以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図において、X、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向を第1の方向X、第2の方向Y、及び第3の方向Zとして説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、インクジェット式記録ヘッドの流路形成基板の要部平面図であり、図3は、図2のA−A′線に準じたインクジェット式記録ヘッドの断面図であり、図4は、図3の要部を拡大した図である。
図示するように、インクジェット式記録ヘッド1(以下、単に記録ヘッド1とも言う)を構成する第1の基板である流路形成基板10は、ステンレス鋼やニッケル(Ni)などの金属、酸化ジルコニウム(ZrOX)あるいは酸化アルミニウム(AlXOY)を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、酸化シリコン(SiOX)、酸化マグネシウム(MgO)、ランタンアルミネート(LaAlO3)のような酸化物などを用いることができる。本実施形態では、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなる。
流路形成基板10には、一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された凹部である圧力発生室12がインクを吐出する複数のノズル21が並設される第1の方向Xに沿って並設されている。また、流路形成基板10には、圧力発生室12が第1の方向に並設された列が第2の方向Yに複数列、本実施形態では、2列設けられている。本実施形態では、一方の列を構成する圧力発生室12を第1の圧力発生室12Aと称し、他方の列を構成する圧力発生室12を第2の圧力発生室12Bと称する。なお、第1の圧力発生室12Aが、第1の凹部に相当し、第2の圧力発生室12Bが第2の凹部に相当する。また、流路形成基板10には、第2の方向Yにおける圧力発生室12の一端側にインク供給路14と第1液供給室13とが隔壁によって区画されている。すなわち、本実施形態では、流路形成基板10には、各ノズル21に連通する個別流路として、圧力発生室12とインク供給路14と第1液供給室13とが設けられている。つまり、本実施形態の第1液供給室13は、圧力発生室12の各々に独立して設けられている。なお、本実施形態では、第1液供給室13を圧力発生室12の各々に独立して設けるようにしたが、特にこれに限定されず、第1液供給室13を複数の圧力発生室12に共通して連通するように設けてもよい。すなわち、第1液供給室13が複数の個別流路に共通して連通する共通液室の一部を構成してもよい。
インク供給路14は、第1の方向Xにおいて圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、第1液供給室13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。なお、インク供給路14は、幅を絞る構成に限定されず、第3の方向Zの高さを絞るようにしてもよい。なお、特に図示していないが、圧力発生室12と第1液供給室13とインク供給路14との内壁面には、耐液体性(耐インク性)を有する保護膜が設けられている。ここで言う耐液体性(耐インク性)とは、アルカリ性のインクに対する耐エッチング性のことである。このような保護膜としては、例えば、酸化タンタル(TaOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)から選択される少なくとも1種の材料を単層又は積層したものを用いることができる。
流路形成基板10の圧力発生室12の開口する面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。なお、ノズルプレート20は、ステンレス鋼やニッケル(Ni)などの金属、シリコン単結晶基板、酸化ジルコニウム(ZrOX)あるいは酸化アルミニウム(AlXOY)を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、酸化シリコン(SiOX)、酸化マグネシウム(MgO)、ランタンアルミネート(LaAlO3)のような酸化物などを用いることができる。ノズルプレート20には、第1の圧力発生室12Aに連通する第1のノズル21Aが第1の方向Xに並設された第1のノズル列と、第2の圧力発生室12Bに連通する第2のノズル21Bが第1の方向Xに並設された第2のノズル列と、の2列のノズル列が第2の方向Yに並設されている。
一方、このような流路形成基板10のノズルプレート20とは反対側の面には、振動板50が形成されている。本実施形態の振動板50は、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコン(SiOX)を含む弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウム(ZrOX)を含む絶縁体膜52と、を具備する。本実施形態では、二酸化シリコン(SiO2)を含む弾性膜51と酸化ジルコニウム(ZrO2)を含む絶縁体膜52とを用いた。なお、圧力発生室12、第1液供給室13及びインク供給路14は、流路形成基板10をノズルプレート20が接合される面側から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12のノズルプレート20とは反対側の面は弾性膜51によって画成されている。
なお、振動板50は、弾性膜51及び絶縁体膜52の何れか一方のみを設けるようにしてもよく、弾性膜51及び絶縁体膜52に加えてさらに別の膜を設けるようにしてもよい。また、振動板50は、酸化シリコン及び酸化ジルコニウムを含むものに限定されず、例えば、窒化シリコン(SiN)、酸化チタン(TiOX)などを用いてもよい。すなわち、振動板50は、酸化シリコン、酸化ジルコニウム、窒化シリコン、酸化チタンから選択される少なくとも1種の材料を単層又は積層したものを用いることができる。
