JP2019077793A - 手塗り用速硬化性ウレタン防水材組成物、キットおよび施工方法 - Google Patents

手塗り用速硬化性ウレタン防水材組成物、キットおよび施工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】環境に優しく、十分な施工性を確保しながら速硬化性にも優れた、JIS A 6021(建築用塗膜防水材)のウレタンゴム系高伸長形に該当する、手塗り用ウレタン防水材組成物を提供する。【解決手段】本発明の手塗り用ウレタン防水材組成物は、ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤と、硬化促進剤とからなり、芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンを含み、硬化促進剤が酸無水物を含み、硬化促進剤を主剤にまたは主剤と硬化剤を混合するときに添加する。【選択図】なし

Description

本発明は、手塗り用速硬化性ウレタン防水材組成物、ウレタン防水材組成物キットおよびウレタン防水材組成物の施工方法に関する。
ウレタン防水材は、不定形状および狭小部分の施工に適していることより、新築工事あるいは改修工事を問わず、マンション等集合住宅のベランダ、バルコニー、開放廊下や比較的大面積の屋上の平場部分、立面部分、パラペット、架台周り等に使用されている。
一般的なウレタン防水材は、2液の液状物を攪拌機で混合した後、コテ、ヘラ、ローラー、刷毛等で手塗り施工するものであり、攪拌機で混合した後少なくとも30分程度の使用可能時間(以下、「可使時間」と称す。)が必要とされている。可使時間については、23℃において2液混合後から、粘度が6万mPa・sに到達するまでの時間とするのが一般的である。
手塗り用2液型ウレタン防水材は、冬季の施工と夏季の施工では外気温が大幅に異なるため、夏季の30℃前後での施工に適した夏用配合と、冬季の5℃前後の施工に適した冬用配合が用意されているのが一般的であり、平場用防水材においては、各季節の施工温度において、可使時間が30分以上となるよう工夫されている。塗布作業において可使時間は長いほど好ましいが、一般的には可使時間を長くしようとすると硬化性が悪くなり、次工程を施工するために塗膜上に作業員が乗れるまでに時間(以下、「施工可能時間」と称す。)も長くなってしまう。通常の作業では、ウレタン防水材を夕方に塗布し終わり、翌朝には施工可能状態となることが望まれており、施工可能時間は年間を通して冬期でも18時間程度以内に調整できることが好ましいとされている。
現在汎用化されている手塗り用2液型ウレタン防水材は、トリレンジイソシアナート(以下、「TDI」と称す。)とポリオキシプロピレンポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを主剤とし、一方の硬化剤中に、活性水素成分として比較的反応が穏やかな芳香族ポリアミンである、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(以下、「MOCA」と称す。)を主成分として用い、低反応性の2級ポリオールであるポリオキシプロピレンポリオールを併用している。その際、硬化剤中には促進剤として、水分よりもポリオールとの反応を選択的に促進することで発泡防止効果があるとされるカルボン酸鉛を用いるのが一般的であり、このような防水材はMOCA架橋型防水材と称されている。
MOCA架橋型防水材は反応性が穏やかであるため、特に可使時間が必要とされる夏季の施工性に優れており、また比較的機械的強度も良好であるため、今でも汎用防水材として用いられている。一方、MOCA架橋型防水材は低温時の硬化性が悪いため、冬季は促進剤の鉛化合物を多目に配合するのが一般的であるが、低温硬化性の改善には限界があり、さらに鉛化合物を多く配合することで耐熱劣化が促進されるという問題点も発現する。
また、2−エチルヘキサン酸のようなカルボン酸を促進剤として用いれば、MOCAとイソシアナートとの反応を促進するが、併用するポリオールとの反応は促進しないため、低温硬化性を改善するには限界がある。
なお、MOCA架橋型防水材には環境面での大きな問題もある。硬化剤に用いられているMOCAは労働安全衛生法で特定化学物質第2類物質に指定されており、硬化剤には上限値の1%を超えて使用されているため、特定化学物質等障害予防規則(以下、「特化則」と称す。)該当品となってしまう。また、MOCAは、IARC(国際がん研究機関)による発がん性評価でグループ1(ヒトに対して発がん性を示す)に分類されている。
また、主剤に用いられているTDIも特定化学物質に指定されており、汎用品の主剤には遊離TDIが上限値の1%を超えて存在するため、主剤も特化則該当品となってしまい、製造時および施工時に種々の制約を受けることとなる。さらに、促進剤として用いるカルボン酸鉛化合物は、世界的に使用が厳しく制限されている材料であり、化学物質排出把握管理法(通称「化管法」)の特定第1種指定化学物質に指定されており、環境面からは使用を避けたい材料である。
手塗り用2液型ウレタン防水材において、TDIプレポリマーに対し、MOCAより反応性が高く、環境面でも安全性が高いジエチルトルエンジアミン(以下、「DETDA」と称す。)を用いるDETDA架橋型防水材と称されるタイプも商品化されている。DETDA架橋型防水材は低温時にも硬化性が良いという特徴を持っているが、夏季の可使時間を確保するためには可塑剤を多く配合する必要がある。ただし、可塑剤を多く使用し過ぎるとトップコートとの接着性低下や可塑剤の移行性増大といった問題が発生するため、使用量には限界がある。特殊なTDIを使用することにより可使時間を確保する方法(特許文献1)も提案されているが、まだ汎用化されるには至っていない。なお、DETDAは水分よりもかなり反応性が高いため、DETDAを主反応成分とする塗膜は、カルボン酸鉛なしでも発泡現象を抑制する効果がMOCA架橋型防水材より高いという長所がある。
また、DETDA架橋型防水材はMOCA架橋型防水材とは異なり、冬季に硬化促進剤を用いることにより硬化性をさらに良くすることはできるが、可使時間はやはり短くなるため施工性は悪くなってしまう。なお、硬化促進剤は硬化剤側に配合するのが一般的であるが、第3成分として施工現場で添加することも行われている。施工現場で添加する場合は、施工時の気温に合わせて添加量を調整することができるという利便性はあるが、添加量が少量であるため配合ミスが発生しやすいという問題や保管・管理が難しいという問題もある。
一方、可使時間にあまり悪影響を与えることなく硬化速度を向上させる技術として酸無水物を使用する方法(特許文献2)が提案されているが、十分な速硬化性を発現させるためには相当量の酸無水物の添加が必要となり、その結果塗膜の機械強度や耐熱性、耐アルカリ性などの耐久性が低下してしまうという問題が生ずることが分かった。
