以下、本発明の実施の形態に係る建設機械として、クローラ式の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に設けられた旋回軸受装置3と、下部走行体2上に旋回軸受装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行うフロント装置5とを含んで構成されている。
下部走行体2は、左,右両側に位置して前,後方向に延びたサイドフレーム6A(左側のみ図示)を有するトラックフレーム6と、トラックフレーム6の左,右のサイドフレーム6Aの一端部に設けられた駆動輪7と、各サイドフレーム6Aの他端部に設けられた遊動輪8と、駆動輪7と遊動輪8とに亘って巻回された履帯9(いずれも左側のみ図示)とにより構成されている。
図2に示すように、トラックフレーム6の上面を構成する上面板6Bの中央部には、上,下方向を軸線とする大径な円筒状のサークル10が設けられている。サークル10は、上端面10Aと外周面10Bとを有している。上端面10Aは、後述の内輪12が取付けられるもので、この上端面10Aには、周方向に間隔をもって複数個の雌ねじ穴10C(図3参照)が設けられている。各雌ねじ穴10Cには、内輪12を固定するための内輪取付ボルト(図示せず)がそれぞれ螺着される。
ここで、サークル10の外周面10Bには、旋回軸受装置3から漏れ出たグリースが流れ落ちるから、このグリースに塵埃や土砂が付着する。このグリースに付着した土砂等は、重力によって下側に移動し、サークル10の根元部位10Dに堆積する。このサークル10の根元部位10Dとは、外周面10Bとトラックフレーム6の上面板6Bの上面との境界位置であり、外周面10Bを縮径しつつ下向きに延び、上面板6Bに滑らかに接続する円弧状に形成された部位となっている。
上部旋回体4は、支持構造体を構成する旋回フレーム11を有している。旋回フレーム11は、当該旋回フレーム11の中央部分を前,後方向に延びた厚肉な鋼板からなる底板11A(図2参照)を有している。旋回フレーム11上には、上部旋回体4を構成する後述のキャブ24、カウンタウエイト25、エンジン26、外装カバー27等が設けられている。
旋回フレーム11の底板11Aには、下面側から旋回軸受装置3の外輪13が取付けられる。このため、底板11Aには、外輪13のボルト挿通孔13Fに対応した複数個所に雌ねじ孔11A1(図2中に1個のみ図示)が設けられている。各雌ねじ孔11A1には、外輪取付ボルト16が螺着される。
ここで、各雌ねじ孔11A1の配置間隔は、底板11A上に溶接手段を用いて固着される左,右の縦板等の構造物、後述の旋回用モータ17の取付部位等を避けて効果的な取付強度が得られるように、適宜に調整されている。即ち、隣合う2個の雌ねじ孔11A1の間隔寸法は、外輪13の全周で一定になっていないことが一般的である。
次に、第1の実施の形態の特徴部分に係る旋回軸受装置3の構成について詳細に説明する。
旋回軸受装置3は、下部走行体2のサークル10の上側に、サークル10と同軸に設けられている。旋回軸受装置3は、旋回フレーム11の底板11Aに設けられた後述の旋回用モータ17によって水平方向で回転されるものである。
図2に示すように、旋回軸受装置3は、下部走行体2のサークル10上に取付けられた円環状の内輪12と、内輪12の径方向の外側に同心円上に設けられた円環状の外輪13と、内輪12の外周側に設けた軌道12Bと外輪13の内周側に設けた軌道13Bとの間に転動可能に配置され、内輪12と外輪13とを相対回転可能に支持する転動体としての多数個の鋼球14(図2中に2個のみ図示)とにより構成されている。
内輪12は、サークル10の上端面10Aに複数本の内輪取付ボルト(図示せず)を介して一体的に取付けられている。内輪12は、例えば四角形状の断面をもって円環状に形成され、その外周面12Aには、半円状の凹溝からなる軌道12Bが形成されている。一方、内輪12の内周側には、旋回用モータ17の小歯車17Aが噛合する内歯歯車12Cが形成されている。また、内輪12には、上,下方向に延びつつ周方向に所定の間隔をもって多数個のボルト挿通孔(図示せず)が形成されている。
これにより、内輪12は、サークル10の上端面10Aに載置した状態で、各ボルト挿通孔に挿通した内輪取付ボルトをサークル10の雌ねじ穴10Cにそれぞれ螺着することにより、サークル10上に一体的に取付けられている。
外輪13は、例えば四角形状の断面をもって内輪12よりも一回り大径な円環状に形成されている。外輪13の内周面13Aには、内輪12の軌道12Bと対向する位置に半円状の凹溝からなる軌道13Bが形成されている。ここで、外輪13は、内輪12に対して上側にオフセットした状態で設けられている。これにより、内輪12と旋回フレーム11の底板11Aとの干渉を防いでいる。
