JP2019023362A - 着物及び着物の着付け方法 - Google Patents

着物及び着物の着付け方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019023362A
JP2019023362A JP2017142323A JP2017142323A JP2019023362A JP 2019023362 A JP2019023362 A JP 2019023362A JP 2017142323 A JP2017142323 A JP 2017142323A JP 2017142323 A JP2017142323 A JP 2017142323A JP 2019023362 A JP2019023362 A JP 2019023362A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
kimono
attached
heel
lower body
sewn
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017142323A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6412219B1 (ja
Inventor
尚子 伊佐
Naoko ISA
尚子 伊佐
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mana Kikaku Co Ltd
Original Assignee
Mana Kikaku Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mana Kikaku Co Ltd filed Critical Mana Kikaku Co Ltd
Priority to JP2017142323A priority Critical patent/JP6412219B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6412219B1 publication Critical patent/JP6412219B1/ja
Publication of JP2019023362A publication Critical patent/JP2019023362A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Outerwear In General, And Traditional Japanese Garments (AREA)

Abstract

【課題】着物の着付け時に美しい形状を形成し、着崩れしにくく、しかも一人でも容易かつ迅速に着付けることができるようにする。
【解決手段】着物自体又は帯で隠れる高さに予め取付けたお端折部に1以上の始端着脱具を取付けてあり、この始端着脱具を装着して支持する始端支持具を前記着物又はお端折部の内面の一周位置に取付けてある。また、前記お端折部の終端部を支持する1以上の終端着脱具を取付けてあり、この終端着脱具を装着して支持する1以上の終端支持具を前記着物又はお端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてあるので、着用者の胴廻り体形の差異に対応して、複数のファスナーの一つを選んで使用することで、どのような体形でも着用できる。
【選択図】図2

