JP2019093416A - 鋳片搬送ロールの傾き設定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】表面割れの発生を抑制する。【解決手段】予め、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」及び「ロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値」を決定する(S1,S2)。実操業において、3次冷却帯で、連続鋳造機によって鋳造した鋳片を冷却しながら、鋳片搬送ロールによって鋳片を下流へ搬送する。3次冷却帯又は3次冷却帯の下流において、鋳片表面における鋳片幅方向両端部の温度を測定する(S3)。測定した鋳片幅方向両端部の温度の差を求める(S4)。「鋳片幅方向両端部の温度の差」が「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」を超える場合(S5,YES)、ロール群の鋳片搬送ロールの傾きを、「ロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値」以下にする(S6)。【選択図】図7
Description
本発明は、連続鋳造機によって鋳造した鋳片を冷却する方法に関する。
連続鋳造機において、タンディッシュから鋳型内に注入された溶鋼は、鋳型内で冷却(1次冷却)された後、下方へ引き抜かれつつ冷却され(2次冷却)、内部まで凝固することにより、鋳片が鋳造される。鋳造された鋳片は所定の長さに切断された後、圧延される。圧延に際して鋳片は再加熱されるが、鋳片を再加熱することにより、鋳片に表面割れが発生することがある。
鋳片に表面割れが発生することを抑制するため、圧延工程前に、鋳片を冷却する3次冷却が実施されている。3次冷却において、鋳片の上面、下面及び両側面の4面に水を噴霧することにより、鋳片を冷却している。しかし、鋳片の4面全てを均一に冷却することは難しく、実際は、不均一冷却が起こることがある。不均一冷却が起こることにより、鋳片に表面割れが発生することがある。
特許文献1では、3次冷却において不均一冷却が起こることを抑制するため、3次冷却における鋳片上面の水量密度を規定している。また、鋳片側面の水量密度及び鋳片下面の水量密度を、鋳片上面の水量密度との関係で規定している。
しかし、水量密度は、鋳片の上面、下面及び両側面の各面で調整する必要がある上に、鋼種、鋳片サイズを含む鋳造条件等の多数の要素を考慮する必要がある。これらの要素を全て考慮した水量密度を決定することは、非常に困難なことである。
本発明は、従来と異なる方法により、表面割れの発生を抑制する方法を提供することを目的とする。
従来より、3次冷却において鋳片の冷却が不均一になることは知られていたが、その根本的な原因については明らかになっていない。そこで、本発明者は、3次冷却で冷却が不均一になる原因を調べた。その結果、3次冷却が行われる領域(3次冷却帯)において、鋳片が傾いたり、蛇行したりしながら冷却されることにより、鋳片の冷却が不均一になるという知見が得られた。また、研究をさらに進めたところ、鋳片が傾いたり、蛇行したりするのは、3次冷却帯及びその周辺に配置された鋳片搬送ロールが傾いていることが原因であるという知見が得られた。
図1Aは、3次冷却帯に配置された鋳片搬送ロール300を示している。図1Aに示すように、鋳片搬送ロール300が水平方向に延在している場合、鋳片搬送ロール300を通る鋳片301も水平になる。この場合、図1Bに示すように、上ノズル401から鋳片上面311の全面に水が噴霧され、下ノズル402から鋳片下面312の全面に水が噴霧され、右ノズル403から鋳片右側面313の全面に水が噴霧され、左ノズル404から鋳片左側面314の全面に水が噴霧される。これにより、鋳片の上面311、下面312、右側面313及び左側面314の4面が均一に冷却される。
しかし、高温の多数の鋳片が3次冷却帯及びその周辺を通過することにより、3次冷却帯及びその周辺の設備が劣化等する。これにより、鋳片搬送ロール300が傾くことがわかった。
図2Aは、鋳片搬送ロール300が傾いた例を示している。図2Aにおいて鋳片搬送ロール300の右端が下がり、左端が上がった状態で、鋳片搬送ロール300が傾いている。傾いた鋳片搬送ロール300の上を、鋳片501が通ったとき、鋳片501は、鋳片搬送ロール300の傾斜方向に沿って傾斜する。
この状態で鋳片501に水を噴霧すると、図2Bに示すように、鋳片501の右上コーナー部501a及び右下コーナー部501bに冷却水が噴霧されない。そのため、右上コーナー部501a及び右下コーナー部501bは冷却不足となる。一方、鋳片501の左上コーナー部501cには、上ノズル401と左ノズル404の2つのノズルから水が噴霧される。また、鋳片501の左下コーナー部501dには、下ノズル402及び左ノズル404の2つのノズルから水が噴霧される。これにより、鋳片左上コーナー部501c及び左下コーナー部501dは、過冷却となる。このように、鋳片501の右上コーナー部501a及び右下コーナー部501bは冷却不足となるが、鋳片501の左上コーナー部501c及び左下コーナー部501dは過冷却となる不均一冷却が起こることがわかった。
上記知見を基に、3次冷却における不均一冷却を解決する方法を検討した。不均一冷却となる原因は、3次冷却帯及びその周辺に配置された鋳片搬送ロールが傾くことである。したがって、3次冷却帯及びその周辺に配置された鋳片搬送ロールの傾きを頻繁に調べ、鋳片搬送ロールが傾いているときは、鋳片搬送ロールを水平にする又は水量密度を変える等の対策を講じることが考えられる。しかし、3次冷却帯に配置された鋳片搬送ロールを調べるためには、作業者が3次冷却帯に入らなければならない。作業者が3次冷却帯に入っている間は、操業を停止する必要がある。したがって、作業者が3次冷却帯に入って、3次冷却帯に配置された鋳片搬送ロールを調べている間は、操業を停止しなければならない。また、3次冷却帯及びその周辺に配置された全ての鋳片搬送ロールが傾いているかを調べる作業は、相当な時間と労力が必要である。そのため、3次冷却帯及びその周辺に配置された全ての鋳片搬送ロールが傾いているかを調べるためには、長期間の操業停止が必要となる。これらの鋳片搬送ロールの傾きを頻繁に調べる場合、長時間の操業停止を頻繁に行う上に、操業停止中に大変な作業を行わなければならない。この方法は、効率が良い方法とはいえず、生産性が低い。
別の方法として、再加熱の際又は圧延後に表面割れが発生したことを確認してから、鋳片搬送ロールが傾いていると考え、対策を講じることも考えられる。しかし、表面割れが発生したことを確認したときには、既に多数の鋳片が3次冷却帯を通過している。これらの鋳片は、表面割れが確認された製品と同様に、3次冷却帯での冷却が不均一であるため、再加熱の際又は圧延後に表面割れが発生すると考えられる。したがって、この方法では、歩留りが大幅に低下する。
そこで、本発明者は、上述した方法と異なる方法を検討した。その結果、鋳片搬送ロールが傾いているかを直接調べることなく、操業中に、鋳片搬送ロールが、表面割れが発生する程度に傾いているかを予測可能な方法を見出した。
本発明の鋳片搬送ロールの傾き設定方法は、以下の工程を備える。
(1)連続鋳造機によって鋳造した鋳片を、冷却装置が配置された冷却帯で冷却した後に、前記鋳片に表面割れが発生する、鋳片幅方向両端部の表面温度の差に基づいて、温度差の閾値を決定する温度差の閾値決定工程
(2)連続鋳造機によって鋳造した鋳片を、前記冷却帯で冷却した後に、前記鋳片に表面割れが発生する鋳片搬送ロールの傾きに基づいて、前記冷却帯に配置された鋳片搬送ロール、鋳片の搬送方向について前記冷却帯の上流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、前記冷却帯に最も近い第1鋳片搬送ロール、及び、鋳片の搬送方向について前記冷却帯の下流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、前記冷却帯に最も近い第2鋳片搬送ロールからなるロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値を決定するロール傾きの閾値決定工程
(3)前記冷却帯で、連続鋳造機によって鋳造した鋳片を前記冷却装置によって冷却しながら、前記鋳片を鋳片搬送ロールによって搬送し、前記冷却帯又は鋳片の搬送方向について前記冷却帯の下流で、鋳片上面の鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度をそれぞれ測定する温度測定工程
(4)前記温度測定工程で測定した前記鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差を求める温度差算出工程
(5)前記温度差算出工程で求めた前記鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差が、前記温度差の閾値決定工程で決定した前記温度差の閾値以上である場合又は前記温度差の閾値決定工程で決定した前記温度差の閾値を超える場合、前記ロール群の鋳片搬送ロールの傾きを、前記ロール傾きの閾値決定工程で決定した前記ロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値以下にする又は前記ロール傾きの閾値決定工程で決定した前記ロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値より小さくするロール傾き設定工程
(1)連続鋳造機によって鋳造した鋳片を、冷却装置が配置された冷却帯で冷却した後に、前記鋳片に表面割れが発生する、鋳片幅方向両端部の表面温度の差に基づいて、温度差の閾値を決定する温度差の閾値決定工程
(2)連続鋳造機によって鋳造した鋳片を、前記冷却帯で冷却した後に、前記鋳片に表面割れが発生する鋳片搬送ロールの傾きに基づいて、前記冷却帯に配置された鋳片搬送ロール、鋳片の搬送方向について前記冷却帯の上流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、前記冷却帯に最も近い第1鋳片搬送ロール、及び、鋳片の搬送方向について前記冷却帯の下流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、前記冷却帯に最も近い第2鋳片搬送ロールからなるロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値を決定するロール傾きの閾値決定工程
(3)前記冷却帯で、連続鋳造機によって鋳造した鋳片を前記冷却装置によって冷却しながら、前記鋳片を鋳片搬送ロールによって搬送し、前記冷却帯又は鋳片の搬送方向について前記冷却帯の下流で、鋳片上面の鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度をそれぞれ測定する温度測定工程
