A.第1実施形態:
図1(A)は、内燃機関の一例の説明図である。図中には、内燃機関700の複数(例えば、4個)の燃焼室(シリンダとも呼ばれる)のうちの1個の燃焼室790の概略断面図が示されている。内燃機関700は、エンジンヘッド710と、シリンダブロック720と、ピストン750と、点火プラグ100と、を含んでいる。ピストン750は、図示しないコネクティングロッドに連結され、コネクティングロッドは、図示しないクランクシャフトに連結されている。
シリンダブロック720は、燃焼室790のうちの一部(略円筒状の空間)を形成するシリンダ壁729を有している。シリンダブロック720の一方向側(図1(A)の上側)には、エンジンヘッド710が固定されている。エンジンヘッド710は、燃焼室790の端部を形成する内壁719と、燃焼室790に連通する吸気ポート712を形成する第1壁711と、吸気ポート712を開閉可能な吸気バルブ730と、燃焼室790に連通する排気ポート714を形成する第2壁713と、排気ポート714を開閉可能な排気バルブ740と、点火プラグ100を取り付けるための取付孔718と、を有している。ピストン750は、シリンダ壁729によって形成される空間内を、往復動する。ピストン750のエンジンヘッド710側の面759と、シリンダブロック720のシリンダ壁729と、エンジンヘッド710の内壁719と、に囲まれる空間が、燃焼室790に相当する。点火プラグ100の中心電極20と接地電極30とは、燃焼室790に露出している。図中の中心軸CLは、点火プラグ100の中心軸CLである(軸線CLとも呼ぶ)。
図1(B)は、点火プラグ100と吸気バルブ730と排気バルブ740との配置例を示す投影図である。この投影図は、点火プラグ100の軸線CLに垂直な投影面上に要素100、730、740を軸線CLに平行に投影することによって得られる投影図である。図示された要素100、730、740は、1個の燃焼室790(図1(A))の要素である。図中では、バルブ730、740を表す領域のそれぞれに、ハッチングが付されている。
図1(B)に示すように、本実施形態の内燃機関700の1個の燃焼室790には、1個の点火プラグ100と、2個の吸気バルブ730と、2個の排気バルブ740と、が設けられている。投影図中のバルブ730、740は、いずれも、閉じた状態のバルブ730、740を示している。また、投影図中のバルブ730、740は、いずれも、燃焼室790内に露出する部分を示している。以下、2個の吸気バルブ730を区別する場合には、符号「730」の末尾に識別子(ここでは、「a」または「b」)を付加する。2個の排気バルブ740についても、同様である。
図中には、バルブ730a、730b、740a、740bのそれぞれの中心位置C3a、C3b、C4a、C4bが、示されている。これらの中心位置C3a、C3b、C4a、C4bは、それぞれ、図1(B)に示す投影面上におけるバルブ730a、730b、740a、740bを表す領域の重心位置を示している。例えば、第1中心位置C3aは、第1吸気バルブ730aを表す領域の重心位置である。なお、領域の重心は、領域内に質量が均等に分布していると仮定した場合の重心の位置である。
図中には、2個の重心位置C3、C4が示されている。吸気重心位置C3は、2個の吸気バルブ730a、730bのそれぞれの中心位置C3a、C3bの重心位置である。排気重心位置C4は、2個の排気バルブ740a、740bのそれぞれの中心位置C4a、C4bの重心位置である。なお、複数の中心位置の重心位置は、各中心位置に同じ質量が配置されていると仮定した場合の重心の位置である。
図中には、バルブ配置方向Dvと、第1方向D1と、が示されている。バルブ配置方向Dvは、吸気重心位置C3から排気重心位置C4へ向かう方向である。第1方向D1は、軸線CLからバルブ配置方向Dvに向かう方向である。図1(B)の実施形態では、点火プラグ100は、2個の吸気バルブ730a、730bと、2個の排気バルブ740a、740bと、の間に取り付けられる。この場合、図1(B)の投影図上において、点火プラグ100の点火時に電極20、30の近傍を流れるガスの移動方向は、第1方向D1とおおよそ同じであり得る。なお、実際のガスの流れる方向は、軸線CLに対して斜めの方向であり得る。
次に、点火プラグ100の構成について、説明する。図2は、一実施形態としての点火プラグ100の断面図である。図中には、点火プラグ100の中心軸CL(「軸線CL」とも呼ぶ)と、点火プラグ100の中心軸CLを含む平らな断面と、が示されている。以下、中心軸CLに平行な方向を「軸線CLの方向」、または、単に「軸線方向」または「前後方向」とも呼ぶ。軸線CLを中心とする円の径方向を「径方向」とも呼ぶ。径方向は、軸線CLに垂直な方向である。軸線CLを中心とする円の円周方向を、「周方向」とも呼ぶ。中心軸CLに平行な方向のうち、図2における下方向を先端方向Df、または、前方向Dfと呼び、上方向を後端方向Dfr、または、後方向Dfrとも呼ぶ。先端方向Dfは、後述する端子金具40から中心電極20に向かう方向である。また、図2における先端方向Df側を点火プラグ100の先端側と呼び、図2における後端方向Dfr側を点火プラグ100の後端側と呼ぶ。
点火プラグ100は、軸線CLに沿って延びる貫通孔12(軸孔12とも呼ぶ)を有する筒状の絶縁体10と、貫通孔12の先端側で保持される中心電極20と、貫通孔12の後端側で保持される端子金具40と、貫通孔12内で中心電極20と端子金具40との間に配置された抵抗体73と、中心電極20と抵抗体73とに接触してこれらの部材20、73を電気的に接続する導電性の第1シール部72と、抵抗体73と端子金具40とに接触してこれらの部材73、40を電気的に接続する導電性の第2シール部74と、絶縁体10の外周側に固定された筒状の主体金具50と、一端が主体金具50の先端面55に接合されるとともに他端が中心電極20とギャップgを介して対向するように配置された接地電極30と、を有している。なお、本実施形態では、先端面55は、軸線CLに垂直な平らな面である。