Description

本発明は、着物及び着物の着付け方法に関する。詳しくは、一人でも各種サイズに対応して容易かつ迅速に着崩れしにくい着付けができる技術を実現する。
着物は、様々な体型の人が着用することができるようゆとりをもって作られているので、着用時に個々の体型に合わせて微調整する作業が必要である。具体的には、「衿抜き」と言われる、衿の後ろ部分の空き具合、裾にかけてすぼまった形状、お端折の形成、背中部分の後身頃に皺ができないように生地を身体に添わせるなどである。これらの作業は、着用時の美しい形状を形成するため、必要な作業とされている。このため、着物を一人で着用できるようになるにはある程度の時間が必要となり、たとえ一人で着用できるようになっても、着用していると徐々に着崩れてしまうことから、着物を着用することにわずらわしさを感じ、いわゆる「着物離れ」が生じてしまっている。そして、この結果として着物を一人で着付けすることができない人が増えている。
特に、体形的に太った人が居れば、痩せた体形も有る。また、衿の後ろ部分を後方に倒す「えり抜き」と言われる作業は、鏡を見ながら片手を背中側に回して行う作業となるため、難しいとされる。
このようなことから、特許文献1に示すように、身頃の脇線の一部を裾にかけて裾窄まりに形成されるよう予め身頃の裾付近を斜めに裁った着物が考案されている。これにより、着物の美しい形状の一つである裾窄まりの形状が自然と形成される。また、特許文献2に示すように、上衣と下衣に分かれた、上下二部式の着物も考案されている。これにより、お端折を容易に形成することが出来、また後身頃にダーツを設けて予め体型に沿った形状に形成しているので、微調整する必要がなく容易に着用することができる。
特開2007−77553号公報 特開2007−16372号公報
しかしながら、特許文献1に記載された着物では、着物の柄のデザイン性が大きく損なわれることが考えられる。着物の柄は、従来の裁断方法で裁断されることを前提として、反物の幅に合ったデザインが施されており、このような柄を無視して裁断すると、隣接する身頃の柄に違和感が生じてしまうだけでなく、従来通りの衿抜きの作業を行わなければならない点については解消されていない。このため、着物の美しい形状が損なわれてしまうことが考えられる。
また、特許文献2に記載された着物では、上衣の裾を両面テープで折畳むことでお端折を形成しているため、着崩れし易いだけでなく、後身頃にダーツを設けたことで後身頃に生地の皺が生じやすくなり、着物の美しい形状が形成され難い。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、体形と関係無く着物の着付け時に美しい形状を形成し、着崩れしにくく、しかも一人でも容易かつ迅速に着付けることができる技術を実現することにある。
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、右巻き方向又は左巻き方向に着るお端折部を形成した若しくはお端折部無しの着物の自体又は帯で隠れる高さに予め取付けたお端折部の始端に1以上の始端着脱具を取付けてあり、この始端着脱具を装着して支持する1以上の始端支持具を前記着物又はお端折部の内面の一周位置に取付けてあり、また前記お端折部の終端部を支持する1以上の終端着脱具を取付けてあり、この終端着脱具を装着して支持する1以上の終端支持具を前記着物又はお端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてあることを特徴とする着物である。
前記の着脱具と支持具とは、着脱具を支持具に装着すると互いに接続されて固定され、お端折部の始端や終端が揺れたり移動できなくなる。また、着脱具を支持具から離脱すると離れて互いに自由となる仕組みで、図示のファスナーは、左右の務歯列やスライダーは金属や合成樹脂など、硬度と耐磨耗性に富む材質である。このような、固い材質が着物に混じっているのを好まない人も居るが、その場合を考慮して、リボンや紐類も代用できる。
すなわち、図2の主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…に代えて、紐やリボンを縫い付けておく構造も可能である。すなわち紐やリボンの両側を縫い付けて1本で主又は従のファスナーの代用にしても良いが、紐やリボンを2本ずつ用いて一端はファスナー72〜76…の上端と下端の両方に縫い付けておいて、他端のフリーの部分同士を蝶結びなどで接続して着脱可能とする。
請求項2は、右巻き方向又は左巻き方向に着るお端折部を形成した若しくはお端折部無しの着物の自体又は帯で隠れる高さに予め取付けたお端折部の始端に1以上の始端着脱具を取付けてあり、この始端着脱具を装着して支持する1以上の始端支持具を前記着物又はお端折部の内面の一周位置に取付けてあり、また前記お端折部の終端部を支持する1以上の終端着脱具を取付けてあり、この終端着脱具を装着して支持する1以上の終端支持具を前記着物又はお端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてある着物を着る際に、太った体形の人が着る場合は、前記の1以上の始端支持具及び/又は始端着脱具の位置までの寸法が長くなるように前記の始端着脱具及び/又は始端支持具を選択し、痩身者が着る場合は、前記の寸法が短くなるように前記の始端着脱具及び/又は始端支持具を選択することを特徴とする着物の着付け方法である。
請求項3は、前記の1以上の始端着脱具又は終端着脱具及び/又は始端支持具及び/又は終端支持具において、着用者の体形に応じて各体形ごとに着脱具又は支持具の色を変えてあることを特徴とする請求項1記載の着物である。
請求項4は、衿部分に縦帯状の背力布の上端が接続されており、前記背力布の下端又は下端近傍を着物の後身頃の内面に着脱する構成となっており、前記背力布を下方に引いて衿抜きした状態で、前記後身頃の内面に装着固定する構造を特徴とする請求項1又は請求項3に記載の着物である。
着脱手段として、実施例ではボタンをボタンホールに嵌入して装着する例を図示したが、ボタンに代えてフックを用いても良いし、マジックテープ(登録商標)と呼ばれている面ファスナー等を着脱手段にしてもよい。面ファスナーを使用する場合は、例えばフック側を背力布に取付け、ループ側を後身頃の内面に取付ける。その逆でもよい。
請求項1のように、右巻き方向又は左巻き方向に着る着物の自体又は帯で隠れる高さに予め取付けたお端折部にファスナー等のような1以上の始端着脱具を取付けてあり、この始端着脱具を装着して支持する始端支持具を前記着物又はお端折部の内面の一周位置に取付けてある。
また、前記お端折部の終端部を装着する1以上の終端着脱具を取付けてあり、この終端着脱具を装着して支持する1以上の終端支持具を前記着物又はお端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてあるので、着用者の胴廻り体形の差異に対応して、複数のファスナーの一つを選んで使用することで、どのような体形でも着用できる。
請求項2のように、右巻き方向又は左巻き方向に着るお端折部を形成した若しくはお端折部無しの着物の自体又は帯で隠れる高さに予め取付けたお端折部の始端に1以上の始端着脱具を取付けてあり、この始端着脱具を装着して支持する1以上の始端支持具を前記着物又はお端折部の内面の一周位置に取付けてある。
また、前記お端折部の終端部を支持する1以上の終端着脱具を取付けてあり、この終端着脱具を装着して支持する1以上の終端支持具を前記着物又はお端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてある着物を着る際に、太った体形の人が着る場合は、前記の1以上の始端支持具及び/又は始端着脱具の位置までの寸法が長くなるように前記の始端着脱具及び/又は始端支持具を選択し、痩身者が着る場合は、前記の寸法が短くなるように前記の始端着脱具及び/又は始端支持具を選択するので、太った体形の人が着る場合は、前記の支持具及び/又は着脱具の位置までの寸法が長くなるように選択し装着する。また、痩身者が着る場合は、前記の寸法が短くなるように前記の支持具及び/又は着脱具を選択するように、複数の着脱具や支持具の一つを選んで使用することで、どのような体形でも対応できる。
請求項3のように、前記の1以上の始端着脱具又は終端着脱具及び/又は始端支持具及び/又は終端支持具において、着用者の体形に応じて各体形ごとに着脱具又は支持具の色を変えてあるので、色によって所望のサイズを選択し決定できる。
図3の実施例では、ボタンをボタンホールに係合させることで背力布をボタン側に牽引して衿抜き可能としたが、請求項4では、マジックテープと呼ばれている面ファスナー等も着脱手段として使用可能とした。すなわち、背力布を下に引いて衿抜きしてから、面ファスナーを押し付けて装着固定する。このように、背力布の下端を下に引いて装着するだけで衿抜でき、一人でも容易かつ迅速に衿抜きがる。
本実施例の着物を構成する上身頃対、前下身頃対及び後下身頃対の形状を表した展開図である。 本実施例の着物のサイズ調節構成を示す正面図である。 本実施例の着物の後衿部の構成を示す斜視図である。 本実施例の着物の背力布を示す断面図である。 本実施例の着物の製造方法を示す工程図である。 本実施例の着物の着用方法の工程図である。
次に本発明による着物の構成及び着物の着付け方法について、図1乃至図6を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、本明細書では、「左」「右」とは、それぞれ順に、着用者にとっての左手側を、着用者にとっての右手側を示す。また、「前」「後」、それぞれ順に、着用者にとっての前方を、着用者にとっての後方を示す。そして、「上」「下」とは、それぞれ順に、着用者にとって足部から頭部に向けての方向を、着用者にとって頭部から足部に向けての方向を示す。さらに、「内側」「外側」とは、それぞれ順に着用者の身体の中心に近い側を、着用者の身体の中心から遠い側を示す。なお、図1において縫い代は省略している。
本発明に係る着物について、図1乃至図4を用いて説明する。まず、図1乃至図3に示すように、本実施の形態の着物は、上身頃対1、前下身頃対2、衽対3、後下身頃対4、衿5、衿抜き部材の一例である背力布6、袖9の構成部材から成る。
上身頃対1は左上身頃10a及び右上身頃10bから成り、それぞれ長手方向の略中央に肩山線11a、11bを有する。肩山線11a、11bを含む領域の生地は、本実施の形態の着物を着用した際、着用者の肩の最上部付近に位置する。
左右の上身頃10a、10bのうち、肩山線11a、11bを境にして、着用時に着用者の前側に位置する部分を前側上身頃101a、101bとし、後側に位置する部分を後側上身頃100a、100bとする。左右の上身頃10a、10bは、図1においては略左右反転した形状を有し、上身頃10a、10bとも他方の上身頃と対向する縁部は、後側上身頃100a、100bから前側上身頃101a、101bにかけて切欠かれている。
具体的には、後側上身頃100a、100bは中心角略90度の円弧状に切欠かれて、後衿付線130a、130bが形成される。この後衿付線130a、130bに連続するようにして、前側上身頃101a、101bの肩山線11a、11bから前端側領域12a、12bにかけて斜めに切欠かれた前衿付線131a、131bが形成される。
そして、このような後衿付線130a、130bを有する後衿部132と、前衿付線131a、131bを有する前衿部133とを併せて、衿刳りの一例である衿付部13が形成される。
この後衿付線130a、130bに沿って衿5の衿後部50を取付けることで、衿5が後方に傾倒し、自然と衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができると共に、衿抜きの作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、前衿付線131a、131bに沿って衿5の衿前部51を取付けることで、胸元の衿が自然と合わさった、美しい形状の衿5を形成することができると共に、胸元を合わせる作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、傾斜内縁部の一例である、上身頃10a、10bの背縫い部16は、後側上身頃100a、100bの内側の縁部であって、後衿付線130a、130bの部分を除いた縁部である内側縁部160a、160bと、その近傍であって、背中部分や脇部分に位置する縁部領域161a、161bとから成る。内側縁部160a、160bは、肩山線11a、11bから後端側領域14a、14bに向けて離間するにしたがって、外側に傾斜して形成されている。
この内側縁部160a、160bを縫着することで、上身頃を略筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができると共に、着用時の背中部分や脇部分である縁部領域161a、161bに、生地の皺が生じるのを防ぐことができる。
なお、胴回りが太い着用者の場合には、内側縁部160a、160bの傾斜角度を変えるなどして徐々に垂直方向に近づけることで対応することができる。
また、上身頃10a、10bの外側縁部15は、前外側縁部150a、150b及び後外側縁部151a、151bから成る。前外側縁部150a、150bは肩山線11a、11bから前端側領域12a、12bにかけて内側に傾斜している。後外側縁部151a、151bは、肩山線11a、11bから後端側領域14a、14bにかけて内側に傾斜している。
前外側縁部150a、150bの一部と、後外側縁部151a、151bの一部を縫着することで、上身頃を略筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができる。
背力布6は帯状の形状を有し、伸縮性のない素材で形成されている。また、背力布6の一端であり、被取付部65は、着物Aの内側で後衿付線130a、130bと内側縁部160a、160bとが交わる交点又はその周辺の取付け領域61内の所定の取付部60に取付けられる。また、背力布6の他端である被係合部であるボタンホール63は、後下見頃対4の内面の所定の係合部であるボタン64に取付けられる。
後身頃の一部に取付けられた係合部の一例であるボタン64をボタンホール63に係合することで背力布6にボタン64側の牽引力を持たせることができる。
背力布6は、取付部60とボタン64間の長さよりも短く形成され、かつボタン64は帯(図示せず)によって押圧される位置に取り付けられているので、背力布6の被取付部65にボタン64側への牽引力が生じる。このボタン64側への牽引力が取付け領域61に加えられることで、衿5が後方に傾倒するので、衿抜き作業をすることなく衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができる。また、背力布6によって着物の形状が略一定に保持されるので、着用時に衿の位置がずれるなどの着崩れが生じにくくなる。さらに、背力布6は、着物Aの内側に取付けられるため着物Aの外観を損なうことがないので、美しい形状を有する着物が形成される。
また、背力布6により取付け領域61にボタン64側への牽引力が加えられた際には、図4(a)(b)に示すように、縁部領域161a、161bの余分な布地はボタン64側に引っ張られてお端折部7の内側に折畳まれて収容される。このため、生地がお端折部7の表面に露出することを防ぐことができる。
なお、ボタンホール63が設けられる位置は、背力布6の端部に限られるものではなく、背力布6の途中部に設けることができ、また複数個所設けることもできる。この場合、取付け領域61とボタン64の取付け位置までの長さを容易に変更することができるので、着用者の体型に適した長さにすることができる。そして、ボタンホール63の位置に応じて取付け領域61に加えられる牽引力の大きさが変化するので、ボタンホール63の位置を選択して衿5の傾倒する角度を調整することができる。また、本実施例では、背力布6の幅は約7センチに形成されているが、これに限られるものではない。例えば、背力布の幅を7センチよりも細くすると、衿後部の形状をやや幅狭な形状にすることができ、7センチよりも太くすると、衿後部は丸みを帯びた形状に形成される。なお、背力布6は伸縮性のない素材に限定されるものではなく、ゴムなどの弾性材を用いても良い。
衽対3は、帯状の左右の衽30a、30bから成り、その幅方向の一端は前下身頃20a、20bの幅方向の内側の端部に縫着される。
前下身頃対2は、帯状の左右の前下身頃20a、20bから成り、上身頃側領域の一例である上端部21a、21bは上身頃10a、10bの前端側領域12a、12bに縫着される。本実施例においては、前下身頃20a、20bの幅は、前端側領域12a、12bの幅と略同一に形成されている。なお、前下身頃20a、20bの幅は、前端側領域12a、12bの幅と略同一の長さに形成されることに限られず、着用者のサイズに合わせて、適宜変更することができる。
ここで、前端側領域12a、12bの傾斜前縁部の一例である前端側縁部120a、120bは、外側から内側に向けて肩山線11a、11b側に傾斜している。このため、前端側縁部120a、120bに前下身頃20a、20b及び衽30a、30bを縫着すると、前下身頃20a、20bの下端部22a、22b、及び衽30a、30bの下端部31a、31bは、外側から内側に向けて傾斜した形状となる。その結果、図2(b)に示すように、衽30aの下端部31aの褄先23が持ち上がった、いわゆる裾窄まりの形状が自然と形成される。
なお、右前下身頃20bと右衽30bを別個に裁断せず、一体の生地として裁断しても良い。右衽は着用時に、左衽及び左前下身頃に覆われて露出しないので、右前下身頃と右衽を一体に裁断することで縫着する手間を省くことが出来るからである。
後下身頃対4は、帯状の左右の後下身頃40a、40bから成り、上身頃側領域の一例である上端部41a、41bは上身頃10a、10bの後端側領域14a、14bに縫着される。後下身頃40a、40bの幅は、後端側領域14a、14bの後端側縁部140a、140b幅と略同一に形成されている。なお、後下身頃40a、40bの幅は、後端側領域14a、14bの幅と略同一の長さに形成されることに限られず、着用者のサイズに合わせて、適宜変更することができる。
ここで、後端側縁部140a、140bは、肩山線11a、11bと略平行に配置されている。このため、後端側縁部140a、140bに後下身頃40a、40bを縫着すると、後下身頃40a、40bの下端部42a、42bは、略水平に配置される。
図4(b)に示すように、上身頃1と前下身頃20a、20bの上端部21a、21b及び後下身頃40a、40bの上端部41a、41bとが縫着された縫着部80付近を折返して重ねた重なり部にお端折部7が形成される。このお端折部7の上部70付近で重なっている上身頃1、前下身頃20a、20b、及び後下身頃40a、40bにお端折部7を縫着することにより、お端折部7の形状は保持されるので、着用時にお端折部7を形成する作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
着物を着る場合、通常、身体に着物を時計廻りに巻きつけるように右袖の有る右端から先に身体に巻くように着るので、図2のように、左前の着方になる。上方から見た場合、「の」の字の筆順の順序で右廻りに着る。逆に、下方から見て、「の」の字を左右反転した順序で左廻りに着ることも可能であり、この場合は、右前の着方になる。図示着物には、お端折部7の上端縁を予め着物に縫い付け支持してある。図示のお端折部7は、帯のように上端縁と下端縁間の幅で長く形成されている。「長く」と言っても、着用者の胴の外面に巻いた場合の約一周半程度の長さ、すなわち着物を着た場合の着物の胴廻り寸法とする。
図2は、着物のサイズ調節構成の実施例を示す正面図である。お端折部7の巻始めすなわち始端71の近傍内側にある下身頃の部分には主ファスナー72のような始端着脱具72が縫い付けられており、主ファスナー72と係合可能な従ファスナー73…すなわち3本の始端支持具73…が、お端折7の内面すなわち、左前下身頃20aと左後下身頃40aが縫着される左体側縫着部8aの上身頃10a側のお端折部7に取付けられている。
ファスナーは、務歯列を互いに対向させ、間に設けた楔体と両外側に配設した押さえ部とから成るスライダーを移動させて左右の務歯列を開閉する構造である。すなわち、主ファスナー75と従ファスナー73…は、片方の務歯列とスライダーSとを有し、主ファスナー72と従ファスナー76…は、他方の務歯列のみを有しており、スライダーSの操作で両務歯列が結合した際にファスナーが装着接続したことになる。
主ファスナー72を従ファスナー73…(主ファスナー72側も複数個設けてもよい)に装着して互いに接続させることで、右前下身頃20b、右前下身頃20bと縫着された右衽30b、及び右前下身頃d0bが縫着された右上身頃10bにより着用者の前面を覆うように固定することができるので、お端折部7の始端71が揺れ動いたりして着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着ることができる。
お端折部7の巻き終りすなわち終端部74又は近傍の下身頃には主ファスナー75すなわち終端装着具75が縫い付けられており、主ファスナー75を装着して支持可能な従ファスナー76…すなわち終端支持具76…が、お端折部7の全長位置に縫い付けられている。
着脱ファスナー75を支持ファスナー76…に装着し互いに係合させることで、左前下身頃20a、左前下身頃20aと縫着された左衽30a、及び左前下身頃20aが縫着された左上身頃10aにより着用者の前面を覆うように固定することができるので、着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…は帯を着用した際に帯で覆われる高さに設けられるので、着物を着た際に外観を損なうことがなく、着崩れするのを防ぐことができる。従って、着物自体に主ファスナー72、75や従ファスナー73…、76…を取付ける場合も、ファスナーなどの着脱具や支持具が帯で隠れるようにする。
なお、着物を構成する上身頃対1、前後の下身頃対2、4、袖9、衿5などの各寸法は、本発明の実施例に限られるものではない。例えば、これらの各寸法を変えることで、背が高くて痩せた体型、背が低くて痩せた体型、手足が長い体型、大柄な体型などの様々な体型にそれぞれ適合するサイズで作成された着物を作製することができる。
特に、衿は着用者の年齢や場面に応じてその開き具合が求められるので、様々な衿付部13の前衿付線131a、131b及び後衿付線130a、130bの形状が考えられる。例えば、胸元の衿を詰めた形状になる、直線状に形成された前衿付線、あるいは胸元の衿が開いた形状になる湾曲線状に形成された前衿付線などである。また、後衿付線131a、131bも、肩山線11a、11bから後側上身頃100a、100b側へ大きく切欠くことで、後衿部132を大きく開くことができる。
このように、本発明では、着物の着用時の従来の美しい形状を保ちながらも、着崩れしにくく、一人でも容易かつ迅速に着用することができると共に、着用者の身体の凹凸に沿って立体的に作製された着物を提供することができる。
[着物の製造方法]
本発明に係る着物の製造方法について、図1乃至図5を用いて説明する。
[1]裁断工程S1裁断工程S1では、生地体(図示せず)から、衿5、各左右一対の上身頃10a、10b、前下身頃20a、20b、後下身頃40a、40b、衽30a、30b、及び袖9を裁断する作業を行う。
[2]第1内縁部接続工程S2
第1内縁部接続工程S2では、左右の上身頃10a、10bの背縫い部16の内側縁部160a、160bを縫着する作業を行う。左上身頃10aの後側上身頃100aの内側縁部160aと、右上身頃10bの後側上身頃100bの内側縁部160bを縫着する。これにより、左右の上身頃10a、10bが体型に沿った立体的な形状となり、後側上身頃100a、100bの縁部領域161a、161bに皺が生じにくくなって、美しい形状を有する上身頃1が形成される。
[3]脇縫い工程S3
脇縫い工程S3では、前側上身頃101a、101bと後側上身頃100a、100bの外側縁部15を縫着する作業を行う。右上身頃10bの前側上身頃101bの前外側縁部150bのうち前端側領域12b寄りの一部と、後側上身頃100bの後外側縁部151bのうち後端部領域14b寄りの一部とを縫着する。また、左上身頃10aの前側上身頃101aの前外側縁部150aのうち前端側領域12a寄りの一部と、後側上身頃100aの後外側縁部151aのうち後端部領域14a寄りの一部とを縫着する。これにより、左右の上身頃10a、10bを縫着することで、上身頃対を筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができる。なお、外側縁部15のうち縫着していない部分によって、後述する袖9と連続する袖通し用孔17a、17bを形成することができる。
[4]衿関連部材取付け工程S4
衿関連部材取付け工程S4では、取付け領域61に背力布6を縫着する作業と、上身頃10a、10bの後衿付線130a、130b及び前衿付線131a、131bに衿5を縫着する作業を行う。衿関連部材取付け工程S4は、衿抜き部材取付け過程S40、後衿付取付け過程S41及び前衿取付け過程S42より構成される。
[4−1]衿抜き部材取付け過程S40
衿抜き部材取付け過程S40では、衿抜き部材の一例である背力布6の被取付部65を上身頃の取付部60に取付け、背力布6の被係合部であるボタンホール63を係合部であるボタン64に係合させる作業を行う。被取付部65を取付け領域61に設けられた取付部60に縫着し、ボタン64をボタンホール63に係合させることで、背力布6を取付け部60とボタン64の間に介設することができる。
