以下、液体噴射装置の一実施形態について図面を参照して説明する。液体噴射装置は、例えば、液体の一例であるインクを噴射して用紙等の媒体に文字、写真等の画像を印刷するインクジェット式のプリンターである。なお、以下の説明では、液体噴射装置が水平面に設置されているものとする。
図1に示すように、液体噴射装置11は、直方体状の筐体12を備える。筐体12は、幅方向Xにおいて長尺とされる。筐体12は、その上面に第1カバー13と第2カバー14とを有する。第1カバー13及び第2カバー14は開閉自在に設けられ、図1においては閉じた状態にある。第1カバー13は液体噴射装置11の背面寄りに位置し、第2カバー14は液体噴射装置11の前面寄りに位置する。
筐体12は、その上面に操作パネル15を有する。操作パネル15は、液体噴射装置11に各種の指示を与えるために操作される。操作パネル15は、幅方向Xにおいて第2カバー14と隣り合う位置に配置される。操作パネル15は、例えばタッチパネルであり、各種の情報の表示及び入力が可能である。
筐体12は、その前面に排出口16を有する。排出口16は、筐体12内から筐体12外に媒体Mを排出するための開口である。本実施形態の排出口16は、幅方向Xにおいてスリット状に延びる。媒体Mは、筐体12内において液体噴射装置11の背面から前面に向かう方向に移動することにより、排出口16から排出される。そのため、本実施形態において、液体噴射装置11の背面から前面に向かう方向が、媒体Mが搬送される搬送方向Yとされる。幅方向Xは、搬送方向Y及び鉛直方向Zと異なる方向である。
次に、図2を参照して液体噴射装置11の内部構成を説明する。なお、図2は、液体噴射装置11の筐体12を取り外した状態を示す。
図2に示すように、液体噴射装置11は、その内部に所定形状のフレーム17を備える。液体噴射装置11は、媒体Mを繰り出す繰出部18と、繰出部18により繰り出される媒体Mを搬送する搬送部19と、媒体Mに液体を噴射する液体噴射部20とを備える。
本実施形態の繰出部18は、例えば未使用の媒体Mが円筒状に巻き重ねられたロールRから媒体Mを繰り出す。繰出部18は、ロールRを回転可能に支持する回転支持機構21と、回転支持機構21の駆動源となる搬送モーター22とを備える。搬送モーター22は、幅方向Xにおいてフレーム17の端部に配置される。本実施形態の搬送モーター22は、図2においてフレーム17の左端寄りに配置される。
液体噴射装置11は、収容されたロールRを上方から覆うガイドカバー18Aを有する。ガイドカバー18Aは開閉自在に設けられ、図2においては閉じた状態にある。ガイドカバー18Aは、第1カバー13と対応する位置に設けられる。そのため、第1カバー13を開くと、繰出部18が露出する。この状態からガイドカバー18Aを開くと、ロールRのセット又は交換が可能となる。繰出部18は、ロールRから媒体Mを繰り出すロール方式に限らず、筐体12に着脱可能なカセットに収容される媒体Mを繰り出すカセット方式でもよい。繰出部18は、筐体12に設けられるトレイにセットされた媒体Mを繰り出すトレイ方式でもよい。
繰出部18は、搬送モーター22が駆動することによって、回転支持機構21にセットされたロールRを回転させる。ロールRが回転すると、媒体Mが繰り出される。ロールRから繰り出される媒体Mは、搬送方向Yにおいて繰出部18よりも下流に位置する液体噴射部20に向かって繰り出される。
搬送部19は、回転可能な搬送ローラー対23を備える。搬送部19は、搬送ローラー対23が媒体Mを挟み込んだ状態で回転することにより、その媒体Mを搬送する。本実施形態の搬送ローラー対23は、搬送モーター22から輪列24を介して伝達された動力によって回転する。すなわち、繰出部18及び搬送部19は、駆動源として搬送モーター22を共有する。
幅方向Xにおいて搬送部19により媒体Mが搬送される領域を搬送領域という。媒体Mは、その幅に依らず、この搬送領域内を搬送される。搬送部19は、ローラーを用いて搬送するローラー式搬送機構に限らず、ベルトを用いて搬送するベルト式搬送機構でもよい。
液体噴射部20は、幅方向Xに延びるガイド軸25と、ガイド軸25に支持されるキャリッジ26と、液体を噴射可能な液体噴射ヘッド27とを備える。キャリッジ26は、ガイド軸25に沿って移動可能とされる。液体噴射ヘッド27は、キャリッジ26に搭載される。液体噴射ヘッド27は、キャリッジ26において媒体Mの搬送経路と対向する箇所、例えばキャリッジ26の下部に取り付けられる。
液体噴射ヘッド27は、媒体Mの搬送経路と対向する面、例えばその下面にノズル面271を有する。ノズル面271には、液体を噴射可能な複数のノズル272が配置される。液体噴射ヘッド27は、液体を噴射可能なノズル272を有する。本実施形態の液体噴射ヘッド27は、圧電素子等のアクチュエーターをノズル272ごとに有する圧電方式、所謂ピエゾ方式のインクジェットヘッドである。液体噴射ヘッド27は、圧電方式に限らず、サーマル方式又は静電方式でもよい。
液体噴射部20は、キャリッジ26を幅方向Xに往復移動させる駆動源であるキャリッジモーター28と、キャリッジモーター28とキャリッジ26とを連結する移動機構29とを備える。キャリッジモーター28は、幅方向Xにおいて搬送モーター22とは反対側の端部に配置される。本実施形態のキャリッジモーター28は、図2においてフレーム17の右端寄りに配置される。移動機構29は、キャリッジモーター28の動力をキャリッジ26に伝達可能に構成される。本実施形態の移動機構29は、一対のプーリー30と、一対のプーリー30に巻き掛けられた無端状のタイミングベルト31とを備える。
一対のプーリー30のうち、片方のプーリー30は、キャリッジモーター28の出力軸と連結される。キャリッジモーター28の出力軸が回転すると、連結されたプーリー30が回転する。プーリー30が回転すると、巻き掛けられたタイミングベルト31が一対のプーリー30に沿って周回移動する。これにより、タイミングベルト31の一部に固定されたキャリッジ26が幅方向Xに往復移動する。移動機構29は、タイミングベルト31によるベルト式移動機構に限らず、ボールねじ機構等の公知の直動機構でもよい。
液体噴射装置11は、搬送された媒体Mを支持する支持台32を備える。支持台32は、幅方向Xにおいて長尺に延び、板状に設けられる。支持台32は、印刷中における液体噴射ヘッド27の移動経路と対向する位置、例えば液体噴射ヘッド27の下方となる位置に配置される。支持台32は、支持台32に支持される媒体Mと液体噴射ヘッド27との間隔、所謂プラテンギャップを規定する。支持台32において、幅方向Xにおいて液体噴射ヘッド27が印刷可能な最大領域が印刷領域PAとされる。
液体噴射装置11は、液体噴射ヘッド27と支持台32との間の間隔を調整可能なギャップ調整機構33を有する。本実施形態のギャップ調整機構33は、幅方向Xにおいて印刷領域PAの外側となるフレーム17の端部に配置される。具体的には、ギャップ調整機構33は、幅方向Xにおいてキャリッジモーター28が位置する端部寄りに配置される。
ギャップ調整機構33は、キャリッジ26を支持するガイド軸25を昇降することにより、液体噴射ヘッド27と支持台32との間隔を媒体種に応じて調整する。ギャップ調整機構33は、ガイド軸25に対するキャリッジ26の高さを変更することにより、液体噴射ヘッド27と支持台32との間隔を媒体種に応じて調整してもよい。
液体噴射ヘッド27に液体を供給する液体供給方式として、所謂オンキャリッジタイプ又はオフキャリッジタイプを採用できる。オンキャリッジタイプでは、例えばインクカートリッジである液体収容体がキャリッジ26に対して着脱可能に装着され、この液体収容体から液体噴射ヘッド27に液体が供給される。オフキャリッジタイプでは、フレーム17に取り付けられたカートリッジホルダーに対して液体収容体が着脱可能に装着され、この液体収容体から不図示のチューブを通じて液体噴射ヘッド27に液体が供給される。
液体噴射装置11は、媒体Mを切断可能な切断部35を有する。切断部35は、搬送方向Yにおいて液体噴射部20の下流に配置される。切断部35は、長尺状となる印刷後の媒体Mを搬送方向Yにおいて指定の長さに切断する。切断部35は、幅方向Xに移動可能な可動刃と、幅方向Xにおいて媒体Mの幅よりも長い長尺状の固定刃とを有する。切断部35は、可動刃が固定刃に沿って移動することにより媒体Mを切断する。
液体噴射装置11は、印刷を行っていない液体噴射ヘッド27が待機するホーム位置HPを有する。ホーム位置HPは、幅方向Xにおいて印刷領域PAの隣に位置する。本実施形態において、ホーム位置HPは、幅方向Xにおいてキャリッジモーター28が位置する端部寄りに位置する。
液体噴射装置11は、液体噴射ヘッド27にメンテナンスを実行可能なメンテナンス装置36を備える。メンテナンス装置36は、ホーム位置HPに位置する液体噴射ヘッド27にメンテナンスを実行する。すなわち、メンテナンス装置36は、ホーム位置HPに位置するときの液体噴射ヘッド27と対向する位置に配置される。メンテナンス装置36は、液体噴射ヘッド27を含む液体供給系のメンテナンスを実行し、例えば液体噴射ヘッド27のノズル272の目詰まりを予防及び解消等する。
メンテナンス装置36は、キャップ51と、払拭部材の一例であるワイパー61と、駆動源の一例である電動モーター71とを備える。メンテナンス装置36は、キャップ51に対向するメンテナンス位置に液体噴射ヘッド27が位置する状態において、その液体噴射ヘッド27に対してメンテナンスを実行する。本実施形態のメンテナンス位置は、ホーム位置HPと一致する。
メンテナンス装置36は、キャップ51を上昇させることによって、メンテナンス位置に位置する液体噴射ヘッド27にキャップ51を接触させる。このとき、キャップ51は、ノズル面271を覆うように液体噴射ヘッド27に接触する。こうすると、キャップ51によりノズル272内の液体の乾燥が抑制され、ノズル272の目詰まりが防止される。すなわち、キャップ51は、液体噴射ヘッド27をキャッピングする。
メンテナンス装置36は、ノズル面271とキャップ51とにより囲まれる空間を吸引することによって、その空間を負圧にする。ノズル面271とキャップ51とにより囲まれる空間は、ノズル272が開口する空間である。そのため、ノズル272が開口する空間が負圧となることによって、ノズル272から液体が強制的に吸引される。このとき、ノズル272内の増粘した液体が排出される。このようにして、メンテナンス装置36は、ノズル272の吸引クリーニングを実行する。
メンテナンス装置36は、上述した吸引クリーニングの終了時などの所定時期に、ワイパー61によってノズル面271を払拭する。ワイパー61は、ノズル面271に接触した状態で、液体噴射ヘッド27に対して払拭方向に相対移動することにより、ノズル面271を払拭する。本実施形態のメンテナンス装置36は、ワイパー61が退避位置から上昇した払拭位置にある状態で、キャリッジ26が幅方向Xに移動することにより、ワイパー61にノズル面271を払拭させる。
液体噴射装置11は、フレーム17の端部に取り付けられた制御部37を有する。本実施形態の制御部37は、幅方向Xにおいてキャリッジモーター28、メンテナンス装置36が位置する端部寄りに配置される。制御部37は、例えば基板に実装されたCPU(中央処理装置)、ASIC(Application Specific IC)及び不揮発性メモリー等を含むチップにより構成される。
制御部37は、搬送モーター22、キャリッジモーター28、液体噴射ヘッド27及び電動モーター71等を駆動制御する。このため、制御部37は、繰出部18、搬送部19、液体噴射部20、ギャップ調整機構33、切断部35及びメンテナンス装置36等を制御する。液体噴射装置11は、キャリッジ26が幅方向Xに移動する途中で液体噴射ヘッド27がノズル272から媒体Mに向けて液体を噴射する印刷動作と、媒体Mを次の印刷位置まで搬送する搬送動作とを繰り返すことにより、媒体Mに画像を印刷する。
次に、メンテナンス装置36の構成について説明する。
図3に示すように、メンテナンス装置36は、キャップ51を有するキャップユニット50と、ワイパー61を有するワイパーユニット60と、電動モーター71及び動力伝達機構72を有する駆動機構70と、ロック部材73を有するロックユニット74とを備える。図4に示すように、メンテナンス装置36は、吸引ポンプ75を備える。
図3に示すように、電動モーター71はメンテナンス装置36の駆動源である。動力伝達機構72は、電動モーター71の動力を、キャップユニット50、ワイパーユニット60、ロックユニット74及び吸引ポンプ75に選択的に伝達し、これらを所定のタイミングで駆動させる。
動力伝達機構72は、カム機構を含んで構成される。動力伝達機構72は、カム機構を構成するカムの選択によって、キャップ51、ワイパー61、ロック部材73、吸引ポンプ75及び大気開放弁78(図32及び図33参照)が、所定のタイミングで駆動される。吸引ポンプ75は、流体をキャップ51内から吸引するための吸引流を発生させる吸引流発生源として機能する。