外輪13は、上面13C、下面13Dおよび外周面13Eを有している。上面13Cは、旋回フレーム11の底板11Aに当接している。一方、下面13Dには、後述のスクレーパ装置19が取付けられている。
外輪13には、下面13Dから上面13Cに貫通した状態で周方向に間隔をもって複数本のボルト挿通孔13F(図2中に1本のみ図示)が設けられている。各ボルト挿通孔13Fには、下側から上側に向けて後述の外輪取付ボルト16が挿通されている。これらの外輪取付ボルト16を、上部旋回体4を構成する旋回フレーム11の底板11Aに設けた雌ねじ孔11A1に螺着する。これにより、外輪13は、旋回フレーム11の底板11Aの下面に一体的に取付けることができる。この場合、外輪取付ボルト16のボルト頭16Bは、外輪13の下面13Dよりも下側に突出している。
ここで、外輪13の下面13Dには、回転中心を挟んだ対称位置に雌ねじ穴13G(図2中に1個のみ図示)が下向きに開口して設けられている。この雌ねじ穴13Gは、後述のスクレーパ装置19を取付けるスクレーパ取付ボルト23が螺着されるもので、隣合う2個の外輪取付ボルト16の間に、外輪13の周方向に間隔をもって2個ずつ配置されている。
旋回軸受装置3には、内輪12の外周面12Aと外輪13の内周面13Aとの間をシールする上側環状シール15Aと下側環状シール15Bとが設けられている。これらの環状シール15A,15Bによって各鋼球14の周囲にグリースが保持されている。上側環状シール15Aは、外輪13の内周面13Aの上部位置に径方向の内側に延びて設けられ、内周側は内輪12の上面に摺動可能に密着している。一方、下側環状シール15Bは、内輪12の外周面12Aの下部位置に径方向の外側に延びて設けられ、外周側は外輪13の下面13Dに摺動可能に密着している。
図2に示すように、外輪取付ボルト16は、外輪13を旋回フレーム11の底板11Aに取付けるものである。外輪取付ボルト16は、外輪13の各ボルト挿通孔13Fに対応するように複数本設けられている。外輪取付ボルト16は、ボルト挿通孔13Fに挿通されて底板11Aの雌ねじ孔11A1に螺着されるねじ部16Aと、ねじ部16Aの下端部に拡径して設けられたボルト頭16Bとにより構成されている。このボルト頭16Bは、外輪13の下面13Dよりも下側に突出している。なお、ボルト頭16Bは、ワッシャ16B1を含んで構成されている。そして、外輪13の下面13Dから突出したボルト頭16Bは、後述するスクレーパ装置19のサークル10に向かう動きを規制するストッパとして機能する。
ここで、図4に示すように、複数本の外輪取付ボルト16のうち、スクレーパ装置19を挟んで隣合う2本の外輪取付ボルト16のボルト頭16B(ワッシャ16B1)の間隔寸法は、寸法W1となっている。なお、図3では、各外輪取付ボルト16を周方向に等間隔で配置している(隣合う2本の外輪取付ボルト16の間隔を一定にしている)。しかし、前述したように旋回フレーム11の底板11Aに設けられた各雌ねじ孔11A1の間隔は、均等になっていないことが一般的であり、これに応じて、隣合う2本の外輪取付ボルト16のボルト頭16Bの間隔寸法も不均等となっている。従って、間隔寸法W1は、スクレーパ装置19が取付けられる位置によって変動する。
図2に示すように、旋回用モータ17は、旋回フレーム11の底板11Aに設けられている。旋回用モータ17は、内輪12の内歯歯車12Cに噛合する小歯車17Aを有している。また、グリースバス18は、トラックフレーム6のサークル10の内周側に液密に溶接されている。グリースバス18は、内輪12の内歯歯車12Cと旋回用モータ17の小歯車17Aとの噛合部に供給すためのグリースを貯えている。
また、旋回軸受装置3には、各鋼球14の周囲に、手動または自動でグリースを供給するグリース供給装置(図示せず)が設けられている。これにより、内輪12、外輪13、上側環状シール15Aおよび下側環状シール15Bによって画成された空間に供給されるグリースによって、内輪12、外輪13と各鋼球との間を潤滑することができる。
次に、本発明の特徴部分となるスクレーパ装置19の構成および機能について詳細に説明する。
図3に示すように、スクレーパ装置19は、旋回軸受装置3を構成する外輪13の下面13Dに、旋回中心を挟んだ対称位置に2個設けられている。スクレーパ装置19は、外輪13の下面13Dに後述のスクレーパ取付ボルト23を用いて取付けられている。スクレーパ装置19は、トラックフレーム6のサークル10と外輪13とが相対的に回転することにより、サークル10の周囲に付着した土砂を掻き取るものである。
図4、図5に示すように、スクレーパ装置19は、外輪13の下面13Dに取付けられる取付板20と、取付板20の下面から下側に延びたスクレーパ本体21と、取付板20に対するスクレーパ本体21の取付強度を高める一対の補強板22とにより構成されている。
