JP2019012260A - トナーバインダー及びトナー - Google Patents

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Abstract

【課題】高いレベルの耐熱保存性を有し、かつ揮発ガス成分による臭気がなく、耐オフセット性を維持しつつ、低温定着性、粉砕性、画像強度のすべてを満足する優れたトナーバインダー及びトナーを提供すること。【解決手段】非線形ポリエステル樹脂(A)と有機溶剤とを含有するトナーバインダーであって、前記(A)がポリエステル(A0)を架橋した構造を有する樹脂であり、架橋した構造を形成する少なくとも1つの結合が、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子との直接結合であり、トナーバインダー中の有機溶剤の含有量が50ppm以上2000ppm以下であるトナーバインダー。【選択図】なし

Description

本発明は、トナーバインダー及びトナーに関する。
近年、電子写真システムの発展に伴い、複写機やレーザープリンター等の電子写真装置の需要は急速に増加しており、それらの性能に対する要求も高度化している。
一般に、電子写真方式では、感光体上に静電荷像(潜像)を形成した後、トナーを用いて潜像を現像し、トナー画像を形成する。そのトナー画像を紙等の記録媒体上に転写した後、加熱等の方法で定着する。
これらのプロセスを問題なく通過するためには、トナーはまず安定した帯電量を保持することが必要であり、次に紙への定着性が良好であることが必要とされる。また、装置は定着部に加熱体を有するため、装置内で温度が上昇することから、トナーは、装置内でブロッキングしないことが要求される。
更に、電子写真装置の小型化、高速化、高画質化の促進とともに、定着工程における消費エネルギーを低減するという省エネルギーの観点から、トナーの低温定着性の向上が強く求められている。
トナーの定着温度を低くする手段として、トナーバインダーのガラス転移点を低くする技術が一般的に使用されている。しかしながら、ガラス転移点を低くし過ぎると、粉体の凝集(ブロッキング)が起こり易くなりトナーの耐熱保存性が低下する。このガラス転移点は、トナーバインダーの設計ポイントであり、ガラス転移点を下げる方法では、更に低温定着可能なトナーを得ることはできない。
また、別の手段として、分子量を小さくすることが行われている。しかしながら、トナー画像を熱ロール定着方式により定着する場合には定着時に熱ロールと溶融状態のトナーとが直接接触するが、分子量を小さくしすぎると、このとき熱ロール上に移行したトナーが次に送られてくる転写紙等を汚す、いわゆるオフセット現象が生じ易いという欠点がある。
トナーバインダーは、上述のようなトナー特性に大きな影響を与えるものであり、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、最近では、耐熱保存性と低温定着性のバランスを取りやすいことから、ポリエステル樹脂が特に注目されている。
定着温度幅を拡大させる方法として、高分子化用樹脂とポリエステル樹脂の混合物とイソシアネートとの反応生成物を用いたトナーが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、この方法は高温でのオフセット現象はある程度防止できても、同時に定着下限温度も上昇するため低温定着が困難となり、また、イソシアネートから誘導されるウレア基やウレタン基の高凝集性により、樹脂の粉砕性が著しく悪くなる。更に樹脂の均一性が損なわれ耐熱保存性も悪化し、未だ高速化、省エネルギー化の要求には十分に答えられていない。
そこで、不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂を、ラジカル反応開始剤で架橋反応させて得られる生成物を用いたトナーが提案されている(特許文献2)。
しかしながら、この方法では樹脂の粉砕性が改良されるが、開始剤分解物に由来する有機溶剤が残存すると、揮発ガス成分による臭気が問題となる。
一方、開始剤を使用せず、加熱等で不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂のラジカル反応を行うと、反応が十分に進行しない。
以上、述べたように、開始剤分解物が発生する場合でも耐熱保存性が十分であり、更に揮発ガス成分による臭気がなく、耐オフセット性を維持し、低温定着性、粉砕性、画像強度のすべてを満足する優れたトナーバインダー及びトナーは、これまでなかった。
特開平4−211272号公報 特開2017−003985号公報
本発明は、高いレベルの耐熱保存性を有し、かつ揮発ガス成分による臭気がなく、耐オフセット性を維持しつつ、低温定着性、粉砕性及び画像強度のすべてを満足する優れたトナーバインダー及びトナーを提供することを目的とする。
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、非線形ポリエステル樹脂(A)と有機溶剤とを含有するトナーバインダーであって、前記(A)がポリエステル(A0)を架橋した構造を有する樹脂であり、架橋した構造を形成する少なくとも1つの結合が、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子との直接結合であり、トナーバインダー中の有機溶剤の含有量が50ppm以上2000ppm以下であるトナーバインダー;及びこのトナーバインダーを含有するトナーである。
本発明により、高いレベルの耐熱保存性を有し、かつ揮発ガス成分による臭気がなく、耐ホットオフセット性を維持しつつ、低温定着性、粉砕性及び画像強度のすべてを満足する優れたトナーバインダー及びトナーを提供することが可能である。更に、本発明のトナーは、上記の性能に加えて、トナーの流動性、帯電安定性、耐折り曲げ性及びドキュメントオフセット性にも優れている。