メンテナンス装置36は、キャップユニット50、ワイパーユニット60、ロックユニット74、吸引ポンプ75及び駆動機構70等が組み付けられたベースユニット40を備える。ベースユニット40は、キャップ51からの廃液を溜める皿状の廃液収容部41を有する。ベースユニット40は、廃液収容部41の上部に配置された略四角板状のベース部42と、ベース部42から上方に向けて延びる背板部43及び一対の側板部44、45とを備える。
背板部43は、ベース部42において、搬送方向Yの上流寄りに位置する。一対の側板部44、45は、ベース部42において、幅方向Xで互いに対向するように位置する。側板部44、45は、ベースユニット40において、キャップユニット50の配置領域を幅方向Xで挟むように位置する。
ベースユニット40は、駆動機構70が組み付けられるハウジング部46を有する。ハウジング部46は、電動モーター71を収容するモーターハウジング部47を有する。モーターハウジング部47は、ハウジング部46の一部を構成する。
メンテナンス装置36は、ネジを用いてベースユニット40がフレーム17に固定されることにより、ホーム位置HPに配置される。本実施形態のベースユニット40は、ベースユニット40に対して組み付けられるキャップユニット50及びワイパーユニット60のレイアウトを選択可能とされる。ベースユニット40において組付対象となるキャップユニット50及びワイパーユニット60のレイアウト選択可能な構成の詳細については後述する。
キャップ51は、動力伝達機構72を介して電動モーター71から伝達される駆動力により、図3に示す非キャッピング位置と、図20に示すキャッピング位置との間を移動する。本実施形態において、キャップ51は、非キャッピング位置とキャッピング位置との間を昇降する。キャッピング位置にあるキャップ51は、ノズル面271に接触する。すなわち、キャッピング位置にあるキャップ51は、液体噴射ヘッド27をキャッピングする。非キャッピング位置にあるキャップ51は、ノズル面271に接触しない。
図4及び図5に示すように、吸引ポンプ75は、例えばチューブポンプにより構成される。吸引ポンプ75には、吸引用と排出用の2本のチューブが接続される。吸引用のチューブは、その一端が吸引ポンプ75に接続され、その他端がキャップ51に接続される。排出用のチューブは、その一端が吸引ポンプ75に接続され、その他端が廃液収容部41に接続される。
吸引ポンプ75が駆動すると、キャップ51内の流体が吸引される。流体とは、空気などの気体、及び液体噴射ヘッド27から排出される液体を含む。キャップ51が液体噴射ヘッド27に接触した状態で吸引ポンプ75が駆動されると、ノズル272から液体を強制的に吸引する吸引クリーニングが行われる。吸引ポンプ75は、チューブポンプに限らず、ギヤポンプ又はダイヤフラム式ポンプ等でもよい。
キャップ51は、ノズル面271と接触する状態において、その内部の空間を外部の大気に開放させることが可能な大気開放弁78(図32及び図33参照)と接続される。大気開放弁78は、例えば、吸引クリーニング時に閉弁され、吸引クリーニング終了後に開弁される。大気開放弁78が開弁することにより、キャップ51内は大気に開放される。キャップ51内が大気に開放された状態で吸引ポンプ75が引き続き駆動されることによって、空吸引が行われる。空吸引とは、キャップ51内を大気に開放した状態で吸引ポンプ75によりキャップ51内を吸引することである。本実施形態においては、空吸引を実行する場合、キャップ51が液体噴射ヘッド27をキャッピングする状態且つ大気開放弁78が開弁する状態で吸引ポンプ75によりキャップ51内を吸引する。なお、キャップ51がノズル面271と接触しない状態で吸引ポンプ75によりキャップ51内を吸引することも空吸引である。空吸引を実行すると、ノズル272から液体を吸引することなくキャップ51内に溜まった液体が排出される。
ロックユニット74は、搬送方向Yにおいて、キャップ51を挟んで駆動機構70と反対側となる位置に配置される。ロックユニット74は、ガイド部76と、ガイド部76に案内されて移動可能なロック部材73とを有する。ロック部材73は、図3に示すロック解除位置とロック位置との間を移動可能とされる。ロック部材73は、ロック解除位置とロック位置との間を昇降可能であるともいえる。ロック解除位置にあるロック部材73は、キャリッジ26と係合しない。ロック位置にあるロック部材73は、メンテナンス位置に液体噴射ヘッド27が位置するときのキャリッジ26と係合可能となる。
ロックユニット74は、電動モーター71を駆動源とし、ロック部材73は所定のタイミングでロック解除位置とロック位置との間を移動する。ロック部材73は、ロック位置でキャリッジ26と係合することにより、液体噴射ヘッド27がメンテナンス位置に位置する状態でキャリッジ26をロックする。
ワイパーユニット60を構成するワイパー61は、キャップ51に対して隣り合って配置される。ワイパー61は、キャップ51に対し、幅方向Xにおいて印刷領域PA寄りに配置される。ワイパー61は、搬送方向Yにおけるノズル面271(図19参照)の長さよりも長くなるように長尺に設けられ、短冊板状の合成ゴム等の弾性材料で構成される。ワイパー61は、その先端に向かうほど厚さが薄くなるように構成される。
ワイパーユニット60は、図5に示す払拭位置と、図3及び図4に示す退避位置との間でワイパー61を移動させるワイパー移動機構62を備える。払拭位置にあるワイパー61は、ノズル面271を払拭可能となる。退避位置にあるワイパー61は、ノズル面271に沿う方向において払拭位置から離れた位置に位置する。ワイパー移動機構62は、ワイパー61を進退方向MD(図13及び図14参照)に移動させる払拭部材移動機構の一例である。進退方向MDとは、ノズル面271に沿う方向である。本実施形態において、進退方向MDは、搬送方向Yと、搬送方向Yの反対方向とを示す方向である。
図3、図4及び図5に示すように、ワイパー移動機構62は、ワイパー61を保持する払拭部材保持機構の一例であるワイパー保持機構63と、駆動力伝達部の一例であるラック部材64とを備える。ワイパー保持機構63は、保持部材の一例であるワイパーホルダー65とスライド部材66とを有する。
ワイパーホルダー65は、側板部44に設けられるガイド孔441、442にガイドされながら移動可能とされる。ガイド孔441、442は、進退方向MDに延びるガイド部の一例である。ワイパーホルダー65は、ガイド孔441、442に沿うように移動することにより昇降する。
スライド部材66は、ワイパーホルダー65を移動可能に保持する。スライド部材66において進退方向MDにおけるその一端部分には、連結部67が取り付けられる。スライド部材66は、連結部67を介してワイパーホルダー65と連結される。スライド部材66は、ラック部材64と連結される。ワイパー61は、所定形状をなす板状のワイパーホルダー65の上部に保持される。
ワイパーホルダー65は、ガイド孔441、442に係入された案内ピン651、652を有する。ワイパーホルダー65は、案内ピン651、652がガイド孔441、442に案内されることにより、進退方向MDに移動可能且つ上下に昇降可能とされる。
ワイパーホルダー65は、連結部67が挿入される案内溝653を有する。案内溝653は、連結部67が挿入された状態において、ワイパーホルダー65の鉛直方向Zにおける相対移動を許容する。連結部67は、案内溝653の内壁面上を鉛直方向Zに転動可能なローラー671を有する。ワイパー保持機構63が進退方向MDに移動するときは、案内溝653の内壁面上をローラー671が転動することにより、ワイパーホルダー65がスライド部材66に対して鉛直方向Zに相対移動する。
ラック部材64は、ワイパー保持機構63を保持した状態で、電動モーター71からの駆動力を受けて進退方向MDに移動する。ハウジング部46には、進退方向MDに延びる凹状のガイドレール68が設けられる。ガイドレール68は、幅方向Xにおけるハウジング部46の側方に位置する。
ラック部材64は、ガイドレール68に案内されることにより、進退方向MDに往復移動することが可能とされる。ラック部材64が、図4に示す位置から図5に示す位置へ向かう第1方向に移動すると、ワイパー61が上昇する。ラック部材64が、図5に示す位置から図4に示す位置へ向かう第2方向に移動すると、ワイパー61が下降する。ワイパー61は、ラック部材64の往復移動に伴って昇降する。
動力伝達機構72は、電動モーター71の駆動力により回転するピニオン77を有する。ピニオン77は、ラック部材64の下方に位置し、幅方向Xにおけるハウジング部46の側方からその一部が露出する。ピニオン77は、ノズル面271に沿う軸線を中心に回転する回転軸84の端部に固定される。回転軸84の軸線は、進退方向MDとは異なる方向に延びる。本実施形態の回転軸84は、幅方向Xに延びる軸線を中心に回転する。
回転軸84は、電動モーター71からの駆動力を受けて回転する。ラック部材64は、ピニオン77と噛み合うラック641を有する。ラック641は、平板にピニオン77と噛合可能な歯切りがなされて構成される。
図4及び図5に示すように、電動モーター71が回転駆動すると、ピニオン77とラック641とからなるラックアンドピニオン機構を介して、ピニオン77の回転運動がラック部材64の往復直線運動に変換される。電動モーター71が正転駆動すると、ピニオン77が正転することによりスライド部材66が第1方向へ往動する。これにより、退避位置にあるワイパー61が払拭位置に配置される。退避位置に位置するワイパー61は、最下降位置に位置する。払拭位置に位置するワイパー61は、最上昇位置に位置する。
電動モーター71が逆転駆動すると、ピニオン77が逆転することによりスライド部材66が第2方向へ復動する。これにより、払拭位置にあるワイパー61が退避位置に配置される。本実施形態では、ワイパー61の退避位置と払拭位置との間には他の払拭位置が少なくとも1つ設定される。具体的には、1つの退避位置と、3つの払拭位置とが設定される。そのため、ワイパー61は、高さの異なる複数の払拭位置に配置可能とされる。
図6は本実施形態のメンテナンス装置36(36A)、図7はレイアウトを変更した他の形態のメンテナンス装置36(36B)である。図2に示す液体噴射装置11においては、同図において右端寄りの位置がホーム位置HPとされているため、メンテナンス装置36が右端寄りに配置される右配置とされる。これに対し、他の機種の液体噴射装置では、幅方向Xの左端寄りの位置がホーム位置とされているため、メンテナンス装置36Bが左端寄りに配置される左配置とされる。
本実施形態のメンテナンス装置36は、各ユニット50、60等が組み付けられるベースユニット40が、右配置にも左配置にも対応可能な構成とされる。このようにベースユニット40は、電動モーター71、動力伝達機構72、各ユニット50、60、74の部品を共通としたまま各ユニット50、60のレイアウトの変更により、右配置と左配置との各態様に対応可能となっている。
図6と図7とを比較して分かるように、各図のキャップユニット50及びワイパーユニット60は、ベースユニット40の中心線CNに対してほぼ線対称の位置関係にある。このため、共通のキャップ51及びワイパーユニット60を図6及び図7の平面視においてそれぞれ180度回転させた向きに組み付けると、メンテナンス装置36は図6に示す右配置用にも図7に示す左配置用にもなる。
次に、レイアウト変更が可能なベースユニット40の構成について説明する。
図8及び図9に示すように、ベースユニット40には、右配置と左配置とでレイアウトが共通する電動モーター71、動力伝達機構72及びキャップユニット50の昇降機構56の一部が組み付けられている。つまり、図8及び図9におけるベースユニット40は、レイアウト変更が可能なキャップ51及びワイパーユニット60が組み付けられる前の状態を示す。
ベースユニット40は、キャップ51を組付可能なキャップ組付保持部48を備える。キャップ組付保持部48は、組み付けられたキャップ51を昇降可能な状態で保持する。キャップ組付保持部48は、ベース部42上において背板部43と一対の側板部44、45とに囲まれた領域に位置する。キャップ組付保持部48は、ベース部42の中心線CNに対して線対称な形状を有する。キャップ組付保持部48は、キャップ51を図8に示す平面視で180度回転させた2つの異なる向きで組み付け可能な形状を有する。
ベースユニット40は、ワイパーユニット60を組付可能なワイパー組付保持部49を備える。ワイパー組付保持部49は、組み付けられたワイパーユニット60を保持する。ワイパー組付保持部49は、一対の側板部44、45とハウジング部46を構成する一対の側板部461、462とで構成される。一対の側板部44、45は、中心線CNに対して線対称な形状を有する。一対の側板部461、462は、中心線CNに対して線対称な形状を有する。
図9に示すように、一対の側板部44、45には、その上段となる部分に同じ高さで進退方向MDに延びる2つのガイド孔441と、その下段となる部分に同じ高さで進退方向MDに延びる2つのガイド孔442とが形成される。一対の側板部44、45にそれぞれ開口する4つずつのガイド孔441、442は、中心線CNを通る鉛直面に対して面対称な形状を有する。