絶縁体10の軸線方向の略中央には、外径が最も大きな大径部14が形成されている。大径部14より後端側には、後端側胴部13が形成されている。大径部14よりも先端側には、後端側胴部13よりも外径の小さな先端側胴部15が形成されている。先端側胴部15よりもさらに先端側には、縮外径部16と、脚部19とが、先端側に向かってこの順に形成されている。縮外径部16の外径は、前方向Dfに向かって、徐々に小さくなっている。縮外径部16の近傍(図2の例では、先端側胴部15)には、前方向Dfに向かって内径が徐々に小さくなる縮内径部11が形成されている。絶縁体10は、機械的強度と、熱的強度と、電気的強度とを考慮して形成されることが好ましく、例えば、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。
中心電極20は、金属製の部材であり、絶縁体10の貫通孔12内の前方向Df側の端部に配置されている。中心電極20は、略円柱状の棒部28と、棒部28の先端に接合(例えば、レーザ溶接)された第1チップ29と、を有している。棒部28は、後方向Dfr側の部分である頭部24と、頭部24の前方向Df側に接続された軸部27と、を有している。軸部27は、軸線CLに平行に前方向Dfに向かって延びている。頭部24のうちの前方向Df側の部分は、軸部27の外径よりも大きな外径を有する鍔部23を形成している。鍔部23の前方向Df側の面は、絶縁体10の縮内径部11によって、支持されている。軸部27は、鍔部23の前方向Df側に接続されている。第1チップ29は、軸部27の先端に接合されている。棒部28は、第1チップ29が接合される基部の例である。
棒部28は、外層21と、外層21の内周側に配置された芯部22と、を有している。外層21は、芯部22よりも耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケルを主成分として含む合金)で形成されている。ここで、主成分は、含有率(重量パーセント(wt%))が最も高い成分を意味している。芯部22は、外層21よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅、銅を主成分として含む合金、等)で形成されている。第1チップ29は、軸部27よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属)を用いて形成されている。中心電極20のうち第1チップ29を含む前方向Df側の一部分は、絶縁体10の軸孔12から前方向Df側に露出している。中心電極20のうち後方向Dfr側の部分20tは、軸孔12内に配置されている。このように、中心電極20は、絶縁体10の先端部10tに配置される部分20tを含むように、絶縁体10の軸孔12内に配置されている。絶縁体10の先端部10tは、絶縁体10のうちの先端を含む部分である。なお、第1チップ29は、省略されてよい。また、芯部22は、省略されてもよい。いずれの場合も、中心電極のうちの前方向Df側の少なくとも一部が、絶縁体10の先端よりも前方向Df側に位置していることが好ましい。
端子金具40は、軸線CLに平行に延びる棒状の部材である。端子金具40は、導電性材料を用いて形成されている(例えば、鉄を主成分として含む金属)。端子金具40は、前方向Dfに向かって順番で並ぶ、キャップ装着部49と、鍔部48と、軸部41と、を有している。軸部41は、絶縁体10の軸孔12の後方向Dfr側の部分に挿入されている。キャップ装着部49は、絶縁体10の後端側で、軸孔12の外に露出している。
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、電気的なノイズを抑制するための抵抗体73が配置されている。抵抗体73は、導電性材料(例えば、ガラスと炭素粒子とセラミック粒子との混合物)を用いて形成されている。抵抗体73と中心電極20との間には、第1シール部72が配置され、抵抗体73と端子金具40との間には、第2シール部74が配置されている。これらのシール部72、74は、導電性材料(例えば、金属粒子と抵抗体73の材料に含まれるものと同じガラスとの混合物)を用いて形成されている。中心電極20は、第1シール部72、抵抗体73、第2シール部74によって、端子金具40に電気的に接続されている。
主体金具50は、軸線CLに沿って延びる貫通孔59を有する筒状の部材である。本実施形態では、主体金具50の中心軸は、軸線CLと同じである。主体金具50の貫通孔59には、絶縁体10が挿入され、主体金具50は、絶縁体10の外周に固定されている。主体金具50は、導電材料(例えば、主成分である鉄を含む炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。絶縁体10の前方向Df側の一部は、貫通孔59の外に露出している。また、絶縁体10の後方向Dfr側の一部は、貫通孔59の外に露出している。
主体金具50は、工具係合部51と、先端側胴部52と、を有している。工具係合部51は、点火プラグ用のレンチ(図示せず)が嵌合する部分である。先端側胴部52は、主体金具50の先端面55を含む部分である。先端側胴部52の外周面には、内燃機関の取付孔(例えば、図1の内燃機関700の取付孔718)に螺合するためのネジ部57が形成されている。ネジ部57は、軸線CLの方向に延びる雄ねじが形成された部分である。
主体金具50の工具係合部51と先端側胴部52との間の外周面には、径方向外側に張り出したフランジ状の中胴部54が形成されている。中胴部54の外径は、ネジ部57の最大外径(すなわち、ネジ山の頂の外径)よりも、大きい。中胴部54の前方向Df側の面54fは、座面であり、内燃機関のうちの取付孔を形成する部分である取り付け部(例えば、エンジンヘッド)とのシールを形成する(座面54fと呼ぶ)。
先端側胴部52のネジ部57と中胴部54の座面54fとの間には、環状のガスケット90が配置されている。ガスケット90は、点火プラグ100が内燃機関に取り付けられた際に押し潰されて変形し、主体金具50の座面54fと、図示しない内燃機関の取り付け部(例えば、エンジンヘッド)と、の隙間を封止する。なお、ガスケット90が省略されてもよい。この場合、主体金具50の座面54fは、直接に内燃機関の取り付け部に接触することによって、座面54fと、内燃機関の取り付け部と、の隙間を封止する。