流路形成基板10の振動板50上には、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とが成膜及びリソグラフィー法によって積層されて圧電素子300を構成している。本実施形態では、圧電素子300が圧力発生室12内のインクに圧力変化を生じさせる駆動素子となっている。ここで、圧電素子300は、圧電アクチュエーターとも言い、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を複数の圧電素子300に共通する共通電極とし、他方の電極を圧電素子300毎に独立する個別電極として構成する。本実施形態では、第1電極60を共通電極とし、第2電極80を個別電極としているが、これを逆にしてもよい。
第1電極60は、圧電体層70を成膜する際に酸化せず、導電性を維持できる材料であり、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)等の貴金属、またはランタンニッケル酸化物(LNO)、酸化イリジウム(IrO2)などに代表される導電性酸化物、さらに、これらの積層膜が好適に用いられる。
また、第1電極60として、前述の導電材料と、振動板50との間に、密着力を確保するための密着層を用いてもよい。本実施形態では、特に図示していないが密着層としてチタンを用いている。なお、密着層としては、ジルコニウム、チタン、酸化チタンなどを用いることができる。すなわち、本実施形態では、チタンからなる密着層と、上述した導電材料から選択される少なくとも一種の導電層とで第1電極60が形成されている。
圧電体層70は、第1電極60上に形成される分極構造を有する酸化物の圧電材料からなり、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型酸化物からなることができ、鉛を含む鉛系圧電材料や鉛を含まない非鉛系圧電材料などを用いることができる。圧電体層70は、例えば、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法などの液相法や、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)などで形成することができる。
第2電極80は、圧電体層70との界面を良好に形成できること、導電性及び圧電特性を発揮できる材料が望ましく、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)等の貴金属材料、及びランタンニッケル酸化物(LNO)に代表される導電性酸化物が好適に用いられる。また、第2電極80は、複数材料の積層であってもよい。本実施形態では、イリジウムとチタンとの積層電極(イリジウムが圧電体層70と接する)を使用している。そして、第2電極80は、スパッタリング法、レーザーアブレーション法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法(気相法)、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法、メッキ法などの液相法により形成することができる。また、第2電極80の形成後に、加熱処理を行うことにより、圧電体層70の特性改善を行うことができる。
このような第2電極80は、圧電体層70上のみ、すなわち、圧電体層70の流路形成基板10とは反対側の表面上のみに形成されている。
本実施形態では、一方の列を構成する第1の圧力発生室12Aに対応する圧電素子300を第1の圧電素子300Aと称し、他方の列を構成する第2の圧力発生室12Bに対応する圧電素子300を第2の圧電素子300Bと称する。すなわち、流路形成基板10には、第1の方向Xに並設された第1の圧電素子300Aの列と、第2の圧電素子300Bの列とが、第2の方向Yに2列設けられている。
また、圧電素子300の第2電極80からは、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が設けられている。リード電極90は、一端部が第2電極80に接続されると共に、他端部が流路形成基板10のインク供給路14とは反対側まで延設されている。すなわち、リード電極90は、第2の方向Yにおいて第1の圧電素子300Aと第2の圧電素子300Bとの間に延設されている。すなわち、リード電極90は、第1の圧電素子300Aと第2の圧電素子300Bとの間で、流路形成基板10上、実際には、振動板50上に延設されている。そして、第1の圧電素子300Aと第2の圧電素子300Bとの間に延設されたリード電極90の先端部には、詳しくは後述する圧電素子300を駆動する半導体集積回路(IC)からなる駆動回路120がフリップチップ実装されている。すなわち、駆動回路120は、第1の圧電素子300Aと第2の圧電素子300Bとの間で流路形成基板10上にリード電極90に端子部120aが実装されている。なお、実際には、駆動回路120は、流路形成基板10上の振動板50上でリード電極90に実装されている。すなわち、流路形成基板10上に駆動回路120が実装されているとは、流路形成基板10上に設けられた振動板50上に実装されることも含む。もちろん、流路形成基板10直上にリード電極90を延設し、流路形成基板10の直上に設けられたリード電極90に駆動回路120を実装してもよい。また、駆動回路120と流路形成基板10(振動板50)及び保護基板30との間には、アンダーフィル剤である充填剤121が充填されている。
