JP2019048965A - メタクリル系樹脂組成物、成形体 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、アクリル系樹脂の中でも、特にグルタル酸無水物(例えば、特許文献1参照。)や無水マレイン酸(例えば、特許文献2参照。)、マレイミド化合物(例えば、特許文献3参照)等を(メタ)アクリル酸エステル単量体に共重合することにより耐熱性を改良したアクリル系樹脂が、光学材料として優れていることが報告されている。
また、成形品の大型化、薄肉化(フィルム化等)に伴い、高温での成形及び高温で滞留時間が長くなるため、成形加工時に発泡が生じる場合があるという欠点も有している。
さらに、耐熱性アクリル系樹脂は、強度が弱く、靭性が低いため、フィルムの成形加工性やハンドリング性の点により生産性に劣るという問題を有している。
また、無水マレイン酸単位を含有するアクリル系樹脂にアクリルゴムを添加する技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
さらには、無水マレイン酸単位を含有するアクリル系樹脂に、多層構造ゴム及び熱安定剤を添加する技術(例えば、特許文献6参照)や、主鎖に環構造を有する構造単位を含有するアクリル系樹脂に、ゴム質重合体、及び必要に応じて紫外線吸収剤を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
また、樹脂に残存する単量体含有量を低減する技術が開示されており(例えば、特許文献8参照)。
一方、紫外光による樹脂自体が黄変する等の劣化を防ぐ目的や、アクリル樹脂からなる成型体の中に使用される材料が紫外光による劣化することを防ぐ目的で、紫外光をカットする目的で紫外線吸収剤等を添加する手法が広く用いられている。
例えば、主鎖に環構造を有するアクリル系樹脂に分子量が700以上の紫外線吸収剤を添加する技術が開示されている(例えば、特許文献9、10参照)。これにより紫外線吸収剤の蒸散は抑制されるものの、多量の紫外線吸収剤を添加することによる造粒時の特性のばらつきについて考慮されていない。
さらには、アクリル樹脂と特定の染料及び、紫外線吸収剤、可視光応答型光触媒を併用する技術が開示されている(例えば、特許文献11)。
引用文献1〜5に開示されているアクリル系樹脂又はアクリル系樹脂組成物は、特に、フィルム成形時において、熱劣化、樹脂分解、異物の発生等が見られ、アクリル系樹脂が本来有する優れた光学特性を充分発揮することができないという問題を有している。
また、上記特許文献8に開示された技術では、残存する単量体の量を低減する為、重合終了時に残存する単量体含有量を極力減らすことに主眼を置いている。しかし、フィルム製膜を実施するうえでフィルム製膜時の金属ロールへの貼り付き抑制という観点では何等検討はなされておらず、樹脂の熱安定性を保持したままでロールへの貼り付き性を改善するという観点で見ると不十分であり、更なる改善が望まれている。
また、偏光板保護フィルムに代表される光学フィルム用途においては、フィルムの薄肉化が進んでいるが、紫外光を遮断する必要のある場合もあり、その際には紫外線吸収剤を添加することがある。薄肉化が進むと紫外線吸収剤の添加量が増加する傾向にあるが、添加剤量が増えることで、混練不足により紫外線吸収剤の分散性が悪くなる可能性もあり、結果的に得られる樹脂の特性、特に380nm波長における透過率にばらつきが生じる恐れがある。分散性を改良するために押出機のスクリュー長さを長くしたり、より混練できるスクリューデザインにすることもできるが、長時間高温に晒されたり、せん断発熱等による樹脂劣化物に由来する異物が生じる恐れがあった。
薄肉化が進むと紫外線吸収剤の添加量が増加する傾向にあるが、特許文献9、10では、多量の紫外線吸収剤を添加しており、紫外線吸収剤の分散不良による特性の悪化やばらつきについて考慮されていない。紫外光をカットする場合、一般的に、380nm波長における透過率がある一定値以下(例えば10%以下等)であることが求められる。分散性が悪い場合、結果的に得られる樹脂の特性、特に380nm波長における透過率にばらつきが生じる恐れがあり、部分的に目標特性が得られない部分も生じることもある。分散性を改良するために押出機のスクリュー長さを長くしたり、より混練できるスクリューデザインにすることもできるが、長時間高温に晒されたり、せん断発熱等による樹脂劣化物に由来する異物が生じる恐れがある。
すなわち、本発明は以下の通りである。
メタクリル酸エステル単量体単位(A)を50質量%以上含むメタクリル系樹脂を含み、下記条件(1)〜(4)を満たすことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が、6.5万〜30万、
(2)390nmの透過率T(390)が25%以下、
(3)380nmの透過率T(380)が10%以下、
(4)390nmの透過率T(390)と380nmの透過率T(380)とが下記式の関係を満たす
1.01≦T(390)/T(380)≦8
前記メタクリル系樹脂が、メタクリル酸エステル単量体単位(A):50〜99質量%と、主鎖に環構造を有する構造単位(B):1〜30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0〜20質量%とを含む、[1]に記載のメタクリル系樹脂組成物。
前記メタクリル系樹脂が、メタクリル酸エステル単量体単位(A):50〜97質量%と、主鎖に環構造を有する構造単位(B):3〜30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0〜20質量%とを含む、[1]又は[2]に記載のメタクリル系樹脂組成物。
GC/MSの測定を実施したときに、保持時間22〜32分に検出される成分の合計の含有量が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、0.01〜0.40質量%である、[1]乃至[3]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物。
前記メタクリル系樹脂100質量部に対して紫外線吸収剤を0.01〜3.0質量部含有し、且つ、下記一般式(I)で示される化合物を0.05〜2.0質量部を含有する、[1]乃至[4]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物。
ガラス転移温度が105℃以上である、[1]乃至[5]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物。
[1]乃至[6]のいずれかに記載のメタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形体。
厚みが5〜400μmのフィルムであることを特徴とする、[7]に記載の成形体。
射出成形体であることを特徴とする、[7]に記載の成形体。
車両用部材であることを特徴とする、[7]に記載の成形体。
なお、以下において、メタクリル系樹脂をなす重合体を構成する構成単位のことを、「〜単量体単位」、及び/又は複数の該「〜単量体単位」を含む「〜構造単位」という。
また、かかる「〜単量体単位」の構成材料のことを、「単位」を省略して、単に「〜単量体」と記載する場合もある。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が、6.5万〜30万、
(2)390nmの透過率T(390)が25%以下、
(3)380nmの透過率T(380)が10%以下、
(4)390nmの透過率T(390)と380nmの透過率T(380)とが下記式の関係を満たす
1.01≦T(390)/T(380)≦8
上記メタクリル系樹脂は、好適には、メタクリル酸エステル単量体単位(A)を50質量%以上含むメタクリル系樹脂であり、より好適には、メタクリル酸エステル単量体単位(A):50〜99質量%と、主鎖に環構造を有する構造単位(B):1〜30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0〜20質量%とを含むメタクリル系樹脂であり、さらに好適には、メタクリル酸エステル単量体単位(A):50〜97質量%と、主鎖に環構造を有する構造単位(B):3〜30質量%メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0〜20質量%とからなるメタクリル系樹脂であり、特に好適には、後述の特定の装置及び特定の条件にてGC/MSの測定を実施したときに、保持時間22〜32分に検出される成分の合計の含有量が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、0.01〜0.40質量%であるメタクリル系樹脂である。
本実施形態のメタクリル系樹脂には、耐候性、生産性、耐傷性の観点から、メタクリル酸エステル単量体単位(A)が50質量%以上含まれることが好ましく、さらには樹脂に熱安定性や耐熱性等の機能を付与するために、後述する主鎖に環構造を有する構造単位(B)及び/又はメタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)が含まれることが好ましい。
上記メタクリル系樹脂を構成するメタクリル酸エステル単量体単位(A)(以下、(A)単量体単位と記載する場合がある。)としては、下記一般式(1)で示される単量体単位が好適に用いられる。
R2は、炭素数が1〜12の基、好ましくは炭素数が1〜12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。R2は、炭素数が1〜8の基であることが好ましい。
R2は、炭素数が1〜12の基、好ましくは炭素数が1〜12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。R2は、炭素数が1〜8の基であることが好ましい。
前記メタクリル酸エステル単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記メタクリル系樹脂を構成する、主鎖に環構造を有する構造単位(B)(以下、(B)構造単位と記載する場合がある。)は、マレイミド系構造単位(B−1)、グルタル酸無水物系構造単位(B−2)、グルタルイミド系構造単位(B−3)、及びラクトン環構造単位(B−4)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むことが好ましい。
主鎖に環構造を有する構造単位(B)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
上記メタクリル系樹脂を構成するマレイミド系構造単位(B−1)としては、下記一般式(3)で示される構造単位が好適に用いられる。
上記単量体は、耐熱性付与、耐湿熱性の観点から、好ましくは、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−(o−クロロフェニル)マレイミド、N−(m−クロロフェニル)マレイミド、N−(p−クロロフェニル)マレイミドが挙げられ、入手のしやすさ、耐熱性付与の観点から、より好ましくはN−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが挙げられ、さらに好ましくはN−フェニルマレイミドが挙げられる。
上述したマレイミド系構造単位(B−1)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記メタクリル系樹脂を構成するグルタル酸無水物系構造単位(B−2)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(B−2)構造単位としては、下記一般式(4)で示される構造単位が好適に用いられる。
上述したグルタル酸無水物系構造単位(B−2)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
R2は、水素原子、又はt−ブチル基を表す。
上記メタクリル系樹脂を構成するグルタルイミド系構造単位(B−3)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(B−3)構造単位としては、下記一般式(6)で示される構造単位が好適に用いられる。
また、R3は、水素原子、炭素数が1〜6の置換又は非置換のアルキル基、及び炭素数が6〜18の置換又は非置換のアリール基からなる群より選択されるいずれかを表す。
特に好適には、R1、R2、及びR3は、いずれもメチル基である。
上述したグルタルイミド系構造単位(B−3)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グルタルイミド系構造単位(B−3)の含有量は、メタクリル系樹脂を100質量%として、1〜60質量%であることが好ましく、更に好ましくは3〜50質量%であり、とりわけ好ましくは3〜25質量%である。