ワイパーホルダー65の裏面に設けられる4つの案内ピン651、652(図4参照)は、4つのガイド孔441、442にそれぞれ係入される。案内ピン651、652がガイド孔441、442に案内されることにより、ワイパーホルダー65は、進退方向MDと鉛直方向Zとの両方向に変位する。このため、ワイパーホルダー65を図6に示す右配置用と図7に示す左配置用とのどちらの態様にも組み付けることができる。
ガイドレール68は、中心線CNを通る鉛直面に対して面対称となる位置及び形状で、一対の側板部461、462のそれぞれに形成される。このため、スライド部材66を保持するラック部材64を、図6と図7とに示すどちらの態様にも組み付けることができる。
次に、キャップユニット50及び動力伝達機構72について説明する。
図10及び図11に示すように、キャップ51は、上部が開放された四角箱状を有し、キャップホルダー52の上面に保持される。キャップ51は、その上部の開口に沿う略四角環状のシール部53を有する。シール部53は、例えばエラストマー等のゴム弾性を有する合成樹脂材料からなる。
キャップ51は、不図示の第1ばねと第2ばね54とにより、鉛直方向Zに変位可能な状態で所定の高さに保持される。第1ばねは、キャップホルダー52に対してキャップ51を離れる方向に押し付ける圧縮ばねで構成される。第2ばね54は、キャップ51とキャップホルダー52との間に取り付けられる引張ばねで構成される。例えば、キャップ51は、上昇したときに、第1ばね、第2ばね54等の弾性力によりノズル面271に押し付けられた状態で接触する。
キャップ51の底部から突出する吸引管533(図30及び図31参照)には、吸引ポンプ75(図4参照)から延びるチューブの一端が接続される。吸引ポンプ75が駆動されると、キャップ51内の流体が吸引される。
キャップホルダー52の上部には、キャップ51のシール部53を囲む位置にヘッドガイド55が配置される。ヘッドガイド55は、キャップ51がキャッピング位置に向かって上昇する過程で、液体噴射ヘッド27と係合する。これにより、ヘッドガイド55は、キャップ51をノズル面271に対して正規の位置に位置決めする。
キャップホルダー52の下部には、キャップ51及びキャップホルダー52を昇降させる昇降機構56が組み付けられる。昇降機構56は、キャップホルダー52及びロック部材73と連動して昇降する昇降ロッド57と、キャップ51を昇降させる回動部材の一例であるキャップ昇降レバー58とを有する。キャップ昇降レバー58は、図10及び図11に示す第1回動姿勢と、図20に示す第2回動姿勢との間で回動する。第1回動姿勢であるキャップ昇降レバー58は、キャップ51を非キャッピング位置に配置する。第2回動姿勢であるキャップ昇降レバー58は、キャップ51をキャッピング位置に配置する。
キャップ昇降レバー58は、支軸581を中心に所定角度の範囲内で回動可能に支持される。キャップ昇降レバー58は、キャップホルダー52の下部を幅方向Xの両側から囲む状態で保持する。昇降機構56は、キャップホルダー52の底部をキャップ51が非キャッピング位置からキャッピング位置へ向かう方向、例えば上方向へ押し付ける押付部材の一例であるばね59(図20参照)を有する。
キャップ昇降レバー58が支軸581を中心に往復回動すると、キャップ51及びキャップホルダー52は鉛直方向Zに往復移動、すなわち昇降する。昇降ロッド57及びキャップ昇降レバー58は、図3に示す電動モーター71から動力伝達機構72を介して伝達される駆動力により駆動される。
キャップ昇降レバー58の回動により昇降ロッド57が上昇するとき、キャップ51及びロック部材73(図3参照)は、予め設定されたそれぞれ個別のタイミングで上昇する。本実施形態においては、ロック部材73がキャップ51よりも先に上昇し始める。これにより、キャップ51が非キャッピング位置にある状態でもキャリッジ26のロックが可能となる。
動力伝達機構72は、電動モーター71からの駆動力を各ユニット50、60、74及び大気開放弁78に選択的に伝達するカム機構を備える。各ユニット50、60、74及び大気開放弁78は、カム機構を構成するカムの選択によりそれぞれ所定のタイミングで駆動される。
図11に示すように、動力伝達機構72は、その下段となる部分に位置する第1歯車列81と、その上段となる部分に位置する第2歯車列82とを有する。第1歯車列81は、電動モーター71からの駆動力が入力される大径の駆動歯車83と、駆動歯車83と同軸の回転軸84に設けられた幅広の歯車85とを有する。第2歯車列82は、回転軸84の軸線に沿う軸線を中心に回転する第2回転軸の一例である回転軸86を有する。
歯車85は、第2歯車列82の回転軸86に設けられた3連のクラッチ87と噛合している。クラッチ87は、1つの歯車88と、歯車88と相対的に回転可能かつ摩擦接続による一体回転が可能な間欠歯車89と、間欠歯車89に対して所定角度の範囲で相対的に回転可能な間欠歯車90とを備える。
クラッチ87を構成する各歯車88〜90は、歯車85の幅範囲において対向して配置され、歯車85と噛合可能とされる。クラッチ87は、駆動歯車83と共に歯車85が正転又は逆転すると、歯車85と噛合する歯車88の回転開始から所定のタイムラグの後に間欠歯車90の回転を開始させる機能を有する。間欠歯車90が歯車85と噛合した後は、歯車85から間欠歯車90に駆動力が直接伝達される。
間欠歯車90は、歯車85と噛合する角度範囲で回転する。駆動歯車83は、吸引ポンプ75(図4参照)と動力伝達可能に連結される。駆動歯車83が逆転すると、吸引ポンプ75が駆動することにより、キャップ51から流体が吸引される。駆動歯車83が正転すると、吸引ポンプ75がレリースされることにより、その内部が大気に開放される。
クラッチ87と同軸の回転軸86には、間欠歯車として機能する回転カムの一例である第1回転カム91が固定される。第1回転カム91は、一方の側面から軸線方向に突出する柱状のカム部92と、他方の側面に凹むように設けられたカム溝93とを有する。なお、本実施形態において、第1回転カム91を第1カム91と称することがある。
第1カム91は、キャップ51を昇降可能な状態でキャップ51と連結される。第1カム91は、柱状のカム部92の外周面からなるカム面によって、前述のキャップ昇降レバー58を駆動させる。第1カム91は、キャップ昇降レバー58を駆動させることにより、キャップ51を昇降させる。第1カム91のカム溝93には、揺動部材94の先端となる部分に設けられたカムピン941が係入される。
第1カム91が正転及び逆転すると、カムピン941がカム溝93に沿って第1カム91の外周寄りの位置と内周寄りの位置とに案内される。これにより、揺動部材94が往復回動する。揺動部材94が往復回動すると、大気開放弁78が開閉する。すなわち、第1カム91のカム溝93は、大気開放弁78を開閉させるためのカムとして機能する。カムピン941を有する揺動部材94は、カムに対するカムフォロアとして機能する。
図10に示すように、第1カム91の歯部91Aは、間欠歯車95の歯部95Aと噛合可能とされる。間欠歯車95は同軸上に設けられた歯車96と共に回転する。図11に示すように、歯車96は、ピニオン77が端部に固定された回転軸84に設けられる歯車97と噛合する。ピニオン77は、ラック部材64のラック641と噛合する。
図10に示すように、回転軸84には、第2回転カム99が固定される。第2回転カム99は、一方の側面にカム溝100を有する。なお、本実施形態において、第2回転カム99を第2カム99と称することがある。第2カム99のカム溝100と対向する箇所には、押えレバーの一例であるキャップ押えレバー101が回動可能に設けられる。第2カム99のカム溝100には、キャップ押えレバー101の基端となる部分に設けられたカムピン102が係入される。
第2カム99が正転及び逆転すると、カムピン102がカム溝100に沿って第2カム99の外周寄りの位置と内周寄りの位置との間に案内される。これにより、キャップ押えレバー101が、リセット位置とセット位置との間を回動する。キャップ押えレバー101がセット位置にあるとき、キャップ昇降レバー58は、キャップ51を非キャッピング位置に保持可能な図10に示す第1回動姿勢に配置される。キャップ押えレバー101がリセット位置にあるとき、キャップ昇降レバー58は、ばね59の弾性力によりキャップ51をキャッピング位置に保持可能な第2回動姿勢(図20参照)へ回動することを許容する。
駆動歯車83及び歯車85は、一体に回転可能に連結された状態で、回転軸84に対して相対的に回転可能とされる。ピニオン77、歯車97及び第2カム99は回転軸84に固定され、回転軸84に対して一体に回転可能とされる。そのため、歯車85の回転は、クラッチ87、第1カム91、間欠歯車95、歯車96を介して歯車97に伝達される。昇降ロッド57、キャップ昇降レバー58及びキャップ押えレバー101等を有する昇降機構56の詳細な構成については後述する。
次に、ワイパーユニット60の構成について説明する。
図12に示すように、ワイパーユニット60は、回転軸84の軸方向における両端部のうちどちらか一方にワイパー移動機構62を組み付けることにより構成される。図2に示す液体噴射装置11のように右配置のメンテナンス装置36(36A)の例では、図12に実線で示す位置にワイパー移動機構62が組み付けられる。この場合、ピニオン77は同図に実線で示すように回転軸84の一端に固定され、ラック641と噛合する。図2に示す液体噴射装置11とは反対に、左配置のメンテナンス装置36(36B)の例では、図12に2点鎖線で示す位置にワイパー移動機構62が組み付けられる。この場合、ピニオン77は同図に2点鎖線で示すように回転軸84の他端に固定され、ラック641と噛合する。
ピニオン77の回転によって、ピニオン77と噛合するラック641を有するラック部材64が進退方向MDに移動すると、ラック部材64に保持されたスライド部材66が一緒に進退方向MDに移動する。スライド部材66が進退方向MDに移動すると、連結部67を介してスライド部材66と連結されるワイパーホルダー65も一緒に進退方向MDに移動する。
ワイパーホルダー65は、その裏面(図3において側板部44と対向する面)に前述した上下2本ずつの案内ピン651、652(図12では一方のみ図示)を有する。ワイパー移動機構62が第1方向(図12では進退方向MDにおいて左向き)に移動すると、案内ピン651、652がガイド孔441、442に案内されてワイパー61及びワイパーホルダー65が退避位置から払拭位置まで上昇する。ワイパー移動機構62が第2方向(図12では進退方向MDにおいて右向き)に移動すると、案内ピン651、652がガイド孔441、442に案内されてワイパー61及びワイパーホルダー65が払拭位置から退避位置まで下降する。
次に、ワイパー61の上昇過程でイレギュラーな位置にある液体噴射ヘッド27を含む障害物にワイパー61が当たったときの衝撃を緩和又は解消する機構について説明する。
図13及び図14に示すように、ワイパー移動機構62は、ワイパー保持機構63の保持状態を解除可能な保持状態解除機構110を備える。保持状態解除機構110は、ワイパー61が退避位置から払拭位置へ向かう移動中において、ワイパー移動機構62が進退方向MDに設定された値(設定値)以上の負荷を受けた場合に、ワイパー保持機構63の保持状態を解除する。
ワイパー保持機構63を保持するラック部材64を含むワイパー移動機構62は、電動モーター71の正転駆動によりピニオン77とラック641との噛合を介して図13に矢印で示す第1方向に移動する。この第1方向は、進退方向MDにおいてワイパー61を退避位置から払拭位置へ向かって移動可能な方向である。
ワイパー移動機構62が第1方向への移動中に進退方向MDに設定値以上の負荷を受けると、保持状態解除機構110によってラック部材64が保持するワイパー保持機構63の保持状態が解除される。スライド部材66及びラック部材64は、解除前の保持状態解除機構110により、ラック部材64がスライド部材66を保持する状態に連結される。本実施形態の保持状態解除機構110は、ラック部材64とスライド部材66とを係止により連結する機能を有し、両者の係止によりラック部材64がスライド部材66を保持する状態を維持する。
図13、図14及び図15に示すように、保持状態解除機構110は、スライド部材66に設けられた被係止部111と、被係止部111と係止可能な状態でラック部材64に設けられた係止部112とを有する。ワイパー61が退避位置から払拭位置へ向かう移動中に、ワイパー移動機構62が設定値以上の負荷を受けた場合、被係止部111は、係止部112に係止されている図13に示す係止位置から係止部112に係止されない図14に示す非係止位置に移動する。
本実施形態では、被係止部111は、スライド部材66に対してラック部材64の進退方向MDに延びる面と交差する方向に移動可能に設けられた被係止部材の一例であるスライド軸113により構成される。スライド部材66には、保持状態解除機構110の一部として、スライド軸113と、スライド軸113をラック部材64の進退方向MDに延びる面に当たる方向に押し付けるばね114とが設けられる。
