JP2019081360A - フィルター装置及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
溶融樹脂が流入する入口及び流出する出口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられたセンターポールと、
前記センターポールを外囲するように、前記センターポールの長手方向に間隔を空けて並設された複数枚のリーフディスク型のフィルターエレメントと、
前記センターポールの内面及び外面の少なくとも一方に沿って溶融樹脂が流れる溶融樹脂流路とを備え、
前記複数枚のリーフディスク型のフィルターエレメントは、ろ過精度の異なる第1フィルターエレメント(A)及び第2フィルターエレメント(B)を有し、ここで第2フィルターエレメント(B)のろ過精度は第1フィルターエレメント(A)のろ過精度よりも値が大きい、フィルター装置。
[2]
前記第2フィルターエレメント(B)のろ過精度は、前記第1フィルターエレメント(A)のろ過精度の1.5倍以上である、[1]のフィルター装置。
[3]
前記第1フィルターエレメント(A)のろ過精度は1〜30μmである、[1]又は[2]のフィルター装置。
[4]
前記第1フィルターエレメント(A)の枚数は、前記リーフディスク型のフィルターエレメントの総枚数に対して、70〜99%である、[1]〜[3]のいずれかのフィルター装置。
[5]
前記第2フィルターエレメント(B)の枚数は、前記リーフディスク型のフィルターエレメントの総枚数に対して、1〜30%である、[1]〜[4]のいずれかのフィルター装置。
[6]
前記第2フィルターエレメント(B)は、前記センターポールの長手方向において前記溶融樹脂の滞留傾向箇所に設けられる、[1]〜[5]のいずれかのフィルター装置。
[7]
前記複数枚のリーフディスク型のフィルターエレメントにおいて、前記溶融樹脂流路の最上流及び最下流に位置する前記フィルターエレメントの少なくとも一方が前記第2フィルターエレメント(B)である、[1]〜[6]のいずれかのフィルター装置。
[8]
少なくとも、前記溶融樹脂流路における最上流側の前記フィルターエレメントが、第2フィルターエレメント(B)である、[7]に記載のフィルター装置。
[9]
前記センターポールは、内面に沿って溶融樹脂が流れる溶融樹脂流路を備える内流型センターポールであって、前記内流型センターポールは、貫通孔、及び、前記貫通孔の少なくとも1つと前記溶融樹脂流路とを連結する連結溶融樹脂流路を備え、前記連結溶融樹脂流路に繋がる前記貫通孔に設けられた前記フィルターエレメントが前記第2フィルターエレメント(B)である、[1]〜[8]のいずれかのフィルター装置。
溶融押出法による熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、
押出機とダイとの間に[1]〜[9]のいずれかのフィルター装置を配置し、前記押出機から吐出される溶融状態の熱可塑性樹脂を前記フィルター装置に通過させる工程を有する、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[11]
前記フィルター装置内における、前記熱可塑性樹脂の滞留時間が50秒以上1,800秒以下である、[10]の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[12]
前記フィルター装置内における、前記熱可塑性樹脂の温度が230〜300℃である、
[10]又は[11]の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[13]
前記フィルター装置の入口及び出口における差圧が0.1〜10MPaである、[10]〜[12]のいずれかの熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[14]
前記熱可塑性樹脂の温度270℃、せん断速度122秒−1における溶融粘度が100〜1,500Pa・sである、[10]〜[13]のいずれかの熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[15]
前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂を含有する、[10]〜[14]のいずれかの熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[16]
前記(メタ)アクリル系樹脂が、
メタクリル酸メチルの単独重合体(A);
メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルの共重合体(C);
メタクリル酸メチルの単独重合体(A)及びアクリル酸エステルの単独重合体(B)の混合物;
メタクリル酸メチルの単独重合体(A)及びメタクリル酸メチルとアクリル酸エステルの共重合体(C)の混合物;
からなる群から選択される、[15]の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[17]
前記熱可塑性樹脂がゴム粒子を含有する、[10]〜[16]のいずれかの熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[18]
前記ゴム粒子がアクリル系弾性体粒子である、[17]の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[19]
前記熱可塑性樹脂成形体がフィルムである、[10]〜[18]のいずれかの熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[20]
前記熱可塑性樹脂成形体が光学用成形体である、[10]〜[19]のいずれかの熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[21]
前記熱可塑性樹脂成形体が加飾用成形体である、[10]〜[19]のいずれかの熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
[22]
前記熱可塑性樹脂成形体が建材用成形体である、[10]〜[19]のいずれかの熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
本発明のフィルター装置は、溶融樹脂が流入する入口及び流出する出口を有するハウジングと、ハウジング内に設けられたセンターポールと、センターポールを外囲するように、センターポールの長手方向に間隔を空けて並設された複数枚のリーフディスク型のフィルターエレメントと、センターポールの内面及び外面の少なくとも一方に沿って溶融樹脂が流れる溶融樹脂流路とを備え、複数枚のリーフディスク型のフィルターエレメントは、ろ過精度の異なる第1フィルターエレメント(A)及び第2フィルターエレメント(B)を有し、ここで第2フィルターエレメント(B)のろ過精度は第1フィルターエレメント(A)のろ過精度よりも値が大きい。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、溶融押出法による熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、押出機とダイとの間に本発明のフィルター装置を配置し、押出機から吐出される溶融状態の熱可塑性樹脂をフィルター装置に通過させる工程を有する。
なお、本明細書では、リーフディスク型のフィルターエレメントを単に「フィルターエレメント」と記載し、リーフディスク型のフィルターエレメントを有するフィルター装置を「リーフディスクフィルター」と記載することがある。
本発明の一実施形態に係るフィルター装置(リーフディスクフィルター)を図1に示す。図1に示すように、溶融樹脂が流入する入口1及び流出する出口2を有するハウジング3と、ハウジング3内に設けられたセンターポール4と、センターポール4を外囲するように、センターポール4の長手方向に間隔を空けて並設された複数枚のリーフディスク型のフィルターエレメント5とを備える。
溶融樹脂がフィルターエレメント5からセンターポール4の内部の溶融樹脂流路を通過する際、図2に示す滞留傾向箇所7、8は、溶融樹脂が滞留しやすい傾向がある箇所である。滞留傾向箇所7は、センターポール4における溶融樹脂の流れの最上流部である。また、滞留傾向箇所8は、ハウジング3内の空間6における溶融樹脂の流れの最下流部である。
図3、4は、内流型センターポールの断面図である。
図3の内流型センターポール9において、溶融樹脂はフィルターエレメント5を通り、内流型センターポール9の貫通孔10を通って内部の溶融樹脂流路11に流入する。溶融樹脂流路11の最上流部に位置する箇所は、溶融樹脂が滞留しやすく、滞留傾向箇所7となり得る。溶融樹脂流路11の最上流部に円錐及び六角錘等の構造を有するトーピード12を配置し、溶融樹脂の流れを整流化し、滞留を抑制することが試みられているが、その効果は十分でない。
また、図4の内流型センターポール9においては、貫通孔10を通った溶融樹脂が、貫通孔10と溶融樹脂流路11とを連結する連結溶融樹脂流路13を通る構造を有する。しかし、単独の貫通孔10より流路が長くなる連結溶融樹脂流路13においては、圧力損失のため、溶融樹脂が通過し難く、連結溶融樹脂流路13に繋がる貫通孔10の近傍は滞留傾向箇所7となり得る。
