JP2019052147A - 化学的な安定性が改善された、プレガバリン含有口腔内崩壊錠 - Google Patents

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浩人 寺田
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Abstract

【課題】プレガバリンの化学的な安定性等が改善された其の口腔内崩壊錠を製造するための技術的手段を提供すること。【解決手段】プレガバリン及び崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠であって、当該崩壊剤がヒドロキシプロピルスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びデンプングリコール酸ナトリウムから選択されることを特徴とする口腔内崩壊錠を提供する。当該崩壊剤は低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又は/及びデンプングリコール酸ナトリウムであることがより好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、原薬としてプレガバリンを含有する製剤に関するものであり、其の保存条件下における原薬の化学的な安定性を改善するための詳細な方法を開示するものである。
プレガバリン(一般名)は、化学名が(3S)−3−アミノメチル−5−メチルヘキサン酸と記される、γ−アミノ酪酸(GABA)の誘導体である。プレガバリンは、神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛の治療に有用な薬剤である。(非特許文献1等参考)。
現在、プレガバリンはカプセル剤又は口腔内崩壊錠の剤形で日本国内の医療現場に提供されている。プレガバリンを含有する錠剤の処方や製造方法は、以下の特許文献1〜3等で紹介されている。特許文献1の実施例(実施例3、4:迅速放出錠剤、実施例7:口腔内崩壊錠)にはプレガバリン並びにクロスポビドンである崩壊剤を含む錠剤が記載され、特許文献2の実施例にはプレガバリン並びにクロスポビドン又はデンプングリコール酸ナトリウムである浮遊補助剤を含む徐放錠が記載される。
口腔内崩壊錠は近年開発された剤形であり、唾液程度の少量の水で素早く崩壊する性質をもつことから、普通錠に比べて服用時の利便性が高いことが一般に知られる。しかしながら、プレガバリンを含有する口腔内崩壊錠の技術について紹介した文献の数は乏しいのが現状である。そこで本発明者は、製剤中に含まれるプレガバリンの化学的な安定性を改善する新たな技術の開発を目指した。
特表2010−524991号公報 特表2014−521639号公報 特許第4334610号公報
「リリカ(登録商標) カプセル OD錠 25mg・75mg・150mg」医薬品インタビューフォーム 2017年6月改訂(第10版)
本発明は、適切な崩壊剤の選択により、プレガバリンの化学的な安定性等が改善された其の口腔内崩壊錠を製造するための技術的手段を提供することを目的とするものである。
本発明者は、口腔内崩壊錠の製造に用いる適切な崩壊剤を選択するための検討を鋭意重ねた結果、プレガバリンと特定の崩壊剤を混合した場合に、プレガバリンの化学的な安定性が優れていることを見出した。本発明者はその知見に基づいて更に鋭意検討を重ね、下記の本発明を完成するに至った。
本発明の好ましい構成は以下(1)〜(5)において記述されるものである。
(1)プレガバリン及び崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠であって、当該崩壊剤がヒドロキシプロピルスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びデンプングリコール酸ナトリウムから選択されることを特徴とする口腔内崩壊錠。
(2)プレガバリン及び崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠であって、当該崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はデンプングリコール酸ナトリウムであることを特徴とする口腔内崩壊錠。
(3)プレガバリン及び崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠であって、当該崩壊剤がデンプングリコール酸ナトリウムであることを特徴とする口腔内崩壊錠。
(4)錠剤全重量に対して当該崩壊剤が3.0〜10.0重量%含まれる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の口腔内崩壊錠
(5)プレガバリンと当該崩壊剤を混合する工程を含む、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の口腔内崩壊錠を製造する方法。
本発明は、適切な崩壊剤の選択により、プレガバリンの化学的な安定性等が改善された其の口腔内崩壊錠を製造するための技術的手段を提供することを目的とするものである。