なお、グルタルイミド系構造単位(B−3)の含有量は、例えば、国際公開第2015/098096号の[0136]〜[0137]に記載の方法で、算出することができる。
なお、酸価は、例えば、特開2005−23272号公報に記載の滴定法等により算出することができる。
具体的には、アールエムコプチック(R.M.Kopchik)の米国特許第4,246,374号明細書に記載された方法等挙げられる。
イミド化反応の工程においては、イミド化剤を用いて行ってよく、必要に応じて、閉環促進剤を添加してもよい。ここで、イミド化剤としては、アンモニア又は一級アミンを用いることができる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、シクロヘキシルアミン等を好適に用いることができる。
イミド化反応を実施する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、押出機、又は横型二軸反応装置、バッチ式反応槽を用いる方法が挙げられる。押出機としては、特に限定されず、単軸押出機、二軸押出機又は多軸押出機を好適に用いることができる。より好適には、二軸押出機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いることができる。
また、上記樹脂を製造するにあたっては、イミド化反応の工程に加えて、エステル化剤で処理するエステル化工程を含むことができる。エステル化工程を含めることによって、イミド化工程中に副生した、樹脂中に含まれるカルボキシル基をエステル基に変換することができ、樹脂の酸価を所望の範囲に調整することができる。ここで、エステル化剤としては、本願の効果を発揮できる範囲であれば特に制限はされないが、好適にはジメチルカーボネート、トリメチルアセテートを使用することができる。エステル化剤の使用量は、特に制限されないが、樹脂100質量部に対して、0〜12質量部であることが好ましい。また、エステル化剤に加えて、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンを、触媒として併用することもできる。
上記メタクリル系樹脂を構成するラクトン環構造単位(B−4)は、樹脂重合後に形成されてよい。
(B−4)構造単位としては、下記一般式(7)で示される構造単位が好適に用いられる。
上述したラクトン環構造単位(B−4)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
R2は、炭素数が1〜12の基、好ましくは炭素数が1〜12の炭化水素基を表し、当該炭化水素基は、例えば、水酸基で置換されていてもよい。
特に好適には、R1は、水素原子であり、R2は、メチル基である。
マレイミド系構造単位(B−1)の中でも、入手のしやすさを考慮すると、好ましくはN−シクロヘキシルマレイミド系の構造単位及び/又はN−アリール置換マレイミド系の構造単位であり、少量添加での耐熱性付与効果を考慮すると、N−アリール置換マレイミド系の構造単位がより好ましく、さらに好ましくはN−フェニルマレイミド系の構造単位である。
上記メタクリル系樹脂を構成する、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)(以下、(C)単量体単位と記載する場合がある。)としては、芳香族ビニル系単量体単位(C−1)、アクリル酸エステル単量体単位(C−2)、シアン化ビニル系単量体単位(C−3)、これら以外の単量体単位(C−4)が挙げられる。
メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
上記メタクリル系樹脂を構成する芳香族ビニル系単量体単位(C−1)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(9)で表される芳香族ビニル系単量体が好ましい。
R2は、水素原子、炭素数が1〜12のアルキル基、炭素数が1〜12のアルコキシ基、炭素数が6〜8のアリール基、及び炭素数が6〜8のアリーロキシ基からなる群より選択されるいずれかであり、R2は、全て同じ基であっても、異なる基であってもよい。また、R2同士で環構造を形成してもよい。
nは、0〜5の整数を表す。
上記の中でも、スチレン、イソプロペニルベンゼンが好ましく、流動性付与や、重合転化率の向上による未反応モノマー類の低減等の観点から、スチレンがより好ましい。
これらは、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物において、要求される特性に応じて適宜選択してよい。
ここで、良好な色調や耐熱性を保持する観点から、上限値は、5以下であることが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1以下である。また、残存モノマー低減の観点から、下限値は、0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.4以上である。
上述した芳香族ビニル系単量体(C−1)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記メタクリル系樹脂を構成するアクリル酸エステル単量体単位(C−2)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、下記一般式(10)で表されるアクリル酸エステル単量体が好ましい。
上記アクリル酸エステル単量体単位(C−2)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記メタクリル系樹脂を構成するシアン化ビニル系単量体単位(C−3)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられ、中でも、入手のしやすさ、耐薬品性付与の観点から、アクリロニトリルが好ましい。
上記シアン化ビニル系単量体単位(C−3)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記メタクリル系樹脂を構成する(C−1)〜(C−3)以外の単量体単位(C−4)をなす単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー等が挙げられる。
特に、(C)単量体単位として反応性二重結合を複数有する架橋性の多官能(メタ)アクリレートを使用する場合は、(C)単量体単位の含有量は、重合体の流動性の観点から、0.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3%質量以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
成形体用途においては、紫外光による樹脂の劣化を抑制するために、380nm近傍での光の透過を抑えることが求められる場合がある。
上記メタクリル系樹脂の380nmの透過率(T(380))は10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、更に好ましくは7%以下である。
380nmの透過率は、樹脂に紫外線吸収剤を使用することで抑えることができる。
例えば、偏向板保護フィルム用途に代表される光学フィルム用途では、薄肉化も求められているため、紫外線吸収剤の添加量が増える傾向にあり、車両用部材のような射出成形材料においても、薄肉化により添加量が増える傾向にある。添加量が増えるが故に、樹脂と添加剤を連続的に混練する場合に、得られる樹脂組成物において380nmの透過率にばらつきが生じ、局所的に所望の特性が得られない場合がある。また、上記ばらつきが生じた場合、所望の特性が得られないばかりか、添加剤が偏在することで成形加工時に金型やロールに貼りつきやすくなり、成型加工性が低下することがある。
一方、高価な紫外線吸収剤を必要以上に多量に添加することで、上記ばらつきを抑制するか、又はばらついてもそのばらつきを所望の特性が得られる範囲内とする方法も考えられる。この方法では、生産コストが高くなるだけでなく、紫外線吸収剤のブリードアウトによる金型やロールへの貼りつき等の成型時の不良が起こりやすくなるといった傾向にある。さらには、この方法では、耐熱性が低下してしまううえ、強度が落ちる傾向にある等、UV特性、生産性、耐熱性、強度について高度にバランスを保つことが困難となる可能性がある。
1.01≦T(390)/T(380)≦8 ・・・式(A)
色相(b*)及び連続生産安定性の観点から、T(390)/T(380)は、より好ましくは1.01以上6以下、更に好ましくは1.01以上5以下、とりわけ好ましくは1.01以上4以下である。
なお、T(380)及びT(390)を好適なもののとするためには、メタクリル系樹脂に後で述べる光学的明色差剤を使用することが好ましく、より好ましくは製造時の混練方法を最適化する。混練方法の最適化によれば生産安定性をも向上することができる。
上記メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6.5万〜30万であることが好ましい。
メタクリル系樹脂の重量平均分子量を前記範囲とすることにより、上記メタクリル系樹脂及びメタクリル系樹脂組成物は、シャルピー衝撃強さ等の機械的強度及び流動性に優れたものとなる。上記重量平均分子量は、機械的強度保持の観点から、好ましくは6.5万以上、より好ましくは7万以上、さらに好ましくは8万以上、よりさらに好ましくは10万以上である。また、重量平均分子量は、成形加工時の流動性確保の観点から、25万以下とすることが好ましく、より好ましくは23万以下、さらに好ましくは22万以下、よりさらに好ましくは20万以下、とりわけ好ましくは18万以下、特に好ましくは17万以下である。
また、メタクリル系樹脂の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、流動性と機械強度、耐溶剤性のバランスを考慮すると、1.5〜5であることが好ましい。より好ましくは1.5〜4.5、さらに好ましくは1.6〜4、さらにより好ましくは1.6〜3、よりさらに好ましくは1.5〜2.5である。
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。詳細には、予め単分散の重量平均分子量、数平均分子量及びピーク分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムとを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。次に、得られた検量線から、測定対象であるメタクリル系樹脂の試料の重量平均分子量及び数平均分子量を求めることができる。具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
上記メタクリル系樹脂においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量が、加工流動性の向上、成形時のシルバーストリークスと呼ばれる銀状痕等の成形品の外観不良の低減、フィルム製膜時のロールへの貼り付き防止の観点から、0.1〜5.0質量%であることが好ましい。
上記含有量を0.1質量%以上とすることで、加工流動性を向上させることができる。下限値は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上である。また、上記含有量を5質量%以下とすることで、成形時のシルバーストリークスを低減することができる等、外観不良を低減することができ、さらには、成形時の金型離れを改善し、フィルム成膜時のロールへの貼り付き性を抑制し、延伸時にフィルムを挟む際に割れの発生を抑制することができる。上限値は、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下である。
なお、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量は、例えば、GPC溶出曲線から得られるエリア面積比率から求めることができ、具体的には、図1において、溶出曲線の開始点をA、その終了点をB、重量平均分子量1万となる溶出時間におけるベースライン上の点をX、そのGPC溶出曲線上の点をYとしたとき、曲線BYと線分BX、線分XYで囲まれる面積の、GPC溶出曲線におけるエリア面積に対する割合を、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量(質量%)として求めることができる。
好適には、下記実施例の方法により測定することができる。
上記含有量を10.0〜25.0質量%とすることで、フィルム成形加工時の筋ムラ発生を抑制することができるうえ、フィルム成形時にロールへの貼り付き性が改善される。そして、加工流動性と、筋ムラの抑制・タッチロールへの貼り付き抑制といった加工時の特性をバランスよく付与する観点から、下限値は、より好ましくは12.0質量%以上、更に好ましくは13.0質量%であり、また、上限値は、より好ましくは24.0質量%以下である。
