JP7173453B2 - (メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
このような用途に用いられるアクリル系ゴム粒子は、例えば乳化重合法により粉体状で得ることができ、これを他の(メタ)アクリル樹脂や添加剤と混合する際には単軸押出機、二軸押出機、及び多軸押出機等を用いて溶融混練し、ストランドとして押し出し、ペレットの形態にカットされる。
一方、光学用途や加飾用途等に使用される場合はフィルムやシート状に成形されるが、これらの用途においては、フィッシュアイとよばれる外観欠陥等を低減することが望まれている。
このような欠陥が生じることを防ぐ方法として、例えば、樹脂と粒子とを二軸押出機で溶融混練する際に、ポリマーフィルターと呼ばれるろ過装置を用いる方法がある。例えば、特許文献1及び2には、二軸押出機と、ろ過装置であるポリマーフィルターとを用いたアクリル系ゴム粒子を含む(メタ)アクリル樹脂組成物ペレットの製造方法が提案されている。
[1] (メタ)アクリル樹脂(A)、及びアクリル系ゴム粒子(B)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法であって、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)、及びアクリル系ゴム粒子(B)を押出機の混練部内で溶融混練する工程と、
前記押出機の後方に配置されたポリマーフィルターで溶融ろ過する工程とを有し、
前記押出機の混練部の温度(Ta)及びポリマーフィルターの温度(Tb)が下記の条件(1)、(2)及び(3)を満たす、(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
<条件>
(1)-10℃≦Tb-Ta≦30℃
(2)200℃≦Ta<280℃
(3)200℃≦Tb<280℃
[2] 前記条件(1)が0℃<Tb-Ta≦30℃である、[1]に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
[3] 前記(メタ)アクリル樹脂組成物の酸価が5.0μmol/g以下である、[1]又は[2]に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
[4] 前記(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度が80℃以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
[5] 前記(メタ)アクリル樹脂組成物が(メタ)アクリル樹脂(A)を5~95質量%、アクリル系ゴム粒子(B)を95~5質量%含む、[1]~[4]のいずれかに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
[6] 前記ポリマーフィルターのろ過精度が0.5~30μmである、[1]~[5]のいずれかに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
[7] 前記ポリマーフィルターが、キャンドル型ポリマーフィルター又はリーフディスク型ポリマーフィルターである、[1]~[6]のいずれかに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
[8] 前記キャンドル型ポリマーフィルターの長さが300~3,000mmである、[7]に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
[9] 前記押出機と前記ポリマーフィルターとが直接接続されている、[1]~[8]のいずれかに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の製造方法により製造された(メタ)アクリル樹脂組成物。
[11] [10]に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物を用いた成形体。
[12] 前記成形体がフィルム又はシートである、[11]に記載の成形体。
本発明は、(メタ)アクリル樹脂(A)、及びアクリル系ゴム粒子(B)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法であって、前記(メタ)アクリル樹脂(A)、及びアクリル系ゴム粒子(B)を押出機の混練部内で溶融混練する工程と、前記押出機の後方に配置されたポリマーフィルターで溶融ろ過する工程とを有し、前記押出機の混練部の温度(Ta)及びポリマーフィルターの温度(Tb)が下記の条件(1)、(2)及び(3)を満たす、(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法である。
<条件>
(1)-10℃≦Tb-Ta≦30℃
(2)200℃≦Ta<280℃
(3)200℃≦Tb<280℃
本発明に用いられる(メタ)アクリル樹脂(A)としては、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有する樹脂であれば特に制限はないが、耐熱性を向上させる観点から、例えば、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を主体とするものが好ましい。(メタ)アクリル樹脂(A)がメタクリル酸メチルに由来する構造単位を主体とする場合、その含有量は、耐熱性を向上させる観点から、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以上であることがより更に好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、全ての構造単位がメタクリル酸メチル単位であってもよい。