また、図2に示すように、流路形成基板10の振動板50上には、入力配線122が設けられている。入力配線122は、一端部が駆動回路120の端子部120aに接続されると共に、他端部が流路形成基板10の第2の方向Yの一端部に延設され、延設された入力配線122の先端部には、記録ヘッド1の駆動を制御する信号を供給するための外部配線130が接続されている。外部配線130は、例えば、FFC(Flexible Flat Cable)やFPC(Flexible Printed Circuits)等の可撓性のケーブルである。外部配線130からの信号は、入力配線122を介して駆動回路120に供給される。
さらに、流路形成基板10の圧電素子300側の面には、第2の基板である保護基板30が接合されている。本実施形態では、流路形成基板10と保護基板30とを接着剤36を用いて接合した。保護基板30は、ステンレス鋼やニッケル(Ni)などの金属、シリコン単結晶基板、酸化ジルコニウム(ZrOX)あるいは酸化アルミニウム(AlXOY)を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、酸化シリコン(SiOX)、酸化マグネシウム(MgO)、ランタンアルミネート(LaAlO3)のような酸化物などを用いることができる。このような保護基板30としては、流路形成基板10と線膨張係数が同等の材料が好ましい。ちなみに、保護基板30として流路形成基板10と線膨張係数が大きく異なる材料を用いた場合、加熱や冷却されることで、流路形成基板10と保護基板30との線膨張係数の違いにより反りが生じてしまう。本実施形態では、保護基板30として流路形成基板10と同じ材料、すなわち、シリコン単結晶基板を用いることで、熱による反りを抑制することができる。
また、保護基板30には、流路形成基板10の第1液供給室13にインクを供給する流路である第2液供給室31が設けられている。第2液供給室31は、複数の第1液供給室13に共通して連通する大きさで設けられている。すなわち、第2液供給室31の流路形成基板10側の開口は、第1の方向Xに並設された複数の第1液供給室13に跨がって連続して設けられており、複数の個別流路に連通する共通流路の一部を構成している。なお、第2液供給室31内には、特に図示していないが、流路形成基板10の流路内に設けられた保護膜と同様の保護膜が設けられている。
このように本実施形態では、圧力発生室12に代表される凹部が設けられた第1の基板である流路形成基板10と振動板50と圧電素子300と第2の基板である保護基板30と流路部材であって接合基板であるケース部材40とを合わせて圧電デバイスと称する。
一方、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子300は、この圧電素子保持部32内に形成されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。なお、圧電素子保持部32は、密封されていてもよいし密封されていなくてもよい。
また、保護基板30の圧電素子保持部32の間には、駆動回路保持部33が設けられている。駆動回路保持部33は、保護基板30を厚さ方向である第3の方向Zに貫通して設けられており、駆動回路保持部33の内部に圧電素子300を駆動するための駆動回路120が配置される。
ここで、保護基板30の第3の方向Zに貫通する駆動回路保持部33の一方の開口は、流路形成基板10で塞がれ、他方の開口は、流路部材であって接合部材であるケース部材40によって塞がれている。このような保護基板30の駆動回路保持部33と駆動回路保持部33の第3の方向Zの両側の開口を塞ぐ流路形成基板10とケース部材40とによって空間34が形成され、この空間34内に駆動回路120が保持されている。
本実施形態の駆動回路120は、第3の方向Zにおける厚さが保護基板30の厚さよりも厚い。このため、駆動回路120は、第3の方向Zにおいて、保護基板30よりもケース部材40側に突出して設けられている。
このように、駆動回路120を保護基板30よりも厚くすることで、駆動回路120を実装する際のハンドリングを向上して、駆動回路120の実装を容易に行うことができる。また、駆動回路120が保護基板30よりもケース部材40側に突出するため、駆動回路120を実装する際に駆動回路120の天面よりも大きなツールで駆動回路120を押圧することができ、荷重や加熱の均一性が向上し、駆動回路120を安定して実装することができる。
また、保護基板30上には、本実施形態の流路部材であるケース部材40が接着剤44を介して接着されている。
ケース部材40には、保護基板30の第2液供給室31に連通する第3液供給室41が形成されている。本実施形態では、第3液供給室41は、ケース部材40を積層方向である第3の方向Zに貫通して設けられている。第3液供給室41は、保護基板30側の開口が第2液供給室31よりも大きな開口を有し、第3液供給室41の保護基板30側の開口の一部は、保護基板30のケース部材40側の面で封止されている。なお、第3液供給室41は、複数の第1の圧力発生室12Aに連通する第1の流路である第3液供給室41と、複数の第2の圧力発生室12Bに連通する第2の流路である第3液供給室41と、の2つが設けられている。このような2つの第3液供給室41は、第2の方向Yに2つ並設されている。
ケース部材40が保護基板30の流路形成基板10とは反対側の面に接着剤44によって接着されることによって、保護基板30と流路形成基板10と保護基板30とによって空間34が形成され、空間34内に駆動回路120が配置されている。
また、ケース部材40には、空間34に開口する孔部140が設けられている。孔部140は、本実施形態では、ケース部材40を保護基板30とケース部材40との積層方向である第3の方向Zに貫通することなく形成された凹部によって形成されている。なお、孔部140は、空間34に開口するものであれば、凹部に限定されず、ケース部材40を第3の方向Zに貫通する貫通孔であってもよい。すなわち、孔部140とは、流路部材であるケース部材40の保護基板30との接着面43から連続して接着面43と交差する方向、本実施形態では、第1の方向X及び第2の方向Yを含む面方向と交差する第3の方向Zであって、駆動回路120から離れる方向に延設された側壁141を有するものをいう。