背力布6は、取付部60とボタン64間の長さよりも短く形成され、かつボタン64は図3に示すように、帯(図示せず)によって押圧される位置に取り付けられているので、背力布6の被取付部65にボタン64側への牽引力が生じる。このボタン64側への牽引力は取付け領域61に伝わることで、衿5が後方に傾倒するので、衿抜き作業をすることなく衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができると共に、背力布6によって着物の形状が略一定保持されるので、着用時に衿の位置がずれるなどの着崩れが生じにくくなる。さらに、背力布6は、着物Aの内側に取付けられるため着物Aの外観を損なうことないので、美しい形状を有する着物が形成される。
なお、ボタン64及びボタンホール63の取付け作業は、必ずしも衿関連部材取付け工程S4において行うことに限られず、例えば、後述する本体仕上げ工程S9の後に行っても良い。
[4−2]後衿取付け過程S41
後衿取付け過程S41では、上身頃10a、10bの後衿付線130a、130bに沿って、衿5のうち後側上身頃100a、100b側に取付けられる衿後部50を縫着する。これにより、図3及び図4に示すように、肩山線より後ろ側の後側上身頃途中にかけて中心角略90度の円弧状の後衿付線130a、130bに沿って縫着される衿後部50は従来の後衿の位置よりも後方に傾倒するので、衿抜き作業を行うことなく、衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができるので、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[4−3]前衿取付け過程S42
前衿取付け過程S41では、上身頃10a、10bの前衿付線131a、131bに沿って、衿5のうち前側上身頃101a、101b側に取付けられる衿前部51を縫着する。これにより、前衿付線131a、131bに沿って縫着される衿前部51は立体的に胸元に沿った形状に取付けられるので、胸元を合わせる作業を省くことができ、一人でも容易に着用することができる。
[5]袖付け工程S5
袖付け工程S5では、上身頃10a、10bの外側縁部15に袖9を縫着する作業を行う。袖9を二つに折り、袂90が形成されるよう縁部を縫着する。袂90が形成された側と反対側の縁部を、上身頃10a、10bの袖通し用孔17a、17bに取り付ける。これにより、着用者が袖通し用孔17a、17bから袖9に袖を通すことができる。
[6]第2内縁部接続工程S6
第2内縁部接続工程S6では、後下身頃40a、40bを縫着する作業を行う。左後下身頃40aの内側背縫い部43aと右後下身頃40bの内側背縫い部43bを縫着する。これにより、後下身頃40a、40bが一体に形成される。
[7]衽付け工程S7
衽付け工程S7では、前下身頃20a、20bに衽30a、30bを縫着する作業を行う。前下身頃20a、20bの衽取付け縁部24a、24bに衽30a、30bを取り付ける。これにより、前下身頃20a、20bと衽30a、30bが一体に形成される。
[8]足周り接続工程S8
足周り接続工程S8では、左前下身頃20aと左後下身頃40a、及び右前下身頃20bと右後下身頃40bを縫着する作業を行う。左前下身頃20aの外側縁部と左後下身頃40aの外側縁部を縫着して左体側縫着部8aを形成し、右前下身頃20bの外側縁部と右後下身頃40bの外側縁部を縫着して右体側縫着部8bを形成する。これにより、左前下身頃20aと左後下身頃40a、及び右前下身頃20bと右後下身頃40bが一体に形成される。
[9]本体仕上げ工程S9
本体仕上げ工程では、上下身頃1、2、4を接続し、お端折7を形成し、お端折7の端部71、74が接続される接続部の取付を行う。
[9−1]上下身頃接続工程S90
上下身頃接続工程S90では、上身頃10a、10bと、前下身頃20a、20b及び後下身頃40a、40bを縫着する作業を行う。上身頃10a、10bの前端側縁部120a、120bに、前下身頃20a、20bを縫着すると共に、上身頃10a、10bの後端側縁部140a、140bに、後下身頃40a、40bを縫着する。これにより、上身頃10a、10bと、前下身頃20a、20b及び後下身頃40a、40bが一体に形成されると共に、前端側縁部120a、120bが内側に向かって肩山線11a、11b側に傾斜していることから、図2(b)に示すように、褄先23が上方に持ち上がるので、全体として裾窄まりの形状を形成することができる。
[9−2]お端折形成工程S91
お端折形成工程S91では、お端折部7を形成して縫着する作業を行う。上身頃1と、前下身頃20a、20bの上端部21a、21b及び後下身頃40a、40bの上端部41a、41bとが縫着された縫着部80付近を折返して重ねてお端折部7を形成する。図4に示すように、このお端折部7の上部70付近で重なっている上身頃1、前下身頃20a、20b、及び後下身頃40a、40bを縫着することにより、お端折部7の形状は保持されるので、着用時にお端折部7を形成する作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[9−3]接続具取付け工程S92では、お端折部7の巻始め端部71や巻終り端部74又はその近傍に接続具である主ファスナー72や75を設け、中間部位に従ファスナー73…と76…を縫い付けてある。お端折部7の始端71近傍の下身頃2、4には主ファスナー72が設けられ、及び主ファスナー72と係合可能な従ファスナー73…は、お端折部7の内面の一周位置7t、すなわち左体側縫着部8aの上身頃10a側寄りに設けられている。主ファスナー72と従ファスナー73…を係合させることで、右前下身頃20b、右前下身頃20bと縫着された右衽30b、及び右前下身頃20bが縫着された右上身頃10bにより着用者の前面を被覆するように固定することができるので、着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
お端折部7の巻終り端部74近傍の下身頃2には、主ファスナー75が取付けられ、主ファスナー75と係合可能な従ファスナー76…は、お端折部7の全長の位置の外面に設けられている。
主ファスナー75と従ファスナー76…中の一つを体形に応じて選んで装着係合させることで、左前身頃20a、左前身頃20aと縫着された左衽30a、及び左前身頃20aが縫着された左上身頃10aにより着用者の前面を被覆するように固定することができるので、着用時に着崩れるのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
これにより、着用者の前面を覆う生地が主ファスナー72、75と3本構成の従ファスナー73…、76…との装着接続により固定されるので、着用時に着物の胸元が徐々に開いてしまうなどの着崩れを防ぎやすくなる。
なお、本実施例では、従ファスナー73…、76…を三本設けているので、所望の一つを選択することで、様々な胴回りのサイズに対応させることができる。前記主ファスナー72、75も三本のように、主ファスナー75も三本のように、複数設けることで、合計9種類の装着接続ができ、より細かいサイズ選択が可能となる。主ファスナーと従ファスナーとの個数を逆にして、主ファスナー複数個、従ファスナーを1個のみとしてもよい。さらに、各サイズごとにファスナーの色を変えるようにしてもよく、この場合着用時に対応する主従のファスナーを容易に見つけることができて能率的である。
着脱具や支持具は、より具体的には、スライダーSを要するファスナーの他にボタンやフック、ホック、マジックテープ(登録商標)或いは紐やリボンを縫い付けても足りる。すなわち、紐やリボンの一端を縫い付けておき、縫い付けずにフリーの状態にした他端同士を結んで装着接続する。
この着脱具や支持具は、着物自体に取付けてもよいが、着物を着る際にお端折部を形成する場合は、このお端折部の形成位置を想定して取付ける。お端折部を形成しない着方をする場合は、お端折部を形成する高さや帯の高さを想定して取付けることになる。
また、本発明に係る着物の上身頃1や下身頃2,4の寸法を適宜変えることで、様々な体型にそれぞれに対応した着物を製造することができる。
さらに、本実施例では上身頃と下身頃を縫着した縫着部80にお端折を形成しているが、図4(c)に示すように、下身頃にお端折部7を形成した後に、該下身頃2、4を上身頃1の下端に縫着するようにしてもよい。
この場合は、下身頃2、4のお端折部7は折畳んで、上身頃1に縫着することによりお端折部7と上下身頃1、2、4を一体的に逢着することができる。このため、縫着回数は一回で済み、作業負担が軽減される。
[着用方法]
本発明の着物に係る着用方法について、図6を用いて説明する。
[1]第1工程(S21)第1工程S21では、本発明に係る着物をはおる作業を行う。第1工程は、衿刳り構造があらかじめ形成された着物の着用工程S21a及び立体構造があらかじめ形成された着物の着用工程S21bより構成される。
[1−1]着物の着用工程(S21a)
着物の着用工程S21aでは、被取付部65が、取付け領域61内の所定の取付部60に取付けられ、被係合部であるボタンホール63が、係合部であるボタン64に取付けられた着物を着用することで、衿後部50は後方に傾倒するので、衿抜き作業を行うことなく、衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を有する着物を、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[1−2]着物の着用工程(S21b)
着物の着用工程S21bでは、上身頃対1、前下見頃対2及び後下見頃対4の部材に分割することによって、着用者の身体の凹凸に沿って立体的に形成することができると共に、上身頃1と下身頃2、4間を折畳んでお端折部7を形成することによって、お端折部7作成のための作業負担が軽減される。これにより、着物全体の形状等の微調整を行うことなく、容易かつ迅速に着用することができる。
[2]第2工程(S22)
第2工程(S22)では、上身頃対1に取付けた袖9に腕を通した後、お端折部7の一端を巻いて、所定位置で固定する作業を行う。右前下身頃20b及び右上身頃10bを固定することができるので、胸元が開くなどの着崩れを防ぐことができる。
[2]第3工程(S23)
第3工程(S23)では、お端折の他端を巻いて、お端折部の中間に固定する作業を行う。着用者は左前下身頃20aを巻いて主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…を装着係合させて固定することにより、右前下身頃20b及び右上身頃10bを固定することができるので、胸元が開くなどの着崩れを防ぐことができる。
このように、本発明の実施の形態に係る着物を着用することで、従来行っていた裾の位置決め、お端折の形成、衿元の位置決めや衿抜きの作業を行うことなく、容易に着用することができる。即ち、例えば、着物の着用に不慣れな外国の旅行者であっても簡便に着用することができるので、着物を手軽に着用して写真撮影などを行いたい場合などに適した着用方法である。
以上のように、本発明では、着物自体又は帯で隠れる高さに設けたお端折部にファスナー等のような装着具や支持具を取付けた着物であって、お端折部の始端部及び終端部に1以上の装着具を取付け、前記の始端部及び終端部の装着具が装着係合して接続する1以上の支持具をお端折部の長さの一周位置や全長位置に取付け、前記の装着具や支持具を着物自体に取付ける場合は、帯で隠れる高さに設けてあるので、本発明の着物の着用時は、体形の如何に係わらず、従来の美しい形態を保ちながらも、着崩れしにくく、一人でも容易かつ迅速に着用できる。
1 上身頃対
2 前下身頃対
3 衽対
4 後下身頃対
5 衿
6 背力布(衿抜き部材)
7 お端折部
9 袖
10a、10b 左右の上身頃
11a、11b 肩山線
12a、12b 前端側領域
13 衿付部(衿刳り)
14a、14b 後端側領域
15 外側縁部
16 背縫い部(傾斜内縁部)
20a、20b 前下身頃
21a、21b 上端部(上身頃側領域)
24a、24b 衽取付け縁部
30a、30b 衽
40a、40b 後下身頃
41a、41b 上端部(上身頃側領域)
43a、43b 内側背縫い部(内側縁部)
50 衿後部
51 衿前部
60 取付部
61 取付け領域
63 ボタンホール
64 ボタン
71 お端折部の長手方向始端部
72 主ファスナー
73… 従ファスナー
74 お端折部の長手方向終端部
75 主ファスナー
76… 従ファスナー
100a、100b 後側上身頃
101a、101b 前側上身頃
120a、120b 前端側縁部(傾斜前縁部)
130a、130b 後衿付線
131a、131b 前衿付線
132 後衿部
133 前衿部
140a、140b 後端側縁部
150a、150b 前外側縁部
151a、151b 後外側縁部
160a、160b 内側縁部
161a、161b 縁部領域
本発明は、着物及び着物の着付け方法に関する。詳しくは、一人でも各種サイズに対応して容易かつ迅速に着崩れしにくい着付けができる技術を実現する。
着物は、様々な体型の人が着用することができるようゆとりをもって作られているので、着用時に個々の体型に合わせて微調整する作業が必要である。具体的には、「衿抜き」と言われる、衿の後ろ部分の空き具合、裾にかけてすぼまった形状、お端折の形成、背中部分の後身頃に皺ができないように生地を身体に添わせるなどである。これらの作業は、着用時の美しい形状を形成するため、必要な作業とされている。このため、着物を一人で着用できるようになるにはある程度の時間が必要となり、たとえ一人で着用できるようになっても、着用していると徐々に着崩れてしまうことから、着物を着用することにわずらわしさを感じ、いわゆる「着物離れ」が生じてしまっている。そして、この結果として着物を一人で着付けすることができない人が増えている。
特に、体形的に太った人が居れば、痩せた体形も有る。また、衿の後ろ部分を後方に倒す「えり抜き」と言われる作業は、鏡を見ながら片手を背中側に回して行う作業となるため、難しいとされる。
このようなことから、特許文献1に示すように、身頃の脇線の一部を裾にかけて裾窄まりに形成されるよう予め身頃の裾付近を斜めに裁った着物が考案されている。これにより、着物の美しい形状の一つである裾窄まりの形状が自然と形成される。また、特許文献2に示すように、上衣と下衣に分かれた、上下二部式の着物も考案されている。これにより、お端折を容易に形成することが出来、また後身頃にダーツを設けて予め体型に沿った形状に形成しているので、微調整する必要がなく容易に着用することができる。
特開2007−77553号公報 特開2007−16372号公報
しかしながら、特許文献1に記載された着物では、着物の柄のデザイン性が大きく損なわれることが考えられる。着物の柄は、従来の裁断方法で裁断されることを前提として、反物の幅に合ったデザインが施されており、このような柄を無視して裁断すると、隣接する身頃の柄に違和感が生じてしまうだけでなく、従来通りの衿抜きの作業を行わなければならない点については解消されていない。このため、着物の美しい形状が損なわれてしまうことが考えられる。
また、特許文献2に記載された着物では、上衣の裾を両面テープで折畳むことでお端折を形成しているため、着崩れし易いだけでなく、後身頃にダーツを設けたことで後身頃に生地の皺が生じやすくなり、着物の美しい形状が形成され難い。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、体形と関係無く着物の着付け時に美しい形状を形成し、着崩れしにくく、しかも一人でも容易かつ迅速に着付けることができる技術を実現することにある。
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、右巻き方向又は左巻き方向に着るお端折部を形成する若しくはお端折部無しの着物自体又はハーフファスナーが帯で隠れるように予め取付けたお端折部又は着物の始端外面に始端ハーフファスナーを取付けてあり、この始端ハーフファスナーを装着して支持する始端支持ハーフファスナーを前記着物又はお端折部の内面の1周位置に取付けてあり、
また前記お端折部の終端内面に終端ハーフファスナーを取付けて、この終端ハーフファスナーを装着して支持する終端支持ハーフファスナーを前記着物又はお端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてあり
前記の始端側及び終端側のハーフファスナーは、始端側及び終端側とその支持側との片方を2以上とし、他方を1以上とすると共に、各ハーフファスナーは上下に長いことを特徴とする着物である。
前記の始端ハーフファスナーと始端支持ハーフファスナーとはハーフファスナーを始端支持ハーフファスナーに装着すると互いに嵌合支持されて固定され、お端折部の始端が揺れたり移動できなくなる。終端の場合も同様である。また、始端ハーフファスナーが始端支持ハーフファスナーから離脱すると離れて互いに自由となる仕組みで、図示のハーフファスナーは、左右の務歯列やスライダーは金属や合成樹脂など、硬度と耐磨耗性に富む材質である。このような、固い材質が着物に混じっているのを好まない人も居るが、その場合を考慮して、請求項2のように、リボンや紐も代用できる。
すなわち、図2の主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…に代えて、紐やリボンを縫い付けておく構造も可能である。すなわち紐やリボンの両側を縫い付けて1本で主又は従のファスナーの代用にしても良いが、紐やリボンを2本ずつ用いて一端はファスナー72〜76…の上端と下端の両方に縫い付けておいて、他端のフリーの部分同士を蝶結びなどで結んで着脱可能とする。
請求項2は、前記ハーフファスナーに代わる紐又はリボンを使用する構成であって、上下に長いハーフファスナーの上端と下端に相当する部位に互いに結ばれる紐又はリボンを取付けてあることを特徴とする請求項1記載の着物である。
請求項3は、右巻き方向又は左巻き方向に着るお端折部を形成する若しくはお端折部無しの着物自体又はハーフファスナーが帯で隠れるように予め取付けたお端折部又は着物の始端外面に始端ハーフファスナー又は始端紐若しくはリボンを取付けてあり、この始端ハーフファスナー又は始端紐若しくはリボンを装着して支持する始端支持ハーフファスナー又は始端支持紐若しくはリボンを前記着物又はお端折部の内面の1周位置に取付けてあり、
また前記お端折部の終端部を支持する終端ハーフファスナー又は終端紐若しくはリボンを取付けて、この終端ハーフファスナー又は終端紐若しくはリボンを装着して支持する終端支持ハーフファスナー又は終端支持紐若しくはリボンを前記着物又はお端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてあり、
前記の始端側及び終端側のハーフファスナー又は紐若しくはリボンは、始端側及び終端側とその支持側との片方を2以上とし、他方を1以上とした着物を着る際に、
太った体形の人が着る場合は、前記の始端支持ハーフファスナー又は始端支持紐若しくはリボン及び前記の終端支持ハーフファスナー又は終端支持紐若しくはリボンのお端折部着用長さが長くなるように前記の始端支持ハーフファスナー又は始端支持紐若しくはリボン及び前記の終端支持ハーフファスナー又は終端支持紐若しくはリボンを選択し、
痩身者が着る場合は、前記のお端折部着用長さが短くなるように前記の始端支持ハーフファスナー又は始端支持紐若しくはリボン及び前記の終端支持ハーフファスナー又は終端支持紐若しくはリボンを選択することを特徴とする着物の着付け方法である。
請求項4は、衿部分の真後ろに縦帯状の背力布の上端が接続されており、前記背力布の下端又は下端近傍を着物の後身頃の内面に着脱する構成となっており、前記背力布を下方に引いて衿抜きした状態で、前記後身頃の内面に装着固定する構造を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の着物である。
着脱手段として、実施例ではボタンをボタンホールに嵌入して装着する例を図示したが、ボタンに代えてフックを用いても良い。
請求項1のように、始端ハーフファスナーを装着して支持する複数の始端支持ハーフファスナーを前記着物又はお端折部の内面の1周位置に取付けてある。
また、前記お端折部の終端内面に1以上の終端ハーフファスナーを取付けて、この終端ハーフファスナーを装着して支持する複数の終端支持ハーフファスナーを前記お端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてあるので、着用者の腹囲寸法の差異に対応して、複数のハーフファスナーの一つを選んで使用することで、どのような体形にも対応できる。
請求項2のように、前記のハーフファスナーに代わる紐又はリボンを使用する構成であって、上下に長いハーフファスナーの上端と下端に相当する部位に互いに結ばれる紐又はリボンを取付けてある。従って、ハーフファスナーのような固い材質が着物に混じっているのを好まない場合は、リボンや紐を代用できる。
請求項3のように、前記の着物を着る際に、太った体形の人が着る場合は、お端折部着用長さが長くなるように前記の始端支持ハーフファスナー(又は始端支持紐若しくはリボン)及び前記の終端支持ハーフファスナー(又は終端支持紐又はリボン)を選択し装着する。
また、痩身者が着る場合は、前記のお端折部着用長さがが短くなるように、前記の始端支持ハーフファスナー(又は始端支持紐若しくはリボン)及び前記の終端支持ハーフファスナー(又は終端支持紐又はリボン)を選択し、複数から一つを選んで使用することで、どのような体形にも対応できる。
請求項4のように、背力布を下方に引いて衿抜きした状態で、前記後身頃の内面に装着固定するが、図3の実施例では、ボタンをボタンホールに係合させることで背力布をボタン側に牽引して衿抜き可能とした。このように、背力布の下端を下に引いて装着するだけで衿抜でき、一人でも容易かつ迅速に衿抜きができる。
本実施例の着物を構成する上身頃対、前下身頃対及び後下身頃対の形状を表した展開図である。 本実施例の着物のサイズ調節構成を示す正面図である。 本実施例の着物の後衿部の構成を示す斜視図である。 本実施例の着物の背力布を示す断面図である。 本実施例の着物の製造方法を示す工程図である。 本実施例の着物の着用方法の工程図である。
次に本発明による着物の構成及び着物の着付け方法について、図1乃至図6を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、本明細書では、「左」「右」とは、それぞれ順に、着用者にとっての左手側を、着用者にとっての右手側を示す。また、「前」「後」、それぞれ順に、着用者にとっての前方を、着用者にとっての後方を示す。そして、「上」「下」とは、それぞれ順に、着用者にとって足部から頭部に向けての方向を、着用者にとって頭部から足部に向けての方向を示す。さらに、「内側」「外側」とは、それぞれ順に着用者の身体の中心に近い側を、着用者の身体の中心から遠い側を示す。なお、図1において縫い代は省略している。
本発明に係る着物について、図1乃至図4を用いて説明する。まず、図1乃至図3に示すように、本実施の形態の着物は、上身頃対1、前下身頃対2、衽対3、後下身頃対4、衿5、衿抜き部材の一例である背力布6、袖9の構成部材から成る。
上身頃対1は左上身頃10a及び右上身頃10bから成り、それぞれ長手方向の略中央に肩山線11a、11bを有する。肩山線11a、11bを含む領域の生地は、本実施の形態の着物を着用した際、着用者の肩の最上部付近に位置する。
左右の上身頃10a、10bのうち、肩山線11a、11bを境にして、着用時に着用者の前側に位置する部分を前側上身頃101a、101bとし、後側に位置する部分を後側上身頃100a、100bとする。左右の上身頃10a、10bは、図1においては略左右反転した形状を有し、上身頃10a、10bとも他方の上身頃と対向する縁部は、後側上身頃100a、100bから前側上身頃101a、101bにかけて切欠かれている。
具体的には、後側上身頃100a、100bは中心角略90度の円弧状に切欠かれて、後衿付線130a、130bが形成される。この後衿付線130a、130bに連続するようにして、前側上身頃101a、101bの肩山線11a、11bから前端側領域12a、12bにかけて斜めに切欠かれた前衿付線131a、131bが形成される。
そして、このような後衿付線130a、130bを有する後衿部132と、前衿付線131a、131bを有する前衿部133とを併せて、衿刳りの一例である衿付部13が形成される。
この後衿付線130a、130bに沿って衿5の衿後部50を取付けることで、衿5が後方に傾倒し、自然と衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができると共に、衿抜きの作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、前衿付線131a、131bに沿って衿5の衿前部51を取付けることで、胸元の衿が自然と合わさった、美しい形状の衿5を形成することができると共に、胸元を合わせる作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、傾斜内縁部の一例である、上身頃10a、10bの背縫い部16は、後側上身頃100a、100bの内側の縁部であって、後衿付線130a、130bの部分を除いた縁部である内側縁部160a、160bと、その近傍であって、背中部分や脇部分に位置する縁部領域161a、161bとから成る。内側縁部160a、160bは、肩山線11a、11bから後端側領域14a、14bに向けて離間するにしたがって、外側に傾斜して形成されている。
この内側縁部160a、160bを縫着することで、上身頃を略筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができると共に、着用時の背中部分や脇部分である縁部領域161a、161bに、生地の皺が生じるのを防ぐことができる。