図15に示すように、ラック部材64は、スライド部材66からばね114の弾性力で突出したスライド軸113が当たる面642を有する。この面642には、スライド軸113と係止可能な係止部112の一例である斜面115が形成される。ラック部材64がワイパー61を上昇させるときの第1方向に移動するときは、スライド軸113が斜面115に係止され、ラック部材64に対するスライド部材66の進退方向MDにおける相対移動が規制される。
スライド部材66は、ラック部材64の面642と直交する方向に延びる収容凹部661を有する。収容凹部661は、スライド部材66において、進退方向MDにおいて連結部67が設けられる端部とは反対側となる端部に形成される。収容凹部661は、スライド軸113と、ラック部材64の面642に向かってスライド軸113を押し付けるばね114とを収容する。
ラック部材64の面642には、ラック部材64にスライド部材66が保持される位置から外れる方向への移動を規制するべくスライド軸113と係止可能な斜面115が形成される。スライド軸113が係止位置から斜面115を乗り越えて非係止位置へ移動するために必要な力(設定負荷)は、ばね114の弾性力と斜面115の段差及び勾配等により決まる。本実施形態では、ワイパー61が上昇途中に障害物に当たったときに、ワイパー61がワイパーホルダー65からずれたり外れたり傷付いたりしない程度に、ばね114の弾性力と斜面115の段差及び勾配等の値が設定される。
ワイパー61が退避位置から払拭位置へ向かう移動中に、ワイパー移動機構62が設定値以上の負荷を受けた場合に、スライド部材66に保持されるスライド軸113は、斜面115に乗り上げ、ばね114の弾性力に抗して非係止位置へ変位する。スライド軸113は、斜面115に係止される係止位置から斜面115を乗り越えて非係止位置に移動する。そのため、図14に示すように、スライド部材66とラック部材64との連結が解除され、ピニオン77が回転してもラック部材64だけが第1方向へ移動する。ワイパー61が退避位置から払拭位置へ上昇する過程で、イレギュラーな位置にある液体噴射ヘッド27又は媒体M等の障害物に当たって設定値以上の負荷を受けると、ワイパー61はその時点で上昇を停止する。
次に、ワイパーホルダー65の案内ピン651、652がガイド孔441、442に案内されてワイパー61を昇降させる機構について説明する。上下の各案内ピン651、652に対応する各ガイド孔441、442の孔形状は基本的に同じである。そのため、以下では、上側に位置する案内ピン651及びガイド孔441について説明する。
図16に示すように、ガイド孔441は、進退方向MDに延びる経路として形成される。各案内ピン651は、対応するガイド孔441に係入される。ガイド孔441は、係入する案内ピン651の進退方向MDにおける位置の変化に応じて、ノズル面271と直交する方向(鉛直方向Z)において案内ピン651の位置が変化する経路を有する。
ワイパー61は、斜めの経路となるガイド孔441に沿って案内ピン651がスライドすることによって、進退方向MDに移動しつつ鉛直方向Zにも変位する。このとき、ワイパー61は、ワイパーホルダー65が進退方向MDのどの位置で停止するかによって、ノズル面271と直交する方向、すなわち鉛直方向Zにおいて高さ調整される。本実施形態のワイパー61は、ノズル面271を払拭する払拭位置として、払拭位置W1(第1払拭位置W1)と、払拭位置W1よりも低い第2払拭位置W2と、第2払拭位置W2よりも低い第3払拭位置W3との複数段階(本例では3段階)に高さ調整可能とされる(図17参照)。
ガイド孔441は、進退方向MDに位置が異なるとともにノズル面271と直交する鉛直方向Zにも位置の異なる複数の平坦部443、444、445、446を有する。本実施形態においては、平坦部443〜446は、それぞれ符号を付すように、4つ設けられる。複数の平坦部443〜446のうち、高さが最も低い平坦部443は、ワイパー61が退避位置Wsの高さに位置するように案内ピン651を支持する。なお、本実施形態において、この平坦部443を退避位置用の平坦部と称することがある。
その他の3つの平坦部444〜446は、段階的に高さが異なり、ワイパー61が払拭位置の高さに位置するように案内ピン651を支持する。なお、本実施形態において、3つの平坦部444〜446を払拭位置用の平坦部と称することがある。
案内ピン651は、ガイド孔441において、実線で示す位置と、2点鎖線で示す3つの位置との計4つの位置に配置される。実線で示す位置にある案内ピン651は、平坦部443に支持される。2点鎖線で示す3つの位置にある案内ピン651は、それぞれ第1平坦部446、第2平坦部445及び第3平坦部444に支持される。
ガイド孔441は、それぞれの平坦部443〜446の間に設けられる複数の斜面を有する。ガイド孔441において、平坦部443と第3平坦部444との間には、斜面447が設けられる。斜面447は、進退方向MDにおいてワイパー61が退避位置Wsから払拭位置W1へ移動する方向(図16では右となる方向)に徐々に高くなるように所定の勾配を有する。
払拭位置用の各平坦部444〜446の間には、斜面447とほぼ同じ勾配を有する短い斜面がそれぞれ設けられる。図16では、上段のガイド孔441の形状と、上段の案内ピン651とガイド孔441との位置関係とを示したが、下段の案内ピン652と下段のガイド孔442についても形状及び位置関係は、上段側と同様である。
図17に示すように、退避位置Wsと払拭位置W1との間には、ノズル面271を払拭する第2払拭位置W2が設定される。第2払拭位置W2は、ノズル面271と直交する直交方向において、払拭位置W1との距離が退避位置Wsとの距離よりも短くなる位置に設定される。すなわち、第2払拭位置W2は、鉛直方向Zにおいて、第1払拭位置W1と退避位置Wsとの間で第1払拭位置W1寄りとなる位置に設定される。
第2払拭位置W2と退避位置Wsとの間には、ノズル面271を払拭する第3払拭位置W3が設定される。第3払拭位置W3は、ノズル面271と直交する直交方向において、第2払拭位置W2との距離が退避位置Wsとの距離よりも短くなる位置に設定される。すなわち、第3払拭位置W3は、鉛直方向Zにおいて、第2払拭位置W2と退避位置Wsとの間で第2払拭位置W2寄りとなる位置に設定される。
本実施形態では、前述の最も高い位置にある払拭位置を第1払拭位置W1とすると、第1払拭位置W1よりも低い位置に位置する接触位置として、第2払拭位置W2と第3払拭位置W3とが設定される。すなわち、本実施形態では、退避位置Wsに対して進退方向MDに最も離れた払拭位置として第1払拭位置W1が設定される。ノズル面271と直交する直交方向において、第1払拭位置W1に近い順で第2払拭位置W2、第3払拭位置W3が設定される。
ワイパー61は、図16に示す案内ピン651が平坦部443に配置されているときに、図17に実線で示す退避位置Wsに配置される。ワイパー61は、図16に示す案内ピン651が第3平坦部444に配置されているときに、図17に2点鎖線で示す第3払拭位置W3に配置される。ワイパー61は、図16に示す案内ピン651が第2平坦部445に配置されているときに、図17に2点鎖線で示す第2払拭位置W2に配置される。ワイパー61は、図16に示す案内ピン651が第1平坦部446に配置されているときに、図17に2点鎖線で示す第1払拭位置W1に配置される。
図18に示すように、液体噴射ヘッド27は、ギャップ調整機構33(図2参照)の駆動によりノズル面271と直交する方向(鉛直方向Z)に変位可能とされる。制御部37は、印刷ジョブを取得すると、その中に含まれる媒体種の情報から規定される媒体Mの厚みに応じたギャップが得られるようにギャップ調整機構33を駆動させる。これにより、液体噴射ヘッド27のノズル面271と媒体Mとのギャップが適切な値に調整される。
液体噴射ヘッド27は、媒体Mの厚さが最も厚い場合に、図18に実線で示す第1位置H1に配置される。液体噴射ヘッド27は、媒体Mが中程度の厚さである場合に、図18に2点鎖線で示す第2位置H2に配置される。液体噴射ヘッド27は、媒体Mの厚さが最も薄い場合に、図18に2点鎖線で示す第3位置H3に配置される。
液体噴射ヘッド27は、図18に一部断面で示すように、複数のノズル272を有している。印刷中においては、ノズル272からインク等の液体を噴射したときのミストがノズル面271に付着する場合がある。吸引クリーニング中においては、ノズル272からインク等の液体を強制的に吸引したときに飛散した液体がノズル面271に付着する場合がある。ノズル272の周辺に付着した液体は、ノズル272から液体が噴射されるときに液体の飛行曲がりの原因となり、液体の着弾位置のずれを誘発し印刷品質の低下をもたらすことがある。このため、ワイパー61によりノズル面271を払拭し、ノズル面271に付着した液体を取り除くワイピングが行われる。
制御部37は、第1〜第3払拭位置W1〜W3の中から液体噴射ヘッド27の高さ位置に応じた1つを選択する。制御部37は、電動モーター71を駆動してその選択した払拭位置Wに応じた位置までワイパー移動機構62を移動させる。ワイパー61は、液体噴射ヘッド27が第1位置H1にあるとき、図18において実線で示す最も高い払拭位置である第1払拭位置W1に配置される。この状態では、鉛直方向Zに液体噴射ヘッド27とワイパー61との間に所定の重複量ΔRが確保される。この重複量は、鉛直方向Zにおいて液体噴射ヘッド27とワイパー61とが重複する量のことであり、オーバーラップ量ともいう。
ワイパー61は、液体噴射ヘッド27が第2位置H2にあるとき、図18において2点鎖線で示す2番目に高い払拭位置である第2払拭位置W2に配置される。ワイパー61は、液体噴射ヘッド27が第3位置H3にあるとき、図18において2点鎖線で示す最も低い払拭位置である第3払拭位置W3に配置される。第2払拭位置W2及び第3払拭位置W3においても、鉛直方向Zに液体噴射ヘッド27とワイパー61との間に所定の重複量ΔRが確保される。なお、以下の説明において、複数の払拭位置W1〜W3を特に区別しない場合は単に「払拭位置W」と称し、液体噴射ヘッド27の複数の高さ位置H1〜H3を特に区別しない場合は単に「高さ位置H」と称す。
ワイパー61は、ノズル面271と直交する直交方向においてノズル面271から離れた位置である退避位置Wsから払拭位置W1へ向かう際、ワイパー61がノズル面271と接触可能な接触位置に移動する。このため、液体噴射ヘッド27が印刷時における最高位置にあっても、液体噴射ヘッド27とワイパー61との間に直交方向に所定の重複量ΔRを確保できる。所定の重複量ΔRが確保されることにより、ワイパー61はノズル面271を適切に払拭できる。
図19に示すように、液体噴射ヘッド27の高さ位置Hに応じてワイパー61が所定の払拭位置Wに配置された後、キャリッジ26は、キャップ51(図2参照)と対向するメンテナンス位置から印刷領域PAに向かう方向に所定距離だけ移動する。すなわち、キャリッジ26は、図19において矢印で示す方向に所定距離だけ移動する。所定距離とは、ワイパー61がノズル面271を払拭するために必要とされる距離である。この結果、図18におけるいずれの高さ位置H及び払拭位置Wの場合も、ワイパー61がノズル面271を適切な重複量ΔRで払拭する。これにより、ワイパー61は、その先端部がノズル面271に所定の接触圧で接触する。ワイパー61は、その先端部が少し屈曲した状態でノズル面271に接触しながら移動することにより、ノズル面271に付着する液体を効率よく取り除く。
メンテナンス装置36は、ワイパー61に付着した液体を除去するワイパークリーナー69を備える。ワイパークリーナー69は、退避位置Wsに位置するワイパー61に対して接触可能な位置に配置される。ワイパークリーナー69は、ワイパー61において払拭方向WDの進行側となる面と接触する。
ノズル面271の払拭を終えたワイパー61には、払拭方向WDにおいて進行側となる面に払拭した液体が付着する。払拭を終えたワイパー61が払拭位置Wから退避位置Wsへ下降すると、ワイパー61の払拭方向WDの進行側の面がワイパークリーナー69に接触する。これにより、ワイパー61に付着した液体がワイパークリーナー69に吸収され、ワイパー61から液体が除去される。すなわち、ワイパークリーナー69は、ワイパー61に付着した液体を吸収する吸収部材の一例である。
次に、図20、図21及び図22を参照して、キャップ51の昇降機構56及び昇降動作について説明する。図20はキャップ51がキャッピング位置にある状態、図21及び図22はキャップ51が非キャッピング位置にある状態を示す。
図20、図21及び図22に示すように、昇降機構56は、昇降ロッド57、キャップ昇降レバー58、ばね59、第1カム91、間欠歯車95、第2カム99及びキャップ押えレバー101等を備える。昇降機構56は、動力伝達機構72のうち第1カム91及び第2カム99等を含む。