主体金具50の先端側胴部52には、径方向の内側に向かって張り出した張り出し部56が形成されている。張り出し部56は、少なくとも張り出し部56の後方向Dfr側の部分の内径と比べて内径が小さい部分である。本実施形態では、張り出し部56の後方向Dfr側の面56r(後面56rとも呼ぶ)では、内径が、前方向Dfに向かって、徐々に小さくなる。張り出し部56の後面56rと、絶縁体10の縮外径部16と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。本実施形態では、先端側パッキン8は、例えば、鉄製の板状リングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。張り出し部56は、パッキン8を介して間接的に、絶縁体10の縮外径部16を前方向Df側から支持している。なお、パッキン8は、省略されてもよい。この場合、張り出し部56(具体的には、張り出し部56の後面56r)は、絶縁体10の縮外径部16に接触してよい。すなわち、張り出し部56は、直接的に、絶縁体10を支持してよい。
主体金具50の工具係合部51より後端側には、主体金具50の後端を形成するとともに工具係合部51と比べて薄肉の部分である後端部53が形成されている。また、中胴部54と工具係合部51との間には、中胴部54と工具係合部51とを接続する接続部58が形成されている。接続部58は、中胴部54と工具係合部51と比べて薄肉の部分である。主体金具50の工具係合部51から後端部53にかけての内周面と、絶縁体10の後端側胴部13の外周面との間には、円環状のリング部材61、62が挿入されている。さらに、これらのリング部材61、62の間には、タルク70の粉末が充填されている。点火プラグ100の製造工程において、後端部53が内側に折り曲げられて加締められると、接続部58が圧縮力の付加に伴って外向きに変形し、この結果、主体金具50と絶縁体10とが固定される。タルク70は、この加締め工程の際に圧縮され、主体金具50と絶縁体10との間の気密性が高められる。また、パッキン8は、絶縁体10の縮外径部16と主体金具50の張り出し部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。
接地電極30は、金属製の部材であり、棒状の本体部37を有している。本体部37の端部33(基端部33とも呼ぶ)は、主体金具50の先端面55に接合されている(例えば、抵抗溶接)。本体部37は、主体金具50に接合された基端部33から先端方向Dfに向かって延び、中心軸CLに向かって曲がって、先端部34に至る。接地電極30の先端部34と、中心電極20の第1チップ29とは、放電ギャップgを形成している。すなわち、接地電極30の先端部34は、中心電極20の第1チップ29よりも前方向Df側に配置されており、第1チップ29と放電ギャップgを介して対向している。なお、本体部37の先端部34には、第1チップ29と同様の第2チップが接合されてもよい。そして、第1チップ29と第2チップとが、放電ギャップgを形成してもよい。
本体部37は、外層31と、外層31の内周側に配置された内層32と、を有している。外層31は、内層32よりも耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケルを主成分として含む合金)で形成されている。内層32は、外層31よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅、銅を主成分として含む合金、等)で形成されている。なお、内層32は、省略されてもよい。
図3(A)〜図3(C)は、点火プラグ100の電極20、30を含む一部分の概略図である。図3(A)は、第1方向D1に垂直な投影面上に点火プラグ100を投影して得られる投影図であり、図3(B)は、後述する第2方向D2に垂直な投影面上に点火プラグ100を投影して得られる投影図であり、図3(C)は、後端方向Dfrに垂直な投影面上に点火プラグ100を投影して得られる投影図である。
図中には、中心電極20の放電面20sと、接地電極30の放電面30sとが、示されている。本実施形態では、中心電極20の放電面20sは、チップ29の前方向Df側の面であり、前方向Df側を向いている。また、接地電極30の放電面30sは、接地電極30の端34sを含む先端部34の後方向Dfr側の面であり、後方向Dfr側を向いている。これらの放電面20s、30sが、放電ギャップgを形成している。接地電極30の放電面30sは、中心電極20の放電面20sよりも、前方向Df側に配置されている。
図3(A)〜図3(C)には、第1方向D1が示されている。図1(B)で説明したように、電極20、30の近傍において、ガスは、第1方向D1に流れ得る。接地電極30は、放電ギャップgの近傍におけるガスの流れに影響を与え得る。従って、燃焼室790に対する接地電極30の周方向の位置(すなわち、軸線CLを中心とする点火プラグ100の周方向の向き)に応じて、内燃機関の性能が変化し得る。内燃機関700によっては、点火プラグ100の好ましい周方向の向きが予め決められている場合がある。図3(A)〜図3(C)の第1方向D1は、点火プラグ100の周方向の向きが好ましい向きに調整された場合の、点火プラグ100に対する第1方向D1の例を示している。本実施形態では、図3(C)に示すように、点火プラグ100の周方向の向きは、接地電極30の基端部33が、軸線CLを基準として、第1方向D1に垂直な方向側に位置するように、調整される。これにより、接地電極30が、ガスの流れを妨げることが、抑制される。
なお、燃焼室790(すなわち、内燃機関700)に対する点火プラグ100の周方向の適切な向きを特定する方法は、任意の方法であってよい。例えば、内燃機関700のエンジンヘッド710にマークが設けられてよい。そして、点火プラグ100に設けられたマークがエンジンヘッド710のマークの方向を向く場合に、点火プラグ100の周方向の向きが適切であることとしてよい。点火プラグ100のマークは、例えば、絶縁体10の後端側胴部13に印刷されたマークであってよく、また、主体金具50に設けられた刻印であってもよい。
図3(C)には、接地電極30の基端部33のうちの主体金具50の先端面55に接合された端33sが、ハッチングで示されている。図示された端33sは、接地電極30のうち、主体金具50の先端面55に接合された端面を示している。図中の中心位置33cは、端33sの中心の位置である。端33sの中心位置33cは、図3(C)に示すような軸線CLに垂直な投影面上における端33s(ここでは、端面)を表す領域に質量が均等に分布していると仮定した場合の重心である。図3(B)に示す第2方向D2は、この中心位置33cから、軸線CLに垂直に、軸線CLに向かう方向である。従って、図3(B)の投影面上では、中心位置33cは、軸線CLに重なっている。
