以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
図1は、本発明を適用した仮設足場用安全装置の実施の形態例に係る全体正面図である。図2は、本発明を適用した仮設足場用安全装置の実施の形態例に係る全体側面図である。図1及び図2に示す仮設足場用安全装置1が本発明を適用した仮設足場用安全装置であり、本仮設足場用安全装置1は、屋上などにおいて建物102の外側(輪郭101)に沿って複数取り付けられる支持部10と、各支持部10に取り付けら建物の輪郭101に沿って水平に延びる二重の吊下げ部(第1吊下げ部20、第2吊下げ部30)と、各吊下げ部にそれぞれ吊下げられる安全ロープ部40及び防護ネット部50と、を備える。本仮設足場用安全装置1により、仮設足場の組立及び解体の際における作業者200及び周辺歩行者双方の安全を、一式の装置で確保できるようになり、かつ、安全装置1を仮設足場400とは独立した装置とすることができる。これにより、仮設足場400の組立及び解体の際の安全対策を効率的に行うことができ、仮設足場400自体の組立作業及び解体作業に支障をきたすこともない。
図1及び図2においては、仮設足場用安全装置1の各部についてその概要を示しているが、支持部10は、仮設足場400を組み立てる際に、建物102の屋上の壁(建物壁100、パラペット)などに取り付けられ、二重の吊下げ部(第1吊下げ部20、第2吊下げ部30)を介して、安全ロープ部40及び防護ネット部50を支持する。
各支持部10は、通常、図1に示されるように、所定のピッチP(例えば、1,820mm)で、建物の輪郭101に沿って(図1のX方向に)取り付けられる。また、取り付けられた際には、後述する支持部10の水平部材12は、図2に示されるように、建物の外側に向かってほぼ水平に(図2のY方向に)突き出される(張り出される)。なお、水平部材12は、建物の輪郭線に対して概ね法線方向に突き出される。
二重の吊下げ部(第1吊下げ部20、第2吊下げ部30)は、図2に示されるように、建物の輪郭101を基準にして、内側に(図2のY方向において建物の輪郭101に近い側に)敷設されるのが第1吊下げ部20であり、外側に(図2のY方向において建物の輪郭101から遠い側に)敷設されるのが第2吊下げ部30である。吊下げ部の具体的な構成は後述するが、図2に示されるように、第1吊下げ部20には、安全ロープ部40が吊り下げられ、第2吊下げ部30には、防護ネット部50が吊り下げられる。
安全ロープ部40は、仮設足場400の組立作業及び解体作業を行う作業員200のための、いわゆる命綱の機能を担う部分である。具体的な構成は後述するが、安全ロープ部40は、概ね鉛直方向に(図1及び図2におけるZ方向に)延びるロープ(ワイヤーロープ41、親綱43)によって作業員200の命綱を構成し、当該ロープは、水平方向(図1及び図2のX方向)への作業員200の移動に伴って同方向にスライド可能である。
防護ネット部50は、仮設足場400の組立作業中及び解体作業中において物が周辺歩行者へ落下するのを防止するための装置であり、仮設足場400の外側(図2におけるY方向左側)をネット51で囲うように構成される。なお、ネット51は、水平方向(図1及び図2のX方向)に移動させることが可能であり、当該動作により、カーテンのように、ネット51を広げたり縮めたりすることができる。さらに、防護ネット部50では、ネット51を上下方向(図1及び図2のZ方向)に移動させる機構を備える(図1及び図2では図示せず)。
このような全体構成を備える本仮設足場用安全装置1の各部について、以下、具体的な構成を説明する。まず、支持部10について説明する。図3は、仮設足場用安全装置1の上部の斜視図である。図4は、仮設足場用安全装置1の上部の側面図である。図5は、支持部10及び第1吊下げ部20に関する分解図及び側面図である。
図3には、二つの支持部10がパラペットなどの建物壁100に取り付けられている状態を示しており、各支持部10は、水平部材12と挟持部13(第1挟持部13a及び第2挟持部13b)を備える。
水平部材12は、図3に示される通り、支持部10が建物壁100に取り付けられた状態で、建物の輪郭101に対して概ね垂直方向に、建物102の外側へ、概ね水平に突き出る。