なお、ウレタン防水材の塗膜性能は、JIS−A−6021において機械的強度のみならず、耐候性、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性などについても詳細が規定されており、このJIS規格を満たしたものでないと、官公庁などには採用されないのは勿論、商品として認められないのが現状である。
また、一般的なウレタン防水工法では、コンクリートなどの無機質系下地に対し、接着性を確保するためのプライマーを施し、プライマーが硬化した後にウレタン防水層の施工を行い、その後耐候性を確保するためにトップコートを塗布するのが一般的である。
また、比較的大面積の無機質系下地に対しては、各種通気緩衝シートを施工し、その上にウレタン防水材を塗布し、その後トップコートを塗布するという通気緩衝工法が普及している。
いずれの工法においても、ウレタン防水層は塗膜の欠陥を補い均一性を確保するために2回に分けて塗布し、最終的に2〜3mmの膜厚にするのが一般的であるが、ウレタン防水層を1回で1〜2mm施工した後にトップコートを塗布するという簡易工法もベランダ、庇、幅木といった施工部位に対してある程度普及している。
現状手塗り用ウレタン防水材を1層塗布すると、当日中には硬化しないため、翌日に2層目のウレタン防水材の塗布あるいはトップコートの塗布を行うのが通例であり、完成までの工期が長くなってしまうのが手塗り用ウレタン防水材の欠点とされている。さらに近年、気候の変動が激しくなる傾向があり、ウレタン防水材塗布後数時間で降雨に見舞われ未硬化のウレタン防水層が損傷を受けるという問題も多発している。
特許第3114557号公報 特開昭58−134160号公報
最近、建設労働者の不足が顕著となってきており、防水業界においてもより効率的で省力化のできる防水工法および防水材料が望まれている。特に、ウレタン防水材においては、小面積の施工でさえ3〜5日の工期が必要となり、天候が不順であればさらに大幅に工期が延長されてしまうという大きな課題が残されている。
さらに、夜間に降雨が予想される場合は日中が好天であってもウレタン防水材を塗布することができず、また無理して降雨前に施工したため降雨により塗膜が損傷してしまい、補修に多大な時間と労力を費やしてしまうという問題もある。
そこで、環境に優しく、十分な施工性を確保しながら速硬化性にも優れ、更に塗膜の機械強度、耐熱性、耐アルカリ性などの耐久物性も良好な手塗り用ウレタン防水材が望まれている。
本発明者らはこれらの問題点を鑑み鋭意検討を重ねた結果、イソシアナート基末端プレポリマーを主剤とし硬化剤にDETDAを含むウレタン防水材において、潜在性を有する硬化促進剤である酸無水物を使用することにより、十分な可使時間を確保しながら速硬化性にも優れる防水材組成物が得られるが、十分な速硬化性を確保するためには相当量の酸無水物が必要であり、その結果得られる塗膜の機械強度や耐熱性、耐アルカリ性などの耐久性が低下することが判明した。そこで硬化剤にDETDAより反応が速いと思われる脂肪族または脂環族ポリアミンを併用したところ、防水材に必要な機械強度と耐久性を有し、年間を通して適度な可使時間と良好な速硬化性を併せ持つ防水材組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本件第1発明は、ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーおよび硬化促進剤として酸無水物を含む主剤と、芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤とからなる手塗り用ウレタン防水材組成物であって、芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンを含むことを特徴とする。
本件第2発明は、ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤パーツと、ジエチルトルエンジアミンを含む芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤パーツと、酸無水物を含む硬化促進剤パーツとからなる手塗り用ウレタン防水材組成物キットである。
本件第3発明は、トリレンジイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤とからなる手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法であって、芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンを含み、硬化促進剤として酸無水物を含む第3成分を主剤にまたは主剤と硬化剤を混合するときに添加することを特徴とする。
本発明は、次の態様を含む。
[1]ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーおよび硬化促進剤として酸無水物を含む主剤と、芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤とからなる手塗り用ウレタン防水材組成物であって、芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンを含む、手塗り用ウレタン防水材組成物。
[2]芳香族ポリアミンの50当量%以上がジエチルトルエンジアミンであり、芳香族ポリアミンと脂肪族または脂環族ポリアミンの当量比が60/40〜98/2である、[1]に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物。
[3]脂肪族または脂環族ポリアミンのアミノ基数が3以上である、[1]または[2]に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物。
[4]ポリイソシアナートがイソホロンジイソシアナートまたはトリレンジイソシアナートを含む、[1]〜[3]のいずれか1つに記載の手塗り用ウレタン防水材組成物。
[5]ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤パーツと、ジエチルトルエンジアミンを含む芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤パーツと、酸無水物を含む硬化促進剤パーツとからなる手塗り用ウレタン防水材組成物キット。
[6]芳香族ポリアミンの50当量%以上がジエチルトルエンジアミンであり、芳香族ポリアミンと脂肪族または脂環族ポリアミンの当量比が60/40〜98/2である、[5]に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物キット。
[7]脂肪族または脂環族ポリアミンのアミノ基数が3以上である、[5]または[6]に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物キット。
[8]ポリイソシアナートがイソホロンジイソシアナートまたはトリレンジイソシアナートを含む、[5]〜[7]のいずれか1つに記載の手塗り用ウレタン防水材組成物キット。
