本発明の目的は、半導体材料、例えばシリコン基板を用いた光電変換素子における高感度化、低ノイズ化、高速読み出し、低消費電力化、高解像度化、分光感度の長波長化、及び外乱光やクロストークの低減を可能にすることであり、さらにこれを用いた小型かつ高精度の光学測定装置を実現することである。
本発明の光電変換素子は、シリコン基板の側端部を受光面とする光電変換領域を有し、光電変換領域にゲルマニウムを含むシリコンゲルマニウム領域を設ける。シリコンゲルマニウム領域は、シリコン基板の厚さ方向におけるゲルマニウムの最大濃度ピークの位置がシリコン基板の中心付近に位置する構造とする。
さらに本発明に係る光電変換素子は、光電変換領域を形成する高濃度不純物領域にヒ素、アンチモン、ガリウム又はインジウムのいずれかを含む。
さらに本発明に係る光電変換素子は、シリコン基板の厚さが、好ましくは5μm以上かつ20μm以下であって、光電変換領域を取り囲む素子分離領域の下部がシリコン基板の集積回路が形成された面とは反対側の裏面側に形成された高濃度不純物層に接触する深さまで延在して形成されている。
さらに本発明に係る光電変換素子は、光電変換部領域を取り囲む素子分離領域の内部であって素子分離領域の上部から下部に向かって、モリブデン(Mo)等の原子番号が42以上の重金属材料を含む金属遮光膜、好ましくはタングステンを含む金属遮光膜が埋め込まれている。
さらに本発明に係る光電変換素子は、受光面の上部にX線の透過を制御するコリメータ層を積層した構造からなる。
本発明に係る光電変換素子は、シリコン基板の側端部を受光面とする光電変換領域を有し、好ましくはシリコン基板の厚さが5μm以上かつ20μm以下であって、光電変換領域を取り囲む素子分離領域の下部がシリコン基板の集積回路が形成された面とは反対側の裏面側まで延在して形成され、かつ光電変換領域を取り囲む素子分離領域の内部であって素子分離領域の上部から下部に向かって金属反射膜、好ましくはアルミニウム、銅、又は金のいずれかを含む金属反射膜を埋め込んだ構造とする。
さらに本発明に係る光電変換素子は、受光面の上部にマイクロレンズ又は光導波路、或いはこれらを組み合わせた光学部材を積層した構造とする。
さらに本発明に係る光電変換素子は、光学部材のシリコン基板厚さ方向の寸法が光電変換素子のシリコン基板厚さ方向の寸法よりも大きい構造とする。
さらに本発明に係る光電変換素子は、光学部材における光学中心線のシリコン基板厚さ方向における位置が、シリコン基板の表面からシリコン基板の厚さの1/2に相当する距離との間に位置するように光学部材が配置されている。
さらに本発明に係る光電変換素子は、光学部材が、シリコン基板の側端部の受光面に沿うように積層されたレンチキュラーレンズとする。
本発明に係る光電変換素子は、光電変換領域にゲルマニウムを含むシリコンゲルマニウム領域がシリコン基板面に平行な方向に沿って延在し、シリコン基板厚さ方向におけるゲルマニウムの最大濃度ピークの位置が、光学部材のシリコン基板厚さ方向における光学中心の位置が実質的に一致した構造である。
さらに本発明に係る光電変換素子は、受光面と光電変換領域との間であって、受光面から半導体基板の内部に向かって、好ましくは1μm以上かつ20μm以下の幅であって、シリコン基板の内部領域にボロンを含むp型高濃度不純物領域、又はリンを含むn型高濃度不純物領域を配置する。
さらに本発明に係る光電変換素子は、シリコン基板の二以上の側端部を受光面とする。
さらに本発明に係る光電変換素子は、平面視座上、光電変換領域の幅が受光面からシリコン基板の内部方向に向かって狭く形成されている。
さらに本発明に係る光電変換素子は、シリコン基板の内部に形成された光電変換領域の上部側及び下部側のシリコン基板上に金属反射膜、好ましくはアルミニウム、銅、又は金のいずれかを含む金属反射膜を積層した構造とする。
さらに本発明に係る光電変換素子は、受光面と相対する位置にある素子分離領域の形状が平面視座上、受光面とは非平行に形成されている。
さらに本発明に係る光電変換素子においては、画素間にある素子分離領域の形状が、X−Y平面視座上、受光面からシリコン基板の内部方向に向かって光電変換領域の幅を狭めるように形成されている。
さらに本発明に係る光電変換素子は、受光面上に開口部を有する金属反射膜、及び該開口部に入射光を導き入れる光学部材を開口部上に積層した構造とする。
本発明に係る光電変換素子は、2枚の平行かつ対向する半透明反射膜からなる波長フィルターを有する。
2枚の半透明反射膜がアルミニウム、銅、或いは金を含む金属反射膜であって、かつ2枚の半透明反射膜に挟まれた媒質がシリコン又はシリコン酸化膜からなる波長フィルターを有する光電変換素子とする。
本発明に係る積層型光電変換素子は、二以上の上記光電変換素子をシリコン基板厚さ方向に積層した構造からなる。
本発明に係る光学測定装置は、上記光電変換素子を使用した光学測定装置であって、光電変換素子のライン状に並ぶ複数の受光窓上に複数本の光ファイバーがそれぞれ装着され、かつ該複数本の光ファイバーを束ねた光ファイバーケーブルの他端が一又は複数の二次元受光面となるように複数本の光ファイバーを並べ替えて形成した二次元受光面を有する。
さらに本発明に係る測距装置は、光学測定装置の測定タイミングに同期して発光する光源部とを有する。