(4)前記温度測定工程で測定した前記鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差を求める温度差算出工程
(5)前記温度差算出工程で求めた前記鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差が、前記温度差の閾値決定工程で決定した前記温度差の閾値以上である場合又は前記温度差の閾値決定工程で決定した前記温度差の閾値を超える場合、前記ロール群の鋳片搬送ロールの傾きを、前記ロール傾きの閾値決定工程で決定した前記ロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値以下にする又は前記ロール傾きの閾値決定工程で決定した前記ロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値より小さくするロール傾き設定工程
本発明によると、実操業において、操業中に鋳片の幅方向両端部の表面温度を測定し、これらの温度差と予め決定した「温度差の閾値」とを基に、3次冷却帯及びその周辺に配置された鋳片搬送ロールが、表面割れが発生する程度に傾いているかを予測する。予測に際して、操業を停止しなくてよい。鋳片搬送ロールが、表面割れが発生する程度に傾いていると予測されたときは、鋳片搬送ロールの傾きを表面割れが発生しない傾きへ修整する。これにより3次冷却において不均一冷却となることを抑制できるため、3次冷却後に表面割れが発生することを抑制できる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
図3は、連続鋳造機1、切断機2及び冷却装置3を示したものである。鋳片の搬送方向について、上流から順に、連続鋳造機1、切断機2及び冷却装置3が配置されている。以下では、鋳片の搬送方向についての上流及び下流を、単に「上流」及び「下流」と称することがある。
図3は、連続鋳造機1、切断機2及び冷却装置3を示したものである。鋳片の搬送方向について、上流から順に、連続鋳造機1、切断機2及び冷却装置3が配置されている。以下では、鋳片の搬送方向についての上流及び下流を、単に「上流」及び「下流」と称することがある。
連続鋳造機1は、タンディッシュ11と、タンディッシュ11の底部に配置されたノズル12と、ノズル12の下部が配置された鋳型13とを備える。図示しない取鍋からタンディッシュ11に注入された溶鋼は、ノズル12を介して鋳型13へ注入され、鋳型13によって冷却される(1次冷却)。その後、溶鋼は、鋳造経路Pに沿って下方へ引き抜かれつつ、鋳型13の下流に配置された冷却装置(図示省略)によって冷却される(2次冷却)。これにより鋳片が鋳造される。
鋳造された鋳片は、鋳片搬送ロール4によって切断機2の周辺へ搬送される。切断機2により、鋳片は所定の長さに切断される。
切断された鋳片Sは、鋳片搬送ロール4によって、冷却装置3が配置された3次冷却帯へ搬送される。切断された鋳片Sは、3次冷却帯で冷却装置3により冷却されながら、鋳片搬送ロール4によって下流へ搬送される。
本実施形態では、連続鋳造機1において、鋳型13による冷却を「1次冷却」、鋳型13の下流における冷却を「2次冷却」と称するのに対し、連続鋳造機1外において、冷却装置3による冷却を「3次冷却」と称する。また、冷却装置3が配置された領域を「3次冷却帯」と称する。さらに、切断された鋳片Sを「鋳片S」と称することがある。
図4及び図5は、冷却装置3の概念図を示したものである。図5は、冷却装置3を図4のV−V線に沿ってみた図である。図4及び図5に示すように、冷却装置3は、鋳片Sの上面に水を噴霧する複数の上ノズル21と(図4参照)、鋳片Sの下面に水を噴霧する複数の下ノズル22と(図4参照)、鋳片Sの一方の側面に水を噴霧する複数の第1側ノズル23と(図5参照)、鋳片Sの他方の側面に水を噴霧する複数の第2側ノズル24と(図5参照)を有する。
図4及び図5に示すように、本実施形態の3次冷却帯に、5本の鋳片搬送ロールが配置されている。本実施形態では、3次冷却帯に配置された鋳片搬送ロールを、「冷却帯鋳片搬送ロール」と称する。図4及び図5において、5本の冷却帯鋳片搬送ロールに、上流から順に、符号31、32、33、34、35を付している。
図4及び図5において、3次冷却帯の上流に配置された鋳片搬送ロールに符号40、50を付している。鋳片搬送ロール40は、3次冷却帯の上流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、3次冷却帯に最も近い。鋳片搬送ロール50は、3次冷却帯の上流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、3次冷却帯に2番目に近い。
図4及び図5において、3次冷却帯の下流に配置された鋳片搬送ロールに符号60、70を付している。鋳片搬送ロール60は、3次冷却帯の下流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、3次冷却帯に最も近い。鋳片搬送ロール70は、3次冷却帯の下流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、3次冷却帯に2番目に近い。
本発明者の知見から、冷却帯鋳片搬送ロール31、32、33、34、35、第1鋳片搬送ロール40及び第2鋳片搬送ロール60の少なくとも1本の鋳片搬送ロールが傾いている場合、3次冷却帯で鋳片が傾くことがわかった。本発明者の研究から、3次冷却帯に配置された冷却帯鋳片搬送ロールが傾いていなくても、3次冷却帯の上流に配置された第1鋳片搬送ロール40及び3次冷却帯の下流に配置された第2鋳片搬送ロール60の少なくとも一方が傾いている場合、3次冷却帯で鋳片が傾くことがわかった。3次冷却帯で鋳片が傾くことにより、不均一冷却が生じる。これにより、3次冷却後、鋳片に表面割れが発生することがある。本実施形態では、3次冷却帯で鋳片が傾く原因となる、冷却帯鋳片搬送ロール31、32、33、34、35、第1鋳片搬送ロール40及び第2鋳片搬送ロール60を、ロール群Fと総称する。
図6は、鋳片Sが3次冷却帯を通過しているときの図であり、図4のVI−VI線に沿ってみた図である。図6は、ロール群Fの全ての鋳片搬送ロールが傾いていない場合、言い換えると、ロール群Fの全ての鋳片搬送ロールが水平方向に延在している場合を示している。
上ノズル21、下ノズル22、第1側ノズル23及び第2側ノズル24から、鋳片Sに対して、水が噴霧される。ロール群Fの全ての鋳片搬送ロールが水平方向に延在している場合、鋳片Sの上面S1に、上ノズル21から水が噴霧され、鋳片Sの下面S2に、下ノズル22から水が噴霧され、鋳片Sの一方の側面(図6中の右側面)S3に、第1側ノズル(図6中の右ノズル)23から水が噴霧され、鋳片Sの他方の側面(図6中の左側面)S4に、第2側ノズル(図6中の左ノズル)24から水が噴霧される。この場合、鋳片の4面が均一に冷却される。
しかし、ロール群Fの少なくとも1本の鋳片搬送ロールが傾いている場合、本発明者の知見から、鋳片の幅方向一端側コーナー部は冷却不足となり、鋳片の幅方向他端側コーナー部は過冷却となることがわかった。
図2Aには、ロール群に含まれる1本の鋳片搬送ロール(300)を例示している。鋳片搬送ロール300は傾いている。例えば、図2Aに示すように、鋳片搬送ロール300の右端が下がり、左端が上がっている場合、図2Bに示すように、鋳片501の右上コーナー部501a及び右下コーナー部501bは冷却不足となるが、鋳片左上コーナー部501c及び左下コーナー部501dは過冷却となる。また、鋳片搬送ロール300の傾きが逆である場合、つまり、図2Aにおいて鋳片搬送ロール300の左端が下がり、右端が上がっている場合、図示を省略するが、鋳片501の左上コーナー部501c及び左下コーナー部501dは冷却不足となるが、鋳片右上コーナー部501a及び右下コーナー部501bは過冷却となる。
図2Bにおいて、冷却不足である右上コーナー部501a及び右下コーナー部501bの鋳片表面温度は高いが、過冷却された鋳片左上コーナー部501c及び左下コーナー部501dの鋳片表面温度は低い。高温のコーナー部には引張応力が発生し、低温のコーナー部には圧縮応力が発生する。その結果、鋳片Sに表面割れが発生する。また、低温のコーナー部は、冷却不足のため、組織が微細化されていない。そのため、鋳片Sの圧延に際して鋳片Sを再加熱したときに、鋳片Sに表面割れが発生するおそれがある。
上記知見を基に、本発明者は、鋳片幅方向一端部と他端部の鋳片表面温度の差に着目した。鋳片幅方向一端部と他端部の温度差が大きい場合、一方は冷却不足であり、他方は過冷却であると考えられる。つまり、鋳片幅方向一端部と他端部の温度差が大きい場合、鋳片の冷却が不均一であると考えられる。鋳片の冷却が不均一となる原因は、ロール群Fの鋳片搬送ロールが傾くことである。したがって、鋳片幅方向一端部と他端部の温度差が大きい場合、ロール群Fの鋳片搬送ロールが傾いているといえる。
上記より、鋳片幅方向一端部と他端部(鋳片幅方向両端部)の温度を測定し、これらの温度の差を基に、ロール群Fの鋳片搬送ロールが傾いているかを予測する方法を見出した。この予測を基に、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整する。以下、本実施形態の方法について、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。
〔閾値の決定〕
事前に、(1)鋳片幅方向両端部の温度差の閾値と(2)鋳片搬送ロールの傾きの閾値を決定する。「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、後述する実操業において、ロール群の鋳片搬送ロールが傾いているかを予測するときに用いられる。「鋳片搬送ロールの傾きの閾値」は、後述する実操業において、ロール群の鋳片搬送ロールの傾きを修整するときに用いられる。
事前に、(1)鋳片幅方向両端部の温度差の閾値と(2)鋳片搬送ロールの傾きの閾値を決定する。「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、後述する実操業において、ロール群の鋳片搬送ロールが傾いているかを予測するときに用いられる。「鋳片搬送ロールの傾きの閾値」は、後述する実操業において、ロール群の鋳片搬送ロールの傾きを修整するときに用いられる。
(1)鋳片幅方向両端部の温度差の閾値の決定(図7のS1)。