[9]ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤とからなる手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法であって、芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンを含み、硬化促進剤として酸無水物を含む第3成分を主剤にまたは主剤と硬化剤を混合するときに添加することを特徴とする、手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法。
[10]芳香族ポリアミンの50当量%以上がジエチルトルエンジアミンであり、芳香族ポリアミンと脂肪族または脂環族ポリアミンの当量比が60/40〜98/2である、[9]に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法。
[11]脂肪族または脂環族ポリアミンのアミノ基数が3以上である、[9]または[10]に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法。
[12]ポリイソシアナートがイソホロンジイソシアナートまたはトリレンジイソシアナートを含む、[9]〜[11]のいずれか1つに記載の手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法。
本発明の手塗り用ウレタン防水材組成物は、潜在性を有する酸無水物硬化促進剤の効果により常温のみならず低温においても速硬化性を有しているため、工期短縮および施工の効率化を可能とする。また、汎用手塗り用2液型ウレタン防水材組成物と同等程度の可使時間を有するため施工性が良好である。さらに硬化剤に芳香族ポリアミンと脂肪族または脂環族ポリアミンを併用することにより耐熱性、耐アルカリ性などの耐久物性にも優れるため、汎用性を有する手塗り用速硬化性ウレタン防水材組成物となりうる。例えば常温においては3〜6時間程度で硬化(施工可能)させることができるため、一日の間に2回のウレタン防水材を塗布することやウレタン防水材塗布後トップコートを塗布することができる。また、従来であれば夕方以降に降雨が予想される場合にはウレタン防水材の施工は日中が好天であっても見合わせざるを得なかったが、本願の防水材を用いれば午前中の防水材施工はもとより、場合によっては当日中にトップコートの施工まで完了することもできる。また、冬季の低温時においても18時間程度以内で硬化(施工可能)させることができるため、翌日には確実に次工程を実施することができる。
(主剤ポリイソシアナート)
主剤に用いるポリイソシアナートとしてはトリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ノルボルナンジイソシアナート、水添化キシリレンジイソシアナート、水添加ジフェニルメタンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナートなどの脂肪族または脂環族ポリイソシアナートなどが挙げられる。なかでも比較的反応性が低く可使時間を確保しやすいイソホロンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナートなどが好ましく用いられる。なお、これらのポリイソシアナートは単独で用いても二種以上を併用してもよい。
(主剤に用いるポリオール)
主剤に用いるポリオールとしては、通常ウレタン防水材の主剤に用いられるポリオールを用いることができるが、低粘度で施工性のよい主剤とするためには、分子量が300〜8000のポリオキシプロピレンポリオールやポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオールといったポリエーテル系ポリオールを用いることが好ましい。また、ポリエステル系などその他の高分子量ポリオールも一部であれば使用することができる。
さらに、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールといった短鎖ポリオールも使用することができる。
また、ポリオールとしては、ジオールのみでは耐熱性や耐アルカリ性が不十分となる傾向があり、トリオール以上の官能基数のポリオールが80当量%以上となると可使時間や伸び率を確保することが難しくなるため、トリオール以上の官能基数のポリオールを3〜80当量%の範囲で用いることが好ましい。
(主剤製造方法)
次に、主剤の製造方法であるが、NCO基とOH基との比率が1.5〜2.2の範囲となるようにポリイソシアナートとポリオールを配合することが好ましく、70〜110℃で3〜10時間程度加温することで製造することができる。また場合によっては、溶剤や可塑剤を一部配合することもできる。
最終的なNCO含有量は、1.5〜6.0質量%であることが好ましい。NCO含有量が1.5質量%未満ではウレタン防水材に必要な物性が得られにくく、6.0質量%超となると可使時間を確保することが難しくなる。
(硬化剤に用いる芳香族ポリアミン)
硬化剤は、芳香族ジアミンであるDETDAを含み、速硬化性を達成するためには、DETDAの使用量は芳香族ポリアミンの50当量%超であることが好ましく、60当量%以上であることがより好ましい。DETDAには、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミンなどの異性体が存在するが、本願ではいずれの異性体を用いてもよく、またそれらの混合物を用いてもよく、工業製品としては例えばEthacure(登録商標)100(2,4−異性体/2,6−異性体の質量比80/20)などが入手できる。
DETDAと併用できる芳香族ポリアミンとしては、DETDAと同様に高反応性であるクミアイ化学工業株式会社製のキュアハードMED(4,4′−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、日本化薬株式会社製のカヤハード(登録商標)AA(4,4′−メチレンビス(2−エチルアニリン)、日本化薬株式会社製のカヤボンド(登録商標)C−300(4,4′−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、日本化薬株式会社製のカヤボンド(登録商標)C−400(4,4′−メチレンビス(2,6−ジiso−プロピルアニリン)などが挙げられるが、結晶性が高いか溶解性が悪い場合が多いため、芳香族ポリアミン中の50当量%以下にすることが好ましい。
また、低反応性のポリアミンとしては、アルベマール社製のEthacure(登録商標)420(4,4′−メチレンビス(N−sec−ブチルアニリン))、アルベマール社製のEthacure(登録商標)300(ジメチルチオトルエンジアミン)、クミアイ化学工業株式会社製のエラスマー(登録商標)650P(ポリテトラメチレングリコールビス(p−アミノベンゾエート))、クミアイ化学工業株式会社製のポレアSL−100A(ポリ(テトラメチレン/3−メチルテトラメチレンエーテル)グリコールビス(4−アミノベンゾエート))などが挙げられるが、使用量が多くなると速硬化性が損なわれる傾向となるため、芳香族ポリアミン中の50当量%以下にすることが好ましい。その中で、Ethacure(登録商標)420を併用した場合は、可使時間を延長させる効果の割に硬化性を損ねないという特徴があり、酸無水物を硬化促進剤として用いた場合に、より可使時間が長くとれて速硬化性となるため、併用する芳香族ポリアミンとしてより好ましい。