キャップ昇降レバー58は、ばね59により上方へ押し付けられたキャップホルダー52に対して端部が連結される状態で、支軸581を中心に回動可能に支持される。このキャップ昇降レバー58には、第1カム91と係合可能なカムフォロア582が設けられる。カムフォロア582は、第1カム91のカム部92の外周面であるカム面と係合可能な回転体の一例であるローラー583を先端部に有する。詳しくは、キャップ昇降レバー58は、キャップホルダー52の下部を例えば3方向から囲む平面視略U字状のレバー部材を有する。カムフォロア582は、このレバー部材における第1カム91と対向する部分からアーム状に延び、そのアーム状部分の先端部にローラー583を支持する。
図21に示すように、第1カム91は、カム部92の外周面であるカム面にカムフォロア582が係合する回転角の区間で、キャップ昇降レバー58を第1回動姿勢に回動させる。図20に示すように、第1カム91は、カム部92とカムフォロア582との係合が外れる回転角の区間で、キャップ昇降レバー58がばね59の弾性力により同図に示す第2回動姿勢に回動することを許容する。
図20に示すように、第1カム91の歯部91Aが歯車95の歯部95Aと噛合する回転角の範囲では、第2カム99が回転する。第2カム99の近傍には、キャップ押えレバー101が支軸103を中心に回動可能な状態で支持される。第2カム99の一方の側面に設けられたカム溝100には、キャップ押えレバー101の基端部に設けられたカムピン102が係入される。キャップ昇降レバー58には、キャップ押えレバー101のカムピン102と反対側となる先端部と対向する部分である下端部に、被係合部584が下方へ突出するように設けられる。
図20に示す状態では、カムフォロア582のローラー583が、第1カム91のカム部92との係合が外れている。そのため、ばね59の弾性力により、キャップ昇降レバー58の傾動を伴ってキャップホルダー52が持ち上げられる。その結果、キャップ51がノズル面271と接触してノズル272を含む空間を形成するキャッピング位置に配置される。キャップ51のキャッピング位置への配置は、印刷待機時及びクリーニング時に行われる。図20に示す第1カム91の回転位置がキャップ閉位置及び吸引位置となる。本実施形態では第1カム91がキャップ閉位置及び吸引位置にあるときの回転角を例えば0°としている。
第1カム91が図20に示す吸引位置、すなわち回転角0°にある状態で、吸引ポンプ75は駆動される。吸引ポンプ75は、電動モーター71が第1カム91を同図における時計方向に回転させる方向に駆動されるが、このとき第1カム91が時計方向の回転限界である回転角0°にある。このため、吸引ポンプ75が駆動される吸引クリーニングの動作中、第1カム91は回転角0°に維持される。これにより、キャップ51はキャッピング位置に保持される。
第1カム91が図20に示す回転角から図21に示す回転角まで回転すると、カムフォロア582のローラー583は、カム部92と係合し、第1カム91の外周寄りの位置へ変位する。この結果、キャップ昇降レバー58は、支軸581を中心に図20において時計方向となる方向に回動して、図20に示す第1回動姿勢から第2回動姿勢となる。これにより、キャップホルダー52がばね59の弾性力に抗して押し下げられ、キャップ51はノズル面271から離れた図21に示す非キャッピング位置に配置される。
キャップ51が非キャッピング位置にあるとき、吸引ポンプ75を駆動させる場合がある。このとき、第2カム99のカム溝100によりカムピン102を案内することによって、キャップ押えレバー101を図21に示す状態から図22に示す状態へ回動させる。
図22に示す状態では、キャップ押えレバー101が被係合部584を下側から押えてキャップ昇降レバー58を持ち上げる。キャップ昇降レバー58は第1回動姿勢をとるため、キャップ51が非キャッピング位置に配置される。この状態で吸引ポンプ75が駆動されると、キャップ51が非キャッピング位置に配置された状態でキャップ51から液体を排出できる。
印刷中において、キャリッジ26をホーム位置HPに移動させ、液体噴射ヘッド27の全てのノズル272から印刷とは関係のない液滴を非キャッピング位置に配置されたキャップ51に向かって噴射するフラッシング、つまり空噴射が行われることがある。このフラッシングにより不使用のノズル272内の増粘インク等の液滴を排出することによって、ノズル272内の液体をリフレッシュし、ノズル272の目詰まりを防止する。フラッシングが繰り返し行われると、キャップ51に液体が溜まるため、定期又は不定期で印刷中に吸引ポンプ75を駆動してキャップ51に溜まった液体を排出する。
次に、第1カム91のカム部92及びカムフォロア582について説明する。
図23に示すように、カム部92は、第1カム91の回転軸86の周囲のうち一部の所定角度範囲に亘る部分が径方向に膨出した形状を有する。このため、カム部92は、回転軸86の周囲のうち、カム部92がない部分に比べて回転軸86から外周面までの径方向の距離が長くなるように構成される。
カム部92の外周面は、ローラー583が係合するカム面とされる。カム部92は、図23において反時計方向となる方向における端部に、凹部の一例である第1凹部921を有する。カム部92は、図23において時計方向となる方向において第1凹部921の隣となる位置に、凹部の一例である第2凹部922を有する。第1凹部921よりも第2凹部922の方が、回転軸86からの径方向の距離が長い。ローラー583が第2凹部922と係合する図21、図23に示す状態では、キャップ昇降レバー58は第1回動姿勢に配置される。この結果、キャップ51は非キャッピング位置に配置される。
図23に示すように、カム部92において、第2凹部922よりも図23において時計方向となる方向に位置する部分は、略円弧面状のカム面923とされる。ローラー583がカム面923と係合する区間では、キャップ昇降レバー58が第1回動姿勢に配置され、キャップ51は非キャッピング位置に保持される。ローラー583がカム面923と係合する区間は、ワイパー61の昇降動作が行われる第2カム99の回転域に相当するため、キャップ51は非キャッピング位置に配置される。
第1凹部921は、ローラー583が係合したときに、キャップ昇降レバー58の回動姿勢を図20に示す第1回動姿勢よりも反時計方向となる方向へ少し回動させた回動姿勢に保持する。このときの昇降ロッド57の位置では、キャリッジ26がロック部材73との係合によりロックされ、且つキャップ51が非キャッピング位置に配置される。例えば液体噴射装置11を不使用時に倉庫等に収納する場合、使用される液体の種類によっては、液体噴射ヘッド27内の液体を全て排出し、且つキャップ51を非キャッピング位置に配置する必要がある。この場合に、カムフォロア582のローラー583を第1凹部921に係合させる。
第1カム91をキャップ51が非キャッピング位置に配置される目標回転角に停止させたときにカム部92に対してローラー583が係合する被係合部分に凹部921、922を設けた理由は次の通りである。ローラー583が第1凹部921又は第2凹部922にばね59の弾性力により押し付けられると、その押し付け力によって第1カム91はローラー583が凹部921、922の中心に位置する方向に僅かに回転する。電動モーター71の回転制御により第1カム91を目標回転角まで回転させるときに第1カム91の回転停止位置がばらつく場合がある。第1カム91の回転停止位置が多少ばらついても、ローラー583から受ける押し付け力によりローラー583が凹部921、922の中心に位置する方向に第1カム91が回転すれば、第1カム91は適切な目標回転角で停止する。
次に、図24及び図25を参照して、第2カム99によるキャップ押えレバー101の動作について説明する。図24はキャップ押えレバー101がリセット位置に配置された状態を示し、図25はキャップ押えレバー101がセット位置に配置された状態を示す。
図24及び図25に示すように、第2カム99のカム溝100は、その外周側を通る第1カム溝部121と、その内周側を通る第2カム溝部122とを有する。第2カム99のカム溝100は、第2カム99の周方向において位置の異なる2箇所で第1カム溝部121と第2カム溝部122とを接続する第1接続溝部123及び第2接続溝部124を有する。
キャップ押えレバー101のカムピン102が第2カム99の内周側の第2カム溝部122に位置する状態では、キャップ押えレバー101がキャップ昇降レバー58を保持しないリセット位置に配置される。カムピン102が第2カム99の外周側の第1カム溝部121に位置する状態では、キャップ押えレバー101がキャップ昇降レバー58を持ち上げて保持するセット位置に配置される。
第2カム99が図24に示す状態から反時計方向CCWに回転すると、カムピン102は、時計方向CWに移動する。詳述すると、カムピン102は、カム溝100に沿って図24において矢印で示すように移動する。これにより、キャップ押えレバー101が図25に示すセット位置に配置される。
第2カム99が図25に示す状態から反時計方向CCWに回転すると、カムピン102は、時計方向CWに移動する。詳述すると、カムピン102は、カム溝100に沿って図25において矢印で示すように移動する。これにより、キャップ押えレバー101が図24に示すリセット位置に配置される。
次に、第1カム91の回転により行われる大気開放弁78の開閉動作について説明する。
図26に示すように、第1カム91のカム溝93には、揺動部材94(図11参照)のカムピン941が係入される。カム溝93は、第1カム91の外周側を通る第1カム溝部931と、第1カム91の内周側を通る第2カム溝部932とを備える。カム溝93は、第1カム91の周方向において位置の異なる2箇所で第1カム溝部931と第2カム溝部932とを接続する第1接続溝部933及び第2接続溝部934とを有する。
図26に2点鎖線で示すカムピン941の位置が、第1カム91が回転角0°であるときにカム溝93により案内された位置である。第1カム91が時計方向CWに回転すると、カムピン941は相対的に反時計方向CCWに移動する。第1カム91が反時計方向CCWに回転すると、カムピン941は相対的に時計方向CWに移動する。
制御部37は電動モーター71を制御し、第1カム91を時計方向CW及び反時計方向CCWに回転させて第1カム91の回転角を制御する。制御部37は、第1カム91の回転角を制御し、カムピン941を例えば同図に矢印で示す(1)〜(5)の経路で移動させる。カムピン941が第1カム91の外周側の第1カム溝部931に位置するときに揺動部材94が閉弁位置に配置され、大気開放弁78は閉弁する。カムピン941が第1カム91の内周側の第2カム溝部932に位置するときに揺動部材94が開弁位置に配置され、大気開放弁78は開弁する。
次に、第2カム99の回転により行われるキャップ押えレバー101の回動動作について説明する。
図27に示すように、第2カム99のカム溝100には、キャップ押えレバー101のカムピン102が係入される。カム溝100は、前述のように、第1カム溝部121と、第2カム溝部122と、第1、第2接続溝部123、124とを有する。
図27に2点鎖線で示すカムピン102の位置が、第1カム91が回転角0°であるときにカム溝100に案内された位置である。本実施形態において、第2カム99は、第1カム91が回転角205〜310°の範囲にあるときに回転する。このため、第1カム91が0〜205°の範囲内の回転角にあるとき、カムピン102は、図27に2点鎖線で示す位置に配置される。第1カム91の回転角が205〜310°の範囲において、第2カム99が時計方向CWに回転すると、カムピン102は、反時計方向CCWに移動する。第1カム91の回転角が205〜310°の範囲において、第2カム99が反時計方向CCWに回転すると、カムピン102は、時計方向CWに移動する。
制御部37は、電動モーター71を制御し、第2カム99を時計方向CW及び反時計方向CCWに回転させて第2カム99の回転角を制御する。制御部37は、第2カム99の回転角を制御し、カムピン102を例えば同図に矢印で示す(1)〜(5)の経路で移動させる。カムピン102が第2カム99の内周側の第2カム溝部122に位置するときにキャップ押えレバー101がリセット位置に配置される(図24参照)。カムピン102が第2カム99の外周側の第1カム溝部931に位置するときにキャップ押えレバー101がセット位置に配置される(図25参照)。
制御部37は、メモリーに記憶されたメンテナンス制御用プログラムを実行して、電動モーター71を回転制御する。制御部37は、第1カム91及び第2カム99の回転角を制御することにより、キャップ51、ワイパー61、ロック部材73及び大気開放弁78等を駆動制御する。制御部37は、所定の吸引駆動時期になると、電動モーター71を逆転駆動させて吸引ポンプ75を駆動させる。
本実施形態のメンテナンス装置36は、電動モーター71の回転量に比例する数のパルスを含むエンコーダー信号を出力する図示しないエンコーダー、例えばロータリーエンコーダーを備える。制御部37は、エンコーダーから入力するエンコーダー信号のパルスエッジの数を、電動モーター71の回転方向に応じて加算又は減算する計数を行って、その計数値に基づき第1カム91の回転角を検出する。制御部37は、検出した第1カム91の回転角に基づき電動モーター71を制御し、第1カム91及び第2カム99の回転角を制御する。