滞留傾向箇所8はハウジング3内の空間6における溶融樹脂の流れの最下流部であるため、溶融樹脂の熱履歴が最も多く、熱劣化して流動性が低下した溶融樹脂が溜まり易い。
なお、図5は内流型センターポールの断面図の一例である。
図6は外流型センターポールの断面図である。
図6の外流型センターポール14において、フィルターエレメント5を通った溶融樹脂は、センターポール14の外面とフィルターエレメントの内周部との空間である溶融樹脂流路15を流れ、合流部16で合流する。内流型センターポール9と同様に、センターポール14の最上流部は圧力損失のため、溶融樹脂が流れにくく、滞留傾向箇所7となり得る。
滞留傾向箇所8は、ハウジング3内の空間6における溶融樹脂の流れの最下流部であるため、溶融樹脂の熱履歴が最も多く、熱劣化して流動性が低下した溶融樹脂が溜まり易い。
なお、図7は外流型センターポールの断面図の一例である。
フィルターエレメント5のろ材は、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を数枚積層したタイプ、又は、それらを組み合わせたハイブリッドタイプ等いずれでもよいが、金属繊維不織布を焼結したタイプが好ましい。
フィルターエレメント5としては、第1フィルターエレメント(A)及び第2フィルターエレメント(B)の組み合わせに限られず、ろ過精度が異なる3種以上のフィルターの組み合わせであってもよい。ろ過精度が異なる3種以上のフィルターの組み合わせの場合、ろ過精度の値が最小のフィルターエレメント5を第1フィルターエレメント(A)とし、ろ過精度の値が最大のフィルターエレメント5を第2フィルターエレメント(B)とすればよい。
なお、本明細書において、ろ過精度とは、粒子サイズとして95%以上を捕集可能なサイズのうちの最小値を意味する。
第1フィルターエレメント(A)の枚数は、フィルターエレメント5の総枚数に対して、好ましくは70〜99%であり、より好ましくは80〜98%であり、さらに好ましくは90〜96%である。第1フィルターエレメント(A)の枚数の比率を70%以上とすることで、溶融樹脂が含む異物をさらに効果的に除去でき、熱可塑性樹脂成形体が含む異物をさらに低減できる。また、第1フィルターエレメント(A)の枚数の比率を99%以下とすることで、溶融樹脂の滞留部をさらに低減でき、熱可塑性樹脂成形体が含む異物をさらに低減できる。
第2フィルターエレメント(B)の枚数は、フィルターエレメント5の総枚数に対して、好ましくは1〜30%であり、より好ましくは2〜20%であり、さらに好ましくは4〜10%である。第2フィルターエレメント(B)の枚数の比率を上記範囲とすることで、溶融樹脂の滞留部を低減でき、熱可塑性樹脂成形体が含む異物をさらに低減できる。
溶融樹脂流路11への流路として、貫通孔10及び連結溶融樹脂流路13を連結した流路は、貫通孔10のみからなる流路より長くなることにより、圧力損失により溶融樹脂が流れにくくなり、滞留部を形成しやすくなる。そこで、上記のような構成とすることによって、連結溶融樹脂流路13に繋がる貫通孔10の近傍に生じる滞留部を効果的に低減でき、熱可塑性樹脂成形体中の異物を効果的に低減できる。
本発明のフィルター装置は、押出機及びダイを用いた溶融押出法による熱可塑性樹脂成形体の製造に好適に用いることができる。このとき、本発明のフィルター装置は、押出機とダイとの間に配置され、押出機から吐出される溶融状態の熱可塑性樹脂を当該フィルター装置に通過させることによって異物等をろ過する工程に用いられることが好ましい。
ダイは、特に限定されず、ペレット、フィルム、シート、板等の熱可塑性樹脂成形体の形状に合わせて選定することができる。熱可塑性樹脂を溶融させるための押出機は、特に限定されず、単軸押出機でも二軸押出機でもよく、また、一台であっても複数台であってもよい。押出機は、熱可塑性樹脂が含む水分や熱可塑性樹脂が分解したモノマーを除去し、異物を低減する観点から、ベントを有することが好ましい。ベント付押出機では減圧にして、又は窒素を流通させて運転することが好ましい。さらに必要に応じてフィルター装置の前及び/又は後にギアポンプ等を配し、溶融樹脂の計量を行ってもよい。押出機がベントを有する場合、ベントアップを抑制し、生産性を高める観点から、押出機とフィルター装置の間にギアポンプを配することが好ましい。