図3−5に示されるように、水平部材12は、管状部材で構成され、一例として、STPG(圧力配管用炭素鋼鋼管)370 SCH40 48.6mmφ(外径)×3.7mm(厚さ)の管部材で構成される。なお、一例として、長手方向の寸法は、1,375mmである。
また、水平部材12には、図5の(A)に示されるように、他の部品を取り付けるための取付穴(121−124)が設けられ、取付穴121は後述する第1挟持部13a用であり、取付穴122は第2挟持部13b用であり、取付穴123は第1吊下げ部20及び第2吊下げ部30用であり、取付穴124は滑り止め部材16用である。各取付穴(121−124)は、一例として、11mmφ(直径)の寸法である。なお、これらの取付穴(121−124)は、それぞれ、図5の(A)に見える側とその反対側の同位置に1対の穴として形成されている。
当該水平部材12は、仮設足場用安全装置1が組み立てられた状態で、安全ロープ部40及び防護ネット部50からの荷重を受ける。
次に、挟持部13は、支持部10を建物壁100に取り付ける部分であり、図3、図4に示されるように、建物壁100を両側(建物102の内側と外側)から挟むクランプ機能を備える。挟持部13は、建物壁100を建物の内側から押える第1挟持部13aと建物壁100を建物の外側から押える第2挟持部13bとを備える。
第1挟持部13aは、図5の(B)に示されるように、第1挟持部13aを水平部材12に取り付けるための取付管131a、その取付管131aに固定された腕部材132a、その腕部材132aに固定された圧着部台座133aと、その圧着部台座133aに固定された二つの圧着部134a及び135aを備える。
取付管131aは、一例として、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)13A 60.5mmφ(外径)×5mm(厚さ)の管部材で構成され、長手方向の寸法は、120mmである。また、取付管131aには、水平部材12に取り付けるための二つの取付穴1311a(一例として、寸法が11.5mmφ(直径))が設けられる。なお、これらの取付穴1311aは、それぞれ、図5の(B)に見える側とその反対側の同位置に1対の穴として形成されている。
取付時には、取付管131aと水平部材12を嵌合し(取付管131aに水平部材12を挿入し)、図4に示す位置で、取付穴121と取付穴1311aの位置を合わせ、それらの穴を貫通するようにボルトを通し、取付管131aの両外側からボルトとナットにより締め付けて固定する。このようにして、二つの取付穴121の両方について固定する。
腕部材132a及び圧着部台座133aは、それぞれ、H鋼及び平板の鋼材で構成される。
圧着部134a及び135aは、それぞれ、84mmφ及び75mmφの外径を有する円形面で建物壁100に圧着する。圧着部134a及び135aは、一例として、硬質ゴムで構成される。
次に、第2挟持部13bは、図5の(C)に示されるように、第2挟持部13bを水平部材12に取り付けるための取付管131b、その取付管131bに固定された腕部材132b、その腕部材132bに固定された圧着部台座133bと、その圧着部台座133bに固定された圧着部134bを備える。
取付管131bは、一例として、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)13A 60.5mmφ(外径)×5mm(厚さ)の管部材で構成され、長手方向の寸法は、150mmである。また、取付管131bには、水平部材12に取り付けるための二つの取付穴1311b(一例として、寸法が11.5mmφ(直径))が設けられる。なお、これらの取付穴1311bは、それぞれ、図5の(C)に見える側とその反対側の同位置に1対の穴として形成されている。
取付時には、取付管131bと水平部材12を嵌合し(取付管131bに水平部材12を挿入し)、図4に示す位置で、取付穴122と取付穴1311bの位置を合わせ、それらの穴を貫通するようにボルトを通し、取付管131bの両外側からボルトとナットにより締め付けて固定する。なお、このような固定は、第2挟持部13bの場合、二つある取付穴1311bのうちのいずれか一方で行う。また、この際に、水平部材12の3つの取付穴122のいずれか一つを選択して固定する。これら取付穴1311bと取付穴122の選択の仕方により、第2挟持部13bの、水平部材12の長手方向の取付位置を6通りに変更することができる。
腕部材132bは、H鋼で構成される。
