JP2019033021A - 開閉装置及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】モールド樹脂層の絶縁性及び耐熱性を維持しつつ、従来よりも真空容器との接着性が高く、耐クラック性に優れた樹脂モールド型開閉装置及びその製造方法を提供する。【解決手段】内部が真空に保持された真空容器(8)と、真空容器(8)の表面を覆う絶縁樹脂層(1)と、真空容器(8)と絶縁樹脂層(1)との間に設けられた接着層(2)とを有し、接着層(2)は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂に分散されたゴム粒子とを含み、ゴム粒子の平均粒径が0.1〜1μmであり、ゴム粒子の添加量がエポキシ樹脂の5〜40質量%であることを特徴とする開閉装置(10)を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、開閉装置及びその製造方法に関し、特に真空容器を樹脂でモールドした樹脂モールド型開閉装置及びその製造方法に関する。
エポキシ樹脂の硬化物は、耐熱性、接着性、耐薬品性及び機械的強度等に優れており、塗料、重電機器、半導体集積装置、プリント基板配線及び各種電子部品・小型電気部品等の幅広い製品分野に適用されている。しかしながら、エポキシ樹脂の硬化物は、上記のように優れた特徴を有するものの固くて脆い性質があり、特に高電圧用モールド機器、屋外用モールド機器及び回転機器等の重電機器への適用にあたっては、エポキシ樹脂のクラックを防止することが求められてきた。
高電圧用モールド機器の一つである真空遮断器は、セラミックス等からなる真空絶縁容器の外周にエポキシ樹脂をモールドさせた絶縁樹脂(モールド樹脂)層を設け、外部絶縁が保持されている。この場合、エポキシ樹脂とセラミックス等との熱膨張係数の差が大きく異なることから、モールド樹脂のクラック発生を防止することが課題となる。
そこで、従来、真空絶縁容器の外周に設けたモールド樹脂の耐クラック性の向上を目的として、モールド樹脂を構成するエポキシ樹脂に無機フィラーやゴム、エラストマー又はエンジニアリングプラスチック等を添加する等により、モールド樹脂の熱膨張係数を低下させつつ靭性を高める種々の改質方法が知られている。
また、特許文献1には、内部が気密に封止される真空容器と、端部に固定電極が設けられる固定軸と、端部に可動電極が設けられる可動軸と、を有し、真空容器内部で固定電極および可動電極が対向する状態で真空容器の一端に固定電極が固定されて取り付けられ、かつ真空容器の他端に可動電極が移動可能に取り付けられて接点が形成される真空バルブと、真空バルブの固定軸に接続され、引き出し口から外部へ引き出される導体と、真空バルブの固定軸側に配置される電界集中緩和シールドと、真空バルブの可動軸側に配置される電界集中緩和シールドと、導体の引き出し口付近に配置される電界集中緩和シールドと、真空バルブ、および、導体の外周を覆う緩衝層と、真空バルブの可動軸を移動自在にするとともに、真空バルブの固定軸、真空バルブの真空容器、導体、緩衝層、および、各電界集中緩和シールドを埋設して固定する樹脂絶縁体と、を備えることを特徴とする樹脂モールド真空バルブが開示されている。
上記特許文献1によれば、プレス品等の仕上り寸法のバラツキが大きい真空バルブ等のインサートの形状や界面剥離により電界集中して発生する部分放電を抑制し、インサートの材質にかかわらず耐クラック性能を向上させながら小型縮小化がはかれる樹脂モールド真空バルブを提供することができるとされている。
特開2008−258021号広報
従来のように、耐クラック性を向上させるためにエラストマーや無機フィラー等の添加剤をエポキシ樹脂に添加すると、これらの添加剤はエポキシ樹脂の粘度を増大させて泡切れを悪化させ、硬化物中にボイドが残留し易くなる可能性がある。この結果、部分放電開始電圧の低下等、硬化物の絶縁性の確保が大きな課題となっている。また、添加剤が耐熱性低下の要因となっており、硬化物の物性面においても課題となっている。また、特許文献1に記載の構成では、真空バルブからの緩衝層(シリコーンゴム粒子等)の剥離が課題となる。
本発明は、上記事情に鑑み、モールド樹脂層の絶縁性及び耐熱性を維持しつつ、従来よりも真空容器とモールド樹脂層との接着性が高く、耐クラック性に優れた樹脂モールド型開閉装置及びその製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、内部が真空に保持された真空容器と、真空容器の表面を覆う絶縁樹脂層と、真空容器と絶縁樹脂層との間に設けられた接着層とを有し、接着層は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂に分散されたゴム粒子とを含み、ゴム粒子の平均粒径が0.1〜1μmであり、ゴム粒子の添加量がエポキシ樹脂の5〜40質量%であることを特徴とする開閉装置を提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するために、内部が真空に保持された真空容器の表面に接着層を設ける工程と、接着層の表面に絶縁樹脂層を設ける工程と、を有し、接着層を設ける工程は、エポキシ樹脂と、ゴム粒子とを含む塗布液を真空容器の表面に塗布し、乾燥する工程であり、塗布液に含まれるゴム粒子の平均粒径が0.1〜1μmであり、ゴム粒子の添加量がエポキシ樹脂の5〜40質量%であることを特徴とする開閉装置の製造方法を提供する。