これらの中でも、アクリル酸エステルが好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸iso-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸iso-ブチル、及びアクリル酸sec-ブチルがより好ましい。
本発明に用いられる(メタ)アクリル樹脂(A)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併せて使用してもよい。
なお、(メタ)アクリル樹脂(A)の重量平均分子量は実施例に記載の方法で測定することができる。
本発明に用いられるアクリル系ゴム粒子(B)は、(メタ)アクリル樹脂組成物の成形体中のアクリル系ゴム粒子(B)の分散性を高め、高い透明性と高い力学物性を有する成形体を得る観点から、少なくとも弾性体層と該弾性体層を覆う外層とを有する多層構造を有することが好ましい。更に、前記成形体の硬度を高く保ちつつ、耐衝撃性を向上させる観点から、内層と、該内層を覆う弾性体層と、該弾性体層を覆う外層とを有する多層構造を有することがより好ましい。
以下、本発明においてアクリル系ゴム粒子(B)の好適態様について、弾性体層、内層、及び外層の順に説明する。
本発明に用いられるアクリル系ゴム粒子(B)の弾性体層は、炭素数1~8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル単位及び共役ジエン系単量体単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体単位(I-1)(以下、単に「単量体単位(I-1)」とも称する)を50質量%以上有する架橋ゴム重合体成分(I)を含むことが好ましい。
架橋ゴム重合体成分(I)としては、例えばアクリル酸アルキルエステルの単独重合体、アクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上、及びアクリル酸アルキルエステル以外の単量体単位を50質量%以下有する共重合体、共役ジエン系単量体の単独重合体、共役ジエン系単量体単位を50質量%以上有する共重合体等が挙げられる。
架橋ゴム重合体成分(I)中の単量体単位(I-1)の含有量は、密着性の観点から、好ましくは60~99質量%、より好ましくは70~95質量%、更に好ましくは80~90質量%である。
係る多官能単量体としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸メタリル等の不飽和カルボン酸のアルケニルエステル;マレイン酸ジアリル等の二塩基酸のジアルケニルエステル;アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル等が挙げられる。これらの中でも、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アリルがより好ましく、メタクリル酸アリルが更に好ましい。
架橋ゴム重合体成分(I)中の多官能単量体単位の含有量は、架橋によりアクリル系ゴム粒子の力学強度を向上させ樹脂組成物の耐衝撃性を向上させる観点と流動性とのバランスから、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.05~4質量%、更に好ましくは0.1~3質量%である。
これらの中でも、屈折率を調整する観点から芳香族化合物に由来する単位が好ましく、スチレン系単量体や芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、スチレン系単量体がより好ましく、スチレンが更に好ましい。
架橋ゴム重合体成分(I)中の芳香族化合物に由来する単位の含有量は、屈折率の観点から、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%、更に好ましくは10~20質量%である。
本発明に用いられるアクリル系ゴム粒子(B)は、成形体の力学物性を向上させる、すなわち、硬度を高く保ちつつ耐衝撃性を向上させる観点から、弾性体層の内側に内層を有することが好ましく、内層としては、メタクリル酸アルキルエステル単位を50質量%以上有する重合体成分(i)を含むものが好ましい。重合体成分(i)は架橋ゴム重合体成分(I)と共有結合性の結合をしていてもよい。重合体成分(i)中のメタクリル酸アルキルエステル単位の含有量は、好ましくは60~99質量%、より好ましくは70~99質量%、更に好ましくは80~99質量%、特に好ましくは85~98質量%、最も好ましくは90~97質量%である。
メタクリル酸アルキルエステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられ、これらの中でも、メタクリル酸メチルが好ましい。
内層は、重合体成分(i)として異なる組成の複数の重合体成分を含むものであってよく、重合体成分(i)以外の成分を含有してもよい。ただし、内層中の重合体成分(i)の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。
なお、上記質量比は、これらの重合体成分の単量体混合物の質量比から算出される。
