壁の距離の最大値が、揺動軸に直角な方向の容器内壁の距離の最大値よりも短い形状のもの(略ひし形、略長方形、5〜8角形の略多角形、これらの一部または全ての角が弧となっているもの、略楕円形等)を用いれば、上述したように磁性粒子Mを迅速に集めると共に、良好な撹拌効果を得ることができる。また、内周面の断面形状が角を有さないもの(略ひし形、略正方形、略長方形、および5〜8角形の略多角形の角が弧となっているもの、略楕円形、略円形等)は、磁性粒子Mが引っ掛かって停滞するような部分が無いので、短時間内に撹拌する上で特に好適である。
図12には、反応槽10bの側壁内周面の断面形状例を6つ概略的に示してある。これらの例では、側壁内周面をそれぞれ10S1、10S2、10S3、10S4、10S5、10S6として示している。同図の(1)に示す側壁内周面10S1は断面形状が略楕円形のもの、(2)に示す側壁内周面10S2は断面形状が、ひし形の2つの頂角を面取りした形のもの、(3)に示す側壁内周面10S3は断面形状がひし形のもの、(4)に示す側壁内周面10S4は断面形状が概略三日月形のもの、(5)に示す側壁内周面10S5は断面形状が概略角丸長方形のもの、(6)に示す側壁内周面10S6は断面形状が概略五角形のものである。なお、この図12における(1)〜(6)の番号と、先に説明した図13における(1)〜(6)の番号については、側壁内周面の形状が同じもの同士で同じ番号を付してある。また、図12の(1)〜(6)において、揺動軸と平行な方向の容器内壁の距離の最大値をaとし、揺動軸と直角な方向の容器内壁の距離の最大値をbとして示してある。
磁石31を固定している磁石固定部材30は、反応槽10bの揺動の直前、同時または揺動開始直後まで図6に示す位置に配される。磁石固定部材30は、該揺動開始後、好ましくは揺動開始直後に図5に示す待機位置に戻される。このとき磁石固定部材30を戻す操作は、磁石前後動モータ50が前述の場合とは逆方向に所定量回転駆動されることによってなされる。なお、それに限らず磁石固定部材30は、反応槽10bの揺動が開始してから多少の時間が経過したとき、該揺動が継続している間に待機位置に戻すようにしても構わない。
上記撹拌の処理が終了した後、前述したルミノールおよび過酸化水素の分注、並びにそれに続く化学発光の測定がなされて、試料に対する一連の測定が完了するが、本発明の方法を適用して磁性粒子の撹拌を迅速に行うことにより、従来と比べて一連の測定に要する時間を短縮することができる。具体的には、撹拌所要時間が従来1分程度であった測定において、この所要時間を10秒程度に短縮することが可能になる。
なお本実施形態の方法は、溶液液面SLが図8に示す位置より低い位置に有る場合にも対応可能となっている。以下、その点について説明する。この場合は、図5に示した状態から前後動ブロック33を移動させる前に、磁石上下動モータ65(図1参照)が所定方向に所定量回転駆動される。そこでカム66が図5に示す回転位置から図7に示す回転位置に移動し、ローラ63を介して載置台60を所定距離上昇させる。すると、載置台60の上に載っているローラ36が押し上げられるので、アーム32は軸37を中心として図7中で時計方向に揺動し、その先端部が所定量だけ下降する。
この状態になったときの磁石固定部材30とカートリッジ10との相対位置関係を、図9に示す。ここに示される通り、アーム32の先端部が下降したことにより、磁石固定部材30に固定されている磁石31の位置が図8の場合と比べてより低くなるので、反応槽10b内の溶液液面SLが比較的低い位置に有っても、その液面SLの近傍位置に磁性粒子Mを集めることが可能になる。
なお以上説明した実施形態では、磁性粒子Mの集合体の一部が溶液液面SLと同じ高さとなるように、つまり、磁性粒子Mの集合体が溶液液面SLを間に置いてその上下に存在するように磁性粒子Mを集めている。しかし本発明の方法においてはそれに限らず、図10に示すように、磁性粒子Mの集合体の下端が溶液液面SLに接する程度に磁性粒子Mを集めてもよい。
さらには図11に示すように、磁性粒子Mの集合体の上端が溶液液面SLから下に、微小距離ΔLだけ離れて位置する状態に磁性粒子Mを集めてもよい。ただしこの距離ΔLは、容器底面から反応液の液面までの距離の半分以下とする。このような形態で磁性粒子Mを集めることも、本発明で規定している「磁性粒子を溶液の液面近傍位置に集め」という概念に含むものとする。
また、以上説明した実施形態では反応槽10bの揺動軸Cが、この反応槽10bを横方向(Y方向)に貫く位置に設定されているが、揺動軸Cは、反応槽10bからX方向に少し離れた位置に設定してもよい。しかし、上記実施形態のようにすれば、反応槽10bの揺動幅を比較的小さくしても良好な撹拌効果が得られる。この揺動幅が小さければ、測定装置を小型に形成する上で有利となる。
なお、本発明の方法が撹拌対象とする磁性粒子は、磁力線に大きな影響を与えるものであれば何れでもよく、具体的には、例えば鉄、コバルト、ニッケル、またはこれらの酸化物からなる粒子、あるいはは、鉄、コバルト、ニッケル、またはこれらの酸化物を含有するシリカ粒子等が挙げられ、中でも酸化鉄を含有するシリカ粒子等が好ましい。酸化鉄としては、例えばマグネタイト、γ-ヘマタイト、マグネタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄、γ-ヘマタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄等が好ましく、マグネタイトが好ましい。具体的には、国際公開WO2012/173002に記載されたものを用いることができる。