「鋳片幅方向両端部の温度差」は、3次冷却帯又は3次冷却帯の下流における、鋳片幅方向一端部と他端部(鋳片幅方向両端部)の鋳片表面温度の差である。「鋳片幅方向両端部の温度差」は、鋳片幅方向一端部と他端部の鋳片表面温度において、温度が高い一方の端部の鋳片表面温度から温度が低い他方の端部の鋳片表面温度を引いた値、又は、鋳片幅方向両端部の温度差の絶対値である。したがって、「鋳片幅方向両端部の温度差」は、正の数である。
「鋳片幅方向両端部の温度差」は、3次冷却帯又は3次冷却帯の下流における、鋳片幅方向一端部と他端部(鋳片幅方向両端部)の鋳片表面温度の差である。「鋳片幅方向両端部の温度差」は、鋳片幅方向一端部と他端部の鋳片表面温度において、温度が高い一方の端部の鋳片表面温度から温度が低い他方の端部の鋳片表面温度を引いた値、又は、鋳片幅方向両端部の温度差の絶対値である。したがって、「鋳片幅方向両端部の温度差」は、正の数である。
図8には、切断された鋳片Sを示している。図8において、鋳片の幅方向中央を、一点鎖線で示している。鋳片幅方向一端部P1は、鋳片の幅方向一端から幅方向に距離p1だけ離れている。鋳片幅方向他端部P2は、鋳片の幅方向他端から幅方向に距離p2だけ離れている。距離p1と距離p2は同じ距離である(距離p1=距離p2)。鋳片幅方向一端部P1は、幅方向中央より幅方向一端に近い。鋳片幅方向他端部P2は、幅方向中央より幅方向他端に近い。鋳片幅方向一端部P1と鋳片幅方向他端部P2は、鋳片の幅方向に延在する一直線上に存在する。図8では、鋳片幅方向一端部P1と鋳片幅方向他端部P2が、直線l上に存在する。上述した「鋳片幅方向両端部の温度差」は、鋳片幅方向一端部P1の鋳片表面温度と鋳片幅方向他端部P2の鋳片表面温度の差である。
図8では、鋳片の幅方向一端から鋳片幅方向一端部P1までの距離p1がゼロより大きく、鋳片の幅方向他端から鋳片幅方向他端部P2までの距離p2がゼロより大きい場合を例示している。しかし、距離p1及び距離p2はゼロでもよい。距離p1及び距離p2がゼロである場合、鋳片幅方向一端部P1が鋳片の幅方向一端に位置し、鋳片幅方向他端部P2が鋳片の幅方向他端に位置している。
「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、連続鋳造機によって鋳造した鋳片Sを3次冷却帯で冷却した後に、鋳片Sに表面割れが発生する、鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差を基に決定される。鋳片幅方向両端部の温度差の閾値の決定には、例えば、複数の鋳片幅方向両端部の温度差と、各温度差の鋳片Sに表面割れが発生したかの結果が考慮される。
例えば、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、3次冷却後、鋳片Sに表面割れが発生する「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」のなかで、「最小の鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」(tmin)に基づいて決定される。例えば、実験により、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」がtmin以上であるとき表面割れが発生し、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」がtmin未満であるとき表面割れが発生しないことがわかった場合、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」をtminとする。この場合、後述する実操業において、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」がtmin以上であるとき、鋳片搬送ロールの傾きを修整する。
他の例として、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、3次冷却後、鋳片Sに表面割れが発生しない「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」のなかで、「最大の鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」(tmax)に基づいて決定される。例えば、実験により、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」がtmax以下であるとき表面割れが発生しないことがわかった場合、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」がtmaxを超えるときに表面割れが発生すると考えられる。この場合、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」をtmaxとする。後述する実操業において、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」がtmaxを超えるとき、鋳片搬送ロールの傾きを修整する。
他の例として、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、a)3次冷却後、鋳片Sに表面割れが発生する「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」のなかで「最小の鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」(tmin)と、b)3次冷却後、鋳片Sに表面割れが発生しない「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」のなかで「最大の鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」(tmax)とに基づいて決定することができる。例えば、実験からtminとtmaxが得られ、当業者の経験からtminとtmaxの間の値(ti)以下のときに表面割れが発生せず、tiを超えるときに表面割れが発生すると考えられる場合、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」をtiとする。この場合、後述する実操業において、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」がtiを超えるとき、鋳片搬送ロールの傾きを修整する。
閾値の決定に用いられる複数の鋳片幅方向両端部の温度の差は、鋳片幅方向一端からの距離が全て同じ鋳片幅方向一端部の温度と、鋳片幅方向他端からの距離が全て同じ鋳片幅方向他端部の温度との差である。各鋳片幅方向両端部は、鋳片長手方向(鋳片搬送方向)に同じ位置でもよく、異なる位置でもよい。
例えば、図8において、閾値の決定に用いる複数の鋳片幅方向両端部の温度差は、鋳片幅方向一端から鋳片幅方向に距離p1だけ離れた破線上の鋳片幅方向一端部の温度と、鋳片幅方向他端から鋳片幅方向に距離p2だけ離れた破線上の鋳片幅方向他端部の温度の差である。鋳片幅方向一端部と鋳片幅方向他端部は、鋳片の幅方向に延在する一直線上に存在する。各鋳片幅方向両端部は、図8に示す2つの破線において、鋳片長手方向(鋳片搬送方向)に同じ位置でもよく、異なる位置でもよい。
例えば、図8において、閾値の決定に用いる複数の鋳片幅方向両端部の温度差は、鋳片幅方向一端から鋳片幅方向に距離p1だけ離れた破線上の鋳片幅方向一端部の温度と、鋳片幅方向他端から鋳片幅方向に距離p2だけ離れた破線上の鋳片幅方向他端部の温度の差である。鋳片幅方向一端部と鋳片幅方向他端部は、鋳片の幅方向に延在する一直線上に存在する。各鋳片幅方向両端部は、図8に示す2つの破線において、鋳片長手方向(鋳片搬送方向)に同じ位置でもよく、異なる位置でもよい。
また、複数の鋳片幅方向両端部の温度差を用いて閾値を決定するときは、3次冷却帯又は3次冷却帯の下流において同じ位置及び同じタイミングで測定した温度の差を用いる。例えば、温度測定位置及び温度測定タイミングを、3次冷却帯出口から下流に1.2mの位置において、鋳片上面における温度測定位置が3次冷却帯を出てから60sec経過後とする場合、閾値決定に用いる全ての温度測定位置及び温度測定タイミングを、3次冷却帯出口から下流に1.2mの位置において、鋳片上面における温度測定位置が3次冷却帯を出てから60sec経過後とする。
なお、3次冷却帯の下流では、鋳片が復熱する。3次冷却帯から離れるにつれて、復熱の影響により鋳片幅方向両端部の温度差が小さくなっていく。また、鋳片が3次冷却帯を通過してからの時間が長くなるにつれて、鋳片幅方向両端部の温度差が小さくなっていく。鋳片幅方向両端部の温度差が小さくなるにつれて、鋳片搬送ロールの傾きを予測する精度が低下する傾向がある。本発明者は、鋳片搬送ロールの傾きの予測精度を調べるため、下記の実験を行った。
<実験>
3次冷却帯の下流で、鋳片上面における温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから所定時間経過後、鋳片上面におけるその温度測定位置の温度(鋳片幅方向両端部の温度)を測定し、鋳片幅方向両端部の温度差を算出した。ここで、「3次冷却帯出口」とは、3次冷却帯の最下流の位置である。また、温度を測定した鋳片に表面割れが発生したかを調べた。
算出した温度差と表面割れの有無との関係から、表面割れが発生する温度差の閾値を求めた。この閾値を「表面割れ発生限界温度差」とした。
3次冷却帯の下流で、鋳片上面における温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから所定時間経過後、鋳片上面におけるその温度測定位置の温度(鋳片幅方向両端部の温度)を測定し、鋳片幅方向両端部の温度差を算出した。ここで、「3次冷却帯出口」とは、3次冷却帯の最下流の位置である。また、温度を測定した鋳片に表面割れが発生したかを調べた。
算出した温度差と表面割れの有無との関係から、表面割れが発生する温度差の閾値を求めた。この閾値を「表面割れ発生限界温度差」とした。
鋳片上面における温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから、その温度測定位置の温度を測定するまでの時間を変えて、上記と同様な実験を行った。以下では、鋳片上面における温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから、その温度測定位置の温度を測定するまでの時間を、「鋳片の温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してからの経過時間」と称する。