アクリル系ゴム粒子を構成する外層は、メタクリル酸メチル単位を75質量%以上有し、架橋ゴム重合体成分(I)にグラフト結合した硬質重合体成分(II)を含むものが好ましい。
硬質重合体成分(II)は、成形体の力学物性の観点から、メタクリル酸メチル単位75~99質量%及びアクリル酸エステル単位1~25質量%を有することが好ましく、メタクリル酸メチル単位80~97質量%及びアクリル酸エステル単位3~20質量%を有することがより好ましく、メタクリル酸メチル単位90~96質量%及びアクリル酸エステル単位4~10質量%を有することが更に好ましい。
本発明に係るアクリル系ゴム粒子において、硬質重合体成分(II)は、架橋ゴム重合体成分(I)にグラフト結合していることが好ましい。アクリル系ゴム粒子のグラフト率は、好ましくは11~33質量%であり、より好ましくは15~30質量%であり、更に好ましくは20~30質量%である。
グラフト率は、架橋ゴム重合体成分(I)に対するグラフト結合している硬質重合体成分(II)の質量比で定義され、該グラフト率が11質量%以上であると耐熱性が向上し、33質量%以下であると活性エネルギー線硬化型樹脂との密着性が向上する。
係るグラフト率は、アクリル系ゴム粒子をアセトンに浸漬して遠心分離機にて遠心分離し、アセトン可溶分を除去して乾燥させて得たアセトン不溶分の質量を測定して下記式(a)より算出した値である。
グラフト率={〔アセトン不溶分の質量-架橋ゴム重合体成分(I)の質量〕/架橋ゴム重合体成分(I)の質量}×100 (a)
ここで、架橋ゴム重合体成分(I)の質量は、重合における架橋ゴム重合体成分(I)の単量体の質量の合計である。アクリル系ゴム粒子が弾性体層の内側に更に前記内層を有する場合には、上記式(a)において架橋ゴム重合体成分(I)の質量は、架橋ゴム重合体成分(I)と重合体成分(i)の単量体の質量の合計である。
なお、硬質重合体成分(II)の見かけの数平均分子量は、アクリル系ゴム粒子の硬質重合体成分(II)を製造する際の単量体混合物を、架橋ゴム重合体成分(I)が存在しない条件、前記内層を有する場合は架橋ゴム重合体成分(I)と重合体成分(i)が存在しない条件で、アクリル系ゴム粒子の硬質重合体成分(II)を製造するときと同様の条件で重合して得られる重合体の数平均分子量とする。係る見かけの数平均分子量は、チオール等の連鎖移動剤の配合量により調整することができる。
|nR23-nP23|< 0.01 (b)
|[(nR23-nR70)/(70-23)]-[(nP23-nP70)/(70-23)]|<0.00025 (c)
上記の関係を満足することにより、架橋ゴム重合体成分(I)と硬質重合体成分(II)との温度による屈折率差を抑制でき、結果として広い温度域においてヘイズが低減され、透明性が向上する。
アクリル系ゴム粒子の製造に用いる重合開始剤は、反応性ラジカルを発生するものであれば特に制限はなく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性の無機系開始剤;無機系開始剤に亜硫酸塩又はチオ硫酸塩等を併用してなるレドックス開始剤;有機過酸化物に第一鉄塩又はナトリウムスルホキシレート等を併用してなるレドックス開始剤等を挙げることができる。
アクリル系ゴム粒子の製造に用いる連鎖移動剤としては、例えばn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、エチレングリコールビスチオプロピオネート、ブタンジオールビスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオプロピオネート、ヘキサンジオールビスチオグリコレート、ヘキサンジオールビスチオプロピオネート、トリメチロールプロパントリス-(β-チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート等のアルキルメルカプタン類等が挙げられる。これらのうちn-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等の単官能アルキルメルカプタン等が好ましい。
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂(A)及びアクリル系ゴム粒子(B)を含むものであり、アクリル系ゴム粒子(B)に対する(メタ)アクリル樹脂(A)の割合〔(A)/(B)〕は、成形性と、成形体の力学物性、及び耐熱性の観点から、5/95~95/5であることが好ましく、30/70~90/10であることがより好ましく、50/50~85/15であることが更に好ましく、60/40~84/16であることが特に好ましく、77/23~83/17であることが最も好ましい。
(メタ)アクリル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤を含有してもよい。添加剤の種類は特に限定されず、例えば、紫外線吸収剤、高分子加工助剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、顔料、染料、艶消し剤、充填剤、耐衝撃助剤、及び可塑剤等が挙げられる。添加剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で併用してもよい。添加剤は有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよいが、樹脂組成物中での分散性の観点から、有機化合物が好ましい。