本発明のトナーバインダーは、非線形ポリエステル樹脂(A)と有機溶剤とを含有するトナーバインダーであって、前記(A)がポリエステル(A0)を架橋した構造を有する樹脂であり、架橋した構造を形成する少なくとも1つの結合が、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子との直接結合であり、トナーバインダー中の有機溶剤の含有量が50ppm以上2000ppm以下であるトナーバインダーである。
以下に、本発明のトナーバインダーを順次、説明する。
本発明のトナーバインダーは、非線形ポリエステル樹脂(A)を必須成分として含む。 ここでいう前記(A)は、ポリエステル(A0)を架橋した構造を形成する少なくとも1つの結合が、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子とが直接結合しているものであれば、どんなポリエステルでもよい。ポリエステル(A0)としては、例えば、炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)等が挙げられ、架橋構造を形成し易いという観点から(A1)が好ましく、非線形ポリエステル樹脂(A)の炭素−炭素結合の少なくとも一部は、上記炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)由来の炭素−炭素二重結合同士が架橋された炭素−炭素結合であることが好ましい。
非線形ポリエステル樹脂(A)は前記(A1)の炭素−炭素二重結合を反応させる他、加熱等による水素引き抜き反応によってポリエステル樹脂に含まれる炭素原子に結合した水素原子を引き抜いて架橋する方法(水素原子引き抜き反応とも言う)等によっても得ることができる。
また、本発明のトナーバインダーに含有される非線形ポリエステル樹脂(A)は1種類でもよいし、(A)を含む2種類以上のポリエステル樹脂の混合物でもよい。さらに、本発明のトナーバインダーは、たとえば本発明で規定された非線形ポリエステル樹脂(A)と、後述する(A)以外の樹脂である非晶性ポリエステル樹脂(B)及び/又は結晶性樹脂(C)を含有してもよい。
非線形ポリエステル樹脂とは、主鎖中に分岐(架橋点)を有するポリエステル樹脂である。一方、線形ポリエステル樹脂とは、主鎖中に分岐(架橋点)を有していないポリエステル樹脂である。
トナーバインダー中の非線形ポリエステル樹脂(A)の含有量は、低温定着性、耐熱保存性、耐ホットオフセット性の観点からトナーバインダーの重量を基準として好ましくは1〜95重量%であり、さらに好ましくは3〜80重量%であり、最も好ましくは5〜50重量%である。
また、本発明における炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)としては、1種類以上の不飽和カルボン酸成分(y)及び/又は1種類以上の不飽和アルコール成分(z)を必須構成単量体とするポリエステル樹脂等が挙げられる。
更に、(A1)は、(y)と(z)以外に、1種類以上の飽和アルコール成分(x)と1種類以上の飽和カルボン酸成分(w)を構成単量体として併用して重縮合してもよい。
飽和アルコール成分(x)としては、例えば、モノオール(x1)、ジオール(x2)及び3〜8価又はそれ以上のポリオール(x3)等が挙げられる。飽和アルコール成分(x)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
モノオール(x1)としては、例えば、炭素数1〜30の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール及びベヘニルアルコール等)等が挙げられる。
これらモノオールのうち好ましいものは炭素数8〜24の直鎖アルキルアルコールであり、更に好ましくはドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール及びこれらの併用である。
ジオール(x2)としては、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール及び1,12−ドデカンジオール等)(x21);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等)(x22);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)(x23);上記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレン付加物(好ましくは付加モル数=1〜30)(x24);芳香族ジオール〔単環2価フェノール(例えばハイドロキノン等)及びビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(好ましくは付加モル数2〜30)〕(x25);等が挙げられる。
これらのジオール(x2)のうち、低温定着性及び耐熱保存性の観点から、芳香族ジオール(x25)が好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物がさらに好ましい。アルキレンオキサイドにおいて、アルキレン基の炭素数は好ましくは2〜4(エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、2,3−、1,3−又はiso−ブチレンオキサイド及びテトラヒドロフラン等)である。
ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物は、一般的に、ビスフェノール類にアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)を付加して得られる。ビスフェノール類としては、下記一般式(1)で示されるものが挙げられる。
HO−Ar−P−Ar−OH (1)
[式中、Pは炭素数1〜3のアルキレン基、−SO−、−O−、−S−、又は直接結合を表し;Arは、水酸基及びPが結合する部分以外の水素原子がハロゲン原子又は炭素数1〜30のアルキル基で置換されていてもよいフェニレン基を表す。]
ビスフェノール類とは、具体的には、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、トリクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジブロモビスフェノールF、2−メチルビスフェノールA、2,6−ジメチルビスフェノールA及び2,2’−ジエチルビスフェノールFが挙げられ、これらは2種以上を併用することもできる。
これらビスフェノール類に付加するアルキレンオキサイドとしては、炭素数が2〜4のアルキレンオキサイドが好ましく、具体的には、エチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記することがある。)、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド(以下、「1,2−プロピレンオキサイド」をPOと略記することがある。)、1,2−、2,3−、1,3−又はiso−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン及びこれらの2種以上の併用が挙げられる。
これらの中で、耐熱保存性及び低温定着性の観点から、好ましくはEO及び/又はPOである。AOの付加モル数は、耐熱保存性及び低温定着性の観点から好ましくは2〜30モル、更に好ましくは2〜10モルである。
ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物のうち、トナーの低温定着性の観点から好ましいものは、ビスフェノールAのEO及び/又はPO付加物(平均付加モル数2〜4が好ましく、さらに好ましくは2〜3)である。
3〜8価又はそれ以上の価数のポリオール(x3)としては、炭素数3〜36の3〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(x31)、糖類及びその誘導体(x32)、脂肪族多価アルコールの(ポリ)オキシアルキレンエーテル(オキシアルキレン単位の数として好ましくは1〜30)(x33)、トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のポリオキシアルキレンエーテル(オキシアルキレン単位の数として好ましくは2〜30)(x34)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3〜60)のポリオキシアルキレンエーテル(オキシアルキレン単位の数として好ましくは2〜30)(x35)等が挙げられる。
炭素数3〜36の3〜8価又はそれ以上の価数の脂肪族多価アルコール(X31)としては、アルカンポリオール及びその分子内又は分子間脱水物が含まれ、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン及びジペンタエリスリトール等が挙げられる。
以上の飽和アルコール成分(x)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール(x21)、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(AO単位の数として好ましくは2〜30)(x25)、炭素数3〜36の3〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(x31)、及びノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(オキシアルキレン単位の数として好ましくは2〜30)(x35)である。
耐熱保存性の観点から更に好ましいものは、炭素数2〜10のアルキレングリコール(x21)、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(AO単位の数として好ましくは2〜5)、3〜4価の脂肪族多価アルコール及びノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(オキシアルキレン単位の数として好ましくは2〜30)(x35)である。
特に好ましくは、炭素数2〜6のアルキレングリコール、3価の脂肪族多価アルコール及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(AO単位の数として好ましくは2〜5)でありであり、最も好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(AO単位の数として好ましくは2〜3)である。
不飽和カルボン酸成分(y)としては、不飽和モノカルボン酸(y1)、不飽和ジカルボン酸(y2)、及びこれらの酸の無水物や低級アルキルエステルが挙げられる。不飽和カルボン酸成分(y)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