以下で本発明の、プレガバリン及び特定の崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠の処方及び其の製造方法を詳細に説明する。但し、以下の記載は本発明を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲をこの記載範囲にのみ限定する趣旨ではない。
<原薬>
本発明の口腔内崩壊錠は原薬としてプレガバリンを含有するものであり、好ましくは、他の原薬を含まない、単剤である。プレガバリンのメディアン径(d50)は5.0〜100.0μmであることが好ましい。プレガバリンは、必要に応じて適宜乾式又は湿式粉砕を行い、任意の粒子径に調整することも可能である。尚、メディアン径はレーザー回析・散乱法によって測定(体積基準)することが可能である。プレガバリンは口腔内崩壊錠{望ましくは素錠(フィルムコーティング層で覆われていない錠剤を指す。以下同じ。)}の全重量に対して20.0〜50.0重量%、好ましくは25.0〜40.0重量%の範囲内で錠剤中に含有される。
<口腔内崩壊錠の形態>
口腔内崩壊錠である本発明の錠剤の形態は、打錠等により圧縮成形した素錠のままであることが望ましいが、或いはコーティング剤を含むフィルムコーティング層で素錠を被覆してフィルムコーティング錠とすることも必要な検討を適宜行った上で可能である。本発明の錠剤の形状は、円形錠、円形R錠、円形隅角錠、円形2段R錠や異形錠(楕円錠等)等のいずれの形状でもよい。
<特定の崩壊剤>
本発明の口腔内崩壊錠は、好適な特定の崩壊剤を含有する。前記の特定の崩壊剤として具体的には、ヒドロキシプロピルスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びデンプングリコール酸ナトリウムから選択され、より好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はデンプングリコール酸ナトリウムであり、更により好ましくはデンプングリコール酸ナトリウムの単独又はデンプングリコール酸ナトリウムと低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの両方である。前記の特定の崩壊剤は、錠剤全重量に対して1.0〜20.0重量%、好ましくは3.0〜10.0重量%の範囲内で錠剤中に含有される。
尚、本発明の口腔内崩壊錠の製造に不適な崩壊剤として、まず結晶セルロース、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドンが挙げられ、更にはアルファー化デンプン、カルメロースナトリウムも含めて挙げられる。当然、本発明の口腔内崩壊錠はこれらの崩壊剤を含まないことが望ましい。
本発明の口腔内崩壊錠を製造するためには、一般的に使用されている結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤等の添加剤も使用することができる。尚、本明細書において、各種添加剤(賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等)の語句の解釈は其々、製剤化において其の添加剤としての役割を発揮することが必須に期待されて使用されるもので結果的にも其の添加剤としての役割が発揮されたもの、と解することが好ましい。また当然であるが、本明細書における添加剤の語句の解釈において原薬が含まれることはない。
<賦形剤>
賦形剤として、具体的には乳糖水和物、結晶セルロース、無水乳糖、D−マンニトール、イソマルト、エリスリトール、シクロデキストリン等から選ばれ、好ましくはD−マンニトール、イソマルト、エリスリトールから選ばれる。上記の賦形剤は、錠剤の全重量に対して、好ましくは25.0〜70.0重量%の範囲で素錠中に含有される。
結合剤として、具体的にはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、メチルセルロース、ポビドン、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー、ポリエチレングリコール、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液等を挙げる事ができ、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース又はポリビニルアルコールである。上記の結合剤は、錠剤の全重量に対して、好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲内で錠剤中に含有される。
滑沢剤として、具体的には軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、硬化油等を挙げる事ができる。滑沢剤は、錠剤の全重量に対して、好ましくは0.1〜5.0重量%の範囲内で錠剤中に含有される。
コーティング剤として、具体的にはヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、タルク等を挙げる事ができる。コーティング剤は、錠剤の全重量に対して、好ましくは2.0〜10.0重量%の範囲内で錠剤中に含有される。