また、本実施形態では、孔部140の側壁141の駆動回路120側の端部は、駆動回路120よりも外側に位置する。すなわち、孔部140の駆動回路120側の開口は、駆動回路120よりも大きな開口を有し、孔部140の開口を第3の方向Zに射影した際に、当該開口は駆動回路120を内包する位置に位置する。つまり、駆動回路120は、その全面が、孔部140の駆動回路120側の開口に相対向して内包される。
このため、ケース部材40と駆動回路120とは接着されることなく、隙間を配した状態で配置されている。
すなわち、ケース部材40と保護基板30とを接着する接着剤44は、荷重によって接着面43からはみ出した際に、駆動回路120よりも外側に位置する孔部140の側壁141の端部から側壁141に沿って孔部140内に流入する。したがって、接着面43からはみ出た余分な接着剤が駆動回路120に付着することがなく、駆動回路120とケース部材40とが接着されない。
このため、接着剤の硬化収縮によって、駆動回路120がケース部材40側に浮き上がる方向に力が働くのを抑制して、駆動回路120の実装部分の実装不良や浮き上がった端子部120aに湿気等の水分が付着することによるマイグレーションが発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、孔部140を駆動回路120側に開口する凹部で形成している。このように凹部からなる孔部140を設けることで、ケース部材40の剛性が著しく低下するのを抑制することができると共に、剛性の低下に伴うケース部材40の精度の低下、特に、接着面の面精度が低下するのを抑制することができる。したがって、凹部からなる孔部140を設けることで、ケース部材40の接着面の面精度を向上して、ケース部材40の保護基板30との接着面からの接着剤のはみ出し量を制御することができる。このため、接着剤のはみ出し量を考慮してケース部材40と保護基板30との接着する接着幅を広く取る必要がなく、小型化を図ることができる。
なお、孔部140の側壁141の表面粗さは、ケース部材40の孔部140が開口する面であって保護基板30との接着面43の表面粗さよりも大きいことが好ましい。このように孔部140の側壁141の表面粗さを、保護基板30との接着面43の表面粗さよりも大きくすることで、保護基板30との接着面43からはみ出た余分な接着剤を孔部140の側壁141に毛細管現象によって伝わらせることができる。したがって、駆動回路120側に余分な接着剤が流れ出し難く、ケース部材40と駆動回路120とを接着することなく、ケース部材40と保護基板30との間の接着剤44の厚さを高精度に制御することができる。また、接着面43の余分な接着剤を孔部140内に流れ出させることができるため、接着面43の接着剤が駆動回路120とは反対側の流路内に流れ出るのも抑制することができる。したがって、流路内に流れ出た余分な接着剤が剥離することによる異物の発生を抑制して、ノズル21の目詰まりなどの吐出不良を抑制することができる。
また、本実施形態では、ケース部材40は、第1の流路である一方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分と、第2の流路である他方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分とは、一体化された1つの部材で形成されている。
このように、ケース部材40を1つの部材で形成することで、ケース部材40を保護基板30に接着する際に、接着面43に荷重を均等に印加し易く、接着強度を向上することができる。つまり、ケース部材40を第2の方向Yで、第1の流路である一方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分と、第2の流路である他方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分とを別体で形成した場合、別体のそれぞれを保護基板30に同じ荷重で接着するのが困難で接着剤44の厚さにばらつきが生じると共に段差が生じてしまう虞がある。ちなみに、ケース部材40を2つ以上の複数の部材で形成したとしても、ケース部材40を予め一体化した後に保護基板30に接着すれば、接着時の荷重を均等にすることができる。
また、ケース部材40の保護基板30とは反対側の第3液供給室41が開口する面には、封止膜46及び固定板47とからなるコンプライアンス基板45が接合されている。封止膜46は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜46によって第3液供給室41の一方面が封止されている。また、固定板47は、金属等の硬質の材料で形成される。この固定板47の第3液供給室41に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、第3液供給室41の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止されたコンプライアンス部49となっている。
また、コンプライアンス基板45には、厚さ方向に貫通するインク導入口42が設けられており、図示しない外部のインク供給手段からインク導入口42を介して第3液供給室41にインクが供給される。つまり、本実施形態の記録ヘッド1では、図示しない外部のインク供給手段からインク導入口42を介してインクを取り込み、第3液供給室41からノズル21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、圧電素子300及び振動板50をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル21からインクが吐出する。