さらに本発明に係る測距装置は、光ファイバーケーブルの他端が形成するライン状受光部又は二次元受光面を空間的に離れた位置に二以上有し、かつ二以上の受光面から送られてきた光情報を単一の光電変換素子において検出し読み出す構造からなる測距装置とする。
近年、光源として近赤外光(NIR)を医療分野や車載、工業用途等に活用することが検討されている。近赤外光(NIR)の波長域が「生体の窓」と呼ばれるように、他の波長域に比べ人体組織を比較的透過し易いためであり、また人間の目にダメージを与えにくいと考えられているからである。本発明により、近赤外光(NIR)に対する感度の向上、ラインセンサと同等の高速読み出しの実現、隣接する画素間におけるクロストークの解消、太陽や人工的照明光、その他の外乱光や背景光等の影響を抑制したので、例えば、測距誤差の極めて少ない高精度距離計測装置等が実現する。また、本発明の光電変換素子を用いることにより、高解像度、高速読み出し、低被ばく線量、或いは高い耐久性や信頼性等を実現した各種X線画像診断機器やX線計測装置等が実現する。
本発明の第一の実施例に係る光電変換素子100について説明する。図1(a)に、光電変換素子100の斜視図と三次元座標軸を示す。光電変換素子100の構造を説明するため、三次元座標軸を定義する。集積回路が形成されたシリコン基板面をXーY平面とし、該シリコン基板面に対し垂直方向、即ちシリコン基板1の厚さ方向をZ軸と規定する。X−Z平面に面するシリコン基板1の側面部には、入射光を検出するための受光窓5が複数配置されている。以下、受光窓5が配置されたシリコン基板1の側面部を受光面と呼ぶことにする。
図1(a)に示す破線矢印A−A’の位置における光電変換素子100のY−Z面における断面構造を図1(b)に示す。光電変換素子100は、例えば、p型のシリコン基板(1)に形成され、高濃度n型不純物が導入された領域7により光電変換を行うpnフォトダイオードを構成している。入射光2が、シリコン基板1の側面から入射すると、pnフォトダイオード部において光信号が電気信号に変換される。図示するように、光電変換を可能にするn型不純物領域7は、シリコン基板側面部近傍からY軸(図面下)方向かつシリコン基板表面に沿って延在して形成されている。本構造により、高濃度n型不純物領域7の延在距離を回路設計パターン、及びフォトリソグラフィー工程によって容易に設計及び製造することができるので、例えば、入射光波長によって最適な光電変換効率を得ることができる。可視光波長(例えば、波長400〜700nm)の場合には、高濃度n型不純物領域7の延在距離は4μm程度あれば十分であるが、例えば、近赤外光(波長700〜1300nm)の場合には、n型不純物領域7の延在距離は10μm以上、例えば、50〜100μm程度必要になる。高濃度n型不純物領域7の基板深さ(Z軸)方向の延在距離を4μm程度に設定することは、通常の半導体素子の製造工程、即ち、不純物の熱拡散法やイオン注入法により容易に実現可能であるが、高濃度n型不純物領域7の基板深さ(Z軸)方向の延在距離を10μm以上に設定することは、長時間かつ高温の熱拡散工程、或いは高加速電圧のイオン注入装置が必要になる。また、仮にこのような深いn型不純物領域7を形成できたとしても、数十乃至100ボルト(v)程度の高駆動電圧が必要となる。
図1(b)に示すように、受光窓5が並ぶ受光面の表面は薄いシリコン酸化膜3で被覆してもよい。機械的、熱的損傷に伴う結晶欠陥を減少させ、かつ外部からの重金属や反応性化学物質等の汚染から光電変換素子100を保護することができる。さらに、図示していない反射防止膜を積層することにより感度を向上させることもできる。同図中、4は外部回路との電気的接点をとるための入出力端子(コンタクトパッド)であり、回路ブロック9は光電変換部となるpnフォトダイオードからの信号電荷を読みだすための信号読み出し走査回路、回路ブロック11は光電変換素子100素子内部において必要な制御信号を供給するためのタイミングパルス発生回路(TG)、回路ブロック13はデジタル化された画像信号を処理するためのデジタル信号処理回路(DSP)、回路ブロック15は読みだされた電気信号をデジタル変換するためのAD変換回路(ADC)、回路ブロック17は外部素子と通信するためのインターフェース回路(I/F)である。信号読み出し走査回路9には、後述するようにフローティングディフュージョンアンプ(FDA)、サンプルホールド回路(S/H)等のノイズ除去回路が各光電変換部の近傍に設けられている。そのため、微弱な光電荷を検出可能であり、かつ単一半導体基板上に集積化できるため、光電変換部における感度バラツキを最小限に抑制することができる。同様に、オンチップADC及びDSPにより、高速、低ノイズかつ低消費電力のデジタル信号出力が得られる。
このように、シリコン基板側面部を受光面とすることにより、入射光の侵入距離が、例えば、数十μm以上であっても高い光電変換効率が得られ、かつ高電圧駆動を必要としない。また、シリコン基板を用いた場合であっても近赤外光等に対し高い検出感度が得られ、TG,ADC或いはDSP等の周辺回路のオンチップ化を容易にし、撮像素子毎或いは画素群毎に並列AD変換が可能になり、信号処理の高速化と駆動周波数の低減による消費電力或いは発熱量の低減が実現する。また、従来、近赤外検出器として個別のフォトトランジスタ素子を複数組み合わせて使用する場合とは異なり、隣接する複数の画素が同一の光電変換素子の側面に形成されているので、検出器(画素)間の感度バラツキを最小限にすることができる。従来、不純物の高温かつ長時間の熱拡散工程、或いは高エネルギーイオン注入装置を必要とした基板厚さ方向に深い光電変換領域の形成が容易になり、さらにフォトリソグラフィー、即ちマスクデザインにより、X−Y平面に平行な方向における光電変換領域の長さを自由に設定することができる。また、図示するように上記回路ブロック(11等)は、光電変換領域を挟んで受光面側とは反対側の領域に形成されているので、従来のシリコン基板面に入射する光を検出する構造とは異なり、回路ブロックが入射光その他の迷光による誤動作やノイズの原因を受けにくいという効果もある。