鏡面ロール又は鏡面ベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。鏡面ロールは、表面平滑性及び厚さ均一性の観点から、金属剛体ロール及び金属弾性ロールの組み合せであることが好ましい。鏡面ロール又は鏡面ベルト間の線圧は、表面平滑性の観点から、好ましくは10N/mm以上であり、より好ましくは30N/mm以上である。鏡面ロール又は鏡面ベルトの表面温度は、表面平滑性、ヘーズ、外観等の観点から、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。また、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。
フィルター装置内の熱可塑性樹脂の温度を230℃以上とすることで、溶融粘度を低くすることができ、樹脂圧の上昇を抑え、熱可塑性樹脂成形体の連続生産性が向上する。
フィルター装置内の熱可塑性樹脂の温度を300℃以下とすることで、フィルター内部の樹脂滞留をさらに抑制し、熱による樹脂の劣化をさらに抑制することができる。
熱可塑性樹脂の滞留時間を50秒以上とすることで、樹脂温度のむらを小さくし、樹脂の劣化をさらに抑制することができる。
熱可塑性樹脂の滞留時間を1,800秒以下とすることで、樹脂の劣化をさらに抑制することができる。
フィルター装置の入口及び出口における差圧を0.1MPa以上とすることで、溶融樹脂の偏流を抑制し、樹脂の劣化をさらに抑制することができる。
フィルター装置の入口及び出口における差圧を10MPa以下とすることで、熱可塑性樹脂成形体の連続生産性が向上し、さらには、フィルターエレメントが捕集した異物がフィルターエレメントをすり抜けることを低減し、熱可塑性樹脂成形体の異物をさらに低減できる。
本発明の熱可塑性樹脂成形体の製造方法では、溶融状態の熱可塑性樹脂(溶融樹脂)をフィルター装置に通過させて、異物等をろ過する工程を有する。ここで熱可塑性樹脂は、単独の熱可塑性樹脂成分のみからなるものであってもよいし複数種の成分を含む熱可塑性樹脂組成物であってもよい。熱可塑性樹脂は、温度270℃、せん断速度122秒−1における溶融粘度が100〜1,500Pa・sであることが好ましく、300〜1,000Pa・sであることがより好ましい。
熱可塑性樹脂の温度270℃、せん断速度122秒−1における溶融粘度が100Pa・s以上であることで、溶融樹脂がフィルター装置を通過する際、背圧が十分に大きく、効果的に異物をろ過することができる。また、熱可塑性樹脂の温度270℃、せん断速度122秒−1における溶融粘度が1,500Pa・s以下であることで、フィルター装置へ過剰な圧力がかかることによるフィルター装置の破損を防ぐことができ、熱可塑性樹脂成形体の連続生産性が向上する。
なお、溶融粘度は、キャピログラフィ等により測定することができる。
なお、本明細書において(メタ)アクリル系樹脂とは、メタクリル系樹脂又はアクリル系樹脂を指す。
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸メチルの単独重合体(A)、メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルの共重合体(C)、メタクリル酸メチルの単独重合体(A)及びアクリル酸エステルの単独重合体(B)の混合物、メタクリル酸メチルの単独重合体(A)及びメタクリル酸メチルとアクリル酸エステルの共重合体(C)の混合物等が挙げられる。
メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルの共重合体(C)が含有するメタクリル酸メチル単位の割合は、60〜99質量%であることが好ましく、70〜98質量%であることがより好ましく、80〜97質量%であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、1.7〜2.6であることが好ましく、1.7〜2.3であることがより好ましく、1.7〜2.0であることがさらに好ましい。分子量分布を1.7以上とすることで、熱可塑性樹脂の成形加工性が良好となる。また、分子量分布を2.6以下とすることで、得られる熱可塑性樹脂成形体の耐衝撃性が良好となる。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で分析し標準ポリスチレンの分子量に換算して算出される値である。
ゴム粒子としては、アクリル酸エステルに由来する単位を有する重合体からなる粒子(以下、「アクリル系弾性体粒子」と称する。)、共役ジエンに由来する単位を有する重合体からなる粒子、アクリル酸エステルに由来する単位及び共役ジエンに由来する単位を有する重合体からなる粒子等が挙げられる。なお、これらの重合体は必要に応じて架橋性単量体に由来する単位を有していてもよい。中でも熱可塑性樹脂として(メタ)アクリル系樹脂を含有するものを用いる場合などにおいて、ゴム粒子はアクリル系弾性体粒子であることが好ましい。