本発明のより具体的な構成は、特許請求の範囲に記載される。
本発明によれば、モールド樹脂層の絶縁性及び耐熱性を維持しつつ、従来よりも真空容器とモールド樹脂層との接着性が高く、耐クラック性に優れた樹脂モールド型開閉装置及びその製造方法を提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の開閉装置の一例を示す断面模式図である。
[本発明の基本思想]
本発明者らは、上記目的を達成することができる樹脂モールド型開閉装置の構成について、鋭意検討を行った。その結果、真空容器と絶縁樹脂層との間に、絶縁樹脂層とは別個の層であり、絶縁樹脂層と密着性の高い接着層を設ける構成を見出した。
従来は、上述したように、絶縁樹脂層自体に添加剤を添加するか、又は、絶縁樹脂層とは別に応力緩和層を設けていた。しかし、上述したように、前者では絶縁樹脂層の特性(絶縁性、耐熱性等)が低下する課題がある。また、後者では応力緩和層の剥離が課題となる。
そこで、本発明は、絶縁樹脂層の特性低下を防ぐべく、絶縁樹脂層とは別に接着層を設け、さらに、接着層を絶縁樹脂層との密着性に優れる構成とした。このような構成によって、従来の課題を解決し、絶縁樹脂層の絶縁性及び耐熱性を維持しつつ、従来よりも真空容器とモールド樹脂層との接着性が高く、耐クラック性に優れた樹脂モールド型開閉装置を提供できることを見出した。本発明は、該知見に基づくものである。以下、本発明の開閉装置について説明する。
1.開閉装置
図1は本発明の開閉装置の一例を示す断面模式図である。図1では、開閉装置の一例として、樹脂モールド型真空遮断器(真空バルブ)を挙げている。図1に示すように、本発明の開閉装置10は、内部が真空に保持された真空容器8と、真空容器8の表面を覆う絶縁樹脂層(モールド樹脂層)1と、真空容器8と絶縁樹脂層1との間に設けられた接着層2を有する。
真空絶縁容器8の端部には固定電極3が固定側エンドプレート5を介して固定されている。また、真空容器8の固定電極3が固定されている端部と反対側の端部には、固定電極3と対向して、可動電極4が可動側エンドプレート6を介して固定されている。可動電極4には伸縮自在なベローズ7が設けられ、可動電極4を移動させる機能を有する。真空容器8は、アルミナ等のセラミックスで構成される。固定電極3、可動電極4及びベローズ7は従来の構成を適用することができる。以下、絶縁樹脂層1及び接着層2について詳述する。
まず始めに、絶縁樹脂層1の構成について説明する。絶縁樹脂層1は、エポキシ樹脂からなる層である。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールE型、フェノールノボラック型、グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び臭素化エポキシ樹脂等の常温で液状のエポキシ樹脂を用いる。これらは単独で用いてもよいし、複数混合したものを用いてもよい。
具体的には、DIC株式会社製EPICLON840(「EPICLON」はDIC株式会社の登録商標、エポキシ当量180〜190g/eq、粘度9000〜11000mP・s/25℃)、EPICLON850(エポキシ当量183〜193g/eq、粘度11000〜15000mP・s/25℃)、EPICLON830(エポキシ当量165〜177g/eq、粘度3000〜4000mP・s/25℃)、三菱化学株式会社製jER827(「jER」は三菱ケミカル株式会社の登録商標、エポキシ当量180〜190g/eq、粘度9000〜11000mP・s/25℃)、jER828(エポキシ当量184〜194g/eq、粘度12000〜15000mP・s/25℃)、jER806(エポキシ当量160〜170g/eq、粘度1500〜2500mP・s/25℃)、jER807(エポキシ当量160〜175g/eq、粘度3000〜4500mP・s/25℃)等が挙げられる。
耐熱性の観点からは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、コーティング液の低粘度化の観点からはビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。また、両特性バランスをとるため、これらのエポキシ樹脂はブレンドして用いることもできる。また、必要に応じて、絶縁樹脂層1を構成するエポキシ樹脂にシリカフィラー等を混合してもよい。
次に、接着層2の構成について詳述する。接着層2は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂に分散されたゴム粒子とを含む。ゴム粒子の平均粒径は0.1〜1μmであり、ゴム粒子の添加量は、エポキシ樹脂とゴム粒子の混合物の5〜40質量%である。なお、本明細書において「0.1〜1μm」とは、0.1μm以上1μm以下を意味するものとする。他の数値範囲についても同様である。
ゴム粒子の平均粒径が0.1μm未満では、接着層2の原料となる塗布液の粘度が増加し、接着層2の膜厚の制御が困難になる。また、平均粒径が1.0μmより大きいと、クラック進展防止効果が十分ではなくなるため、好ましくない。