図2(a)及び(b)を用いて、第一の実施例についてさらに詳しく説明する。図2(a)は、図1(a)における破線矢印A−A’部で示す部位における断面構造図であり、図2(b)は、光電変換素子100、及び従来のシリコンフォトダイオードの分光感度スペクトルである。図2(a)に示すように、本実施形態では、シリコン基板1の内部に形成した光電変換領域、即ち半導体基板1(例えばp型シリコン基板)と高濃度不純物領域7(例えばn型)が構成するフォトダイオード領域にゲルマニウムを含むシリコンゲルマニウム(SiGe)領域6が形成されており、その分布は基板面に平行な方向、即ち入射光方向に沿って延在している。同図の右側に、Si基板厚さ方向(Z軸方向)におけるゲルマニウム含有量(Conc.)の分布を示す。ゲルマニウムの濃度は、必ずしもSi基板厚さ方向に均一である必要はなく、図示するようにSi基板厚さ方向の中心付近に最大濃度ピークを設定すればよい。入射光は、同図の左側からSi基板面に入射するためである。このような濃度分布は、ゲルマニウムイオンのイオン注入とその後の熱拡散工程等により容易に形成できるメリットがあり、かつ殆どの入射光が高濃度ゲルマニウムを有するSiGe領域6を通るので、光電変換素子100の分光感度スペクトルを長波長側に拡大することができる。なお、図2(a)における39は読み出しゲート電極、35はリセット端子、37は浮遊拡散層(フローティングディフュージョン又はFDとも呼ぶ)、43はリセットドレイン、41はソースフォロアアンプ(SFA)である。
図2(b)は、入射光波長(λ)に対する光電変換素子100の相対的分光感度(R.S.)スペクトル(図中のSiGe−PDで示す実線)である。同様に、従来のSiフォトダイオードの相対的分光感度スペクトル(図中のSi−PDで示す破線)の一例である。ここで、Siフォトダイオードの分光感度スペクトルは、ディスクリート部品であるフォトダイオードによるものである。これに対し光電変換素子100の分光感度スペクトルにおいては、半導体基板1の内部に形成したシリコンゲルマニウム(SixGe1-x)領域6におけるゲルマニウムの含有量を50%(x=0.5)時の吸光係数、及び入射光(図2(a)における破線矢印)の進行方向におけるシリコンゲルマニウム領域6の長さを50μmと仮定したものである。シリコン単体(Si−PD)では、波長900nm(ナノメータ)よりも波長が長くなると急激に分光感度が低下する傾向があり、近赤外領域で使用する場合には必ずしも十分な分光感度とは言えなかった。これに対し本実施例(SiGe−PD)では、シリコン基板内に形成された光電変換領域に入射光方向に沿って、ゲルマニウム原子が分布しているため、長波長側の分光感度が1000nm以上、例えば1100nm付近まで拡大していることが分かる。本実施例では、主に近赤外光の感度向上を目的に説明したが、シリコンゲルマニウムからなる光電変換領域は、X線検出感度の改善効果も有する。ゲルマニウムの原子番号は32であり、シリコンの原子番号14よりも大きいからである。
一方、さらに近赤外光及びX線検出感度を向上させるための手段について説明する。第二の実施例に係る光電変換素子101の要部断面構造を図3(a)に、X−Y平面構造を図3(b)に示す。図3(a)の断面構造図は、図2(a)と同じく、Y−Z平面に平行な断面図である。光電変換素子100と同様に、半導体基板1の内部に形成した光電変換領域の近傍にゲルマニウムを含むシリコンゲルマニウム(SiGe)領域が形成されていてもよい。光電変換領域のフォトダイオードを構成するn型の高濃度不純物領域7には、一般にリン(P)がドープされている。Z軸方向に深い不純物分布を形成することが容易だからである。これに対し、本実施例ではn型高濃度不純物領域にリン(P)よりも原子番号の大きな元素を使用する。即ち、シリコン基板(又はウェル)がp型の場合には、ヒ素(As)又はアンチモン(Sb)を使用する。同図の右側に、Si基板厚さ方向(Z軸方向)におけるヒ素(As)又はアンチモン(Sb)含有量(Conc.)の分布を示す。ヒ素又はアンチモンの濃度は、Si基板厚さ方向に均一である必要はなく、図示するように入射光2の通過する領域に分布していればよい。このような濃度分布は、ヒ素又はアンチモンイオンのイオン注入とその後の熱拡散工程等により容易に形成できるメリットがある。なお、シリコン基板(又はウェル)がn型の場合には、p型高濃度不純物領域としてガリウム(Ga)又はインジウム(In)を使用する。従来、深いフォトダイオード形成に好適であったボロン(B)よりも原子番号が大きいからである。このように光電変換素子101においては、X線に対する分光感度スペクトルを高感度化、或いはより高エネルギー側に拡大することができ、また近赤外光対する分光感度スペクトルを高感度化、或いはより長波長側に拡大することができる。
