JP2019069597A - ガスバリア性樹脂積層体及びその製造方法 - Google Patents

ガスバリア性樹脂積層体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガスバリア性が高湿度の条件でも低下しないガスバリア性樹脂を用いた包装材料用に好適なガスバリア性樹脂積層体を提供する。【解決手段】プラスチックフィルム層、並びに一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)【化1】(式中の符号は明細書中に記載の通り)で示されるモノマー構造単位を含むアリルアルコール共重合体であって、(A)一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマー構造単位のモル比l、m及びnが、次式:30≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦80の関係を満足するアリルアルコール共重合体を含むガスバリア性樹脂層を有するガスバリア性樹脂積層体、その製造方法、及びその積層体を用いてなる包装用材料。【選択図】なし

Description

本発明は、食品、医薬品、電子材料などの包装材料に用いられ、特定の構造を有するアリルアルコール共重合体を含むガスバリア性樹脂積層体、及びその製造方法に関する。
包装材料について、近年、食品の賞味期限延長や鮮度維持、医薬品の品質劣化防止など、内容物の品質向上を目的として、酸素や水蒸気などの気体の侵入を防ぐ、バリア性への要求が高まっている。プラスチックフィルム表面にアルミニウム金属を蒸着させた金属蒸着フィルムは、酸素及び水蒸気バリア性の両方に優れたバリアフィルムであるが、不透明で内容物を視認できない問題があり、透明性のバリアフィルムが求められている。
透明な蒸着フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのプラスチックフィルムに、アルミナやシリカなどの金属酸化物などを蒸着した透明蒸着フィルムが開発されている。透明蒸着フィルムの酸素及び水蒸気バリア性は、金属蒸着フィルムには劣るものの、包装材料用途として十分な性能であり、かつ透明性があり内容物を視認することができる。しかし、酸素及び水蒸気バリア性を発現している金属酸化物蒸着膜が割れやすく、輸送中の衝撃などで蒸着膜が割れてピンホールやクラックが発生し、酸素及び水蒸気バリア性が低下しやすい問題があった。また、金属酸化物膜を真空蒸着やスパッタリングによって製膜するため、製造コストが高くなる問題もあった。
これに対して、水蒸気バリア性が高いプラスチックフィルムに酸素バリア性の樹脂をコートしてガスバリア性樹脂積層体とする、コート型のバリアフィルムが従来から知られている。これにより、バリアフィルムとしての柔軟性、透明性(内容物の視認性)を確保しつつ、透明蒸着フィルムに比べて安価に、酸素及び水蒸気バリア性を有するバリアフィルムが得られる。
従来から、酸素バリア性樹脂層の材料として、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)が利用されてきたが、焼却して廃棄する際にダイオキシンが発生するなど、環境への影響が問題となっていた。この問題に対して、塩素を含有しないポリビニルアルコール(PVA)樹脂が使用されている。PVA樹脂の水溶液をプラスチックフィルムに塗布、乾燥することでバリア性積層体が得られるが、このとき蒸発潜熱の大きい水を溶媒とするため、乾燥し難く、製造コストが上がる問題があった。
また、PVA樹脂は、高湿度下の条件では酸素バリア性が大幅に低下する欠点があり、したがって、水分活性の高い食品には使用できない等の問題もあった。
そこで、高湿度下の条件での酸素バリア性の低下が少ない樹脂として、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH樹脂)が知られている。EVOH樹脂は、水とアルコールの混合溶媒に溶解することによって、PVA樹脂と同様に、プラスチックフィルムに塗布、乾燥することでバリア性積層体を得ることができる。しかし、PVA樹脂と同様に水を溶媒に含むため、乾燥が遅くなり製造コストが上がりやすいことが問題であった。また、EVOH樹脂は溶液の安定性が低く、溶液の保存時に析出したり、塗布後の乾燥時に部分的に析出して塗布膜の品質が安定しないという問題があった。このためEVOH樹脂では、コーティングによらず、ポリプロピレン(PP)などの他のプラスチックとの共押出によって積層体が製造されている。
しかし、共押出で成形する場合、EVOH樹脂層と他のプラスチック層との間に接着性樹脂層が必要であり、このために特殊な成形装置で成形する必要がある。この結果、成形にかかるコストが上がることが問題であった。
高湿度下の条件でもバリア性が低下しないガスバリア材として、特許文献1(特開平10−330508号公報)には、メタリルアルコール系重合体よりなるガスバリア材が開示されている。また、特許文献2(特開平10−264318号公報)には、アリルアルコール系重合体の溶液を基材に塗布し、乾燥してなる積層体が開示されている。
これらの先行技術文献において、メタリルアルコール系重合体や、アリルアルコール系重合体は、対応するアクリル酸もしくはアクリル酸エステルを、ラジカル重合やアニオン重合させた後、金属水素化物などによって還元して得るとされている。しかし、これらの重合方法では主鎖に分岐が生じやすく、分岐を起点とした熱劣化が起こりやすいことが問題であった。また、一般に金属水素化物は高価であり、製造コストが上がりやすいことも問題であった。
特許文献1及び特許文献2にはアリルアルコール系樹脂を用いた積層体あるいはガスバリア材が開示されているが、実施例の記載はポリメタリルアルコールやポリアリルアルコール、もしくはスチレンとメタリルアルコールの共重合体であり、エチレンやプロピレンとの共重合体は全く開示されておらず、ポリオレフィン系樹脂との密着性が不十分であり密着性向上のためにアンカーコート剤の使用を必要とし製造コストが上がる原因となっていた。また、具体的に開示されているポリメタリルアルコール、ポリアリルアルコール、もしくはスチレンとメタリルアルコールの共重合体のガラス転移点(Tg)が高く(特許文献1は45〜95℃、特許文献2は75℃)、柔軟性が低いという問題があった。
このため、高湿度下の条件でもバリア性が低下せず、塗布及び乾燥が容易であり、ポリオレフィン系樹脂との密着性が良好な、柔軟性の高い酸素バリア性の透明樹脂が求められていた。
特開平10−330508号公報 特開平10−264318号公報
本発明の課題は、包装材料として使用することのできるガスバリア性を有し、そのガスバリア性が高湿度下の条件でも低下しないアリルアルコール共重合体を含む樹脂をガスバリア層とするガスバリア性樹脂積層体を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するアリルアルコール共重合体を含むガスバリア性樹脂層からなる積層体とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のガスバリア性樹脂積層体、ガスバリア性樹脂積層体の製造方法、及び包装用材料に関する。
[1] プラスチックフィルム層、並びに一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)
Figure 2019069597
(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。l、m及びnはそれぞれのモノマー構造単位のモル比を表す数値であり、nは0であってもよい。)
で示されるモノマー構造単位を含むアリルアルコール共重合体であって、(A)一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマー構造単位のモル比l、m及びnが、次式:30≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦80の関係を満足するアリルアルコール共重合体を含むガスバリア性樹脂層を有するガスバリア性樹脂積層体。