本実施形態では、接地電極30は、主体金具50の先端面55に、溶接(例えば、抵抗溶接)によって、接合されている。接地電極30と主体金具50との間には、接地電極30と主体金具50とを接合する接合部が形成され得る(図示省略)。接合部は、溶接時に接地電極30と主体金具50との溶融した部分が冷えて固まった部分である(溶融部とも呼ぶ)。このような接合部は、接地電極30と主体金具50とが一体化した部分である。また、接合部は、接地電極30と主体金具50とのそれぞれの成分を含んでいる。接合部の形状は、複数の点火プラグ100の間で、個々に異なり得る。接地電極30の端33sは、接地電極30から接合部を除いた残りの部分のうち、主体金具50に直接的または接合部を介して間接的に接合された面を示している。
図3(B)に示す投影面上において、投影された接地電極30は、端33sから、軸線CLに対して斜めに交差する第3方向D3に向かって、延びている。これにより、図3(B)、図3(C)に示すように、接地電極30の先端部34は、中心電極20の放電面20sを基準として、軸線CLに垂直な特定の方向である第4方向D4に偏った位置(すなわち、軸線CLから第4方向D4側にずれた位置)に、配置されている。図3(B)の実施形態では、第4方向D4は、第1方向D1の反対の方向である。
図3(B)には、さらに、放電ギャップgでの放電によって生じた火炎が拡がる方向D9の例が示されている。接地電極30の先端部34は、火炎に接触することによって、火炎の拡がりを抑制し得る。上述したように、本実施形態では、接地電極30の先端部34は、中心電極20の放電面20sよりも、第4方向D4にずれた位置に配置されている。従って、接地電極30の先端部34の反対側(ここでは、第1方向D1側)では、放電ギャップgで生じた火炎は、前方向Df側に向かって(すなわち、燃焼室790(図1(A))の中央部分に向かって)、容易に拡がることができる。このように接地電極30による消炎作用が抑制される。この結果、着火性が向上する。
特に、図1(B)で説明したように、第1方向D1は、吸気重心位置C3から排気重心位置C4へ向かう方向である。図3(B)、図3(C)に示すように、接地電極30の先端部34は、軸線CLに対して、この第1方向D1とは反対の方向側にずれた位置に配置されている。燃焼室内でガスが第1方向D1に流れる場合には、火花放電、ひいては、火炎は、放電ギャップgから第1方向D1側に向かって流される。ここで、接地電極30の先端部34は、中心電極20の放電面20sよりも、第1方向D1とは反対の第4方向D4側にずれた位置に配置されている。従って、火炎は、接地電極30の先端部34の第1方向D1側において、前方向Dfに向かって(すなわち、燃焼室790(図1(A))の中央部分に向かって)、容易に拡がることができる。このように接地電極30による消炎作用が抑制される。この結果、着火性が向上する。
また、図3(C)に示すように、軸線CLに垂直な投影面上に後方向Dfrに向かって点火プラグ100を投影する場合には、中心電極20の放電面20sは、接地電極30の放電面30sに対して一部が重ならない位置に配置されている。従って、火炎は、中心電極20の放電面20sの近傍から、前方向Dfに向かって(すなわち、燃焼室790(図1(A))の中央部分に向かって)、容易に拡がることができる。このように接地電極30による消炎作用が抑制される。この結果、着火性が向上する。
なお、図3(B)に示す投影面上において、接地電極30は、主体金具50の先端面55に接合された端33sから、軸線CLに対して斜めに交差する第3方向D3に向かって、延びている。仮に、この投影面上において、接地電極30が端33sから軸線CLに平行に延びる場合、先端部34を軸線CLの近傍から特定の方向側(ここでは、第4方向D4側)にずれた位置に移動させるために、接地電極30が大きく変形される(例えば、接地電極30は、捻られる)。本実施形態では、接地電極30は、端33sから、軸線CLに傾斜する第3方向D3に向かって延びているので、小さい変形量で、先端部34の位置(すなわち、放電面30sの位置、ひいては、放電ギャップgの距離)を、調整できる。
また、本実施形態では、図3(A)に示すように、接地電極30は、端33sから、軸線CLに近づく方向に向かって、延びている。従って、先端部34の位置(ひいては、放電ギャップgの距離)を調整するための接地電極30の変形量は、更に、小さくなり得る。ただし、図3(A)の投影図上において、接地電極30のうちの端33sを含む一部分は、端33sから、軸線CLに平行に前方向Dfに向かって、延びてもよい。
このような接地電極30は、以下に説明するように、容易に製造できる。図3(D)は、接地電極30の製造に利用可能な棒部材320の斜視図である。棒部材320は、直方体の部材310から両方の端部311、312を切り落とすことによって得られる部材である。棒部材320の2つの端面321、322は、端部311、312の切り落としによって形成された端面である。図中の4つの側面324〜327は、2つの端面321、322の間の側面である。これらの側面324〜327は、この順番に接続されている。側面324〜327は、それぞれ、おおよそ平らである。互いに接続された2つの側面のなす角度は、おおよそ90度である。端面321、322のそれぞれは、4つの側面324〜327のそれぞれに対して、斜めに傾斜している。従って、棒部材320の1つの端面321(図中では、ハッチングが付されている)を、主体金具50の先端面55上に重ねる場合に、棒部材320は、端面321から、先端面55に対して斜めに傾斜する方向に向かって、延びる。図3(A)、図3(C)に示すように、1つの側面326が軸線CL側を向いた状態で、棒部材320は、端面321が主体金具50の先端面55上に重なるように、配置され得る。このような配置で、棒部材320は、主体金具50の先端面55に、接合される。そして、軸線CL側を向いた平らな側面326上の仮想直線323(図3(D))を基準に、棒部材320のうちの仮想直線323よりも前方向Df側の部分が軸線CLに近づくように、曲げられる。例えば、直線状の縁を形成する治具が準備され、治具の縁が側面326上の仮想直線323に接触した状態で、棒部材320が曲げられる。
このように、棒部材320の端面321が、棒部材320の延びる方向に対して斜めに傾斜するように形成され、この端面321が、主体金具50の先端面55に接合される。これにより、図3(B)の投影図において、軸線CLに対して斜めに交差する第3方向D3に向かって延びる接地電極30を、容易に形成できる。なお、点火プラグ100の他の部分の製造方法は、公知の任意の方法であってよい。