次に、キャップ51の構成について説明する。
図28に示すように、キャップ51は、キャッピング部材501と、液体吸収体502と、空間形成部材503と、受止部材504と、規制部材505とを備える。キャッピング部材501は、上部が開口する箱状に構成され、キャップホルダー52に取り付けられる。本実施形態のキャッピング部材501は長方形状に開口する。そのため、本実施形態におけるキャッピング部材501の開口部分は、長辺部分と短辺部分とを有する。
キャッピング部材501は、液体吸収体502、空間形成部材503、受止部材504及び規制部材505を上下に重ねた状態で収容可能とされる。すなわち、キャッピング部材501は、液体吸収体502、空間形成部材503、受止部材504及び規制部材505を収容可能な収容空間を有する。キャッピング部材501は、下から順に、液体吸収体502、空間形成部材503、受止部材504、規制部材505を収容する。
キャッピング部材501は、収容する各種の部材を固定するための固定柱506及び固定リブ507を有する。固定柱506は、キャッピング部材501の内底面508から上方に延びる。本実施形態の固定柱506は、キャッピング部材501の内底面508においてその中央部分を囲うように8本配置される。固定柱506は、その先端に小径の突起509を有する。
固定リブ507は、キャッピング部材501の内底面508及び内側面511に亘って設けられ、内底面508から内側面511に沿って上方に延びる。本実施形態のキャッピング部材501は、長方形状に開口するため、長辺部分及び短辺部分にそれぞれ連なる4つの内側面511を有する。本実施形態の固定リブ507は、キャッピング部材501における開口部分の短辺部分とそれぞれ連なる2つの内側面511に3個ずつ設けられる。
キャッピング部材501は、その内部の空間である収容空間を大気に開放するための大気連通孔512を有する。大気連通孔512は、キャッピング部材501の収容空間を外部と連通可能である。大気連通孔512は、キャップ51内を外部と連通可能であるともいえる。
キャッピング部材501は、大気連通孔512が開口する大気連通管513を有する。大気連通管513は、キャッピング部材501の底部を貫通するように上下に延びる。大気連通管513の一部分は、キャッピング部材501の内底面508から上方に延びる。
大気連通管513は、キャッピング部材501の内底面508において固定柱506に囲まれる領域の外側に位置する。大気連通孔512は、キャッピング部材501の内底面508において内側面511寄りとなる位置に開口する。
キャッピング部材501は、シール部53を有する。シール部53は、キャッピング部材501においてその開口部分から内側面511に亘って設けられる。そのため、キャッピング部材501の内側面511及び固定リブ507は、シール部53に覆われる。シール部53は、キャッピング時に液体噴射ヘッド27のノズル面271に接触することによって、キャッピング部材501の収容空間を密閉可能とする。
液体吸収体502は、例えばウレタンなどの多孔質の樹脂材料で構成され、キャッピング部材501の内底面508に配置される。液体吸収体502は、液体噴射ヘッド27のノズル272から噴射される液体を吸収可能とされる。本実施形態の液体吸収体502は、板状に形成され、その縁部分がキャッピング部材501の内側面511に沿うように設けられる。そのため、液体吸収体502は、その縁部分として長辺部分と短辺部分とを有する。
液体吸収体502は、固定柱506が挿入されるための挿入孔514を有する。挿入孔514は、液体吸収体502を上下に貫通し、固定柱506の数に対応して設けられる。そのため、本実施形態の挿入孔514は、液体吸収体502においてその中央部分を囲うように8個配置される。
液体吸収体502は、固定リブ507と嵌まり合うための切欠溝515を有する。切欠溝515は、液体吸収体502の縁部分に設けられ、その縁部分の一部を切り欠くように形成される。切欠溝515は、固定リブ507の数に対応して設けられ、本実施形態においては液体吸収体502の短辺部分に3個ずつ設けられる。
液体吸収体502は、内底面508から上方に延びる大気連通管513が挿入されるための挿入部516を有する。挿入部516は、液体吸収体502を上下に貫通し、大気連通管513と対応する位置に位置する。挿入部516に挿入される大気連通管513は、挿入部516を通じて液体吸収体502を貫通する。本実施形態の挿入部516は、液体吸収体502において挿入孔514に囲まれる領域の外側に位置する。本実施形態の挿入部516は、複数の切欠溝515のうちの一の切欠溝515と連なって設けられる。挿入部516は、溝でもよいし孔でもよい。
液体吸収体502は、空間形成部材503が固定されるための固定溝517を有する。固定溝517は、液体吸収体502の縁部分に設けられ、その縁部分の一部を切り欠くように形成される。本実施形態の固定溝517は、複数設けられ、液体吸収体502の長辺部分に2個ずつ形成される。
空間形成部材503は、液体吸収体502の上方に配置される。空間形成部材503は、格子状をなす格子部分518と、格子部分518を支持する脚部519とを有する。格子部分518は、幅方向X及び搬送方向Yにそれぞれ延びる複数の柱が交差するように形成される。そのため、格子部分518は、複数の開口521を有する。複数の開口521には、それぞれ固定柱506が挿入される。
脚部519は、格子部分518から鉛直方向Z(鉛直下向き)に延びる。脚部519は、複数設けられ、本実施形態においては12個設けられる。脚部519の下端は、液体吸収体502の上面に接触する。脚部519は、液体吸収体502の挿入孔514、切欠溝515及び固定溝517と上下に重ならない位置に設けられる。
空間形成部材503は、液体吸収体502の固定溝517に挿入するためのロッド522を有する。ロッド522は、固定溝517と対応する位置に設けられ、格子部分518から下方に延びる。本実施形態において、ロッド522は、固定溝517の数に対応して4本設けられる。空間形成部材503は、ロッド522が固定溝517に挿入されることによって、液体吸収体502に対して固定される。
空間形成部材503は、抑制部523を有する。抑制部523は、大気連通管513の上端よりも受止部材504側に位置する。抑制部523は、大気連通孔512から受止部材504に向かう流体の流れを抑制する。本実施形態においては、格子部分518において大気連通孔512と上下に重なる一部分が抑制部523とされる。そのため、抑制部523は、液体吸収体502の挿入部516とも上下に重なる。
受止部材504は、空間形成部材503により支持される。そのため、受止部材504は、キャッピング部材501内において、液体吸収体502と間隔をおいて配置される。受止部材504は、その下面が空間形成部材503の格子部分518に接触する。
受止部材504は、液体噴射ヘッド27のノズル272から排出される液体を受け止めるための受止面524を有する。受止面524は、受止部材504の上面である。受止部材504は、板状に形成され、その縁部分がキャッピング部材501の内側面511に沿うように設けられる。そのため、受止部材504は、その縁部分として長辺部分と短辺部分とを有する。
受止部材504は、固定柱506が挿入されるための挿入孔525を有する。挿入孔525は、受止部材504を上下に貫通し、固定柱506の数に対応して設けられる。そのため、本実施形態の挿入孔525は、受止部材504においてその中央部分を囲うように8個配置される。受止部材504の挿入孔525及び液体吸収体502の挿入孔514は上下に重なる。
受止部材504は、固定リブ507と嵌まり合うための切欠溝526を有する。切欠溝526は、受止部材504の縁部分に設けられ、その縁部分の一部を切り欠くように形成される。切欠溝526は、固定リブ507の数に対応して設けられ、本実施形態においては受止部材504の短辺部分に3個ずつ設けられる。
受止部材504は、液体吸収体502と同様に、液体を吸収可能に構成されることが好ましい。そのため、受止部材504は、例えばウレタンなどの多孔質の樹脂材料で構成されることが好ましい。なお、受止部材504は、液体を吸収しない樹脂材料で構成されてもよいし、樹脂に限らず金属で構成されてもよい。
受止部材504は、キャッピング部材501の収容空間において、受止部材504よりも上方に位置する空間と受止部材504よりも下方に位置する空間とを連通する貫通孔527を有する。貫通孔527は、受止部材504を上下に貫通する。そのため、貫通孔527は、受止部材504の受止面524に開口する。本実施形態の貫通孔527は、挿入孔525を兼ねる。本実施形態において、受止部材504に設けられる複数の挿入孔525のうちの1つの挿入孔525は、搬送方向Yに延びる長孔とされている。長孔として設けられるこの挿入孔525が貫通孔527でもある。
貫通孔527に挿入される固定柱506は、貫通孔527を通って受止部材504を貫通する。貫通孔527は、長孔であるため、挿入される固定柱506の径よりも大きく開口する。そのため、貫通孔527は、固定柱506が挿入された状態においても、受止部材504よりも上方に位置する空間と受止部材504よりも下方に位置する空間とを連通する。なお、貫通孔527は、挿入孔525を兼ねる構成に限らず、挿入孔525とは独立して設けられてもよい。
規制部材505は、網状のメッシュ材として設けられる。規制部材505は、固定柱506の突起509が挿入されるための孔528を有する。孔528は、挿入孔514、525と比較して小さく開口し、固定柱506の数に対応して設けられる。本実施形態の孔528は、規制部材505においてその中央部分を囲うように8個設けられる。
規制部材505は、孔528に挿入された突起509が熱でかしめられることにより、キャッピング部材501に固定される。これにより、規制部材505とキャッピング部材501の内底面508との間に位置する液体吸収体502、空間形成部材503及び受止部材504のキャッピング部材501に対する脱落が抑制される。
図28及び図29に示すように、規制部材505は凹み529を有する。凹み529は、規制部材505の縁部分に設けられ、その縁部分から内側に向けて凹むように形成される。凹み529は、規制部材505と固定リブ507とが干渉することを避けるための形状である。凹み529は、固定リブ507の数に対応して設けられ、本実施形態においては6個設けられる。
規制部材505は、カバー部531を有する。カバー部531は、キャップ51を受止面524側から見た場合、すなわちキャップ51を上方から見た場合において、大気連通孔512と重なる位置に位置する。カバー部531は、大気連通孔512を上方からカバーする。本実施形態のカバー部531は、円板状に設けられ、大気連通孔512と上下に重なる位置に位置する。カバー部531は、大気連通孔512、挿入部516、抑制部523と上下に重なる。そのため、カバー部531は、規制部材505において孔528に囲まれる領域の外側に位置する。
図29に示すように、貫通孔527は、受止部材504において液体噴射ヘッド27のノズル272と対向しない位置に設けられる。図29における2点鎖線は、メンテナンス位置に位置する液体噴射ヘッド27及びノズル272を示す。すなわち、貫通孔527は、受止部材504の受止面524において、メンテナンス位置に位置する液体噴射ヘッド27のノズル272と対向しない位置に開口する。
本実施形態の液体噴射ヘッド27は、複数のノズル272が搬送方向Yに並んで構成されるノズル列を4列有する。ノズル272は、メンテナンス位置において、固定柱506、固定リブ507、カバー部531等と対向しないように位置する。これにより、ノズル272から排出される液体を受止面524が効果的に受け止めることができる。
図29、図30及び図31に示すように、キャッピング部材501は、収容空間内の流体を吸引可能な吸引孔532を有する。吸引孔532は、キャッピング部材501の内底面508に開口し、キャッピング部材501の内外を連通する。すなわち、吸引孔532は、キャッピング部材501の内底面508に開口532aを有する。吸引孔532は、キャップ51内の流体を吸引可能である。
内底面508に形成される吸引孔532の開口532aは、内底面508に配置される液体吸収体502の一部分に接触する。すなわち、液体吸収体502は、吸引孔532の開口532aの少なくとも一部と接触するようにキャッピング部材501内に配置される。吸引孔532は、内底面508においてその中央部分に開口する。そのため、吸引孔532の開口532aは、内底面508において固定柱506に囲まれる領域内に位置する。
キャッピング部材501は、吸引孔532が開口する吸引管533を有する。吸引管533は、キャッピング部材501の底部から下方に向けて延び、吸引用のチューブを介して吸引ポンプ75と接続される。吸引ポンプ75が駆動すると、ノズル272から液体を吸引する吸引クリーニング、又はキャップ51内の液体を排出する空吸引が行われる。