なお、重量平均分子量が1万超5万以下の成分の含有量は、重量平均分子量が1万以下の成分の含有量の場合と同様に、求めることができる。
高分子量体と低分子量体の存在比率を見た場合、加熱加工時における高分子量体と低分子量体との間での粘度差の影響により、低分子量体比率が多いと、加工流動性には優れているものの、フィルム加工時にロールへの貼り付き性が高くなる傾向にある一方で、高分子量体比率が高いと、フィルム加工時に筋ムラが発生しやすくなる傾向がある。
両者の特性をバランスよく付与したうえで、より貼り付き性を改善したい場合は、上記割合は、3.0以上とすることが好ましく、より好ましくは3.5以上である。一方で、フィルム加工時の筋ムラをより改善したい場合は、上記比率は、8.0以下であることが好ましく、より好ましくは7.5以下である。
上記成分の合計の含有量がこの範囲であると、成形加工時の金型やフィルムロールへの貼り付き性を抑制することができ、成形加工性が改善される。また、0.01質量%未満とするためには、工程が煩雑になるため好ましくない。
なお、上記成分の合計の含有量は、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)測定により求めることができる。
GC/MS測定において好適に使用されるカラムとしては、無極性又は微極性のカラムであることが好ましく、(5%フェニル)−95%メチルポリシロキサンを固定相とするカラムがより好ましい。具体的には、007−2、CP−Sil 8CB、DB−5、DB−5.625、DB−5ht、HP−5、HP−5ms、OV(登録商標)−5、PTE−5、PTE−5QTM、PAS−5、RSL−200、Rtx(登録商標)−5、Rtx(登録商標)−5ms、SAC−5、SE(登録商標)−54、SPB(登録商標)−5、ULTRA−2、XTI−5、SE(登録商標)−52、BP−5、PE−2、ZB−5、AT(登録商標)−5、EC(登録商標)−5等が挙げられる。
好適に使用されるキャリアガスとしては、ヘリウムガスが挙げられる。ガス流量としては、約1mL/分であることが好ましく、測定中一定となるように制御されることが好ましい。
試料の注入量としては、約1μL程度であることが好ましい。
上記特定の成分の含有量の測定方法はとしては、内部標準法での測定を好適に用いることができ、一例をあげると、後述する実施例の方法が挙げられる。内部標準物質としては目的の成分である特定の成分が観測される保持時間や他の成分のピークと重ならない物質であり、安定な化合物であれば特に規定はされない。一例を挙げると、特定成分よりも前に観測されるノナン、デカン、ドデカン等の炭化水素類や、特定の成分よりも後に観測されるオクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート等が好適に用いることができる。より好ましくは、特定の成分よりも後に観測されるオクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートを使用することが好ましい。
内部標準物質としてオクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートを用いる場合、使用したモノマー種の2、3量体を含む特定の成分は保持時間20分から内部標準物質がのピークが検出される範囲で観測され、その間の面積比から存在比を算出することができる。使用したモノマー種を含む特定の成分の検出範囲は、GC/MSにおいて検出されたピークのマススペクトルのデータを用いて判断することができる。
なお、熱安定剤等の添加剤に由来するピークが上記保持時間の範囲に現れた場合には、添加剤由来のピークの分の面積値を総面積値から差し引いて、特定の成分の合計量の計算を実施する。
測定用サンプルの調整方法の一例としては、後述する実施例の方法を例示することができる。
またなお、上記特定の成分の合計の含有量は、より具体的には、実施例において後述する特定の装置及び特定の条件でのGC/MS測定により求められるものとする。
なお、ガラス転移温度は、ASTM−D−3418に準拠して中点法により測定することができ、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
上記メタクリル系樹脂の製造方法は、前述の上記メタクリル系樹脂が得られる限り、特に限定されるものではない。
上記メタクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル単量体単位(A)、主鎖に環構造を有する構造単位(B)、及び、必要に応じて、上述したメタクリル酸エステル単量体に共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)等を形成するための各単量体を用い、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法により製造できる。メタクリル系樹脂の製造には、好ましくは塊状重合法、溶液重合法が用いられ、より好ましくは溶液重合法が用いられる。
また、上記メタクリル系樹脂の製造は、連続式としてもよいし、バッチ式としてもよい。
そして、上記タクリル系樹脂の製造方法では、ラジカル重合により単量体を重合することが好ましい。
上記メタクリル系樹脂の製造方法の一例は、反応器に単量体と、必要に応じて有機溶媒とを加える調合工程と、重合開始剤を前記反応器に添加して、単量体の重合反応を行う重合工程と、必要に応じて、有機溶媒及び未反応の単量体を除去する脱揮工程とを含む。
上記メタクリル系樹脂の製造方法の一例においては、初めに、メタクリル酸エステル単量体単位(A)を構成し得る単量体、主鎖に環構造を有する構造単位(B)を構成し得る単量体、必要に応じてさらに、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)を構成し得る単量体等と、有機溶媒とを反応器で調合する(調合工程)。
単量体としては、上記メタクリル系樹脂における各単量体単位(A)〜(C)について述べた通りである。
なお、使用する単量体中には、重合反応を過度に妨げない範囲で重合禁止剤が残存していてもよく、残存する重合禁止剤の含有量は、重合反応性及び取扱性の観点から、全単量体の総量に対して、10質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは3質量ppm以下である。
任意選択的に用いられる有機溶媒としては、メタクリル系樹脂中に残存するモノマーを除去するための脱揮工程(後述)での除去効率を考慮して、メタクリル系樹脂の良溶媒であることが好ましい。
有機溶媒の溶解度パラメーターδは、メタクリル系樹脂を構成する共重合体の溶解度を考慮して、7.0〜12.0(cal/cm3)1/2であることが好ましく、より好ましくは8.0〜11.0(cal/cm3)1/2、さらに好ましくは8.2〜10.5(cal/cm3)1/2である。
溶解度パラメーターδの値の求め方は、例えば、非特許文献「Journal of Paint Technology Vol.42、No.541、February 1970」中のP76−P118に記載されているK.L.Hoy著「New Values of the Solubility Parameters From Vapor Pressure Data」や、J.Brandrup他著「Polymer Handbook Fourth Edition」P−VII/675−P714等を参考にすることができる。
なお、1(cal/cm3)1/2は、約0.489(MPa)1/2である。
有機溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が挙げられる。
回収された有機溶媒中には未反応の単量体成分が含まれている場合には、有機溶媒中に含まれる未反応の単量体の含有量を分析し、その後、必要な分だけ単量体を追加することによって、調合を行うこともできる。
メタクリル系樹脂の重合を溶液重合法で行う場合、有機溶媒の配合量は、具体的には、配合する全単量体の総量を100質量部とした場合に、10〜200質量部とすることが好ましい。より好ましくは25〜200質量部、さらに好ましくは50〜200質量部、さらにより好ましくは50〜150質量部である。
反応器は、材料の量及び除熱の観点から必要となる大きさを考慮して、適宜選択すればよい。
反応器のL/Dは、重合反応溶液の撹拌効率の観点から、0.5〜50が好ましく、より好ましくは1〜25であり、さらに好ましくは、1〜10である。
特に、予め混合する際には、重合で使用可能な有機溶媒の一部又は全部を同時に混合することができる。有機溶媒を使用する際には、重合に供される単量体を溶解可能なものを使用することが好ましく、有機溶媒の溶解度パラメーターδは、7.0〜12.0(cal/cm3)1/2であることが好ましい。
上記メタクリル系樹脂の製造方法の一例においては、次いで、重合開始剤、必要に応じて、分子量調整剤、その他の添加剤、追加の単量体を、調合工程後の反応器に添加して、単量体の重合反応を行う(重合工程)。
なお、重合開始剤は、追加の単量体及び/又は追加の有機溶媒に溶解させたうえで、反応器に添加してもよい。
本実施形態において使用される重合開始剤は、重合温度で分解し活性ラジカルを発生するものであればよいが、滞留時間の範囲内で必要な重合転化率を達成することが必要であり、重合温度における半減期が0.6〜60分、好ましくは1〜30分を満足するような重合開始剤が選択される。但し、重合温度における半減期が60分を超える開始剤に関しても、所定量を一括もしくは10分程の時間で投入することで、本実施形態に適した活性ラジカル量を発生する重合開始剤として使用することができる。その場合に必要な重合転化率を達成するためには、重合温度における半減期が60〜1800分、好ましくは260〜900分を満足するような重合開始剤が選択される。
好適に使用される重合開始剤は、重合温度、重合時間を鑑みて適宜選択することができ、例えば、日本油脂(株)「有機過酸化物」資料第13版、アトケム吉富(株)技術資料及び和光純薬工業(株)「Azo Polymerization Initiators」等に記載の開始剤を好適に使用することができ、上記半減期は、記載の諸定数等により容易に求めることができる。
前記重合開始剤としては、ラジカル重合を行う場合は、以下に限定されるものではないが、有機過酸化物やアゾ系化合物等の一般的なラジカル重合開始剤を挙げることができる。
重合開始剤は、1種単独で用いることができ、2種以上組み合わせて用いることもできる。
重合反応においては重合開始剤の供給量を増やすことで重合度を上げることができるが、多量の開始剤を使用することで全体の分子量が低下する傾向にあるうえ、重合時の発熱量が増大するため、過熱により重合安定性が低下する場合もある。
重合開始剤は、所望の分子量を得やすくし、重合安定性を確保するという観点から、使用する全単量体の総量100質量部に対して、0〜1質量部の範囲で用いるのが好ましく、より好ましくは0.001〜0.8質量部であり、より好ましくは0.01〜0.5質量部である。重合開始剤の添加量は、重合を行う温度及び開始剤の半減期も考慮して、適宜選ぶことができる。
より具体的には、本発明の実施形態では、反応系内に残存する未反応モノマー総量に対する重合開始剤より発生するラジカル総量の割合が、常時一定値以下となるように、開始剤の種類、開始剤量、及び重合温度等を適宜選択することが好ましい。
かかる方法によれば、重合時のラジカル発生量を制御することによって、メタクリル系樹脂中の成分の合計量や重量平均分子量1万以下の成分量を所望の範囲とすることができる。
例えば、重合開始時の重合開始剤の添加速度(単位時間当たりの添加量)を100ppm/時とし、重合開始剤の添加開始から添加終了までの時間の合計であるB時間を10時間とした場合に、重合開始剤の添加開始から0.1〜3時間の間に、添加速度(単位時間当たりの添加量)を70ppm/時以下とすることが好ましい。
なお、重合開始時に一定量の重合開始剤を添加した後に、定量フィードする場合は条件(ii)を満たさない。例えば、初めに必要開始剤量のうち1/3量を一括で投入した直後に、残りの2/3量を一定時間(例えば3時間など)かけて投入する場合は、重合開始剤の添加開始から0時間で添加量を変更していることとなるため、条件(ii)を満たさない。
例えば、重合開始時の重合開始剤の添加速度(単位時間当たりの添加量)を100ppm/時とし、重合開始剤の添加開始から添加終了までの時間の合計であるB時間を10時間とした場合に、重合開始剤の添加開始から7〜10時間の間に、添加速度(単位時間当たりの添加量)を25ppm/時以下とすることが好ましい。
任意選択的に用いられる分子量調整剤としては、連鎖移動剤やイニファータ等が挙げられる。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂の製造工程においては、本発明の目的を損なわない範囲で、製造する重合体の分子量の制御を行うことができる。