[2] 前記アリルアルコール共重合体の(B)ガラス転移点が−70℃以上かつ40℃以下である前項1に記載のガスバリア性樹脂積層体。
[3] 前記アリルアルコール共重合体の(C)重量平均分子量(Mw)が1000以上かつ1000000以下である前項1または2に記載のガスバリア性樹脂積層体。
[4] 前記アリルアルコール共重合体の(D)主鎖を構成する炭素原子1000個あたり、炭素原子数2以上の分岐が1個以下である前項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
[5] 前記アリルアルコール共重合体の(E)主鎖中に存在する炭素−炭素二重結合の数が2個以下である前項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
[6] 前記アリルアルコール共重合体が、一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマー構造単位のみを有する前項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
[7] 一般式(1)におけるR1が水素原子である前項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
[8] R2が表す炭素原子数1〜20の炭化水素基が、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基である前項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
[9] プラスチックフィルムが、ポリエチレンフィルム、延伸または無延伸のポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、セロハンフィルム、及びポリシクロオレフィンから選択される少なくとも1種である前項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
[10] プラスチックフィルムが透明蒸着フィルムである前項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
[11] プラスチックフィルム層の間にガスバリア層を有する前項1〜10のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
[12] アリルアルコール共重合体を溶媒に溶解した溶液を、プラスチックフィルムの表面に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することを特徴とする前項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体の製造方法。
[13] 溶媒がアルコール類またはグリコールモノエーテル類を含む前項12に記載のガスバリア性樹脂積層体の製造方法。
[14] コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、または易接着層コート処理のいずれかの表面処理を施したプラスチックフィルムを使用する前項12または13に記載のガス
[15] プラスチックフィルムとガスバリア性フィルムを共押出成形法によって成形することを特徴とする前項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体の製造方法。
[16] 前項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体を用いてなる包装用材料。
本発明のガスバリア性樹脂積層体は、高湿度下の条件でもバリア性が低下せず、透明性に優れ、柔軟性の高い包装材料用のガスバリア性樹脂積層体として有用である。
本発明のガスバリア性樹脂積層体は、少なくとも1層の、特定の構造を有するアリルアルコール共重合体を含むガスバリア性樹脂層と、少なくとも1層のプラスチックフィルム層からなる積層体である。
なお、本発明において、「フィルム」とは、厳密にはその厚さで区別される「フィルム」及び「シート」の双方を含む概念である。
[アリルアルコール共重合体]
本発明のガスバリア性樹脂積層体を得るためのアリルアルコール共重合体は、一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)
Figure 2019069597
(式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。l、m、及びnはそれぞれのモノマー構造単位のモル比を表す数値であり、nは0であってもよい。)で示されるモノマー構造単位を有する共重合体であって、以下の要件(A)を満たし、要件(B)〜(E)を満たすことが好ましい。
(A)一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマー構造単位のモル比l、m、及びnが、次式:30≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦80の関係を満足する。
(B)ガラス転移点(Tg)が−70℃以上40℃以下である。
(C)重量平均分子量Mwが1000以上かつ1000000以下である。
(D)主鎖を構成する炭素原子1000個あたり、炭素原子数2以上の分岐が1個以下である。
(E)主鎖中に存在する炭素−炭素二重結合の数が2個以下である。
本発明のガスバリア性樹脂積層体を得るためのアリルアルコール共重合体は、基本的には一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマー構造単位のみで構成されること(すなわち、n=0)が好ましい。ただし、物性改良を目的として、一般式(3)で示されるモノマー構造単位が含まれていてもよい。
この場合、積層体のガスバリア性を損なわないために、一般式(2)で示されるモノマー構造単位数と一般式(3)で示されるモノマー構造単位数の合計に対する一般式(3)で示されるモノマー構造単位数の割合({n/(m+n)}×100)は、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、2モル%以下がさらに好ましい。
[モノマー構造単位]
一般式(1)中のR1は水素原子またはメチル基を表す。R1は水素原子が好ましい。
一般式(3)中のR2は、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基が好ましい。なお、アリール基にはアルキル基が付加した芳香環も含むものとする。置換基としてのハロゲン原子はフッ素、塩素、臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。置換基としてのアルコキシ基としては炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。