さらに、矩形断面の棒状の部材310が用いられるので、主体金具50に接合された場合に軸線CL側を向く側面が平らな側面(ここでは、側面326)であるような棒部材320を、容易に、形成できる。そして、棒部材320の前方向Df側の部分34が中心電極20に近づくように棒部材320を曲げる際には、軸線CL側を向く平らな側面(ここでは、側面326)上の仮想直線を基準として、棒部材320を曲げればよい。このように、棒部材320を捻らずに済むので、先端部34の位置(ひいては、放電面30sの位置)の製造誤差(個体差バラツキ)を小さくできる。
なお、図3(A)の投影図においては、図3(D)で示す側面324及び側面325が視認される。図3(B)の投影図においては、図3(D)で示す側面324及び側面327が視認される。図3(C)の投影図においては、図3(D)で示す側面324、側面327及び端面322が視認される。
B.第2実施形態:
図4(A)〜図4(C)は、点火プラグの別の実施形態の概略図である。図4(A)〜図4(C)は、図3(A)〜図3(C)と同じ投影面上の投影図を、それぞれ示している。第1実施形態との差異は、本実施形態では、図4(C)の投影図において、中心電極20の放電面20sの全体が、接地電極30aの放電面30asに対して重ならない位置に配置されるように、接地電極30aが構成されている点だけである。本実施形態の点火プラグ100aのうちの接地電極30a以外の要素の構成は、第1実施形態の点火プラグ100の対応する要素の構成と、同じである。(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。
すなわち、図4(A)の投影図においては、図3(D)で示す側面324及び側面325が視認される。図4(B)の投影図においては、図3(D)で示す側面324及び側面327が視認される。図4(C)の投影図においては、図3(D)で示す側面324、側面327及び端面322が視認される。
図4(A)〜図4(C)に示すように、第1実施形態と同様に、接地電極30aの基端部33aの端33asが、主体金具50の先端面55に接合されている。中心位置33acは、端33asの中心の位置である。中心位置33acは、第1実施形態の中心位置33cと同様に、特定され得る。接地電極30aの反対側の端34asを含む先端部34aは、中心電極20の放電面20sよりも前方向Df側に配置されている。そして、中心電極20の放電面20sと、接地電極30aの放電面30asとが、放電ギャップgを形成している。接地電極30aの放電面30asは、先端部34aの後方向Dfr側の面である。
図4(B)に示す投影面上において、投影された接地電極30aは、端33asから、軸線CLに対して斜めに交差する第3方向D3aに向かって、延びている。この第3方向D3aは、図3(B)の第3方向D3よりも、第4方向D4側に向かって傾斜している。これにより、接地電極30aの先端部34aは、図3(B)の先端部34よりも、第4方向D4側に位置している。図4(C)に示す投影面上において、中心電極20の放電面20sの全体は、接地電極30aの放電面30as(ひいては、接地電極30a)に重ならない位置に配置されている。以上により、放電ギャップgで生じた火炎は、中心電極20の放電面20sの近傍から、前方向Dfに向かって、容易に拡がることができる。このように接地電極30aによる消炎作用が抑制される。この結果、着火性が向上する。
本実施形態の接地電極30aは、第1実施形態の接地電極30と同じ方法で、形成され得る。例えば、図3(D)で説明した棒部材320を用いる場合に、棒部材320の延びる方向に対する端面321の傾きを大きくすることによって、本実施形態の接地電極30aを形成できる。
また、本実施形態の点火プラグ100aの構成は、接地電極30aの構成を除いて、第1実施形態の点火プラグ100の構成と同じである。従って、本実施形態の点火プラグ100aは、第1実施形態の点火プラグ100と同様の種々の利点を実現できる。
C.第3実施形態:
図5(A)〜図5(C)は、点火プラグの別の実施形態の概略図である。図5(A)〜図5(C)は、図3(A)〜図3(C)と同じ投影面上の投影図を、それぞれ示している。第1実施形態との差異は、本実施形態では、図5(B)の投影図において、中心電極20bの放電面20bsが、軸線CLを挟んで接地電極30の延びる方向D3側とは反対側にずれた位置に配置されている点だけである。本実施形態の点火プラグ100bのうちの中心電極20b以外の要素の構成は、第1実施形態の点火プラグ100の対応する要素の構成と、同じである。(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。
すなわち、図5(A)の投影図においては、図3(D)で示す側面324及び側面325が視認される。図5(B)の投影図においては、図3(D)で示す側面324及び側面327が視認される。図5(C)の投影図においては、図3(D)で示す側面324、側面327及び端面322が視認される。
図5(B)の投影図において、接地電極30の先端部34(すなわち放電面30s)は、図3(A)〜図3(C)の実施形態と同様に、軸線CLを基準として、第4方向D4にずれた位置に配置されている。さらに、本実施形態では、中心電極20bの放電面20bsは、軸線CLを基準として、第1方向D1にずれた位置に配置されている。このように、接地電極30の放電面30sと中心電極20bの放電面20bsとは、軸線CLを挟んで、互いに反対側にずれた位置に配置されている。これにより、放電ギャップgで生じた火炎は、前方向Df側に向かって、容易に拡がることができる。このように接地電極30による消炎作用が抑制される。この結果、着火性が向上する。
なお、このように、軸線CLを基準として特定の方向にずれた放電面20bsを形成する中心電極20bは、種々の方法で製造され得る。本実施形態では、図5(B)、図5(C)に示すように、棒部28の前方向Df側の面上における軸線CLからずれた位置に、チップ29bが接合される。これにより、チップ29bの前方向Df側の面である放電面20bsは、軸線CLからずれた位置に配置される。この方法に代えて、他の方法が採用されてもよい。例えば、絶縁体の軸孔のうちの中心電極が挿入される部分が、軸線CLからずれた位置に形成され、そして、中心電極の全体が、軸線CLからずれた位置に配置されてもよい。