また、磁性粒子の形状としては、溶液中で分散しやすいものであれば特に形は限定されないが、球状または楕円球状が好ましいものとして挙げられ、中でも球状が好ましい。球状とすることで、表面積のばらつきが小さくなり、磁性粒子に固定化する物質の量を一定とすることができ、それにより精度の高い測定が可能となる。したがって、球状の磁性粒子を用いる場合、真球率が高いほど測定精度も高くなり、精度の高い測定が可能となる。
また、磁性粒子の大きさは、溶液中で分散しやすい大きさであればよく、具体的な大きさとしては、球状の場合、その直径は通常0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは1〜3μmである。
さらに磁性粒子には、その腐食や劣化を防止すること、および測定対象物質に結合する物質を固定化し易くすることを目的として、コーティングを施すことが好ましい。この磁性粒子をコーティングする物質(コーティング物質)としては、測定対象物質に結合する物質を固定化できるものであれば特に限定はされないが、例えば金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト等の金属、例えばナイロン、ポリスチレン、ポリプロピレン等のポリマー等が挙げられ、好ましくは、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト等の金属である。中でも金等は、完全に磁性粒子をコーティングすることができるので、特に磁性粒子として鉄等の錆びるものを用いた場合には、防錆効果をも奏するので好ましい。また、金等を用いると薄膜状で均等にコーティングし得、表面積のばらつきを小さくできるので固定化する物質の量を一定とし、その結果精度の高い測定が可能となる。なお、このコーティングは、通常この分野で行われる公知の方法で行えばよく、例えば特開平5−43903号公報の2頁カラム2 42行目〜50行目に記載の方法や、特開平9−316370号公報の3頁カラム4 32行目〜4頁カラム5 3行目に記載の方法に準じて行うことができる。
また、測定対象物質と結合する物質を磁性粒子や、あるいはコーティングされた磁性粒子に固定化する方法としては、例えば前述した特許文献1や国際公開WO2012/173002に記載されている方法を適用することができる。
以上説明した実施形態の撹拌方法は、いわゆるイライザ法(サンドイッチ法)により測定を行う場合に適用されたものであるが、本発明による磁性粒子の撹拌方法は、それ以外の方法で測定を行う場合にも適用可能である。さらには、この種の測定に限らず、容器中に溶液と共に収められた磁性粒子を撹拌する場合一般に適用可能である。すなわち、磁性粒子と溶液中の成分との撹拌反応だけでなく、磁性粒子を溶液(洗浄液等)中で撹拌して磁性粒子を洗浄する場合や、磁性粒子を溶液中で撹拌して磁性粒子を溶液中に分散させる場合等にも適用可能である。
1 測定装置
10 カートリッジ
10a 基部
10b 反応槽
10c、10d、10e、10f 試薬槽
10g 切欠
10j、10k 反応槽の側壁
10S1〜10S6 反応槽の側壁の内周面
11、12 カートリッジ支持台
13 連結ブロック
15、16 回動部材
19 シャフト
20 カートリッジ揺動モータ
25、26 ガイドコロ
30 磁石固定部材
31 磁石
32 アーム
33 前後動ブロック
40、41 ガイドロッド
42 ラック
44 ピニオン
50 磁石前後動モータ
60 載置台
62 ガイドレール
63 ローラ
65 磁石上下動モータ
66 カム
M 磁性粒子
S 溶液
SL 液面

Claims (11)

  1. 磁性粒子と溶液とを内部に有する容器に、当該容器の外側から磁界を作用させて、当該容器内の磁性粒子を溶液の液面近傍位置に集め、当該液面よりも上方において略水平方向に延びる揺動軸の周りに容器を往復揺動させる、磁性粒子の撹拌方法。
  2. 前記磁性粒子を、当該磁性粒子の集合体の少なくとも一部が反応液の液面と同じ高さになるように集める請求項1記載の磁性粒子の撹拌方法。
  3. 前記磁性粒子を、該磁性粒子の集合体の上端が反応液の液面から下に、容器底面から反応液の液面までの距離の半分以下の距離離れて位置するように集める請求項1記載の磁性粒子の撹拌方法。
  4. 前記容器として、前記揺動軸と平行な方向の容器内壁の最大距離が、揺動軸に直角な方向の容器内壁の最大距離よりも短いものを用いる請求項1から3いずれか1項記載の磁性粒子の撹拌方法。
  5. 前記容器として、その深さ方向に直交する面内の内周面の断面形状が略楕円形であるものを用いる請求項4記載の磁性粒子の撹拌方法。
  6. 前記磁性粒子を、前記揺動軸と平行な方向に向かい合う2つの側壁の一方の内面上に集める請求項4または5記載の磁性粒子の撹拌方法。
  7. 前記磁性粒子を集める処理を、前記往復揺動の開始と同時または開始後に打ち切る請求項1から6いずれか1項記載の磁性粒子の撹拌方法。
  8. 前記揺動軸を、前記容器を横方向に貫く位置に設定する請求項1から7いずれか1項記載の磁性粒子の撹拌方法。
  9. 前記容器を直立に配置する請求項1から8いずれか1項記載の磁性粒子の撹拌方法。
  10. 前記容器が、該容器の他の少なくとも1つの容器と共に前記揺動軸と平行な方向に並設されたものである請求項1から9いずれか1項記載の磁性粒子の撹拌方法。
  11. 前記他の少なくとも1つの容器が、試薬貯蔵用容器である請求項1から10いずれか1項記載の磁性粒子の撹拌方法。
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