本発明によって得られる(メタ)アクリル樹脂組成物は、上記した添加剤として、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物であり、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有する。有機系の紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、蓚酸アニリド系、マロン酸エステル系、ホルムアミジン系等の紫外線吸収剤が挙げられる。
サリシレート系紫外線吸収剤としては、例えば、p-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
紫外線吸収剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で併用してもよい。本発明に用いられる紫外線吸収剤は、相溶性と耐候性の点からベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。これらの中でも、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましい。
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造できる、0.05~0.5μmの粒子径を有する重合体粒子を用いることが好ましい。該重合体粒子は、単一組成比及び単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比又は極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。これらの中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dL/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましい。
高分子加工助剤の市販品としては、例えばパラロイドK125、K125P(いずれも商品名、ダウ・ケミカル日本株式会社製)、メタブレンP-530A、P-550A(いずれも商品名、三菱ケミカル株式会社製)、カネエースPA-20、PA-30(いずれも商品名、株式会社カネカ製)等が挙げられる。
本発明に用いられる酸化防止剤としては、特に制限はなく、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられるが、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂組成物が酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、(メタ)アクリル樹脂(A)とアクリル系ゴム粒子(B)との合計100質量部に対して0.005~10質量部が好ましく、0.008~1質量部がより好ましく、0.01~0.2質量部が更に好ましい。酸化防止剤の含有量が前記範囲内であると、(メタ)アクリル樹脂組成物からなる成形体に十分な酸化防止性能を付与することができる。
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造は、(メタ)アクリル樹脂(A)、及びアクリル系ゴム粒子(B)を押出機の混練部内で溶融混練する工程と、前記押出機の後方に配置されたポリマーフィルターで溶融ろ過する工程とを有する方法にて、前記押出機の混練部の温度(Ta)及びポリマーフィルターの温度(Tb)が下記の条件(1)、(2)及び(3)を満たすように行う。
<条件>
(1)-10℃≦Tb-Ta≦30℃
(2)200℃≦Ta<280℃
(3)200℃≦Tb<280℃
本発明においては、押出機の混練部の温度(Ta)及びポリマーフィルターの温度(Tb)が、-10℃≦Tb-Ta≦30℃となる条件で製造を行う。(Tb-Ta)が前記範囲を満たすことにより、樹脂組成物の熱劣化を抑制しつつ、樹脂の状態を安定させ、連続生産性を向上させることが可能となる。
(Tb-Ta)は、0℃<Tb-Ta≦30℃であることが好ましく、0℃<Tb-Ta≦25℃であることがより好ましく、5℃≦Tb-Ta≦22℃であることが更に好ましく、15℃≦Tb-Ta≦22℃であることが特に好ましい。前記各温度が上記範囲から外れると、工程内の樹脂の状態が安定せず連続生産が難しくなったり、過熱による樹脂の劣化が起こりやすくなる。本発明において、混練部の温度(Ta)とポリマーフィルターの温度(Tb)の関係は条件(1)を満足していればよいが、TbがTaより大きいことが好ましい。
本発明では、押出機の混練部の温度(Ta)は200℃≦Ta<280℃とする。押出機の混練部の温度(Ta)が前記範囲内であることにより、樹脂組成物の熱劣化や押出機のベントアップを抑制することが可能となる。混練部の温度(Ta)は、前記観点から、200℃≦Ta≦270℃であることが好ましく、220℃≦Ta≦260℃であることがより好ましく、225℃≦Ta≦245℃であることが更に好ましい。
なお、本発明における混練部温度(Ta)は、押出機のシリンダーの設定温度とし、押出機のシリンダーの設定温度が複数ある場合、最も低いシリンダー設定温度をTaとする。
本発明では、ポリマーフィルターの温度(Tb)は200℃≦Tb<280℃とする。ポリマーフィルターの温度(Tb)が前記範囲内であることにより、樹脂組成物の熱劣化を抑制することができ、また、ポリマーフィルターの流入口と流出口の差圧を調整することが可能となる。ポリマーフィルターの温度(Tb)は、前記観点から、200℃≦Tb≦270℃であることが好ましく、220℃≦Tb≦260℃であることがより好ましく、225℃≦Tb≦255℃であることが更に好ましい。