2が表すハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタブロモエチル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2,3−ジメトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,6−ジメトキシフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基、2−エトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2,3−ジエトキシフェニル基、2,4−ジエトキシフェニル基、2,5−ジエトキシフェニル基、2,6−ジエトキシフェニル基、2,4,6−トリエトキシフェニル基、2−プロポキシフェニル基、3−プロポキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、2,3−ジプロポキシフェニル基、2,4−ジプロポキシフェニル基、2,5−ジプロポキシフェニル基、2,6−ジプロポキシフェニル基、2,4,6−トリプロポキシフェニル基、2−イソプロポキシフェニル基、3−イソプロポキシフェニル基、4−イソプロポキシフェニル基、2,3−ジイソプロポキシフェニル基、2,4−ジイソプロポキシフェニル基、2,5−ジイソプロポキシフェニル基、2,6−ジイソプロポキシフェニル基、2,4,6−トリイソプロポキシフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2,3−ジヒドロキシフェニル基、2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、2,6−ジヒドロキシフェニル基、2,4,6−トリヒドロキシフェニル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−n−プロピル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、ペンタフルオロフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,3−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、3,4−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)フェニル等が挙げられる。これらの中でも原料となるモノマーのコスト及び工業的な入手容易性の観点から、メチル基、エチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基が好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基がより好ましい。
また、本発明のアリルアルコール共重合体は、物性改良のため、一般式(3)で示されるモノマー構造単位以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で第4のモノマーが共重合されていても良い。
第4のモノマーには特に制限はないが、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物類;1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等のα−オレフィン類;1,3−ブタジエン、イソプレン等の鎖状共役ジエン類;エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリレート類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;トリメチルビニルシラン、tert−ブチルジメチルビニルシラン等のビニルシラン類;トリメチルビニロキシシラン、tert−ブチルジメチルビニロキシシラン等のビニルシロキサン類;ビニルアルコール、メタリルアルコール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、4−メチル4−ペンテン−1−オール、5−メチル−5−ヘキセン−1−オール、1−ブテン−3,4−ジオール等のビニル基を有するアルコール類;等を挙げることができる。また、第4のモノマーを共重合させる場合、これら2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の積層体に使用されるアリルアルコール共重合体において、各モノマー構造単位の共重合様式は重合条件により、ランダム共重合、ブロック共重合、交互共重合のいずれをも取ることができる。
条件(A):モノマー構造単位のモル比
本発明の積層体中のバリア層を構成するアリルアルコール共重合体の一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)のモノマー構造単位のモル比l、m、及びnは、次式:30≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦80の関係を満足する。
さらに、次式:50≦{(m+n/(l+m+n)}×100≦80の関係を満足することが好ましく、次式:60≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦80の関係を満足することがより好ましい。
(m+n)のモル%が30を超えるとガスバリア性が発現し、80を下回るとポリオレフィン系プラスチックフィルムへの密着性が良好となる。
条件(B):ガラス転移点(Tg)
本発明の積層体中のバリア層を構成するアリルアルコール共重合体は、一般式(1)で示されるエチレン及び/またはプロピレン構造単位を含むことによりガラス転移点(Tg)が低く、柔軟性に優れている。
本発明の積層体中のバリア層を構成するアリルアルコール共重合体は、JIS K7121に基づいて測定したガラス転移点(Tg)が−70℃以上40℃以下であり、−50℃以上40℃以下が好ましく、−30℃以上40℃以下がより好ましく、−10℃以上35℃以下がさらに好ましく、0℃以上30℃以下が最も好ましい。
ガラス転移点(Tg)がこの範囲より低ければ変形しやすいため、ハンドリング性が充分ではなく、この範囲より高い場合は柔軟性が劣るものとなる。
条件(C):重量平均分子量(Mw)
本発明の積層体中のバリア層を構成するアリルアルコール共重合体の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した重量平均分子量(Mw)は、1000〜1000000が好ましく、2000〜500000がより好ましく、3000〜100000が特に好ましい。
Mwが1000以上であると、分子鎖同士の絡み合いが強まるためにバリア性が発現しやすくなる。Mwが1000000以下であると、溶液や溶融時の粘度が高くなりすぎず、成形が容易である。
条件(D):主鎖における炭素原子数2以上の分岐の数
本発明の積層体中のバリア層を構成するアリルアルコール共重合体の主鎖の炭素原子数2以上の分岐は、主鎖を構成する炭素原子1000個あたり1個以下が好ましく、0個であることがより好ましい。炭素原子数2以上の分岐が2個以下の場合には、高温での使用時にも熱劣化を起こさず、強度が低下したり、透明性が低下しにくくなる。なお、モノマーの側鎖は、本発明の炭素原子数2以上の分岐にはカウントしない。例えば、メチルアクリレートを第4のモノマーとして共重合させた場合、炭素原子数2のメトキシカルボニル基が側鎖となるが、これは炭素原子数2以上の分岐とはしない。詳細は後述の製造方法の項に記載した。
条件(E):主鎖中に存在する炭素−炭素二重結合の数
本発明の積層体中のバリア層を構成するアリルアルコール共重合体は、主鎖中に存在する炭素−炭素二重結合の数が2個以下が好ましく、1個以下がより好ましい。主鎖中の炭素−炭素二重結合の数が2個以下であると、酸化的開裂によりポリマー鎖が切断されることによる、分子量の低下や着色が防止される。また、分子量低下や性能維持の面から、炭素−炭素二重結合は、主鎖構造内部に存在するよりも、主鎖構造末端に存在する方が好ましい。
[アリルアルコール共重合体の製造方法]
本発明のアリルアルコール共重合体の製造方法は特に限定されない。例えば、一般式(1)に対応するモノマー、一般式(2)に対応するモノマー、及び一般式(3)に対応するモノマーを共重合させることで製造することができる。一般式(1)に対応するモノマーはエチレンまたはプロピレンであり、一般式(2)に対応するモノマーはアリルアルコールである。アリルアルコール共重合体の分子量の向上及び柔軟性の観点から、一般式(1)に対応するモノマーはエチレンが好ましい。
一般式(3)に対応するモノマーは、一般式(4)
Figure 2019069597
(式中、R2は一般式(3)と同様の意味を表す。)で示されるアリルエステルである。
一般式(4)で示されるアリルエステルの具体例としては、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、酪酸アリル、吉草酸アリル、安息香酸アリル、トリフルオロ酢酸アリル、トリクロロ酢酸アリル、トリブロモ酢酸アリル、安息香酸アリル等が挙げられる。製造コスト、及び加水分解またはけん化反応の反応性の観点から、酢酸アリルが好ましい。