また、ゴム粒子の添加量は、接着層2の5〜40質量%含むことが望ましい。ゴム粒子の添加量が5質量%未満ではクラック進展防止効果が十分ではない。また、40質量%より多いと、接着層2と真空容器8との接着力の低下や、コーティング液の濃度上昇が起こるため、好ましくない。真空遮断器を構成する接着層2のゴムの添加量は、機械加工により接着層を切り出し、ガスクロマトグラフ質量分析計(Gas Chromatography−Mass Spectrometry;GCMS)と熱重量分析(Thermogravimetric Analysis;TGA)によって評価することができる。
接着層2の厚さは、0.5〜20μmが好ましい。接着層2の厚さが0.5μm未満では接着力が低下し、接着層2の厚みが20μmより大きいと、塗布液の厚塗り及び乾燥に時間が掛かることによる生産性の低下や、接着層2中にボイドが残留することによる信頼性の低下に繋がるため、好ましくない。
本発明の接着層2では、エポキシ樹脂に非反応性エラストマー(例えば、NBR、ポリブタジエンやクロロプレンゴム等の液状ゴム、シリコーンオイル、シリコーンゴム、カルボキシル又はエポキシ変性の架橋NBR、アクリルゴム、コアシェルゴム、ウレタンゴム及び熱可塑性ポリエステルエラストマー等)、反応性エラストマー(カルボキシル変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体CTBN、アミノ変性のブタジエン−アクリロニトリル共重合体ATBN、主鎖にカルボキシル基を含有するNBR、カルボキシル変性ポリブタジエン、液状ポリサルフィッド、変性シリコーンウレタンプレポリマー及びコアシェルゴム等)及び熱可塑性樹脂粒子等のゴム粒子を配合することができる。
接着層2を構成するエポキシ樹脂は、上述した絶縁樹脂層1を構成するものと同様の物を使用することができる。また、日東シンコー株式会社製のN600を用いることができる。ゴム粒子としては、コアシェルゴムを使用することが好ましい。ここで、本発明におけるコアシェルゴムとは、中心部と表層部が異なるポリマーからなる球状ポリマー粒子で、コア相と単一のシェル相の二層構造を有するものである。コアシェルゴムのコアの構成成分としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、i‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でもn‐ブチルアクリレート、エチルアクリレートが好ましい。
上述した単量体には、2個以上のビニル性官能基を持つ単量体が含まれてもよい。例えば、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート及びジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレートである。
また、ブタジエン‐アクリロニトリル‐スチレン(ABS)、メチルメタクリレート‐ブタジエン‐スチレン(MBS)、メチルメタクリレート‐ブチルアクリレート‐スチレン(MAS)、オクチルアクリレート‐ブタジエン‐スチレン(OABS)、アルキルアクリレート‐ブタジエン‐アクリロニトリル‐スチレン(AABS)、ブタジエン‐スチレン(SBR)及びメチルメタクリレート‐ブチルアクリレート‐シロキサンを始めとするシロキサン等の粒子状弾性体、又は、これらを変性したゴム等が挙げられる。
シェルの構成成分としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びn−ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でもメチルメタクリレート、エチルアクリレートが好ましい。
上述した単量体には、2個以上のビニル性官能基を持つ単量体が含まれてもよい。特に限定されないがエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3‐ブチレングリコールジメタクリレート、1,4‐ブチレングリコールジメタクリレート及びジビニルベンゼン等が挙げられる。好ましくはアリルメタクリレートである。
エポキシ樹脂との界面接着性を向上させるために、シェル部の構成成分として官能基をもつ単量体を導入することも出来る。官能基の例を挙げると、エポキシ基、水酸基、アミド基、イミド基、アミン基、イミン基、カルボン酸基及び無水カルボン酸基等が挙げられる。
コア/シェル層の比率(質量比)は、40/60〜95/5であり、より好ましくは60/40〜85/15である。コア/シェル層の比率が40/60をはずれてコアの比率が低下すると、得られる接着層の靭性が劣る場合があるため好ましくない。一方、コア/シェル層の比率が95/5をはずれシェル層の比率が低下すると、接着層中でコアシェルゴム粒子が分散しにくくなり、期待する効果が得られない可能性がある。