メタクリル酸非環状アルキルエステルは、流動性及び耐熱性の観点から、メタクリル酸メチルであることが好ましく、コアシェル粒子を構成するメタクリル系重合体は、メタクリル酸メチル単位を80〜100質量%含有することが最も好ましい。
添加剤は、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよいが、熱可塑性樹脂中での分散性の観点から、有機化合物が好ましい。
添加剤の含有量は特に限定されないが、熱可塑性樹脂において好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜8質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。添加剤の含有量が0.01質量%以上であることで添加剤の効果を十分に発現することができ、10質量%以下であることで熱可塑性樹脂成形体が本来有する物性を十分に維持できる。
熱可塑性樹脂成形体が光学成形体である場合、光学成形体の全光線透過率が好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。
測定対象樹脂4mgをテトラヒドロフラン(THF)5mlに溶解させ、孔径0.1μmのフィルターでろ過したものを試料溶液とした。GPC装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー(株)製「HLC−8320」を使用した。カラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel Super Multipore HZM−M」2本と「Super HZ4000」とを直列に繋いだものを用いた。溶離剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いた。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試料溶液20μLを装置内に注入して、クロマトグラムを測定した。クロマトグラムは、試料溶液と参照溶液との屈折率差に由来する電気信号値(強度Y)を保持時間Xに対してプロットしたチャートである。
分子量が400〜5,000,000の範囲の標準ポリスチレン10点を用いてGPC測定し、保持時間と分子量との関係を示す検量線を作成した。この検量線に基づいて、測定対象樹脂の重量平均分子量(Mw)を決定した。なお、クロマトグラムのベースラインは、GPCチャートの高分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てゼロからプラスに変化する点と、低分子量側のピークの傾きが保持時間の早い方から見てマイナスからゼロに変化する点を結んだ線とした。クロマトグラムが複数のピークを示す場合は、最も高分子量側のピークの傾きがゼロからプラスに変化する点と、最も低分子量側のピークの傾きがマイナスからゼロに変化する点を結んだ線をベースラインとした。
測定対象樹脂(ペレット)を80℃で12時間乾燥した後、東洋精機(株)社製「キャピログラフ1D」を用いて、温度270℃、せん断速度122秒−1の条件で、溶融粘度を測定した。
艶消しの黒色布(川島織物セルコン社製)の上に、各実施例又は比較例で得られたフィルムを1m×1mのサイズに切り出して置き、フィルム表面の垂直面から蛍光灯の反射光を利用して目視で見た際に表面凹凸の違いにより検出される異物の個数を数え、1m2当りの異物量として算出した。なお、ここでの異物とは、幅×長さの値が0.03mm2を超える異物を指す。
国際公開第2016/121868号の合成例4を参照して得たメタクリル系樹脂(重量平均分子量(Mw)110,000)80質量部と、同合成例8を参照して得た3層構造のアクリル系弾性体粒子20質量部をヘンシェルミキサーで混合し、260℃に設定されたスクリュー径75mmのベント付き二軸押出機を用いて(メタ)アクリル系樹脂のペレットを得た。得られた(メタ)アクリル系樹脂の上記溶融粘度は830Pa・sであった。
65mmφベント付き単軸押出機、ギアポンプ、フィルター装置、スタティックミキサー、Tダイをこの順番に備えたフィルム製造装置にて、押出機、ギアポンプ、フィルター装置のハウジングの設定温度が260℃、吐出量が70kg/hの条件で、上述の製造例で得た熱可塑性樹脂((メタ)アクリル系樹脂)を押出し、90℃に設定した鏡面金属剛体ロール及び鏡面金属弾性ロールで挟持して、厚さ100μmのフィルムを作製した。