圧着台座133bは、腕部材132bに固定される管部材1331、その管部材1331に挿入された台形ナット1332、その台形ナット1332に挿入される台形ネジ1333、その台形ネジ1333の圧着部134b側に固定された台形ナット1334を備える。台形ナット1334には、調整穴1335が設けられ、その調整穴1335に棒状部材を挿入し、台形ネジ1333を回転させることにより、圧着部134bを腕部材132bに対して移動させることができる。この水平部材12の長手方向への移動により、挟持部13で建物壁100をしっかりと挟持することができる。また、上述した取付時に使用する取付穴1311bと取付穴122の選択と共に、当該圧着部134bの移動により、各種の建物壁100の厚さに対応可能である。
圧着部134bは、58mmの外径を有する円形面で建物壁100に圧着する。圧着部134bは、一例として、硬質ゴムとその受けプレートで構成される。
なお、支持部10は、滑り止め部材16を備え(図5の(F)を参照)、滑り止め部材16は、水平部材12の先端(挟持部13と反対側の端部)に取り付けられ、吊下げ部20、30等が水平部材12から抜け出す(滑り出る)のを防止する部分である。滑り止め部材16は、一例として、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)13A 60.5mmφ(外径)×5mm(厚さ)の管部材で構成され、長手方向の寸法は、25mmである。また、滑り止め部材16には、水平部材12に取り付けるための取付穴161(一例として、寸法が11.5mmφ(直径))が設けられる。なお、これらの取付穴161は、図5の(F)に見える側とその反対側の同位置に1対の穴として形成されている。
取付時には、滑り止め部材16と水平部材12を嵌合し(滑り止め部材16に水平部材12を挿入し)、図4に示す位置で、取付穴124と取付穴161の位置を合わせ、それらの穴を貫通するようにボルトを通し、滑り止め部材16の両外側からボルトとナットにより締め付けて固定する。
次に、第1吊下げ部20は、安全ロープ部40を吊下げる部分であり、支持部10の水平部材12への取付け部、レールケース25、レール部26、単車27、及び、フック28(吊下げ用フック)を備える。
図3に示されるように、第1吊下げ部20のレール部26は、建物の輪郭101に概ね平行に、かつ、概ね水平に敷設される。また、図4に示されるように、レール部26には単車27が嵌合され、当該単車27は、レール部26に沿って移動可能に設けられる。また、単車27には下方に(図4のZ方向下方に)向けてフック28が取り付けられる。当該フック28には、安全ロープ部40が連結される。
第1吊下げ部20のこのような構成により、安全ロープ部40はレール部26に沿って移動可能となる。なお、第1吊下げ部20の単車27及びフック28を複数設ける構成としても良い。この場合には、複数の安全ロープ部40を設けることができ、複数の作業員200に対する安全対策を取ることができる。
水平部材12への取付け部は、図5の(D)に示されるように、取付管21、その取付管21に固定される取付部材22、その取付部材22に固定される結合部材23を備える。
取付管21は、一例として、STKM(機械構造用炭素鋼鋼管)13A 60.5mmφ(外径)×5mm(厚さ)の管部材で構成され、長手方向の寸法は、120mmである。また、取付管21には、水平部材12に取り付けるための二つの取付穴211(一例として、寸法が11.5mmφ(直径))が設けられる。なお、これらの取付穴211は、それぞれ、図5の(D)に見える側とその反対側の同位置に1対の穴として形成されている。
取付時には、取付管21と水平部材12を嵌合し(取付管21に水平部材12を挿入し)、図4に示す位置で、取付穴123と取付穴211の位置を合わせ、それらの穴を貫通するようにボルトを通し、取付管21の両外側からボルトとナットにより締め付けて固定する。なお、このような固定は、二つある取付穴211のうちのいずれか一方で行う。また、この際に、水平部材12の2つの取付穴123のいずれか一つを選択して固定する。これら取付穴211と取付穴123の選択の仕方により、第1吊下げ部20の、水平部材12の長手方向の取付位置を変更することができる。
取付部材22及び結合部材23は、それぞれ、管部材及び板部材で構成される。