取付板20は、外輪13の周方向で長尺となる台形状の板状体によって形成されている。この取付板20には、スクレーパ本体21を挟んで離間した位置に板厚方向に貫通して2個のボルト挿通孔20Aが設けられている。また、取付板20は、台形形状の狭幅部20Bが外輪13の内周面13A側に位置し、台形形状の広幅部20Cが外輪13の外周面13E側に位置している。さらに、取付板20は、広幅部20Cの両端部20C1,20C2が、スクレーパ装置19を挟んで隣合う2本の外輪取付ボルト16よりも外輪13の径方向の外側に配置されている。
ここで、取付板20の広幅部20Cの長さ寸法、即ち、広幅部20Cの両端部20C1,20C2間の長さ寸法W2は、スクレーパ装置19を挟んで隣合う2本の外輪取付ボルト16のボルト頭16B(ワッシャ16B1)の間隔寸法W1よりも大きな寸法に設定されている。
取付板20の広幅部20Cの長さ寸法W2とスクレーパ装置19を挟んで隣合う2本の外輪取付ボルト16のボルト頭16Bの間隔寸法W1との関係を、より具体的に説明する。例えば、図4中に記載した2本のスクレーパ取付ボルト23のうち、図中で上側に位置するスクレーパ取付ボルト23が緩んで脱落した場合、下側に位置するスクレーパ取付ボルト23を中心(中心点C1)にしてスクレーパ装置19がサークル10に向けて矢示A方向に回動することがある。この場合、取付板20は、広幅部20Cの端部20C1が図中の上側に位置する外輪取付ボルト16のボルト頭16Bに当接するように構成されている。
即ち、下側に位置するスクレーパ取付ボルト23の中心点C1から上側に位置する外輪取付ボルト16のボルト頭16Bまでの距離を寸法L1とすると、スクレーパ取付ボルト23の中心点C1から広幅部20Cの端部20C1までの距離寸法L2は、距離寸法L1よりも大きな寸法に設定されている。
同様に、図中の上側に位置するスクレーパ取付ボルト23の中心点C2から下側に位置する外輪取付ボルト16のボルト頭16Bまでの距離寸法よりも、スクレーパ取付ボルト23の中心点C2から広幅部20Cの端部20C2までの距離寸法の方が大きな寸法に設定されている。
スクレーパ本体21は、外輪13から内輪12に向けて径方向の内向きに延びて形成されている。換言すると、外輪13の接線方向に直交する方向に延びるように配置されている。スクレーパ本体21は、下端側に位置してトラックフレーム6の上面板6Bの上面に沿って横方向に延びた下縁部21Aと、外輪13の径方向の内側に位置してサークル10の外周面10Bに沿って縦方向に延びた内縁部21Bと、下縁部21Aと内縁部21Bとの間に位置してサークル10の根元部位10Dに沿って円弧状に形成された円弧縁部21Cとを有している。
ここで、第1の実施の形態によるスクレーパ本体21は、サークル10の根元部位10Dの近傍に堆積した土砂等を除去することを目的としているため、下縁部21A、内縁部21Bおよび円弧縁部21Cは、トラックフレーム6の上面板6B、サークル10との間に隙間を有している。
一対の補強板22は、スクレーパ本体21を板厚方向から挟んだ三角形状の板体からなり、その上部は取付板20に固着されている。これにより、各補強板22は、取付板20に対するスクレーパ本体21の板厚方向の取付強度を高めることができる。
スクレーパ取付ボルト23は、スクレーパ装置19を外輪13の下面13Dに取付けるもので、取付板20のボルト挿通孔20Aに対応して2本設けられている。各スクレーパ取付ボルト23は、取付板20を外輪13の下面13Dに当接させた状態で、ボルト挿通孔20Aに挿通しつつ、外輪13の雌ねじ穴13Gに螺着されることにより、スクレーパ装置19を外輪13の下面13Dに取付けることができる。
なお、図1に示すように、旋回フレーム11上には、左前側に位置してオペレータが搭乗するキャブ24が設けられている。また、旋回フレーム11の後部には、フロント装置5との重量バランスをとるためのカウンタウエイト25が設けられている。そして、キャブ24とカウンタウエイト25との間には、エンジン26、油圧ポンプ(図示せず)が搭載され、これらの搭載機器は外装カバー27によって覆われている。
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
オペレータは、キャブ24に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用の操作レバー(いずれも図示せず)を操作することにより、下部走行体2を前進または後退することができる。また、運転席に着座したオペレータは、作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、旋回軸受装置3の旋回用モータ17によって上部旋回体4を旋回させたり、フロント装置5を俯仰動させたりして土砂の掘削作業を行うことができる。