以上述べたコアシェルゴム粒子は、エポキシ樹脂中に予め均一に分散された状態で市販されているものや、コアシェルゴム粒子単独で市販されているものを用いることができる。コアシェルゴムの市販品としては、例えば、ロームアンドハースカンパニー製のパラロイドEXL‐2655(「パラロイド」はロームアンドハースカンパニーの登録商標,平均粒径0.2μm)、EXL‐261、EXL‐3387、D11L‐26ID、BTA731、アイカ工業株式会社製のスタフィロイドAC‐3355(「スタフィロイド」はアイカ工業株式会社の登録商標、平均粒径0.1〜0.5μm)、IM−203、IM−401、IM−601、アイカ工業株式会社製のゼフィアックF351(平均粒径0.3μm)等を使用することができる。また、エポキシ樹脂に粒径0.1μmのコアシェルゴムが分散した株式会社カネカ製のkane−ace(カネエース)MX等(「kane−ace」はアイカ工業株式会社の登録商標)も使用できる。
一般に、サブミクロンサイズの粒子は凝集することによってエポキシ樹脂への分散性が低下し、コーティング液の粘度が高くなってしまうため、添加物として用いることは好ましくない。しかし、上述したコアシェル粒子はエポキシ樹脂と親和性が高いため、サブミクロンサイズでも高い分散性を実現することができる。粒径のより小さいゴム粒子をエポキシ樹脂に分散することによって、クラックの進展を防止できる。
従来技術として、例えば特開平9−45819号公報及び特開2013−222496号公報には、真空容器とモールド樹脂との間に、エポキシ樹脂とシリカ粒子を含む層を設ける構成が開示されているが、シリカ粒子の弾性率(50〜100GPa)よりもゴム粒子の弾性率(1〜100MPa)の方が低いため、応力緩和効果が高く、温度変化が大きい環境下でもより効果的にクラック発生を防止することができる。
以上の通り、真空容器8と、エポキシ樹脂とシリカ等のセラミックス粒子が混合された絶縁樹脂層1の間にサブミクロンサイズのゴム粒子を有する接着層2を設置することにより、温度変化が大きい環境下(−40℃〜120℃の温度サイクル)に長時間曝された時でも、接着層が真空容器と絶縁樹脂層を強固に接着しているため、絶縁樹脂層のクラックを防止することができる。
2.開閉装置の製造方法
次に、本発明の開閉装置10の製造方法について説明する。本発明の開閉装置10の製造方法では、真空容器8の表面に絶縁樹脂層1を設ける前に接着層2を設ける。接着層2は、接着層2の原料となる塗布液(コーティング液)を作製し、真空容器8に塗布し、乾燥することで作製することができる。
接着層2の原料となる塗布液は、すでに説明したエポキシ樹脂及びゴム粒子を少なくとも含み、さらに、必要があれば酸無水物硬化剤、硬化触媒及び溶剤を含むものであってもよい。以下に、酸無水物硬化剤、硬化触媒及び溶剤について説明する。
酸無水物硬化剤は、無添加でも良く、添加する場合は液状エポキシ樹脂に対して1.2当量比以下が好適である。酸無水物硬化剤の具定例としては、例えば、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水アルケニル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリツト酸、無水シクロペンタンテトラカルボン酸、無水ベンゾフエノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセリントリストリメリテート、メチルシクロペンダジエンの無水マレイン酸付加物、無水クロレンデイツク酸、無水アルキル化エンドアルキレンテトラヒドロフタル酸、無水メチル2−置換ブチニルテトラヒドロフタル酸などの酸無水物、フェノール、クレゾール、キシレノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA等から選ばれる1種又は2種以上の混合物と、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドとを酸、塩基又は中性塩等を触媒として反応させて得られたノボラック樹脂、ポリ−p−ビニルフェノール、ポリアミド、アミン等が用いられる。このうち、メチルシクロペンタジエンの無水マレイン酸付加物、無水メチルテトラヒドロフタル酸及び無水メチルヘキサヒドロフタル酸等の液状の酸無水物が好ましい。
硬化触媒は、エポキシ樹脂と酸無水物との硬化反応を促進するものであり、無添加でも良く、添加する場合は液状エポキシ樹脂100質量部、硬化剤80〜120質量部に対して10質量部以下が望ましい。
硬化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルブタンジアミン及びトリエチレンジアミン等の3級アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノペンタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N−メチルモルフォリン等のアミン類、又、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムブロマイド、アリルドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド,ベンジルジメチルステアリルアンモニウムブロマイド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムアセチレート等の第4級アンモニウム塩、