また、本実施形態の点火プラグ100bの構成は、中心電極20bの構成を除いて、第1実施形態の点火プラグ100の構成と同じである。従って、本実施形態の点火プラグ100bは、第1実施形態の点火プラグ100と同様の種々の利点を実現できる。
D.第4実施形態:
図6(A)〜図6(C)は、点火プラグの別の実施形態の概略図である。図6(A)〜図6(C)は、図3(A)〜図3(C)と同じ投影面上の投影図を、それぞれ示している。第1実施形態との差異は、本実施形態では、接地電極30が、主体金具50の先端面55上における、図3(C)の接地電極30よりも第4方向D4側の位置に接合されている点だけである。すなわち、図3(C)の投影面上において、接地電極30の端33sの中心位置33cの第1方向D1に平行な方向の位置は、中心軸CLよりも、第1方向D1の反対方向側(ここでは、ガスの流れの上流側)である。本実施形態の点火プラグ100cのうちの接地電極30の接合位置以外の構成は、第1実施形態の点火プラグ100の対応する構成と、同じである。(対応する要素と同じ要素には、同じ符号を付して、説明を省略する)。
すなわち、図6(A)の投影図においては、図3(D)で示す側面324及び側面325が視認される。図6(B)の投影図においては、図3(D)で示す側面324及び側面327が視認される。図6(C)の投影図においては、図3(D)で示す側面324、側面327及び端面322が視認される。
図6(C)に示すように、接地電極30は、図3(C)の接地電極30よりも、第1方向D1の反対の第4方向D4側に位置している。従って、接地電極30の基端部33の端33sの中心位置33cから、軸線CLに垂直に、軸線CLに向かう方向D2は、第1方向D1に対して、垂直ではなく、斜めに傾斜している。この場合も、図6(B)に示すように、第2方向D2に垂直な投影面上においては、投影された接地電極30は、端33sから、軸線CLに対して斜めに交差する第3方向D3cに向かって、延びている。接地電極30の先端部34は、中心電極20の放電面20sを基準として、軸線CLに垂直な特定の方向D5にずれた位置に配置されている(第5方向D5と呼ぶ)。従って、接地電極30の先端部34の反対側(ここでは、第5方向D5に反対の方向側)では、放電ギャップgで生じた火炎は、前方向Df側に向かって、容易に拡がることができる。このように接地電極30による消炎作用が抑制される。この結果、着火性が向上する。
また、図6(C)に示すように、第5方向D5は、第4方向D4とおおよそ同じである。すなわち、第5方向D5は、軸線CLから、ガスの流れる方向D1側とは反対側に向かう方向である。図6(D)は、第1方向D1に平行、かつ、中心軸CLに平行な投影面上に点火プラグ100cを投影して得られる投影図である。図示するように、接地電極30の先端部34は、軸線CLに対して、第1方向D1とは反対の方向側にずれた位置に配置されている。この結果、本実施形態においても、図3(B)の実施形態と同様に、火炎は、接地電極30の先端部34の第1方向D1側において、前方向Dfに向かって容易に拡がることができる。このように接地電極30による消炎作用が抑制される。この結果、着火性が向上する。
また、図6(D)の投影面上において、接地電極30の端33sの中心位置33cは、軸線CLを挟む両側のうち、第1方向D1とは反対の第4方向D4側にずれた位置に、配置されている。すなわち、接地電極30の全体が、第4方向D4側にずれた位置に、配置されている。従って、接地電極30の第1方向D1側において、火炎は、接地電極30に遮られずに、種々の方向に、容易に拡がることができる。この結果、着火性を、更に、向上できる。特に、ガスが第1方向D1に流れる場合には、火炎は、ガスの流れによって第1方向D1側に流される。この場合、流された火炎は、接地電極30の第1方向D1側において、種々の方向に、容易に拡がることができる。この結果、着火性を、更に、向上できる。
また、図6(C)に示すように、中心電極20の放電面20sの全体は、接地電極30aの放電面30s(ひいては、接地電極30)に重ならない位置に配置されている。従って、図4(C)の実施形態と同様に、放電ギャップgで生じた火炎は、中心電極20の放電面20sの近傍から、前方向Dfに向かって、容易に拡がることができる。このように接地電極30による消炎作用が抑制される。この結果、着火性が向上する。
また、本実施形態の点火プラグ100cの構成は、接地電極30の接合位置を除いて、第1実施形態の点火プラグ100の構成と同じである。従って、本実施形態の点火プラグ100cは、第1実施形態の点火プラグ100と同様の種々の利点を実現できる。
E.変形例:
(1)点火プラグの構成は、上記各実施形態の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。ここで、棒状の接地電極の両端のうち主体金具50の先端面55に接合された第1端の中心の位置から軸線CLに垂直に軸線CLに向かう方向を第1投影方向と呼ぶ。例えば、図3(B)の接地電極30の端33sの中心位置33cから軸線CLに垂直に軸線CLに向かう第2方向D2は、第1投影方向の例である。そして、第1投影方向に垂直な第1投影面上に点火プラグを投影する。この第1投影面上において、中心電極の放電面と、接地電極の放電面とは、それぞれ、種々の位置に配置されてよい。例えば、中心電極の放電面は、図3(B)、図4(B)、図6(B)の実施形態のように、軸線CLに重なる位置に配置されてよい。また、図5(B)の実施形態のように、中心電極の放電面の全体が、軸線CLから離れた位置に配置されてよい。また、図3(B)、図4(B)、図5(B)、図6(B)の実施形態のように、接地電極の放電面の全体が、軸線CLから離れた位置に配置されてもよい。また、図示を省略するが、接地電極の放電面は、軸線CLに重なる位置に配置されてよい。
なお、接地電極の放電面と、中心電極の放電面とは、例えば、以下のように特定される。空気が充填されたチャンバー内に点火プラグを配置し、高電圧の印加によって接地電極と中心電極との間で火花放電を発生させる。ここで、接地電極の外面のうち火花放電が生じ得る部分が、接地電極の放電面に対応し、中心電極の外面のうち火花放電が生じ得る部分が、中心電極の放電面に対応する。このように、ガス流の無い環境下において、放電面が特定されてよい。