以上説明したように、本実施形態の液体噴射ヘッドの代表例であるインクジェット式記録ヘッド1では、液体であるインクを噴射する第1のノズル21Aを含む第1のノズル列と、液体であるインクを噴射する第2のノズル21Bを含む第2のノズル列と、が形成されたノズルプレート20と、第1のノズル21Aに連通する第1の圧力発生室12Aと、第2のノズル21Bに連通する第2の圧力発生室12Bと、が形成された流路形成基板10と、流路形成基板10の一方面側に形成された振動板50と、振動板50上の第1の圧力発生室12Aに対応する位置に設けられた第1の圧電素子300Aと、振動板50上の第2の圧力発生室12Bに対応する位置に設けられた第2の圧電素子300Bと、流路形成基板10の一方面側に接合された保護基板30と、保護基板30の流路形成基板10とは反対側に接着剤44を介して接着され、第1の圧力発生室12Aに連通する第1の流路である第3液供給室41と第2の圧力発生室12Bに連通する第2の流路である第3液供給室41とが形成された流路部材であるケース部材40と、流路形成基板10と保護基板30とケース部材40とで囲まれて形成された空間34内であって、流路形成基板10の第1の圧電素子300Aと第2の圧電素子300Bとの間に実装されて、第1の圧電素子300Aと第2の圧電素子300Bとを駆動する駆動回路120と、を具備し、ケース部材40には、空間34に対向する領域に開口する孔部140が設けられている。
このように、ケース部材40に孔部140を設けることで、ケース部材40と保護基板30とを接着する接着剤44が接着面43からはみ出した際に、はみ出した余分な接着剤を孔部140内に流出させて、駆動回路120とケース部材40とが接着されるのを抑制することができる。したがって、接着剤の硬化収縮によって駆動回路120がケース部材40側に浮き上がるのを抑制して、駆動回路120の流路形成基板10上での実装部の実装不良や浮き上がった端子部120aに水分等が付着することによるマイグレーション等の発生を抑制して、実装部の信頼性を向上することができる。
また、本実施形態では、孔部140は、流路部材であるケース部材40に設けられた凹部である。このように凹部によって孔部140を設けることで、駆動回路120が設けられた空間34を保護することができる。
また、本実施形態では、孔部140の側壁141の端部は、駆動回路120よりも外側に位置する。このように、側壁141の端部が駆動回路120よりも外側に位置する大きさで孔部140を設けることで、接着面43よりはみ出した余分な接着剤が駆動回路120に付着する前に孔部140内に流出させることができる。したがって、ケース部材40と駆動回路120とが接着されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、孔部140の側壁141の表面粗さは、流路部材であるケース部材40の孔部140が開口する面であって保護基板30との接着面43の表面粗さよりも大きいことが好ましい。これによれば、保護基板30との接着面43からはみ出た余分な接着剤を孔部140の側壁141に毛細管現象によって伝わらせることができる。したがって、駆動回路120側に余分な接着剤が流れ出し難く、ケース部材40と駆動回路120とを接着することなく、ケース部材40と保護基板30との間の接着剤44の厚さを高精度に制御することができる。また、接着面43の余分な接着剤を孔部140内に流れ出させることができるため、接着面43の余分な接着剤が駆動回路120とは反対側の流路内に流れ出るのも抑制することができる。したがって、流路内に流れ出た余分な接着剤が剥離することによる異物の発生を抑制して、ノズル21の目詰まりなどの吐出不良を抑制することができる。
また、本実施形態では、駆動回路120は、保護基板30の厚さよりも厚くなっている。このように、駆動回路120を保護基板30よりも厚くすることで、駆動回路120を実装する際のハンドリングを向上して、駆動回路120の実装を容易に行うことができる。また、駆動回路120が保護基板30よりもケース部材40側に突出するため、駆動回路120を実装する際に駆動回路120の天面よりも大きなツールで駆動回路120を押圧することができ、荷重や加熱の均一性が向上し、駆動回路120を安定して実装することができる。
また、本実施形態では、流路部材であるケース部材40は、第1の流路である一方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着される部分と第2の流路である他方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着される部分とが一体となっている。これによれば、ケース部材40を一体化された部材で形成することで、ケース部材40と保護基板30とを接着する際に、接着面43に荷重を均等に印加し易く、接着強度を向上することができる。
なお、本実施形態では、孔部140の側壁141は、第3の方向Zに沿った方向とし、孔部140の開口は第3の方向Zに亘って同じ開口となるようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、図5に示すように、孔部140の側壁141は、駆動回路120側の開口が広がるように傾斜したものであってもよい。すなわち、孔部140の側壁141は、流路部材であるケース部材40と保護基板30との積層方向である第3の方向Zに対して孔部140の開口が駆動回路120側が広がるように傾斜して設けられている。
このように孔部140の側壁141を傾斜させることで、ケース部材40と保護基板30とを接着する接着剤44が接着面43からはみ出た際に、余分な接着剤を傾斜した側壁141に沿って誘導し易く、余分な接着剤44を孔部140内に流れ出させることができる。