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−アジン−2−メチルイミダゾール及び1−アジン−2−ウンデシル等のイミダゾール類、アミンとオクタン酸亜鉛やコバルト等との金属塩、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、N−メチル−ピペラジン、テトラメチルブチルグアニジン、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルテトラフェニルボレート及び1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7−テトラフェニルボレート等のアミンテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、アルミニウムトリアルキルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトアセテート、アルミニウムアルコラート、アルミニウムアシレート及びソジウムアルコラート等が挙げられる。これらの硬化触媒は単独で用いてもよいし、混合して用いても良い。
溶剤による希釈率は、固形成分に対して、10〜70質量%の範囲が望ましい。溶剤の具定例としては、グリシジルエーテル基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等どのケトン類、酢酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、N−メチルピロリドン(NMP)及び2−メトキシエタノール等が挙げられるが、特に限定されない。これらの溶剤は単独、あるいは混合して用いても良い。
上述した成分を含有する塗布液を、真空容器8の表面に塗布し、乾燥(例えば、120℃で2時間加熱)することにより、塗布液に含まれる酸無水物硬化剤、硬化触媒の硬化反応が進行し、真空容器8の表面に接着層2が形成される。
真空容器8の表面に接着層2を形成後、絶縁樹脂層1を構成するモールド樹脂を注型し、加熱硬化すると、接着層2とモールド樹脂が反応し、強固な接着力が得られる。モールド樹脂の原料となる塗布液も、接着層2と同様に酸無水物硬化剤、硬化触媒及び溶剤を含んでいてもよい。これらの好ましい例は、上述した接着層2の場合と同様である。塗布液に酸無水物硬化剤又は硬化触媒を含まない場合は、真空容器8の表面に液状エポキシ樹脂の接着層が形成する。モールド樹脂を注型し、加熱硬化すると、モールド樹脂中の硬化剤や硬化触媒が液状エポキシ樹脂の接着層に浸透し、液状エポキシ樹脂が硬化し、モールド樹脂と強固に接着する。こうして、真空容器8と絶縁樹脂層1が、接着層2を介して強固に接着された開閉装置を製造することができる。
以下、本発明の効果について、実験結果に基づいて実証する。
(1)実施例1の評価用サンプルの作製及び評価
真空容器としてアルミナ円筒を準備した。接着層を構成する粒径0.1μmのコアシェルゴムを33質量%含むkane−aceMX−153(株式会社カネカ製)3gと、溶剤として、トルエンと酢酸エチルを含むシンナー2gを秤量して混合し、接着層の原料となる塗布液を調製した。塗布液の粘度は、粘度測定装置(東機産業株式会社製、E型粘度計、製品名:TVE−25H)室温で0.2Pa・sであった。実施例1の接着層の構成を後述する表1に記載する。なお、表1の「コアシェルゴム粒子含有量」において、「%」と記載しているものは「質量%」を意味するものとする。
アルミナ円柱表面に、スプレーを用い塗布液を塗布し、電気炉にて120℃、2h乾燥した。次いで、離型剤(製品名:QZ−13)を塗布したステンレスシャーレ(φ75mm、高さ20mm)の中央に上記アルミナ円筒を設置した。
別途、絶縁樹脂層の原料として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828,190g/eq)100重量部、酸無水物硬化剤(HN−5500,168eq/g)84重量部、シランカップリング剤(KBM403)3.3重量部、シリカフィラ(XJ−7,φ6.3μm)630重量部から成る液状樹脂組成物を60Paにて真空脱気した後、上記アルミナ円筒の周囲に樹脂(樹脂高さ10mmに相当する量:約81.4g)を注入し、電気炉にて加熱硬化(80℃、20h加熱した後、140℃、10h加熱)した。硬化後、樹脂モールドしたセラミックス円筒をステンレスシャーレから取り出し、評価用サンプルとした。
次いで、温度サイクル(冷熱サイクル)前後の接着強度を評価した。上述した評価用サンプルを温度サイクル槽に投入し、−40℃から115℃に加熱し、再び−40℃に冷却する工程を1サイクルとして1000サイクル冷却及び加熱を繰り返した。次いで、株式会社島津製作所製の精密万能試験機(オートグラフ)を用いて、モールド樹脂を固定した状態でアルミナ円筒に荷重を加え、モールド樹脂とアルミナ円筒が剥がれたときの荷重を測定した。この荷重を、アルミナ円筒とモールド樹脂の接触面積で除した値を接着強度とした。
