JP2019026948A - ゴム補強用アラミド繊維コード - Google Patents

ゴム補強用アラミド繊維コード Download PDF

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Abstract

【課題】繊維コードとゴムとの間の高温時での接着性(耐熱接着性)に優れるゴム補強用アラミド繊維コードの提供。【解決手段】異なる組成の第1の処理液と第2の処理液とが順に施され、複数の接着剤層が形成されてなるゴム補強用アラミド繊維コードであって、前記アラミド繊維が、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に0.1〜2質量%浸透させたアラミド繊維複合体であり、前記第1の処理液が硬化性エポキシ化合物を含み、前記第2の処理液がレゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)とトリアジン化合物を含む処理液である、耐熱接着性に優れるゴム補強用アラミド繊維コード。第1の処理液及び第2の処理液が更にブロックドイソシアネート化合物を含むことが好ましく、より好ましくは、同一化合物である、ゴム補強用アラミド繊維コード。【選択図】なし

Description

本発明は、ゴム補強用アラミド繊維コードに関する。詳細には、耐熱接着性に優れるゴム補強用アラミド繊維コードに関する。
伝動ベルト、搬送ベルト、タイヤ等のゴム製品には、補強用繊維コードが埋設されている。補強用繊維コードとして、強力が大きくかつ伸びが小さいアラミド繊維コードが広く知られており、アラミド繊維コードは、高強度、高弾性率、高耐熱性、難燃性、耐薬品性等の点で優れた特性を有している。
しかし、アラミド繊維は、表面が比較的不活性であるため、ゴムとの接着性に乏しい。アラミド繊維とゴムとの接着性を改良するためには、繊維表面を活性化した後、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(以下、RFLという。)で処理する2浴処理が一般的である。例えば、ゴム補強用アラミド繊維コードを得る場合、原糸を複数本引き揃えて撚糸としたものに、エポキシ処理やイソシアネート処理を施して繊維表面を活性化した後、RFL処理液で処理する方法が知られている(特許文献1、特許文献2等を参照)。
特許文献1は、繊維表面を活性化する処理剤として、ポリエポキシド化合物とブロックドポリイソシアネート化合物の水分散液を用い、次いでクロロフェノール化合物を含むRFL処理液で2度処理する方法を開示している。特許文献2は、アラミド繊維をエポキシ化合物で処理した後、ポリウレタン樹脂を主成分とする処理液で処理し、次いでクロロフェノール化合物を含むRFL処理液で処理する方法を開示している。
しかしながら、上記した方法においては、RFL処理液が繊維表面に均一付着しない問題点がある。
特許文献3は、アラミド繊維骨格内に硬化性エポキシ化合物を浸透させたアラミド繊維複合体で作製したコードを、RFL接着剤で処理する方法を開示しているが、高負荷かつ高温の環境下でも繊維コードがゴムから剥離しない特性、耐熱接着性に言及していない。
特開2005−171431号公報 特開2010−095814号公報 特開2012−207326号公報
本発明は、従来の繊維コードよりも、繊維コードとゴムとの間の高温時における接着性(耐熱接着性)に優れるゴム補強用アラミド繊維コードを提供することを目的とする。
前記課題を達成するため本発明者等は鋭意検討を行った結果、繊維コードに対して、組成が異なる第1の処理液と第2の処理液による処理を行い、且つ、繊維コードの素材として、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維複合体を用いることにより、アラミド繊維コードとゴムとの間の耐熱接着性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)異なる組成の第1処理液と第2処理液とが順に施され、複数の接着剤層が形成されてなるゴム補強用アラミド繊維コードであって、前記アラミド繊維が、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維複合体であることを特徴とする、耐熱接着性に優れるゴム補強用アラミド繊維コード。
(2)硬化性エポキシ化合物の浸透量が、アラミド繊維の水分量を0%に換算したときの繊維質量に対して、0.1〜2.0質量%である、前記(1)に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
(3)第1の処理液が、硬化性エポキシ化合物を含む処理液である、前記(1)または(2)に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
(4)第2の処理液が、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)とトリアジン化合物を含む処理液である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
(5)第1の処理液及び第2の処理液が、さらにブロックドイソシアネート化合物を含む、前記(3)または(4)に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
(6)繊維骨格内に浸透させたエポキシ化合物と第1の処理液で用いるエポキシ化合物が、同一化合物である、前記(3)〜(5)のいずれかに記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
(7)第1の処理液及び第2の処理液で用いるブロックドイソシアネート化合物が、同一化合物である、前記(5)または(6)に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