また、一般式(2)に対応するモノマー構造単位を製造するために、一般式(4)で示されるアリルエステルを用いてもよい。すなわち、エチレンと一般式(4)で示されるアリルエステルを共重合させ、得られた共重合体の加水分解、あるいは、けん化反応を行うことで、一般式(2)で示されるモノマー構造単位を有する共重合体を製造することができる。加水分解あるいはけん化反応の反応率を制御することで、一般式(3)で示されるモノマー構造単位をも有する共重合体としてもよい。
共重合体の加水分解反応、けん化反応は、公知の方法で行うことができる。
加水分解反応は、酸性または塩基性条件下で、水を含む溶媒中で行われる。加水分解反応に用いられる酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、トルフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トルフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられ、工業的入手容易さの観点から、塩酸、硫酸、または酢酸が好ましく、塩酸がより好ましい。加水分解反応に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、工業的入手容易さの観点から、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。加水分解反応で用いられる水を含む溶媒は、水単独でも、水と他の溶媒との混合物でも良い。水と他の溶媒との混合物を使用する場合の他の溶媒の例として、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
けん化反応は、塩基性条件下でアルコールを含む溶媒中で行われる。けん化反応に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、工業的入手容易さの観点から水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。けん化反応で用いられるアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられ、工業的入手容易さ及び反応で副生するエステルの除去の容易さの観点から、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールが好ましく、メタノールまたはエタノールがより好ましい。けん化反応で用いられるアルコールを含む溶媒は、アルコール単独でも、アルコールと他の溶媒との混合物でも良い。アルコールと他の溶媒との混合物を使用する場合の他の溶媒の例として、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、メチルエチルケトン、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼン等が挙げられる。
上記の単量体の重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、バルク重合法、気相重合法等の公知の方法で行うことができる。また、重合様式は、バッチ様式でも連続様式でも可能であり、一段重合でも多段重合でも行うことができる。
重合形式は特に限定されないが、主鎖中の分岐数及び炭素−炭素二重結合数を少なくする観点から、配位アニオン重合が特に好ましい。
エチレンあるいはプロピレンのいずれかのモノマー及びアリルアルコールの重合形式が配位アニオン重合法により製造される場合、使用される重合触媒は特に限定されるものではないが、重合活性及び得られる重合体の特性の点から、特開2011−68881号公報、特開2014−159540号公報、国際公開第2013/168626号パンフレット等に記載されている金属錯体触媒が特に好ましい。一般的な重合体製造に利用されているラジカル重合法で得られる重合体と比較した、上記金属錯体触媒を使用した重合により得られる共重合体の主な特徴を以下に示す。
1)高分子量体を得ることができ、分子量分布(Mw/Mn)が狭い。
2)主鎖構造が実質的に直鎖状である。
3)主鎖の片末端あるいは内部に、主鎖構造単位あたり1個の炭素−炭素二重結合を有する。
アリルアルコールまたは一般式(4)で示されるアリルモノマーは、ビニル基のα位にメチレン基を有しており、ラジカル重合法では、生長ラジカルのメチレン基の水素ラジカル引き抜きによる退化的連鎖移動のため、重合反応が停止し、分子量が低い共重合体しか得られない。共重合体の分子量が低いと、分子鎖同士の絡み合いが弱くなるためにバリア性が発現しにくくなる。また、一般的に、ラジカル重合法で得られる重合体は、分子量分布が広いことが知られており、Mw/Mnが4.0以上である。
ラジカル重合法で得られるエチレン系ポリマーは、下記式に示すバックバイティング機構により分岐構造を有することが知られている。分岐構造としては、バックバイティングにより生成する炭素原子数5以下の短鎖分岐、及び主鎖に発生したラジカルを起点に生長された長鎖分岐が存在する。本発明のガスバリア性樹脂積層体を構成するアリルアルコール共重合体の主鎖構造は、上記の分岐構造が極めて少ない直鎖状であり、炭素原子数2以上の分岐構造の数は、主鎖を構成する炭素原子1000個あたり1個以下である。ここで炭素原子1000個あたりの分岐の数は、炭素数2以上の分岐が結合している主鎖の第3級炭素の数を13C−NMRで測定することにより計算することができる。分岐構造が多いと、比較的反応性が高い第3級炭素が多くなるため、特に光や酸素接触下において、酸化劣化等の樹脂劣化が起きやすくなる。
Figure 2019069597
ポリマー主鎖の末端構造は、重合の開始時にできる開始端と重合の停止時にできる停止端とに分けて考えることができる。配位アニオン重合触媒として金属錯体触媒を用いた場合、開始端は、金属−水素原子間の結合あるいは金属−アルキル基間の結合にオレフィンが挿入してできるため飽和結合となるが、停止端は、その反応機構により飽和結合の場合と不飽和結合の場合に分類される。反応系中に有機アルミニウムのようなアルキル基を有する連鎖移動剤を使用する場合、分子鎖がアルミニウム原子に連鎖移動し、反応を停止させることで、飽和末端となることが報告されている。3塩化チタン系のチーグラー・ナッタ触媒や周期律表第4族元素の金属錯体を触媒に用いる場合、極性基を有するアリル化合物を共重合させるために有機アルミニウムを使用するため、末端構造が飽和結合になる。
一方、特開2011−68881号公報、特開2014−159540号公報、国際公開第2013/168626号パンフレット等に記載されている金属錯体触媒を重合触媒として用いた場合、有機アルミニウムを使用しないため、ポリマー鎖生長は下記式に示すようなβ−水素脱離機構により停止し、主鎖の片末端に炭素−炭素二重結合が生成する。
Figure 2019069597
式中、Rは一般式(1)、一般式(2)または一般式(3)におけるR1またはCH2OH、または一般式(3)におけるCH2OC(=O)R2を表し、Polymerはポリマー鎖を表す。
さらに、重合条件によっては、下記式に示すように、生成した主鎖の片末端に生成した炭素−炭素二重結合に対して、ヒドリド−金属種(式中M−H)が再度挿入し、β−水素脱離により、炭素−炭素二重結合が主鎖内部に移動することがある。本反応が複数回進行することで、主鎖末端から徐々に遠ざかる位置に炭素−炭素二重結合が形成される。
Figure 2019069597
一方で、ラジカル重合で共重合を行った場合、得られる共重合体には、主鎖の停止端だけでなく、主鎖の内部にも炭素−炭素二重結合が複数生成する。上述のバックバイティングにより生成したラジカル、または分岐鎖の分岐点である第3級炭素上の水素ラジカル引き抜きにより生成したラジカルに対して、そのα位炭素上の水素ラジカルの引き抜きにより、炭素−炭素二重結合が生成する。炭素−炭素二重結合が多く存在すると、光や酸素接触下で、酸化的開裂によりポリマー鎖が切断され、分子量の低下や着色を招くおそれがある。