連鎖移動剤及びイニファータとしては、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の連鎖移動剤;ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等のイニファータ等を用いることによって分子量の制御を行うことができ、さらには、これらの連鎖移動剤やイニファータの添加量を調整することにより、分子量を制御することができる。
これら分子量調整剤は、要求される分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には使用する全単量体の総量100質量部に対して、0.001〜3質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては重合方法を変える方法、重合開始剤の量を調整する方法、重合温度を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、1種の方法だけを単独で用いてもよいし、2種以上の方法を併用してもよい。
上記メタクリル系樹脂においては、2量体及び3量体を含む成分の合計量を適量に制御する必要があり、また重量平均分子量1万以下の成分量も適量に制御する観点から、重合反応系に残るモノマー量に対して、残存する連鎖移動剤の量が過剰にならないような方法を選択することが好ましい。
連鎖移動剤の供給する方法の一例としては、連鎖移動剤を予めモノマーに溶解させておく方法、重合度が50%以下の段階で一括及び/又は逐次添加する方法、重合度90%までの間に一括及び/又は連続的に添加する方法で、連鎖移動剤を添加する量を、徐々に減じていく方法等の方法を好適に用いることができる。
任意選択的に用いられるその他の添加剤は、本発明の効果を発揮できる限り特に限定されることなく、目的に応じて、適宜選択されてよい。
なお、溶存酸素濃度は、例えば、溶存酸素計 DOメーターB−505(飯島電子工業株式会社製)を用いて測定することができる。
溶存酸素濃度を低下させる方法としては、重合溶液中に不活性ガスをバブリングする方法、重合前に重合溶液を含む容器内を不活性ガスで0.2MPa程度まで加圧した後に放圧する操作を繰り返す方法、重合溶液を含む容器内に不活性ガスを通ずる方法等が挙げられる。
なお、重合反応時間とは、重合開始剤の添加開始から重合反応の停止を行うまでの時間、又は、重合開始剤の添加開始から、重合反応溶液の反応器内からの取り出しを開始するまでの時間をいう。
該重合反応器から抜き出された重合反応生成物は、脱揮装置を用いて有機溶媒及び未反応の単量体を除去することができる。除去した溶媒は、精留操作を行った後、重合反応に再利用してもよい。
本発明において好適に使用できる脱揮装置としては、重合反応生成物を、150〜320℃の温度で加熱処理し、揮発分を分離回収処理ができる装置であればよい。
一例を挙げると、一か所又は複数個所にベント口を有する押出機や、SCプロセッサ、KRCニーダー、ギアポンプ付真空減圧タンク、高粘度用薄膜蒸発器EXEVA、フラッシュドラム等が挙げられる。
上記の脱揮装置は、1種単独でも2種以上の装置を併用して使用することができる。
本発明においては、脱揮工程にて、脱揮後の樹脂中に含まれる残存揮発分量の総計が1質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、前述のメタクリル系樹脂を含有することを特徴とし、この他に、任意選択的に、ゴム質重合体、メタクリル系樹脂以外の樹脂であるその他の樹脂、添加剤を含有していてよい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、上述したメタクリル系樹脂以外に、その他の樹脂を組み合わせて含有してもよい。
当該その他の樹脂としては、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に求められる特性を発揮できるものであれば、公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、流動性向上の観点から好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は、耐衝撃性向上の観点から好ましく、また、ポリエステル樹脂は、耐薬品性向上の観点から好ましい。また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等は、難燃性向上の観点から好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、耐熱性付与、耐衝撃性付与や光学特性の調整が必要な場合に好ましい。さらに、アクリル系樹脂は、前述のメタクリル系樹脂との相溶性が良好であり、透明性を保持したままで、流動性、耐衝撃性等の特性を調整する場合に好ましい。
特に好適に使用される樹脂としては、AS樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。
前記各種熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いても、2種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
また、その他の樹脂を配合するときの特性付与効果を考慮すると、その他の樹脂を配合する場合の配合量の下限値としては0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上、よりさらに好ましくは5質量%以上である。
その他の樹脂の種類や含有量は、その他の樹脂と組み合わせて使用する場合に期待される効果に応じて適宜選択することができる。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、剛性や寸法安定性等の各種特性を付与するため、所定の添加剤を添加してもよい。
添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、光学的明色差剤;紫外線吸収剤、熱安定剤、色調調整剤、光安定剤等の各種安定剤;可塑剤(パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル);難燃剤(例えば、有機リン化合物、赤リン、無機系リン酸塩等のリン系、ハロゲン系、シリカ系、シリコーン系等);難燃助剤(例えば、酸化アンチモン類、金属酸化物、金属水酸化物等);硬化剤;硬化促進剤;帯電防止剤;導電性付与剤;応力緩和剤;離型剤;結晶化促進剤;加水分解抑制剤;潤滑剤;耐衝撃付与剤;摺動性改良剤;相溶化剤;核剤;フィラー等の強化剤;流動調整剤;染料;増感剤;着色剤;増粘剤;充填剤(ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状補強剤、さらにはガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等);消泡剤;光拡散性微粒子;防錆剤;抗菌・防カビ剤;防汚剤;導電性高分子等が挙げられる。
前記光学的明色差剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチルベン誘導体、クマリン誘導体、ナフタルイミド誘導体、ペリレン系誘導体(例えば、8,9,10,11−テトラクロロ−12H−フタロペリン−12−オン等)、下記一般式(I)に示される化合物等が挙げられる。好ましくは下記一般式(I)に示される化合物であり、より好ましくは下記一般式(I)においてR1、R2がt−ブチル基である化合物である。
なお、5%重量減少時の温度は、例えば、後述するTGA等により測定することができる。
前記紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。
その中でも、非晶性の熱可塑性樹脂、特にアクリル樹脂と相溶性が高く吸収特性が優れている点から、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(「アルキルオキシ」は、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ等の長鎖アルキルオキシ基を意味する)を有する紫外線吸収剤が挙げられる。
これら紫外線吸収剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記紫外線吸収剤は、23℃から260℃まで20℃/分の速度で昇温した場合の重量減少率が50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらにより好ましく、5%以下であることがよりさらに好ましい。
前記熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。本実施形態のメタクリル系樹脂は、溶融押出や、射出成形、フィルム成形用途等、様々な用途で好適に使用される。加工の際に受ける熱履歴は加工方法により異なるが、押出機のように数十秒程度から、肉厚品の成形加工やシート成形のように数十分〜数時間の熱履歴を受けるものまで様々である。
長時間の熱履歴を受ける場合、所望の熱安定性を得るために、熱安定剤量添加量を増やす必要がある。熱安定剤のブリードアウト抑制やフィルム製膜時のフィルムのロールへの貼りつき防止の観点から、複数種の熱安定剤を併用することが好ましく、例えば、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
これらの酸化防止剤は、1種又は2種以上を併用してしてもよい。
色調調整剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、油溶染料が特に好ましい。
具体的な例としては、C.I.SolventBlue11、C.I.SolventBlue25、C.I.SolventBlue35、C.I.SolventBlue36、C.I.SolventBlue45(TelasolBlueRLS)、C.I.SolventBlue55、C.I.SolventBlue63、C.I.SolventBlue78、C.I.SolventBlue83、C.I.SolventBlue87、C.I.SolventBlue94、C.I.SolventBlue97、C.I.SolventBlue104、C.I.SolventBlue122等や、C.I.SolventViolet8、C.I.SolventViolet13、C.I.SolventViolet14、C.I.SolventViolet21、C.I.SolventViolet27、C.I.SolventViolet28、C.I.SolventViolet36、C.I.SolventViolet37、C.I.SolventViolet49等が挙げられる。また、C.I.SolventOrange60や、C.I.SolventRed24、C.I.SolventRed25、C.I.SolventRed27、C.I.SolventRed30、C.I.SolventRed49、C.I.SolventRed52、C.I.SolventRed100、C.I.SolventRed109、C.I.SolventRed111、C.I.SolventRed121、C.I.SolventRed135、C.I.SolventRed149、C.I.SolventRed168、C.I.SolventRed179、C.I.SolventRed195等も好適に使用される。
耐熱性の指標としては、ガラス転移温度を用いることができる。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物のガラス転移温度は、実使用時の耐熱性の観点から、105℃以上であることが好ましく、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上、よりさらに好ましくは120℃以上、とりわけ好ましくは122℃以上である。ガラス転移温度は、さらには、123℃以上、124℃以上が好ましく、特に好ましくは125℃以上である。
なお、ガラス転移温度は、ASTM−D−3418に準拠して測定することができ、具体的には、後述する実施例において記載する方法により測定することができる。
偏光板保護フィルム用途を代表される光学フィルム用途においては380nmにおいて、光の透過を抑えることが求められる場合がある。本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の380nmの透過率(T(380))は10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、更に好ましくは7%以下である。
380nmの透過率は、紫外線吸収剤を使用することで抑えることができるが、一方でフィルムの薄肉化も求められているため、紫外線吸収剤の添加量が増える傾向にある。添加量が増えるが故に、樹脂と添加剤を連続的に混練する場合に、得られる樹脂組成物において380nmの透過率にばらつきが生じる場合がある。
1.01≦T(390)/T(380)≦8 ・・・式(A)