図3(b)は、第二の実施例における光電変換素子101の他の変形例に係る光電変換素子102のX−Y平面図である。従来、X線検出器とX線が透過する被写体との間にコリメータを配置することにより、斜め方向に入射する不要X線を遮蔽する方策が取られている。他方、上記実施例に係る光電変換素子のように、シリコン基板を使用したモノリシックなX線検出可能な光電変換素子が実現すると、画素の微細化も容易になる。これに対し、コリメータの微細加工には限界があるため、本発明に係る光電変換素子101の解像度を十分生かせない場合も考えられる。これを解決るため、図3(b)に示す光電変換素子102においては、受光窓が並ぶ受光面上にコリメータ部材45が直接積層された構造を有している。半導体基板1とコリメータ45は、図示していない支持体と一体形成されており、コリメータ部材45は、例えば、タングステン原子を含む気相成長薄膜であり、そのY軸方向の長さは、例えば、10ミクロンメータ以上3ミリメータ以下に設定することができる。本構造により、半導体基板からなる光電変換素子においても、X線像に対する高解像度化と低偽信号(高画質化)を両立させることが容易になり、コリメータを外付けする負荷も解消することができる。
図4(a)及び(b)を用い、第三の実施例について説明する。図4(a)は、図1(a)における破線矢印A−A’部で示す部位における断面構造図と同様に、光電変換素子103の要部断面構造であり、図4(b)は、光電変換素子100、及び本実施例に係る光電変換素子102の分光感度スペクトルである。図4(a)に示すように、本実施形態では、シリコン基板1の内部であって、入射光2が照射される受光面側からシリコン基板1の内部(図面上右)方向に長さLの高濃度不純物領域33が形成されている。光電変換領域を形成する高濃度不純物領域7は、高濃度不純物領域33よりもさらにシリコン基板1の内部(図面上右)方向に位置するように形成されている。高濃度不純物領域33の延在距離Lは、例えば、1μm以上かつ20μm以下である。また、シリコン基板1がp型の半導体基板であれば、高濃度不純物領域33はボロン(B)を含むp型高濃度不純物領域であり、シリコン基板1がn型の半導体基板であれば、高濃度不純物領域33はリン(P)を含むn型高濃度不純物領域である。
図4(b)は、入射光波長(λ)に対する光電変換素子103の相対的分光感度(R.S.)スペクトルである。即ち、高濃度不純物領域33の延在距離L2が10μmの場合の相対的分光感度スペクトル(L2で示す実線)であり、同様に、光電変換素子100における側面部高濃度不純物領域21の延在距離L1が0.05μmの場合の相対的分光感度スペクトル(L1で示す破線)である。本実施例における光電変換素子103の分光スペクトル(実線)が示すように、入射光波長800nmよりも短波長側で急激に感度が減衰している。言い換えると、光電変換素子103は紫外光や可視光の検出感度を減衰させるローパスフィルタの機能を有している。そのため例えば、光電変換素子103を用いることにより、測定環境下における可視光等を含む外乱光の影響を受けにくい近赤外光検出装置を実現することができる。
図5(a)、(b)、及び(c)を用い第四の実施例について説明する。図5(a)は、例えば、X線検出に好適な光電変換素子104のX−Y平面図であり、図5(b)は、図5(a)におけるB−B’部における断面構造図であり、図5(c)は同じく図5(a)におけるC−C’部の断面構造図である。光電変換素子104は、上述の光電変換素子100乃至102と同様に、例えば、ゲルマニウム(Ge)を含む領域(図5(b)及び(c)における破線で示した領域6)であって、そのZ軸方向における位置は、シリコン基板1のほぼ中央付近にある。入射光2に対する光電変換効率を最大にするためである。シリコン基板のZ軸方向における厚さ(d)は、好適には、5〜20μmであり、使用するシリコン基板1の高抵抗化が避けられ、かつ素子分離領域(8−1、8−2)の形成を容易にすることができる。素子分離領域8−1、8−2は、半導体基板裏面の高濃度(p型)不純物層25に接触する程度の深さに形成され、シャロートレンチアイソレーション(STI)と同様に、素子分離領域に相当するシリコン基板に溝を掘り、そこにSiO2などのCVD酸化膜を埋め込んだ構造である。
さらに本実施例では、画素間の素子分離領域(8−1)、及び画素と画素信号走査読み出し回路部との間、即ち、受光面と対抗する位置にある素子分離領域(8−2)のいずれにおいても素子分離領域内部に原子番号が42(モリブデン)以上の重金属を含む遮光膜10が埋め込まれた構造を有する。より好適には、例えば、タングステンを含む遮光膜が使用される。X線に対する遮蔽効果が高いからである。図5(b)及び(c)に示すように、素子分離領域8−1、8−2、及び遮光膜10は、光電変換素子104の裏面に形成された遮光膜31に到達する深さまでZ軸方向に埋め込まれた構造を特徴としている。本構造により、図5(b)に示すように、例えば、入射X線が光電変換領域を超えて画素信号走査読み出し回路部側に侵入するリスクを低減することができる。同様に図5(c)に示すように、入射X線の一部が隣接画素に漏洩するリスクを低減することができる。