(硬化剤に用いる脂肪族または脂環族ポリアミン)
硬化剤には脂肪族または脂環族ポリアミンを含み、施工性と速硬化性および塗膜の機械強度と耐久性を確保するためには、芳香族ポリアミンと脂肪族または脂環族ポリアミン当量比が60/40〜98/2であることが好ましく、65/35〜95/5であることがより好ましく、さらには70/30〜92/8であることが最も好ましい。脂肪族または脂環族ポリアミンが40当量%超では可使時間の確保が難しくなり、2当量%未満では十分な塗膜強度や耐久性が得られない。
脂肪族または脂環族ポリアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチルジアミン、1,3−ペンタンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ハンツマン社製のJEFFAMINE(登録商標)D−2000、JEFFAMINE(登録商標)D−400、JEFFAMINE(登録商標)D−230などのジアミン類、ジエチレントリアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、ハンツマン社製のJEFFAMINE(登録商標)T−3000、JEFFAMINE(登録商標)T−403などのトリアミン類、トリエチルテトラミン、テトラエチルペンタミンなどのポリアミンが挙げられるが、十分な可使時間と速硬化性および塗膜の強度や耐久性を確保するためにはノルボルナンジアミン、ハンツマン社製のJEFFAMINE(登録商標)D−230、ジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、ハンツマン社製のJEFFAMINE(登録商標)T−403などのジアミン類またはトリアミン類が好ましく、さらにジエチレントリアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、ハンツマン社製のJEFFAMINE(登録商標)T−403などのトリアミン類が最も好ましい。
(可塑剤)
また、本願は可使時間を確保するために可塑剤を用いる必要がある。可塑剤なしでは常温はもとより低温においても作業に必要とされる可使時間を確保することは難しい。可塑剤の使用量は、主剤中のプレポリマー成分100質量部に対し、15〜90質量部であることが好ましい。15質量部未満では可使時間の確保が難しくなり、90質量部超では速硬化性を保持することおよびJIS規格に適した物性を保持することが難しくなる。さらに、良好な作業性と物性のためには、可塑剤量が20〜80質量部であることがより好ましい。可塑剤は主に硬化剤に配合することが好ましいが、一部主剤側に配合することもできる。
可塑剤としては、ウレタン樹脂に一般的に配合できる可塑剤を使用することができる。例として、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)などのフタル酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類、トリメリット酸エステル類、セバシン酸エステル類、エポキシ脂肪酸エステル類、グリコールエステル類、動植物油系脂肪酸エステル類、石油・鉱物油系可塑剤、アルキレンオキサイド重合系可塑剤などが挙げられる。中でも、引火点が200℃以上である、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)は長期的にも重量減少を起こし難く、芳香族ポリエステルであり加水分解も起こし難いため、好ましく使用することができる。なお、硬化剤中に溶剤を使用することもできるが、施工後の揮発により収縮を起こす危険性や無機充填剤を沈降しやすくする傾向があり、環境面での問題もあるため、5質量%以内で用いることが好ましく、使用しないことがより好ましい。また、硬化剤側に可塑剤を配合することで、無機充填剤を多く配合することができ、経済性のある防水材とすることができる。
(無機充填剤)
さらに、本願では無機系充填剤も必要となる。無機系充填剤を配合することで、可使時間を有した速硬化性防水材をJIS規格に適合した物性にすることができる。充填剤は、硬化剤中に配合することが好ましいが、一部主剤側にも配合することができる。無機充填剤の配合量は主剤中のプレポリマー成分100質量部に対し、20〜160質量部であることが好ましい。充填剤が20質量部以下では補強効果が不十分になりやすく、160質量部超では樹脂分が少なくなることによる物性低下や高粘度化が起こってしまう。
充填剤としては、炭酸カルシウムが挙げられ、製造時の分散性が良好であり、配合量を多くしても比較的低粘度の状態を保つことも容易であり、コストダウン効果も高い。炭酸カルシウムには、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、コロイダル炭酸カルシウム、各種表面処理炭酸カルシウムなどあるが、いずれの炭酸カルシウムも使用することができる。また、表面処理コロイダル炭酸カルシウムを配合することで適度の揺変性が得られるため、立上り用防水材を製造することもできる。その他の無機充填材としては、シリカ系、カオリンクレー系、タルク系、ベントナイト系などが使用できるが、使用量が多くなると増粘性が激しくなり、また水分量の管理が難しいという問題があるため、炭酸カルシウムが主成分であることが好ましい。また、有機系充填剤も一部であれば使用することはできる。
(硬化剤ポリオール)
次に、硬化剤中の活性水素成分としてのポリオールであるが、ポリオールはDETDAよりもかなり反応性が遅く、しかも酸系硬化促進剤により硬化促進されないため、本願では特に必要とはしないが、可使時間の調整や粘度調整、湿潤調整、物性調整、接着性向上などのために一部使用することはできる。速硬化性を保持するためにはポリオールの使用量は30当量%以下とすることが好ましく、20当量%以下であることがより好ましい。
使用できるポリオールとしては、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ポリエステルポリオールといった比較的高分子量ポリオールや、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリンといった短鎖ポリオールも使用することができる。
(酸無水物)
本願では、酸無水物を用いる必要がある。酸無水物そのものには硬化促進効果はないが、酸無水物と水、アミノ基、水酸基とが付加反応することにより発生するカルボン酸が触媒活性を示すと思われる(潜在性触媒)。