レールケース25は、図5の(E)に示されるように、結合部材24によって、結合部材23と結合される。結合部材24は、ボルト及びナットで結合部材23と固定される。なお、結合部材24は、板部材で構成される。
レールケース25は、レール部26を挿入するケースであり、結合部材24に固定される。レールケース25は、図5の(E)に示されるように、底部が開放された矩形の中空断面を有する角筒であり、その長さは、一例として、250mmである。また、レールケース25は、図3及び図5の(E)に示されるように、レール部26を固定するための複数の(一例として、4つの)取付穴251を備える。なお、レールケース25は、板状の鋼材で構成される。
図5の(F)には、第1吊下げ部20のレール部26周辺の側面図が示される。具体的には、図5の(E)の矢印Aの方向から見た側面図である。レール部26は、長手方向(図4のX方向)の寸法が、支持部10の取付けピッチPと同寸(一例として、1,820mm)の複数のレール部材から構成されており、各レール部材は、図4のX方向の支持部10の位置(図5の(F)のBで指し示す位置)で継ぎ合わされている。
各レール部材の長手方向の両端部には、それぞれ、所定数(一例として2個)の取付穴261が設けられる。なお、これらの取付穴261は、レール部材をレールケース25の取り付け位置に挿入した際に、レールケース25の取付穴251と重なるように設けられている。
また、図5の(F)に示されるように、各取付穴261には、固定ナット262が溶接などにより予め取り付けられている(固定されている)。各レール部材をレールケース25に固定する際には、取付穴251の上方からボルトを挿入し、そのボルトを取付穴251及び取付穴261に通して、固定ナット261にねじ込む(締め付ける)。この取り付け作業は、建物102の屋上付近における高所で行われるので、予め固定ナット261をレール部材に取り付けておくことで、作業を効率的かつ安全に行うことができる。
また、図5の(F)には、単車27及びフック28が示されており、単車27が矢印Cの方向に回転することにより、フック28及びそれに吊下げられる安全ロープ部40が矢印Dの方向に移動する。
第2吊下げ部30は、防護ネット部50を吊下げる部分であり、支持部10の水平部材12への取付け部、レールケース35、レール部36、単車37、及び、フック38(吊下げ用フック)を備える。
図3に示されるように、第2吊下げ部30のレール部36は、建物の輪郭101に概ね平行に、かつ、概ね水平に敷設される。また、第2吊下げ部30は、第1吊下げ部20の外側(建物102から離れる側)の位置に敷設される。また、図4に示されるように、レール部36には単車37が嵌合され、当該単車37は、レール部36に沿って移動可能に設けられる。また、単車37には下方に(図4のZ方向下方に)向けてフック38が取り付けられる。当該フック38には、防護ネット部50が連結される。
第2吊下げ部30のこのような構成により、防護ネット部50はレール部36に沿って移動可能となる。なお、第2吊下げ部30の単車37及びフック38は、後述するネット51の枚数に応じて複数設けられる。
第2吊下げ部30の、水平部材12への取付け部、レールケース35、レール部36、単車37、及び、フック38の各構成は、図5の(D)−(F)に基づいて説明した、第1吊下げ部20の、水平部材12への取付け部、レールケース25、レール部26、単車27、及び、フック28の各構成と同様である。
次に、安全ロープ部40は、作業員200の墜落防止装置であり、仮設足場400の組立作業又は解体作業を行う作業員200のハーネス300に取り付けられる。
安全ロープ部40は、図1及び図2に示されるように、第1吊下げ部20のフック28に取り付けられるワイヤーロープ41、ワイヤーロープ41の下につながれる親綱43、親綱43とハーネス300の綱をつなぐグリップ44、及び、ワイヤーロープ41と親綱43のジョイント部であるスイベル45を備える。
この安全ロープ部40は、前述のとおり、単車27がレール部26に沿って移動できるので、図1のX方向に水平移動できる。したがって、安全ロープ部40は、作業員200の水平移動に追随して移動し、作業員200の動きを邪魔しない。また、親綱43は、通常時には、作業員200の位置に応じて長さが伸縮するが、作業者200が墜落した場合には、グリップ44が親綱43を挟んで親綱43が伸びないようになる。また、スイベル45により、ワイヤーロープ41と親綱43間の回転(ねじれ)が解消され、いわゆるより戻しを防止できる。