なお、胴回りが太い着用者の場合には、内側縁部160a、160bの傾斜角度を変えるなどして徐々に垂直方向に近づけることで対応することができる。
また、上身頃10a、10bの外側縁部15は、前外側縁部150a、150b及び後外側縁部151a、151bから成る。前外側縁部150a、150bは肩山線11a、11bから前端側領域12a、12bにかけて内側に傾斜している。後外側縁部151a、151bは、肩山線11a、11bから後端側領域14a、14bにかけて内側に傾斜している。
前外側縁部150a、150bの一部と、後外側縁部151a、151bの一部を縫着す
ることで、上身頃を略筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができる。
背力布6は帯状の形状を有し、伸縮性のない素材で形成されている。また、背力布6の一端であり、被取付部65は、着物Aの内側で後衿付線130a、130bと内側縁部160a、160bとが交わる交点又はその周辺の取付け領域61内の所定の取付部60に取付けられる。また、背力布6の他端である被係合部であるボタンホール63は、後下見頃対4の内面の所定の係合部であるボタン64に取付けられる。
後身頃の一部に取付けられた係合部の一例であるボタン64をボタンホール63に係合することで背力布6にボタン64側の牽引力を持たせることができる。
背力布6は、取付部60とボタン64間の長さよりも短く形成され、かつボタン64は帯(図示せず)によって押圧される位置に取り付けられているので、背力布6の被取付部65にボタン64側への牽引力が生じる。このボタン64側への牽引力が取付け領域61に加えられることで、衿5が後方に傾倒するので、衿抜き作業をすることなく衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができる。また、背力布6によって着物の形状が略一定に保持されるので、着用時に衿の位置がずれるなどの着崩れが生じにくくなる。さらに、背力布6は、着物Aの内側に取付けられるため着物Aの外観を損なうことがないので、美しい形状を有する着物が形成される。
また、背力布6により取付け領域61にボタン64側への牽引力が加えられた際には、図4(a)(b)に示すように、縁部領域161a、161bの余分な布地はボタン64側に引っ張られてお端折部7の内側に折畳まれて収容される。このため、生地がお端折部7の表面に露出することを防ぐことができる。
なお、ボタンホール63が設けられる位置は、背力布6の端部に限られるものではなく、背力布6の途中部に設けることができ、また複数個所設けることもできる。この場合、取付け領域61とボタン64の取付け位置までの長さを容易に変更することができるので、着用者の体型に適した長さにすることができる。そして、ボタンホール63の位置に応じて取付け領域61に加えられる牽引力の大きさが変化するので、ボタンホール63の位置を選択して衿5の傾倒する角度を調整することができる。また、本実施例では、背力布6の幅は約7センチに形成されているが、これに限られるものではない。例えば、背力布の幅を7センチよりも細くすると、衿後部の形状をやや幅狭な形状にすることができ、7センチよりも太くすると、衿後部は丸みを帯びた形状に形成される。なお、背力布6は伸縮性のない素材に限定されるものではなく、ゴムなどの弾性材を用いても良い。
衽対3は、帯状の左右の衽30a、30bから成り、その幅方向の一端は前下身頃20a、20bの幅方向の内側の端部に縫着される。
前下身頃対2は、帯状の左右の前下身頃20a、20bから成り、上身頃側領域の一例である上端部21a、21bは上身頃10a、10bの前端側領域12a、12bに縫着される。本実施例においては、前下身頃20a、20bの幅は、前端側領域12a、12bの幅と略同一に形成されている。なお、前下身頃20a、20bの幅は、前端側領域12a、12bの幅と略同一の長さに形成されることに限られず、着用者のサイズに合わせて、適宜変更することができる。
ここで、前端側領域12a、12bの傾斜前縁部の一例である前端側縁部120a、120bは、外側から内側に向けて肩山線11a、11b側に傾斜している。このため、前端側縁部120a、120bに前下身頃20a、20b及び衽30a、30bを縫着すると
、前下身頃20a、20bの下端部22a、22b、及び衽30a、30bの下端部31a、31bは、外側から内側に向けて傾斜した形状となる。その結果、図2(b)に示すように、衽30aの下端部31aの褄先23が持ち上がった、いわゆる裾窄まりの形状が自然と形成される。
なお、右前下身頃20bと右衽30bを別個に裁断せず、一体の生地として裁断しても良い。右衽は着用時に、左衽及び左前下身頃に覆われて露出しないので、右前下身頃と右衽を一体に裁断することで縫着する手間を省くことが出来るからである。
後下身頃対4は、帯状の左右の後下身頃40a、40bから成り、上身頃側領域の一例である上端部41a、41bは上身頃10a、10bの後端側領域14a、14bに縫着される。後下身頃40a、40bの幅は、後端側領域14a、14bの後端側縁部140a、140b幅と略同一に形成されている。なお、後下身頃40a、40bの幅は、後端側領域14a、14bの幅と略同一の長さに形成されることに限られず、着用者のサイズに合わせて、適宜変更することができる。
ここで、後端側縁部140a、140bは、肩山線11a、11bと略平行に配置されている。このため、後端側縁部140a、140bに後下身頃40a、40bを縫着すると、後下身頃40a、40bの下端部42a、42bは、略水平に配置される。
図4(b)に示すように、上身頃1と前下身頃20a、20bの上端部21a、21b及び後下身頃40a、40bの上端部41a、41bとが縫着された縫着部80付近を折返して重ねた重なり部にお端折部7が形成される。このお端折部7の上部70付近で重なっている上身頃1、前下身頃20a、20b、及び後下身頃40a、40bにお端折部7を縫着することにより、お端折部7の形状は保持されるので、着用時にお端折部7を形成する作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
着物を着る場合、通常、身体に着物を時計廻りに巻きつけるように右袖の有る右端から先に身体に巻くように着るので、図2のように、左前の着方になる。上方から見た場合、「の」の字の筆順の順序で右廻りに着る。逆に、下方から見て、「の」の字を左右反転した順序で左廻りに着ることも可能であり、この場合は、右前の着方になる。図示着物には、お端折部7の上端縁を予め着物に縫い付け支持してある。図示のお端折部7は、帯のように上端縁と下端縁間の幅で長く形成されている。「長く」と言っても、着用者の胴の外面に巻いた場合の約一周半程度の長さ、すなわち着物を着た場合の着物の胴廻り寸法とする。
図2は、着物のサイズ調節構成の実施例を示す正面図である。お端折部7の巻始めすなわち始端71の近傍内側にある下身頃の部分には主ファスナー72のような始端着脱具72が縫い付けられており、主ファスナー72と係合可能な従ファスナー73…すなわち3本の始端支持具73…が、お端折7の内面すなわち、左前下身頃20aと左後下身頃40aが縫着される左体側縫着部8aの上身頃10a側のお端折部7に取付けられている。
ファスナーは、務歯列を互いに対向させ、間に設けた楔体と両外側に配設した押さえ部とから成るスライダーを移動させて左右の務歯列を開閉する構造である。すなわち、主ファスナー75と従ファスナー73…は、片方の務歯列とスライダーSとを有し、主ファスナー72と従ファスナー76…は、他方の務歯列のみを有しており、スライダーSの操作で両務歯列が結合した際にファスナーが装着接続したことになる。
主ファスナー72を従ファスナー73…(主ファスナー72側も複数個設けてもよい)に装着して互いに接続させることで、右前下身頃20b、右前下身頃20bと縫着された右
衽30b、及び右前下身頃d0bが縫着された右上身頃10bにより着用者の前面を覆うように固定することができるので、お端折部7の始端71が揺れ動いたりして着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着ることができる。
お端折部7の巻き終りすなわち終端部74又は近傍の下身頃には主ファスナー75すなわち終端装着具75が縫い付けられており、主ファスナー75を装着して支持可能な従ファスナー76…すなわち終端支持具76…が、お端折部7の全長位置に縫い付けられている。
着脱ファスナー75を支持ファスナー76…に装着し互いに係合させることで、左前下身頃20a、左前下身頃20aと縫着された左衽30a、及び左前下身頃20aが縫着された左上身頃10aにより着用者の前面を覆うように固定することができるので、着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…は帯を着用した際に帯で覆われる高さに設けられるので、着物を着た際に外観を損なうことがなく、着崩れするのを防ぐことができる。従って、着物自体に主ファスナー72、75や従ファスナー73…、76…を取付ける場合も、ファスナーなどの着脱具や支持具が帯で隠れるようにする。
なお、着物を構成する上身頃対1、前後の下身頃対2、4、袖9、衿5などの各寸法は、本発明の実施例に限られるものではない。例えば、これらの各寸法を変えることで、背が高くて痩せた体型、背が低くて痩せた体型、手足が長い体型、大柄な体型などの様々な体型にそれぞれ適合するサイズで作成された着物を作製することができる。
特に、衿は着用者の年齢や場面に応じてその開き具合が求められるので、様々な衿付部13の前衿付線131a、131b及び後衿付線130a、130bの形状が考えられる。例えば、胸元の衿を詰めた形状になる、直線状に形成された前衿付線、あるいは胸元の衿が開いた形状になる湾曲線状に形成された前衿付線などである。また、後衿付線131a、131bも、肩山線11a、11bから後側上身頃100a、100b側へ大きく切欠くことで、後衿部132を大きく開くことができる。
このように、本発明では、着物の着用時の従来の美しい形状を保ちながらも、着崩れしにくく、一人でも容易かつ迅速に着用することができると共に、着用者の身体の凹凸に沿って立体的に作製された着物を提供することができる。
[着物の製造方法]
本発明に係る着物の製造方法について、図1乃至図5を用いて説明する。
[1]裁断工程S1裁断工程S1では、生地体(図示せず)から、衿5、各左右一対の上身頃10a、10b、前下身頃20a、20b、後下身頃40a、40b、衽30a、30b、及び袖9を裁断する作業を行う。
[2]第1内縁部接続工程S2
第1内縁部接続工程S2では、左右の上身頃10a、10bの背縫い部16の内側縁部160a、160bを縫着する作業を行う。左上身頃10aの後側上身頃100aの内側縁部160aと、右上身頃10bの後側上身頃100bの内側縁部160bを縫着する。これにより、左右の上身頃10a、10bが体型に沿った立体的な形状となり、後側上身頃100a、100bの縁部領域161a、161bに皺が生じにくくなって、美しい形状を有する上身頃1が形成される。
[3]脇縫い工程S3
脇縫い工程S3では、前側上身頃101a、101bと後側上身頃100a、100bの外側縁部15を縫着する作業を行う。右上身頃10bの前側上身頃101bの前外側縁部150bのうち前端側領域12b寄りの一部と、後側上身頃100bの後外側縁部151bのうち後端部領域14b寄りの一部とを縫着する。また、左上身頃10aの前側上身頃101aの前外側縁部150aのうち前端側領域12a寄りの一部と、後側上身頃100aの後外側縁部151aのうち後端部領域14a寄りの一部とを縫着する。これにより、左右の上身頃10a、10bを縫着することで、上身頃対を筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができる。なお、外側縁部15のうち縫着していない部分によって、後述する袖9と連続する袖通し用孔17a、17bを形成することができる。
[4]衿関連部材取付け工程S4
衿関連部材取付け工程S4では、取付け領域61に背力布6を縫着する作業と、上身頃10a、10bの後衿付線130a、130b及び前衿付線131a、131bに衿5を縫着する作業を行う。衿関連部材取付け工程S4は、衿抜き部材取付け過程S40、後衿付取付け過程S41及び前衿取付け過程S42より構成される。
[4−1]衿抜き部材取付け過程S40
衿抜き部材取付け過程S40では、衿抜き部材の一例である背力布6の被取付部65を上身頃の取付部60に取付け、背力布6の被係合部であるボタンホール63を係合部であるボタン64に係合させる作業を行う。被取付部65を取付け領域61に設けられた取付部60に縫着し、ボタン64をボタンホール63に係合させることで、背力布6を取付け部60とボタン64の間に介設することができる。
背力布6は、取付部60とボタン64間の長さよりも短く形成され、かつボタン64は図3に示すように、帯(図示せず)によって押圧される位置に取り付けられているので、背力布6の被取付部65にボタン64側への牽引力が生じる。このボタン64側への牽引力は取付け領域61に伝わることで、衿5が後方に傾倒するので、衿抜き作業をすることなく衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができると共に、背力布6によって着物の形状が略一定保持されるので、着用時に衿の位置がずれるなどの着崩れが生じにくくなる。さらに、背力布6は、着物Aの内側に取付けられるため着物Aの外観を損なうことないので、美しい形状を有する着物が形成される。
なお、ボタン64及びボタンホール63の取付け作業は、必ずしも衿関連部材取付け工程S4において行うことに限られず、例えば、後述する本体仕上げ工程S9の後に行っても良い。
[4−2]後衿取付け過程S41
後衿取付け過程S41では、上身頃10a、10bの後衿付線130a、130bに沿って、衿5のうち後側上身頃100a、100b側に取付けられる衿後部50を縫着する。これにより、図3及び図4に示すように、肩山線より後ろ側の後側上身頃途中にかけて中心角略90度の円弧状の後衿付線130a、130bに沿って縫着される衿後部50は従来の後衿の位置よりも後方に傾倒するので、衿抜き作業を行うことなく、衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができるので、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[4−3]前衿取付け過程S42
前衿取付け過程S41では、上身頃10a、10bの前衿付線131a、131bに沿って、衿5のうち前側上身頃101a、101b側に取付けられる衿前部51を縫着する。これにより、前衿付線131a、131bに沿って縫着される衿前部51は立体的に胸元
に沿った形状に取付けられるので、胸元を合わせる作業を省くことができ、一人でも容易に着用することができる。
[5]袖付け工程S5
袖付け工程S5では、上身頃10a、10bの外側縁部15に袖9を縫着する作業を行う。袖9を二つに折り、袂90が形成されるよう縁部を縫着する。袂90が形成された側と反対側の縁部を、上身頃10a、10bの袖通し用孔17a、17bに取り付ける。これにより、着用者が袖通し用孔17a、17bから袖9に袖を通すことができる。
[6]第2内縁部接続工程S6
第2内縁部接続工程S6では、後下身頃40a、40bを縫着する作業を行う。左後下身頃40aの内側背縫い部43aと右後下身頃40bの内側背縫い部43bを縫着する。これにより、後下身頃40a、40bが一体に形成される。
[7]衽付け工程S7
衽付け工程S7では、前下身頃20a、20bに衽30a、30bを縫着する作業を行う。前下身頃20a、20bの衽取付け縁部24a、24bに衽30a、30bを取り付ける。これにより、前下身頃20a、20bと衽30a、30bが一体に形成される。
[8]足周り接続工程S8
足周り接続工程S8では、左前下身頃20aと左後下身頃40a、及び右前下身頃20bと右後下身頃40bを縫着する作業を行う。左前下身頃20aの外側縁部と左後下身頃40aの外側縁部を縫着して左体側縫着部8aを形成し、右前下身頃20bの外側縁部と右後下身頃40bの外側縁部を縫着して右体側縫着部8bを形成する。これにより、左前下身頃20aと左後下身頃40a、及び右前下身頃20bと右後下身頃40bが一体に形成される。
[9]本体仕上げ工程S9
本体仕上げ工程では、上下身頃1、2、4を接続し、お端折7を形成し、お端折7の端部71、74が接続される接続部の取付を行う。
[9−1]上下身頃接続工程S90
上下身頃接続工程S90では、上身頃10a、10bと、前下身頃20a、20b及び後下身頃40a、40bを縫着する作業を行う。上身頃10a、10bの前端側縁部120a、120bに、前下身頃20a、20bを縫着すると共に、上身頃10a、10bの後端側縁部140a、140bに、後下身頃40a、40bを縫着する。これにより、上身頃10a、10bと、前下身頃20a、20b及び後下身頃40a、40bが一体に形成されると共に、前端側縁部120a、120bが内側に向かって肩山線11a、11b側に傾斜していることから、図2(b)に示すように、褄先23が上方に持ち上がるので、全体として裾窄まりの形状を形成することができる。
[9−2]お端折形成工程S91
お端折形成工程S91では、お端折部7を形成して縫着する作業を行う。上身頃1と、前下身頃20a、20bの上端部21a、21b及び後下身頃40a、40bの上端部41a、41bとが縫着された縫着部80付近を折返して重ねてお端折部7を形成する。図4に示すように、このお端折部7の上部70付近で重なっている上身頃1、前下身頃20a、20b、及び後下身頃40a、40bを縫着することにより、お端折部7の形状は保持されるので、着用時にお端折部7を形成する作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[9−3]接続具取付け工程S92では、お端折部7の巻始め端部71や巻終り端部74又はその近傍に接続具である主ファスナー72や75を設け、中間部位に従ファスナー73…と76…を縫い付けてある。お端折部7の始端71近傍の下身頃2、4には主ファスナー72が設けられ、及び主ファスナー72と係合可能な従ファスナー73…は、お端折部7の内面の一周位置7t、すなわち左体側縫着部8aの上身頃10a側寄りに設けられている。主ファスナー72と従ファスナー73…を係合させることで、右前下身頃20b、右前下身頃20bと縫着された右衽30b、及び右前下身頃20bが縫着された右上身頃10bにより着用者の前面を被覆するように固定することができるので、着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
お端折部7の巻終り端部74近傍の下身頃2には、主ファスナー75が取付けられ、主ファスナー75と係合可能な従ファスナー76…は、お端折部7の全長の位置の外面に設けられている。
主ファスナー75と従ファスナー76…中の一つを体形に応じて選んで装着係合させることで、左前身頃20a、左前身頃20aと縫着された左衽30a、及び左前身頃20aが縫着された左上身頃10aにより着用者の前面を被覆するように固定することができるので、着用時に着崩れるのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
これにより、着用者の前面を覆う生地が主ファスナー72、75と3本構成の従ファスナー73…、76…との装着接続により固定されるので、着用時に着物の胸元が徐々に開いてしまうなどの着崩れを防ぎやすくなる。
なお、本実施例では、従ファスナー73…、76…を三本設けているので、所望の一つを選択することで、様々な胴回りのサイズに対応させることができる。前記主ファスナー72、75も三本のように、複数設けることで、合計9種類の装着接続ができ、より細かいサイズ選択が可能となる。主ファスナーと従ファスナーとの個数を逆にして、主ファスナー複数個、従ファスナーを1個のみとしてもよい。さらに、各サイズごとにファスナーの色を変えるようにしてもよく、この場合着用時に対応する主従のファスナーを容易に見つけることができて能率的である。
着脱具や支持具は、より具体的には、スライダーSを要するファスナーの他にボタンやフック、ホック、或いは紐やリボンを縫い付けても足りる。すなわち、紐やリボンの一端を縫い付けておき、縫い付けずにフリーの状態にした他端同士を結んで装着接続する。
この着脱具や支持具は、着物自体に取付けてもよいが、着物を着る際にお端折部を形成する場合は、このお端折部の形成位置を想定して取付ける。お端折部を形成しない着方をする場合は、お端折部を形成する高さや帯の高さを想定して取付けることになる。
また、本発明に係る着物の上身頃1や下身頃2,4の寸法を適宜変えることで、様々な体型にそれぞれに対応した着物を製造することができる。
さらに、本実施例では上身頃と下身頃を縫着した縫着部80にお端折を形成しているが、図4(c)に示すように、下身頃にお端折部7を形成した後に、該下身頃2、4を上身頃1の下端に縫着するようにしてもよい。
この場合は、下身頃2、4のお端折部7は折畳んで、上身頃1に縫着することによりお端折部7と上下身頃1、2、4を一体的に逢着することができる。このため、縫着回数は一回で済み、作業負担が軽減される。
[着用方法]
本発明の着物に係る着用方法について、図6を用いて説明する。
[1]第1工程(S21)第1工程S21では、本発明に係る着物をはおる作業を行う。第1工程は、衿刳り構造があらかじめ形成された着物の着用工程S21a及び立体構造があらかじめ形成された着物の着用工程S21bより構成される。
[1−1]着物の着用工程(S21a)
着物の着用工程S21aでは、被取付部65が、取付け領域61内の所定の取付部60に取付けられ、被係合部であるボタンホール63が、係合部であるボタン64に取付けられた着物を着用することで、衿後部50は後方に傾倒するので、衿抜き作業を行うことなく、衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を有する着物を、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[1−2]着物の着用工程(S21b)
着物の着用工程S21bでは、上身頃対1、前下見頃対2及び後下見頃対4の部材に分割することによって、着用者の身体の凹凸に沿って立体的に形成することができると共に、上身頃1と下身頃2、4間を折畳んでお端折部7を形成することによって、お端折部7作成のための作業負担が軽減される。これにより、着物全体の形状等の微調整を行うことなく、容易かつ迅速に着用することができる。
[2]第2工程(S22)
第2工程(S22)では、上身頃対1に取付けた袖9に腕を通した後、お端折部7の一端を巻いて、所定位置で固定する作業を行う。右前下身頃20b及び右上身頃10bを固定することができるので、胸元が開くなどの着崩れを防ぐことができる。
[2]第3工程(S23)
第3工程(S23)では、お端折の他端を巻いて、お端折部の中間に固定する作業を行う。着用者は左前下身頃20aを巻いて主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…を装着係合させて固定することにより、右前下身頃20b及び右上身頃10bを固定することができるので、胸元が開くなどの着崩れを防ぐことができる。
このように、本発明の実施の形態に係る着物を着用することで、従来行っていた裾の位置決め、お端折の形成、衿元の位置決めや衿抜きの作業を行うことなく、容易に着用することができる。即ち、例えば、着物の着用に不慣れな外国の旅行者であっても簡便に着用することができるので、着物を手軽に着用して写真撮影などを行いたい場合などに適した着用方法である。
以上のように、本発明では、ハーフファスナーなどの着脱具や支持具は帯で隠れるので、着物自体やお端折部にハーフファスナー等を取付けた着物であって、お端折部の始端部及び終端部に1以上の装着具を取付け、前記の始端部及び終端部の装着具が装着係合して接続する1以上の支持具をお端折部の長さの一周位置や全長位置に取付け、前記の装着具や支持具を着物自体に取付ける場合は、帯で隠れる高さに設けてあるので、本発明の着物の着用時は、体形の如何に係わらず、従来の美しい形態を保ちながらも、着崩れしにくく、一人でも容易かつ迅速に着用できる。
1 上身頃対
2 前下身頃対
3 衽対
4 後下身頃対
5 衿
6 背力布(衿抜き部材)
7 お端折部
9 袖
10a、10b 左右の上身頃
11a、11b 肩山線
12a、12b 前端側領域
13 衿付部(衿刳り)
14a、14b 後端側領域
15 外側縁部
16 背縫い部(傾斜内縁部)
20a、20b 前下身頃
21a、21b 上端部(上身頃側領域)
24a、24b 衽取付け縁部
30a、30b 衽
40a、40b 後下身頃
41a、41b 上端部(上身頃側領域)
43a、43b 内側背縫い部(内側縁部)
50 衿後部
51 衿前部
60 取付部
61 取付け領域
63 ボタンホール
64 ボタン
71 お端折部の長手方向始端部
72 主ファスナー
73… 従ファスナー
74 お端折部の長手方向終端部
75 主ファスナー
76… 従ファスナー
100a、100b 後側上身頃
101a、101b 前側上身頃
120a、120b 前端側縁部(傾斜前縁部)
130a、130b 後衿付線
131a、131b 前衿付線
132 後衿部
133 前衿部
140a、140b 後端側縁部
150a、150b 前外側縁部
151a、151b 後外側縁部
160a、160b 内側縁部
161a、161b 縁部領域