従って、高温安定性や耐候性の点から、ラジカル重合により得られた共重合体よりも、上記金属錯体触媒を使用した重合により得られる共重合体の方が優れているといえる。
[添加剤]
本発明のアリルアルコール共重合体には、バリア性を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤を配合してもよい。
上記添加剤としては、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、無機充填剤等が挙げられる。
本発明のアリルアルコール共重合体には、バリア性の向上を目的に、板状無機化合物を含有しても良い。板状無機化合物としては、例えば、含水ケイ酸塩(フェロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト−蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト−タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母またはマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土であっても合成粘土鉱物であっても良い。また、これらの鉱物は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
[プラスチックフィルム層]
本発明の積層体におけるプラスチックフィルム層を構成する樹脂には特に制限はなく、目的とする用途に応じて適宜選択することができる。
プラスチックフィルム層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)フィルム等のポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)ポリプロピレンフィルム(CPP:未延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリプロピレンフィルム、ポリシクロオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)フィルム、
及びこれらの透明蒸着フィルム等が挙げられる。
プラスチックフィルム層は、積層体としてのガスバリア性向上の観点、及び入手のし易さの観点から、ポリエチレンフィルム層、延伸ポリプロピレンフィルム層、ポリエチレンテレフタレート層が特に好ましい。これらのプラスチックフィルム層を用いると、水蒸気バリア性と酸素バリア性の両方に優れた積層体を、安価に製造することができる。
プラスチックフィルム層の厚みは、特に制限はないが、3〜500μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、10〜100μmが特に好ましい。厚みが3μm以上であれば、フィルム強度が不足して包装材料として使用する際に破れるおそれが無く、また厚みが500μm以下であれば、搬送や巻き取りが容易である。
後述する溶液キャスト法により、ガスバリア性樹脂積層体を製造する場合、プラスチックフィルム層の表面にコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理などの各種表面処理が施されていても良い。これらの表面処理を行うことにより、流延の際のはじきが抑えられる他、プラスチックフィルム層と、アリルアルコール共重合体よりなるバリア性樹脂層との間の密着性が向上する。特に、一般に包装材料に用いられるコロナ処理またはプラズマ処理が好ましい。
溶液キャスト法により、ガスバリア性樹脂積層体を製造する場合、プラスチックフィルム層は、その表面に透明蒸着層が形成された透明蒸着フィルムであっても良い。透明蒸着層の上に、本発明のアリルアルコール共重合体よりなるバリア性樹脂層を積層することにより、透明蒸着層を補強して柔軟性を付与し、さらに、透明蒸着層のクラックやピンホールを、本発明のアリルアルコール共重合体よりなるバリア樹脂層が穴埋めすることにより、通常の透明蒸着フィルムよりもバリア性が向上することが期待できる。なお、透明蒸着フィルムに積層する場合には、少なくとも透明蒸着面側にアリルアルコール共重合体よりなるバリア樹脂が積層されていることが望ましい。透明蒸着面の反対側に積層した場合でも、バリア性の向上は期待できるが、透明蒸着層の補強効果が十分に発揮されないことがある。
透明蒸着層の種類は特に限定されないが、一般に包装材料用途として用いられる金属酸化物蒸着が好ましく、特に、酸化アルミニウム蒸着、及び酸化ケイ素蒸着が好ましい。この他にも、各種の有機化合物や無機化合物、及びこれらの組み合わせであっても良い。蒸着方法には特に制限はなく、公知の真空蒸着法や、スパッタリング法、化学気相蒸着(CVD)法などを用いることができる。
[ガスバリア性樹脂積層体]
ガスバリア性樹脂層を含む本発明のガスバリア性樹脂積層体は、ガスバリア性樹脂層をプラスチックフィルム層の間に設けることが好ましい。この場合、ガスバリア性樹脂層を挟む2層のプラスチックフィルムは同一でもよいし、異なってもよい。
[ガスバリア性樹脂積層体の製造方法]
本発明のガスバリア性樹脂積層体は、一般の高分子成形加工分野で実施されている成形方法を採用することにより製造することができる。具体的には、溶液キャスト法、Tダイ成形、インフレーション成形、ドライラミネート成形、押出コーティング、共押出成形法などの方法が採用できる。これらの中でも、製膜の容易さ、工程の簡略さの観点から、溶液キャスト法、または共押出成形が好ましい。
溶液キャスト法は、本発明のアリルアルコール共重合体を溶媒に溶解した溶液を、プラスチックフィルム層の上に塗工もしくは流延し、その後、乾燥工程を経て積層体とする方法である。
溶媒としては、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールジエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のグリコールエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等の非水溶性溶剤などが挙げられる。
アリルアルコール共重合体の溶解性の高さ、乾燥工程での留去の容易さ、安全性の観点から、アルコール類、グリコールモノエーテル類が好ましく、エタノール、エチルセロソルブが特に好ましい。これらの溶剤は、単独で用いても良いし、混合して用いても良い。
本発明のアリルアルコール共重合体は、PVAやEVOHと異なり、アルコール類やグリコールエーテル類への溶解性が高く、成形が容易で、安全性が高い。
アリルアルコール共重合体の溶液の固形分濃度は特に限定されないが、1〜50質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。固形分濃度が1質量%以上であれば、乾燥工程での溶剤留去にかかる時間が短縮でき、製造コストが抑えられる。また、50質量%以下の場合、溶液の粘度が適正のため、塗工もしくは流延時の厚みムラ、スジが発生しにくくなる。
アリルアルコール共重合体の溶液を塗布もしくは流延する際の方法としては、特に限定されないが、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、マイクログラビア塗工、マイクロリバースグラビアコーター塗工、ダイコーター塗工、スロットダイコーター塗工、バキュームダイコーター塗工、ディップ塗工、スピンコート塗工、スプレー塗工、はけ塗りなどの公知の方法を使用できる。
乾燥方法は、特に限定されないが、ドライヤー等による熱風の吹き付け、赤外線照射などの公知の方法を使用できる。
乾燥温度は、プラスチックフィルム層の耐熱性によるが、室温〜150℃が好ましく、50〜120℃がより好ましく、60〜90℃が特に好ましい。乾燥温度が室温以上であれば、乾燥にかかる時間を短縮することができる。また、乾燥温度が150℃以下であれば、塗布層に気泡が発生したり、プラスチックフィルム層が熱変形を起こすおそれが無い。
乾燥時間は、特に限定されないが、1秒〜30分の間が好ましく、3秒〜15分がより好ましく、5秒〜5分が特に好ましい。乾燥時間が1秒以上あれば溶剤の留去が十分に行われ、30分以内であれば製造コスト的に適正である。