不飽和モノカルボン酸(y1)としては、例えば、炭素数2〜30の不飽和モノカルボン酸が挙げられ、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、3−ブテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、4−ペンテン酸、2−エチル−2−ブテン酸、10-ウンデセン酸、2,4−ヘキサジエン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸及びネルボン酸等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸(y2)としては、例えば、炭素数4〜50のアルケンジカルボン酸が挙げられ、具体的にはドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸及びグルタコン酸等が挙げられる。
これらの不飽和カルボン酸(y)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から好ましくは、炭素数2〜10の不飽和モノカルボン酸及び炭素数4〜18のアルケンジカルボン酸であり、さらに好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸及びフマル酸である。
最も好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びこれらの併用である。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルも同様に好ましい。
不飽和アルコール成分(z)としては、例えば、不飽和モノアルコール(z1)及び不飽和ジオール(z2)等が挙げられる。不飽和アルコール成分(z)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
不飽和モノアルコール(z1)としては、例えば、炭素数2〜30の不飽和モノアルコールが挙げられ、具体的には2−プロペン−1−オール、オレイルアルコール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
不飽和ジオール(z2)としては、炭素数2〜30の不飽和モノアルコールが挙げられ、具体的にはリシノレイルアルコールが挙げられる。
飽和カルボン酸成分(w)としては、例えば、芳香族カルボン酸(w1)と脂肪族カルボン酸(w2)等が挙げられる。飽和カルボン酸成分(w)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
芳香族カルボン酸(w1)としては、例えば、炭素数7〜37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4−エチル安息香酸、4−プロピル安息香酸等)、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)、炭素数9〜20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)等が挙げられる。
脂肪族カルボン酸(w2)としては、例えば、炭素数2〜50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸及びベヘン酸等)、炭素数2〜50の脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、レパルギン酸及びセバシン酸等)、炭素数6〜36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)等が挙げられる。
飽和カルボン酸成分(w)として、これらのカルボン酸の、無水物、低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)を用いてもよいし、これらのカルボン酸と併用してもよい。
これらの飽和カルボン酸成分(w)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から好ましいものは、炭素数7〜37の芳香族モノカルボン酸、炭素数2〜50の脂肪族ジカルボン酸、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸及び炭素数9〜20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸である。
耐熱保存性及び帯電性の観点から更に好ましくは、アジピン酸、アルキルコハク酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの併用である。
特に好ましくは、アジピン酸、テレフタル酸、トリメリット酸及びこれらの併用である。これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
本発明におけるポリエステル(A1)は、特に限定はしないが高温下での弾性を向上させる観点から非線形であることが好ましい。
また、本発明におけるポリエステル(A1)の製造法は特に限定はしないが、前述のように1種類以上の不飽和カルボン酸成分(y)及び/又は不飽和アルコール成分(z)を構成原料とする。更にポリエステル(A1)が非線形である場合は、例えば不飽和カルボン酸成分(y)及び/又は不飽和アルコール成分(z)に加えて、構成原料である飽和アルコール成分(x)として3価以上のポリオールを用いる場合や、飽和カルボン酸成分(w)として3価以上のカルボン酸又はこの酸無水物もしくは低級アルキルエステルを用いる場合などが挙げられる。非線形であることにより、耐熱保存性と耐ホットオフセット性が向上する。
本発明において、各々のポリエステル樹脂は、公知のポリエステルと同様にして製造することができる。