油圧ショベル1の作業現場は、塵埃や土砂が舞い上がり、これらが旋回軸受装置3から漏れ出したグリースに付着し、サークル10の周囲に土砂等が堆積することがある。
そこで、外輪13の下面13Dには、2個のスクレーパ装置19が設けられている。各スクレーパ装置19は、トラックフレーム6に対して旋回軸受装置3の外輪13と一緒にサークル10の周囲を周回することにより、スクレーパ本体21によってサークル10の周囲に付着して堆積した土砂を掻き取る。これにより、油圧ショベル1の外観を良好に保持することができる。
ところで、油圧ショベル1の走行時や作業時には、振動や障害物との接触によってスクレーパ装置19を取付けているスクレーパ取付ボルト23が緩んで脱落する虞がある。2本のスクレーパ取付ボルト23が緩み、一方のスクレーパ取付ボルト23が脱落した場合には、スクレーパ装置19がサークル10側に移動(回動)することがある。これにより、スクレーパ本体21がサークル10の外周面10B、下側環状シール15B等に干渉し、これらが損傷してしまう。
然るに、本実施の形態によれば、旋回軸受装置3を構成する外輪13の下面13Dには、トラックフレーム6のサークル10の周囲に付着した土砂を掻き取るためのスクレーパ装置19が設けられている。このスクレーパ装置19は、外輪13の下面13Dに2本のスクレーパ取付ボルト23を用いて取付けられる取付板20と、取付板20の下面から下側に延びたスクレーパ本体21とを含んで構成されている。この上で、スクレーパ装置19の取付板20は、スクレーパ装置19を挟んで隣合う2本の外輪取付ボルト16のボルト頭16Bの間隔寸法W1よりも大きな長さ寸法W2を有すると共に、その両端部20C1,20C2が各外輪取付ボルト16よりも外輪13の径方向の外側に配置されている。
次に、スクレーパ装置19がサークル10に移動するのを規制する機能について図4を用いて説明する。本実施の形態では、スクレーパ装置19の取付板20の長さ寸法W2は、スクレーパ装置19を挟んで隣合う2本の外輪取付ボルト16のボルト頭16Bの間隔寸法W1よりも大きな寸法に設定している。
詳しくは、図4中において下側に位置するスクレーパ取付ボルト23の中心点C1から上側に位置する外輪取付ボルト16のボルト頭16Bまでの距離寸法L1よりも、スクレーパ取付ボルト23の中心点C1から広幅部20Cの端部20C1までの距離を寸法L2を大きな寸法としている。同様に、図4中において上側に位置するスクレーパ取付ボルト23の中心点C2から下側に位置する外輪取付ボルト16のボルト頭16Bまでの距離寸法よりも、スクレーパ取付ボルト23の中心点C2から広幅部20Cの端部20C2までの距離寸法を大きな寸法としている。
従って、例えば、図4中に記載した2本のスクレーパ取付ボルト23のうち、図中で上側に位置するスクレーパ取付ボルト23が緩んで脱落した場合、図中の下側に位置するスクレーパ取付ボルト23の中心点C1を中心にし、スクレーパ装置19がサークル10に向けて矢示A方向に回動する。この場合、二点鎖線で示すように、取付板20の広幅部20Cの端部20C1が外輪取付ボルト16のボルト頭16Bに当接する。一方、図中で下側に位置するスクレーパ取付ボルト23が緩んで脱落した場合でも、スクレーパ装置19がサークル10に向けて矢示B方向に回動したときには、取付板20の広幅部20Cの端部20C2が外輪取付ボルト16のボルト頭16Bに当接する。
これにより、スクレーパ装置19がサークル10側に移動しようとするのを規制することができ、スクレーパ装置19との干渉によるサークル10の外周面10B、下側環状シール15B、スクレーパ本体21等の損傷を未然に防ぐことができる。この結果、旋回軸受装置3やスクレーパ装置19の耐久性を向上することができる。
また、スクレーパ装置19のスクレーパ本体21は、外輪13から内輪12に向けて径方向の内向きに延びて形成している。これにより、1枚の板体からなるスクレーパ本体21でも、上部旋回体4の右回転、左回転の両方の回転時に土砂を掻き取ることができる。
次に、図6、図7は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、スクレーパ装置のスクレーパ本体は、2枚のスクレーパ本体からなり、これらスクレーパ本体は、取付板に対してサークルに向け互いに離間するようにV字状に配置されたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図6、図7において、第2の実施の形態によるスクレーパ装置31は、第1の実施の形態によるスクレーパ装置19とほぼ同様に、旋回中心を挟んだ対称位置に2個(1個のみ図示)設けられている。スクレーパ装置31は、外輪13の下面13Dに取付けられる取付板32と、取付板32の下面から下側に延びたスクレーパ本体33とにより構成されている。取付板32は、第1の実施の形態による取付板20と同様に、ボルト挿通孔32A、狭幅部32B、広幅部32Cを備えている。