いずれの場合も、第1投影面上において、放電面のうちの軸線CLの一方側の部分の大きさ(軸線CLに垂直な方向の長さ)が、放電面のうちの軸線CLの他方側の部分大きさよりも大きい場合、放電面は、軸線CLの一方側にずれた位置に配置されている、と言える。例えば、図5(B)の実施形態では、中心電極20bの放電面20bsは、軸線CLの左側にずれた位置に配置されている。また、接地電極30の放電面30sは、軸線CLの右側にずれた位置に配置されている。
そして、第1投影面上において、中心電極の放電面は、軸線CLを挟んで(すなわち、軸線CLを基準として)接地電極の延長方向側とは反対側にずれた位置に配置されていることが好ましい。例えば、図5(B)の実施形態では、中心電極20bの放電面20bsは、軸線CLを挟んで接地電極30の延長方向D3側(すなわち、軸線CLを基準として、軸線CLの右側)とは反対の軸線CLの左側にずれた位置に配置されている。このような構成によれば、放電ギャップで生じた火炎は、前方向Df側に向かって、容易に拡がることができる。このように接地電極による消炎作用が抑制される。この結果、着火性が向上する。
また、第1投影面上において、接地電極の放電面は、軸線CLを基準として、接地電極の延長方向側にずれた位置に配置されていることが好ましい。例えば、図3(B)、図4(B)、図5(B)、図6(B)の各実施形態では、接地電極30、30aの放電面30s、30asは、軸線CLを基準として、接地電極30、30aの延長方向D3、D3a、D3c側(ここでは、軸線CLの右側)にずれた位置に配置されている。このような構成によれば、点火プラグの製造時に接地電極を形成する部材を大きく変形させずに、接地電極の放電面を、適切な位置に配置できる。このように、小さい変形量で、接地電極の放電面の位置(ひいては、放電ギャップの距離)を調整できる。
(2)接地電極の構成は、上記の構成に代えて、他の種々の構成であってよい。例えば、棒状の接地電極の断面形状は、矩形に限らず、他の任意の形状であってよい。例えば、円柱状の棒部材を用いて、接地電極が形成されてもよい。ここで、円柱状の棒部材の側面の一部分を平らな面を形成するように加工してよい(例えば、切削や鍛造など)。そして、側面のうちの平らな部分が、放電面として利用されてよい。また、接地電極のうちの放電面を形成する部分(例えば、図3(A)の実施形態の接地電極30の先端部34)の形状は、任意の形状であってよい。例えば、先端部34の形状は、端34sに向かって徐々に細くなるテーパ状であってよい。
また、接地電極は、放電ギャップgを形成するチップを含んでもよい。例えば、図3〜図6の実施形態の接地電極30、30aの先端部34、34aの後方向Dfr側の面に、チップが接合されてよい(例えば、レーザ溶接、抵抗溶接など)。そして、接地電極のチップによって形成される放電面と、中心電極の放電面とが、放電ギャップgを形成してよい。この場合も、接地電極は、主体金具50の先端面55に接合された端部から、チップを含む端部まで、延びているので、接地電極の形状は棒状である、と言える。
いずれの場合も、主体金具の軸線CLに垂直な第2投影面上に、主体金具の先端側から後端側に向かって(すなわち、後方向Dfrに向かって)点火プラグを投影する場合に、中心電極の放電面は、接地電極の放電面に対して、中心電極の放電面の一部又は全部が重ならない位置に配置されていることが好ましい。このような構成によれば、接地電極による消炎作用が抑制されるので、点火プラグの着火性を向上できる。
ここで、接地電極のうちの放電面の前方向Df側に位置する部分は、放電面よりも大きくてよい。そして、主体金具50の軸線CLに垂直な第2投影面上に、後方向Dfrに向かって点火プラグを投影する場合に、中心電極の放電面のうちの少なくとも一部が、接地電極の放電面に重ならず、かつ、接地電極のうち放電面の前方向Df側の大きい部分に重なってよい。例えば、図3(A)の実施形態において、接地電極30の先端部34の後方向Dfr側の面に、放電面を形成する小さいチップが接合されてよい(図示省略)。この場合、チップによって形成される放電面の前方向Df側には、放電面よりも大きい先端部34が配置される。そして、図3(C)の投影図において、中心電極20の放電面20sが、接地電極のチップの放電面に重ならず、かつ、先端部34に重なってよい。この場合も、先端部34は、接地電極のチップよりも前方向Df側に配置されている。すなわち、後方向Dfrに向かって点火プラグを投影する場合に、接地電極のうちの中心電極の放電面に重なる部分(例えば、先端部34)は、接地電極の放電面よりも放電ギャップgから遠い位置に配置されている。従って、接地電極による消炎作用は、抑制される。
また、接地電極による消炎作用をさらに抑制するためには、主体金具50の軸線CLに垂直な第2投影面上に、後方向Dfrに向かって点火プラグを投影する場合に、中心電極の放電面の少なくとも一部が、接地電極に重ならない位置に配置されていることが好ましい。また、図4(C)の実施形態のように、中心電極の放電面の全体が、接地電極に重ならない位置に配置されていることが特に好ましい。ただし、主体金具50の軸線CLに垂直な第2投影面上に、後方向Dfrに向かって点火プラグを投影する場合に、中心電極の放電面の全体が、接地電極の放電面に重なる位置に配置されてもよい。
(3)接地電極の構成は、種々の構成であってよい。いずれの場合も、接地電極は、以下のように構成されていることが好ましい。接地電極のうちの主体金具の先端面に接合される第1端の中心の位置から、主体金具の軸線に垂直に、軸線に向かう方向である第1投影方向に垂直な第1投影面上に、点火プラグを投影する(例えば、図3(B)など)。この第1投影面上において、投影された接地電極は、第1端から、軸線に対して斜めに交差する方向である延長方向に向かって、延びていることが好ましい。例えば、図3(B)の実施形態では、接地電極30は、端33sの中心位置33cから延長方向D3に向かって、延びている。従って、第1投影面上において軸線の一方側にずれた位置に配置される放電面を形成する接地電極を、接地電極を大きく変形させずに、形成できる。例えば、主体金具50の先端面55から斜めに延びる棒状の部材を、捻らずに、内周側に向けて曲げることによって、接地電極を形成できる。この結果、放電面の位置の個体差が大きくなることが抑制される。そして、点火プラグの着火性を向上できる。