本発明によれば、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維複合体で作製した繊維コードに、複数の接着剤層を形成することにより、高負荷かつ高温の環境下でも剥離し難い、耐熱接着性に優れたゴム補強用アラミド繊維コードを提供することができる。
本発明においてアラミド繊維とは、繊維を形成するポリマーの繰り返し単位中に、通常置換されていてもよい二価の芳香族基を少なくとも一個有する繊維であって、アミド結合を少なくとも一個有する繊維であれば特に限定はなく、全芳香族ポリアミド繊維、またはアラミド繊維と称される公知のものであってよい。上記において、「置換されていてもよい二価の芳香族基」とは、同一又は異なる1以上の置換基を有していてもよい二価の芳香族基を意味する。
アラミド繊維には、パラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維とがあるが、本発明は引張強さに優れているパラ系アラミド繊維に対して特に有効であり、好ましい。パラ系アラミド繊維としては、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(米国デュポン社、東レ・デュポン(株)製、商品名「Kevlar」(登録商標))、コポリパラフェニレン−3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人(株)製、商品名「テクノーラ」(登録商標))等を挙げることができる。
本発明において、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させる最良の形態は、アラミド繊維を製造する工程において、紡糸溶液を口金から吐出して、紡糸浴中で凝固させ、水洗中和処理を経た後、100〜150℃で低温乾燥することにより調整された、水分率が15〜100質量%の状態のアラミド繊維に、硬化性エポキシ化合物を含む油剤を付与し、繊維に含浸・浸透させることである。とりわけ、紡出後水分率が15質量%未満に乾燥された履歴を持たない水分率が15〜100質量%のアラミド繊維が好ましい。
付与温度は特に限定されず、5〜90℃程度の温度範囲で行えば良い。含浸・浸透させる際の水分量が少なすぎると、硬化性エポキシ化合物を均一に繊維骨格内に含浸・浸透させることが困難になる。逆に水分量が多すぎると、含浸・浸透させた後、巻き取り工程までに、硬化性エポキシ化合物が水分と一緒に脱落してしまう可能性がある。硬化性エポキシ化合物を浸透させるアラミド繊維の、より好ましい水分率は25〜70質量%であり、25〜50質量%が特に好ましい。
アラミド繊維骨格内に浸透させる硬化性エポキシ化合物の含浸・浸透量は、アラミド繊維の水分量を0%に換算した繊維質量に対して、0.1〜2.0質量%が好ましく、さらに好ましくは0.2〜1.0質量%である。
硬化性エポキシ化合物としては、グリセロール、ソルビトール、ポリグリセロールなどの多価アルコールのグリシジルエーテルから選ばれる1種以上または、2種以上の混合物が好ましい。例えば、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
硬化性エポキシ化合物の他に、硬化剤が含浸・浸透されていてもよい。硬化剤としては、例えば、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミンや、脂肪族一級アミンにエチレンオキサイドを付加した長鎖アルキルポリオキシエチレン型三級アミンなどが挙げられる。硬化剤は、硬化性エポキシ化合物と同時にあるいは別々に含浸・浸透させることができる。
油剤としては、アラミド繊維に用いられる一般的な油剤、例えば、炭素数18以下の低分子量脂肪酸エステル、ポリエーテル、鉱物油などが挙げられる。
硬化性エポキシ化合物は、上記油剤中に約20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%の量で用いられることが望ましい。また、硬化剤は、上記油剤中に約3〜20質量%、好ましくは5〜10質量%の量で用いられることが望ましい。
硬化性エポキシ化合物を含む油剤は、例えば、浸漬給油法、スプレー給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法等、公知の方法で付与される。
硬化性エポキシ化合物を含む油剤をアラミド繊維骨格内に浸透させ、アラミド繊維複合体となした後、続いてこのアラミド繊維複合体を巻き取り工程でボビンに巻き取る。巻き取ったアラミド繊維複合体をボビンから巻き出して緊張下で、80〜300℃。好ましくは100〜250℃で熱処理することにより、水分率を15質量%未満、より好ましくは10質量未満とすることで、硬化性エポキシ化合物を浸透させたアラミド繊維複合体を得ることができる。
本発明のゴム補強用アラミド繊維コードは、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維を、常法により、加撚工程にてコード化した後、該コードに対して、組成が異なる2つの処理液を、第1の処理液、第2の処理液の順に付与することにより得られる。
第1の処理液としては、硬化性エポキシ化合物を含む水系または溶剤系の溶液、分散液を用いることができるが、硬化性エポキシ化合物の反応性をより発揮させるためには、水溶液または水分散液が好ましい。繊維骨格内に硬化性エポキシ化合物を浸透させたアラミド繊維複合体を用いて、アラミド繊維コードを作製し、当該アラミド繊維コードに、硬化性エポキシ化合物を含む第1の処理液を付与することにより、処理液が撚糸コード内に侵入し保持されるので、アラミド繊維により高い表面活性を付与できる。硬化性エポキシ化合物は、繊維骨格内に浸透させたものと同一でも良いし、異なっていても良いが、アラミド繊維複合体との親和性を高め、後記する加熱硬化により均一な膜を形成できる点より、同一化合物が好ましい。