キャップ51が液体噴射ヘッド27をキャッピングすると、キャップ51内には、ノズル272が開口する第1空間S1が形成される。すなわち、キャップ51は、液体噴射ヘッド27に接触したときにノズル272が開口する第1空間S1を囲み形成する。第1空間S1は、キャッピング時の姿勢において、受止部材504よりも液体噴射ヘッド27側に位置する空間である。本実施形態において、第1空間S1は、受止部材504よりも上方に位置する空間であり、鉛直方向Zにおいて液体噴射ヘッド27と受止部材504との間に位置する空間である。
キャップ51内には、第1空間S1とは異なる第2空間S2が形成される。第2空間S2は、キャッピング時の姿勢において、液体吸収体502よりも液体噴射ヘッド27側に位置する空間である。第2空間S2は、キャッピング部材501内において、受止部材504が液体吸収体502に対して間隔をおいて配置されることにより形成される。本実施形態において、第2空間S2は、受止部材504よりも下方に位置する空間であり、鉛直方向Zにおいて受止部材504と液体吸収体502との間に位置する空間である。受止部材504と液体吸収体502との間隔は、キャッピング時におけるノズル面271と受止部材504の受止面524との間隔より大きく設定されており、その結果、第2空間S2の容積は、第1空間S1の容積よりも大きくなっている。
第1空間S1及び第2空間S2は、キャッピング部材501の収容空間の一部分である。すなわち、キャッピング時において、キャップ51内には第1空間S1と第2空間S2とが存在する。本実施形態の第2空間S2は、空間形成部材503が受止部材504を液体吸収体502から離れた位置で支持することによって形成される。すなわち、空間形成部材503は、所謂スペーサーとして機能し、第2空間S2を形成する。なお、キャップ51は、空間形成部材503を備えなくともよい。この場合、例えばキャッピング部材501の内側面511に突出片を設け、その突出片により受止部材504を支持することによって第2空間S2を形成してもよい。
図32及び図33に示すように、大気連通管513は、その上端が第2空間S2に位置するように延びる。大気連通孔512は、キャッピング部材501の内底面508から延びる大気連通管513の上端となるその先端に開口512aを有する。そのため、大気連通孔512は、第2空間S2に開口する。大気連通管513の下端には、大気開放弁78が取り付けられる。
大気連通管513の上端は、第2空間S2において、受止部材504よりも液体吸収体502寄りとなる位置に位置する。すなわち、大気連通管513の先端と液体吸収体502との距離は、大気連通管513と受止部材504との距離よりも短い。そのため、第2空間S2に位置する大気連通孔512の開口512aは、受止部材504との距離よりも液体吸収体502との距離の方が短くなる位置に形成される。大気連通孔512は、第2空間S2において、受止部材504よりも液体吸収体502寄りとなる位置に開口する。
抑制部523は、大気連通孔512の開口512aよりも受止部材504側に位置する。本実施形態の抑制部523は、大気連通孔512の開口512aの上方に位置する。そのため、抑制部523は、大気連通孔512の開口512aから受止部材504に向かう流体の流れを抑制する。
カバー部531は、抑制部523の上方に位置する。そのため、カバー部531は、大気連通孔512の開口512aの上方に位置する。カバー部531は、キャップ51を受止面524側から見た場合、すなわちキャップ51を上方から見た場合において、大気連通孔512の開口512aと重なる位置に位置する。カバー部531は、大気連通孔512の開口512aをカバーする。
図34に示すように、受止部材504の貫通孔527は、第1空間S1と第2空間S2とを連通する。そのため、貫通孔527は、第1空間S1側に位置する開口527aと、第2空間S2側に位置する開口527bとを有する。開口527aは、受止面524に形成される。貫通孔527は、第1空間S1と第2空間S2とを連通する。
貫通孔527において第1空間S1側となる開口527aは、キャッピング時においてノズル272と対向しない位置に設けられる。本実施形態において、固定柱506、固定リブ507、カバー部531は、貫通孔527と同様に、ノズル272と対向しない位置に設けられる。
図29に示すように、キャップ51を上方から見たとき、大気連通孔512及び貫通孔527は、吸引孔532を挟んで対角に位置する。そのため、貫通孔527は、大気連通孔512と上下に重ならない。貫通孔527において第2空間S2側となる開口527bは、大気連通孔512の開口512aと対向しない位置に設けられる。
貫通孔527は、大気連通孔512に対して吸引孔532よりも離れた位置に位置する。貫通孔527と大気連通孔512との距離は、吸引孔532と大気連通孔512との距離よりも長い。特に、貫通孔527において第2空間S2側となる開口527bは、大気連通孔512の開口512aに対して吸引孔532の開口532aより離れた位置に設けられるとよい。
次に、上記のように構成されるキャップ51及びキャップ51を備える液体噴射装置11の作用について説明する。
液体噴射ヘッド27に吸引クリーニングを実行する際、キャップ51が液体噴射ヘッド27をキャッピングした状態で吸引ポンプ75が駆動する。吸引ポンプ75が駆動すると、吸引孔532からキャッピング部材501内の流体が吸引される。このとき、収容空間内の流体は、多孔質の樹脂材料で構成される液体吸収体502のセル、挿入孔514、525、切欠溝515、526、固定溝517、受止部材504と内側面511との隙間など、キャップ51内の隙間を通じて吸引される。そのため、吸引孔532から吸引すると、第1空間S1及び第2空間S2を含むキャッピング部材501の収容空間全体に負圧が及ぶ。すなわち、吸引孔532は、第1空間S1内及び第2空間S2内の流体を吸引可能である。
吸引ポンプ75の駆動によって生じた負圧によりノズル272からキャップ51内に液体が排出されると、受止部材504の受止面524がその液体を受け止める。受止面524により受け止められた液体は、上述したキャップ51内の隙間を通じて、吸引孔532に向けて流れる。
吸引クリーニングによりノズル272から排出された液体の一部は、液体吸収体502に吸収されて保持される。吸引クリーニングを実行した後、例えば空吸引を実行すると、液体吸収体502に保持される液体がキャップ51内から排出される。吸引クリーニング時にキャップ51内に排出された液体は、液体吸収体502を介することによって吸引孔532から効率良く排出される。
空吸引を実行する際、大気開放弁78が開弁することによって、大気連通孔512がキャップ51内を大気に連通させる。吸引クリーニングを実行した後においては、キャップ51内が負圧とされる。そのため、大気開放弁78を開弁した際、大気連通孔512から気体が勢いよくキャップ51内に流入することがある。キャップ51内に勢いよく気体が流入すると、その気体がノズル272に流入する虞がある。気体がノズル272に流入すると、例えばノズル272内に気泡が生じ、液体を噴射するノズル272の噴射不良の要因となり得る。
この点、本実施形態においては、ノズル272が開口する第1空間S1とは異なる第2空間S2に大気連通孔512が開口する。大気開放弁78が開弁となることにより大気連通孔512から第2空間S2に勢いよく気体が流入したとしても、第1空間S1と第2空間S2とが受止部材504によって仕切られているため、第2空間S2に流入した気体が勢いよく第1空間S1に流入する虞が低減される。第2空間S2に流入した気体は、上述したキャップ51内の隙間を通じて、緩やかに第1空間S1に流入する。このようにして、キャップ51内の負圧が解消される。気体が緩やかに第1空間S1に流入するため、ノズル272に気体が流入し難くなる。
吸引クリーニング、フラッシング等を実行した場合などキャップ51に液体が排出された際、大気連通孔512の開口512aに液体が付着することがある。この状態で大気連通孔512からキャップ51内に気体が流入すると、大気連通孔512の開口512aに付着した液体が飛び散ったり泡立ったりする。液体の飛び散り及び泡立ち等によって液体噴射ヘッド27のノズル面271に液体が付着したり、ノズル272に液体が入り込んだりすると、ノズル272の噴射不良に繋がる。この点、本実施形態によれば、第1空間S1と第2空間S2とが受止部材504によって仕切られているため、大気連通孔512の開口512aに付着した液体が仮に飛び散ったり泡立ったりしても、その液体は第2空間S2に留められる。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)例えば、キャップ51内を負圧にすることでノズル272から液体を吸引する吸引クリーニングを実行した後に、空吸引を実行するべく大気連通孔512を通じてキャップ51内を大気に開放すると、大気連通孔512から気体が勢いよくキャップ51内に流入する。大気連通孔512を通じてキャップ51内に勢いよく気体が流入すると、ノズル272に気体が流入する虞がある。
この点、上記実施形態によれば、キャップ51内において、大気連通孔512が開口する第2空間S2とノズル272が開口する第1空間S1とが、受止部材504によって仕切られている。そのため、大気連通孔512を通じてキャップ51内に流入した気体が第1空間S1に勢いよく流れることが抑制される。これにより、ノズル272に気体が流入する虞を低減できる。したがって、噴射不良の発生を低減できる。
(2)大気連通孔512は、第2空間S2において、受止部材504よりも液体吸収体502寄りとなる位置に開口する。そのため、大気連通孔512を通じてキャップ51内に流入した気体が第1空間S1に勢いよく流れることが一層抑制される。これにより、ノズル272に気体が流入する虞を低減できる。
(3)受止部材504が貫通孔527を有する。そのため、受止面524が受け止めた液体を、貫通孔527を通じて落下させることができる。これにより、受止部材504によって受け止められる液体を効果的に液体吸収体502に向けて流すことができる。
(4)貫通孔527において第2空間S2側となる開口527bは、大気連通孔512の開口512aと対向しない位置に設けられる。こうすると、貫通孔527において第2空間S2側となる開口527bと大気連通孔512の開口512aとが対向する場合と比較して、第2空間S2における貫通孔527から大気連通孔512までの距離が長くなる。そのため、大気連通孔512を通じてキャップ51内に流入した気体が勢いよく貫通孔527を通過することが抑制される。すなわち、キャップ51内に流入した気体が第1空間S1に向けて勢いよく流れることが抑制される。これにより、ノズル272に気体が流入する虞を低減できる。
(5)貫通孔527において第1空間S1側となる開口527aは、キャッピング時にノズル272と対向しない位置に設けられる。こうすると、貫通孔527において第1空間S1側となる開口527aとノズル272とが対向する場合と比較して、第1空間S1における貫通孔527からノズル272までの距離が長くなる。そのため、貫通孔527を通じて第1空間S1に流入した気体がノズル272に流れる虞を低減できる。
(6)貫通孔527において第2空間S2側となる開口527bは、大気連通孔512の開口512aに対して吸引孔532の開口532aよりも離れた位置に設けられる。こうすると、貫通孔527において第2空間S2側となる開口527bが大気連通孔512の開口512aに対して吸引孔532の開口532aよりも近い位置に設けられる場合と比較して、第2空間S2における大気連通孔512から貫通孔527までの距離が長くなる。すなわち、第2空間S2において貫通孔527と大気連通孔512とが離れて配置されているため、キャップ51内に流入した気体が第1空間S1に勢いよく流れることが抑制される。これにより、ノズル272に気体が流入する虞を低減できる。
(7)受止部材504を固定するための固定柱506は、貫通孔527を通じて受止部材504を貫通する。これにより、固定柱506が受止部材504を貫通するための孔(挿入孔525)を貫通孔527が兼ねることができる。これにより、受止部材504に貫通孔527とは別の孔(挿入孔514)を設ける必要がないため、受止部材504の構成を簡易にできる。本実施形態においては、8個設けられる挿入孔514のうちの一の挿入孔514を貫通孔527が兼ねている。そのため、8本設けられる固定柱506に対して、挿入孔514と貫通孔527とを併せて孔を9個設ける必要がなく、挿入孔514と貫通孔527とを合わせた孔の数が8個で済む。
(8)規制部材505は、キャップ51を受止面524側から見た場合において大気連通孔512の開口512aと重なる位置に、大気連通孔512の開口512aをカバーするカバー部531を有する。大気連通孔512を通じてキャップ51内に流入した気体がカバー部531によって受け止められるため、ノズル272に気体が流入する虞を低減できる。