なお、例えばタングステンを含む遮光膜10によるX線の遮蔽効果を得るため、タングステンを含む遮光膜10の膜厚を例えば100μm以上に厚膜化する必要が無い。遮光膜の延在方向と入射光2(例えば、X線)の入射方向が、いずれも図5(a)のY軸方向に沿っているからである。本構造により、入射X線が隣接画素に到達するリスクを軽減し、かつ隣接する光電変換領域間における信号電荷の漏洩(クロストーク)を抑制することができる。これに対し、従来、光電変換素子(シリコン基板面に対し垂直方向に入射する構造)において、X線や近赤外光(NIR)の感度を高めるため基板厚さ方向に光電変換領域を拡台すると、逆に基板深部において発生した信号電荷が隣接する画素に漏洩するリスクが高まるというジレンマがあった。しかし、本実施例の構造においては、素子分離領域の構造と光電変換領域の構造が背反することなく実現可能でありまた製造方法も容易である。その結果、X線、及び近赤外光等の長波長光入射時においても隣接画素間におけるクロストークを効果的に抑制できるという特段の効果を奏するものである。
図6(a)及び(b)を用い、第五の実施例に係る光電変換素子105と106の構造を説明する。図6(a)は、X軸方向から見た光電変換素子105のY−Z面に平行な要部断面図である。光電変換素子105は、上述の光電変換素子100又は101と同様に、例えば、ゲルマニウム(Ge)を含む領域(破線で示した領域6)であって、そのZ軸方向における位置は、シリコン基板1のほぼ中央付近にある。本実施例ではさらにマイクロレンズ等の光学部材を積層する構造を開示する。光学部材47は、凸形のマイクロレンズであり、光学部材49は、凹形のマイクロレンズであり、光学部材51は、互いの屈折率が異なる部材51−1と51−2から構成される光導波路である。マイクロレンズ等に使用する材料は、入射光の波長等考慮して選択されるが、特に屈折率の波長依存性に留意すべきである。本実施例ではこれら三種類の光学部材をすべて使用した例を図示しているが、光路計算等に基づきいずれかを適宜選択すればよい。好ましくは、マイクロレンズの中心部(図中のCLで示す位置)を通った入射光は、半導体基板の厚さ(Z軸)方向において、半導体基板表面から距離d1だけ離れた位置を通過するようにマイクロレンズが配置されている。ここで、d1は、光電変換素子105のZ軸方向の厚さdの約1/2である。
入射光を効率的に集光することにより感度を向上させることができる点は、従来の光電変換素子上のマイクロレンズの効果と類似するが、本構造ではさらに以下に説明するような特段の効果を奏する。即ち、従来の光電変換素子においては、入射光が同図のZ軸方向上部から入射し光電変換領域7を通過し、半導体基板底面方向に向かう。しかし、特に700nm以上の長波長光の場合には、シリコン基板を用いるとシリコン基板の厚さd及び光電変換領域7の深さを拡大することにより感度を確保せざるを得なかった。そうすると、製造工程は汎用のCMOS製造工程とは異なる技術及び高抵抗基板等の特殊材料の導入が必要になり、また駆動電圧の増大が避けられない。既に説明した通り、光電変換領域7の深さを深く形成しても、逆に隣接する光電変換領域間においてクロストークが増加するという弊害を生ずる。これに対し、本実施例では、入射光は、光電変換領域近傍であってX−Y平面に平行な方向に延在するシリコンゲルマニウム領域6のみを貫通するように同図左側から右方向に進むので、シリコン基板の厚さdをさらに拡大するまでもなく、効率的な光電変換と長波長光感度の向上が同時に達成可能である。シリコンゲルマニウム領域6の上記入射光方向の長さを例えば5〜100μmの範囲に設定し、製造することは通常のパターニング(リソグラフィー)で解決できるからである。
図6(b)は、上記光電変換素子105の変形例に係る光電変換素子106をX軸方向から見た場合の要部断面図である。本実施例では、マイクロレンズ等の光学部材のZ軸方向における光学中心の位置(CL)、即ち、光電変換素子表面からの距離d2が光電変換素子の厚さdの1/2よりも小さい(d2<d1)ことを特徴としている。本構造により、SiGe形成領域6をZ軸方向においてより浅く形成できるため、イオン注入時のGeイオンの加速エネルギーを下げること、熱処理工程の低温化或いは短時間化が可能になる。また、図示するように、マイクロレンズ等の集光光学系により入射光の光束を細く絞ることにより、Geイオンが最も高濃度に分布している領域を狙って集中的に照射させることができる。本構造により、シリコン基板等の半導体基板自体の厚さdもさらに薄くすることが可能になり、その結果、素子分離領域8−2の形成、即ち素子分離領域8−2のZ軸方向のシャロー化も可能になり、クロストーク等のさらなる改善効果、及び近赤外光等の長波長光に対する感度改善も同時に実現する。本実施例では、マイクロレンズ47の直径が光電変換素子の厚さdとほぼ同等であるが、さらに感度を向上させるため、後述するようにマイクロレンズ47の直径を光電変換素子の厚さdよりも大きく設定しても良い。