共押出成形法により、ガスバリア性樹脂積層体を製造する場合、例えば、アリルアルコール共重合体樹脂と、プラスチックフィルム層を構成する熱可塑性樹脂とを、それぞれ加熱溶融し、多層ダイで重ね合わせて押し出し、冷却固化することによって積層体が得られる。
共押出成形法を行う際に、ガスバリア層(B層)とプラスチックフィルム層(P層)との間の接着性を向上する目的で、接着性樹脂層(A層)を設けても良い。この場合の層構成としては、例えばB/A/Pや、P1/A/B/A/P1、またはP1/A/B/A/P2などの構成が例示される。ここで、P1とP2は、異なるプラスチックフィルム層を表す。
接着性樹脂層としては特に限定されないが、例えば不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂などを用いることができる。
共押出法によりガスバリア性樹脂積層体を製造する場合、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ナイロンMXD6等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのその他の樹脂またはこれらの混合物が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂のうち、包装用袋を構成したときに耐突刺しや耐衝撃性に優れることからポリアミド樹脂が好ましく、また、耐熱性と経済性に優れることからポリエステル樹脂も好ましい。
[ガスバリア性樹脂積層体の構成及び物性]
本発明のガスバリア性樹脂積層体におけるガスバリア層の厚みは特に限定されないが、0.1〜50μmの間が好ましく、0.2〜30μmがより好ましく、0.5〜10μmが特に好ましい。ガスバリア層の厚みが0.1μm以上の場合には、ガスバリア層にピンホールやクラックが発生せず、ガスバリア性が低下することがない。また、ガスバリア層の厚みが50μm以下であれば、ガスバリア性樹脂積層体の柔軟性を保つことができる。
本発明のガスバリア性樹脂積層体の全光線透過率は70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、85%以上が特に好ましい。全光線透過率が70%以上の場合、内容物の視認性が容易となる。
本発明のガスバリア性樹脂積層体の全Hazeは10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下が特に好ましい。全Hazeが10%以下の場合、内容物の視認が容易となる。
本発明のガスバリア性樹脂積層体の酸素透過度は、低湿度下の条件(0%RH)において、100cm3/(m2/day/atm)以下が好ましく、50cm3/(m2/day/atm)以下がより好ましく、10cm3/(m2/day/atm)以下が特に好ましい。低湿度下の条件(0%RH)での酸素透過度が100cm3/(m2/day/atm)以下の場合、内容物の酸素劣化を遅らせる効果が期待できる。
また、本発明のガスバリア性樹脂積層体の酸素透過度は、高湿度下の条件(90%RH)において、150cm3/(m2/day/atm)以下が好ましく、120cm3/(m2/day/atm)がより好ましく、100cm3/(m2/day/atm)が特に好ましい。高湿度下の条件(90%RH)での酸素透過度が150cm3/(m2/day/atm)以下の場合、内容物の酸素劣化を遅らせる効果が期待できる。
本発明のガスバリア性樹脂積層体は、少なくとも一軸の延伸が施されていてよい。延伸する方法は特に限定されず、公知の方法を利用することができる。具体的には、テンター式同時二軸延伸機を用いて、未延伸のガスバリア性樹脂積層体に縦方向(MD)及び横方向(TD)に同時二軸延伸を施すことで、同時二軸延伸されたガスバリア性樹脂積層体を得ることができる。
本発明のガスバリア性樹脂積層体には、必要に応じて、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射が施されていても良い。このような場合には、ガスバリア性や柔軟性を損なわない範囲で、高エネルギー照射により架橋または重合する成分が配合されていても良い。
本発明のガスバリア性樹脂積層体には、必要に応じて、コロナ処理などの表面処理を施しても良い。
本発明のガスバリア性樹脂積層体は、シーラント用樹脂を積層することにより、種々の積層フィルムとすることができる。
シーラントとして用いる樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂等が挙げられ、ヒートシール強度や材質そのものの強度が高い各種ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独で用いても、他の樹脂と共重合や溶融混合して用いても、さらに酸変性などが施されていても良い。
シーラント層をガスバリア性樹脂積層体に形成する方法としては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートを、接着剤を介して、ガスバリア性樹脂積層体にラミネートする方法や、シーラント樹脂をガスバリア性樹脂積層体に押出ラミネートする方法などが挙げられる。前者の方法においては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートは、未延伸状態であっても、低倍率の延伸状態でも良いが、実用的には未延伸状態であることが好ましい。
シーラント層の厚みは特に限定されないが、20〜100μmであることが好ましく、40〜70μmであることがより好ましい。
本発明のガスバリア性樹脂積層体を用いて包装用袋を作製することができる。この包装用袋は、例えば、飲食品、果物、ジュース、飲料水、酒、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、肉製品、煮物、餅、液体スープ、調味料、その他などの各種の飲食料品、液体洗剤、化粧品、化成品などの内容物の充填包装に好適である。
以下に、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
実施例及び比較例中の試験及び評価は以下の方法で行った。
(1)重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)
昭和電工(株)製 Asahipak(登録商標)GF−310HQカラム(2本直列)を備えたウォーターズ(株)製 GPC装置Alliance e2695を用い、プルランを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:メタノール/水=1:1、温度:40℃)により算出した。
(2)重合体の共重合比
一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマー構造単位の含有率は、日本電子(株)製核磁気共鳴装置JNM−ECS400を使用し、溶媒として1,1,2,2−テトラクロロエタン-d4を使用した120℃における1H及び13C−NMR解析によって決定した。
(3)分岐構造
分岐構造は、13C−NMRスペクトルにおいて、第3級炭素原子に由来するピークのケミカルシフトにより判断できる。すなわち、アリルアルコールモノマー構造単位に存在する第3級炭素原子のピークが37.9ppmに観測されるのに対して、ポリマー主鎖に分岐がある場合、第3級炭素原子のピークのケミカルシフト値は38.2〜39.0ppm付近に観測され、両者を区別することができる(参考文献:Macromolecules 1999,32,1620−1625.)。
(4)炭素−炭素二重結合
炭素−炭素二重結合の有無及び位置は、13C−NMRスペクトルで解析することができる。主鎖構造の末端に炭素−炭素二重結合を有する場合、114ppm及び139ppm付近にピークが観測され、10〜40ppmにピークが現れる飽和末端構造と区別することができる。一方で、主鎖構造の内部に炭素−炭素二重結合を有する場合、125〜135ppm付近にピークが観測され、末端の炭素−炭素二重結合と区別することができる(参考文献:Chem.Commun.2002,744−745.)。