硬化性エポキシ化合物は、ブロックドイソシアネートとの混合物として付与されることがより好ましい。第1の処理液における配合比率は、硬化性エポキシ化合物100質量部に対して、ブロックドポリイソシアネート1〜50質量部を用いるのが良く、さらに好ましくは5〜15質量部を用いるのがよい。
ブロックドイソシアネートは、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加物であり、加熱によりブロック化剤成分が遊離して活性なポリイソシアネート化合物を生じる化合物である。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいはこれらポリイソシアネートと活性水素原子を2個以上有する化合物、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等とをイソシアネート基(−NCO)とヒドロキシル基(−OH)の比が1を超えるモル比で反応させて得られる末端イソシアネート基含有のポリオールアダクトポリイソシアネート等が挙げられる。特にトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートが良好な結果を与える。
ブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、レゾルシン等のフェノール類、ε−カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類、エチレンイミン等が挙げられる。その他、2,4−トルエンジイソシアネート2量体のように、ポリイソシアネート化合物自体がブロック化剤を兼ねている化合物等が挙げられる。
第1の処理液の固形分濃度は、0.1〜30質量%程度とするのが液中の溶質成分の凝集を防ぎ、長期安定性の面から好ましい。また、硬化性エポキシ化合物の反応性をさらに高めることを目的として、第1の処理液にアルカリ性の化合物を少量添加することもできる。アルカリ性の化合物としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアなどが挙げられるが、アラミド繊維の加水分解による強力低下を抑えながら硬化性エポキシ化合物の触媒効果を発揮するためには、第1の処理液におけるアルカリ化合物の濃度を0.001〜1質量%の範囲とすることが好ましい。
第1の処理液は、例えば、アラミド繊維コードを当該処理液に浸漬することにより付与される。第1の処理液を付与したアラミド繊維コードを、通常、好ましくは100〜150℃で乾燥後、200〜260℃で熱処理して硬化させる。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し0.1〜5.0質量%程度が好ましい。
第2の処理液は、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)を含み、さらにトリアジン化合物を含む水系または溶剤系の溶液、分散液を用いることができるが、水溶液または水分散液が好ましい。その他、ブロックドイソシアネート、クロロフェノール化合物等を含んでいることが、より好ましい。ブロックドイソシアネートは、第1の処理液で使用した化合物と同じでも良いし、異なっていても良いが、第1の処理液との親和性を高め、より均一な第2の処理液の膜を形成できる点より、同一化合物が好ましい。
第2の処理液の固形分濃度は、0.1〜30質量%程度とするのが液中の溶質成分の凝集を防ぎ、長期安定性の面から好ましい。
またブロックドイソシアネート、クロロフェノール化合物の反応性をさらに高めることを目的として、第2の処理液にアルカリ性の化合物を少量添加することもできる。アルカリ性の化合物としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、アンモニアなどが挙げられるが、アラミド繊維の加水分解による強力低下を抑えながらブロックドイソシアネート、クロロフェノール化合物の反応性を高めるには、第2の処理液におけるアルカリ化合物の濃度を0.001〜1質量%の範囲とすることが好ましい。
上記成分の配合比率は特に限定されないが、RFLとトリアジン化合物を10/90〜10/90の比率で用い、第2の処理液全量に対して、ブロックドイソシアネート、クロロフェノール化合物を、それぞれ、1〜20質量部用いることが好ましい。
RFLは、ラテックスと、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物とを混合熟成したもので、例えば、レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物100質量部に対してラテックス40〜900質量部を配合し、混合液としたものが挙げられる。
ラテックスとしては、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、クロロプレン系ラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックス、アクリレート系ラテックスおよび天然ゴムラテックスなどが挙げられる。
レゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物としては、レゾルシン−ホルムアルデヒドを酸触媒またはアルカリ触媒下で縮合させて得られたノボラック型縮合物などが挙げられる。
トリアジン化合物としては、ジまたはトリオールトリアジン、ジまたはトリチオール−s−トリアジンが挙げられる。具体例としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオール(シアヌル酸)、イソシアヌル酸、トリヒドロキシエチルイソシアヌレート、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール等が挙げられる。この中で好ましいものは、トリオールトリアジンである。