本発明に用いる押出機に特に制限はないが、例えば単軸押出機、二軸押出機及び多軸押出機等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物中のアクリル系ゴム粒子(B)を効率的に均一分散させる観点から二軸押出機が好ましい。
減圧する場合、その圧力は、1~900hPaであることが好ましく、5~800hPaであることがより好ましく、10~500hPaであることが更に好ましく、20~100hPaであることが特に好ましい。開放ベント部の圧力が900hPa以下であることで、分解物や揮発成分の残存量を低減できる。また、開放ベント部の圧力が1hPa以上であることで、樹脂組成物の生産性を向上させることができる。
原料の一部、あるいは全てを混合して予備混合品を製造する場合は、その製造方法に特に制限はなく、例えば、公知のタンブラーやヘンシェルミキサー等の混合機を用いて混合することができる。
アクリル系ゴム粒子(B)を均一分散させる観点から、混練部を1又は2以上有することが好ましい。
また搬送部は、二軸押出機ヘッド部での樹脂圧の上昇を避けるために、樹脂組成物の混練物をダイ部等へ搬送する混練部の後方に設置されていることが好ましい。
一方、混練部間や混練部の後方、すなわち、樹脂組成物の混練物をダイ部等へ搬送する箇所に該当する搬送部のシリンダー設定温度は、熱劣化と樹脂圧力の増加を抑制して連続生産性を向上させる観点から、混練部温度(Ta)よりも0~30℃高い温度が好ましく、0~20℃高い温度がより好ましく、0~10℃高い温度が更に好ましい。
本発明では、異物を除去するため押出機の後方にポリマーフィルターが設置されている。ポリマーフィルターとしては、例えばキャンドル型ポリマーフィルター、リーフディスク型ポリマーフィルター等が挙げられる。本発明においては、前記押出機とポリマーフィルターとを直接接続してもよく、前記押出機とポリマーフィルターとの間に他の装置を接続してもよいが、前記押出機とポリマーフィルターとを直接接続することが好ましい。ここで、間に接続のための単管がある場合も直接接続という。
キャンドル型ポリマーフィルターのタイプに特に制限はなく、波型、プリーツ型等公知のものが使用できる。前記プリーツ型におけるプリーツは、フィルターエレメントの半径方向に延びたものでもよいし、半径方向に対して斜めに延び、湾曲した断面形状又はアーチ型の断面形状を有するいわゆるスパイラルプリーツであってもよい。
リーフディスク型ポリマーフィルターの形状は限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型、又はセンターポールの外面に樹脂の流路がある外流型のいずれであってもよい。
リーフディスク型ポリマーフィルターは、流路、すなわちハウジング内に1又は2以上設置されている。ポリマーフィルター1枚目から最終枚目までの溶融樹脂流れ方向の長さは、ろ過面積やポリマーフィルター内の偏流の観点から、300~3,000mmであることが好ましく、300~2,000mmであることがより好ましく、300~1,000mmであることが更に好ましい。
ポリマーフィルターのろ材の材質としては特に制限はないが、耐錆性、耐食性及び強度等の観点からステンレスが好ましく、SUS304及びSUS316L等がより好ましく、耐食性の観点から、SUS316Lが更に好ましい。
ポリマーフィルターのろ材の形態としては、例えばパウダー焼結体やファイバー焼結体等が挙げられる。これらは組み合わせて用いてもよい。
ポリマーフィルターのろ過精度は、生産性や異物サイズ等のバランスの観点から、0.5~30μmであることが好ましく、3~20μmであることがより好ましく、5~15μmであることが更に好ましい。ろ過精度を30μm以下とすることによって異物の効果的な除去が可能となる。一方、ろ過精度を0.5μm以上とすることで、溶融状態の(メタ)アクリル樹脂組成物を通過させる際の剪断発熱を抑え、熱劣化を抑制することができる。
ポリマーフィルターにおける、時間あたりの樹脂処理量に対するろ過面積は特に限定されず、樹脂組成物の処理量に応じて適宜設定できる。上記ろ過面積は、0.001~0.15m2/(kg/時間)であることが好ましく、0.002~0.05m2/(kg/時間)であることがより好ましく、0.003~0.01m2/(kg/時間)であることが更に好ましい。
本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、本発明の製造方法により製造されたものであり熱劣化が少ない。本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物は、運搬時の利便性を向上させること等を目的として、ペレット等の形状とすることができる。また、本発明の成形体は、本発明の(メタ)アクリル樹脂組成物を用いたものであり、フィルムやシート、積層体として好適に用いることができる。
<メタクリル酸メチル単位の含有量>
メタクリル酸メチル単位の含有量は、全モノマー仕込み値に対するメタクリル酸メチルモノマーの仕込み量として算出した。
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により標準ポリスチレン換算分子量で求めた。測定装置及び条件は、以下のとおりである。
・装置 :東ソー株式会社製GPC装置「HLC-8320」