(5)全光線透過率及び全Haze
ヘーズメーターNDH2000(日本電色社工業(株)製)を用いて測定した。
(6)密着性
JIS K5600−5−6に従って、2mm幅(25マス)で密着性試験を行い、JIS K5600−5−6に記載されている6段階の分類により、密着性を評価した。この分類では、全てのマス目に剥がれが無い場合に「分類0」とする。
(7)ガスバリア性
JIS K7126−2(付属書A)に従って、20℃、相対湿度0%RH及び90%RHでの酸素透過度を測定した。
(8)ガラス転移点(Tg)
セイコー電子工業(株)製示差走査熱量計(DSC)機器名称X−DSC7000型を用い、JIS K7121に基づいて測定した。すなわち、前記JIS記載の方法にて、試料を一旦200℃まで昇温した後、冷却速度30℃/分にて予想されるガラス転移点より約50℃低い温度まで冷却し、再び昇温速度10℃/分にて昇温して測定した中間点ガラス転移温度(Tmg)をガラス転移点(Tg)とした。
合成例1:40mol%エチレン・アリルアルコール共重合体(EA40)
窒素ガス雰囲気下、2Lオートクレーブ中で、40℃でエチレンガス(0.12MPa)が充填された酢酸アリル(1.0L)に、下記の金属錯体触媒1(0.69g,1.0mmol、公開公報:特開2014−159540号に記載)の酢酸アリル溶液(90mL)を加え、40℃で90時間撹拌した。エチレンガスを窒素ガスでパージさせて、室温まで冷却後、オートクレーブ内の反応液を減圧濃縮させ、エチレン・酢酸アリル共重合体を得た。収量は9.0gであった。
Figure 2019069597
続いて、得られたエチレン・酢酸アリル共重合体のけん化反応を行った。窒素ガス雰囲気下、エチレン・酢酸アリル共重合体(5.3g)、トルエン(120mL)及びメタノール(65mL)を含む1Lセパラブルナスフラスコに、水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製、0.075g、1.9mmol)のメタノール溶液(10mL)を加え、加熱還流下、3時間撹拌させた。室温まで冷却後、反応液を水・アセトン混合溶媒(1:1vol/vol、1L)に加え、重合体を析出させた。生じた重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、エチレン・アリルアルコール共重合体である共重合体(EA40)を得た。収量は3.0gであった。分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量4,800、重量平均分子量7,600と算出し、Mw/Mnは1.57であった。共重合体中のアリルアルコール含有率は、1H−NMR及び13C−NMR測定により、エチレン:アリルアルコールのモル比は60.0:40.0(アリルアルコールモル分率=40.0%)と算出された。さらに、13C−NMR測定により、主鎖中に存在する炭素原子数2以上の分岐は観測されず、ケミカルシフト値114ppm及び139ppmのピークから、主鎖構造単位あたり1個の炭素−炭素二重結合が、主鎖の片末端に存在することが判った。Tgは15.0℃であった。
合成例2:18mol%エチレン・アリルアルコール共重合体(EA18)
窒素ガス雰囲気下、2Lオートクレーブ中で、65℃でエチレンガス(0.5MPa)が充填された酢酸アリル(1L)に、合成例1で使用した金属錯体触媒1(1.0g,1.4mmol)のトルエン溶液(40mL)を加え、65℃で30時間撹拌した。エチレンガスを窒素ガスでパージさせて、室温まで冷却後、オートクレーブ内の反応液を100mL程度になるまで減圧濃縮させた。濃縮液をメタノール(1L)に加え重合体を析出させた。生じた重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、エチレン・酢酸アリル共重合体を得た。収量は13.3gであった。
続いて、得られたエチレン・酢酸アリル共重合体のけん化反応を行った。窒素ガス雰囲気下、エチレン・酢酸アリル共重合体(10.3g)、トルエン(140mL)及びメタノール(75mL)を含む1Lセパラブルナスフラスコに、水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製、0.088g、2.2mmol)のメタノール溶液(10mL)を加え、加熱還流下、2.5時間撹拌させた。室温まで冷却後、反応液をメタノール(1L)に加え、重合体を析出させた。生じた重合体をろ過によって回収し、メタノールで洗浄した後に減圧下乾燥して、エチレン・アリルアルコール共重合体である共重合体(EA18)を得た。収量は8.1gであった。分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量46,000、重量平均分子量70,000と算出し、Mw/Mnは1.53であった。共重合体中のアリルアルコール含有率は、1H−NMR及び13C−NMR測定により、エチレン:アリルアルコールのモル比は82.0:18.0(アリルアルコールモル分率=18.0%)と決定した。さらに、13C−NMR測定により、主鎖中に存在する炭素原子数2以上の分岐は観測されず、ケミカルシフト値114ppm及び139ppmのピークから、主鎖構造単位あたり1個の炭素−炭素二重結合が、主鎖の片末端に存在することが判った。Tgは4.3℃であった。
合成例3:60mol%エチレン・アリルアルコール共重合体(EA60)の合成
窒素ガス雰囲気下、500mLオートクレーブ中で、120℃でエチレンガス(0.54MPa)が充填された酢酸アリル(240mL)に、下記の金属錯体触媒2(0.69g,0.12mmol)の酢酸アリル溶液(30mL)を加え、120℃で72時間撹拌した。エチレンガスを窒素ガスでパージして、室温まで冷却後、オートクレーブ内の反応液を減圧濃縮させ、エチレン・酢酸アリル共重合体を得た。収量は3.5gであった。
Figure 2019069597
続いて、得られたエチレン・酢酸アリル共重合体のけん化反応を行った。窒素ガス雰囲気下、エチレン・酢酸アリル共重合体(3.5g)及びメタノール(120mL)を含む500mLセパラブルナスフラスコに、水酸化ナトリウム(和光純薬工業(株)製、0.13g、3.2mmol)のメタノール溶液(5mL)を加え、加熱還流下、5時間撹拌させた。室温まで冷却後、反応液を水に加え、重合体を析出させた。生じた重合体をろ過によって回収し、アセトンで洗浄した後に減圧下乾燥して、エチレン・アリルアルコール共重合体である共重合体(EA60)を得た。収量は0.74gであった。分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにより、数平均分子量1,300、重量平均分子量3,000と算出し、Mw/Mnは2.31であった。共重合体中のアリルアルコール含有率は、1H−NMR及び13C−NMR測定により、エチレン:アリルアルコールのモル比は42.6:57.4(アリルアルコールモル分率=57.4%)と算出された。さらに、13C−NMR測定により、主鎖中に存在する炭素原子数2以上の分岐は観測されず、ケミカルシフト値114ppm及び139ppmのピークから、主鎖構造単位あたり1個の炭素−炭素二重結合が、主鎖の片末端に存在することが判った。Tgは21.0℃であった。
実施例1:
合成例1で合成したEA40を、固形分濃度10質量%となるようにエタノールに室温で溶解、撹拌して均一な溶液を調製した。得られた溶液を、ベーカーアプリケーターを用いて乾燥膜厚5μmとなるように、厚み12μmのPETフィルム(東レフィルム加工(株)製ルミラー(登録商標)P60)に塗布し、温度80℃に設定した熱風循環槽で10分間乾燥し、積層体を得た。得られた積層体のクロスカット試験で残ったマス目は25マスのうち25マス(分類0)、全光線透過率は89.3%、全Hazeは2.4%であった。0%RHでの酸素透過度は70cm3/(m2/day/atm)、90%RHでの酸素透過度は89cm3/(m2/day/atm)であり、0%RHでの酸素透過度に対する90%RHでの酸素透過度比は1.3であった。
実施例2:
溶媒をエチルセロソルブに変えた他は、実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体のクロスカット試験で残ったマス目は25マスのうち25マス(分類0)、全光線透過率は89.3%、全Hazeは2.2%であった。0%RHでの酸素透過度は76cm3/(m2/day/atm)、90%RHでの酸素透過度は98cm3/(m2/day/atm)であり、0%RHでの酸素透過度に対する90%RHでの酸素透過度比は1.3であった。
実施例3:
合成例3で合成したEA60を、固形分濃度10質量%となるようにエタノールに室温で溶解、撹拌して均一な溶液を調製した。得られた溶液を、ベーカーアプリケーターを用いて乾燥膜厚5μmとなるように、厚み30μmのOPPフィルム(フタムラ化学(株)製FOR(登録商標))に塗布し、温度80℃に設定した熱風循環槽で10分間乾燥し、積層体を得た。得られた積層体のクロスカット試験で残ったマス目は25マスのうち25マス(分類0)、全光線透過率は91.5%、全Hazeは1.3%であった。0%RHでの酸素透過度は23cm3/(m2/day/atm)、90%RHでの酸素透過度は105cm3/(m2/day/atm)であり、0%RHでの酸素透過度に対する90%RHでの酸素透過度比は4.5であった。
比較例1:
厚み21μm(バリア層厚み1μm)のPVA(Tg=71.0℃)コートOPPフィルム(三井化学東セロ(株)製)について、全光線透過率は91.5%、全Hazeは1.4%であった。0%RHでの酸素透過度は0.1cm3/(m2/day/atm)、90%RHでの酸素透過度は600cm3/(m2/day/atm)であり、0%RHでの酸素透過度に対する90%RHでの酸素透過度比は6000であった。
比較例2:
アリルアルコール共重合体の代わりに、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH樹脂)である、日本合成化学工業(株)製ソアノール(登録商標)A4412(ビニルアルコールモル分率=56mol%、Tg=55.0℃)を用いて、積層体を得ることを試みた。ソアノールA4412に、固形分濃度5質量%となるようにエタノールを加えて撹拌しながら90℃で1時間加熱したが溶解せず、溶液キャスト法での積層体製造に必要な均一な溶液を得ることができなかった。
比較例3:
EA40の代わりに、合成例2で製造したEA18を用いて、積層体を得ることを試みた。EA18に、固形分濃度5質量%となるようにエタノールを加えて撹拌しながら40℃で60時間加熱したが溶解せず、溶液キャスト法での積層体製造に必要な均一な溶液を得ることができなかった。
比較例4:
溶媒をエチルセロソルブに変えた以外は、比較例3と同様にしてEA18の溶解を試みたが溶解せず、溶液キャスト法での積層体製造に必要な均一な溶液を得ることができなかった。
以上の製造例及び実施例で作製した積層体の評価結果を表1に示す。
Figure 2019069597
表1に示した結果より、本発明のガスバリア性積層体は、プラスチックフィルム層にアンカーコート層等を塗布することなく良好な密着性を発現し、透明であり、良好な酸素バリア性を示していることが分かる。また、PVA樹脂を用いた積層体と異なり、高湿度下の条件(90%RH)と低湿度下の条件(0%RH)との酸素透過度の変化が著しく小さいことが分かる。
本発明のガスバリア性樹脂積層体は、湿度によるバリア性の変化が小さく、食品や医薬品等の包装材料等に使用することができる。

Claims (16)

  1. プラスチックフィルム層、並びに一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)
    Figure 2019069597
    (式中、R1は水素原子またはメチル基を表し、R2はハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、またはアミノ基で置換されていてもよい炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。l、m及びnはそれぞれのモノマー構造単位のモル比を表す数値であり、nは0であってもよい。)
    で示されるモノマー構造単位を含むアリルアルコール共重合体であって、(A)一般式(1)、一般式(2)及び一般式(3)で示されるモノマー構造単位のモル比l、m及びnが、次式:30≦{(m+n)/(l+m+n)}×100≦80の関係を満足するアリルアルコール共重合体を含むガスバリア性樹脂層を有するガスバリア性樹脂積層体。
  2. 前記アリルアルコール共重合体の(B)ガラス転移点が−70℃以上かつ40℃以下である請求項1に記載のガスバリア性樹脂積層体。
  3. 前記アリルアルコール共重合体の(C)重量平均分子量(Mw)が1000以上かつ1000000以下である請求項1または2に記載のガスバリア性樹脂積層体。
  4. 前記アリルアルコール共重合体の(D)主鎖を構成する炭素原子1000個あたり、炭素原子数2以上の分岐が1個以下である請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
  5. 前記アリルアルコール共重合体の(E)主鎖中に存在する炭素−炭素二重結合の数が2個以下である請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
  6. 前記アリルアルコール共重合体が、一般式(1)及び一般式(2)で示されるモノマー構造単位のみを有する請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
  7. 一般式(1)におけるR1が水素原子である請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
  8. 2が表す炭素原子数1〜20の炭化水素基が、炭素原子数1〜20のアルキル基または炭素数6〜20のアリール基である請求項1〜7のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
  9. プラスチックフィルムが、ポリエチレンフィルム、延伸または無延伸のポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、セロハンフィルム、及びポリシクロオレフィンから選択される少なくとも1種である請求項1〜8のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
  10. プラスチックフィルムが透明蒸着フィルムである請求項1〜9のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
  11. プラスチックフィルム層の間にガスバリア層を有する請求項1〜10のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体。
  12. アリルアルコール共重合体を溶媒に溶解した溶液を、プラスチックフィルムの表面に塗布し乾燥してガスバリア層を形成することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体の製造方法。
  13. 溶媒がアルコール類またはグリコールモノエーテル類を含む請求項12に記載のガスバリア性樹脂積層体の製造方法。
  14. コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、または易接着層コート処理のいずれかの表面処理を施したプラスチックフィルムを使用する請求項12または13に記載のガスバリア性樹脂積層体の製造方法。
  15. プラスチックフィルムとガスバリア性フィルムを共押出成形法によって成形することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体の製造方法。
  16. 請求項1〜11のいずれかに記載のガスバリア性樹脂積層体を用いてなる包装用材料。
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