本発明は、着物及び着物の着付け方法に関する。詳しくは、一人でも各種サイズに対応して容易かつ迅速に着崩れしにくい着付けができる技術を実現する。
着物は、様々な体型の人が着用することができるようゆとりをもって作られているので、着用時に個々の体型に合わせて微調整する作業が必要である。具体的には、「衿抜き」と言われる、衿の後ろ部分の空き具合、裾にかけてすぼまった形状、お端折の形成、背中部分の後身頃に皺ができないように生地を身体に添わせるなどである。これらの作業は、着用時の美しい形状を形成するため、必要な作業とされている。このため、着物を一人で着用できるようになるにはある程度の時間が必要となり、たとえ一人で着用できるようになっても、着用していると徐々に着崩れてしまうことから、着物を着用することにわずらわしさを感じ、いわゆる「着物離れ」が生じてしまっている。そして、この結果として着物を一人で着付けすることができない人が増えている。
特に、体形的に太った人が居れば、痩せた体形も有る。また、衿の後ろ部分を後方に倒す「えり抜き」と言われる作業は、鏡を見ながら片手を背中側に回して行う作業となるため、難しいとされる。
このようなことから、特許文献1に示すように、身頃の脇線の一部を裾にかけて裾窄まりに形成されるよう予め身頃の裾付近を斜めに裁った着物が考案されている。これにより、着物の美しい形状の一つである裾窄まりの形状が自然と形成される。また、特許文献2に示すように、上衣と下衣に分かれた、上下二部式の着物も考案されている。これにより、お端折を容易に形成することが出来、また後身頃にダーツを設けて予め体型に沿った形状に形成しているので、微調整する必要がなく容易に着用することができる。
特開2007−77553号公報 特開2007−16372号公報
しかしながら、特許文献1に記載された着物では、着物の柄のデザイン性が大きく損なわれることが考えられる。着物の柄は、従来の裁断方法で裁断されることを前提として、反物の幅に合ったデザインが施されており、このような柄を無視して裁断すると、隣接する身頃の柄に違和感が生じてしまうだけでなく、従来通りの衿抜きの作業を行わなければならない点については解消されていない。このため、着物の美しい形状が損なわれてしまうことが考えられる。
また、特許文献2に記載された着物では、上衣の裾を両面テープで折畳むことでお端折を形成しているため、着崩れし易いだけでなく、後身頃にダーツを設けたことで後身頃に生地の皺が生じやすくなり、着物の美しい形状が形成され難い。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、体形と関係無く着物の着付け時に美しい形状を形成し、着崩れしにくく、しかも一人でも容易かつ迅速に着付けることができる技術を実現することにある。
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、着物に予め取付けたお端折部の始端外面に始端ハーフファスナーを取付けてあり、この始端ハーフファスナーを装着して支持する始端支持ハーフファスナーを前記お端折部の内面の1周位置に取付けてあり、
また前記お端折部の終端内面に終端ハーフファスナーを取付けて、この終端ハーフファスナーを装着して支持する終端支持ハーフファスナーを前記お端折部の外面のお端折部全長位置に取付けた構成において、
前記の始端側及び終端側のハーフファスナーは、始端側及び終端側とその支持側との片方を2以上とし、他方を1以上とすると共に、各ハーフファスナーは上下に長く、しかも前記終端支持ハーフファスナーに対し前記始端支持ハーフファスナーの位置が高く配置されていて、お端折部始端が水平状態から上昇して前記始端支持ハーフファスナーと同じ高さとなる位置で前記始端ハーフファスナーを前記お端折部始端外面に取付けてある構成を特徴とする着物である。
前記の始端ハーフファスナーと始端支持ハーフファスナーとは、ハーフファスナーを始端支持ハーフファスナーに装着すると互いに嵌合支持されて固定され、お端折部の始端が揺れたり移動できなくなる。終端の場合も同様である。また、始端ハーフファスナーが始端支持ハーフファスナーから離脱すると離れて互いに自由となる仕組みである。
請求項2は、着物に予め取付けたお端折部の始端外面に始端ハーフファスナーを取付けてあり、この始端ハーフファスナーを装着して支持する始端支持ハーフファスナーをお端折部の内面の1周位置に取付けてあり、
また前記お端折部の終端部に終端ハーフファスナーを取付けて、この終端ハーフファスナーを装着して支持する終端支持ハーフファスナーを前記お端折部の外面のお端折部全長位置に取付けた構成において、
前記の始端側及び終端側のハーフファスナーは、始端側及び終端側とその支持側との片方を2以上とし、他方を1以上とすると共に、各ハーフファスナーは上下に長く、しかも前記終端支持ハーフファスナーに対し前記始端支持ハーフファスナーの位置が高く配置されていて、お端折部始端が水平状態から上昇して前記始端支持ハーフファスナーと同じ高さとなる位置で前記始端ハーフファスナーを前記お端折部始端外面に取付けてある着物を着る際に、
太った体形の人が着る場合は、前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の終端支持ハーフファスナーのお端折部着用長さが長くなるように前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の終端支持ハーフファスナーを選択して支持し、
痩身者が着る場合は、前記のお端折部着用長さが短くなるように前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の端支持ハーフファスナーを選択して支持することを特徴とする着物の着付け方法である。
請求項3は、衿部分の真後ろに縦帯状の背力布の上端が接続されており、前記背力布の下端又は下端近傍を前記衿部分が形成された着物の後身頃の内面に着脱する構成となっており、前記背力布を下方に引いて衿抜きした状態で、前記後身頃の内面に装着固定する構造を特徴とする請求項1に記載の着物である。
着脱手段として、実施例ではボタンをボタンホールに嵌入して装着する例を図示したが、ボタンに代えてフックを用いても良い。
請求項1のように、始端ハーフファスナーを装着して支持する複数の始端支持ハーフファスナーを前記お端折部の内面の1周位置に取付けてある。ただし、後で詳述するように高めに配置してある。また、前記お端折部の終端内面に1以上の終端ハーフファスナーを取付けて、この終端ハーフファスナーを装着して支持する複数の終端支持ハーフファスナーを前記お端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてあるので、着用者の腹囲寸法の差異に対応して、複数のハーフファスナーの一つを選んで使用することで、どのような体形にも対応できる。
さらに、前記の始端側及び終端側のハーフファスナーは、始端側及び終端側とその支持側との片方を2以上とし、他方を1以上とすると共に、各ハーフファスナーは図のように上下に長い。しかも、前記終端支持ハーフファスナーに対し前記始端支持ハーフファスナーの位置が高く配置されていて、お端折部始端が水平状態から上昇して前記始端支持ハーフファスナーと同じ高さとなる位置で前記始端ハーフファスナーを前記お端折部始端外面に取付けてある。このように図2(a)の始端支持ハーフファスナー73が終端支持ハーフファスナー76より高く配置されているので、装着支持する際に始端71と共に着物も上昇することになる。
請求項2のように、前記の着物を着る際に、太った体形の人が着る場合は、お端折部着用長さが長くなるように前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の終端支持ハーフファスナーを選択し装着し支持する。
また、痩身者が着る場合は、前記のお端折部着用長さがが短くなるように、前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の終端支持ハーフファスナーを選択し、複数から一つを選んで使用することで、どのような体形にも対応できる。
請求項3のように、背力布を下方に引いて衿抜きした状態で、前記後身頃の内面に装着固定するが、図3の実施例では、ボタンをボタンホールに係合させることで背力布をボタン側に牽引して衿抜き可能とした。このように、背力布の下端を下に引いて装着するだけで衿抜きでき、一人でも容易かつ迅速に衿抜きができる。
本実施例の着物を構成する上身頃対、前下身頃対及び後下身頃対の形状を表した展開図である。 本実施例の着物のサイズ調節構成を示す正面図である。 本実施例の着物の後衿部の構成を示す斜視図である。 本実施例の着物の背力布を示す断面図である。 本実施例の着物の製造方法を示す工程図である。 本実施例の着物の着用方法の工程図である。
次に本発明による着物の構成及び着物の着付け方法について、図1乃至図6を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、本明細書では、「左」「右」とは、それぞれ順に、着用者にとっての左手側を、着用者にとっての右手側を示す。また、「前」「後」、それぞれ順に、着用者にとっての前方を、着用者にとっての後方を示す。そして、「上」「下」とは、それぞれ順に、着用者にとって足部から頭部に向けての方向を、着用者にとって頭部から足部に向けての方向を示す。さらに、「内側」「外側」とは、それぞれ順に着用者の身体の中心に近い側を、着用者の身体の中心から遠い側を示す。なお、図1において縫い代は省略している。
本発明に係る着物について、図1乃至図4を用いて説明する。まず、図1乃至図3に示すように、本実施の形態の着物は、上身頃対1、前下身頃対2、衽対3、後下身頃対4、衿5、衿抜き部材の一例である背力布6、袖9の構成部材から成る。
上身頃対1は左上身頃10a及び右上身頃10bから成り、それぞれ長手方向の略中央に肩山線11a、11bを有する。肩山線11a、11bを含む領域の生地は、本実施の形態の着物を着用した際、着用者の肩の最上部付近に位置する。
左右の上身頃10a、10bのうち、肩山線11a、11bを境にして、着用時に着用者の前側に位置する部分を前側上身頃101a、101bとし、後側に位置する部分を後側上身頃100a、100bとする。左右の上身頃10a、10bは、図1においては略左右反転した形状を有し、上身頃10a、10bとも他方の上身頃と対向する縁部は、後側上身頃100a、100bから前側上身頃101a、101bにかけて切欠かれている。
具体的には、後側上身頃100a、100bは中心角略90度の円弧状に切欠かれて、後衿付線130a、130bが形成される。この後衿付線130a、130bに連続するようにして、前側上身頃101a、101bの肩山線11a、11bから前端側領域12a、12bにかけて斜めに切欠かれた前衿付線131a、131bが形成される。
そして、このような後衿付線130a、130bを有する後衿部132と、前衿付線131a、131bを有する前衿部133とを併せて、衿刳りの一例である衿付部13が形成される。
この後衿付線130a、130bに沿って衿5の衿後部50を取付けることで、衿5が後方に傾倒し、自然と衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができると共に、衿抜きの作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、前衿付線131a、131bに沿って衿5の衿前部51を取付けることで、胸元の衿が自然と合わさった、美しい形状の衿5を形成することができると共に、胸元を合わせる作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、傾斜内縁部の一例である、上身頃10a、10bの背縫い部16は、後側上身頃100a、100bの内側の縁部であって、後衿付線130a、130bの部分を除いた縁部である内側縁部160a、160bと、その近傍であって、背中部分や脇部分に位置する縁部領域161a、161bとから成る。内側縁部160a、160bは、肩山線11a、11bから後端側領域14a、14bに向けて離間するにしたがって、外側に傾斜して形成されている。
この内側縁部160a、160bを縫着することで、上身頃を略筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができると共に、着用時の背中部分や脇部分である縁部領域161a、161bに、生地の皺が生じるのを防ぐことができる。
なお、胴回りが太い着用者の場合には、内側縁部160a、160bの傾斜角度を変えるなどして徐々に垂直方向に近づけることで対応することができる。
また、上身頃10a、10bの外側縁部15は、前外側縁部150a、150b及び後外側縁部151a、151bから成る。前外側縁部150a、150bは肩山線11a、11bから前端側領域12a、12bにかけて内側に傾斜している。後外側縁部151a、151bは、肩山線11a、11bから後端側領域14a、14bにかけて内側に傾斜している。
前外側縁部150a、150bの一部と、後外側縁部151a、151bの一部を縫着することで、上身頃を略筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができる。
背力布6は帯状の形状を有し、伸縮性のない素材で形成されている。また、背力布6の一端であり、被取付部65は、着物Aの内側で後衿付線130a、130bと内側縁部160a、160bとが交わる交点又はその周辺の取付け領域61内の所定の取付部60に取付けられる。また、背力布6の他端である被係合部であるボタンホール63は、後下見頃対4の内面の所定の係合部であるボタン64に取付けられる。
後身頃の一部に取付けられた係合部の一例であるボタン64をボタンホール63に係合することで背力布6にボタン64側の牽引力を持たせることができる。
背力布6は、取付部60とボタン64間の長さよりも短く形成され、かつボタン64は帯(図示せず)によって押圧される位置に取り付けられているので、背力布6の被取付部65にボタン64側への牽引力が生じる。このボタン64側への牽引力が取付け領域61に加えられることで、衿5が後方に傾倒するので、衿抜き作業をすることなく衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができる。また、背力布6によって着物の形状が略一定に保持されるので、着用時に衿の位置がずれるなどの着崩れが生じにくくなる。さらに、背力布6は、着物Aの内側に取付けられるため着物Aの外観を損なうことがないので、美しい形状を有する着物が形成される。
また、背力布6により取付け領域61にボタン64側への牽引力が加えられた際には、図4(a)(b)に示すように、縁部領域161a、161bの余分な布地はボタン64側に引っ張られてお端折部7の内側に折畳まれて収容される。このため、生地がお端折部7の表面に露出することを防ぐことができる。
なお、ボタンホール63が設けられる位置は、背力布6の端部に限られるものではなく、背力布6の途中部に設けることができ、また複数個所設けることもできる。この場合、取
付け領域61とボタン64の取付け位置までの長さを容易に変更することができるので、着用者の体型に適した長さにすることができる。そして、ボタンホール63の位置に応じて取付け領域61に加えられる牽引力の大きさが変化するので、ボタンホール63の位置を選択して衿5の傾倒する角度を調整することができる。また、本実施例では、背力布6の幅は約7センチに形成されているが、これに限られるものではない。例えば、背力布の幅を7センチよりも細くすると、衿後部の形状をやや幅狭な形状にすることができ、7センチよりも太くすると、衿後部は丸みを帯びた形状に形成される。なお、背力布6は伸縮性のない素材に限定されるものではなく、ゴムなどの弾性材を用いても良い。
衽対3は、帯状の左右の衽30a、30bから成り、その幅方向の一端は前下身頃20a、20bの幅方向の内側の端部に縫着される。
前下身頃対2は、帯状の左右の前下身頃20a、20bから成り、上身頃側領域の一例である上端部21a、21bは上身頃10a、10bの前端側領域12a、12bに縫着される。本実施例においては、前下身頃20a、20bの幅は、前端側領域12a、12bの幅と略同一に形成されている。なお、前下身頃20a、20bの幅は、前端側領域12a、12bの幅と略同一の長さに形成されることに限られず、着用者のサイズに合わせて、適宜変更することができる。
ここで、前端側領域12a、12bの傾斜前縁部の一例である前端側縁部120a、120bは、外側から内側に向けて肩山線11a、11b側に傾斜している。このため、前端側縁部120a、120bに前下身頃20a、20b及び衽30a、30bを縫着すると、前下身頃20a、20bの下端部22a、22b、及び衽30a、30bの下端部31a、31bは、外側から内側に向けて傾斜した形状となる。その結果、図2(b)に示すように、衽30aの下端部31aの褄先23が持ち上がった、いわゆる裾窄まりの形状が自然と形成される。
なお、右前下身頃20bと右衽30bを別個に裁断せず、一体の生地として裁断しても良い。右衽は着用時に、左衽及び左前下身頃に覆われて露出しないので、右前下身頃と右衽を一体に裁断することで縫着する手間を省くことが出来るからである。
後下身頃対4は、帯状の左右の後下身頃40a、40bから成り、上身頃側領域の一例である上端部41a、41bは上身頃10a、10bの後端側領域14a、14bに縫着される。後下身頃40a、40bの幅は、後端側領域14a、14bの後端側縁部140a、140b幅と略同一に形成されている。なお、後下身頃40a、40bの幅は、後端側領域14a、14bの幅と略同一の長さに形成されることに限られず、着用者のサイズに合わせて、適宜変更することができる。
ここで、後端側縁部140a、140bは、肩山線11a、11bと略平行に配置されている。このため、後端側縁部140a、140bに後下身頃40a、40bを縫着すると、後下身頃40a、40bの下端部42a、42bは、略水平に配置される。
図4(b)に示すように、上身頃1と前下身頃20a、20bの上端部21a、21b及び後下身頃40a、40bの上端部41a、41bとが縫着された縫着部80付近を折返して重ねた重なり部にお端折部7が形成される。このお端折部7の上部70付近で重なっている上身頃1、前下身頃20a、20b、及び後下身頃40a、40bにお端折部7を縫着することにより、お端折部7の形状は保持されるので、着用時にお端折部7を形成する作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
着物を着る場合、通常、身体に着物を時計廻りに巻きつけるように右袖の有る右端から先
に身体に巻くように着るので、図2のように、左前の着方になる。上方から見た場合、「の」の字の筆順の順序で右廻りに着る。逆に、下方から見て、「の」の字を左右反転した順序で左廻りに着ることも可能であり、この場合は、右前の着方になる。図示着物には、お端折部7の上端縁を予め着物に縫い付け支持してある。図示のお端折部7は、帯のように上端縁と下端縁間の幅で長く形成されている。「長く」と言っても、着用者の胴の外面に巻いた場合の約一周半程度の長さ、すなわち着物を着た場合の着物の胴廻り寸法とする。
図2(a)は、着物のサイズ調節構成の実施例を示す正面図である。お端折部7の巻始めすなわち始端71の近傍内側にある下身頃の部分には、主ファスナー72のような始端着脱具72が縫い付けられており、主ファスナー72と係合可能な従ファスナー73…すなわち3本の始端支持具73…が、お端折7の内面の、お端折部の1周位置すなわち、左前下身頃20aと左後下身頃40aが縫着される左体側縫着部8aの上身頃10a側のお端折部7に取付けられている。図2(a)に実線で示すお端折部7は、始端71の主ファスナー72が3本の従ファスナー73…と同じ高さに位置していて、装着する直前の状態を示している。一方、前記主ファスナー72を前記従ファスナー73…に装着支持する前段階では、破線で示すようにお端折部の他の部分と同様に水平の状態で胴体に巻き付けられる。従って、着物Aのお端折部始端71に縫い付けた部分も、ファスナー同士の装着操作によって上昇することになる。
ファスナーは、務歯列を互いに対向させ、間に設けた楔体と両外側に配設した押さえ部とから成るスライダーを移動させて左右の務歯列を開閉する構造である。すなわち、主ファスナー75と従ファスナー73…は、片方の務歯列とスライダーSとを有し、主ファスナー72と従ファスナー76…は、他方の務歯列のみを有しており、スライダーSの操作で両務歯列が結合した際にファスナーが装着接続したことになる。
主ファスナー72を従ファスナー73…(主ファスナー72側も複数個設けてもよい)に装着して互いに接続させることで、右前下身頃20b、右前下身頃20bと縫着された右衽30b、及び右前下身頃d0bが縫着された右上身頃10bにより着用者の前面を覆うように固定することができるので、お端折部7の始端71が揺れ動いたりして着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着ることができる。
お端折部7の巻き終りすなわち終端部74又は近傍の下身頃には主ファスナー75すなわち終端装着具75が縫い付けられており、主ファスナー75を装着して支持可能な従ファスナー76…すなわち終端支持具76…が、お端折部7の全長位置に縫い付けられている。
着脱ファスナー75を支持ファスナー76…に装着し互いに係合させることで、左前下身頃20a、左前下身頃20aと縫着された左衽30a、及び左前下身頃20aが縫着された左上身頃10aにより着用者の前面を覆うように固定することができるので、着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…は帯を着用した際に帯で覆われる高さに設けられるので、着物を着た際に外観を損なうことがなく、着崩れするのを防ぐことができる。従って、着物自体に主ファスナー72、75や従ファスナー73…、76…を取付ける場合も、ファスナーなどの着脱具や支持具が帯で隠れるようにする。
なお、着物を構成する上身頃対1、前後の下身頃対2、4、袖9、衿5などの各寸法は、本発明の実施例に限られるものではない。例えば、これらの各寸法を変えることで、背が高くて痩せた体型、背が低くて痩せた体型、手足が長い体型、大柄な体型などの様々な体型にそれぞれ適合するサイズで作成された着物を作製することができる。
特に、衿は着用者の年齢や場面に応じてその開き具合が求められるので、様々な衿付部13の前衿付線131a、131b及び後衿付線130a、130bの形状が考えられる。例えば、胸元の衿を詰めた形状になる、直線状に形成された前衿付線、あるいは胸元の衿が開いた形状になる湾曲線状に形成された前衿付線などである。また、後衿付線131a
、131bも、肩山線11a、11bから後側上身頃100a、100b側へ大きく切欠くことで、後衿部132を大きく開くことができる。
このように、本発明では、着物の着用時の従来の美しい形状を保ちながらも、着崩れしにくく、一人でも容易かつ迅速に着用することができると共に、着用者の身体の凹凸に沿って立体的に作製された着物を提供することができる。
[着物の製造方法]
本発明に係る着物の製造方法について、図1乃至図5を用いて説明する。
[1]裁断工程S1裁断工程S1では、生地体(図示せず)から、衿5、各左右一対の上身頃10a、10b、前下身頃20a、20b、後下身頃40a、40b、衽30a、30b、及び袖9を裁断する作業を行う。
[2]第1内縁部接続工程S2
第1内縁部接続工程S2では、左右の上身頃10a、10bの背縫い部16の内側縁部160a、160bを縫着する作業を行う。左上身頃10aの後側上身頃100aの内側縁部160aと、右上身頃10bの後側上身頃100bの内側縁部160bを縫着する。これにより、左右の上身頃10a、10bが体型に沿った立体的な形状となり、後側上身頃100a、100bの縁部領域161a、161bに皺が生じにくくなって、美しい形状を有する上身頃1が形成される。
[3]脇縫い工程S3
脇縫い工程S3では、前側上身頃101a、101bと後側上身頃100a、100bの外側縁部15を縫着する作業を行う。右上身頃10bの前側上身頃101bの前外側縁部150bのうち前端側領域12b寄りの一部と、後側上身頃100bの後外側縁部151bのうち後端部領域14b寄りの一部とを縫着する。また、左上身頃10aの前側上身頃101aの前外側縁部150aのうち前端側領域12a寄りの一部と、後側上身頃100aの後外側縁部151aのうち後端部領域14a寄りの一部とを縫着する。これにより、左右の上身頃10a、10bを縫着することで、上身頃対を筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができる。なお、外側縁部15のうち縫着していない部分によって、後述する袖9と連続する袖通し用孔17a、17bを形成することができる。
[4]衿関連部材取付け工程S4
衿関連部材取付け工程S4では、取付け領域61に背力布6を縫着する作業と、上身頃10a、10bの後衿付線130a、130b及び前衿付線131a、131bに衿5を縫着する作業を行う。衿関連部材取付け工程S4は、衿抜き部材取付け過程S40、後衿付取付け過程S41及び前衿取付け過程S42より構成される。
[4−1]衿抜き部材取付け過程S40
衿抜き部材取付け過程S40では、衿抜き部材の一例である背力布6の被取付部65を上身頃の取付部60に取付け、背力布6の被係合部であるボタンホール63を係合部であるボタン64に係合させる作業を行う。被取付部65を取付け領域61に設けられた取付部60に縫着し、ボタン64をボタンホール63に係合させることで、背力布6を取付け部60とボタン64の間に介設することができる。
背力布6は、取付部60とボタン64間の長さよりも短く形成され、かつボタン64は図3に示すように、帯(図示せず)によって押圧される位置に取り付けられているので、背力布6の被取付部65にボタン64側への牽引力が生じる。このボタン64側への牽引力は取付け領域61に伝わることで、衿5が後方に傾倒するので、衿抜き作業をすることな
く衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができると共に、背力布6によって着物の形状が略一定保持されるので、着用時に衿の位置がずれるなどの着崩れが生じにくくなる。さらに、背力布6は、着物Aの内側に取付けられるため着物Aの外観を損なうことないので、美しい形状を有する着物が形成される。
なお、ボタン64及びボタンホール63の取付け作業は、必ずしも衿関連部材取付け工程S4において行うことに限られず、例えば、後述する本体仕上げ工程S9の後に行っても良い。
[4−2]後衿取付け過程S41
後衿取付け過程S41では、上身頃10a、10bの後衿付線130a、130bに沿って、衿5のうち後側上身頃100a、100b側に取付けられる衿後部50を縫着する。これにより、図3及び図4に示すように、肩山線より後ろ側の後側上身頃途中にかけて中心角略90度の円弧状の後衿付線130a、130bに沿って縫着される衿後部50は従来の後衿の位置よりも後方に傾倒するので、衿抜き作業を行うことなく、衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができるので、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[4−3]前衿取付け過程S42
前衿取付け過程S41では、上身頃10a、10bの前衿付線131a、131bに沿って、衿5のうち前側上身頃101a、101b側に取付けられる衿前部51を縫着する。これにより、前衿付線131a、131bに沿って縫着される衿前部51は立体的に胸元に沿った形状に取付けられるので、胸元を合わせる作業を省くことができ、一人でも容易に着用することができる。
[5]袖付け工程S5
袖付け工程S5では、上身頃10a、10bの外側縁部15に袖9を縫着する作業を行う。袖9を二つに折り、袂90が形成されるよう縁部を縫着する。袂90が形成された側と反対側の縁部を、上身頃10a、10bの袖通し用孔17a、17bに取り付ける。これにより、着用者が袖通し用孔17a、17bから袖9に袖を通すことができる。
[6]第2内縁部接続工程S6
第2内縁部接続工程S6では、後下身頃40a、40bを縫着する作業を行う。左後下身頃40aの内側背縫い部43aと右後下身頃40bの内側背縫い部43bを縫着する。これにより、後下身頃40a、40bが一体に形成される。
[7]衽付け工程S7
衽付け工程S7では、前下身頃20a、20bに衽30a、30bを縫着する作業を行う。前下身頃20a、20bの衽取付け縁部24a、24bに衽30a、30bを取り付ける。これにより、前下身頃20a、20bと衽30a、30bが一体に形成される。
[8]足周り接続工程S8
足周り接続工程S8では、左前下身頃20aと左後下身頃40a、及び右前下身頃20bと右後下身頃40bを縫着する作業を行う。左前下身頃20aの外側縁部と左後下身頃40aの外側縁部を縫着して左体側縫着部8aを形成し、右前下身頃20bの外側縁部と右後下身頃40bの外側縁部を縫着して右体側縫着部8bを形成する。これにより、左前下身頃20aと左後下身頃40a、及び右前下身頃20bと右後下身頃40bが一体に形成される。
[9]本体仕上げ工程S9
本体仕上げ工程では、上下身頃1、2、4を接続し、お端折7を形成し、お端折7の端部71、74が接続される接続部の取付を行う。
[9−1]上下身頃接続工程S90
上下身頃接続工程S90では、上身頃10a、10bと、前下身頃20a、20b及び後下身頃40a、40bを縫着する作業を行う。上身頃10a、10bの前端側縁部120a、120bに、前下身頃20a、20bを縫着すると共に、上身頃10a、10bの後端側縁部140a、140bに、後下身頃40a、40bを縫着する。これにより、上身頃10a、10bと、前下身頃20a、20b及び後下身頃40a、40bが一体に形成されると共に、前端側縁部120a、120bが内側に向かって肩山線11a、11b側に傾斜していることから、図2(b)に示すように、褄先23が上方に持ち上がるので、全体として裾窄まりの形状を形成することができる。
[9−2]お端折形成工程S91
お端折形成工程S91では、お端折部7を形成して縫着する作業を行う。上身頃1と、前下身頃20a、20bの上端部21a、21b及び後下身頃40a、40bの上端部41a、41bとが縫着された縫着部80付近を折返して重ねてお端折部7を形成する。図4に示すように、このお端折部7の上部70付近で重なっている上身頃1、前下身頃20a、20b、及び後下身頃40a、40bを縫着することにより、お端折部7の形状は保持されるので、着用時にお端折部7を形成する作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[9−3]接続具取付け工程S92では、お端折部7の巻始め端部71や巻終り端部74又はその近傍に接続具である主ファスナー72や75を設け、中間部位に従ファスナー73…と76…を縫い付けてある。お端折部7の始端71近傍の下身頃2、4には主ファスナー72が設けられ、及び主ファスナー72と係合可能な従ファスナー73…は、お端折部7の内面の一周位置7t、すなわち左体側縫着部8aの上身頃10a側寄りに設けられている。主ファスナー72と従ファスナー73…を係合させることで、右前下身頃20b、右前下身頃20bと縫着された右衽30b、及び右前下身頃20bが縫着された右上身頃10bにより着用者の前面を被覆するように固定することができるので、着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
お端折部7の巻終り端部74近傍の下身頃2には、主ファスナー75が取付けられ、主ファスナー75と係合可能な従ファスナー76…は、お端折部7の全長の位置の外面に設けられている。
主ファスナー75と従ファスナー76…中の一つを体形に応じて選んで装着係合させることで、左前身頃20a、左前身頃20aと縫着された左衽30a、及び左前身頃20aが縫着された左上身頃10aにより着用者の前面を被覆するように固定することができるので、着用時に着崩れるのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
これにより、着用者の前面を覆う生地が主ファスナー72、75と3本構成の従ファスナー73…、76…との装着接続により固定されるので、着用時に着物の胸元が徐々に開いてしまうなどの着崩れを防ぎやすくなる。
なお、本実施例では、従ファスナー73…、76…を三本設けているので、所望の一つを選択することで、様々な胴回りのサイズに対応させることができる。前記主ファスナー72、75も三本のように、複数設けることで、合計9種類の装着接続ができ、より細かいサイズ選択が可能となる。主ファスナーと従ファスナーとの個数を逆にして、主ファスナー複数個、従ファスナーを1個のみとしてもよい。さらに、各サイズごとにファスナーの
色を変えるようにしてもよく、この場合着用時に対応する主従のファスナーを容易に見つけることができて能率的である。
着脱具や支持具は、より具体的には、スライダーSを要するファスナーの他にボタンやフック、ホック、或いは紐やリボンを縫い付けても足りる。すなわち、紐やリボンの一端を縫い付けておき、縫い付けずにフリーの状態にした他端同士を結んで装着接続する。
この着脱具や支持具は、着物自体に取付けてもよいが、着物を着る際にお端折部を形成する場合は、このお端折部の形成位置を想定して取付ける。お端折部を形成しない着方をする場合は、お端折部を形成する高さや帯の高さを想定して取付けることになる。
また、本発明に係る着物の上身頃1や下身頃2,4の寸法を適宜変えることで、様々な体型にそれぞれに対応した着物を製造することができる。
さらに、本実施例では上身頃と下身頃を縫着した縫着部80にお端折を形成しているが、図4(c)に示すように、下身頃にお端折部7を形成した後に、該下身頃2、4を上身頃1の下端に縫着するようにしてもよい。
この場合は、下身頃2、4のお端折部7は折畳んで、上身頃1に縫着することによりお端折部7と上下身頃1、2、4を一体的に逢着することができる。このため、縫着回数は一回で済み、作業負担が軽減される。
[着用方法]
本発明の着物に係る着用方法について、図6を用いて説明する。
[1]第1工程(S21)第1工程S21では、本発明に係る着物をはおる作業を行う。第1工程は、衿刳り構造があらかじめ形成された着物の着用工程S21a及び立体構造があらかじめ形成された着物の着用工程S21bより構成される。
[1−1]着物の着用工程(S21a)
着物の着用工程S21aでは、被取付部65が、取付け領域61内の所定の取付部60に取付けられ、被係合部であるボタンホール63が、係合部であるボタン64に取付けられた着物を着用することで、衿後部50は後方に傾倒するので、衿抜き作業を行うことなく、衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を有する着物を、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[1−2]着物の着用工程(S21b)
着物の着用工程S21bでは、上身頃対1、前下見頃対2及び後下見頃対4の部材に分割することによって、着用者の身体の凹凸に沿って立体的に形成することができると共に、上身頃1と下身頃2、4間を折畳んでお端折部7を形成することによって、お端折部7作成のための作業負担が軽減される。これにより、着物全体の形状等の微調整を行うことなく、容易かつ迅速に着用することができる。
[2]第2工程(S22)
第2工程(S22)では、上身頃対1に取付けた袖9に腕を通した後、お端折部7の一端を巻いて、所定位置で固定する作業を行う。右前下身頃20b及び右上身頃10bを固定することができるので、胸元が開くなどの着崩れを防ぐことができる。
[2]第3工程(S23)
第3工程(S23)では、お端折の他端を巻いて、お端折部の中間に固定する作業を行う。着用者は左前下身頃20aを巻いて主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…を装着係合させて固定することにより、右前下身頃20b及び右上身頃10bを固定
することができるので、胸元が開くなどの着崩れを防ぐことができる。
このように、本発明の実施の形態に係る着物を着用することで、従来行っていた裾の位置決め、お端折の形成、衿元の位置決めや衿抜きの作業を行うことなく、容易に着用することができる。即ち、例えば、着物の着用に不慣れな外国の旅行者であっても簡便に着用することができるので、着物を手軽に着用して写真撮影などを行いたい場合などに適した着用方法である。
以上のように、本発明では、ハーフファスナーなどの着脱具や支持具は帯で隠れるので、着物自体やお端折部にハーフファスナー等を取付けた着物であっても、お端折部の始端部及び終端部に1以上の装着具を取付け、前記の始端部及び終端部の装着具が装着係合して接続する1以上の支持具をお端折部の長さの一周位置や全長位置に取付け、前記の装着具や支持具を着物自体に取付ける場合は、帯で隠れる高さに設けてあるので、本発明の着物の着用時は、体形の如何に係わらず、従来の美しい形態を保ちながらも、着崩れしにくく、一人でも容易かつ迅速に着用できる。
1 上身頃対
2 前下身頃対
3 衽対
4 後下身頃対
5 衿
6 背力布(衿抜き部材)
7 お端折部
9 袖
10a、10b 左右の上身頃
11a、11b 肩山線
12a、12b 前端側領域
13 衿付部(衿刳り)
14a、14b 後端側領域
15 外側縁部
16 背縫い部(傾斜内縁部)
20a、20b 前下身頃
21a、21b 上端部(上身頃側領域)
24a、24b 衽取付け縁部
30a、30b 衽
40a、40b 後下身頃
41a、41b 上端部(上身頃側領域)
43a、43b 内側背縫い部(内側縁部)
50 衿後部
51 衿前部
60 取付部
61 取付け領域
63 ボタンホール
64 ボタン
71 お端折部の長手方向始端部
72 主ファスナー
73… 従ファスナー
74 お端折部の長手方向終端部
75 主ファスナー
76… 従ファスナー
100a、100b 後側上身頃
101a、101b 前側上身頃
120a、120b 前端側縁部(傾斜前縁部)
130a、130b 後衿付線
131a、131b 前衿付線
132 後衿部
133 前衿部
140a、140b 後端側縁部
150a、150b 前外側縁部
151a、151b 後外側縁部
160a、160b 内側縁部
161a、161b 縁部領域