色相(b*)及び連続生産安定性の観点から、T(390)/T(380)は、より好ましくは1.01以上6以下、更に好ましくは1.01以上5以下、とりわけ好ましくは1.01以上4以下、特に好ましくは1.01以上3以下である。
なお、T(380)、T(390)の測定はペレットをサンプリングした後に20〜80μmのいずれかの厚みのプレスフィルム作製し、得られたフィルムを用いて測定した透過率で測定した。例えば、後述の実施例のように50kgの時点でサンプリングしたペレットを用いて製造した、厚さ55μmのフィルムを用いて測定した透過率を確認した。
また、得られた樹脂ペレットの任意に10gずつ5サンプル取り出し、上述と同様に、20〜80μm厚みのプレスフィルムを作製して、T(380)とT(390)とを測定し、5サンプルの平均値を求めることでも算出することができる。
またなお、メタクリル系樹脂組成物のT(380)及びT(390)は、例えば、光学的明色差剤の添加、樹脂組成物の組成、樹脂組成物の製造方法等により調整することができる。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を用いてフィルムを製造する場合、成形機内で樹脂が溶融状態で滞留する場合がある。その際、高温下で長時間滞留することになるため、樹脂材料が熱分解しにくいこと、すなわち熱安定性が要求される。
また、本実施形態のフィルムを薄肉にする必要がある場合、高温で成形を行うことが必要となり、高い熱安定性が求められる。
熱安定性の指標としては、所定温度で所定時間保持したときの重量減少割合、及び所定割合だけ重量減少したときの温度(熱分解開始温度)を用いることができる。
なお、290℃、30分間保持時の重量減少割合については、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
なお、熱分解開始温度は、例えば、昇温させた際に1%重量が減じる温度である1%重量減少温度(熱分解開始温度)としてよく、具体的には、以下の方法により測定することができる。
メタクリル系樹脂組成物を用いて、下記装置及び条件で、測定を行う。そして、樹脂組成物の重量が1%減少する時の温度を算出し、熱分解開始温度(1%重量減少時の温度)(℃)とする。
測定装置:差動型示差熱天秤 Thermo plus EVO II TG8120、株式会社リガク製
サンプル量:約10mg
測定雰囲気:窒素(100mL/分)
測定条件:100℃で5分保持し、10℃/分で400℃まで昇温しながら、1%重量が減じる点を熱分解開始温度(1%重量減少温度)とする。
5%重量減少時の温度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
なお、b*値のばらつきは、複数の試験片についてb*値の測定を行い、個々の測定された値と複数の平均値との最大差異を求め、下記式に従ってb*値の変化度を算出される値であり、具体的には、後述の実施例に記載する方法により測定することができる。
{(b*の平均値との差異が最大であるb*の測定値)−(b*の平均値)}/(b*の平均値)×100(%)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、長期運転での生産安定性、すなわち、生産樹脂の特性安定性に優れる。連続生産性の指標としては、異物の含有量や、得られたペレットの特性のばらつき評価、押出安定性を用いることができる。押出安定性は、例えば、樹脂圧力の増加率や、製造されたペレットの粒径分布などによって評価することができる。
樹脂圧力の増加率は、樹脂圧力を測定する間隔に応じて変動する。例えば、連続生産性の観点から、押出開始から1時間経過時の樹脂圧力(P0)を基準とし、48時間経過後の樹脂圧力を(P)としたときに、樹脂圧力の増加率は10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、特に好ましくは5%以下である。当該樹脂圧力の増加率は、下記式から算出することができる。
樹脂圧力の増加率(%)=(P−P0)/P0×100
なお、ポリマーフィルターの中でもプリーツフィルターを用いることによって、樹脂圧力の増加率を一層小さくすることができる。
ペレット粒径分布は、押出安定性の観点から、例えば、8メッシュ(2.36mm)の目開きの篩上に残ったペレット重量割合(%)は、97%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。
ここで、ペレット粒度分布は、例えば、JIS Z 8801に準拠して篩分けした際の篩上に残るペレット重量比を算出することによって、評価することができる。具体的には、後述の実施例に記載する方法により測定することができる。
得られたペレットの特性のばらつきの確認方法は、主たる添加剤が紫外線吸収剤等の場合、例えば、一定の間隔で生産ペレットを採取し、得られたペレットをプレス成形することによりフィルムを得て、得られたフィルムのUV測定を実施して390nmにおける透過率及び、380nmの透過率を測定することで確認することができる。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、前述のメタクリル系樹脂、任意選択的に加えられる、ゴム質重合体、メタクリル系樹脂以外の樹脂であるその他の樹脂、添加剤を、溶融混練及び押出することによって、調製することができる。以下、より具体的に説明する。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練する方法が挙げられる。下記に示す条件を適宜使用して溶融混練及び押出することによって、製造することができる。中でも押出機による溶融混練及び押出が、生産性の面で好ましい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の製造では、例えば、単軸押出機、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機、多軸押出機等の一般的な押出機を用いることができる。中でも好ましい押出機は、二軸混練押出機等の混練効果の大きい装置である。押出機のスクリュー構成の一例としては、樹脂組成物の原料や混練物を搬送する搬送部と、ニーディングゾーンや溶融樹脂の送り方向が逆のスクリューセグメント(螺旋の巻き方向が逆のスクリューセグメント)などの、樹脂組成物の原料を混練するための混練部と、を有するものが挙げられる。また、混練部の後方に、樹脂組成物の混練物をダイ部などへ搬送する搬送部をさらに有していてもよい。混練温度は、メタクリル系樹脂を構成する重合体や、混合する他の樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては140〜300℃の範囲、好ましくは180〜280℃の範囲である。また、押出機には、揮発分を減じる目的で、ベント口を設けることが好ましい。
押出機のL/Dは、熱可塑性樹脂を十分に可塑化して良好な混練状態を得る観点から、10以上であることが好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上である。また、押出機のL/Dは、過度にせん断が加わることによる樹脂組成物中の重合体の熱分解抑制の観点から、100以下であることが好ましく、より好ましくは80以下、さらに好ましくは60以下である。
ここで、Lはバレル有効長、Dはバレル内径を意味する。
押出機の原料搬送部のシリンダー温度は、混練部のシリンダー温度より低く設定されることが望ましい。
ここで、「原料搬送部」とは、樹脂組成物の原料が混練される混練部より原料供給側の部分を指し、原料搬送部のシリンダー温度とは、原料搬送部のシリンダー設定温度の平均値を指す。
原料搬送部の中でも、原料供給ホッパーの直近のシリンダー温度は、樹脂の融着によるホッパーつまりを抑制する観点から、他の搬送部のシリンダー温度よりも低く設定しておくことが好ましい。具体的には、原料供給ホッパーの直近のシリンダー温度は、他の搬送部のシリンダー温度より5℃以上低いことが好ましく、より好ましくは10℃以上低い。
予備混合を実施する場合、メタクリル系樹脂100質量部のうちの1〜40質量部に対して、上記特定成分100質量%のうちの、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を混合する。また、予備混合を実施する場合の上記メタクリル系樹脂の使用量は、使用する添加剤の分散性向上の観点から、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜25質量部である。
押出機のバレル構成としては、特に限定されることなく、複数のバレルを含み、所望のバレルにおいて、固体搬送ゾーン、溶融体搬送ゾーン、混練ゾーン等を形成するものとしてよく、所望のバレルに、真空ベントや大気ベント等のベントを設けてよく、トップフィーダー、サイドフィーダー、液状添加装置等の原料投入口(原料供給口)を設けてよい。
例えば、メタクリル系樹脂組成物100質量%のうち90質量%以上の成分を最上流の第一原料供給口(例えば、トップフィード)から投入して、最上流の原料投入口におけるシューター内部の酸素濃度を8容量%以下に設定してもよい。また、メタクリル系樹脂組成物の残りの成分は、例えば、第一原料供給口よりも下流の第二原料供給口(例えば、サイドフィード)から供給してもよい。
酸素濃度の調節は、原料貯蔵ホッパー内を十分に窒素置換して、更に原料貯蔵ホッパーから押出機原料投入口までの、フィードライン中での空気の出入りがないように密閉した上で、窒素フィード量の調節、ガス抜き口の開度を調節することで可能である。
押出機の混練部のシリンダー温度は、溶融押出性及び生産性の観点から、220〜280℃の範囲内で設定されることが好ましい。混練部のシリンダー温度が前記温度範囲をとることで、より外観の優れた樹脂組成物を得ることができる。
ここで、「混練部」とは、ニーディングゾーンや溶融樹脂の送り方向が逆のスクリューセグメント(螺旋の巻き方向が逆のスクリューセグメント)を備える部分など、樹脂組成物に剪断がかかる部分を指す。混練部のシリンダー温度とは、混練部のシリンダー温度の平均設定温度を意味する。
得られる成形体の外観性の観点から、混練部のシリンダー温度は、原料搬送部のシリンダー温度よりも高く設定しておくことが好ましい。具体的には、混練部のシリンダー温度は、原料搬送部のシリンダー温度よりも5℃以上高いことが好ましく、より好ましくは10℃以上高い。混練部のシリンダー温度と原料搬送部のシリンダー温度との差の上限は、メタクリル系樹脂組成物の圧力が過度に高すぎたり低すぎたりしない範囲であれば特に制限されず、40℃以下であることが好ましく、より好ましくは30℃以下である。
混練物搬送部のシリンダー温度は、適宜設定することができ、特に限定されない。例えば、混練部のシリンダー温度と同じ温度とすることもでき、後述するダイヘッド部の樹脂温度と同じ温度とすることもできる。
ここで、「混練物搬送部」とは、混練部で混練された樹脂組成物を混練部からダイヘッド部まで搬送する部分を指し、混練物搬送部のシリンダー温度とは、混練物搬送部のシリンダー温度の平均設定温度を意味する。
押出機のスクリュー回転数(Ns)は、押出機中での滞留時間を抑制する観点から、50rpm以上800rpm以下であることが好ましい。二軸押出機を使用する場合は、混練性の観点から、スクリュー回転数(Ns)が100rpm以上600rpm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは150rpm以上600rpm以下、特に好ましくは200rpm以上600rpm以下である。
上記のように溶融混練して調製されたメタクリル系樹脂組成物を、下記に例示する押出条件を適宜用いて押出することによって、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を得ることができる。
押出機の吐出量(Q)は、押出機のサイズによって最適量は異なるが、押出機中での滞留時間を抑制及び生産性の観点から10kg/hr以上1000kg/hr以下であることが好ましい。二軸押出機を使用する場合は、混練性、押出機中での滞留時間抑制、生産性の観点から、吐出量(Q)が10kg/hr以上1000kg/hr以下であることがより好ましく、50kg/hr以上900kg/hr以下であることがさらに好ましく、とりわけ好ましくは100kg/hr以上900kg/hr以下、180kg/hr以上800kg/hr以下であることが特に好ましい。
押出機の吐出量(Q)とスクリュー回転数(Ns)との比(Q/Ns)は、色調及び熱安定性の観点から、溶融押出機内の樹脂が飢餓状態にならずに十分に充填される適正範囲に設定することが望ましい。具体的には、0.1〜50kg/(hr・rpm)であることが好ましい。二軸押出機を使用する場合は、Q/Nsは、0.1〜5kg/(hr・rpm)であることがより好ましく、0.2〜2kg/(hr・rpm)であることがさらに好ましく、0.4〜1.5kg/(hr・rpm)であることが特に好ましい。