遮光剤として、具体的には酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄、黄酸化鉄、褐色酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号等を挙げる事ができる。遮光剤は、錠剤の全重量に対して、好ましくは0.2重量%以上の範囲で錠剤中に含有される。遮光剤はフィルムコーティング層に含まれることが好ましい。フィルムコーティング層100.0重量部に対して遮光剤は、好ましくは3.0〜10.0重量部の範囲内でフィルムコーティング層中に含有される。
本発明の口腔内崩壊錠は、プレガバリンを含む顆粒を含有するものであることが好ましい。当該顆粒は、錠剤の全重量に対して、好ましくは50.0〜99.0重量%の範囲で錠剤中に含有される。
本発明の錠剤は、一般的な製造方法によって作成することが可能であり、例えば以下の製造方法によって作成することが可能である。
まず、原薬、賦形剤等を混合した粉末に水等に溶解した結合剤を加えて流動層造粒を行って造粒物を製造する。そして、得られた造粒物を整粒(乾式解砕等)した後に、崩壊剤、滑沢剤等と混合して打錠機によって圧縮成形して錠剤(素錠)とする。更に所望によって、得られた素錠にフィルムコーティング層を施すことが可能である。本発明の素錠を打錠して製造する際の打圧は、好ましくは400〜1200kgfの範囲内の任意の数値から選ばれる。
また、包装用シートとアルミ箔等で錠剤を挟んで覆い、加熱シールすることで、本発明の錠剤を含むPTPシート製品を得ることは可能である。其の包装用シートに使用される具体的な素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。尚、湿度に対する本発明の錠剤の安定性を改善するためには、乾燥機能を有した素材を用いてPTPシート製品を製造したり、PTPシート製品をアルミピロー包装したり、乾燥剤を錠剤と共に瓶に封入する等の周知の方法を行うことが可能である。
以下に実施例等により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。以下の実施例1、比較例1に記載の混合末の製造において、プレガバリンは事前にその粒子径分布がd10=8.0、d50=44.8、d90=152.7{レーザー回析・散乱法によって測定(体積基準)}であるものを使用した。
プレガバリン0.5gと、崩壊剤0.5gをポリ袋で混合し、混合粉末を得た。崩壊剤はヒドロキシプロピルスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びデンプングリコール酸ナトリウムのいずれかである。
[比較例1]
プレガバリン0.5gと、崩壊剤0.5gをポリ袋で混合し、混合粉末を得た。崩壊剤は結晶セルロース、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム及びクロスポビドンのいずれかである。
[試験例1]
実施例1及び比較例1の各混合粉末を、温度50℃相対湿度75%の開放条件下で17日間保存した後に、プレガバリン由来の総類縁体の生成量{プレガバリン及び当該総類縁体の全体量に対する割合(%)で示す。}を測定した。其の測定は高速液体クロマトグラフィー法(定量方法は面積百分率法を使用した。)によって行った。上記の測定結果(小数点第3位以下は四捨五入した。)は下記の表1に示す。
Figure 2019052147
表1より、ヒドロキシプロピルスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はデンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンを含む混合粉末は、他の崩壊剤を含む比較例の混合粉末に対して、顕著にプレガバリン由来の総類縁体の生成量が低く、優れた品質をもつことが示された。
本発明により適切な崩壊剤が選択され、過酷な保存条件下における口腔内崩壊錠中のプレガバリンの化学的な安定性が改善することが期待され、高品質なプレガバリンを含有する口腔内崩壊錠を製造して医療現場に提供することも併せて期待される。

Claims (5)

  1. プレガバリン及び崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠であって、当該崩壊剤がヒドロキシプロピルスターチ、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース及びデンプングリコール酸ナトリウムから選択されることを特徴とする口腔内崩壊錠。
  2. プレガバリン及び崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠であって、当該崩壊剤が低置換度ヒドロキシプロピルセルロース又はデンプングリコール酸ナトリウムであることを特徴とする口腔内崩壊錠。
  3. プレガバリン及び崩壊剤を含有する口腔内崩壊錠であって、当該崩壊剤がデンプングリコール酸ナトリウムであることを特徴とする口腔内崩壊錠。
  4. 錠剤全重量に対して当該崩壊剤が3.0〜10.0重量%含まれる、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔内崩壊錠
  5. プレガバリンと当該崩壊剤を混合する工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の口腔内崩壊錠を製造する方法。
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