図9には、「表面割れ発生限界温度差」と「鋳片の温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してからの経過時間」との関係を示している。図9の縦軸は、「表面割れ発生限界温度差」である。図9の横軸は、「鋳片の温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してからの経過時間」である。図9から、「鋳片の温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してからの経過時間」が長くなるにつれて、「表面割れ発生限界温度差」が小さくなっていることがわかる。また、「鋳片の温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してからの経過時間」が長いほど、「表面割れ発生限界温度差」の低下率は小さい。「鋳片の温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してからの経過時間」が長くなると復熱の影響により両コーナーの温度差が小さくなり、予測精度が低下しやすいため、鋳片表面温度の測定条件は、3次冷却帯出口から120sec以内とすることが望ましい。
上記より、3次冷却帯の下流で測定した鋳片幅方向両端部の温度差を用いて「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」を決定する場合、3次冷却帯の下流で測定した鋳片幅方向両端部の温度差は、鋳片の温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから120sec以内のタイミングで測定された温度の差を用いて決定される閾値であることが好ましい。
(2)鋳片搬送ロールの傾きの閾値決定
「鋳片搬送ロールの傾き」は、「基準ロール」に対する、「ロール群Fの全ての鋳片搬送ロールの長手方向両端部の傾きの合計」である。
「鋳片搬送ロールの傾き」は、「基準ロール」に対する、「ロール群Fの全ての鋳片搬送ロールの長手方向両端部の傾きの合計」である。
「基準ロール」とは、例えば、ロール群Fの上流に配置された鋳片搬送ロールのなかでロール群Fに最も近い鋳片搬送ロール50又はロール群Fの下流に配置された鋳片搬送ロールのなかでロール群Fに最も近い鋳片搬送ロール70である。
鋳片搬送ロール50及び鋳片搬送ロール70は3次冷却帯の外に配置されているため、3次冷却帯の外から、作業者が目視で確認できる。そのため、鋳片搬送ロール50及び鋳片搬送ロール70を点検するときに、操業を停止しなくてよい。したがって、鋳片搬送ロール50及び鋳片搬送ロール70は、常に点検可能な状態にある。そのため、鋳片搬送ロール50及び鋳片搬送ロール70が傾いたときは、ロールの傾きが修整される。したがって、鋳片搬送ロール50及び鋳片搬送ロール70は、水平に保たれていると考えられる。よって、鋳片搬送ロール50及び鋳片搬送ロール70の一方を、基準ロールとすることが好ましい。
なお、鋳片搬送ロール50の上流にも、図示しない鋳片搬送ロールが配置されている。また、鋳片搬送ロール70の下流にも、図示しない鋳片搬送ロールが配置されている。鋳片搬送ロール50の上流及び鋳片搬送ロール70の下流に配置された鋳片搬送ロールは、3次冷却帯の外に配置されているため、鋳片搬送ロール50及び鋳片搬送ロール70と同様に、常に点検可能な状態にある。したがって、鋳片搬送ロール50の上流及び鋳片搬送ロール70の下流に配置された鋳片搬送ロールも、水平に保たれていると考えられる。そのため、基準ロールとして、鋳片搬送ロール50の上流に配置された鋳片搬送ロール又は鋳片搬送ロール70の下流に配置された鋳片搬送ロールを用いてもよい。なお、基準ロールがロール群Fに近いほど、基準ロールに対するロール群Fの鋳片搬送の傾きの測定精度が高い。そこで、基準ロールは、ロール群Fの上流に配置された鋳片搬送ロールのなかで、ロール群Fに最も近い鋳片搬送ロール50又はロール群Fの下流に配置された鋳片搬送ロールのなかで、ロール群Fに最も近い鋳片搬送ロール70であることが好ましい。
次に、「鋳片搬送ロールの傾き」の算出方法を説明する。
例えば、図4及び図5に示す3次冷却帯の場合、「鋳片搬送ロールの傾き」は、以下の方法によって算出される。ここでは、「基準ロール」を「鋳片搬送ロール50」とした場合について説明する。
例えば、図4及び図5に示す3次冷却帯の場合、「鋳片搬送ロールの傾き」は、以下の方法によって算出される。ここでは、「基準ロール」を「鋳片搬送ロール50」とした場合について説明する。
図10〜図12は、基準ロールである鋳片搬送ロール50と、ロール群Fを構成する第1鋳片搬送ロール40、冷却帯鋳片搬送ロール31、32、33、34、35及び第2鋳片搬送ロール60の傾きの例を示している。図10〜図12には、ロール群Fを構成する第1鋳片搬送ロール40、冷却帯鋳片搬送ロール31、32、33、34、35及び第2鋳片搬送ロール60は全て傾いている一例を示している。図10〜図12では、鋳片搬送ロールの長手方向及び鋳片幅方向を左右方向としている。以下では、鋳片搬送ロールの長手方向一端部及び他端部を、図10〜図12において右端部及び左端部とする。また、鋳片の幅方向一端部及び他端部を、図10〜図12において鋳片の右端部及び左端部とする。
図10には、基準ロールである鋳片搬送ロール50と、第1鋳片搬送ロール40を図示している。図10には、鋳片搬送ロール50が水平方向に延在している場合を示している。鋳片Sが鋳片搬送ロール50の上を通過したとき、鋳片搬送ロール50の最上線において、鋳片Sの左端が、鋳片搬送ロール50の左端から距離xだけ離れた位置X0に位置し、鋳片Sの右端が、鋳片搬送ロール50の右端から距離yだけ離れた位置Y0に位置する。距離xと距離yは同じ距離でもよく、異なる距離でもよい。
この場合、鋳片Sがロール群Fの鋳片搬送ロール上を通過したとき、鋳片Sの左端が、ロール群Fの鋳片搬送ロールの左端から距離xだけ離れた位置に位置し、鋳片Sの右端が、ロール群Fの鋳片搬送ロールの右端から距離yだけ離れた位置に位置すると考えられる。
この場合、鋳片Sがロール群Fの鋳片搬送ロール上を通過したとき、鋳片Sの左端が、ロール群Fの鋳片搬送ロールの左端から距離xだけ離れた位置に位置し、鋳片Sの右端が、ロール群Fの鋳片搬送ロールの右端から距離yだけ離れた位置に位置すると考えられる。
鋳片搬送ロールにおいて、高温の鋳片と接した部分は摩耗する。ロール群Fの鋳片搬送ロールが傾いている場合、3次冷却帯において、鋳片Sの幅方向一端部が冷却不足となり、他端部が過冷却になる不均一冷却が起こる。冷却不足である鋳片Sの一端部の温度は、過冷却である鋳片Sの他端部の温度より低い。これにより、鋳片Sの温度差は、鋳片Sの幅方向一端と他端において最大となる。鋳片Sと接触した鋳片搬送ロールにおいて、冷却不足である鋳片Sの一端部と接した部分の摩耗量は、過冷却である鋳片Sの他端部と接した部分の摩耗量より多くなる。そして、鋳片搬送ロールの長手方向両端部の傾き量の差は、鋳片Sの温度差が最大となる、鋳片Sの幅方向両端に接した部分で最大となる。鋳片搬送ロールにおいて、鋳片Sの幅方向両端に接する部分は、上述した、鋳片搬送ロールの左端から距離xだけ離れた位置と鋳片搬送ロールの右端から距離yだけ離れた位置である。
そこで、ロール群Fの鋳片搬送ロールの長手方向両端部の傾きを、傾きの差が最大となる、鋳片搬送ロールの左端から距離xだけ離れた位置と鋳片搬送ロールの右端から距離yだけ離れた位置における傾きの合計とする。
そこで、ロール群Fの鋳片搬送ロールの長手方向両端部の傾きを、傾きの差が最大となる、鋳片搬送ロールの左端から距離xだけ離れた位置と鋳片搬送ロールの右端から距離yだけ離れた位置における傾きの合計とする。
図10には、第1鋳片搬送ロール40の左端部が下がり、右端部が上がった状態を示している。第1鋳片搬送ロール40の最上線L1は、鋳片Sが第1鋳片搬送ロール40上を通過したとき、第1鋳片搬送ロール40の鋳片Sと接する部分である。鋳片Sが第1鋳片搬送ロール40上を通過したとき、第1鋳片搬送ロール40の最上線L1において、鋳片Sの左端は、第1鋳片搬送ロール40の左端から距離xだけ離れた位置X1に位置し、鋳片Sの右端は、第1鋳片搬送ロール40の右端から距離yだけ離れた位置Y1に位置する。
図10では、第1鋳片搬送ロール40の最上線L1の中央をC1としている。基準ロールである鋳片搬送ロール50の最上線の延長線に平行な線L(以下、「基準ロールの平行線L」又は「平行線L」と称することがある)上に、第1鋳片搬送ロール40の中央C1を位置させたとき、平行線Lから位置X1までの鉛直方向距離がgx1であり、平行線Lから位置Y1までの鉛直方向距離がgy1である。ここで、距離gx1≧0であり、距離gy1≧0である。距離gx1及び距離gy1を、第1鋳片搬送ロール40の左右両端部の各々の傾きの大きさと考える。
第1鋳片搬送ロール40の左端部は平行線Lより下方に位置し、第1鋳片搬送ロール40の右端部は平行線Lより上方に位置する。平行線Lより下方に位置する鋳片搬送ロールの一端部の傾きを負(−)とし、平行線Lより上方に位置する鋳片搬送ロール3の端部の傾きを正(+)とした場合、第1鋳片搬送ロール40の左端部の傾きは−gx1(負)であり、第1鋳片搬送ロール40の右端部の傾きはgy1(正)である。第1鋳片搬送ロール40の長手方向両端部の傾きの合計は、第1鋳片搬送ロール40の左端部の傾き(−gx1)と右端部の傾き(gy1)の合計であり、下記(1)式によって示される。
第1鋳片搬送ロール40の長手方向両端部の傾きの合計=−gx1+gy1 ・・・(1)
第1鋳片搬送ロール40の長手方向両端部の傾きの合計=−gx1+gy1 ・・・(1)
第1鋳片搬送ロール40が傾いていることにより、第1鋳片搬送ロール40を通過した鋳片Sは傾いた状態で3次冷却帯に入る。図10の第1鋳片搬送ロール40は、左端部が下がり、右端部は上がった状態で傾いているため、鋳片Sも、左端部が下がり、右端部が下がった状態で、3次冷却帯に入る。そのため、鋳片Sが、第1鋳片搬送ロール40の上流に配置された冷却帯鋳片搬送ロール31の上を通過するまでに、鋳片Sの左端は冷却不足となり、鋳片Sの右端は過冷却となる。
上述した方法と同様な方法により、ロール群Fの他の鋳片搬送ロールの傾きを求める。図11に、冷却帯鋳片搬送ロール31、32、33を示している。図12に、冷却帯鋳片搬送ロール34、35及び第2鋳片搬送ロール60を示している。
図11には、冷却帯鋳片搬送ロール31の左端部が上がり、右端部が下がった状態を示している。冷却帯鋳片搬送ロール31の最上線L2は、鋳片Sが冷却帯鋳片搬送ロール31上を通過したとき、冷却帯鋳片搬送ロール31における鋳片Sと接する部分である。鋳片Sが冷却帯鋳片搬送ロール31上を通過したとき、図11に示すように、冷却帯鋳片搬送ロール31の最上線L2において、鋳片Sの左端は、冷却帯鋳片搬送ロール31の左端から距離xだけ離れた位置X2に位置し、鋳片Sの右端は、冷却帯鋳片搬送ロール31の右端から距離yだけ離れた位置Y2に位置する。