トリアジン化合物は、ゴムの加硫接着性に寄与するため、添加量が少ないと加硫接着性が不十分となり、添加量が多すぎるとゴムがスコーチする恐れがある。
クロロフェノール化合物は、パラクロルフェノールとレゾルシンとホルムアルデヒドの共縮合物であり、具体例としては、2,6−ビス(2´,4−ジヒドロキシ−フェニルメチル)4−クロロフェノール等が挙げられる。
第2の処理液は、RFLを通常、20〜30℃の温度で24時間以上熟成した後、これにブロックドイソシアネート、クロロフェノール化合物、トリアジン化合物を添加、混合することにより調製される。
第2の処理液は、第1の処理液と同様の方法でアラミド繊維コードに付与される。第2の処理液を付与したアラミド繊維コードを、通常、好ましくは100〜150℃で乾燥した後、200〜260℃で熱処理して硬化させる。第2の処理液の好ましい付与量は、混合物として、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し3.0〜15.0質量%程度が好ましい。
ゴム補強用アラミド繊維を用いるゴムとしては、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、水素化アクリロニトリル−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ウレタンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、多硫化ゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。
本発明のゴム補強用アラミド繊維は、耐熱接着性が高く、例えば、タイヤコード、動力伝達ベルト、搬送用ベルト、ゴムホースの心線補強コード等に適用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。また、以下の実施例等において、特に言及する場合を除き、「質量%」は「%」、「質量部」は「部」、と略記する。各測定値は次の方法にしたがった。
[T−接着力及びT−耐熱接着力]
JIS L 1017:2002の接着力−A法に準じて、処理コ−ドを未加硫ゴムに埋め込み、加圧下で、初期接着力は150℃×30分、耐熱接着力は170℃×16時間プレス加硫を行い、放冷後、コードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した荷重をN/cmで表示した。
接着評価におけるゴムコンパウンドとしては、天然ゴムとSBRゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムを使用した。
[45度クロス剥離]
JIS L 1017:2002の接着力−A法に準じて、処理コ−ドを45度クロスさせて未加硫ゴムに埋め込み、加圧下で、初期接着力は150℃×30分、耐熱接着力は150℃×30分プレス加硫を行い、80℃×30分加熱した後、80℃雰囲気中で、コードをゴムブロックから300mm/minの速度で引き抜き、その引き抜きに要した荷重をN/インチで表示した。
接着評価におけるゴムコンパウンドとしては、天然ゴムとSBRゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムを使用した。
(実施例1)
通常の方法で得られたポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)(分子量約20,000)1kgを4kgの濃硫酸に溶解し、直径0.1mmのホールを複数個有する口金からせん断速度30,000sec−1となるよう吐出し、4℃の水中に紡糸した後、10%の水酸化ナトリウム水溶液で、10℃×15秒の条件で中和処理した。その後、脱水処理をして、110℃で低温乾燥を行い、水分率を35%に調整した。
このPPTA繊維に、硬化性エポキシ化合物としてトリグリセロールトリグリシジルエーテルを50%含有する油剤(ジイソステアリルアジペート/ジオレイルアジペート/硬化ヒマシ油エチレンオキサイド/鉱物油の混合物)を含浸させ、硬化性エポキシ化合物を含有する油剤をPPTA繊維に浸透させた後、巻き取り工程でボビンに巻き取った。
この後、PPTA繊維をボビンから巻き出し、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、緊張下熱処理をして巻き取り、水分率が6.9%の、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたPPTA繊維複合体を得た。硬化性エポキシ化合物含浸量(%対絶乾繊維質量換算)は0.5%であった。
上記のPPTA繊維複合体のマルチフィラメント(繊度:1,100dtex)2本を用いて、下撚35回/10cm,上撚35回/10cmの撚数で撚糸してPPTA繊維コードとした。
続いて上記のPPTA繊維コードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、硬化性エポキシ化合物としてトリグリセロールトリグリシジルエーテルと、ブロックドイソシアネートとしてジフェニルメタン−ビス−4、4’−メチルエチルケトンオキシムカルバメートとを、質量比で、10:1で配合した第1の処理液に浸漬した後、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、ディップコードを作製した。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し1.5質量%であった。
続いて上記のディップコードを、コンピュートリータ処理機(リッツラー社製)を用いて、第2の処理液に浸漬し、140℃で150秒乾燥し、続いて245℃で60秒間熱処理することにより、RFLディップコードを作製した。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し8.8質量%であった。