スクレーパ本体33は、第1の実施の形態によるスクレーパ本体21と同様に、外輪13から内輪12に向けて径方向の内向きに延びて形成されている。また、スクレーパ本体33は、2枚、即ち、第1のスクレーパ本体34と第2のスクレーパ本体35とにより構成されている。各スクレーパ本体34,35は、取付板32に対してトラックフレーム6のサークル10に向け互いに離間するようにV字状に配置されている。各スクレーパ本体34,35は、下縁部34A,35A、内縁部34B,35Bおよび円弧縁部34C,35Cを備えている。
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態によれば、第1のスクレーパ本体34と第2のスクレーパ本体35とを、取付板32に対してサークル10に向け互いに離間するようにV字状に配置している。これにより、スクレーパ装置31は、トラックフレーム6に対して旋回軸受装置3の外輪13と一緒にサークル10の周囲を周回したときに、各スクレーパ本体34,35の傾斜を利用して堆積した土砂を効率よく掻き取ることができる。また、2枚のスクレーパ本体34,35をV字状に配置したことで、取付板32に対して強固に取付けることができ、補強構造を省略することができる。
次に、図8は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、スクレーパ装置のスクレーパ本体には、各転動体に供給されて内輪と外輪との間から漏れ出たグリースを掻き取るために、サークルの外周面に弾性的に接触するグリース掻き取り具を取付ける構成としている。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
図8において、第3の実施の形態によるスクレーパ装置41は、第1の実施の形態によるスクレーパ装置19とほぼ同様に、外輪13の下面13Dに取付けられる取付板42と、取付板42の下面から下側に延びたスクレーパ本体43と、取付板42に対するスクレーパ本体43の取付強度を高める一対の補強板44とにより構成されている。しかし、第3の実施の形態によるスクレーパ装置41は、スクレーパ本体43にグリース掻き取り具45が設けられている点で、第1の実施の形態によるスクレーパ装置19と相違している。なお、取付板42は、第1の実施の形態による取付板20と同様に、ボルト挿通孔42A、狭幅部42B、広幅部42Cを備えている。
グリース掻き取り具45は、スクレーパ本体43の下側にボルト46を用いて取付けられている。このグリース掻き取り具45は、トラックフレーム6の上面板6B、サークル10の外周面10Bおよび根元部位10Dを傷付けないように、弾性を有する樹脂材料からなり、上面板6B、外周面10B、根元部位10Dに密着するように扇状に形成されている。
かくして、このように構成された第3の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第3の実施の形態によれば、スクレーパ装置41のスクレーパ本体43には、サークル10の外周面10Bに弾性的に接触するグリース掻き取り具45を取付けている。これにより、各鋼球14に供給されて内輪12と外輪13との間から漏れ出たグリースは、グリース掻き取り具45によって掻き取ることができる。この結果、油圧ショベル1の外観をより一層良好にすることができる。
なお、第1の実施の形態では、スクレーパ装置19は、旋回軸受装置3の外輪13に、旋回中心を挟んだ対称位置に2個設けた場合を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、スクレーパ装置19を、外輪13の周方向の1箇所または3箇所以上に設ける構成としてもよい。この構成は、他実施の形態にも同様に適用することができるものである。
第1の実施の形態では、旋回軸受装置3の転動体として鋼球14を用いた場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、転動体として円筒ころ、円錐ころ等を用いる構成としてもよい。この構成は、他実施の形態にも同様に適用することができるものである。
さらに、各実施の形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。また、油圧ショベル以外にも、旋回軸受装置を備えた油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用することができる。