例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150〜280℃、更に好ましくは160〜250℃、とくに好ましくは170〜235℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、とくに好ましくは2〜40時間である。
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。
エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒〔例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006−243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等〕、及び特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、及び酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
また、ポリエステル重合安定性を得る目的で、安定剤を添加してもよい。安定剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン及びヒンダードフェノール化合物などが挙げられる。
飽和アルコール成分(x)及び不飽和アルコール成分(z)の合計の仕込み量と不飽和カルボン酸成分(y)及び飽和カルボン酸成分(w)の合計の仕込み量との比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、更に好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.4/1〜1/1.2である。
本発明においてポリエステル(A1)のガラス転移温度(TgA1)は、−35〜45℃であることが好ましく、Tgが45℃以下であると低温定着性が良好になり、−35℃以上であると耐熱保存性が良好になる。更に好ましくは−30〜43℃、特に好ましくは−25〜40℃であり、最も好ましくは−20〜38℃である。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばセイコーインスツル(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
ポリエステル(A1)のガラス転移温度(TgA1)及び後記するトナーバインダーのガラス転移温度(Tg)の具体的な確認方法は以下の通りである。
試料5mgをDSC装置の容器に入れ,ガラス転移終了時より約30℃高い温度まで毎分20℃で加熱し、ガラス転移温度より約50℃低い温度まで毎分60℃で冷却した後、ガラス転移終了時より約30℃高い温度まで毎分20℃で加熱する。
上記測定から吸発熱量と温度とのグラフを描き、そのグラフの低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とする。
ポリエステル樹脂(A1)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるピークトップ分子量が2,000〜30,000であることが好ましく、更に好ましくはピークトップ分子量が3,000〜20,000であり、最も好ましくは4,000〜12,000である。
ピークトップ分子量が2,000〜30,000であると、光沢性、低温定着性及び、ホットオフセット性が好ましくなる。
ここでピークトップ分子量(以下、Mpと略称することがある。)とは、試料の有する分子量分布を、標準ポリスチレン試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出し、得られた分子量分布のチャート中のピーク最大値から求められた分子量である。チャート中のピークは1つとは限らないので、複数のピークがある場合はピーク値の中で最大値を示すピークから求める。なお、GPC測定の測定条件は、以下のとおりである。
本発明において、ポリエステル樹脂等の樹脂のピークトップ分子量、数平均分子量(以下、Mnと略称することがある。)、重量平均分子量(以下、Mwと略称することがある。)は、GPCを用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
分子量の測定は、0.25重量%になるようにポリエステル樹脂等をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
本発明の非線形ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子とが直接結合して架橋されたものである。ポリエステル(A0)が、炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)を含有するポリエステルである場合、炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)由来の炭素−炭素二重結合同士で上記反応を行い、少なくとも一部が架橋されたものであってよい。架橋構造を形成するための架橋反応の形態は、特に限定されないが、例えば、炭素−炭素二重結合をポリエステル樹脂の主鎖や側鎖に導入し、ラジカル付加反応、カチオン付加反応、又はアニオン付加反応等によって反応させ、分子間炭素−炭素結合を生成させる反応の形態である。
架橋反応は、粉砕性及び低温定着性の観点から、好ましくはラジカル付加反応、カチオン付加反応及びアニオン付加反応であり、更に好ましくはラジカル付加反応であり、特に好ましくはラジカル反応開始剤(c)を用いるラジカル付加反応である。
ラジカル反応開始剤(c)を用いることで、架橋構造を特定することは難しいが架橋反応を短時間で均一にできるので粉砕性及び低温定着性が良好になると推測する。