なお、第1投影面上において、接地電極のうち、軸線に対して斜めに交差する延長方向に向かって延びる部分は、主体金具の先端面に接合される第1端を含む一部分のみであってよい。また、棒状の接地電極の側面は、平らな部分を含んでよい。そして、この平らな部分側面は、点火プラグの内周側(すなわち、軸線CL側)を向いていることが好ましい。この構成によれば、図3(D)で説明したように、平らな部分側面上の仮想直線を基準に、接地電極を形成する棒部材を曲げることによって、容易に、接地電極を形成できる。この結果、接地電極の放電面の位置の製造誤差が小さくなるので、着火性を向上できる。いずれの場合も、このような接地電極は、以下のように、容易に形成できる。棒状の部材の端面を、棒状の部材の延びる方向に対して傾斜するように形成する。そして、この端面を、主体金具の先端面に接合する。これにより、棒状の部材は、主体金具の先端面に接合された端から、軸線に対して斜めに交差する延長方向に向かって延びる。そして、棒状の部材を、内周側に向けて曲げることによって、接地電極を形成できる。
(4)内燃機関の燃焼室における点火プラグの周方向の向きは、種々の方向であってよい。例えば、図3(B)、図4(B)、図5(B)、図6(B)の第1投影面上において、ガスの流れる方向は、第1方向D1とは異なる方向であってよい。接地電極が、主体金具の先端面に接合された端から、軸線に対して斜めに交差する延長方向に向かって延びる場合には、接地電極のうちの放電面を形成する部分は、軸線CLを基準として同じ方向側にずれた位置に配置される(例えば、図3(B)の実施形態では、先端部34は、軸線CLの右側にずれた位置に配置される)。火炎は、このような先端部の反対側で、接地電極に遮られずに、前方向Dfに向かって拡がることができる。従って、ガスの流れる向きに拘わらずに、着火性を向上できる。
なお、さらに着火性を向上するためには、中心電極と接地電極との配置が、ガスの流れる方向に適した配置であることが、好ましい。例えば、点火プラグの取付構造は、以下のような構造であってよい。N個(Nは1以上の整数)の吸気バルブとM個(Mは1以上の整数)の排気バルブとが設けられた燃焼室において、点火プラグは、N個の吸気バルブとM個の排気バルブとの間に取り付けられる。例えば、図1(B)の実施形態では、点火プラグ100は、2個の吸気バルブ730a、730bと、2個の排気バルブ740a、740bと、の間に取り付けられる。
そして、燃焼室に取り付けられた点火プラグと、N個の吸気バルブと、M個の排気バルブとを、点火プラグの主体金具の軸線に垂直な第2投影面上に、軸線に平行に投影する(例えば、図1(B)の投影図参照)。この第2投影面上において、N個の吸気バルブのN個のそれぞれの中心位置の重心位置から、M個の排気バルブのM個のそれぞれの中心位置の重心位置へ向かう方向を、バルブ配置方向とし、軸線からバルブ配置方向に向かう方向を、第1方向とする。1個のバルブの中心位置は、第2投影面上において、閉じた状態のバルブのうちの燃焼室内に露出する部分を示す領域の重心位置である。図1(B)の実施形態では、2個の吸気バルブ730a、730bのそれぞれの中心位置C3a、C3bの重心位置C3から、2個の排気バルブ740a、740bのそれぞれの中心位置C4a、C4bの排気重心位置C4へ向かう方向Dvが、バルブ配置方向Dvである。そして、軸線CLからバルブ配置方向Dvに向かう方向が、第1方向D1である。
点火プラグが燃焼室に取り付けられたときに、中心電極と接地電極とは、燃焼室内の所定の位置に配置される。この所定位置は、以下のような位置である。すなわち、棒状の接地電極の主体金具の先端面に接合された第1端の中心の位置から、軸線に垂直に、軸線に向かう方向である第1投影方向に垂直な第1投影面上に、主体金具と接地電極とを第1投影方向に沿って投影する(例えば、図3(B)、図4(B)、図5(B)、図6(B))。この第1投影面上において、投影された接地電極は、第1端から、軸線に対して斜めに交差する方向である延長方向に向かって、延びている。この延長方向は、第1投影面上において、軸線を挟む両側のうち、軸線からバルブ配置方向に向かう第1方向側とは反対側に向かって、延びている。例えば、図3(B)、図4(B)、図5(B)、図6(B)の実施形態では、延長方向D3、D3a、D3cは、軸線CLを挟む両側のうち、第1方向D1側とは反対側に向かって、延びている。
点火プラグの上記の取付構造が採用される場合には、第1投影面上において、接地電極は、第1方向D1側とは反対側に向かって延びる。そして、接地電極のうち放電面を形成する端部(例えば、図3(B)の先端部34)は、軸線を挟む両側のうち第1方向D1側とは反対側に、ずれた位置に配置される。また、点火プラグの電極の近傍においては、ガスは、第1方向に向かって流れ得る。従って、第1投影面上において、接地電極のうちの放電面を形成する端部は、軸線を挟む両側のうちのガスの流れる方向とは反対側に、ずれた位置に配置される。この結果、火花放電、ひいては、火炎が、ガスによって流れる場合に、火炎は、接地電極に遮られずに、前方向Df側、すなわち、燃焼室の中央部分に向かって、容易に拡がることができる。この結果、着火性が、更に、向上する。また、図3(A)、図4(A)、図5(A)、図6(A)の実施形態のように、第1方向D1を向いて点火プラグを見る場合に、接地電極の基端部(ひいては、接地電極の全体)は、中心電極20に重ならない位置に配置されていることが好ましい。これにより、ガスの流れが接地電極によって遮られることが抑制されるので、着火性を向上できる。
なお、1個の燃焼室において、吸気バルブの総数Nは、1以上の任意の数であってよく、N個の吸気バルブの配置は、種々の配置であってよい。また、1個の燃焼室において、排気バルブの総数Mは、1以上の任意の数であってよく、M個の排気バルブの配置は、種々の配置であってよい。また、内燃機関の構成は、図1(A)、図1(B)に示す構成に代えて、他の種々の構成であってよい。
(5)点火プラグの構成としては、図2に示す構成に代えて、他の構成を採用してもよい。例えば、先端側パッキン8が省略されてもよい。この場合、主体金具の張り出し部56は、直接的に、絶縁体の縮外径部16を、支持する。また、抵抗体73が省略されてもよい。絶縁体の貫通孔内の中心電極と端子金具との間に、磁性体が配置されてもよい。また、中心電極の放電面は、軸線CLに重なる位置に配置されてよい(例えば、図3(C)、図4(C)、図6(C))。また、中心電極の放電面は、軸線CLから離れた位置に配置されてもよい(例えば、図5(C))。
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。