・分離カラム :東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultipore HZM-M」と「SuperHZ4000」を直結
・検出器 :東ソー株式会社製「RI-8020」
・溶離液 :テトラヒドロフラン
・溶離液流量 :0.35ml/分
・サンプル濃度:8mg/10ml
・カラム温度 :40℃
ガラス転移温度は、JIS K7121:2012に準拠して測定した。すなわち、試料を200℃まで一度昇温し、次いで室温まで冷却し、その後室温から200℃までを10℃/分で昇温させる条件にて、示差走査熱量測定法にてDSC曲線を測定し、2回目の昇温時に測定されるDSC曲線から求められる中間点ガラス転移温度を本発明におけるガラス転移温度とした。
平均粒子径は、試料粒子を含むラテックスを水で200倍に希釈し、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、装置名「LA-950V2」)を用いて25℃で係る希釈液を分析し、粒子径を測定した。この際、アクリル系ゴム粒子及び水の絶対屈折率をそれぞれ、1.4900、1.3333とした。
グラフト率は、アクリル系ゴム粒子をアセトンに浸漬して遠心分離機にて遠心分離し、アセトン可溶分を除去して乾燥させて得たアセトン不溶分の質量を測定して下記式(a)より算出した。
グラフト率={〔アセトン不溶分の質量-架橋ゴム重合体成分(I)の質量〕/架橋ゴム重合体成分(I)の質量}×100 (a)
架橋ゴム重合体成分(I)の質量は、重合における架橋ゴム重合体成分(I)の単量体の質量の合計とした。アクリル系ゴム粒子が弾性体層の内側に更に前記内層を有する場合には、上記式(a)において架橋ゴム重合体成分(I)の質量は、架橋ゴム重合体成分(I)と重合体成分(i)の単量体の質量の合計とした。
<連続生産性〔トルク〕>
モニターに表示されるトルク値(スクリューモーターの電流出力値)を30秒間観察し、その平均値をトルク値(%)とした。
連続生産時のトルク変動等を鑑みると80%より低いことが好ましいため、80%より低い場合を連続生産性が良好であるとした。
実施例及び比較例で得られた試料0.8gをクロロホルムで一晩溶解させ得られた溶液50mlについて、BTB溶液を指標とし、溶液が薄黄色になるまで0.01mol/Lの水酸化カリウム溶液を滴下した。水酸化カリウムの滴下量(A mL)から下記式にて酸価を算出した。
(酸価)=A×10/0.8 (μmol/g)
本発明においては(メタ)アクリル樹脂組成物の熱劣化を抑制する観点から、酸価は5.0μmol/g以下が好ましい。
<製造例1:(メタ)アクリル樹脂(A-1)の製造>
メタクリル酸メチル99.3質量部及びアクリル酸メチル0.7質量部に重合開始剤〔2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃〕0.008質量部、及び連鎖移動剤(n-オクチルメルカプタン)0.26質量部を加え、溶解させて3000kgの原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部、及び懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて6000kgの混合液を得た。耐圧重合槽に、当該混合液と前記原料液(合計9000kg)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行うことによりビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状の(メタ)アクリル樹脂(A-1)を得た。
得られた(メタ)アクリル樹脂(A-1)は、メタクリル酸メチル単位の含有量が99.3質量%であり、重量平均分子量(Mw)が92,000、ガラス転移温度は120℃であった。
(1)内層の合成
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器内に、イオン交換水1050質量部、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム0.3質量部及び炭酸ナトリウム0.7質量部(合計2100kg)を仕込み、反応器内を窒素ガスで十分に置換した。次いで内温を80℃にした。そこに、過硫酸カリウム0.25質量部を投入し、5分間撹拌した。これに、メタクリル酸メチル95.4質量%、アクリル酸メチル4.4質量%及びメタクリル酸アリル0.2質量%からなる単量体混合物245質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるように更に30分間重合反応を行った。
次いで、同反応器内に、過硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間撹拌した。その後、アクリル酸n-ブチル80.5質量%、スチレン17.5質量%及びメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるように更に30分間重合反応を行った。
次に、同反応器内に、過硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間撹拌した。その後、メタクリル酸メチル95.2質量%、アクリル酸メチル4.4質量%及びn-オクチルメルカプタン0.4質量%からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、重合転化率が98%以上になるように更に60分間重合反応を行った。