温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は40MPa、1000サイクル後の接着強度は36MPaであり、接着強度保持率は、90%であった。また、モールド後のアルミナ円筒のSEM(Scanning Electron Microscope)による断面観察より、接着層の膜厚は0.7μmであった。また、サイクル後のモールド樹脂について、目視でクラックの発生の有無を確認したところ、クラックの発生は認められなかった。評価結果を後述する表1に記載する。
(2)実施例2の評価用サンプルの作製及び評価
サンプル瓶にトルエンと酢酸エチルを含むシンナーで10倍希釈した日東シンコー株式会社製のN600にコアシェル粒子(粒径0.2μm、ロームアンドハースカンパニー製、EXL‐2655)を30質量%添加し、ジルコニアボールを加えてミックスローターで1昼夜撹拌して塗布液を作製した。塗布液の粘度は、室温で0.7Pa・sであった。塗布液の組成以外は実施例1と同様にして実施例2の評価用サンプルを作製し、評価を行った。実施例2の接着層の構成及び評価結果を後述する表1に記載する。
温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は38MPa、1000サイクル後の接着強度は32MPaであり、接着強度保持率は84%であった。また、モールド後のアルミナ円筒の断面観察より、接着層の膜厚は1μmであった。また、サイクル後のモールド樹脂にクラックの発生は認められなかった。
(3)実施例3の評価用サンプルの作製及び評価
サンプル瓶にメチルセロソルブとキシレンを含むシンナーで10倍希釈した日東シンコー株式会社製のN600にコアシェル粒子(平均粒径0.1〜0.5μm、ガンツ化成株式会社製、スタフィロイドAC3355)を30質量%添加し、ジルコニアボールを加えてミックスローターで1昼夜撹拌してコーティング液を作製した。コーティング液の粘度は、室温で2Pa・sであった。
塗布液の組成以外は実施例1と同様にして、実施例3の評価用サンプルを作製し、評価を行った。実施例3の接着層の構成及び評価結果を後述する表1に記載する。温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は42MPa、1000サイクル後の接着強度は34MPaであり、接着強度保持率は81%であった。また、モールド後のアルミナ円筒の断面観察より、接着層の膜厚は5μmであった。また、サイクル後のモールド樹脂にクラックの発生は認められなかった。
(4)実施例4の評価用サンプルの作製及び評価
サンプル瓶にメチルセロソルブとキシレンを含むシンナーで10倍希釈した日東シンコー株式会社製のN600にコアシェル粒子(粒径0.3μm、ガンツ化成株式会社製、ゼフィアックF351)を30質量%添加し、ジルコニアボールを加えてミックスローターで一昼夜撹拌して塗布液を作製した。塗布液の粘度は、室温で1Pa・sであった。
塗布液の組成以外は実施例1と同様にして、実施例4の評価用サンプルを作製し、評価を行った。実施例4の接着層の構成及び評価結果を後述する表1に記載する。温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は41MPa、1000サイクル後の接着強度は36MPaであり、接着強度保持率は88%であった。また、モールド後のアルミナ円筒の断面観察より、接着層の膜厚は3μmであった。また、サイクル後のモールド樹脂にクラックの発生は認められなかった。
(5)実施例5の評価用サンプルの作製及び評価
サンプル瓶にメチルセロソルブとキシレンを含むシンナーで10倍希釈した日東シンコー株式会社製のN600にコアシェル粒子(粒径0.7μm、Rohm&Haas株式会社製、BTA731)を30質量%添加し、ジルコニアボールを加えてミックスローターで一昼夜撹拌してコーティング液を作製した。コーティング液の粘度は、室温で4Pa・sであった。
塗布液の組成以外は実施例1と同様にして、実施例5の評価用サンプルを作製し、評価を行った。実施例4の接着層の構成及び評価結果を後述する表1に記載する。
温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は40MPa、1000サイクル後の接着強度は36MPaであり、接着強度保持率は90%であった。また、モールド後のアルミナ円筒の断面観察より、接着層の膜厚は7μmであった。また、サイクル後のモールド樹脂にクラックの発生は認められなかった。
(6)実施例6の評価用サンプルの作製及び評価
サンプル瓶にメチルセロソルブとキシレンを含むシンナーで2倍希釈した日東シンコー株式会社製のN600にコアシェル粒子(粒径0.7μm、Rohm&Haas株式会社製、BTA731)を40質量%添加し、ジルコニアボールを加えてミックスローターで一昼夜撹拌してコーティング液を作製した。コーティング液の粘度は、室温で8Pa・sであった。
塗布液の組成以外は実施例1と同様にして、実施例6の評価用サンプルを作製し、評価を行った。実施例6の接着層の構成及び評価結果を後述する表1に記載する。温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は42MPa、1000サイクル後の接着強度は37MPaであり、接着強度保持率は88%であった。また、モールド後のアルミナ円筒の断面観察より、接着層の膜厚は18μmであった。また、サイクル後のモールド樹脂にクラックの発生は認められなかった。