図7(a)、(b)、及び(c)を用い、第六の実施例に係る光電変換素子107と108の構造を説明する。図7(a)は、光電変換素子107をZ軸方向から見たX−Y平面図である。光電変換領域等は、上述の光電変換素子100又は101等と同様であるが、シリコン基板の側面部には、マイクロレンズ47、及び49が形成されている。説明のため、敢えてマイクロレンズを有しない受光部を一か所図示している。なお、シリコン基板の側面部には、さらに遮光膜59が隣接する受光窓間に積層されている。マイクロレンズを有している受光部に入射する光の殆どは光電変換領域を構成する高濃度不純物領域7の延在(Y軸)方向に沿って進むため、隣接する光電変換領域に侵入するリスクが低い。他方、図示するように、マイクロレンズを有しない受光部では、Y軸方向とは異なる入射角で侵入した入射光、特に700nm以上の長波長光の場合、入射光が大きく減衰することなく隣接する複数の光電変換領域において光電荷を発生させるリスクが高くなり、クロストークを増大させる。光電変換領域或いは空乏層領域の近傍において発生した光電荷については、素子分離領域8−1によって隣接する光電変換領域に漏洩することを防止することができる。光学部材、例えば凸形のマイクロレンズ47、及び凹型のマイクロレンズ49を組み合わせることにより、入射光の広がりを抑制、或いは絞り、さらに平行な光束形状とすることにより、隣接する光電変換領域への入射光そのものの漏洩も抑制しているため、近赤外光等の長波長光の感度改善とクロストークの抑制の双方を同時に実現する。
図7(b)は、他の実施例に係る光電変換素子108をZ軸方向から見たX−Y平面図である。シリコン基板の側面部には、図7(a)と同様にマイクロレンズ61が形成されている。また図7(a)と同様、遮光膜59がシリコン基板とマイクロレンズ61の間に配置されている。本実施例におけるマイクロレンズ61は、半球状或いはドーム形状ではなく、レンチキュラーレンズ(かまぼこ型)である。図7(c)は、マイクロレンズ61をX軸方向から見た断面図である。このように、マイクロレンズ61は連続する一本の棒状のレンズ形状でるため、マイクロレンズの加工、成型、装着が極めて容易になるという効果を奏する。なお、後述するように、複数の光電変換素子108をZ軸方向に積層した積層型光電変換素子(図8(c))である場合には、マイクロレンズ61の取り付け方向は、図7(b)と同じでもよく、また90°異なるZ軸方向に平行な方向に装着してもよい。
図8(a)に、第七の実施例に係る光電変換素子109をX軸方向から見たY−Z面に平行な要部断面図をしめす。光電変換領域等の構造は、上述の光電変換素子100又は101等と同様であるが、積層された光学部材47は、凸形のマイクロレンズであり、光学部材52は、凸形のマイクロレンズ47とシリコン基板1との間に置かれたテーパ構造の光導波路である。本実施例では、マイクロレンズ47の直径d3が、シリコン基板の厚さdよりも大きいため、さらに感度を向上させることができる。マイクロレンズ47の形状は、後述するようにレンチキュラー構造であっても良い。同図面に垂直な(X軸)方向において隣接する複数の受光窓の配列ピッチを考慮する必要が無いためである。
図8(b)に、第八の実施例に係る光電変換素子110をX軸方向から見たY−Z面に平行な要部断面図を示す。光電変換領域等の構造は、上述の光電変換素子100又は101等の場合と同様である。光学部材53は、光導波路であってフレキシブルな光ファイバーが光電変換素子110に一体的に取り付けられている。本構造により、検出すべき光信号に対し、自由に光ファイバーの先端を近づけ、或いは方向を変更することができる。そのため、外光の影響を受けにくく、しかも一つの光電変換素子を用い、多数チャンネルの光信号の同時計測を高精度に行うことができる。
図8(c)に第九の実施例に係る、積層型光電変換素子120の斜視図を示す。積層型光電変換素子120は、図8(b)における光電変換素子110を3層(110−1、110−2、110−3)重ねた構造であり、各光電変換素子の受光面には、光ファイバー53が直線状に並んだ帯状の光ファイバーケーブル54−1、54−2、及び54−3がそれぞれ取り付けられている。なお、後述するように(例えば図13(b))、受光面が各光電変換素子の二以上の側面部に二以上の光ファイバーケーブルを取り付けても良い。本構造により、光ファイバー53の本数或いはチャネル数を飛躍的に増大させることができ、後述するように、一次元(ライン状)の受光面からなる光電変換素子であっても、二次元(エリア)の光情報を高速に検出及び信号処理が可能になる。
図9(a)、(b)、及び(c)を用い第十の実施例について説明する。図9(a)は、光電変換素子112のX−Y平面図であり、図9(b)は、図9(a)におけるD−D’部における断面構造図であり、図9(c)は、光電変換素子112を受光面側(Y軸方向)から見た場合の断面構造図である。光電変換素子112は、上述の光電変換素子100乃至102と同様に、例えば、シリコン基板1の内部にゲルマニウム(Ge)をドープした領域を有している(図9((b)及び(c)における破線で示した領域6)。本実施例は、光電変換素子112の上面に反射膜32を積層している。図9(a)では、構造を説明するために敢えて反射膜32の一部を除去し、光電変換領域7、素子分離領域8−1が見えるように描かれている。反射膜32は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、又は金(Au)を含む金属反射膜である。さらに、画素間の素子分離領域8−1及び画素部と画素信号走査読み出し回路部との間の素子分離領域8−2の内部にも同様の金属反射膜10−1及び10−2が埋め込まれている。