基準ロールの平行線L上に、冷却帯鋳片搬送ロール31の中央C2を位置させたとき、平行線Lから位置X2までの鉛直方向距離がgx2であり、平行線Lから位置Y2までの鉛直方向距離がgy2である。ここで、距離gx2≧0であり、距離gy2≧0であり。距離gx2及び距離gy2を、冷却帯鋳片搬送ロール31の左右両端部の各々の傾きの大きさと考える。
冷却帯鋳片搬送ロール31の左端部は平行線Lより上方に位置し、冷却帯鋳片搬送ロール31の右端部は平行線Lより下方に位置する。したがって、冷却帯鋳片搬送ロール31の左端部の傾きはgx2(正)であり、冷却帯鋳片搬送ロール31の右端部の傾きは−gy2(負)である。この場合、冷却帯鋳片搬送ロール31の長手方向両端部の傾きの合計は、冷却帯鋳片搬送ロール31の左端部の傾き(gx2)と右端部の傾き(−gy2)の合計であり、下記(2)式によって示される。
冷却帯鋳片搬送ロール31の長手方向両端部の傾きの合計=gx2−gy2 ・・・(2)
冷却帯鋳片搬送ロール31の長手方向両端部の傾きの合計=gx2−gy2 ・・・(2)
仮に、冷却帯鋳片搬送ロール31が高温の鋳片により摩耗していない場合、冷却帯鋳片搬送ロール31の最上線L2は直線である。冷却帯鋳片搬送ロール31が傾いている場合、冷却帯鋳片搬送ロール31において、鋳片Sの左端と接した位置X2の傾きの大きさdと、鋳片Sの右端と接した位置Y2の傾きの大きさdは同じである。ここで、dは正の数である。しかし、冷却帯鋳片搬送ロール31上を、高温の鋳片Sが通過する。鋳片Sは、下流の第1鋳片搬送ロール40が傾いていたことにより、左端部は冷却不足であり、右端部は過冷却となっている。そのため、鋳片Sが冷却帯鋳片搬送ロール31の上を通過するとき、鋳片Sの左端部の温度は、右端部の温度より高い。これにより、冷却帯鋳片搬送ロール31において、鋳片Sの左端と接した位置X2の摩耗量aは、鋳片Sの右端と接した位置Y2の摩耗量bより多くなる。ここで、a及びbは正の数である。
この場合、冷却帯鋳片搬送ロール31の左端部の傾き(gx2)はd−aであり、右端部の傾き(−gy2)は、−(d+b)である。したがって、冷却帯鋳片搬送ロール31の長手方向両端部の傾きの合計は、下記(2−1)式によって示される。
冷却帯鋳片搬送ロール31の長手方向両端部の傾きの合計=d−a−(d+b)
=−a−b・・・(2)
後述するロール群Fの他の鋳片搬送ロールについても、同様なことが考えられる。
冷却帯鋳片搬送ロール31の長手方向両端部の傾きの合計=d−a−(d+b)
=−a−b・・・(2)
後述するロール群Fの他の鋳片搬送ロールについても、同様なことが考えられる。
上述した方法と同様な方法により冷却帯鋳片搬送ロール32、33、34、35及び第2鋳片搬送ロール60の長手方向両端部の傾きを求める。図11及び図12から、冷却帯鋳片搬送ロール32、33、34、35及び第2鋳片搬送ロール60の長手方向両端部の傾きの合計は(3)〜(7)式によって示される。
冷却帯鋳片搬送ロール32の長手方向両端部の傾きの合計=gx3−gy3 ・・・(3)
冷却帯鋳片搬送ロール33の長手方向両端部の傾きの合計=−gx4+gy4 ・・・(4)
冷却帯鋳片搬送ロール34の長手方向両端部の傾きの合計=−gx5+gy5・・・(5)
鋳片搬送ロール35の長手方向両端部の傾きの合計=gx6−gy6 ・・・(6)
第2鋳片搬送ロール60の長手方向両端部の傾きの合計=−gx7+gy7・・・(7)
ここで、gx3≧0、gy3≧0、gx4≧0、gy4≧0、gx5≧0、gy5≧0、gx6≧0、gy6≧0、gx7≧0、gy7≧0である。
冷却帯鋳片搬送ロール32の長手方向両端部の傾きの合計=gx3−gy3 ・・・(3)
冷却帯鋳片搬送ロール33の長手方向両端部の傾きの合計=−gx4+gy4 ・・・(4)
冷却帯鋳片搬送ロール34の長手方向両端部の傾きの合計=−gx5+gy5・・・(5)
鋳片搬送ロール35の長手方向両端部の傾きの合計=gx6−gy6 ・・・(6)
第2鋳片搬送ロール60の長手方向両端部の傾きの合計=−gx7+gy7・・・(7)
ここで、gx3≧0、gy3≧0、gx4≧0、gy4≧0、gx5≧0、gy5≧0、gx6≧0、gy6≧0、gx7≧0、gy7≧0である。
基準ロールを鋳片搬送ロール50とした場合、「鋳片搬送ロールの傾き」は、基準ロールである鋳片搬送ロール50に対する、ロール群Fを構成する第1鋳片搬送ロール40、冷却帯鋳片搬送ロール31、32、33、34、35及び第2鋳片搬送ロール60の長手方向両端部の傾き量の合計である。したがって、「鋳片搬送ロールの傾き」は、(1)〜(7)式の合計であり、以下の式によって示される。
鋳片搬送ロールの傾き=−gx1+gx2+gx3−gx4−gx5+gx6−gx7+gy1−gy2−gy3+gy4+gy5−gy6+gy7
鋳片搬送ロールの傾き=−gx1+gx2+gx3−gx4−gx5+gx6−gx7+gy1−gy2−gy3+gy4+gy5−gy6+gy7
上記では、「基準ロール」が「鋳片搬送ロール50」である場合について説明したが、「基準ロール」が「鋳片搬送ロール70」である場合も上記と同様な方法により「鋳片搬送ロールの傾き」を算出することができる。
「鋳片搬送ロールの傾きの閾値」は、連続鋳造機によって鋳造した鋳片Sを3次冷却帯で冷却した後に、鋳片Sに表面割れが発生する、ロール群Fの鋳片搬送ロールの長手方向両端部の傾きの合計を基に決定される。鋳片搬送ロールの傾きの閾値の決定には、例えば、ロール群Fの鋳片搬送ロールの長手方向両端部の傾きの合計と、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きが各傾きであるときに鋳片Sに表面割れが発生したかの結果が考慮される。
例えば、「鋳片搬送ロールの傾きの閾値」は、3次冷却後、鋳片Sに表面割れが発生する「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」のなかで、「ロール群Fの最小の鋳片搬送ロールの傾きの閾値」(gmin)に基づいて決定される。例えば、実験により、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」がgmin以上であるとき表面割れが発生し、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」がgmin未満であるとき表面割れが発生しないことがわかった場合、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きの閾値」をgminとする。この場合、後述する実操業において、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」がgmin未満となるように、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整する。
他の例として、「鋳片搬送ロールの傾きの閾値」は、3次冷却後、鋳片Sに表面割れが発生しない「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」のなかで、「ロール群Fの最大の鋳片搬送ロールの傾き」(gmax)に基づいて決定される。例えば、実験により、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」がgmax以下であるとき表面割れが発生しないことがわかった場合、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」がgmaxを超えるときに表面割れが発生すると考えられる。この場合、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きの閾値」をgmaxとする。後述する実操業において、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」がgmax以下となるように、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整する。
他の例として、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きの閾値」は、a)3次冷却後、鋳片Sに表面割れが発生する「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」のなかで「ロール群Fの最小の鋳片搬送ロールの傾き」(gmin)と、b)3次冷却後、鋳片Sに表面割れが発生しない「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」のなかで「ロール群Fの最大の鋳片搬送ロールの傾き」(gmax)とに基づいて決定することができる。例えば、実験からgminとgmaxが得られ、当業者の経験等からgminとgmaxの間の値(gi)以下のときに表面割れが発生せず、giを超えるときに表面割れが発生すると考えられる場合、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きの閾値」をgiとする。この場合、後述する実操業において、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」がgi以下となるように、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整する。
〔実操業〕
実操業において、ロール群Fの鋳片搬送ロールが、表面割れが発生する程度に傾いているかを予測し、この予測結果を基に鋳片搬送ロールの傾きを修整する。
実操業において、ロール群Fの鋳片搬送ロールが、表面割れが発生する程度に傾いているかを予測し、この予測結果を基に鋳片搬送ロールの傾きを修整する。
(3)鋳片幅方向両端部の温度の測定(図7のS3)
実操業において、3次冷却帯又は3次冷却帯の下流で、鋳片上面における鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度t1,t2を測定する。ここで、鋳片表面温度t1は、鋳片上面における鋳片幅方向一端部の鋳片表面温度である。鋳片表面温度t2は、鋳片上面における鋳片幅方向他端部の鋳片表面温度である。また、鋳片幅方向両端部は、上述した「(1)鋳片幅方向両端部の温度差の閾値の決定」で説明した鋳片幅方向両端部である。
実操業において、3次冷却帯又は3次冷却帯の下流で、鋳片上面における鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度t1,t2を測定する。ここで、鋳片表面温度t1は、鋳片上面における鋳片幅方向一端部の鋳片表面温度である。鋳片表面温度t2は、鋳片上面における鋳片幅方向他端部の鋳片表面温度である。また、鋳片幅方向両端部は、上述した「(1)鋳片幅方向両端部の温度差の閾値の決定」で説明した鋳片幅方向両端部である。