(9)空間形成部材503は、大気連通孔512の開口512aよりも受止部材504側に位置するとともに大気連通孔512の開口512aから受止部材504に向かう流体の流れを抑制する抑制部523を有する。大気連通孔512を通じてキャップ51内に流入した気体が抑制部523によって受け止められるため、ノズル272に気体が流入する虞を低減できる。
(10)貫通孔527において第2空間S2側となる開口527bは、大気連通孔512の開口に対して吸引孔532の開口よりも離れた位置に設けられる。すなわち、貫通孔527の開口527bと大気連通孔512の開口512aとの距離よりも、貫通孔527の開口527bと吸引孔532の開口532aとの距離が小さい。そのため、吸引孔532から吸引する際、その吸引力が貫通孔527に及び易い。これにより、キャップ51内を吸引する際、受止面524に受け止められた液体を効果的に貫通孔527に流すことができる。
上記実施形態は、以下に示す変更例のように変更してもよい。また、上記実施形態に含まれる構成と下記変更例に含まれる構成とを任意に組み合わせてもよいし、下記変更例に含まれる構成同士を任意に組み合わせてもよい。
・固定柱506は1本だけでもよい。固定リブ507は設けなくともよい。
・貫通孔527は、鉛直方向Zに延びる円筒状に限らず、蛇行しながら受止部材504を貫通する形状でもよいし、屈曲しながら受止部材504を貫通する形状でもよい。すなわち、貫通孔527は、第1空間S1側の開口527aと第2空間S2側の開口527bとが鉛直方向Zにおいてずれた位置に設けられる形状でもよい。
・受止部材504に貫通孔527を設けなくともよい。例えば、キャッピング部材501に固定リブ507を設けず、切欠溝526を貫通孔527の代わりとしてもよい。
・非キャッピング位置に位置するキャップ51の姿勢は、その開口が上を向く姿勢に限らない。例えば、キャップ51は、非キャッピング位置において、その開口が下を向く姿勢となってもよい。キャップ51は、非キャッピング位置とキャッピング位置との間を、回転しながら移動してもよい。
・空間形成部材503は、格子部分518と脚部519とを有する形状に限らない。液体吸収体502と受止部材504との間隔をあけるように受止部材504を支持するものであればよい。
・払拭部材(ワイパー61)は退避位置と払拭位置との間でノズル面271と直交する方向に移動しなくてもよい。この場合、スライド部材66に払拭部材を固定したり、ワイパーホルダー65をスライド部材66に固定したりしてもよい。
・スライド部材66に係止部112(斜面115)を設け、駆動力伝達部(ラック部材64)に被係止部材(スライド軸113)を設けてもよい。
・上記実施形態では、退避位置において払拭部材(ワイパー61)を、液体噴射ヘッド27の走査領域の下方となる位置に設けたが、走査領域とオーバーラップしない位置に設けてもよい。
・上記実施形態では、メンテナンス装置36は、液体噴射ヘッド27が走査するシリアルプリンターに採用されているが、液体噴射ヘッド27が走査しないラインプリンターに採用してもよい。この場合、払拭部材(ワイパー61)は、媒体Mが搬送される搬送領域と搬送方向Yと交差する方向において隣り合う領域に位置する退避位置と、搬送領域とオーバーラップする払拭位置との間を移動してもよい。また、払拭部材は、搬送領域とオーバーラップし液体噴射ヘッド27と搬送方向Yにおいて隣り合う退避位置と、搬送領域とオーバーラップする払拭位置との間を移動してもよい。
・カムフォロアの回転体は、ローラーに限らずボールでもよい。この構成によっても、電動モーター71の停止位置精度、部品の寸法及び組付けばらつきに起因して第2カム99の回転停止位置が正規の停止位置に対してばらついても、ボールが凹部の中心にくるように第2カムの回転停止位置を調整できる。
・払拭部材(ワイパー61)の払拭位置は1つでもよい。また、ノズル面271と直交する方向に位置の異なる2つ又は4つ以上の払拭位置を設定してもよい。さらに払拭部材の払拭位置をノズル面271と直交する直交方向に連続変化させてもよい。
・ノズル面271と直交する方向に位置の異なる複数の払拭位置が、ワイパー61が退避位置Wsから払拭位置W1へ向かうに連れて、徐々に高くなる構成に限らず、徐々に低くなったり、不規則に変化したりしてもよい。
・液体噴射ヘッド27を印刷時の位置からノズル面271と直交する方向に移動させて払拭部材(ワイパー61)との重複量ΔRを調整してもよい。この場合、例えば払拭部材の払拭位置が1つであっても、ノズル面271を適切な重複量ΔRで払拭できる。
・ラック部材64に設けられた係止部が段差部であり、スライド部材66に設けられた被係止部材が段差部を乗り越えられる斜面を有する構成でもよい。また、これとは逆に、段差部がスライド部材に設けられ、斜面を有する被係止部材がラック部材に設けられていてもよい。
・第1凹部と第2凹部とのうち一方の凹部を無くしてもよい。要するに、キャップ51を非キャッピング位置に配置できる第1カム91の回転停止位置が複数ある場合、第1カム91が複数の回転停止位置でカムフォロアと係合する複数の被係合部分のうち少なくとも1つに凹部を設ければよい。
・キャップ51の昇降機構56を、キャップホルダー52を昇降させるラックアンドピニオン方式の移動機構としてもよい。
・払拭部材(ワイパー61)を幅方向X又は搬送方向Yに移動可能な構成とし、払拭部材をノズル面271に沿う方向に移動させてノズル面271を払拭してもよい。例えばメンテナンス装置36のベースユニット40をレールに載せて装置全体を駆動源の動力により移動可能な構成とし、メンテナンス装置36の移動により払拭部材が、所定の被払拭位置で待機する液体噴射ヘッド27のノズル面271を払拭する構成でもよい。また、ワイパー移動機構62の全体又は一部を駆動源の動力により移動させることにより払拭部材が所定の被払拭位置で待機する液体噴射ヘッド27のノズル面271を払拭する構成でもよい。
・液体噴射装置11は、シリアルプリンターに限定されず、キャリッジ26が幅方向Xと搬送方向Yとの2方向に移動可能なラテラル式プリンターでもよい。
・液体噴射装置11は、印刷用のプリンターに限定されない。例えば、機能材料の粒子が液体に分散又は混合されてなる液状体を噴射するものでもよい。例えば、配線材料の金属粉を分散させた液状体の液滴を噴射し、媒体の一例である基板に電気配線パターンを形成する液体噴射装置もよい。また、色材(画素材料)の粉末を分散させた液状体を媒体の一例である長尺状の基板に噴射し、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)及び面発光などの各種の方式のディスプレイ(表示装置用の表示基板)の画素を製造する液体噴射装置でもよい。さらに未硬化の樹脂液を噴射して立体物を形成する三次元造形用の液体噴射装置でもよい。
・液体噴射装置11が液体を噴射する媒体Mは、紙に限らず、布帛、プラスチックフィルム、金属フィルム等でもよい。
以下に、上述した実施形態及び変更例から把握される技術的思想及びその作用効果を記載する。
[思想1]
液体を噴射可能なノズルを有する液体噴射ヘッドと、
前記液体噴射ヘッドに接触したときに前記ノズルが開口する第1空間を囲み形成するキャッピングを実行するように構成されたキャップと、を備え、
前記キャップは、
前記キャップ内の流体を吸引可能な吸引孔と、前記キャップ内を外部と連通可能な大気連通孔と、を有するキャッピング部材と、
前記吸引孔の開口の少なくとも一部と接触するように前記キャッピング部材内に配置され、前記液体を吸収可能な液体吸収体と、
前記液体吸収体との間に第2空間を形成するように前記液体吸収体と間隔をおいて前記キャッピング部材内に配置され、前記ノズルから排出される前記液体を受け止める受止面を有する受止部材と、を有し、
前記第2空間は、キャッピング時の姿勢において前記液体吸収体よりも前記液体噴射ヘッド側に位置し、
前記大気連通孔は、前記第2空間に開口することを特徴とする液体噴射装置。
例えば、キャップ内を負圧にすることでノズルから液体を吸引する吸引クリーニングを実行した後に、大気連通孔を通じてキャップ内を大気に開放すると、大気連通孔から気体が勢いよくキャップ内に流入する。大気連通孔を通じてキャップ内に勢いよく気体が流入すると、ノズルに気体が流入する虞がある。
この点、上記構成によれば、キャップ内において大気連通孔が開口する第2空間とノズルが開口する第1空間とが、受止部材によって仕切られている。そのため、大気連通孔を通じて流入した気体が第1空間に勢いよく流れることが抑制される。これにより、ノズルに気体が流入する虞を低減できる。したがって、噴射不良の発生を低減できる。
[思想2]
前記大気連通孔は、前記第2空間において、前記受止部材よりも前記液体吸収体寄りとなる位置に開口することを特徴とする[思想1]に記載の液体噴射装置。
この構成によれば、大気連通孔を通じてキャップ内に流入した気体が第1空間に勢いよく流れることが一層抑制される。これにより、ノズルに気体が流入する虞を低減できる。
[思想3]
前記受止部材は、キャッピング時の姿勢において前記受止面よりも前記液体噴射ヘッド側に形成される前記第1空間と、前記第2空間とを連通する貫通孔を有し、
前記貫通孔において前記第2空間側となる開口は、前記大気連通孔の開口と対向しない位置に設けられることを特徴とする[思想1]又は[思想2]に記載の液体噴射装置。
この構成によれば、貫通孔において第2空間側となる開口と大気連通孔の開口とが対向する場合と比較して、第2空間における貫通孔から大気連通孔までの距離が長くなる。そのため、大気連通孔を通じてキャップ内に流入した気体が勢いよく貫通孔を通過することが抑制される。これにより、ノズルに気体が流入する虞を低減できる。
[思想4]
前記貫通孔において前記第1空間側となる開口は、キャッピング時に前記ノズルと対向しない位置に設けられることを特徴とする[思想3]に記載の液体噴射装置。
この構成によれば、貫通孔において第1空間側となる開口とノズルとが対向する場合と比較して、第1空間における貫通孔からノズルまでの距離が長くなる。そのため、貫通孔を通じて第1空間に流入した気体がノズルに流入する虞を低減できる。
[思想5]
前記貫通孔において前記第2空間側となる開口は、前記大気連通孔の開口に対して前記吸引孔の開口よりも離れた位置に設けられることを特徴とする[思想3]又は[思想4]に記載の液体噴射装置。
この構成によれば、貫通孔において第2空間側となる開口が大気連通孔の開口に対して吸引孔の開口よりも近い位置に設けられる場合と比較して、第2空間における大気連通孔から貫通孔までの距離が長くなる。すなわち、第2空間において貫通孔と大気連通孔とが離れて配置されているため、大気連通孔を通じてキャップ内に流入した気体が第1空間に勢いよく流れることが抑制される。これにより、ノズルに気体が流入する虞を低減できる。
[思想6]
前記受止部材は、前記液体を吸収可能に構成され、
前記キャップは、前記キャッピング部材から前記受止部材が脱落することを規制する規制部材と、前記規制部材を前記キャッピング部材に固定するための固定柱と、を有し、
前記固定柱は、前記貫通孔を通じて前記受止部材を貫通することを特徴とする[思想3]から[思想5]の何れか一つに記載の液体噴射装置。
この構成によれば、固定柱が受止部材を貫通するための孔を貫通孔が兼ねることができる。これにより、受止部材に貫通孔とは別の孔を設ける必要がないため、受止部材の構成を簡易にできる。
[思想7]
前記規制部材は、前記キャップを前記受止面側から見た場合において、前記大気連通孔の開口と重なる位置に、前記大気連通孔の開口をカバーするカバー部を有することを特徴とする[思想6]に記載の液体噴射装置。
この構成によれば、大気連通孔を通じてキャップ内に流入した気体がカバー部によって受け止められるため、ノズルに気体が流入する虞を低減できる。
[思想8]
前記受止部材は、前記液体を吸収可能に構成され、
前記キャップは、前記第2空間を形成する空間形成部材を有し、
前記空間形成部材は、前記大気連通孔の開口よりも前記受止部材側に位置するとともに前記大気連通孔の開口から前記受止部材に向かう流体の流れを抑制する抑制部を有することを特徴とする[思想1]から[思想7]の何れか一つに記載の液体噴射装置。
この構成によれば、大気連通孔を通じてキャップ内に流入した気体が抑制部によって受け止められるため、ノズルに気体が流入する虞を低減できる。
[思想9]
液体を噴射可能なノズルを有する液体噴射ヘッドに接触して前記ノズルが開口する第1空間を囲み形成するキャッピングを実行可能に構成されるキャップであって、
前記キャップ内の流体を吸引可能な吸引孔と、前記キャップ内を外部と連通可能な大気連通孔と、を有するキャッピング部材と、
前記吸引孔の開口の少なくとも一部と接触するように前記キャッピング部材内に配置され、前記液体を吸収可能な液体吸収体と、
前記液体吸収体との間に第2空間を形成するように前記液体吸収体と間隔をおいて前記キャッピング部材内に配置され、前記ノズルから排出される前記液体を受け止める受止面を有する受止部材と、を有し、
前記第2空間は、キャッピング時の姿勢において前記液体吸収体よりも前記液体噴射ヘッド側に位置し、
前記大気連通孔は、前記第2空間に開口することを特徴とするキャップ。
この構成によれば、上述した液体噴射装置と同様の効果を得ることができる。