フィルター装置は、溶融樹脂が流入する入口及び流出する出口を有するハウジングと、ハウジング内に設けられたトーピードを有さない内流型センターポール(図4と同類で上流側に貫通孔と溶融樹脂流路とを繋ぐ連結溶融樹脂流路を有する)と、センターポールを外囲するように、センターポールの長手方向に間隔を空けて並設されたリーフディスク型のフィルターエレメントとを備える。リーフディスク型のフィルターエレメントは、ろ過精度の異なる第1フィルターエレメント(A)及び第2フィルターエレメント(B)を以下のように組み合わせたものである。
すなわち、リーフディスク型のフィルターエレメントは、ろ過精度が5μmである第1フィルターエレメント(A)を48枚と、ろ過精度が10μmである第2フィルターエレメント(B)を2枚とを組み合わせた合計50枚とした。第2フィルターエレメント(B)の2枚は、最上流側に配置した。フィルター装置内における熱可塑性樹脂の滞留時間は600秒であり、熱可塑性樹脂の温度は260℃であり、フィルター装置の入口及び出口における差圧は5MPaであった。
製膜開始から10時間経過後に得られたフィルム中の異物量の評価結果を表1に示す。
実施例1において、リーフディスク型のフィルターエレメントの構成を、ろ過精度が5μmである第1フィルターエレメント(A)を47枚と、ろ過精度が10μmである第2フィルターエレメント(B)を3枚とを組み合わせた合計50枚とした。第2フィルターエレメント(B)のうち2枚を最上流側に配置し、残りの1枚を最下流側に配置した。それ以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。フィルター装置内における熱可塑性樹脂の滞留時間は600秒であり、熱可塑性樹脂の温度は260℃であり、フィルター装置の入口及び出口における差圧は5MPaであった。
製膜開始から10時間経過後に得られたフィルム中の異物量の評価結果を表1に示す。
実施例1において、リーフディスク型のフィルターエレメントの構成を、ろ過精度が5μmである第1フィルターエレメント(A)を25枚と、ろ過精度が10μmである第2フィルターエレメント(B)を25枚とを組み合わせた合計50枚とした。第2フィルターエレメント(B)のうち13枚を最上流側に配置し、残りの12枚を最下流側に配置した。それ以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。フィルター装置内における熱可塑性樹脂の滞留時間は600秒であり、熱可塑性樹脂の温度は260℃であり、フィルター装置の入口及び出口における差圧は4MPaであった。
製膜開始から10時間経過後に得られたフィルム中の異物量の評価結果を表1に示す。
実施例1において、リーフディスク型のフィルターエレメントの構成を、ろ過精度が5μmである第1フィルターエレメント(A)を25枚と、ろ過精度が10μmである第2フィルターエレメント(B)を25枚とを組み合わせた合計50枚とした。第2フィルターエレメント(B)の25枚は、最上流側に配置した。それ以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。フィルター装置内における熱可塑性樹脂の滞留時間は600秒であり、熱可塑性樹脂の温度は260℃であり、フィルター装置の入口及び出口における差圧は4MPaであった。
製膜開始から10時間経過後に得られたフィルム中の異物量の評価結果を表1に示す。
実施例1において、リーフディスク型のフィルターエレメントの構成を、ろ過精度が5μmである第1フィルターエレメント(A)を25枚と、ろ過精度が10μmである第2フィルターエレメント(B)を25枚とを組み合わせた合計50枚とした。第2フィルターエレメント(B)の25枚は、最下流側に配置した。それ以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。フィルター装置内における熱可塑性樹脂の滞留時間は600秒であり、熱可塑性樹脂の温度は260℃であり、フィルター装置の入口及び出口における差圧は4MPaであった。
製膜開始から10時間経過後に得られたフィルム中の異物量の評価結果を表1に示す。
実施例1において、リーフディスク型のフィルターエレメントの構成を、ろ過精度が5μmである第1フィルターエレメント(A)を42枚と、ろ過精度が10μmである第2フィルターエレメント(B)を8枚とを組み合わせた合計50枚とした。第2フィルターエレメント(B)のうち4枚を最上流側に配置し、残りの4枚を最下流側に配置した。それ以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。フィルター装置内における熱可塑性樹脂の滞留時間は600秒であり、熱可塑性樹脂の温度は260℃であり、フィルター装置の入口及び出口における差圧は4.8MPaであった。