なお、孔部140の側壁141は、第3の方向Zに対して駆動回路120側の開口が狭まるように傾斜したものであってもよい。つまり、孔部140がケース部材40の接着面43から連続して接着面43と交差する第3の方向Zであって、駆動回路120から離れる方向に延設された側壁141を有するとは、側壁141が第3の方向Zを含むベクトルを有するものであればよい。
また、本実施形態では、孔部140として、ケース部材40を厚さ方向である第3の方向Zを貫通することなく設けた凹部としたが、特にこれに限定されない。例えば、図6に示すように、孔部140は、流路部材であるケース部材40と保護基板30との積層方向である第3の方向Zにおいて、当該ケース部材40を貫通する貫通孔である。このように、ケース部材40に貫通孔からなる孔部140を設けた場合であっても、上述した凹部からなる孔部140と同様に、ケース部材40と保護基板30とを接着する接着剤44が接着面43からはみ出した際に、はみ出した余分な接着剤を孔部140内に流出させて、駆動回路120とケース部材40とが接着されるのを抑制することができる。したがって、接着剤の硬化収縮によって駆動回路120がケース部材40側に浮き上がるのを抑制して、駆動回路120の流路形成基板10上での実装部の実装不良や浮き上がった端子部120aに水分等が付着することによるマイグレーション等の発生を抑制して、実装部の信頼性を向上することができる。
また、孔部140を貫通孔とすることで、駆動回路120が保持された空間34は、大気開放、すなわち、記録ヘッド1の外部に連通するため、充填剤121から生じたガスが空間34内に充填されるのを抑制して、ガスを外部に排出することができる。したがって、充填剤121から出たガスが駆動回路120の端子部や駆動回路120と流路形成基板10との接合界面側に移動するのを抑制することができ、駆動回路120の端子部にガスによる結露や汚染の発生を抑制することができる。また、駆動回路120と流路形成基板10との接合界面にガスが移動し難いため、ガスによって接合面の密着性が悪化することによるマイグレーションの発生を抑制することができる。
さらに、孔部140を貫通孔とすることで、外部配線130を孔部140に挿通させて駆動回路120と接続することができる。したがって、外部配線130の取り回しが容易になると共に入力配線122の取り回しが容易となって記録ヘッド1の小型化を図ることができる。
(実施形態2)
図7は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの要部を拡大した断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図7に示すように、本実施形態の記録ヘッド1を構成する駆動回路120は、保護基板30よりも積層方向である第3の方向Zの厚さが薄い。
また、ケース部材40には、孔部140が設けられている。孔部140は、本実施形態では、ケース部材40を保護基板30とケース部材40との積層方向である第3の方向Zに貫通することなく形成された凹部によって形成されている。なお、孔部140は、空間34に開口するものであれば、凹部に限定されず、ケース部材40を第3の方向Zに貫通する貫通孔であってもよい。すなわち、孔部140とは、流路部材であるケース部材40の保護基板30との接着面43から連続して接着面43と交差する方向、本実施形態では、第1の方向X及び第2の方向Yを含む面方向と交差する第3の方向Zであって、駆動回路120から離れる方向に延設された側壁141を有するものをいう。
また、本実施形態では、孔部140の側壁141の駆動回路120側の端部は、駆動回路120に第3の方向Zに相対向する位置に配置されている。すなわち、孔部140の駆動回路120側の開口は、駆動回路120よりも小さな開口を有し、孔部140の開口を第3の方向Zに射影した際に、当該開口が駆動回路120に重なる位置に位置する。つまり、孔部140は、駆動回路120側の開口が、駆動回路120に第3の方向Zで相対向する大きさ及び位置で設けられている。
このように孔部140を駆動回路120よりも小さな開口で設けたとしても、駆動回路120の第3の方向Zの厚さを保護基板30よりも薄くすることで、ケース部材40と保護基板30とを接着する接着剤44からはみ出た接着剤は、駆動回路120に付着することなく、孔部140内に流出する。したがって、接着面43からはみ出た余分な接着剤が駆動回路120に付着することがなく、駆動回路120とケース部材40とが接着されない。
このため、接着剤の硬化収縮によって、駆動回路120がケース部材40側に浮き上がる方向に力が働くのを抑制して、駆動回路120の実装部分の実装不良や浮き上がった端子部120aに湿気等の水分が付着することによるマイグレーションの発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、孔部140を駆動回路120側に開口する凹部で形成している。このように凹部からなる孔部140を設けることで、ケース部材40の剛性が著しく低下するのを抑制することができると共に、剛性の低下に伴うケース部材40の精度の低下、特に、接着面の面精度が低下するのを抑制することができる。したがって、凹部からなる孔部140を設けることで、ケース部材40の接着面の面精度を向上して、ケース部材40の保護基板30との接着面からの接着剤のはみ出し量を制御することができる。このため、接着剤のはみ出し量を考慮してケース部材40と保護基板30との接着する接着幅を広く取る必要がなく、小型化を図ることができる。