耐熱ユニットを含むメタクリル系樹脂組成物は、耐熱ユニットを有しないメタクリル系樹脂組成物と比較して、いわゆるヤケ異物(炭化物)を生成しやすい傾向にある。当該炭化物は、溶融混練後にフィルターを通すことで除去することが可能である。
押出機内は、押出安定性の観点から、ある程度の圧力で保持される。しかし、樹脂組成物の連続生産のため長期にわたり高い樹脂圧力で運転した場合、フィルターで補足された炭化物が圧力により砕けて微細な異物となって樹脂組成物中に含有してしまうことがある。よって、微細異物の含有量を抑制する観点から、樹脂圧力を一定範囲とすることが好ましい。
樹脂圧力は、長期運転時に一度フィルターに捕集されたヤケ樹脂が粉砕されてフィルターを通過することを防ぐ観点から、12MPa以下に保つことが好ましく、より好ましくは11MPa以下、更に好ましくは10MPa以下である。押出機を介してペレットが得られる場合はペレットサイズの安定性の観点から、またシートやフィルムに製膜される場合は厚み精度の観点から、樹脂圧力を2MPa以上とすることが好ましく、より好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは6MPa以上である。
押出時に異物を除去するために使用するフィルターとしては、ポリマーフィルターを使用することができる。使用できるポリマーフィルターとしては、例えばデプスフィルター、プリーツフィルター(キャンドルフィルターとも称される)、バックフィルターなどが挙げられる。微細異物の含有量を抑制する観点から、使用するフィルターとして最適なものを選択することが好ましい。中でもプリーツフィルターは、樹脂圧力の増加率を抑制することができ、フィルターで補足された異物が高い樹脂圧力によって砕けて微細異物となることを抑制できるうえ、分解による樹脂の分子量低下も抑制できるため、好ましい。
以下、好適に使用されるプリーツフィルターについて詳細に説明する。
フィルターは、上記フィルタエレメントが所定のハウジングに(場合によっては複数個)格納されたユニットの形式で用いられる。フィルタエレメントの閉塞部は、ハウジング内、上流側に配置されている。フィルタユニット内に流入した溶融樹脂は、ハウジングと濾材表面の隙間に充填された後、濾材表面を通過して円筒状の支持体内部に流入し、フィルタエレメントの開口端からフィルタユニット外に流出する。
このプリーツ状の円筒型フィルタエレメントは、従来の円筒型フィルタエレメントと比較すると、その体積当たりの集塵面積を大きくすることができる。その結果、所要の集塵能力を維持しながら圧力損失を低く抑えることが可能であり、生産性を阻害しない。また、フィルタエレメントが占有する体積を小さくすることができるので、微小異物低減という効果だけでなく、フィルター装置自体を小型化することができ、製作コスト、設置コスト、操業コストなどを節減することもできる。
また、樹脂組成物の熱劣化を防止するためフィルター中での滞留時間を短くする目的で樹脂組成物の流量を上げると、フィルター入り口での樹脂圧力が高くなり、濾過精度よりも大きな異物が砕けて濾材を通過し易くなる。これを防止するために、上記圧力範囲で流量を制御することが好ましい。
上記フィルタエレメントの長さは、時間当たりの樹脂処理量により適宜選択可能であるが、300〜1200mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは300〜600mm、さらに好ましくは400〜600mmである。エレメント長さが300mm以上であると、濾過面積が小さ過ぎず、時間当たりの樹脂処理量が小さ過ぎないため、生産性を向上させ、また異物の含有量を低減することができる。エレメント長さが1200mm以下であると、フィルター中の滞留時間が長過ぎないので、樹脂組成物が熱劣化して異物を増加させることを防止することができる。
押出機のダイスの穴数は、特に限定されず、ダイスの穴径、樹脂組成物の吐出量(Q)その他の条件を考慮して適宜選択することができる。押出安定性の観点、得られるペレットサイズを均一にそろえる観点から、吐出量(Q)/穴数は、5kg/hr・個以上30kg/hr・個以下であることが好ましい。より好ましくは8kg/hr・個以上30kg/hr・個以下であり、更に好ましくは10kg/hr・個以上25kg/hr・個以下、特に好ましくは10kg/hr・個超25kg/hr・個以下である。
ダイスの穴径は、所望のペレットサイズとするために適宜必要なサイズのものを選べばよく、通常φ2.5mm〜φ6.5mmの範囲で適宜選択することができる。
押出機のダイヘッド部でのメタクリル系樹脂組成物の温度(以下、樹脂温度とも称する)は、[メタクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)+100℃]以上であることが好ましく、より好ましくはTg+110℃以上、更に好ましくはTg+120℃以上、とくに好ましくはTg+130℃以上である。上記樹脂温度であると、メタクリル系樹脂組成物の分散性が良好となり、成形体に成形した際に表面状態が良くなり外観が良好になる。特にフィルム状の成形体を製造する際には、ダイラインが軽減され、外観の良好なフィルムが得られる。具体的な樹脂温度としては、例えば250℃以上、さらに好ましくは260℃以上、特に好ましくは270℃以上である。また、樹脂の分解抑制の観点から、樹脂温度が310℃以下となるように適宜条件を設定することが好ましい。
本実施形態のペレットは、前述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする。
本実施形態のペレットは、メタクリル系樹脂組成物の製造の押出工程において、押出機に装備された、複数の穴を有するダイスを通してメタクリル系樹脂組成物を押出し、造粒することによって製造することができる。
本実施形態の成形体は、前述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする。
成形体としては、例えば、フィルムや射出成形体等の各種成形体が挙げられる。
本実施形態のフィルムの厚みは、光学フィルムとして用いる場合、5〜400μmの範囲内であることが好ましく、5〜200μmであることがより好ましい。厚みが5μm以上であれば、実用上十分な強度が確保でき、取り扱い時に容易に破断しにくい。また、厚みが400μm以下であれば、上述した位相差(Re、Rth)及び耐折強度において、良好なバランスとなる。
偏光子保護フィルムとして用いる場合、本実施形態のフィルムの厚みは、5〜100μmが好ましく、10〜80μmがより好ましく、10〜60μmがさらに好ましい。
透明プラスチック基板として用いる場合、本実施形態のフィルムの厚みは、20〜180μmが好ましく、20〜160μmがより好ましく、30〜160μmがさらに好ましい。
透明性の指標としては、全光線透過率を用いることができる。
本実施形態の成形体における全光線透過率は、用途に応じて適宜最適化すればよいが、透明性の求められる用途で使用される場合は、視認性の観点から、約100μm厚みにおける全光線透過率が80%以上であることが好ましい。より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは88%以上、特に好ましくは90%以上である。
全光線透過率は高い方が好ましいが、実用上は94%以下でも十分に視認性を確保することができる。
その場合、55μm厚において380nmの光線透過率は、10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下である。
また、同様に、55μm厚において280nmにおける光線透過率は、15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、更に好ましくは8%以下である。
本実施形態のフィルムに関する成形加工性は、例えば、フィルム巻き取り用のロールへの貼り付きにくさ等により評価することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により評価することができる。
本実施形態のフィルムに関する外観性は、例えば、気泡の有無、筋ムラの有無、シルバーストリークスの有無等により評価することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により評価することができる。
外観性の指標の一つである気泡の有無は、例えば、バレル設定温度290℃でフィルムを、例えば、約100μm厚で製膜した際のフィルム100cm2当たりに含まれる長径が100μm以上の気泡の個数を、光学顕微鏡を用いて算出して、その個数で評価することができる。
この場合、フィルム表面100cm2当たりの気泡の個数は、5個未満であることが好ましく、より好ましくは3個未満、更に好ましくは2個未満である。
本実施形態の成形体は、前述の本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を用いて成形することによって、製造することができる。
また、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機等の混練機を用いて、メタクリル系樹脂(組成物)を混練製造した後、冷却、粉砕し、さらにトランスファー成形、射出成形、圧縮成形等により成形を行う方法も、フィルム等の成形体の製造方法の一例として挙げることができる。
成形体の用途としては、例えば、家庭用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、テールランプ、メーターカバー、ヘッドアップディスプレイ用部材、ヘッドランプ、導光棒、レンズ等の自動車部品用途、ハウジング用途、衛生陶器代替等のサニタリー用途や、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル等が挙げられ、また、太陽電池に用いられる透明基盤等に好適に用いることができる。その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバー等にも用いることができる。また、他の樹脂の改質材として用いることもできる。
後述する実施例及び比較例において使用した原料について下記に示す。
[[メタクリル系樹脂を構成するモノマー]]
・メタクリル酸メチル(MMA)
旭化成ケミカルズ(株)社製(重合禁止剤として中外貿易(株)社製2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール(2,4−di−methyl−6−tert−butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・N−フェニルマレイミド(N−PMI):株式会社日本触媒製
・N−シクロヘキシルマレイミド(N−CMI):株式会社日本触媒製
・2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA):Combi Bloks社製
・メタキシレン:三井化学株式会社製
・トルエン
・n−オクチルメルカプタン(n−octylmercaptan、NOM):日油(株)社製、連鎖移動剤として使用。
・パーヘキサC−75(EB):日油株式会社製、純度75%(エチルベンゼン25%入り)、重合開始剤として使用。
・リン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物:堺化学製、Phoslex A−18、環化縮合の触媒として使用。
(a−1)アデカスタブAO−412S:株式会社ADEKA社製
(a−2)Irganox1010:BASF社製
(a−3)Irgafos168:BASF社製
(b−1)下記一般式(I)の化合物:R1、R2はt−ブチル基。:BASF社製
(c−2)LA−46:株式会社ADEKA社製
(c−3)チヌビン460:BASF社製
(c−4)チヌビン477:BASF社製
(d−1)スミプラストレッド(登録商標) H3G(C.I.SolventRed135):住化ケムテックス社製
後述の製造例で製造したメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を、下記の装置及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH−H 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量が遅く溶出する。
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/分、内部標準として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:3.0mV/分
カラム温度:40℃
サンプル:0.02gのメタクリル系樹脂のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製、PMMA Calibration Kit M−M−10)を用いた。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂の溶出時間に対するRI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)を求めた。