実操業の鋳片幅方向両端部は、上述した「(1)鋳片幅方向両端部の温度差の閾値の決定」における鋳片幅方向両端部と同じ幅方向位置とする。例えば、閾値の鋳片幅方向両端部が「鋳片の幅方向一端から同じ距離p1の位置」及び「鋳片の幅方向他端から同じ距離p2の位置」である場合、実操業における鋳片幅方向両端部を「鋳片の幅方向一端から距離p1の位置」及び「鋳片の幅方向他端から距離p2の位置」とする。
また、実操業において、3次冷却帯又は3次冷却帯の下流で鋳片表面温度を測定する位置及びタイミングは、上述した(1)の「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」における位置及びタイミングと同じとする。例えば、(1)の閾値が、3次冷却帯出口から下流に1.2mの位置において、鋳片先端が3次冷却帯を出てから60sec経過後で測定した温度の差の閾値である場合、実操業において、3次冷却帯出口から下流に1.2mの位置において、鋳片先端が3次冷却帯を出てから60sec経過後に鋳片表面温度を測定する。なお、(1)で説明したように、鋳片の温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから120secを超えると、鋳片搬送ロールの傾きの予測精度が低下しやすいため、3次冷却帯の下流で鋳片表面温度を測定する場合、鋳片の温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから120sec以内に鋳片表面温度を測定することが好ましい。
鋳片表面温度は、例えば温度計によって測定される。図4には、温度計50が3次冷却帯の下流に配置されている例を示している。温度計50により、温度計50の下方を通過する鋳片の温度を連続的に測定することができる。温度計の位置は、測定位置に応じて変えてよい。鋳片表面温度を3次冷却帯で測定する場合、温度計を3次冷却帯に配置する。
(4)「鋳片幅方向両端部の温度差」の算出
鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度t1,t2の差tdを算出する(図7のS4)。差tdは正の数である。例えば、t1がt2より大きい場合、差tdは以下の式によって示される。
td=t1−t2・・・(a)
また、t2がt1より大きい場合、差tdは以下の式によって示される。
td=t2−t1・・・(b)
別の表現として、(c)式に示すように、差tdをt1とt2の差の絶対値としてもよい。
td=|t1−t2|・・・(c)
t1がt2より大きい場合、(c)式は(a)式と同じ結果となる。t2がt1より大きい場合、(c)式は(b)式と同じ結果となる。したがって、(c)式で表されるtdも、鋳片幅方向両端部の温度差といえる。
差tdは、下記式によって示される温度差でもよい。
td=|t2−t1|
鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度t1,t2の差tdを算出する(図7のS4)。差tdは正の数である。例えば、t1がt2より大きい場合、差tdは以下の式によって示される。
td=t1−t2・・・(a)
また、t2がt1より大きい場合、差tdは以下の式によって示される。
td=t2−t1・・・(b)
別の表現として、(c)式に示すように、差tdをt1とt2の差の絶対値としてもよい。
td=|t1−t2|・・・(c)
t1がt2より大きい場合、(c)式は(a)式と同じ結果となる。t2がt1より大きい場合、(c)式は(b)式と同じ結果となる。したがって、(c)式で表されるtdも、鋳片幅方向両端部の温度差といえる。
差tdは、下記式によって示される温度差でもよい。
td=|t2−t1|
(5)鋳片搬送ロールの傾きの予測
実操業で求めた(3)「鋳片幅方向両端部の温度差」と、事前に決定した(1)「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値の決定」を基に、鋳片搬送ロールが、表面割れが発生する程度に傾いているかを予測する。
実操業で求めた(3)「鋳片幅方向両端部の温度差」と、事前に決定した(1)「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値の決定」を基に、鋳片搬送ロールが、表面割れが発生する程度に傾いているかを予測する。
例えば、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」が上記(1)で例示したtiである場合、実操業において、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」がtiを超えるとき、鋳片搬送ロールの傾きを修整する。以下に、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差」がtiである場合の鋳片搬送ロールの傾きの予測方法を説明する。
「鋳片幅方向両端部の温度差td」が「温度差の閾値ti」以下である場合(td≦ti、図7のS5、NO)、「鋳片幅方向両端部の温度差td」は表面割れが発生しない温度差である。したがって、ロール群Fの鋳片搬送ロールは傾いていない、又は、ロール群Fの鋳片搬送ロールは傾いていても、表面割れが発生しない程度の傾きであると予測される。この場合、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整する必要がないと判断し、操業を続ける。次の地点の鋳片幅方向両端部の温度を測定し(図7のS3)、その温度差を算出する(図7のS4)。
一方、「鋳片幅方向両端部の温度差td」が「温度差の閾値ti」を超える場合(td>ti、図7のS5、YES)、「鋳片幅方向両端部の温度差td」は表面割れが発生する温度差である。したがって、ロール群Fの鋳片搬送ロールは、表面割れが発生する程度に傾いていると予測される。この場合、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整する必要があると判断する。よって、操業を停止し、例えば、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きが上述したgi以下となるように、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整する(図7のS6)。このとき、ロール群Fの全ての鋳片搬送ロールの傾きを満遍なく修整することにより、ロール群Fの全ての鋳片搬送ロールの傾きをほぼ同じにすることが好ましい。その後、操業を再開し、鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度t1,t2を測定する(図7のS3)。
上述した本実施形態の方法は、実操業において、「鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度t1,t2」を測定し、これらの「温度差td」と予め決定した「温度差の閾値」を基に、ロール群Fの鋳片搬送ロールが、表面割れが発生する程度に傾いているかを予測する。この予測を基に、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整する必要があるかを判断する。
従来、ロール群Fの鋳片搬送ロールが傾いているかを調べる方法として、操業を停止してから、作業者が3次冷却帯に入り、3次冷却帯に配置された冷却帯鋳片搬送ロール31、32、33、34、35の傾きを調べるという方法が考えられる。しかし、この方法は、長時間の操業停止を頻繁に行う上に、操業停止中に大変な作業を行わなければならない。本実施形態の方法によると、操業を停止することなく、鋳片搬送ロールの幅方向両端部の温度差を測定することにより、ロール群Fの鋳片搬送ロールが、表面割れが発生する程度に傾いているかを予測することができる。したがって、生産性を低下させることなく、表面割れの発生を抑制できる。
また、従来、鋳片搬送ロールの傾きを修整する場合、鋳片搬送ロールをほぼ水平にしていたが、鋳片搬送ロールを水平にすることは非常に困難な作業である。本発明者は、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを、事前に決定した傾きの閾値以下又は傾きの閾値未満にすることにより、表面割れの発生を抑制できることを見出した。これにより、鋳片搬送ロールの多少の傾きが許容されるため、修整作業の困難性を低減できる。
また、各鋳片搬送ロールの傾き量に応じて、各ノズルからの水量密度を調整することも考えられるが、傾き量に応じた水量密度を決定することは非常に難しい。また、傾き量に応じた水量密度は、鋼種、鋳片サイズ、鋳造条件等のあらゆる要素を考慮して決定しなければならないが、これは非常に困難である。後述の実験で説明するように、本実施形態の方法によると、全ての鋼種に共通する傾きの閾値を決定することができた。したがって、鋼種毎に水量を決定する必要がない。また、鋳片搬送ロールの傾きの閾値は、水量密度の決定よりも簡易に決定することができることがわかった。さらに、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整することにより、3次冷却帯及びその周辺の設備を根本的に直すことができるため、長期に亘って表面割れの発生を抑制することができる。
本実施形態の方法を用いた実施例を説明する。
〔実施条件〕
(鋳造条件)
垂直曲げ型連続鋳造機によって鋳片を鋳造した。連続鋳造機の鋳型は、幅430mm×厚み300mmのブルームを鋳造可能に構成されている。鋳造速度(ピンチロールの回転速度)を0.70m/min以上1.05m/min以下とした。
上記以外の鋳造方法については、ブルーム製造のための当業者の常法通りの方法とした。
(鋳造条件)
垂直曲げ型連続鋳造機によって鋳片を鋳造した。連続鋳造機の鋳型は、幅430mm×厚み300mmのブルームを鋳造可能に構成されている。鋳造速度(ピンチロールの回転速度)を0.70m/min以上1.05m/min以下とした。
上記以外の鋳造方法については、ブルーム製造のための当業者の常法通りの方法とした。
(3次冷却及びその周辺の設備)
・3次冷却帯の鋳片搬送方向長さ:7.23m
・ロール群Fに配置された鋳片搬送ロールの本数:7本
・ロール群Fに配置された各鋳片搬送ロールの長手方向長さ:600mm
・3次冷却帯及びその周辺に配置された鋳片搬送ロール(ロール群Fの鋳片搬送ロールを含む)のロールピッチ:200mm以上800mm以下