安全ロープ部40の上部は、図4に示されるように、ワイヤーロープ41の先端に設けられた連結具46により、フック28に取り付けられる。なお、図4の(A)は、連結具46の側面図である。連結具46には、図4に示すような楕円形連結金具を用いることができる。
上述の通り、安全ロープ部40は、作業を行う作業員200の数に応じて複数備えることができる。
なお、安全ロープ部40の構成は、作業員200の命綱としての機能を果たすものであれば、他の構成であっても良い。
次に、防護ネット部50は、周辺歩行者に物を落下させないための落下防止装置である。図6は、防護ネット部50が取り付けられた状態を示す正面図である。図7は、防護ネット部50が取り付けられた状態を示す側面図である。
防護ネット部50は、図6及び図7に示すように、ネット51、固定ロープ52、移動ロープ53、ウィンチ54、水平ロープ55、連結具56、57、59、及び、下部機構58を備える。
固定ロープ52は、図4に示されるように、その先端に設けられた連結具59により、第2吊下げ部30のフック38に連結される。連結具59には、連結具46と同様に、楕円形連結金具を用いることができる。また、固定ロープ52は、その下端では、下部機構58に連結されている。したがって、固定ロープ52は、敷設後は上下方向(図6及び図7のZ方向)には移動しない。なお、固定ロープ52は、一例として、直径6mmのワイヤーロープで構成することができる。
ネット51は、物が仮設足場400から外へ落下するのを直接的に防止する防護ネットであり、材質としては従前の建築工事用ネットと同様の物を用いることができる。また、ネット51の1枚の縦横の(図6のX方向及びZ方向の)寸法は、従前の建築工事用ネットの規制寸法でよく、1枚で組み立てる仮設足場400を全て囲えるものでなくてよい。
図6及び図7に示す例では、水平方向に(図6のX方向に)3枚のネット51(51a、51b、51c)が敷設されている。また、各ネット51は、垂直方向(図6のZ方向)には、図6及び図7に示されるように、仮設足場400の数段分の寸法を有している。また、各ネット51の水平方向(図6のX方向)の寸法は、一例として、3,640mmである。
ネット51の上下端(Z方向端部)には、それぞれ、水平ロープ55(55a、55b)が設けられる。なお、水平ロープ55は、一例として、直径3mmのワイヤーロープで構成することができる。
ネット51は、その上端の複数箇所(図6の例では、5か所)で連結具57により、水平ロープ55aに取り付けられる。ネット51と連結具57は固定される。連結具57は、リング状の締結金具であり、そのリング内を水平ロープ55aが通るように(貫通するように)設けられる。したがって、ネット51と連結具57は、水平ロープ55aに対して水平方向に(図6のX方向に)移動可能である。
また、ネット51は、その下端において、上端の場合と同様の態様で、連結具57により、水平ロープ55bに取り付けられる。
また、ネット51は、その左右端(図6のX方向端部)において、複数箇所(図6の例では、5か所)で連結具56により、固定ロープ52に取り付けられる。ネット51と連結具56は固定される。連結具56は、リング状の締結金具であり、そのリング内を固定ロープ52が通るように(貫通するように)設けられる。したがって、ネット51と連結具56は、固定ロープ52に対して垂直方向に(図6のZ方向に)移動可能である。
なお、左右に隣り合うネット51は、図6に示されるように、それらの左右端において、同じ連結具56により、同じ固定ロープ52に取り付けられる(ネット51bとネット51a、及び、ネット51aとネット51cを参照)。
移動ロープ53は、ネット51を上下方向(図6のZ方向)に移動させるためのロープである。移動ロープ53は、その下端では、ネット51の上端の連結具57の一つに連結されている。具体的には、図6に示されるように、移動ロープ53は、ネット51の左端もしくは右端に位置する連結具57に連結されている。
また、移動ロープ53の上部は、図6及び図7に示されるように、ウィンチ54により、巻き上げと繰り出しができる構成となっている。したがって、図6に示されるように、ネット51aの左右端に連結する2本の移動ロープ53を、各ウィンチ54によって巻き上げることにより、ネット51aを図6の矢印zの方向へ引き上げることができる。