下記方法にしたがって、実施例1~3、及び比較例1~2の(メタ)アクリル樹脂組成物を製造し、前述の評価方法にしたがって連続生産性、及び酸化を評価した。結果を表1に示す。
<実施例1>
製造例1で得た(メタ)アクリル樹脂(A-1)80質量部、製造例2で得たアクリル系ゴム粒子(B-1)20質量部、紫外線吸収剤(商品名「アデカスタブLA-31RG」、株式会社ADEKA製)2.2質量部、高分子加工助剤(商品名「パラロイドK125P」、ダウ・ケミカル日本株式会社製)1.5質量部、酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASFジャパン株式会社製)0.1質量部を、L/Dが41.5である直径58mmの同方向回転二軸押出機(商品名「TEM-58SS」、東芝機械株式会社製)のホッパーに投入し、表1に示す混練条件(Ta:230℃)で窒素を通じながらベント部の圧力を50hPaにして溶融混練し、ポリマーフィルター(Tb:230℃)でろ過した後、ダイから押出することにより(メタ)アクリル樹脂組成物(C-1)を得た。連続生産性の指標であるトルク値超過、ベントアップとも発生しなかった。また、(メタ)アクリル樹脂組成物(C-1)の酸価は4.7μmol/gであった。
なお、実施例1においては、押出機とポリマーフィルターとが直接接続された装置にて製造を行った。
ポリマーフィルター(Tb:250℃)でろ過すること以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂組成物(C-2)を得た。連続生産性の指標であるトルク値超過、ベントアップとも発生しなかった。(メタ)アクリル樹脂組成物(C-2)の酸価は4.6μmol/gであった。
混練条件(Ta:250℃)で窒素を通じながら溶融混練し、ポリマーフィルター(Tb:250℃)でろ過した後、ダイから押出すること以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂組成物(C-3)を得た。連続生産性の指標であるトルク値超過、ベントアップとも発生しなかった。(メタ)アクリル樹脂組成物(C-3)の酸価は5.0μmol/gであった。
混練条件(Ta:210℃)で窒素を通じながら溶融混練し、ポリマーフィルター(Tb:250℃)でろ過した後、ダイから押出すること以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂組成物(C’-1)を得た。連続生産性の指標であるベントアップは発生しなかったが、トルク値は80%であった。また、(メタ)アクリル樹脂組成物(C’-1)の酸価は4.6μmol/gであった。
ポリマーフィルター(Tb:265℃)でろ過すること以外は実施例1と同様にして(メタ)アクリル樹脂組成物(C’-2)を得た。連続生産性の指標であるトルク値超過、ベントアップともに発生しなかったが、(メタ)アクリル樹脂組成物(C’-2)の酸価は5.2μmol/gであった。
一方、(Tb-Ta)が30℃以上の比較例1及び2では、樹脂組成物が熱劣化したり、連続生産性が低下した。
Claims (8)
- (メタ)アクリル樹脂(A)、及びアクリル系ゴム粒子(B)を含む(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法であって、
前記(メタ)アクリル樹脂(A)、及びアクリル系ゴム粒子(B)を押出機の混練部内で溶融混練する工程と、
前記押出機の後方に配置されたポリマーフィルターで溶融ろ過する工程とを有し、
前記押出機の混練部の温度(Ta)及びポリマーフィルターの温度(Tb)が下記の条件(1)、(2)及び(3)を満たす、(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
<条件>
(1)0℃<Tb-Ta≦30℃
(2)200℃≦Ta<280℃
(3)200℃≦Tb<280℃ - 前記(メタ)アクリル樹脂組成物の酸価が5.0μmol/g以下である、請求項1に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
- 前記(メタ)アクリル樹脂(A)のガラス転移温度が80℃以上である、請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
- 前記(メタ)アクリル樹脂組成物が(メタ)アクリル樹脂(A)を5~95質量%、アクリル系ゴム粒子(B)を95~5質量%含む、請求項1~3のいずれかに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
- 前記ポリマーフィルターのろ過精度が0.5~30μmである、請求項1~4のいずれかに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
- 前記ポリマーフィルターが、キャンドル型ポリマーフィルター又はリーフディスク型ポリマーフィルターである、請求項1~5のいずれかに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
- 前記キャンドル型ポリマーフィルターの長さが300~3,000mmである、請求項6に記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
- 前記押出機と前記ポリマーフィルターとが直接接続されている、請求項1~7のいずれかに記載の(メタ)アクリル樹脂組成物の製造方法。
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