本発明は、着物及び着物の着付け方法に関する。詳しくは、一人でも各種サイズに対応して容易かつ迅速に着崩れしにくい着付けができる技術を実現する。
着物は、様々な体型の人が着用することができるようゆとりをもって作られているので、着用時に個々の体型に合わせて微調整する作業が必要である。具体的には、「衿抜き」と言われる、衿の後ろ部分の空き具合、裾にかけてすぼまった形状、お端折の形成、背中部分の後身頃に皺ができないように生地を身体に添わせるなどである。これらの作業は、着用時の美しい形状を形成するため、必要な作業とされている。このため、着物を一人で着用できるようになるにはある程度の時間が必要となり、たとえ一人で着用できるようになっても、着用していると徐々に着崩れてしまうことから、着物を着用することにわずらわしさを感じ、いわゆる「着物離れ」が生じてしまっている。そして、この結果として着物を一人で着付けすることができない人が増えている。
特に、体形的に太った人が居れば、痩せた体形も有る。また、衿の後ろ部分を後方に倒す「えり抜き」と言われる作業は、鏡を見ながら片手を背中側に回して行う作業となるため、難しいとされる。
このようなことから、特許文献1に示すように、身頃の脇線の一部を裾にかけて裾窄まりに形成されるよう予め身頃の裾付近を斜めに裁った着物が考案されている。これにより、着物の美しい形状の一つである裾窄まりの形状が自然と形成される。また、特許文献2に示すように、上衣と下衣に分かれた、上下二部式の着物も考案されている。これにより、お端折を容易に形成することが出来、また後身頃にダーツを設けて予め体型に沿った形状に形成しているので、微調整する必要がなく容易に着用することができる。
特開2007−77553号公報 特開2007−16372号公報
しかしながら、特許文献1に記載された着物では、着物の柄のデザイン性が大きく損なわれることが考えられる。着物の柄は、従来の裁断方法で裁断されることを前提として、反物の幅に合ったデザインが施されており、このような柄を無視して裁断すると、隣接する身頃の柄に違和感が生じてしまうだけでなく、従来通りの衿抜きの作業を行わなければならない点については解消されていない。このため、着物の美しい形状が損なわれてしまうことが考えられる。
また、特許文献2に記載された着物では、上衣の裾を両面テープで折畳むことでお端折を形成しているため、着崩れし易いだけでなく、後身頃にダーツを設けたことで後身頃に生地の皺が生じやすくなり、着物の美しい形状が形成され難い。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、体形と関係無く着物の着付け時に美しい形状を形成し、着崩れしにくく、しかも一人でも容易かつ迅速に着付けることができる技術を実現することにある。
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、着物に予め取付けたお端折部の始端外面に始端ハーフファスナーを取付けてあり、この始端ハーフファスナーを装着して支持する始端支持ハーフファスナーを前記お端折部の内面の1周位置に取付けてあり、また前記お端折部の終端内面に終端ハーフファスナーを取付けて、この終端ハーフファスナーを装着して支持する終端支持ハーフファスナーを前記お端折部の外面のお端折部全長位置に取付けた構成において、
前記の始端側及び終端側のハーフファスナーは、始端側及び終端側とその支持側との片方を2以上とし、他方を1以上とすると共に、各ハーフファスナーは上下に長く、
しかも前記終端支持ハーフファスナーに対し前記始端支持ハーフファスナーの位置が高く配置されていて、前記始端ハーフファスナーを前記始端支持ハーフファスナーと係合させることで、お端折部始端が水平状態から上昇するように構成されていることを特徴とする着物である。前記の始端ハーフファスナーを始端支持ハーフファスナーに装着すると互いに嵌合支持されて固定され、お端折部の始端が揺れたり移動できなくなる。終端の場合も同様である。また、始端ハーフファスナーが始端支持ハーフファスナーから離脱すると離れて互いに自由となる仕組みである。
請求項2は、着物に予め取付けたお端折部の始端外面に始端ハーフファスナーを取付けてあり、この始端ハーフファスナーを装着して支持する始端支持ハーフファスナーをお端折部の内面の1周位置に取付けてあり、また前記お端折部の終端部に終端ハーフファスナーを取付けて、この終端ハーフファスナーを装着して支持する終端支持ハーフファスナーを前記お端折部の外面のお端折部全長位置に取付けた構成において、
前記の始端側及び終端側のハーフファスナーは、始端側及び終端側とその支持側との片方を2以上とし、他方を1以上とすると共に、各ハーフファスナーは上下に長く、
しかも前記終端支持ハーフファスナーに対し前記始端支持ハーフファスナーの位置が高く配置されていて、前記始端ハーフファスナーを前記始端支持ハーフファスナーと係合させることで、お端折部始端が水平状態から上昇するように構成してあり、
太った体形の人が着る場合は、前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の終端支持ハーフファスナーのお端折部着用長さが長くなるように前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の終端支持ハーフファスナーを選択して装着支持し、痩身者が着る場合は、前記のお端折部着用長さが短くなるように前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の終端支持ハーフファスナーを選択して装着支持することを特徴とする着物の着付け方法である。
請求項3は、衿部分の真後ろに縦帯状の背力布の上端が接続されており、前記背力布の下端又は下端近傍を前記衿部分が形成された着物の後身頃の内面に着脱する構成となっており、前記背力布を下方に引いて衿抜きした状態で、前記後身頃の内面に装着固定する構造を特徴とする請求項1に記載の着物である。
着脱手段として、実施例ではボタンをボタンホールに嵌入して装着する例を図示したが、ボタンに代えてフックを用いても良い。
請求項1のように、始端ハーフファスナーを装着して支持する複数の始端支持ハーフファスナーを前記お端折部の内面の1周位置に取付けてある。ただし、後で詳述するように高めに配置してある。また、前記お端折部の終端内面に1以上の終端ハーフファスナーを取付けて、この終端ハーフファスナーを装着して支持する複数の終端支持ハーフファスナーを前記お端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてあるので、着用者の腹囲寸法の差異に対応して、複数のハーフファスナーの一つを選んで使用することで、どのような体形にも対応できる。
さらに、前記の始端側及び終端側のハーフファスナーは、始端側及び終端側とその支持側との片方を2以上とし、他方を1以上とすると共に、各ハーフファスナーは図のように上下に長い。しかも、前記終端支持ハーフファスナーに対し前記始端支持ハーフファスナーの位置が高く配置されていて、お端折部始端が水平状態から上昇して前記始端支持ハーフファスナーと同じ高さとなる位置で前記始端ハーフファスナーを前記お端折部始端外面に取付けてある。このように図2(a)の始端支持ハーフファスナー73が終端支持ハーフファスナー76より高く配置されているので、装着支持する際に始端71と共に着物も上昇することになる。段落[0039]の末尾に記載されているように、お端折部7の上端縁を予め着物に縫い付け支持してあるからである。
請求項2のように、前記の着物を着る際に、太った体形の人が着る場合は、お端折部着用長さが長くなるように前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の終端支持ハーフファスナーを選択して装着し支持する。
また、痩身者が着る場合は、前記のお端折部着用長さがが短くなるように、前記の始端支持ハーフファスナー及び前記の終端支持ハーフファスナーを選択し、複数から一つを選んで使用することで、どのような体形にも対応できる。
請求項3のように、背力布を下方に引いて衿抜きした状態で、前記後身頃の内面に装着固定するが、図3の実施例では、ボタンをボタンホールに係合させることで背力布をボタン側に牽引して衿抜き可能とした。このように、背力布の下端を下に引いて装着するだけで衿抜きでき、一人でも容易かつ迅速に衿抜きができる。
本実施例の着物を構成する上身頃対、前下身頃対及び後下身頃対の形状を表した展開図である。 本実施例の着物のサイズ調節構成を示す正面図である。 本実施例の着物の後衿部の構成を示す斜視図である。 本実施例の着物の背力布を示す断面図である。 本実施例の着物の製造方法を示す工程図である。 本実施例の着物の着用方法の工程図である。
次に本発明による着物の構成及び着物の着付け方法について、図1乃至図6を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。なお、本明細書では、「左」「右」とは、それぞれ順に、着用者にとっての左手側を、着用者にとっての右手側を示す。また、「前」「後」、それぞれ順に、着用者にとっての前方を、着用者にとっての後方を示す。そして、「上」「下」とは、それぞれ順に、着用者にとって足部から頭部に向けての方向を、着用者にとって頭部から足部に向けての方向を示す。さらに、「内側」「外側」とは、それぞれ順に着用者の身体の中心に近い側を、着用者の身体の中心から遠い側を示す。なお、図1において縫い代は省略している。
本発明に係る着物について、図1乃至図4を用いて説明する。まず、図1乃至図3に示すように、本実施の形態の着物は、上身頃対1、前下身頃対2、衽対3、後下身頃対4、衿5、衿抜き部材の一例である背力布6、袖9の構成部材から成る。
上身頃対1は左上身頃10a及び右上身頃10bから成り、それぞれ長手方向の略中央に肩山線11a、11bを有する。肩山線11a、11bを含む領域の生地は、本実施の形態の着物を着用した際、着用者の肩の最上部付近に位置する。
左右の上身頃10a、10bのうち、肩山線11a、11bを境にして、着用時に着用者の前側に位置する部分を前側上身頃101a、101bとし、後側に位置する部分を後側上身頃100a、100bとする。左右の上身頃10a、10bは、図1においては略左右反転した形状を有し、上身頃10a、10bとも他方の上身頃と対向する縁部は、後側上身頃100a、100bから前側上身頃101a、101bにかけて切欠かれている。
具体的には、後側上身頃100a、100bは中心角略90度の円弧状に切欠かれて、後衿付線130a、130bが形成される。この後衿付線130a、130bに連続するようにして、前側上身頃101a、101bの肩山線11a、11bから前端側領域12a、12bにかけて斜めに切欠かれた前衿付線131a、131bが形成される。
そして、このような後衿付線130a、130bを有する後衿部132と、前衿付線131a、131bを有する前衿部133とを併せて、衿刳りの一例である衿付部13が形成される。
この後衿付線130a、130bに沿って衿5の衿後部50を取付けることで、衿5が後方に傾倒し、自然と衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができると共に、衿抜きの作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、前衿付線131a、131bに沿って衿5の衿前部51を取付けることで、胸元の衿が自然と合わさった、美しい形状の衿5を形成することができると共に、胸元を合わせる作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、傾斜内縁部の一例である、上身頃10a、10bの背縫い部16は、後側上身頃100a、100bの内側の縁部であって、後衿付線130a、130bの部分を除いた縁部である内側縁部160a、160bと、その近傍であって、背中部分や脇部分に位置する縁部領域161a、161bとから成る。内側縁部160a、160bは、肩山線11a、11bから後端側領域14a、14bに向けて離間するにしたがって、外側に傾斜して形成されている。
この内側縁部160a、160bを縫着することで、上身頃を略筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができると共に、着用時の背中部分や脇部分である縁部領域161a、161bに、生地の皺が生じるのを防ぐことができる。
なお、胴回りが太い着用者の場合には、内側縁部160a、160bの傾斜角度を変えるなどして徐々に垂直方向に近づけることで対応することができる。
また、上身頃10a、10bの外側縁部15は、前外側縁部150a、150b及び後外側縁部151a、151bから成る。前外側縁部150a、150bは肩山線11a、11bから前端側領域12a、12bにかけて内側に傾斜している。後外側縁部151a、151bは、肩山線11a、11bから後端側領域14a、14bにかけて内側に傾斜している。
前外側縁部150a、150bの一部と、後外側縁部151a、151bの一部を縫着することで、上身頃を略筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができる。
背力布6は帯状の形状を有し、伸縮性のない素材で形成されている。また、背力布6の一端であり、被取付部65は、着物Aの内側で後衿付線130a、130bと内側縁部160a、160bとが交わる交点又はその周辺の取付け領域61内の所定の取付部60に取付けられる。また、背力布6の他端である被係合部であるボタンホール63は、後下見頃対4の内面の所定の係合部であるボタン64に取付けられる。
後身頃の一部に取付けられた係合部の一例であるボタン64をボタンホール63に係合することで背力布6にボタン64側の牽引力を持たせることができる。
背力布6は、取付部60とボタン64間の長さよりも短く形成され、かつボタン64は帯(図示せず)によって押圧される位置に取り付けられているので、背力布6の被取付部65にボタン64側への牽引力が生じる。このボタン64側への牽引力が取付け領域61に加えられることで、衿5が後方に傾倒するので、衿抜き作業をすることなく衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができる。また、背力布6によって着物の形状が略一定に保持されるので、着用時に衿の位置がずれるなどの着崩れが生じにくくなる。さらに、背力布6は、着物Aの内側に取付けられるため着物Aの外観を損なうことがないので、美しい形状を有する着物が形成される。
また、背力布6により取付け領域61にボタン64側への牽引力が加えられた際には、図4(a)(b)に示すように、縁部領域161a、161bの余分な布地はボタン64側に引っ張られてお端折部7の内側に折畳まれて収容される。このため、生地がお端折部7の表面に露出することを防ぐことができる。
なお、ボタンホール63が設けられる位置は、背力布6の端部に限られるものではなく、背力布6の途中部に設けることができ、また複数個所設けることもできる。この場合、取付け領域61とボタン64の取付け位置までの長さを容易に変更することができるので、着用者の体型に適した長さにすることができる。そして、ボタンホール63の位置に応じて取付け領域61に加えられる牽引力の大きさが変化するので、ボタンホール63の位置を選択して衿5の傾倒する角度を調整することができる。また、本実施例では、背力布6の幅は約7センチに形成されているが、これに限られるものではない。例えば、背力布の幅を7センチよりも細くすると、衿後部の形状をやや幅狭な形状にすることができ、7センチよりも太くすると、衿後部は丸みを帯びた形状に形成される。なお、背力布6は伸縮性のない素材に限定されるものではなく、ゴムなどの弾性材を用いても良い。
衽対3は、帯状の左右の衽30a、30bから成り、その幅方向の一端は前下身頃20a、20bの幅方向の内側の端部に縫着される。
前下身頃対2は、帯状の左右の前下身頃20a、20bから成り、上身頃側領域の一例である上端部21a、21bは上身頃10a、10bの前端側領域12a、12bに縫着される。本実施例においては、前下身頃20a、20bの幅は、前端側領域12a、12bの幅と略同一に形成されている。なお、前下身頃20a、20bの幅は、前端側領域12a、12bの幅と略同一の長さに形成されることに限られず、着用者のサイズに合わせて、適宜変更することができる。
ここで、前端側領域12a、12bの傾斜前縁部の一例である前端側縁部120a、120bは、外側から内側に向けて肩山線11a、11b側に傾斜している。このため、前端側縁部120a、120bに前下身頃20a、20b及び衽30a、30bを縫着すると、前下身頃20a、20bの下端部22a、22b、及び衽30a、30bの下端部31a、31bは、外側から内側に向けて傾斜した形状となる。その結果、図2(b)に示すように、衽30aの下端部31aの褄先23が持ち上がった、いわゆる裾窄まりの形状が自然と形成される。
なお、右前下身頃20bと右衽30bを別個に裁断せず、一体の生地として裁断しても良い。右衽は着用時に、左衽及び左前下身頃に覆われて露出しないので、右前下身頃と右衽を一体に裁断することで縫着する手間を省くことが出来るからである。
後下身頃対4は、帯状の左右の後下身頃40a、40bから成り、上身頃側領域の一例である上端部41a、41bは上身頃10a、10bの後端側領域14a、14bに縫着される。後下身頃40a、40bの幅は、後端側領域14a、14bの後端側縁部140a、140b幅と略同一に形成されている。なお、後下身頃40a、40bの幅は、後端側領域14a、14bの幅と略同一の長さに形成されることに限られず、着用者のサイズに合わせて、適宜変更することができる。
ここで、後端側縁部140a、140bは、肩山線11a、11bと略平行に配置されている。このため、後端側縁部140a、140bに後下身頃40a、40bを縫着すると、後下身頃40a、40bの下端部42a、42bは、略水平に配置される。
図4(b)に示すように、上身頃1と前下身頃20a、20bの上端部21a、21b及び後下身頃40a、40bの上端部41a、41bとが縫着された縫着部80付近を折返して重ねた重なり部にお端折部7が形成される。このお端折部7の上部70付近で重なっている上身頃1、前下身頃20a、20b、及び後下身頃40a、40bにお端折部7を縫着することにより、お端折部7の形状は保持されるので、着用時にお端折部7を形成する作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
着物を着る場合、通常、身体に着物を時計廻りに巻きつけるように右袖の有る右端から先に身体に巻くように着るので、図2のように、左前の着方になる。上方から見た場合、「の」の字の筆順の順序で右廻りに着る。逆に、下方から見て、「の」の字を左右反転した順序で左廻りに着ることも可能であり、この場合は、右前の着方になる。図示着物には、お端折部7の上端縁を予め着物に縫い付け支持してある。図示のお端折部7は、帯のように上端縁と下端縁間の幅で長く形成されている。「長く」と言っても、着用者の胴の外面に巻いた場合の約一周半程度の長さ、すなわち着物を着た場合の着物の胴廻り寸法とする。
図2(a)は、着物のサイズ調節構成の実施例を示す正面図である。お端折部7の巻始めすなわち始端71の近傍内側にある下身頃の部分には、主ファスナー72のような始端着脱具72が縫い付けられており、主ファスナー72と係合可能な従ファスナー73…すなわち3本の始端支持具73…が、お端折7の内面の、お端折部の1周位置すなわち、左前下身頃20aと左後下身頃40aが縫着される左体側縫着部8aの上身頃10a側のお端折部7に取付けられている。図2(a)に実線で示すお端折部7は、始端71の主ファスナー72が3本の従ファスナー73…と同じ高さに位置していて、装着する直前の状態を示している。一方、前記主ファスナー72を前記従ファスナー73…に装着支持する前段階では、お端折部全体を水平の状態で胴体に巻き付けられる。従って、着物Aのお端折部始端71に縫い付けた部分も、ファスナー同士の装着操作によって上昇することになる。
ファスナーは、務歯列を互いに対向させ、間に設けた楔体と両外側に配設した押さえ部とから成るスライダーを移動させて左右の務歯列を開閉する構造である。すなわち、主ファスナー75と従ファスナー73…は、片方の務歯列とスライダーSとを有し、主ファスナー72と従ファスナー76…は、他方の務歯列のみを有しており、スライダーSの操作で両務歯列が結合した際にファスナーが装着接続したことになる。
主ファスナー72を従ファスナー73…(主ファスナー72側も複数個設けてもよい)に装着して互いに接続させることで、右前下身頃20b、右前下身頃20bと縫着された右衽30b、及び右前下身頃d0bが縫着された右上身頃10bにより着用者の前面を覆うように固定することができるので、お端折部7の始端71が揺れ動いたりして着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着ることができる。
お端折部7の巻き終りすなわち終端部74又は近傍の下身頃には主ファスナー75すなわち終端装着具75が縫い付けられており、主ファスナー75を装着して支持可能な従ファスナー76…すなわち終端支持具76…が、お端折部7の全長位置に縫い付けられている。
着脱ファスナー75を支持ファスナー76…に装着し互いに係合させることで、左前下身頃20a、左前下身頃20aと縫着された左衽30a、及び左前下身頃20aが縫着された左上身頃10aにより着用者の前面を覆うように固定することができるので、着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
また、主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…は帯を着用した際に帯で覆われる高さに設けられるので、着物を着た際に外観を損なうことがなく、着崩れするのを防ぐことができる。従って、着物自体に主ファスナー72、75や従ファスナー73…、76…を取付ける場合も、ファスナーなどの着脱具や支持具が帯で隠れるようにする。
なお、着物を構成する上身頃対1、前後の下身頃対2、4、袖9、衿5などの各寸法は、本発明の実施例に限られるものではない。例えば、これらの各寸法を変えることで、背が高くて痩せた体型、背が低くて痩せた体型、手足が長い体型、大柄な体型などの様々な体型にそれぞれ適合するサイズで作成された着物を作製することができる。
特に、衿は着用者の年齢や場面に応じてその開き具合が求められるので、様々な衿付部13の前衿付線131a、131b及び後衿付線130a、130bの形状が考えられる。例えば、胸元の衿を詰めた形状になる、直線状に形成された前衿付線、あるいは胸元の衿が開いた形状になる湾曲線状に形成された前衿付線などである。また、後衿付線131a、131bも、肩山線11a、11bから後側上身頃100a、100b側へ大きく切欠くことで、後衿部132を大きく開くことができる。
このように、本発明では、着物の着用時の従来の美しい形状を保ちながらも、着崩れしにくく、一人でも容易かつ迅速に着用することができると共に、着用者の身体の凹凸に沿って立体的に作製された着物を提供することができる。
[着物の製造方法]
本発明に係る着物の製造方法について、図1乃至図5を用いて説明する。
[1]裁断工程S1裁断工程S1では、生地体(図示せず)から、衿5、各左右一対の上身頃10a、10b、前下身頃20a、20b、後下身頃40a、40b、衽30a、30b、及び袖9を裁断する作業を行う。
[2]第1内縁部接続工程S2
第1内縁部接続工程S2では、左右の上身頃10a、10bの背縫い部16の内側縁部160a、160bを縫着する作業を行う。左上身頃10aの後側上身頃100aの内側縁部160aと、右上身頃10bの後側上身頃100bの内側縁部160bを縫着する。これにより、左右の上身頃10a、10bが体型に沿った立体的な形状となり、後側上身頃100a、100bの縁部領域161a、161bに皺が生じにくくなって、美しい形状を有する上身頃1が形成される。
[3]脇縫い工程S3
脇縫い工程S3では、前側上身頃101a、101bと後側上身頃100a、100bの外側縁部15を縫着する作業を行う。右上身頃10bの前側上身頃101bの前外側縁部150bのうち前端側領域12b寄りの一部と、後側上身頃100bの後外側縁部151bのうち後端部領域14b寄りの一部とを縫着する。また、左上身頃10aの前側上身頃101aの前外側縁部150aのうち前端側領域12a寄りの一部と、後側上身頃100aの後外側縁部151aのうち後端部領域14a寄りの一部とを縫着する。これにより、左右の上身頃10a、10bを縫着することで、上身頃対を筒状に形成することができると共に、下方を細くして上身頃1を着用者の胴回りに沿った、下窄まりの立体的な形状に形成することができる。なお、外側縁部15のうち縫着していない部分によって、後述する袖9と連続する袖通し用孔17a、17bを形成することができる。
[4]衿関連部材取付け工程S4
衿関連部材取付け工程S4では、取付け領域61に背力布6を縫着する作業と、上身頃10a、10bの後衿付線130a、130b及び前衿付線131a、131bに衿5を縫着する作業を行う。衿関連部材取付け工程S4は、衿抜き部材取付け過程S40、後衿付取付け過程S41及び前衿取付け過程S42より構成される。
[4−1]衿抜き部材取付け過程S40
衿抜き部材取付け過程S40では、衿抜き部材の一例である背力布6の被取付部65を上身頃の取付部60に取付け、背力布6の被係合部であるボタンホール63を係合部であるボタン64に係合させる作業を行う。被取付部65を取付け領域61に設けられた取付部60に縫着し、ボタン64をボタンホール63に係合させることで、背力布6を取付け部60とボタン64の間に介設することができる。
背力布6は、取付部60とボタン64間の長さよりも短く形成され、かつボタン64は図3に示すように、帯(図示せず)によって押圧される位置に取り付けられているので、背力布6の被取付部65にボタン64側への牽引力が生じる。このボタン64側への牽引力は取付け領域61に伝わることで、衿5が後方に傾倒するので、衿抜き作業をすることなく衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができると共に、背力布6によって着物の形状が略一定保持されるので、着用時に衿の位置がずれるなどの着崩れが生じにくくなる。さらに、背力布6は、着物Aの内側に取付けられるため着物Aの外観を損なうことないので、美しい形状を有する着物が形成される。
なお、ボタン64及びボタンホール63の取付け作業は、必ずしも衿関連部材取付け工程S4において行うことに限られず、例えば、後述する本体仕上げ工程S9の後に行っても良い。
[4−2]後衿取付け過程S41
後衿取付け過程S41では、上身頃10a、10bの後衿付線130a、130bに沿って、衿5のうち後側上身頃100a、100b側に取付けられる衿後部50を縫着する。これにより、図3及び図4に示すように、肩山線より後ろ側の後側上身頃途中にかけて中心角略90度の円弧状の後衿付線130a、130bに沿って縫着される衿後部50は従来の後衿の位置よりも後方に傾倒するので、衿抜き作業を行うことなく、衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を形成することができるので、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[4−3]前衿取付け過程S42
前衿取付け過程S41では、上身頃10a、10bの前衿付線131a、131bに沿って、衿5のうち前側上身頃101a、101b側に取付けられる衿前部51を縫着する。これにより、前衿付線131a、131bに沿って縫着される衿前部51は立体的に胸元に沿った形状に取付けられるので、胸元を合わせる作業を省くことができ、一人でも容易に着用することができる。
[5]袖付け工程S5
袖付け工程S5では、上身頃10a、10bの外側縁部15に袖9を縫着する作業を行う。袖9を二つに折り、袂90が形成されるよう縁部を縫着する。袂90が形成された側と反対側の縁部を、上身頃10a、10bの袖通し用孔17a、17bに取り付ける。これにより、着用者が袖通し用孔17a、17bから袖9に袖を通すことができる。
[6]第2内縁部接続工程S6
第2内縁部接続工程S6では、後下身頃40a、40bを縫着する作業を行う。左後下身頃40aの内側背縫い部43aと右後下身頃40bの内側背縫い部43bを縫着する。これにより、後下身頃40a、40bが一体に形成される。
[7]衽付け工程S7
衽付け工程S7では、前下身頃20a、20bに衽30a、30bを縫着する作業を行う。前下身頃20a、20bの衽取付け縁部24a、24bに衽30a、30bを取り付ける。これにより、前下身頃20a、20bと衽30a、30bが一体に形成される。
[8]足周り接続工程S8
足周り接続工程S8では、左前下身頃20aと左後下身頃40a、及び右前下身頃20bと右後下身頃40bを縫着する作業を行う。左前下身頃20aの外側縁部と左後下身頃40aの外側縁部を縫着して左体側縫着部8aを形成し、右前下身頃20bの外側縁部と右後下身頃40bの外側縁部を縫着して右体側縫着部8bを形成する。これにより、左前下身頃20aと左後下身頃40a、及び右前下身頃20bと右後下身頃40bが一体に形成される。
[9]本体仕上げ工程S9
本体仕上げ工程では、上下身頃1、2、4を接続し、お端折7を形成し、お端折7の端部71、74が接続される接続部の取付を行う。
[9−1]上下身頃接続工程S90
上下身頃接続工程S90では、上身頃10a、10bと、前下身頃20a、20b及び後下身頃40a、40bを縫着する作業を行う。上身頃10a、10bの前端側縁部120a、120bに、前下身頃20a、20bを縫着すると共に、上身頃10a、10bの後端側縁部140a、140bに、後下身頃40a、40bを縫着する。これにより、上身頃10a、10bと、前下身頃20a、20b及び後下身頃40a、40bが一体に形成されると共に、前端側縁部120a、120bが内側に向かって肩山線11a、11b側に傾斜していることから、図2(b)に示すように、褄先23が上方に持ち上がるので、全体として裾窄まりの形状を形成することができる。
[9−2]お端折形成工程S91
お端折形成工程S91では、お端折部7を形成して縫着する作業を行う。上身頃1と、前下身頃20a、20bの上端部21a、21b及び後下身頃40a、40bの上端部41a、41bとが縫着された縫着部80付近を折返して重ねてお端折部7を形成する。図4に示すように、このお端折部7の上部70付近で重なっている上身頃1、前下身頃20a、20b、及び後下身頃40a、40bを縫着することにより、お端折部7の形状は保持されるので、着用時にお端折部7を形成する作業をすることなく、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[9−3]接続具取付け工程S92では、お端折部7の巻始め端部71や巻終り端部74又はその近傍に接続具である主ファスナー72や75を設け、中間部位に従ファスナー73…と76…を縫い付けてある。お端折部7の始端71近傍の下身頃2、4には主ファスナー72が設けられ、及び主ファスナー72と係合可能な従ファスナー73…は、お端折部7の内面の一周位置7t、すなわち左体側縫着部8aの上身頃10a側寄りに設けられている。主ファスナー72と従ファスナー73…を係合させることで、右前下身頃20b、右前下身頃20bと縫着された右衽30b、及び右前下身頃20bが縫着された右上身頃10bにより着用者の前面を被覆するように固定することができるので、着用時に着崩れするのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
お端折部7の巻終り端部74近傍の下身頃2には、主ファスナー75が取付けられ、主ファスナー75と係合可能な従ファスナー76…は、お端折部7の全長の位置の外面に設けられている。
主ファスナー75と従ファスナー76…中の一つを体形に応じて選んで装着係合させることで、左前身頃20a、左前身頃20aと縫着された左衽30a、及び左前身頃20aが縫着された左上身頃10aにより着用者の前面を被覆するように固定することができるので、着用時に着崩れるのを防ぐことができると共に、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
これにより、着用者の前面を覆う生地が主ファスナー72、75と3本構成の従ファスナー73…、76…との装着接続により固定されるので、着用時に着物の胸元が徐々に開いてしまうなどの着崩れを防ぎやすくなる。
なお、本実施例では、従ファスナー73…、76…を三本設けているので、所望の一つを選択することで、様々な胴回りのサイズに対応させることができる。前記主ファスナー72、75も三本のように、複数設けることで、合計9種類の装着接続ができ、より細かいサイズ選択が可能となる。主ファスナーと従ファスナーとの個数を逆にして、主ファスナー複数個、従ファスナーを1個のみとしてもよい。さらに、各サイズごとにファスナーの色を変えるようにしてもよく、この場合着用時に対応する主従のファスナーを容易に見つけることができて能率的である。
着脱具や支持具は、より具体的には、スライダーSを要するファスナーの他にボタンやフック、ホック、或いは紐やリボンを縫い付けても足りる。すなわち、紐やリボンの一端を縫い付けておき、縫い付けずにフリーの状態にした他端同士を結んで装着接続する。
この着脱具や支持具は、着物自体に取付けてもよいが、着物を着る際にお端折部を形成する場合は、このお端折部の形成位置を想定して取付ける。お端折部を形成しない着方をする場合は、お端折部を形成する高さや帯の高さを想定して取付けることになる。
また、本発明に係る着物の上身頃1や下身頃2,4の寸法を適宜変えることで、様々な体型にそれぞれに対応した着物を製造することができる。
さらに、本実施例では上身頃と下身頃を縫着した縫着部80にお端折を形成しているが、図4(c)に示すように、下身頃にお端折部7を形成した後に、該下身頃2、4を上身頃1の下端に縫着するようにしてもよい。
この場合は、下身頃2、4のお端折部7は折畳んで、上身頃1に縫着することによりお端折部7と上下身頃1、2、4を一体的に逢着することができる。このため、縫着回数は一回で済み、作業負担が軽減される。
[着用方法]
本発明の着物に係る着用方法について、図6を用いて説明する。
[1]第1工程(S21)第1工程S21では、本発明に係る着物をはおる作業を行う。第1工程は、衿刳り構造があらかじめ形成された着物の着用工程S21a及び立体構造があらかじめ形成された着物の着用工程S21bより構成される。
[1−1]着物の着用工程(S21a)
着物の着用工程S21aでは、被取付部65が、取付け領域61内の所定の取付部60に取付けられ、被係合部であるボタンホール63が、係合部であるボタン64に取付けられた着物を着用することで、衿後部50は後方に傾倒するので、衿抜き作業を行うことなく、衿抜きがされた衿と同様の美しい形状の衿5を有する着物を、一人でも容易かつ迅速に着用することができる。
[1−2]着物の着用工程(S21b)
着物の着用工程S21bでは、上身頃対1、前下見頃対2及び後下見頃対4の部材に分割することによって、着用者の身体の凹凸に沿って立体的に形成することができると共に、上身頃1と下身頃2、4間を折畳んでお端折部7を形成することによって、お端折部7作成のための作業負担が軽減される。これにより、着物全体の形状等の微調整を行うことなく、容易かつ迅速に着用することができる。
[2]第2工程(S22)
第2工程(S22)では、上身頃対1に取付けた袖9に腕を通した後、お端折部7の一端を巻いて、所定位置で固定する作業を行う。右前下身頃20b及び右上身頃10bを固定することができるので、胸元が開くなどの着崩れを防ぐことができる。
[2]第3工程(S23)
第3工程(S23)では、お端折の他端を巻いて、お端折部の中間に固定する作業を行う。着用者は左前下身頃20aを巻いて主ファスナー72、75と従ファスナー73…、76…を装着係合させて固定することにより、右前下身頃20b及び右上身頃10bを固定することができるので、胸元が開くなどの着崩れを防ぐことができる。
このように、本発明の実施の形態に係る着物を着用することで、従来行っていた裾の位置決め、お端折の形成、衿元の位置決めや衿抜きの作業を行うことなく、容易に着用することができる。即ち、例えば、着物の着用に不慣れな外国の旅行者であっても簡便に着用することができるので、着物を手軽に着用して写真撮影などを行いたい場合などに適した着用方法である。
以上のように、本発明では、ハーフファスナーなどの着脱具や支持具は帯で隠れるので、着物自体やお端折部にハーフファスナー等を取付けた着物であっても、お端折部の始端部及び終端部に1以上の装着具を取付け、前記の始端部及び終端部の装着具が装着係合して接続する1以上の支持具をお端折部の長さの一周位置や全長位置に取付け、前記の装着具や支持具を着物自体に取付ける場合は、帯で隠れる高さに設けてあるので、本発明の着物の着用時は、体形の如何に係わらず、従来の美しい形態を保ちながらも、着崩れしにくく、一人でも容易かつ迅速に着用できる。
1 上身頃対
2 前下身頃対
3 衽対
4 後下身頃対
5 衿
6 背力布(衿抜き部材)
7 お端折部
9 袖
10a、10b 左右の上身頃
11a、11b 肩山線
12a、12b 前端側領域
13 衿付部(衿刳り)
14a、14b 後端側領域
15 外側縁部
16 背縫い部(傾斜内縁部)
20a、20b 前下身頃
21a、21b 上端部(上身頃側領域)
24a、24b 衽取付け縁部
30a、30b 衽
40a、40b 後下身頃
41a、41b 上端部(上身頃側領域)
43a、43b 内側背縫い部(内側縁部)
50 衿後部
51 衿前部
60 取付部
61 取付け領域
63 ボタンホール
64 ボタン
71 お端折部の長手方向始端部
72 主ファスナー
73… 従ファスナー
74 お端折部の長手方向終端部
75 主ファスナー
76… 従ファスナー
100a、100b 後側上身頃
101a、101b 前側上身頃
120a、120b 前端側縁部(傾斜前縁部)
130a、130b 後衿付線
131a、131b 前衿付線
132 後衿部
133 前衿部
140a、140b 後端側縁部
150a、150b 前外側縁部
151a、151b 後外側縁部
160a、160b 内側縁部
161a、161b 縁部領域