なお、上述した実施形態1と同様に、孔部140の側壁141の表面粗さは、ケース部材40の孔部140が開口する面であって保護基板30との接着面43の表面粗さよりも大きいことが好ましい。このように孔部140の側壁141の表面粗さを、保護基板30との接着面43の表面粗さよりも大きくすることで、保護基板30との接着面43からはみ出た余分な接着剤を孔部140の側壁141に毛細管現象によって伝わらせることができる。したがって、駆動回路120側に余分な接着剤が流れ出し難く、ケース部材40と駆動回路120とを接着することなく、ケース部材40と保護基板30との間の接着剤44の厚さを高精度に制御することができる。また、接着面43の余分な接着剤を孔部140内に流れ出させることができるため、接着面43の余分な接着剤が駆動回路120とは反対側の流路内に流れ出るのも抑制することができる。したがって、流路内に流れ出た余分な接着剤が剥離することによる異物の発生を抑制して、ノズル21の目詰まりなどの吐出不良を抑制することができる。
また、本実施形態では、ケース部材40は、第1の流路である一方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分と、第2の流路である他方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分とは、一体化された1つの部材で形成されている。
このように、ケース部材40を1つの部材で形成することで、ケース部材40を保護基板30に接着する際に、接着面43に荷重を均等に印加し易く、接着強度を向上することができる。つまり、ケース部材40を第2の方向Yで、第1の流路である一方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分と、第2の流路である他方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分とを別体で形成した場合、別体のそれぞれを保護基板30に同じ荷重で接着するのが困難で接着剤44の厚さにばらつきが生じると共に段差が生じてしまう虞がある。ちなみに、ケース部材40を2つ以上の複数の部材で形成したとしても、ケース部材40を予め一体化した後に保護基板30に接着すれば、接着時の荷重を均等にすることができる。
なお、本実施形態では、ケース部材40に1つの孔部140を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、2つ以上の孔部を設けるようにしてもよい。具体的には、図8に示すように、ケース部材40には、第2の方向Yに並設された2つの孔部140が設けられている。孔部140の側壁141のうち、最も駆動回路120の外側に近い側壁141、つまり、第2の方向Yの両外側の側壁141の駆動回路120の端部は、駆動回路120に第3の方向Zに相対向する位置に設けられている。このように2つの孔部140を設けることでも、孔部140内に接着面43からはみ出た余分な接着剤を流入させて、駆動回路120に接着剤が付着することを抑制して、ケース部材40と駆動回路120とを接着するのを抑制することができる。
また、本実施形態では、孔部140として、ケース部材40を厚さ方向である第3の方向Zに貫通しない凹部を設けるようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、図9に示すように、孔部140は、ケース部材40をケース部材40と保護基板30との積層方向である第3の方向Zに貫通した貫通孔であってもよい。また、貫通孔からなる孔部140を設けた場合であっても、図8と同様に、複数の孔部140を設けるようにしてもよい。
また、孔部140の側壁141は、上述した実施形態1と同様に、第3の方向Zに対して傾斜した傾斜面であってもよい。
さらに、本実施形態では、駆動回路120の厚さが保護基板30よりも薄いため、孔部140の側壁141の端部が第3の方向Zで駆動回路120に相対向する位置としたが、特にこれに限定されず、駆動回路120の厚さが保護基板30よりも薄い場合であっても、上述した実施形態1と同様に、孔部140の側壁141の駆動回路120側の端部を、駆動回路120よりも外側に位置するようにしてもよい。
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3に係る流路部材であるケース部材の保護基板側からの平面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図10に示すように、本実施形態の記録ヘッド1を構成する流路部材であるケース部材40には、孔部140が設けられている。
孔部140の側壁141には、溝部142が設けられている。溝部142は、側壁141に第3の方向Zに亘って連続して開口するように設けられている。また、溝部142は、第1の方向Xに所定の間隔で複数並設されている。
このように孔部140の側壁141に保護基板30とケース部材40との積層方向である第3の方向Zに沿って開口する溝部142を複数設けることで、ケース部材40と保護基板30とを接着する接着剤44が接着面43からはみ出した際に、はみ出した余分な接着剤を溝部142内に毛細管力によって誘導することができ、はみ出した余分な接着剤を孔部140内に流入させることができる。したがって、接着面43からはみ出した余分な接着剤が駆動回路120に付着されずに、ケース部材40と駆動回路120とが接着されることがない。このため、接着剤の硬化収縮によって駆動回路120の実装部が浮き上がることがなく、実装不良やマイグレーションの発生を抑制することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した各実施形態では、ケース部材40の第1の流路である一方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分と、第2の流路である他方の第3液供給室41が形成されて保護基板30に接着剤44によって接着された部分とが一体のものを例示したが、特にこれに限定されず、上記の2つの部分が別体のケース部材40を用いてもよい。つまり、ケース部材40は、複数の部材で構成されていてもよい。ただし、ケース部材40を複数の部材で形成した場合には、ケース部材40を予め一体化して単一部材とした後に保護基板30及び駆動回路120に接着すれば、接着時の荷重を均等にすることができる。もちろん、ケース部材40を複数の部材で構成した場合に、複数の部材を個別に保護基板30及び駆動回路120に接着するようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では、孔部140の側壁141は、第3の方向Zに沿った面又は第3の方向Zに対して傾斜した面としたが、特にこれに限定されず、側壁141の途中に段差が設けられていてもよい。すなわち、孔部140の側壁141に段差を形成するように孔部140の開口が第3の方向Zで段階的に異なる大きさで設けられていてもよい。