(7)実施例7の評価用サンプルの作製及び評価
サンプル瓶にメチルセロソルブとキシレンを含むシンナーで10倍希釈した日東シンコー株式会社製のN600にコアシェル粒子(粒径0.7μm、Rohm&Haas株式会社製、BTA731)を5質量%添加し、ジルコニアボールを加えてミックスローターで一昼夜撹拌してコーティング液を作製した。コーティング液の粘度は、室温で2Pa・sであった。
塗布液の組成以外は実施例1と同様にして、実施例7の評価用サンプルを作製し、評価を行った。実施例7の接着層の構成及び評価結果を後述する表1に記載する。温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は35MPa、1000サイクル後の接着強度は32MPaであり、接着強度保持率は91%であった。また、モールド後のアルミナ円筒の断面観察より、接着層の膜厚は0.5μmであった。サイクル後のモールド樹脂にクラックの発生は認められなかった。
Figure 2019033021
(8)実施例1〜7の接着層を適用した開閉装置の作製及び評価
エポキシ樹脂、酸無水物硬化剤及びシリカフィラーを含む液状樹脂組成物を25kg準備した。この液状樹脂組成物を90℃に加熱して、1Torrで約20分間脱気した。80℃におけるワニス粘度は、1.0Pa・sであった。別途、真空容器の表面に実施例1〜7で作製した塗布液を塗布し、120℃、2hで加熱した。この真空容器を開閉装置(真空遮断器)の金型にセットし、90℃に加熱し、脱気後の液状樹脂組成物25kgを流し込み、再度1Torrで20分間、真空脱気した。その後、大気中で80℃で20時間、140℃で10時間の条件で硬化した。次いで、4時間かけて50℃に冷却し、型を外して図1に示す真空遮断器を各4個作製した。
真空バルブの外観及び断面観察の結果、エポキシ樹脂硬化物(モールド樹脂)内部にクラックやボイドは認められなかった。また、作製した真空バルブを温度サイクル槽に投入し、−40℃から115℃に加熱し、再び−40℃に冷却する工程を1サイクルとして100サイクル経過後に取り出した。外観観察の結果、全ての真空遮断器においてモールド樹脂へのクラックの発生は認められなかった。
(8)比較例1の評価用サンプルの作製及び評価
サンプル瓶にメチルセロソルブとキシレンを含むシンナーで10倍希釈した日東シンコー株式会社製のN600にコアシェルゴム粒子(平均粒径0.1〜0.5μm、ガンツ化成株式会社製、スタフィロイドAC3355)を1質量%添加し、ジルコニアボールを加えてミックスローターで1昼夜撹拌してコーティング液を作製した。コーティング液の粘度は、室温で0.05Pa・sであった。
塗布液の組成以外は実施例1と同様にして、比較例1の評価用サンプルを作製し、評価を行った。比較例1の接着層の構成及び評価結果を後述する表2に記載する。温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は30MPa、1000サイクル後の接着強度は23MPaであり、接着強度保持率は77%であった。また、モールド後のアルミナ円筒の断面観察より、接着層の膜厚は0.1μmであった。真空遮断器の外観、断面観察の結果、エポキシ樹脂硬化物内部にはクラックやボイドは認められなかった。
次に、実施例1〜7と同様に、比較例1の接着層を適用して作製した真空遮断器を温度サイクル槽に投入し、10サイクル経過後に取り出した。外観観察の結果、モールド樹脂へクラックの発生が見られた。
比較例1では、コアシェルゴム粒子の含有量が5質量%未満であり、本発明の範囲外であるため、接着層とモールド樹脂との接着性が十分ではなく、わずか10サイクルでモールド樹脂にクラックが発生したものと考えられる。
(9)比較例2の評価用サンプルの作製及び評価
サンプル瓶にメチルセロソルブとキシレンを含むシンナーで2倍希釈した日東シンコー株式会社製のN600にコアシェル粒子(平均粒径0.1〜0.5μm、ガンツ化成株式会社製、スタフィロイドAC3355)を50質量%添加し、ジルコニアボールを加えてミックスローターで1昼夜撹拌してコーティング液を作製した。コーティング液の粘度は、室温で20Pa・sであった。
塗布液の組成以外は実施例1と同様にして、比較例2の評価用サンプルを作製し、評価を行った。比較例2の接着層の構成及び評価結果を後述する表2に記載する。温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は32MPa、1000サイクル後の接着強度は26MPaであり、接着強度保持率は80%であった。また、モールド後のアルミナ円筒の断面観察より、接着層の膜厚は30μmであった。
次に、実施例1〜7と同様に、比較例2の接着層を適用して作成した真空バルブを作製した。バルブの外観、断面観察の結果、エポキシ樹脂硬化物内部にはボイドが認められた。次いで、作製した真空遮断器を温度サイクル槽に投入し、10サイクル経過後に取り出した。外観観察の結果、モールド樹脂へクラックの発生が見られた。
比較例2では、コアシェルゴム粒子の含有量が40質量%を超えており、本発明の範囲外であるため、接着層とモールド樹脂との接着性が十分ではなく、モールド樹脂にクラックが発生したものと考えられる。
(10)比較例3の評価用サンプルの作製及び評価