製膜開始から10時間経過後に得られたフィルム中の異物量の評価結果を表1に示す。
実施例1において、リーフディスク型のフィルターエレメントの構成を、ろ過精度が5μmである第1フィルターエレメント(A)を38枚と、ろ過精度が10μmである第2フィルターエレメント(B)を12枚とを組み合わせた合計50枚とした。第2フィルターエレメント(B)のうち6枚を最上流側に配置し、残りの6枚を最下流側に配置した。それ以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。フィルター装置内における熱可塑性樹脂の滞留時間は600秒であり、熱可塑性樹脂の温度は260℃であり、フィルター装置の入口及び出口における差圧は4.5MPaであった。
製膜開始から10時間経過後に得られたフィルム中の異物量の評価結果を表1に示す。
実施例1において、ろ過精度が10μmである第2フィルターエレメント(B)を使用せず、ろ過精度が5μmである第1フィルターエレメント(A)を50枚使用したこと以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。フィルター装置内における熱可塑性樹脂の滞留時間は600秒であり、熱可塑性樹脂の温度は260℃であり、フィルター装置の入口及び出口における差圧は7MPaであった。
製膜開始から10時間経過後に得られたフィルム中の異物量の評価結果を表1に示す。
実施例1において、ろ過精度が5μmである第1フィルターエレメント(A)を使用せず、ろ過精度が10μmである第2フィルターエレメント(B)を50枚使用したこと以外は実施例1と同様の方法でフィルムを作製した。フィルター装置内における熱可塑性樹脂の滞留時間は600秒であり、熱可塑性樹脂の温度は260℃であり、フィルター装置の入口及び出口における差圧は3MPaであった。
製膜開始から10時間経過後に得られたフィルム中の異物量の評価結果を表1に示す。
また、溶融樹脂流路の最上流にろ過精度の値が大きいフィルターエレメントを配置した実施例1〜4、6、7は、最上流にろ過精度の値が小さいフィルターエレメントを配置した実施例5に比べて、得られるフィルム中の異物量が少ない。
さらに、溶融樹脂流路の最上流及び最下流の両方にろ過精度の値が大きいフィルターを配置した実施例1〜3、6、7は、最上流側のみにろ過精度の値が大きいフィルターを配置した実施例4に比べて、得られるフィルム中の異物量が少ない。
一方、比較例1及び2は、単一の種類のフィルターエレメントのみを使用したため、フィルム中の異物量が多い。
2 出口
3 ハウジング
4 センターポール
5 リーフディスク型のフィルターエレメント
6 ハウジング内の空間
7,8 滞留傾向箇所
9 内流型センターポール
10 貫通孔
11,15 溶融樹脂流路
12 トーピード
13 連結溶融樹脂流路
14 外流型センターポール
16 合流部
Claims (22)
- 溶融樹脂が流入する入口及び流出する出口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられたセンターポールと、
前記センターポールを外囲するように、前記センターポールの長手方向に間隔を空けて並設された複数枚のリーフディスク型のフィルターエレメントと、
前記センターポールの内面及び外面の少なくとも一方に沿って溶融樹脂が流れる溶融樹脂流路とを備え、
前記複数枚のリーフディスク型のフィルターエレメントは、ろ過精度の異なる第1フィルターエレメント(A)及び第2フィルターエレメント(B)を有し、ここで第2フィルターエレメント(B)のろ過精度は第1フィルターエレメント(A)のろ過精度よりも値が大きい、フィルター装置。 - 前記第2フィルターエレメント(B)のろ過精度は、前記第1フィルターエレメント(A)のろ過精度の1.5倍以上である、請求項1に記載のフィルター装置。
- 前記第1フィルターエレメント(A)のろ過精度は1〜30μmである、請求項1又は2に記載のフィルター装置。
- 前記第1フィルターエレメント(A)の枚数は、前記リーフディスク型のフィルターエレメントの総枚数に対して、70〜99%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のフィルター装置。
- 前記第2フィルターエレメント(B)の枚数は、前記リーフディスク型のフィルターエレメントの総枚数に対して、1〜30%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のフィルター装置。