第2の処理液は、水酸化ナトリウムの存在下で、ビニルピリジン−スチレン−ブタジエンラテックス100部に対し、予めレゾルシンとホルムアルデヒドをモル比でレゾルシン/ホルムアルデヒド=1/0.65の割合で酸性触媒下で予備縮合させたノボラック型の予備縮合物(住友化学(株)製“スミカノール700S”)を10部混合し、24時間熟成させた液に、第1の処理液と同じブロックドイソシアネート30部、クロロフェノール化合物37部、トリアジン化合物23部を混合することにより調製した。
(実施例2)
実施例1において、第1の処理液に配合するブロックドイソシアネートのみをジフェニルメタン−ビス−4、4’−メチルエチルケトンオキシムカルバメートの代わりに、ジフェニルメタン−ビス−4、4’−カルバモイル−ε−カプロラクタムを使用した以外は実施例1と同様の方法でRFLディップコードを作製した。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し1.3%であった。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し8.8%であった。
(比較例1)
実施例1において、PPTA繊維複合体からなるコードに対し、第1の処理液による処理を行うことなく、第2の処理液による処理のみを実施し、実施例1と同様の方法でRFLディップコードを作製した。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し9.5%であった。
(比較例2)
実施例1において、PPTA繊維複合体の代わりに、東レ・デュポン(株)製のポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維フィラメント糸条(「Kevlar(登録商標)29」、引張強度20.3cN/dtex、引張弾性率490cN/dtex、単糸繊度1.65dtex、総繊度1,110dtex)を使用した以外は、実施例1と同様の方法でRFLディップコードを得た。第1の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し1.3%であった。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し8.0%であった。
(比較例3)
比較例2において、第1の処理液による処理を行うことなく、第2の処理液による処理のみを実施し、実施例1と同様の方法でRFLディップコードを作製した。第2の処理液の付与量は、乾燥質量比でアラミド繊維コードに対し8.8%であった。
実施例および比較例で得たアラミド繊維コードの評価結果を表1に示す。
Figure 2019026948
表1より、原糸に、アラミド繊維骨格内に硬化性エポキシ化合物を浸透させたアラミド繊維複合体を用い、第1の処理液と第2の処理液による2液処理を施すことで、耐熱接着力と耐熱クロス剥離強度において、顕著な向上効果が認められることがわかる。
同じ2液処理を施した場合でも、原糸にアラミド繊維複合体を用いることにより(実施例1と比較例2の対比)、初期接着力と初期クロス剥離強度が顕著に向上していることがわかる。また、当該アラミド繊維複合体における耐熱接着力の向上(即ち、高温下に曝されてもゴムと繊維が剥離しないようにする)には、実施例1と比較例1の対比より、第1の処理液が寄与していることがわかる。
従来のRFL処理液による処理コード(比較例3)に比べ、本発明の処理コードは、初期接着力、耐熱接着力、初期クロス剥離強度、耐熱クロス剥離強度の全てにおいて、従来品より向上していることがわかる。
本発明のゴム補強用アラミド繊維は、耐熱接着性が要求されるゴム製品の補強用に有用である。

Claims (7)

  1. 異なる組成の第1の処理液と第2の処理液とが順に施され、複数の接着剤層が形成されてなるゴム補強用アラミド繊維コードであって、前記アラミド繊維が、硬化性エポキシ化合物を繊維骨格内に浸透させたアラミド繊維複合体であることを特徴とする、耐熱接着性に優れるゴム補強用アラミド繊維コード。
  2. 硬化性エポキシ化合物の浸透量が、アラミド繊維の水分量を0%に換算したときの繊維質量に対して、0.1〜2.0質量%である、請求項1に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
  3. 第1の処理液が、硬化性エポキシ化合物を含む処理液である、請求項1または2に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
  4. 第2の処理液が、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ラテックス(RFL)とトリアジン化合物を含む処理液である、請求項1〜3のいずれかに記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
  5. 第1の処理液及び第2の処理液が、さらにブロックドイソシアネート化合物を含む、請求項3または4に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
  6. 繊維骨格内に浸透させたエポキシ化合物と第1の処理液で用いるエポキシ化合物が、同一化合物である、請求項3〜5のいずれかに記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
  7. 第1の処理液及び第2の処理液で用いるブロックドイソシアネート化合物が、同一化合物である、請求項5または6に記載のゴム補強用アラミド繊維コード。
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