Claims (4)

  1. 右巻き方向又は左巻き方向に着るお端折部を形成した若しくはお端折部無しの着物の自体又は帯で隠れる高さに予め取付けたお端折部の始端に1以上の始端着脱具を取付けてあり、この始端着脱具を装着して支持する1以上の始端支持具を前記着物又はお端折部の内面の一周位置に取付けてあり、また前記お端折部の終端部を支持する1以上の終端着脱具を取付けてあり、この終端着脱具を装着して支持する1以上の終端支持具を前記着物又はお端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてあることを特徴とする着物。
  2. 右巻き方向又は左巻き方向に着るお端折部を形成した若しくはお端折部無しの着物の自体又は帯で隠れる高さに予め取付けたお端折部の始端に1以上の始端着脱具を取付けてあり、この始端着脱具を装着して支持する1以上の始端支持具を前記着物又はお端折部の内面の一周位置に取付けてあり、また前記お端折部の終端部を支持する1以上の終端着脱具を取付けてあり、この終端着脱具を装着して支持する1以上の終端支持具を前記着物又はお端折部の外面のお端折部全長位置に取付けてある着物を着る際に、太った体形の人が着る場合は、前記の1以上の始端支持具及び/又は始端着脱具の位置までの寸法が長くなるように前記の始端着脱具及び/又は始端支持具を選択し、痩身者が着る場合は、前記の寸法が短くなるように前記の始端着脱具及び/又は始端支持具を選択することを特徴とする着物の着付け方法。
  3. 前記の1以上の始端着脱具又は終端着脱具及び/又は始端支持具及び/又は終端支持具において、着用者の体形に応じて各体形ごとに着脱具又は支持具の色を変えてあることを特徴とする請求項1記載の着物。
  4. 衿部分に縦帯状の背力布の上端が接続されており、前記背力布の下端又は下端近傍を着物の後身頃の内面に着脱する構成となっており、前記背力布を下方に引いて衿抜きした状態で、前記後身頃の内面に装着固定する構造を特徴とする請求項1又は請求項3に記載の着物。