・3次冷却帯に配置されたノズル:上ノズル(24個)、下ノズル(24個)、第1側ノズル(24個)及び第2側ノズル(24個)の合計96個のノズルを配置した。ノズルには、2口ノズルを用いた。
・ノズル間距離:鋳片搬送方向に270mm
・ノズルから鋳片までの距離
上ノズル先端から鋳片上面までの鉛直方向距離:200mm
下ノズル先端から鋳片下面までの鉛直方向距離:200mm
第1側ノズル先端から、第1側ノズルに対向する鋳片の一方の側面までの水平方向距離:80mm
第2側ノズル先端から、第2側ノズルに対向する鋳片の他方の側面までの水平方向距離:80mm
・3次冷却帯における比水量:8l/kg−steel以上34l/kg−steel以下
比水量は、単位時間当たりの冷却水量合計(l/min)を、単位時間当たりの鋳造鋳片重量(kg/min)で割った値である。
各ノズルから、空気とエアーを一定の比で混合したミストを鋳片に噴霧した(ミスト冷却)。
後述する表1〜表4に、鋳片上面の水量密度(l/m2)を示している。水量密度は、鋳片1m2に噴霧された単位時間当たりの水量である。後述する表1−表4に示すように、鋼種毎に冷却パターンを変更した。
・3次冷却帯の鋳片搬送方向長さ:7.23m
・ロール群Fに配置された鋳片搬送ロールの本数:7本
・ロール群Fに配置された各鋳片搬送ロールの長手方向長さ:600mm
・3次冷却帯及びその周辺に配置された鋳片搬送ロール(ロール群Fの鋳片搬送ロールを含む)のロールピッチ:200mm以上800mm以下
・3次冷却帯に配置されたノズル:上ノズル(24個)、下ノズル(24個)、第1側ノズル(24個)及び第2側ノズル(24個)の合計96個のノズルを配置した。ノズルには、2口ノズルを用いた。
・ノズル間距離:鋳片搬送方向に270mm
・ノズルから鋳片までの距離
上ノズル先端から鋳片上面までの鉛直方向距離:200mm
下ノズル先端から鋳片下面までの鉛直方向距離:200mm
第1側ノズル先端から、第1側ノズルに対向する鋳片の一方の側面までの水平方向距離:80mm
第2側ノズル先端から、第2側ノズルに対向する鋳片の他方の側面までの水平方向距離:80mm
・3次冷却帯における比水量:8l/kg−steel以上34l/kg−steel以下
比水量は、単位時間当たりの冷却水量合計(l/min)を、単位時間当たりの鋳造鋳片重量(kg/min)で割った値である。
各ノズルから、空気とエアーを一定の比で混合したミストを鋳片に噴霧した(ミスト冷却)。
後述する表1〜表4に、鋳片上面の水量密度(l/m2)を示している。水量密度は、鋳片1m2に噴霧された単位時間当たりの水量である。後述する表1−表4に示すように、鋼種毎に冷却パターンを変更した。
(鋳片表面温度の測定)
鋳片上面における温度測定位置を、鋳片幅方向両端から鋳片幅方向に50mm離れた位置とした。この温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから60sec経過後、3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置で、鋳片表面温度を測定した。鋳片の長手方向一端部から他端部まで、鋳片表面温度を連続して測定した。鋳片表面温度の測定には、FLIR社製のサーモビュワー(FLIR T640)を用いた。
鋳片上面における温度測定位置を、鋳片幅方向両端から鋳片幅方向に50mm離れた位置とした。この温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから60sec経過後、3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置で、鋳片表面温度を測定した。鋳片の長手方向一端部から他端部まで、鋳片表面温度を連続して測定した。鋳片表面温度の測定には、FLIR社製のサーモビュワー(FLIR T640)を用いた。
(ビレットの表面割れの有無)
3次冷却後、断面サイズが(幅)約155mm×(厚さ)約155mmであり、長さが約10mであるビレットが得られるように、鋳片を圧延した。圧延後、JIS Z 2323に準拠して磁粉探傷試験を実施した。表面割れが発生した場合、磁粉探傷試験において、鋼片表面に、割れに沿った白模様が現れる。後述する表1〜4において、白模様が現れた場合を表面割れ有り(割有(○))と示し、白模様が現れなかった場合を表面割れ無し(割無(×))と示している。
3次冷却後、断面サイズが(幅)約155mm×(厚さ)約155mmであり、長さが約10mであるビレットが得られるように、鋳片を圧延した。圧延後、JIS Z 2323に準拠して磁粉探傷試験を実施した。表面割れが発生した場合、磁粉探傷試験において、鋼片表面に、割れに沿った白模様が現れる。後述する表1〜4において、白模様が現れた場合を表面割れ有り(割有(○))と示し、白模様が現れなかった場合を表面割れ無し(割無(×))と示している。
表1〜4には、その他の実施条件及び実験結果を示している。
以下では、図7のフローチャートに沿って、本実施例について説明する。
(1)鋳片幅方向両端部の温度差の閾値決定(図7のS1)
温度差の閾値を決定するため、事前に、鋳片表面温度を測定した。表1〜表4には、鋳片幅方向一端部の鋳片表面平均温度Xと、鋳片幅方向他端部の鋳片表面平均温度Yを示している。1つの鋳片の長手方向一端部から他端部までの鋳片表面温度を連続して測定し、これらの平均温度をX及びYとした。表1〜表4には、鋳片幅方向両端部の温度差として、X−Yの絶対値(|X−Y|)を示している。また、表1〜表4に、磁粉探傷試験の結果として表面割れの有無を示している。図13には、「鋳片幅方向両端部の温度差|X−Y|」と「表面割れの有無」との関係を示している。
(1)鋳片幅方向両端部の温度差の閾値決定(図7のS1)
温度差の閾値を決定するため、事前に、鋳片表面温度を測定した。表1〜表4には、鋳片幅方向一端部の鋳片表面平均温度Xと、鋳片幅方向他端部の鋳片表面平均温度Yを示している。1つの鋳片の長手方向一端部から他端部までの鋳片表面温度を連続して測定し、これらの平均温度をX及びYとした。表1〜表4には、鋳片幅方向両端部の温度差として、X−Yの絶対値(|X−Y|)を示している。また、表1〜表4に、磁粉探傷試験の結果として表面割れの有無を示している。図13には、「鋳片幅方向両端部の温度差|X−Y|」と「表面割れの有無」との関係を示している。
表1〜表4及び図13に示すように、表面割れが発生する「鋳片幅方向両端部の温度差」(|X−Y|)のなかで最小の|X−Y|は101℃であった。表面割れが発生しない「鋳片幅方向両端部の温度差」(|X−Y|)のなかで最大の|X−Y|は99℃であった。これまでの経験を考慮すると、本結果から、「鋳片幅方向両端部の温度差」が100℃を超えるときに表面割れが発生し、「鋳片幅方向両端部の温度差」が100℃以下のときに表面割れが発生しないと考えられる。そこで、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」を100℃とし、実操業において、「鋳片幅方向両端部の温度差」が100℃を超えるときは鋳片搬送ロールの傾きを修整し、「鋳片幅方向両端部の温度差」が100℃以下のときは鋳片搬送ロールの傾きを修整しないこととする。
(2)鋳片搬送ロールの傾きの閾値決定(図7のS2)
ロール群Fの7本の鋳片搬送ロールの傾きを調べた。表1−表4に、「鋳片搬送ロールの傾き」を示している。表1−表4では、「ロール群Fの7本の鋳片搬送ロール」を、単に「ロール」と称している。
ロール群Fの7本の鋳片搬送ロールの傾きを調べた。表1−表4に、「鋳片搬送ロールの傾き」を示している。表1−表4では、「ロール群Fの7本の鋳片搬送ロール」を、単に「ロール」と称している。
表1−表4の「ロールの傾き」と「磁粉探傷試験の結果」(表面割れの有無)から、表面割れが発生する「ロールの傾き」のなかで「最小のロールの傾き」は0.61mmであった。また、表面割れが発生しない「ロールの傾き」のなかで「最大のロールの傾き」は0.59mmであった。これまでの経験を考慮すると、本結果から、「ロールの傾き」が0.60mmを超えるときに表面割れが発生し、「ロールの傾き」が0.60mm以下のときに表面割れが発生しないと考えられる。そこで、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きの閾値」を0.60mmとし、実操業において、鋳片搬送ロールの傾きを修整する必要があるときは、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを0.60mm以下に修整する。
図14には、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」と「鋳片幅方向両端部の温度差|X−Y|」と「表面割れの有無」との関係を示している。図14の縦軸は「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」であり、図14の横軸は、「鋳片幅方向両端部の温度差|X−Y|」である。図14において、「○」は表面割れ有りであり、「×」は表面割れ無しである。図14から、「鋳片幅方向両端部の温度差の絶対値|X−Y|」が100℃を超え、且つ、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」が0.60mmを超える領域は表面割れが発生する領域であり、「鋳片幅方向両端部の温度差の絶対値|X−Y|」が100℃以下であり、且つ、「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾き」が0.60mm以下である領域は、表面割れが発生しない領域であるといえる。
〔実操業〕
実操業において、鋳片上面の鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度t1,t2を測定し(図7のS3)、これらの温度差tdを算出した(図7のS4)。ここでは、温度差tdとして、t1とt2の差の絶対値を用いた。
実操業において、鋳片上面の鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度t1,t2を測定し(図7のS3)、これらの温度差tdを算出した(図7のS4)。ここでは、温度差tdとして、t1とt2の差の絶対値を用いた。
温度差tdが100℃以下であるとき(図7のS5、NO)、ロール群Fの鋳片搬送ロールが傾いていない、又は、傾いていても表面割れが発生しない程度の傾きであると予測される。この予測から、鋳片搬送ロールの傾きを修整する必要がないと判断し、操業を停止することなく、次の地点の表面温度を測定した(図7のS3)。
この予測を基に操業を続けている間は、表面割れが発生しなかった。
この予測を基に操業を続けている間は、表面割れが発生しなかった。