なお、移動ロープ53は、一例として、直径6mmのワイヤーロープで構成することができる。
また、ウィンチ54、滑車54−1は、ネット51を上下方向に移動させる際に取り付けられる。
下部機構58は、敷設したネット51をその下部で固定するものであり、地面、建物102、又は、仮設足場400の基部に固定されて設けられる。ネット51の下端に設けられた連結具57は、この下部機構58に取り付けられる。下部機構58は、鋼材などで構成することができる。
なお、ネット51を敷設した状態で、ネット51をたたみ、建物102の外壁を開放する必要がある場合には、ネット51の下部機構58との取付け部を、左右方向(図6のX方向)に移動可能な構造としても良い。具体的には、例えば、下部機構58が左右方向に延びるレールを備え、ネット51の左右端に位置する連結具57を上記レールに嵌合した単車と繋げる、といった構成とすることができる。
なお、図6において、PPは、ネット51を敷設した状態での固定ロープ52のピッチ、すなわち、第2吊下げ部30の単車37及びフック38のピッチを示しており、その長さは、ネット51の幅(例えば、3,640mm)と相応している。
また、仮設足場用安全装置1は、作業足場60を備える。作業足場60は、吊下げ部20、30、安全ロープ部40、及び、防護ネット部50を、組み立てる際、及び、取り外す際に、作業を行うための作業員の足場である。図3に示すように、作業足場60は、床板61と取付部62を備える。矩形の床板61の四隅に設けられた取付部62は、例えば、図3に示されるように、フック形状を有し、支持部10の水平部材12に掛けられる。
なお、支持部10の水平部材12の仕様を、仮設足場400に用いられる部品(部材)と整合性の良いものとすることにより、当該作業足場60として、仮設足場400に用いられるものと同じものを使用することができ、効率的である。
また、仮設足場用安全装置1は、建物102の角を含む輪郭101(外壁)に敷設することもできる。図8は、仮設足場用安全装置1を建物102の角部に敷設した場合の上面図である。図8のRで指し示す部分に示されるように、建物の輪郭101が角になっている部分では、互いに概ね直交する方向に張り出す、二つの支持部10の水平部材12の間で、第1吊下げ部20のレール部26と第2吊下げ部30のレール部36は、円弧状に設けられる。
これにより、第1吊下げ部20の単車27及び第2吊下げ部30の単車37は、建物102の角部を連続して移動(通過)することができ、したがって、安全ロープ部40と連結された作業員200は、ロープの付け替えなどをせずに角部を通過でき、また、防護ネット部50のネット51も角部で区切ることなく使用可能となる。
以上、説明したような構成を備える本仮設足場用安全装置1は、以下のような手順で、組立を行う。まず、建物102の屋上において、仮設足場400を組み立てる範囲に、支持部10を所定の間隔(例えば、1,820mm間隔)で取り付ける。具体的には、支持部10の挟持部13で、支持部10を建物壁100に取り付ける(固定する)。
なお、第1吊下げ部20のレールケース25までの部分と、第2吊下げ部30のレールケース35までの部分は、支持部10を建物壁100に取り付ける前に、予め、支持部10に取り付けておく。
支持部10の取付け後、作業足場60を、図3に示されるように、支持部10の上に取り付ける。
その後、その作業足場から、レールケース25及びレールケース35に、それぞれ、レール部26及びレール部36を取り付ける。具体的には、上述の通り、各取付穴251からボルトを入れて、各固定ナット262に締め込む。
次に、必要な安全ロープ部40(作業員)の数に合った数の単車27及びフック28をレール部26に入れる(嵌合する)。
その後、各フック27に各安全ロープ部40を連結具46により取り付ける(吊下げる)。
また、取り付ける防護ネット部50のネット51の数に相応した数の単車37及びフック38をレール部36に入れる(嵌合する)。
その後、各フック38に各固定ロープ52を連結具59により取り付ける(吊下げる)。なお、防護ネット部50は、ウィンチ54と滑車54−1を除く部分については、予め組み立てられている。また、このフック38に固定ロープ52(防護ネット部50)を取り付ける際には、全てのフック38を近い場所に(一か所に)移動させておく。これにより、作業員は、移動せずに、ネット51をたたんだ状態で(開かない状態で)取り付けることができる。