また、酸無水物とアミノ基、水、水酸基との付加反応は適度の反応速度を有するようであり、触媒活性体は徐々に系内に生成していくため、可使時間を短縮する影響は少ないと考えられる。一方、付加反応完結後は、付加物が大きな触媒活性を示すため、数時間後となる硬化時間に対しては悪影響を及ぼさずに速硬化性を示すと推察される。その結果、従来のカルボン酸系の促進剤より十分な可使時間を確保した上で、同等レベルかそれ以上の速硬化性を示すものと推察される。
カルボン酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、テトラプロペニル無水コハク酸、オクテニルコハク酸無水物、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。カルボン酸無水物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ウレタン防水材は施工現場で主剤と硬化剤を混合して塗布するため、常温で固体の酸無水物は混合液中に溶けきらずに結晶化する虞がある。酸無水物が結晶化した場合十分な硬化促進効果を得られない可能性があるため、常温で液状の酸無水物が好ましい。常温で液状の酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、日立化成株式会社製のHN−2200(3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸と4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸の混合物)、新日本理化株式会社製のリカシッド(登録商標)HH(ヘキサヒドロ無水フタル酸)、新日本理化株式会社製のリカシッド(登録商標)MH−700(3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30の混合物)、新日本理化株式会社製のリカシッド(登録商標)MH(4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸)、新日本理化株式会社製のリカシッド(登録商標)HNA−100(メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物とビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物の混合物)、日立化成株式会社製のMHAC−P(メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸)、三洋化成工業株式会社製のDSA(テトラプロペニル無水コハク酸)、新日本理化株式会社製のリカシッド(登録商標)OSA(オクテニルコハク酸無水物)などが挙げられ、その中でも特に日立化成株式会社製のHN−2200(3−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸と4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸の混合物)、日立化成株式会社製のMHAC−P(メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸)、新日本理化株式会社製のリカシッド(登録商標)MH−700(3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30の混合物)、三洋化成工業株式会社製のDSA(テトラプロペニル無水コハク酸)などがより好ましい。
酸無水物の使用量は、主剤100gに対して0.05〜10.0質量%使用することが望ましく、0.1〜5.0質量%使用することが更に望ましい。酸無水物の使用量が少なすぎると速硬化性が十分に得られず、一方多すぎれば十分な可使時間を確保できない。
また、硬化促進剤は硬化剤中に配合するのが一般的であるが、本願ではあらかじめ酸無水物を硬化剤に配合することは除外される。あらかじめ硬化剤中に酸無水物を配合した場合には、酸無水物と水分、アミノ基、水酸基などの付加反応により酸無水物が開環してしまうため潜在性を示さずに、通常のカルボン酸類と同様に硬化性を速くすると同時に可使時間も短くしてしまう。従って、本願においては、イソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤パーツと、芳香族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤パーツと、酸無水物を含む硬化促進剤パーツからなるキットを施工現場で混合する方法および主剤側にあらかじめ酸無水物を添加する方法に限られる。なお、キットを施工現場で混合する方法として、先に硬化剤パーツに硬化促進剤パーツを添加した後、速やかに主剤パーツを添加混合する方法も含まれる。
さらに検討を進めた結果、主剤側に硬化促進剤をあらかじめ添加した場合は主剤の貯蔵安定性に問題が生じる場合が多いが、本願の酸無水物では主剤との貯蔵安定性に問題がなく、貯蔵後の促進効果にも問題がないことが分かった。そのため、本願の酸無水物を主剤側に配合する方法は、施工現場で第3成分としての少量の酸無水物を計量し添加するという煩雑な作業が省略でき、酸無水物の搬送・保管・管理を省くことができるため、より好ましい方法となる。
(併用硬化促進剤)
本願では、有機第2錫系化合物、3級アミン、カルボン酸金属塩、カルボン酸などが硬化促進剤として併用できる。有機第2錫系化合物としては、例えばジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ2−エチルへキサノエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプタイド、ジブチル錫ビスアセチルアセトネート、ジブチル錫オキシラウレート、ジオクチル錫ジネオデカネート、ジブチル錫ビスブチルマレート、ジオクチル錫2−エチルヘキシルマレートなどが挙げられ、中でもジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレートが好ましい。有機第2錫系化合物は硬化剤中に0.001〜0.1質量%使用することが好ましい。
3級アミンとしては、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、N−エチルモルホリン、ビス(2−モルホリノエチル)エーテル、ジアザビシクロウンデセンなどの一般的な3級アミンを使用することができるが、特殊な3級アミンであるイミダゾール化合物が好ましく、イミダゾール化合物としては、例えば1,2−ジメチルイミダゾール、1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールのような1位と2位に置換基を有する化合物や、1−メチルイミダゾール、1−アリルイミダゾールのような1位に置換基を有する化合物が使用できる。中でも、1位と2位に置換基を有するイミダゾール化合物が好ましい。3級アミンは、硬化剤中に0.01〜2.0質量%使用することが好ましい。