- 前記第2フィルターエレメント(B)は、前記センターポールの長手方向において前記溶融樹脂の滞留傾向箇所に設けられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のフィルター装置。
- 前記複数枚のリーフディスク型のフィルターエレメントにおいて、前記溶融樹脂流路の最上流及び最下流に位置する前記フィルターエレメントの少なくとも一方が前記第2フィルターエレメント(B)である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフィルター装置。
- 少なくとも、前記溶融樹脂流路の最上流に位置する前記フィルターエレメントが前記第2フィルターエレメント(B)である、請求項7に記載のフィルター装置。
- 前記センターポールは、内面に沿って溶融樹脂が流れる溶融樹脂流路を備える内流型センターポールであって、前記内流型センターポールは、貫通孔、及び、前記貫通孔の少なくとも1つと前記溶融樹脂流路とを連結する連結溶融樹脂流路を備え、前記連結溶融樹脂流路に繋がる前記貫通孔に設けられた前記フィルターエレメントが前記第2フィルターエレメント(B)である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のフィルター装置。
- 溶融押出法による熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、
押出機とダイとの間に請求項1〜9のいずれか一項に記載のフィルター装置を配置し、前記押出機から吐出される溶融状態の熱可塑性樹脂を前記フィルター装置に通過させる工程を有する、熱可塑性樹脂成形体の製造方法。 - 前記フィルター装置内における、前記熱可塑性樹脂の滞留時間が50秒以上1,800秒以下である、請求項10に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記フィルター装置内における、前記熱可塑性樹脂の温度が230〜300℃である、請求項10又は11に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記フィルター装置の入口及び出口における差圧が0.1〜10MPaである、請求項10〜12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂の温度270℃、せん断速度122秒−1における溶融粘度が100〜1,500Pa・sである、請求項10〜13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂が(メタ)アクリル系樹脂を含有する、請求項10〜14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記(メタ)アクリル系樹脂が、
メタクリル酸メチルの単独重合体(A);
メタクリル酸メチルとアクリル酸エステルの共重合体(C);
メタクリル酸メチルの単独重合体(A)及びアクリル酸エステルの単独重合体(B)の混合物;
メタクリル酸メチルの単独重合体(A)及びメタクリル酸メチルとアクリル酸エステルの共重合体(C)の混合物;
からなる群から選択される、請求項15に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。 - 前記熱可塑性樹脂がゴム粒子を含有する、請求項10〜16のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記ゴム粒子がアクリル系弾性体粒子である、請求項17に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂成形体がフィルムである、請求項10〜18のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂成形体が光学用成形体である、請求項10〜19のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂成形体が加飾用成形体である、請求項10〜19のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
- 前記熱可塑性樹脂成形体が建材用成形体である、請求項10〜19のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
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