また、上述した各実施形態では、流路形成基板10にインク供給路14及び第1液供給室13を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、第1液供給室13及びインク供給路14の何れか一方又は両方を設けないようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では、コンプライアンス部49を設けるようにしたが、例えば、インク自体が圧力変動を吸収するものであれば、コンプライアンス部49を設けなくてもよい。
また、上述した各実施形態では、1つの駆動回路120を設けた構成を例示したが、特にこれに限定されず、第1の方向Xに2以上の複数の駆動回路を設けてもよい。また、第1の圧電素子300Aの列と第2の圧電素子300Bの列とのそれぞれに駆動回路を設けるようにしてもよい。すなわち、駆動回路が第2の方向Yで並設されていてもよい。
さらに、上述した各実施形態では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる駆動素子として、薄膜型の圧電素子300を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子などを使用することができる。また、駆動素子として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルから液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
また、上述したインクジェット式記録ヘッド1は、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備するインクジェット式記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図11は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図11に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、複数の記録ヘッド1は、インク供給手段を構成するインクカートリッジ2が着脱可能に設けられ、この記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
なお、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インク供給手段であるインクカートリッジ2がキャリッジ3に搭載された構成であるが、特にこれに限定されず、例えば、インクタンク等のインク供給手段を装置本体4に固定して、インク供給手段と記録ヘッド1とをチューブ等の供給管を介して接続してもよい。また、インク供給手段がインクジェット式記録装置に搭載されていなくてもよい。
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。また、液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置Iを挙げて説明したが、上述した他の液体噴射ヘッドを用いた液体噴射装置にも用いることが可能である。
また、本発明は、液体噴射ヘッドに用いられる圧電デバイスに限定されず、凹部(第1の凹部、第2の凹部)が形成された基板と基板の一方面に振動板を介して設けられた圧電素子とを有する他の圧電デバイスにも用いることができる。他の圧電デバイスとしては、例えば、超音波発信器等の超音波デバイス、超音波モーター、温度−電気変換器、圧力−電気変換器、強誘電体トランジスター、圧電トランス、赤外線等の有害光線の遮断フィルター、量子ドット形成によるフォトニック結晶効果を使用した光学フィルター、薄膜の光干渉を利用した光学フィルター等のフィルター、赤外線センサー、超音波センサー、感熱センサー、圧力センサー、焦電センサー、及びジャイロセンサー(角速度センサー)等の各種センサー、強誘電体メモリーなどが挙げられる。
また、圧電デバイスとして超音波センサーを用いた電子機器の一例として、超音波振動装置について説明する。なお、図12は、超音波診断装置の概略構成を示す図である。
図12に示す超音波診断装置200は、装置端末201と超音波プローブ202とを備える。装置端末201と超音波プローブ202とはケーブル203で相互に接続されている。装置端末201と超音波プローブ202とはケーブル203を通じて電気信号を送受する。超音波プローブ202は、本体部204と、この本体部204に着脱可能に取り付けられたプローブヘッド205と、を備えている。そして、プローブヘッド205に上述した各実施形態の圧電デバイスと同等の超音波センサー206が設けられている。超音波センサー206は、表面から音波(超音波)を測定対象に向けて発信するとともに、測定対象からの反射波を受信することにより、測定対象までの距離や測定対象の形状等の検知を行う。本実施形態における超音波センサー206は、特に図示していないが、第1の基板に素子アレイが形成されて構成されている。素子アレイは、圧電素子の配列で構成されている。配列は複数行・複数列のマトリクス状に形成されている。