また、一般的にウレタン化硬化促進剤であるカルボン酸金属塩も使用することができる。カルボン酸金属塩としては、例えば2−エチルヘキサン酸、ネオデカン酸、ナフテン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、樹脂酸の鉛塩、亜鉛塩、ビスマス塩、ジルジルコニウム塩、錫塩、銅塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などが挙げられ、カルボン酸金属塩は硬化剤中に0.1〜4.0質量%使用することが好ましい。
カルボン酸としては、例えばプロピオン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ナフテン酸などが挙げられ、中でも2−エチルヘキサン酸が好ましい。カルボン酸は、硬化剤中に0.05〜2.0質量%使用することが望ましく、その一部または全量を主剤側に配合しても構わない。
(主剤NCO基/硬化剤アミノ基比)
主剤と硬化剤の混合においては、主剤中のNCO基と硬化剤中の活性水素成分であるアミノ基との比率であるNCO基/アミノ基が0.8〜1.5の範囲にすることが好ましい。0.8以下になると硬化物の高分子量化が不十分となり物性低下が顕著となり、1.5を超えると活性水素成分が不十分なことにより物性低下や硬化不十分となる。
(その他添加剤)
その他、硬化剤には、湿潤剤、消泡剤、顔料、耐候性付与剤などの添加剤類を必要に応じて配合することができる。
(主剤/硬化剤 配合比)
主剤と硬化剤の配合比は特に限定はされないが、質量比で1/1〜1/3の範囲であることが好ましく、1/1〜1/2であることがより好ましい。
(防水工法)
また、本発明のウレタン防水材は、コンクリート等の無機系下地に対し直接塗布することはできない。無機系下地の場合はウレタン防水材とは接着しないため、下地の水分をある程度遮蔽し接着性を確保することのできるプライマーを塗布した後に、施工することができる。また改修時を含め、既存ウレタン防水層の上に場合によっては仲介プライマーを施し施工することができる。また、無機系下地に対し通気緩衝シート、塩ビシート等高分子系シート、ゴムシート、不織布シートをプライマー、接着剤、機械固定、置き敷き等で固定した上に施工することができる。さらに、金属系下地の場合も直接本願のウレタン防水材を塗布しても接着性は確保できないため、専用のプライマーを塗布した後に塗布することができる。
本発明は、アスファルト系防水層の改修を目的とはしておらず、コンクリート等の無機下地、金属系下地、高分子系樹脂下地、ゴム下地の防水および保護を目的としたものである。また、本発明のウレタン防水材は日光が直接当たるような部分に使用する場合はトップコートを塗布することが原則となる。
原材料
以下の実施例および比較例で用いた原材料は、次のとおりである。
(ポリイソシアナート)
イソホロンジイソシアナート: VESTANAT(登録商標)IPDI、イソホロンジイソシアナート単体、NCO含有量37.8質量%、NCO官能基数約2.0、エボニック・ジャパン株式会社製
コロネート(登録商標)T−80: 2,4−トリレンジイソシアナート/2,6−トリレンジイソシアナート=80/20(質量比)の混合物、NCO含有量48.3質量%、東ソー株式会社製
(ポリオール)
サンニックスPP−2000: ポリオキシプロピレンジオール、平均分子量2000、OH価56.1mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
サンニックスGH−3000: ポリオキシプロピレントリオール、平均分子量3000、OH価:56.1mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
サンニックスGH−5000: ポリオキシプロピレントリオール、平均分子量5000、OH価:33.7mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製
(溶剤)
MC−2000ソルベント: ノルマルパラフィン、イソパラフィン混合物、三協化学株式会社製
(芳香族ポリアミン)
DETDA: エタキュア100、ジエチルトルエンジアミン、アルベマール日本株式会社製
Ethacure(登録商標)420: 4,4′−メチレンビス(N−sec−ブチルアニリン)、芳香族二級ジアミン、アルベマール社製
(脂肪族または脂環族ポリアミン)
ヘキサメチレンジアミン: HMDA、ヘキサメチレンジアミン、東レ株式会社製
ノルボルナンジアミン: NBDA、ノルボルナンジアミン、2,5−(2,6)ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、三井化学株式会社製
JEFFAMINE(登録商標)D−230:ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、平均分子量230、ハンツマン社製
ジエチレントリアミン: DETA、ジエチレントリアミン、ハンツマン社製
トリス(2−アミノエチル)アミン: TAEA、トリス(2−アミノエチル)アミン、東京化成工業株式会社製
JEFFAMINE(登録商標)T−403: トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン、平均分子量440、ハンツマン社製
(脂肪族モノアミン)
2−エチルヘキシルアミン: 2−エチルヘキシルアミン、東京化成工業株式会社製
(無機充填剤)
炭酸カルシウム: NS#100、炭酸カルシウム、日東粉化工業株式会社製
(可塑剤)
DINP: サンソサイザー(登録商標)DINP、ジイソノニルフタレート、新日本理化株式会社製
(添加剤)
添加剤類: 楠本化成株式会社製
(促進剤)
ジオクチル錫ジラウレート: KS−1200A−1,共同薬品株式会社製
HN−2200:3−または4−メチル−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、日立化成株式会社製
2−エチルヘキサン酸: オクチル酸、東洋合成工業株式会社製
MHAC−P: メチル−3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、日立化成株式会社製
リカシッド(登録商標)MH−700: 4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30(質量比)の混合物、新日本理化株式会社製
DSA: テトラプロペニル無水コハク酸、三洋化成工業株式会社製
主剤の調製
表1〜11の配合に従って、四つ口フラスコにポリオールと溶剤を仕込み、次いでポリイソシアナート化合物を仕込んだ。その後攪拌しながら90〜100℃で3〜7時間反応させ各主剤を得た。
硬化剤の調製
表1〜11の配合に従って、金属容器に液物を仕込み、攪拌機(ディゾルバー羽根)で低速混合し均一にした後、炭酸カルシウムを配合し1500rpmで15分間混合して各硬化剤を得た。
比較例1(表1)