JP2017142323A 2017-07-23 2017-07-23 着物及び着物の着付け方法 Active JP6412219B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017142323A JP6412219B1 (ja) 2017-07-23 2017-07-23 着物及び着物の着付け方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017142323A JP6412219B1 (ja) 2017-07-23 2017-07-23 着物及び着物の着付け方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6412219B1 JP6412219B1 (ja) 2018-10-24
JP2019023362A true JP2019023362A (ja) 2019-02-14

Family

ID=63920538

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017142323A Active JP6412219B1 (ja) 2017-07-23 2017-07-23 着物及び着物の着付け方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6412219B1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7473160B2 (ja) 2020-02-21 2024-04-23 株式会社花舞 着物

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0712420U (ja) * 1993-07-29 1995-02-28 東レ株式会社 和 服
JP3028496U (ja) * 1996-02-28 1996-09-03 ▲文▼瑛 周 調整式体重減少帯
JP2003193305A (ja) * 2001-12-25 2003-07-09 Yoshiki Asai 和 服
JP3917161B2 (ja) * 2005-09-12 2007-05-23 富佐江 鈴木 背中の丸い人用着物、背中の丸い人用着物作成方法
JP5850325B2 (ja) * 2012-02-06 2016-02-03 株式会社ツインズ・コーポレーション 簡単女着物
JP3183988U (ja) * 2013-03-29 2013-06-06 律世 森 二部式着物

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7473160B2 (ja) 2020-02-21 2024-04-23 株式会社花舞 着物

Also Published As

Publication number Publication date
JP6412219B1 (ja) 2018-10-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR20180098585A (ko) 컨버터블 의복
JP6412219B1 (ja) 着物及び着物の着付け方法
JP2019031747A (ja) 着物及び着物の着付け方法
JP2019031747A5 (ja)
JP3185385U (ja) セパレート式着物の上衣、及びセパレート式着物
JP2013002021A (ja) きもの及びきものセット並びにゆかた
US2254929A (en) Garment
JP2011168939A (ja) リバーシブル構造の一部式立体縫製きもの及びきものセット
JP4527680B2 (ja) カップ部を有する衣類
JP3196534U (ja) 車イス上で着付け可能な着物
JP3218364U (ja) 二部式着物
CN2922519Y (zh) 能够调整腰围尺寸的服装
JP6557400B1 (ja) ボトムス
JP3168790U (ja) 着物風エプロン
JP3206851U (ja) 仕立衿および該仕立衿付きの対丈着物
JP3120734U (ja) 簡単かつ綺麗に着付けのできる着物
JP3207055U (ja) 衣服
JP3726186B2 (ja) 和服
JP3221857U (ja) 和装服
JP2007077553A (ja) 着物
JP7457976B1 (ja) セパレート式着物
JP6606857B2 (ja) ネクタイ
JP6630421B1 (ja) 和装服
JP3235984U (ja) 和服
JP3108390U (ja) 介護用衣類

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20180216

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180803

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180927

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6412219

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250