図9(b)に示すように、素子分離領域8−2は、例えばトレンチアイソレーションであって、シリコン基板1に溝を形成し、その側壁をCVDシリコン酸化膜等で被覆し、金属反射膜10−2を埋め込んだ構造である。また、図(c)に示すように、素子分離領域8−1は、同様にトレンチアイソレーションであって、シリコン基板1に溝を形成し、その側壁をCVDシリコン酸化膜等で被覆し、金属反射膜10−1を埋め込んだ構造である。さらに、光電変換素子112の底部にも金属反射膜からなる遮光膜31が積層されている。そして、上記の金属反射膜10−1及び10−2は、その端部において金属反射膜(遮光膜)32及び31と接触している。本構造により、入射光2が光電変換素子112の受光面に入射すると、光電変換領域において吸収されなかった光は、図(b)内の破線矢印及び図(c)に示すように、金属反射膜32,31、10−2、10−1の表面において反射される。その結果、これらの金属反射膜により囲まれた光電変換領域内部において入射光が多重反射し実効的な光電変換領域内の光路長を延長する効果が得られるため、特に吸光係数が低下する近赤外領域における光電変換効率を増大させ高感度化することができる。言い換えると、同じ感度を得るために必要な光電変換領域の面積、即ち高濃度不純物領域7のY軸方向における延在距離を短縮することができるため、フォトダイオード部の容量を減少させ光電荷の読み出し速度を高速化することができる。
図10は、光電変換素子112の変形例に係る光電変換素子113のX軸方向から見た要部断面構造図(a)、及びY軸方向から受光面を見たときのX−Z平面図である。図10(a)に示すように、光電変換素子112と同様に、高濃度不純物領域7からなる光電変換領域7の周囲は金属反射膜31、32、10−2及び10−1(図示せず)により囲まれている。さらに本実施例では、受光面上に開口部36を有する金属反射膜34が積層されている。本実施例では、マイクロレンズ47等により集光された入射光2が金属遮光膜34の開口部36を通り、光電変換素子113の光電変換領域内に入る。図10(b)に示すように、金属反射膜34に形成された開口部36の形状はマイクロレンズ47の特性に応じて最適化することができる。本実施例では、開口部36は、長方形であるが円形であってもよい。本構造により、光電変換素子112における効果、即ち金属遮光膜31、32、10−2及び10−1の表面における入射光の反射に加え、さらに金属反射膜34による入射光の反射が加わる。図(a)の破線矢印で示すように、金属反射膜10−2において反射した入射光はさらに金属反射膜34の表面で再度反射することにより、光電変換領域内部を繰り返し通過し減衰することになる。このように、光電変換領域内部における多重反射を繰り返すことにより、光電変換素子112の場合に比べさらに高感度化が可能になる。
図11(a)、及び(b)を用い、第十一、及び第十二の実施例について説明する。図11(a)は、光電変換素子114のX−Y平面図である。主として、上記光電変換素子112、或いは113と異なる部分について説明する。光電変換素子112、113においては、画素部と画素信号走査読み出し回路部との間の素子分離領域内部の金属反射膜10−2は、受光面と対向するようにX−Y平面視座上、平行に配置されていたが(図9(a)、(b))、本実施例では、図11(a)に示すように金属反射膜10−2に替えて受光面に対しX−Y平面視座上、非平行になるように角度を持たせた2種類の金属反射膜10−3、及び10−4を設けたことを特徴とする。例えば、金属反射膜10−3、10−4は、X軸に対しそれぞれ135度と45度の角度を持たせている。本構造により、入射光2が上記画素部と画素信号走査読み出し回路部との間の素子分離領域内の金属反射膜(10−3、10−4)によって反射し、再び開口部36から外部に戻される入射光成分を減少させることができるのでさらに感度が向上する。
図11(b)は、光電変換素子115のX−Y平面図である。主として、上記光電変換素子112、或いは113と異なる部分について説明する。光電変換素子115には、マイクロレンズ47が積層され、マイクロレンズ47を通過した入射光が光電変換領域7−1に入射する。なお、18−1、18−2、18−3は、周辺回路ブロックである。光電変換素子112、113においては、画素間の素子分離領域内部の金属反射膜10−1は、互いに対向するようにX−Y平面視座上、Y軸方向に平行に配置されていたが(図9(a)、(c))、本実施例では、図11(b)に示すように金属反射膜10−1に替え、X−Y平面視座上、互いに非平行になるように角度を持たせた2種類の金属反射膜10−5、及び10−6を設け、さらに入射光が光電変換領域7−1の内部に進むにつれ光電変換領域の幅がX−Y平面視座上細くなり、幅の狭い光電変換領域7−2につながったロート状の形状であること特徴としている。本構造により、隣接する画素間におけるクロストークを抑制し、光路長を短くすることなくフォトダイオード容量を小さくすることができる。また、周辺回路ブロック18−1、18−2等を光電変換領域間にも配置できるので、光電変換素子の小型化も可能になる。