硬化促進剤および脂肪族または脂環族ポリアミンを使用しない例である。良好な塗膜物性を示しかつ十分な可使時間を確保しているものの、硬化性が悪く23℃、5℃いずれの条件でも翌日に次工程の施工ができなかった。
比較例2〜4(表1)
硬化促進剤として2−エチルヘキサン酸0.20質量%を硬化剤に添加した比較例2は、23℃での施工可能時間は10時間、5℃での施工可能時間は23時間となり、23℃での翌日施工は可能であったが、当日2層施工および5℃での翌日施工いずれも困難であった。比較例3、4は潜在性硬化促進剤である酸無水物HN−2200を主剤に各々0.50、1.50質量%添加し脂肪族または脂環族ポリアミンは使用しない例である。0.50質量%添加した比較例3は、23℃での施工可能時間は9時間、5℃での施工可能時間は20時間となり、23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも困難であった。HN−2200を1.50質量%に増量した比較例4は、23℃での施工可能時間は4時間、5℃での施工可能時間は16時間となり、23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工がいずれも可能となったが、塗膜の引張強さ、耐久性が不十分であった。
実施例1〜3(表2)
比較例4の硬化剤に脂肪族トリアミンであるJEFFAMINE(登録商標)T−403を併用した例である。DETDAに対してJEFFAMINE(登録商標)T−403を各々90/10、85/15、80/20(当量比)併用した実施例1、2、3は、比較例4に比べて23℃、5℃での施工可能時間はやや遅くなるものの、23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも可能であった。また、塗膜の引張強さ、耐久性はポリアミンを併用しない比較例4に比べて顕著に改善され塗膜防水層として十分な性能を示した。
実施例4(表2)
実施例2と同じ硬化剤配合で主剤NCO基/硬化剤アミノ基比を1.10から1.00に代えた例である。実施例2に比べてやや可使時間は短くなるものの、23℃、5℃での施工可能時間は早くなり、23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも十分に可能であった。また、塗膜の引張強さ、耐久性は実施例2に比べてさらに改善され塗膜防水層として十分な性能を示した。
実施例5、6(表3)
実施例5、6は実施例4のJEFFAMINE(登録商標)T−403を、おのおのジエチレントリアミンまたはトリス(2−アミノエチル)アミンに代えた例である。実施例5、6の可使時間はそれぞれ31分、41分であり、硬化性は23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも可能であった。また、塗膜の引張強さ、耐久性は実施例4と同様に比較例4に比べて顕著に改善され塗膜防水層として十分な性能を示した。
実施例7〜9(表4)
実施例7〜9は実施例4の脂肪族トリアミンであるJEFFAMINE(登録商標)T−403を、脂肪族または脂環族ジアミンであるJEFFAMINE(登録商標)D−230、ヘキサメチレンジアミンまたはノルボルナンジアミンに代えた例である。実施例7〜9の可使時間はいずれも30分以上を確保し、硬化性は23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも可能であった。また、塗膜の引張強さ、耐久性は実施例4に比べるとやや劣るが、ポリアミンを併用しない比較例4に比べて明らかに改善され塗膜防水層として十分な性能を示した。
比較例5(表4)
比較例5は実施例4の脂肪族トリアミンであるJEFFAMINE(登録商標)T−403を、脂肪族モノアミンである2−エチルヘキシルアミンに代えた例である。可使時間は31分を確保し、硬化性は23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも可能であった。しかしながら、塗膜物性、耐久性は実施例4に比べると明らかに劣り、ポリアミンを併用しない比較例4に比べても改善傾向は見られず、塗膜防水層として不適当であった。
実施例10〜12(表5)
実施例10〜12は実施例4の酸無水物促進剤であるHN−2200を、MHAC−P、リカシッド(登録商標)MH−700またはDSAに代えた例である。実施例10〜12の可使時間はいずれも30分以上を確保し、硬化性は23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも可能であった。また、塗膜の引張強さ、耐久性は塗膜防水層として十分な性能を示した。
実施例13(表6)
実施例13は硬化促進剤のHN−2200を主剤・硬化剤混合時に添加した例である。可使時間・硬化性・塗膜物性・耐久性は、同じ配合でHN−2200を主剤に添加した実施例2と同等であり塗膜防水層として十分な性能を示した。
比較例6(表6)
比較例6は硬化促進剤のHN−2200を硬化剤に0.20質量%配合した例である。HN−2200を主剤に1.50質量%添加した実施例2と比較すると、可使時間が20分と半分になっているにもかかわらず、23℃または5℃での施工可能時間は大幅に遅くなり、23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも不可能であった。
比較例7(表6)
比較例7は汎用の硬化促進剤である2−エチルヘキサン酸を硬化剤に0.20質量%配合した例である。潜在性硬化促進剤であるHN−2200を主剤に1.50質量%添加した実施例2と比較すると、可使時間が35分と短くなっているにもかかわらず、23℃または5℃での施工可能時間は大幅に遅くなり、23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも不可能であった。
比較例8、9(表7)
主剤のポリイソシアナートにTDI(コロネート(登録商標)T−80)を使用した例である。硬化促進剤および脂肪族または脂環族ポリアミンを使用しない比較例8は良好な塗膜物性を示しかつ十分な可使時間を確保しているものの、硬化性が悪く23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも困難であった。比較例9は潜在性硬化促進剤である酸無水物HN−2200を主剤に0.50質量%添加し脂肪族または脂環族ポリアミンを使用していない例である。23℃での施工可能時間は6時間、5℃での施工可能時間は15時間となり、23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工がいずれも可能となったが、塗膜の耐久性が不十分であった。
実施例14、15(表7)
比較例9の硬化剤に脂肪族トリアミンであるJEFFAMINE(登録商標)T−403を併用した例である。DETDAに対してJEFFAMINE(登録商標)T−403を各々95/5、90/10(当量比)併用した実施例14、15の可使時間はいずれも30分以上を確保し、硬化性は23℃での当日2回施工および5℃での翌日施工いずれも可能であった。また、塗膜の耐久性はポリアミンを併用しない比較例9に比べて顕著に改善され塗膜防水層として十分な性能を示した。