重合により得られたメタクリル系樹脂について、NMR及びFT−IRの測定を実施し、単量体単位及び構造単位の組成を確認した。
NMR:日本電子株式会社製、JNM−ECA500
FT−IR:日本分光社製、IR−410、ATR法(Dura Scope(ATR結晶:ダイヤモンド/ZnSe)、分解能:4cm−1)を用いた。
下記装置及び条件により、後述の製造例にて調製したメタクリル系樹脂(具体的には再沈可溶分)について、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートを内部標準物質して、GC/MS測定を行うことによって、単量体の2量体及び3量体等を含む成分の合計量を算出した。
次いで、GC/MS測定用溶液を下記の手順に従って作製した。樹脂試料約0.5gを10mLのクロロホルムに溶解させ、60mLのメタノールから再沈殿を実施した。不溶分をろ過して取り除き、クロロホルム・メタノール可溶分を窒素ブロー下60℃で90分間加熱して乾固させた。濃縮可溶分に上記標準液1mLを添加し、これを溶解させて、GC/MS測定用溶液を作製した。
その後、下記装置及び条件にて、上記GC/MS測定用溶液1μLを用いて、GC/MSの測定を実施した。
下記装置及び条件では、使用する単量体の二量体及び三量体のピークは、保持時間22分から32分までの間に観測されることを、別のGC/MS測定により予め確認し、そして、これに基づいて、上記GC/MS測定用溶液のGC/MS測定において保持時間22分から32分までの間に観測されたピークの総面積値を、単量体の2量体及び3量体等を含む成分に由来するものとした。こうして、上記GC/MS測定用溶液中に含まれる成分の合計量を算出した。
なお、熱安定剤等の添加剤に由来するピークが上記保持時間の範囲に現れた場合には、添加剤由来のピークの分の面積値を総面積値から差し引いて、成分の合計量の計算を行った。
Agilent社製、GC/MS GC−7890A、MSD−5975C
・測定条件
カラム:HP−5MS(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)
キャリアガス:ヘリウム(1mL/分)
検出器:MSD
イオン化法:EI
オーブン温度:50℃(5分ホールド)〜(10℃/分で昇温)〜325℃(10分ホールド)
注入口温度:325℃
トランスファー温度:325℃
質量スペクトル範囲:20〜800
スプリット比:10:1
注入量:1μL
内部標準物質:オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート
検出されたオクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートのピーク面積値を算出した後、樹脂試料中の、成分検出領域に検出されたピーク総面積値と比較し、成分の合計量[mg]を概算した。計算式を下記に示す。
(成分の合計量[mg])=(オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートの添加量0.25[mg])×(成分のピーク総面積値)/オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナートのピーク面積値)
この成分の合計量を再沈処理した後の樹脂試料の量で割り、成分の合計の含有量(質量%)を算出した。
なお、GC/MSのトータルイオンクロマトグラムは、オーブン温度が高くなるにつれて、ベースラインが緩やかに上昇することがある。ベースラインの傾きが大きくなった箇所については、正確なピーク面積値を算出するため、ベースラインの傾きを考慮して、積分を数回に分けて行い、そして、これらの積分値を合算して「成分のピーク総面積値」とした。
上記(I)の分子量測定装置を用いて、分子量500以上1万以下の成分による分画より、重量平均分子量1万以下の成分の含有量とした。また、同様に、重量平均分子量1万超5万以下の成分の含有量を求めた。さらに、重量平均分子量1万超5万以下の成分の含有量(a)に対する、重量平均分子量5万超の成分の含有量(b)の割合(b/a)を算出した。
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物について、熱分析装置(Perkin Elmer社製、Diamond DSC)を用いて、ASTM−D−3418に準拠して測定を行い、中点法によりガラス転移温度(℃)を算出した。評価結果を表1に示す。
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物を、押出機(プラスチック工学研究所製、φ32mm単軸押出機)(L/D=32、ベント数:1個)を、設定温度:270℃、スクリュー回転数15rpm、ロール回転速度1m/分、ロール温度:(ガラス転移温度−20℃)から(ガラス転移温度+15℃)まで範囲の条件で用いて、約100μm厚のシートに製膜した。
シートは、設定温度を変化させることが可能な第一温調ロール(材質:S45C、ハードクロムメッキ処理、表面粗度0.2S、鏡面仕上げ)を介して、第二ロールに巻き取った。ここで、第一温調ロール及び第二ロールの外径はともに15cmとし、第一温調ロールと第二ロールとの間の距離(両ロールの中心間距離)は24cmとした。第一温調ロールの中心の高さと第二ロールの中心の高さとは同じに設定した。
図2に、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物のロールへの貼り付き防止性の評価における、製膜時の第一温調ロール及び第二ロールの周辺の様子を示す。
図2に示す通り、第1温調ロールから第二ロールに向かうシートは、第1温調ロールの最下端から所定距離だけロールの外周に沿って貼り付き、ロールから離反し、その後、ほぼ同径の第二ロールに巻き取られる。図中の実線は、本試験における定常時のフィルムを示しており、ここで、第1温調ロールの最下端と第1温調ロールの断面中心と上記離反点とがなす角度をθ(図2参照)としたとき、定常時における角度θは本試験においては通常40°である。一方、図中の破線は、貼付き時のフィルムを示しており、本試験では、上記角度θが90°である時を貼付き時とする。
このとき、上記角度θが90°に達した時点での第1温調ロールの設定温度を貼付開始温度として、(貼付開始温度−ガラス転移温度)の差温(℃)を観察した。
そして、差温が+7℃以上のものを「○」、差温が+7℃未満のものを「×」として、ロールへの貼り付き防止性の評価の指標とした。(貼付開始温度−ガラス転移温度)の差が大きいほど、ロールへの貼り付き防止性が良好であると評価した。評価結果を表1に示す。
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物のペレット約1.5gを、プレス成形機を用いて270℃、100kg/cm2で7分間プレスし、表1に示す厚みのフィルムを得た。
得られた各厚みのフィルムを用いて、測定装置として島津製作所社製、UV−3100PCを用いてJIS Z8722に準拠して、測定し、380nm及び390nmの透過率を算出した。なお、各厚みのフィルムは、樹脂投入開始から50kgの時点でサンプリングしたペレットを用いて作製した。
また、下記の実施例において、樹脂投入開始から50kg、100kg、200kg、400kg、600kg、800kg、1000kgの時点でサンプリングしたペレットを用いて調製した樹脂組成物で作製した厚さ55μmのフィルムを用いて、上記と同様にして380nmの透過率を算出した。また、50〜1000kgの380nmの透過率の最大値と最小値との差を算出した。380nmの透過率の最大値と最小値との差が小さいほど、一定の透過率のフィルムが得られ、生産安定性に優れている。
結果を表1に示す。
さらに、特に、実施例3、比較例2、比較例3においては、樹脂投入開始から50kgの時点でサンプリングしたペレットを用いて調製した樹脂組成物で作製した厚さ55μmのフィルムを用いて、350〜400nmの範囲において連続的に透過率を算出した。
結果を図3に示す。
(4−a)5%重量減少時の温度
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物を用いて、下記装置及び条件で、測定を行った。そして、樹脂組成物の重量が5%減少する時の温度を算出し、熱分解開始温度(5%重量減少時の温度)(℃)とした。評価結果を表1に示す。
測定装置:差動型示差熱天秤 Thermo plus EVO II TG8120、株式会社リガク製
サンプル量:約10mg
測定雰囲気:窒素(100mL/分)
測定条件:100℃で5分保持し、10℃/分で400℃まで昇温し、5%重量が減じる点を熱分解開始温度(5%重量減少温度)とした。
メタクリル系樹脂組成物について、下記設定条件で重量測定を行い、約290℃で30分間保持した際の重量減少割合(%)を算出した。評価結果を表1に示す。
測定装置:差動型示差熱天秤 Thermo plus EVO II TG8120(株式会社リガク製)
サンプル量:約10mg
測定雰囲気:窒素(100mL/分)
測定条件:50℃で2分保持し、20℃/分で200℃まで昇温し、20℃/分で250℃まで昇温し、10℃/分で設定温度284℃まで昇温し、284℃で60分間保持し、保持開始から30分間経過後の重量減少割合(%)を算出した。なお、設定温度284℃としたときの測定温度は約290℃となっていた。
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物を用いて、JIS Z 8801に準拠して、8メッシュ(2.36mm)の目開きの篩上に残ったペレット重量割合(%)を測定した。
後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物を、射出成形機(EC−100SX、東芝機械株式会社製)により、成形温度260℃、金型温度60℃の条件にて、厚さ2mm×幅100mm×長さ100mmの試験片を作製した。射出成形のサイクル時間(射出時間+冷却時間)は、45秒とした。
成形が安定してから16ショット目から25ショット目までの10ショット分の試験片を用いて、それぞれの試験片についてb*の測定を行った。得られたb*の平均値を求め、測定された値と平均値との最大差異を求め、下記式に従ってb*の変化度を算出した。
{(b*の平均値との差異が最大であるb*の測定値)−(b*の平均値)}/(b*の平均値)×100(%)
なお、b*は、色差計(有限会社東京電色社製、TC−8600A、光源:10−C)を用いて、JIS K 7105に準拠して測定した。
ISO13468−1規格に準拠して、後述の実施例及び比較例で得られたメタクリル系樹脂組成物を用いて作製した3mm厚試験片を用いて、全光線透過率の測定を行い、透明性の指標とした。評価結果を表1に示す。
上記評価において、フィルム用途において優れていると判断されるものを「◎」、フィルム用途に適していると判断されるものを「○」、いずれかで不良が見られ、フィルム用途に適していないと判断されるものを「×」とした。評価結果を表1に示す。
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1.25m3の反応釜に、432.3kgのメタクリル酸メチル(MMA)、33.0kgのN−フェニルマレイミド(N−PMI)、84.7kgのN−シクロヘキシルマレイミド(N−CMI)、450.0kgのメタキシレン、及びn−オクチルメルカプタン0.28kgを仕込み、溶解して原料溶液を調製した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら125℃まで昇温した。
別途、0.23kgのパーヘキサC−75と1.82kgのメタキシレンとを混合してなる開始剤フィード液を調製した。
原料溶液が127℃に到達したところで、開始剤フィード液(重合開始剤混合液)のフィード(添加)を(1)〜(6)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0〜0.5時間:フィード速度1.00kg/時
(2)0.5〜1.0時間:フィード速度0.50kg/時
(3)1.0〜2.0時間:フィード速度0.42kg/時
(4)2.0〜3.0時間:フィード速度0.35kg/時
(5)3.0〜4.0時間:フィード速度0.14kg/時
(6)4.0〜7.0時間:フィード速度0.13kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに1時間反応を継続し、開始剤の添加開始時から8時間後まで重合反応を行った。
重合反応中、内温は127±2℃で制御した。得られた重合液の重合転化率を測定したところ、MMA単位:93.7質量%、N−PMI単位:95.5質量%、N−CMI単位:91.2質量%であった。総じて、重合転化率は93%であった。