真空容器へ接着層を設けない以外は、実施例1と同様の方法で比較例3の評価用サンプルを作製し、評価を行った。温度サイクル前後の接着強度を評価した結果、温度サイクル前の接着強度は20MPaであり、10サイクル後の接着強度は19MPaであった。
次いで、真空容器へ接着層を設けない以外は実施例1〜7と同様の方法で真空遮断器を作製した。真空遮断器の外観、断面観察の結果、エポキシ樹脂硬化物内部にクラックやボイドは認められなかった。次いで、作製した真空遮断器を温度サイクル槽に投入し、10サイクル経過後に取り出した。外観観察の結果、モールド樹脂へクラックの発生が見られた。
比較例3では、接着層を設けなかったために、真空容器とモールド樹脂との接着性が十分ではなく、モールド樹脂にクラックが発生したものと考えられる。
(11)比較例4の評価用サンプルの作製及び評価
真空容器にRTVゴム(信越化学工業株式会社製、KE−3423)を10μm塗布した真空容器を用いて、実施例1〜7と同様の方法で真空バルブを作製した。真空遮断器の外観、断面観察の結果、エポキシ樹脂硬化物内部にクラックやボイドは認められなかった。
次に、作製した真空遮断器を温度サイクル槽に投入し、10サイクル経過後に取り出した。外観観察の結果、モールド樹脂へクラックの発生が見られた。真空容器と絶縁樹脂層との間に、本発明の接着層ではなく、RTVゴムを設けたものでは、真空容器との接着性が十分ではなく、クラックが発生したものと考えられる。
Figure 2019033021
以上の結果から、本発明の範囲内にある実施例1〜7は、初期接着強度が高く(35MPa以上)、さらに温度サイクル後の接着強度保持率が高いため(81%以上)、1000サイクル以上の温度サイクルでもモールド樹脂のクラック発生を防止することができる。
これに対して、比較例1〜4は、初期接着強度が実施例1〜7より低く(32MPa以下)、さらに温度サイクル後の接着強度保持率が高いため(81%未満)、1000サイクル以上の温度サイクル時にモールド樹脂にクラックの発生が認められた。真空遮断器に適用した場合には、真空容器とモールド樹脂の接着強度が低いため、短期間の温度サイクルでモールド樹脂にクラックが発生した。
以上、説明したように、本発明によれば、絶縁樹脂層の絶縁性及び耐熱性を維持しつつ、従来よりも真空容器との接着性が高く、耐クラック性に優れた樹脂モールド型開閉装置を提供できることが示された。本発明は、真空遮断器とモールド樹脂からなる真空遮断器などの電力機器において、モールド樹脂のクラックを防止する手法として有効である。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1…絶縁樹脂層、2…接着層、3…固定電極、4…可動電極、5…固定側エンドプレート、6…可動側エンドプレート、7…ベローズ、8…真空容器、10…開閉装置。

Claims (11)

  1. 内部が真空に保持された真空容器と、
    前記真空容器の表面を覆う絶縁樹脂層と、
    前記真空容器と前記絶縁樹脂層との間に設けられた接着層とを有し、
    前記接着層は、エポキシ樹脂と、前記エポキシ樹脂に分散されたゴム粒子とを含み、
    前記ゴム粒子の平均粒径が0.1〜1μmであり、前記ゴム粒子の添加量が前記エポキシ樹脂の5〜40質量%であることを特徴とする開閉装置。
  2. 前記ゴム粒子が、コアシェルゴム粒子であることを特徴とする請求項1に記載の開閉装置。
  3. 前記コアシェルゴム粒子を構成するコアとシェルの質量比が40/60〜95/5であることを特徴とする請求項2に記載の開閉装置。
  4. 前記ゴム粒子の弾性率が1〜100MPaであることを特徴とする請求項2に記載の開閉装置。
  5. 前記接着層の厚さが0.5〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の開閉装置。
  6. 内部が真空に保持された真空容器の表面に接着層を設ける工程と、前記接着層の表面に絶縁樹脂層を設ける工程と、を有し、
    前記接着層を設ける工程は、エポキシ樹脂及びゴム粒子を含む塗布液を前記真空容器の表面に塗布し、乾燥する工程であり、
    前記塗布液に含まれる前記ゴム粒子の平均粒径が0.1〜1μmであり、前記ゴム粒子の添加量が前記エポキシ樹脂の5〜40質量%であることを特徴とする開閉装置の製造方法。
  7. 前記ゴム粒子が、コアシェルゴム粒子であることを特徴とする請求項6に記載の開閉装置の製造方法。
  8. 前記コアシェルゴム粒子を構成するコアとシェルの質量比が40/60〜95/5であることを特徴とする請求項7に記載の開閉装置の製造方法。
  9. 前記ゴム粒子の弾性率が1〜100MPaであることを特徴とする請求項7に記載の開閉装置の製造方法。
  10. 前記接着層の厚さが0.5〜20μmであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の開閉装置の製造方法。
  11. 前記塗布液の粘度が0.1〜10Pa・sであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の開閉装置の製造方法。
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