なお、各評価項目の測定方法は次のとおりである。
[NCO(質量%)]
200mLの三角フラスコに主剤約1gを精秤し、これに0.5Nジ−n−ブチルアミン(トルエン溶液)10mL、トルエン10mLおよび適量のブロムフェノールブルーを加えた後メタノール約100mLを加え溶解する。この混合液を0.25N塩酸溶液で滴定する。NCO(質量%)は以下の式によって求められる。
NCO(質量%)=(ブランク滴定値−0.5N塩酸溶液滴定値)×4.202×0.25N塩酸溶液のファクター×0.25÷サンプル重量
[可使時間(分)]
23℃、湿度50%の空気循環型環境試験室内において、主剤と硬化剤を所定の割合で攪拌・混合開始から、BH型粘度計で2rpmにおける粘度が60,000mPa・sになるまでの時間を測定した。
[施工可能時間(時間)]
23℃または5℃、湿度50%の空気循環式型環境試験室内において、主剤と硬化剤を所定の割合で攪拌・混合した防水材を2kg/m2塗布し、完全には硬化していないが、塗膜上を靴で歩行が可能となり、次工程の作業を開始できる時間を測定した。
[引張強さ(N/mm2)]
養生条件を23℃で7日とした試験片について、JIS A 6021に基づいて測定を行った(JIS A 6021のウレタンゴム系高伸長形(旧1類)では引張強さは2.3N/mm2以上)。
[破断時の伸び率(%)]
養生条件を23℃で7日とした試験片について、JIS A 6021に基づいて測定を行った(JIS A 6021のウレタンゴム系高伸長形(旧1類)では破断時の伸び率は450%以上)。
[引裂き強さ(N/mm)]
養生条件を23℃で7日とした試験片について、JIS A 6021に基づいて測定を行った(JIS A 6021のウレタンゴム系高伸長形(旧1類)では引裂き強さは14N/mm以上)。
[加熱処理後の引張強さ比(%)]
80℃の乾燥機に28日(JIS A 6021では80℃で7日)入れて加熱処理した試験片について、JIS A 6021に基づいて行い、処理前に対する引張強さ比(%)を求めた。
[アルカリ処理後の引張強さ比(%)]
処理条件を60℃、4週間(JIS A 6021では23℃で1週間)に変えた以外は、JIS A 6021に基づいて行い、処理前に対する引張強さ比(%)を求めた。
Figure 2019077793
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本発明の組成物は、手塗り用速硬化性ウレタン防水材として、建築物の屋上やマンションなどの集合住宅のベランダなどの防水に好適に使用することができる。

Claims (12)

  1. ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーおよび硬化促進剤として酸無水物を含む主剤と、芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤とからなる手塗り用ウレタン防水材組成物であって、芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンを含む、手塗り用ウレタン防水材組成物。
  2. 芳香族ポリアミンの50当量%以上がジエチルトルエンジアミンであり、芳香族ポリアミンと脂肪族または脂環族ポリアミンの当量比が60/40〜98/2である、請求項1に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物。
  3. 脂肪族または脂環族ポリアミンのアミノ基数が3以上である、請求項1または2に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物。
  4. ポリイソシアナートがイソホロンジイソシアナートまたはトリレンジイソシアナートを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物。
  5. ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤パーツと、ジエチルトルエンジアミンを含む芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤パーツと、酸無水物を含む硬化促進剤パーツとからなる手塗り用ウレタン防水材組成物キット。
  6. 芳香族ポリアミンの50当量%以上がジエチルトルエンジアミンであり、芳香族ポリアミンと脂肪族または脂環族ポリアミンの当量比が60/40〜98/2である、請求項5に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物キット。
  7. 脂肪族または脂環族ポリアミンのアミノ基数が3以上である、請求項5または6に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物キット。
  8. ポリイソシアナートがイソホロンジイソシアナートまたはトリレンジイソシアナートを含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物キット。
  9. ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーを含む主剤と、芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤とからなる手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法であって、芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンを含み、硬化促進剤として酸無水物を含む第3成分を主剤にまたは主剤と硬化剤を混合するときに添加することを特徴とする、手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法。
  10. 芳香族ポリアミンの50当量%以上がジエチルトルエンジアミンであり、芳香族ポリアミンと脂肪族または脂環族ポリアミンの当量比が60/40〜98/2である、請求項9に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法。
  11. 脂肪族または脂環族ポリアミンのアミノ基数が3以上である、請求項9または10に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法。
  12. ポリイソシアナートがイソホロンジイソシアナートまたはトリレンジイソシアナートを含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の手塗り用ウレタン防水材組成物の施工方法。
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