温度差tdが100℃を超えたとき(図7のS5、YES)、ロール群Fの鋳片搬送ロールは、表面割れが発生する程度に傾いていると予測される。この予測から、鋳片搬送ロールの傾きを修整する必要があると判断した。操業を停止し、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きが0.60mm以下になるように、ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きを修整した(図7のS6)。このとき、ロール群Fを構成する全ての鋳片搬送ロールの傾きを満遍なく修整した。また、ロール群Fを構成する全ての鋳片搬送ロールの傾きがほぼ同じになるようにした。その後、操業を再開し、次の地点の鋳片幅方向両端部の温度を測定した(図7のS3)。
鋳片搬送ロールの傾きを修整した後、操業を続けている間は、表面割れが発生しなかった。
鋳片搬送ロールの傾きを修整した後、操業を続けている間は、表面割れが発生しなかった。
上記より、本実施形態の方法を実施すると、表面割れの発生を抑制できることがわかった。また、本実施形態の方法は、表1〜表4に示す全ての鋼種に実施できることがわかった。水量密度を調整する場合、鋼種毎に水量密度を決定する必要があるが、本実施形態の方法は、1つの閾値によって、全ての鋼種に実施できることがわかった。
以上、本発明の実施形態及び実施例について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態及び実施例に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述した実施例の「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」及び「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きの閾値」は、実測値及び磁粉探傷試験の結果を基に決定されたものであるが、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」及び「ロール群Fの鋳片搬送ロールの傾きの閾値」は、文献に記載された値等でもよい。また、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、別の温度測定位置の温度差の閾値から求めた値でもよい。下記に、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」を別の温度測定位置の温度差の閾値から求める方法の例を説明する。
「3次冷却帯出口」と「3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置」の2箇所で、鋳片上面において鋳片幅方向両端部の温度を測定した。「3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置」での温度測定は、3次冷却帯出口を通過してから60sec経過後に行った。2箇所での温度測定は、鋳片上面における温度測定位置を同じ位置とした。各箇所における鋳片幅方向両端部の温度の差を算出した。図15には、「3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置における鋳片幅方向両端部の温度差ΔT」と「3次冷却帯出口における鋳片幅方向両端部の温度差ΔT0」との関係を示している。図15の縦軸は「3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置における鋳片幅方向両端部の温度差ΔT」であり、図15の横軸は「3次冷却帯出口における鋳片幅方向両端部の温度差ΔT0」である。
ΔTとΔT0の間には、図15の直線で示される比例関係があることがわかった。この関係から、ΔTがわかると、ΔT0がわかる。上述した実施例から、「ΔTの閾値」は100℃であるため、ΔT=100℃のときのΔT0が「ΔT0の閾値」であると考えられる。図15に示す関係から、ΔTが100℃のとき、ΔT0は273℃である。したがって、「ΔT0の閾値」、すなわち、「3次冷却帯出口を温度測定位置としたときの鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は273℃である。
このように、上記方法によると、「3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置」における温度差の閾値から、「3次冷却帯出口」における温度差の閾値を求めることができる。また、「3次冷却帯出口における鋳片幅方向両端部の温度(実測値)の差」と「磁粉探傷試験の結果(表面割れの有無)」との関係を調べることなく、「3次冷却帯出口における鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」を求めることができる。つまり、鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度を測定する位置を3次冷却帯とした場合の実験を行うことなく、閾値を求めることができる。
このように、上記方法によると、「3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置」における温度差の閾値から、「3次冷却帯出口」における温度差の閾値を求めることができる。また、「3次冷却帯出口における鋳片幅方向両端部の温度(実測値)の差」と「磁粉探傷試験の結果(表面割れの有無)」との関係を調べることなく、「3次冷却帯出口における鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」を求めることができる。つまり、鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度を測定する位置を3次冷却帯とした場合の実験を行うことなく、閾値を求めることができる。
上述した実施例において、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、鋳片幅方向一端部の平均温度Xと鋳片幅方向他端部の平均温度Yとを用いて決定されたものである。しかし、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」を決定するときは、平均温度でなく、測定温度を用いてもよい。
上述した実施例において、鋳片表面温度の測定位置は3次冷却帯の下流であるが、鋳片表面温度の測定位置は3次冷却帯でもよい。
上述した実施形態及び実施例のロール群Fは7本の鋳片搬送ロールから構成されているが、ロール群Fは6本以下の鋳片搬送ロールから構成されていてもよく、8本以上の鋳片搬送ロールから構成されていてもよい。
上述した実施例において、鋳片表面温度を測定する位置及びタイミングは、鋳片上面における温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから60sec経過後、3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置であるが、鋳片表面温度を測定する位置及びタイミングはこれに限られない。
上述した実施例の「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、鋳片上面における温度測定位置が3次冷却帯出口を通過してから60sec経過後、3次冷却帯出口から鋳片搬送方向に1.2m離れた位置で測定される温度差の閾値である。しかし、「鋳片幅方向両端部の温度差の閾値」は、3次冷却帯又は3次冷却帯の下流において別の位置で測定される温度差の閾値でもよい。
1 連続鋳造機
2 切断機
3 冷却装置
4、50、70 鋳片搬送ロール
5 温度計
11 タンディッシュ
12 ノズル
13 鋳型
10 溶鋼
31、32、33、34、35 冷却帯鋳片搬送ロール(鋳片搬送ロール)
40 第1鋳片搬送ロール(鋳片搬送ロール)
60 第2鋳片搬送ロール(鋳片搬送ロール)
F ロール群
S 切断された鋳片
P1,P2 鋳片上面の幅方向両端部
2 切断機
3 冷却装置
4、50、70 鋳片搬送ロール
5 温度計
11 タンディッシュ
12 ノズル
13 鋳型
10 溶鋼
31、32、33、34、35 冷却帯鋳片搬送ロール(鋳片搬送ロール)
40 第1鋳片搬送ロール(鋳片搬送ロール)
60 第2鋳片搬送ロール(鋳片搬送ロール)
F ロール群
S 切断された鋳片
P1,P2 鋳片上面の幅方向両端部
Claims (1)
- 連続鋳造機によって鋳造した鋳片を、冷却装置が配置された冷却帯で冷却した後に、前記鋳片に表面割れが発生する、鋳片幅方向両端部の表面温度の差に基づいて、温度差の閾値を決定する温度差の閾値決定工程と、
連続鋳造機によって鋳造した鋳片を、前記冷却帯で冷却した後に、前記鋳片に表面割れが発生する鋳片搬送ロールの傾きに基づいて、前記冷却帯に配置された鋳片搬送ロール、鋳片の搬送方向について前記冷却帯の上流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、前記冷却帯に最も近い第1鋳片搬送ロール、及び、鋳片の搬送方向について前記冷却帯の下流に配置された複数の鋳片搬送ロールのなかで、前記冷却帯に最も近い第2鋳片搬送ロールからなるロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値を決定するロール傾きの閾値決定工程と、
前記冷却帯で、連続鋳造機によって鋳造した鋳片を前記冷却装置によって冷却しながら、前記鋳片を鋳片搬送ロールによって搬送し、前記冷却帯又は鋳片の搬送方向について前記冷却帯の下流で、鋳片上面の鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度をそれぞれ測定する温度測定工程と、
前記温度測定工程で測定した前記鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差を求める温度差算出工程と、
前記温度差算出工程で求めた前記鋳片幅方向両端部の鋳片表面温度の差が、前記温度差の閾値決定工程で決定した前記温度差の閾値以上である場合又は前記温度差の閾値決定工程で決定した前記温度差の閾値を超える場合、前記ロール群の鋳片搬送ロールの傾きを、前記ロール傾きの閾値決定工程で決定した前記ロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値以下にする又は前記ロール傾きの閾値決定工程で決定した前記ロール群の鋳片搬送ロールの傾きの閾値より小さくするロール傾き設定工程とを備えることを特徴とする鋳片搬送ロールの傾き設定方法。
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