上記で得られた重合液を、4フォアベント、1バックベント付φ42mm脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。
得られたペレットの重量平均分子量は15万、ガラス転移温度は135℃であった。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:79質量%、N−PMI単位:6質量%、N−CMI単位:15質量%であった。
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した200Lの反応釜に、41.0kgのメタクリル酸メチル(MMA)、10.0kgの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)(Combi Bloks社製)、50.0kgのトルエンを仕込み、原料溶液を調製した。これに窒素を通じつつ、撹拌し液温度を107℃まで昇温した。
別途、0.05kgのパーヘキサC−75と0.36kgのトルエンを混合した開始剤フィード液を調製した。
原料溶液温度が107℃に到達したところで、開始剤フィード液のフィードを(1)〜(4)のプロファイルにて開始した。
(1)0.0〜0.5時間:フィード速度0.20kg/時
(2)0.5〜1.0時間:フィード速度0.10kg/時
(3)1.0〜3.0時間:フィード速度0.075kg/時
(4)3.0〜7.0時間:フィード速度0.028kg/時
合計7時間かけて開始剤をフィードした(B時間=7時間)後、さらに1時間反応させて、合計8時間かけて重合反応を完結させた。
重合反応中、内温は107±2℃で制御した。得られた重合体溶液に、51gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物を加え、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。
得られた重合液を4フォアベント、1バックベント付φ42mm二軸脱揮押出機を用いて、140rpm、樹脂量換算で10kg/時で環化縮合反応及び、脱揮処理を行い、樹脂ペレットを得た。得られた樹脂の組成は、MMA単位:82質量%、ラクトン環構造単位:17質量%、MHMA単位:1質量%であり、重量平均分子量は13万、ガラス転移温度は129℃であった。
パドル翼を備え付けた撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した200Lの反応釜に、69.1kgのメタクリル酸メチル(MMA)、5.32kgのスチレン(St)、9.57kgのメタクリル酸(MAA)、56.0kgのメタキシレン、及びn−オクチルメルカプタン0.105kgを仕込み、原料溶液を調製した。これに窒素を通じつつ、撹拌しながら117℃まで昇温した。
別途、0.029kgのPH25Bと0.10kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液Aと、0.0098kgのPH25Bと0.10kgのメタキシレンを混合した開始剤フィード液Bを調整した。
原料溶液温度が117℃に達したところで、フィード速度0.774kg/時で開始剤フィード液Aのフィードを10分間行い、2時間反応させた。その後、フィード速度0.66kg/時で開始剤フィード液Bのフィードを10分間行い(B時間=2.33時間)、さらに9時間反応を継続し、合計11時間20分間、重合反応を実施して、反応を完結させた。
得られた重合液は270℃設定の高温真空室に供給し、未反応物及び溶媒を除去し、6員環酸無水物の生成を行った。
この生成共重合体のNMRによる組成分析の結果、MMA単位:78質量%、St単位:7質量%、MAA単位:4質量%、6員環酸無水物単位:11質量%であった。
このようにして得た共重合体ペレットの0.5kgを内容積5リットルのオートクレーブに仕込み、次いでN,N−ジメチルホルムアミド3.0kgを投入し、撹拌して溶解した。6員環酸無水物単位量に対して2当量のアンモニアを含む28%アンモニア水を仕込み、150℃で2時間反応させた。
反応液を抜き出し、n−ヘキサン中に投入してポリマーを析出させた。このポリマーを、さらに10torrの揮発炉内で250℃、2時間処理した。
最終的に得られた共重合体は、微黄色透明であり、組成は元素分析による窒素含有量定量、NMR、IRから、MMA単位:78質量%、St単位:7質量%、MAA単位:4質量%、グルタルイミド系構造単位:11質量%であった。上記操作を繰り返し、評価に必要なペレットを準備した。
得られたペレットのガラス転移温度は127℃であった。
製造例1で得られた樹脂100質量部に対し、AO−412S:0.1質量部及びIrganox1010:0.1質量部、(b−1)の化合物:0.2質量部、LA−F70:0.6質量部をブレンドし、東芝機械株式会社製二軸押出機TEM−48SS(スクリュー径φ48mm、L/D=32、バレル設定温度250℃)にて、吐出量:250kg/時、スクリュー回転数:330rpmにて溶融混練を行い、押出機に装備した富士フィルター社製のプリーツフィルター(エレメント数量:4本、エレメント径:φ60mm×500mm、ろ過精度:15μm)を通して異物を除去し、16穴ダイス(ダイス設定温度:280℃)を通して押出を実施した。ペレット状のメタクリル系樹脂組成物(以下、樹脂組成物ペレットと称する)を得た。なお、ダイ穴から出る樹脂の温度を樹脂温度計で測定し、樹脂温度として表1に示した(樹脂温度:280℃)。
ペレットの評価は、樹脂投入開始から50kg、100kg、200kg、400kg、600kg、800kg、1000kgの時点でサンプリングしたペレットを用いて評価を実施した。サンプルリング時の経過時間は、樹脂投入開始からサンプリング時の量を吐出量で割ることにより計算することができる。実施例1においては、吐出量250kg/hrのため、サンプリング時の経過時間はそれぞれ0.2hr、0.4hr、0.8hr、1.6hr、2.4hr、3.2hr、4.0hrに対応する。
このようにして得られた樹脂組成物ペレット、及びそれを用いて成形したフィルムを用いて、上記物性評価を行った。
得られたペレットの重量平均分子量は15万、ガラス転移温度は134℃であった。
また、NMRより求めた組成は、MMA単位:79質量%、N−PMI単位:6質量%、N−CMI単位:15質量%であった。
メタクリル系樹脂及び添加剤の配合量、溶融混練、押出等の条件の詳細、及び評価結果を、表1に示す。
実施例1では、生産時の安定性に優れ、得られた樹脂の色相ばらつきも小さく、生産安定性に優れることがわかる。
表1に記載の樹脂及び添加剤、溶融混練、押出等の条件を用いて、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット及びフィルムを得て、上記物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
製造例1で得られた樹脂100質量部のうち、樹脂85質量部をフィーダ1に投入した(原料A)。
一方で、樹脂15質量部に対し、AO−412S:0.1質量部及びIrganox1010:0.1質量部、(b−1)の化合物:0.5質量部、(c−3)の化合物:1.0質量部を、ヘンシェルミキサーでブレンドしたものをフィーダ2に投入した(原料B)。
東芝機械株式会社製二軸押出機TEM−48SS(スクリュー径φ48mm、L/D=32、バレル設定温度250℃)にて、フィーダ1及びフィーダ2から同一のホッパーからトップフィードにて樹脂及び添加剤を所望の比率で投入し、吐出量:250kg/時、スクリュー回転数:330rpmにて溶融混練を行い、押出機に装備した富士フィルター社製のプリーツフィルター(エレメント数量:4本、エレメント径:φ60mm×500mm、ろ過精度:15μm)を通して異物を除去し、16穴ダイス(ダイス設定温度:280℃)を通して押出を実施した。ペレット状のメタクリル系樹脂組成物(以下、樹脂組成物ペレットと称する)を得た。なお、ダイ穴から出る樹脂の温度を樹脂温度計で測定し、樹脂温度として表1に示した(樹脂温度:280℃)。
ペレットの評価は、樹脂投入開始から50kg、100kg、200kg、400kg、600kg、800kg、1000kgの時点でサンプリングしたペレットを用いて評価を実施した。サンプルリング時の経過時間は、樹脂投入開始からサンプリング時の量を吐出量で割ることにより計算することができる。実施例8においては、吐出量250kg/hrのため、サンプリング時の経過時間はそれぞれ0.2hr、0.4hr、0.8hr、1.6hr、2.4hr、3.2hr、4.0hrに対応する。
このようにして得られた樹脂組成物ペレット、及びそれを用いて成形したフィルムを用いて、上記物性評価を行った。
メタクリル系樹脂及び添加剤の配合量、溶融混練、押出等の条件の詳細、及び評価結果を、表1に示す。
表1に記載の樹脂及び添加剤、溶融混練、押出等の条件を用いて、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット及びフィルムを得て、上記物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
表1に記載の樹脂及び添加剤、溶融混練、押出等の条件を用いて、実施例1と同様にして樹脂組成物ペレット及びフィルムを得て、上記物性評価を実施した。評価結果を表1に示す。
なお、樹脂投入開始から50kgの時点でサンプリングしたペレットを用いて調製した樹脂組成物で作製した厚さ55μmのフィルムを用いたときの395nmの透過率T(395)は、実施例3では9.5%、比較例2では54.1%、比較例3では51.2%であった。
本発明は、家庭用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、テールランプ、メーターカバー、ヘッドランプ、導光棒、レンズ等の自動車部品用途、ハウジング用途、衛生陶器代替等のサニタリー用途や、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ、ヘッドアップディスプレイ等のディスプレイに用いられる導光板、拡散板、偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板、視野角制御フィルム、液晶光学補償フィルム等の位相差フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ、タッチパネル等の透明基盤、加飾フィルム等や太陽電池に用いられる透明基盤や、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバー等として、産業上の利用可能性がある。
Claims (10)
- メタクリル酸エステル単量体単位(A)を50質量%以上含むメタクリル系樹脂を含み、下記条件(1)〜(4)を満たすことを特徴とする、メタクリル系樹脂組成物。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が、6.5万〜30万、
(2)390nmの透過率T(390)が25%以下、
(3)380nmの透過率T(380)が10%以下、
(4)390nmの透過率T(390)と380nmの透過率T(380)とが下記式の関係を満たす
1.01≦T(390)/T(380)≦8 - 前記メタクリル系樹脂が、メタクリル酸エステル単量体単位(A):50〜99質量%と、主鎖に環構造を有する構造単位(B):1〜30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0〜20質量%とを含む、請求項1に記載のメタクリル系樹脂組成物。
- 前記メタクリル系樹脂が、メタクリル酸エステル単量体単位(A):50〜97質量%と、主鎖に環構造を有する構造単位(B):3〜30質量%と、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0〜20質量%とを含む、請求項1又は2に記載のメタクリル系樹脂組成物。
- GC/MSの測定を実施したときに、保持時間22〜32分に検出される成分の合計の含有量が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、0.01〜0.40質量%である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
- ガラス転移温度が105℃以上である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物。
- 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形体。
- 厚みが5〜400μmのフィルムであることを特徴とする、請求項7に記載の成形体。
- 射出成形体であることを特徴とする、請求項7に記載の成形体。
- 車両用部材であることを特徴とする、請求項7に記載の成形体。
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