図12(a)、及び(b)は、それぞれ第十三の実施例に係る光電変換素子116の要部断面図、及び波長フィルター40の透過率分光スペクトル図である。光電変換素子116は、上述の光電変換素子100乃至102等と同様に、例えば、シリコン基板1の内部にゲルマニウム(Ge)をドープした領域6を有している(図12((a)における破線で囲まれた領域)。本実施例ではさらに、受光面上に波長フィルター40がモノリシックに形成されている。波長フィルター40は、光入射面に形成された反射膜44、及び反射膜44と平行に形成された反射膜46が平行に配置され、これら2枚の反射膜44と46により媒質部42(幅L3)が挟まれた構造をしている。このように対抗する反射面の多重干渉を利用することにより、周期的な透過ピークを有しかつ半値幅の狭い透過光(2−1)が得られる。言い換えると、特定波長域を通過させるバンドパスフィルターを構成している。好適には、反射膜44と46は、その反射率が50%以上かつ100%未満である。反射率が高くなると、透過率T(%)のピークスペクトルは鋭くなるが、その半値幅が狭くなり、光電変換素子116の感度も低下する傾向にある。媒質部42は、例えば、近赤外光を前提とした場合、シリコン基板1、或いはシリコン酸化膜(SiO2)が好適である。近赤外光に対する吸収係数が小さいためであり、またシリコン半導体製造プロセスにおいて広く使われている材料だからである。後述するように、媒質の種類、2枚の反射膜間の距離L3、及び反射膜44、46の反射率等により、波長フィルター40の分光透過率のスペクトル形状を変えることができる。
図12(b)は、媒質がシリコンであって距離L3が0.001mm、反射膜44、46の反射率が70%の場合の波長フィルター40の透過率の分光スペクトル図の一例である。光電変換素子116を用いれば、発光ダイオード光源と組み合わせたタイムオブフライト(TOF)方式の高速・高精度の測距装置が可能になる。例えば、図(b)に示すように、フィルター40の透過率が高い波長λ1(805nm)、或いは波長λ2(910nm)と同等の波長の光を出射する発光ダイオードを用いることにより、これら以外の波長域にある背景光や迷光の影響を受けにくい測距装置が得られる。また、波長フィルター40は、光電変換素子116のシリコンウエーハレベルにおける製造工程内において一体的に形成可能であり、かつそのフィルター特性は、反射膜の反射率(T%)、媒質の種類、2枚の反射膜間の距離(L3)等の調整により容易にかつ精密に設計、製造可能であるという特段の効果を奏する。
図13(a)は、第十四の実施例に係る光学測定装置であって、光電変換素子110と光学系を組み合わせた光学測定装置200の平面的な模式図である。光電変換素子110の受光面には後述する複数の光ファイバー53を多チャンネル束ねた光ファイバーケーブル54が2系統装着されている。光ファイバーケーブル54の他の一端は、光ファイバー受光面55に接続している。この光ファイバー受光面55は、必ずしも光電変換素子110のように一直線上に並んでいる必要は無く、例えば、m×nチャンネル(m、nは2以上の整数)の二次元的受光面とすることができる。本構成により、レンズ光学系57を用い、光ファイバー受光面(55)上に二次元被写体像を結像することができる。また、図示するように、受光面55と光学系57を二系統以上設けることも容易であり、広角度、ステレオ、或いは多点測距も可能である。本構造により、時間、空間、エネルギー分解能に優れた光学測定装置、例えば、タイムオブフライト(TOF)法に基づく高精度の多方向、或いは360度の距離計測装置を実現することができる。
図13(b)は、光電変換素子110の変形例であり、また図13(a)における光電変換素子として使用する場合に好適な光電変換素子111の構造図である。光電変換素子110においては、受光面が矩形のシリコン基板の一側面部のみに形成されていたが、光電変換素子111においては、矩形のシリコン基板の二側面部に受光面が形成されている。そのため、電荷読み出し回路部も二系統(9ーL,9ーR)設け、その他の回路含む周辺回路ブロック19に接続している。本構造により、光ファイバー53の本数が増加した場合においても光電変換素子の形状が極端に細長くなることを避けることができ、また光ファイバー53を左右に分けて接続することができるので、例えば、2系統の受光面55、及び光学系57と組み合わせる場合に好適である。さらに、離れた場所にある複数の受光面55(図13(a)等)からの信号を単一の光電変換素子111により検出し、周辺回路ブロック19内の同一の信号処理回路を共有することにより、複数の受光面(55)間の相関演算等の画像信号処理を高速かつ高精度に実行することができる。なお、四角形のシリコン基板の三又は四側面部を光ファイバー53に対する受光面とすることもできる。
図13(c)、(d)を用い、図13(a)における受光面55と光ファイバーケーブル54、及び光電変換素子110との関係をさらに詳しく説明する。図13(c)に示すように、受光面55−1は、四角形であり、その中に多数の光ファイバー(53−1)が束ねられて格納されている。破線で示された円58−1は、集光光学系57による結像面である。これに対し、図13(d)における受光面55−2は、円形であり、その中に多数の光ファイバー(53−2)が束ねられて格納されている。破線で示された円58−2は、集光光学系57による結像面である。このように、受光面55−2と結像面58−2は共に円形かつその直径がほぼ等しいので、同じ解像度、即ち光ファイバーの本数が同一の場合には、受光面55の小型化が可能になるので、特に体内に挿入する場合等に好適である。