その後、各フック38を、各ネット51が開く位置まで、レール部36に沿って移動させる。
一方、地上においては、上述した下部機構58を取り付けておき、開かれた各ネット51の下端を下部機構58に取り付け、各ネット51を固定する。なお、下部機構58を、仮設足場400の基部に設ける場合には、仮設足場400の基部も合わせて組み立てておく。
このようにして、仮設足場用安全装置1が組み立てられると、仮設足場400の組み立てを開始し、作業員200は、作業前に、ハーネス300を着用し、それに安全ロープ部40の親綱43を連結させる。
その後、仮設足場400が組み上がっていくが、それに合わせて、順次、ネット51を適切な位置に引き上げていく。その引き上げには、上述したウィンチ54及び滑車54−1を用い、移動ロープ53を巻き上げていく。
組み立てられた仮設足場400を用いて建物102の工事が行われる期間において、夜間など工事が行われていない時間帯に、ネット51をたたんで建物102を開放する場合には、防護ネット部50を吊下げているフック38を移動させる。また、防護ネット部50の下部においては、下部機構58との固定位置を変更する。
なお、仮設足場用安全装置1を解体する場合には、仮設足場400の解体後、上述した組み立て時と逆の手順で作業を行う。
以上の説明からもわかる通り、本仮設足場用安全装置1は、少なくとも、支持部10、第1吊下げ部20の取付管21からレールケース25までの部分、第2吊下げ部30の取付管31からレールケース35までの部分、レール部26、レール部36、単車27及びフック28、単車37及びフック38、安全ロープ部40、及び、防護ネット部50の単位で(区切りで)取り外し可能である。
上述した実施の形態例では、二重の吊下げ部20、30を用いて、安全ロープ部40及び防護ネット部50の両方を備える構成としたが、場合に応じていずれか一方のみを備える構成としても良い。
以上説明したように、本実施の形態例に係る仮設足場用安全装置1では、一式の装置で、作業者200の墜落防止対策と周辺歩行者への物の落下防止対策を図ることができる。したがって、装置全体としてシンプルな構造とすることができ、その組立作業及び解体作業を簡素化することができる。
また、本仮設足場用安全装置1は、仮設足場400とは独立しているので(独立した装置なので)、仮設足場400の組立作業前に完全に安全装置を組み立てておくことができ、確実な安全対策が取れると共に、仮設足場400の作業も効率的にできる。
また、第1吊下げ部20の構造により、安全ロープ部40が建物の輪郭101に沿って移動可能であり、命綱(親綱43)が仮設足場400上を移動する作業員200の移動に追随できる。したがって、作業員200の活動が命綱によって制限されることがない。
また、命綱が上部から作業員200を吊るす構造であり、かつ、上述の通り水平移動可能であるので、作業員200は命綱の掛け替えを行う必要がなく、安全であると共に、作業を効率的に行うことができる。
また、防護ネット部50は、第2吊下げ部30の構造により、上部の取付け部(連結具59)を移動させることができるので、取付け及び取外しの際に、ネット51をたたんだ状態で一か所で作業を行うことができ、効率的であると共に、ネットが風に煽られることがなく安全である。
また、レール部26及びレール部36には、レールケース25及びレールケース35に固定するための固定ナットが予め取り付けられており、高所での作業を安全かつ確実に行うことができる。当該固定ナットの位置は、レール部の内側の手が届きづらい場所にあり、現地での取付けは非常に難しい。
また、建物102の角部では、レール部26及びレール部36を円弧上に敷設し、角部の両側を連続した装置とすることができる。これにより、作業員200は、命綱の掛け替えなどをせずに角部を通過することができ、安全であると共に作業を効率的に行うことができる。
また、支持部10の上に容易に作業足場60を取り付けることができ、レール部26、36、安全ロープ部40、防護ネット部50などの取付け作業及び取外し作業を、安全かつ確実に行うことができる。
また、上述の通り、本仮設足場用安全装置1は、各部が取外し可能であり、搬送及び取扱が容易である。
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。