非線形ポリエステル樹脂(A)の製造方法は、例えば、上述の通り分子内に炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)を縮合重合で得た後に、必要によりラジカル反応開始剤(c)等を用いて、ラジカル反応開始剤(c)等から発生するラジカルを利用して、ラジカル付加反応することで、(A1)中の不飽和カルボン酸成分(y)に起因する炭素−炭素二重結合同士で架橋反応が起って化学結合して、非線形ポリエステル樹脂(A)を製造するような方法等が挙げられる。
本発明でポリエステル(A1)の架橋反応のために用いるラジカル反応開始剤(c)としては、無機過酸化物(c1)、有機過酸化物(c2)及びアゾ化合物(c3)等が挙げられ、中でも開始剤効率が高く、シアン化合物副生成物を生成しないことから好ましくは無機過酸化物(c1)及び有機過酸化物(c2)である。また、これらのラジカル反応開始剤を併用してもかまわない。
無機過酸化物(c1)としては、特に限定されないが、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
有機過酸化物(c2)としては、特に制限されないが、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン、ジ−t−へキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシへキシン−3、アセチルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、オクタニノルパーオキシド、デカノリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド、m−トルイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、クメンヒドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ジ( 2 − エトキシエチル) パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンソエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
アゾ化合物(c3)としては、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。
更に、架橋反応が効率よく進行することから、水素引抜き能の高い反応開始剤で官能基としてペルオキシド構造(−O−O−)を有する反応開始剤が好ましい。具体的にはベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クメンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)へキサン、ジ−t−へキシルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等が好ましい。
更に、本発明でポリエステル(A1)の架橋反応のために還元剤(d)を用いることが好ましく、ラジカル反応開始剤(c)と還元剤(d)とを組み合わせることが更に好ましい。還元剤(d)を併用することで、ラジカル発生の活性化エネルギーを下げることができ、架橋反応が効率よく進行し、その結果、ラジカル反応開始剤(c)使用量が少なくて済む。
還元剤(d)としては、特に限定されないが、無機還元剤及び有機還元剤が挙げられる。無機還元剤としては、例えばアルカリ金属の亜硫酸塩又は重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄及び二リン酸塩(ピロリン酸等)等が挙げられる。有機還元剤としては、例えばアスコルビン酸等が挙げられる。
ラジカル反応の温度は、好ましく50〜250℃である。
ラジカル反応開始剤(c)の使用量は、炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)と非晶性ポリエステル樹脂(B)と結晶性樹脂(C)との合計重量に対して、0.4〜5.0重量%が好ましい。
ラジカル反応開始剤(c)の使用量が、0.4重量%以上の場合に架橋反応が進行し易くなる傾向にあり、5.0重量%以下の場合に、臭気が良好となる傾向にある。この使用量の上限は、4重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが更に好ましく、2重量%以下であることが特に好ましい。
還元剤(d)の使用量は反応性の観点から、炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)と非晶性ポリエステル樹脂(B)と結晶性樹脂(C)との合計重量に対して、0.01〜2.5重量%が好ましい。
ポリエステル(A1)を上記範囲の開始剤種、量でラジカル重合した場合、架橋反応が有効に起こり、トナーの耐ホットオフセット性と耐熱保存性及び画像強度が良好になることから好ましい。
非線形ポリエステル樹脂(A)を製造する際にラジカル付加反応によって分子間で炭素−炭素結合を生成させる架橋反応の場合は、例えば、ポリエステル(A1)の主鎖中又は側鎖中に炭素−炭素二重結合を導入するために、不飽和二重結合を有する不飽和カルボン酸成分(y)及び/又は不飽和二重結合を有する不飽和アルコール成分(z)を必須構成単量体としたり、水素ラジカルを引き抜きやすい成分を組み込んだりすればよい。
本発明のトナーバインダー中の有機溶剤の含有量は、トナーバインダーの重量に基づいて50〜2000ppmであり、有機溶剤含有量が2000ppmを超えると臭気が悪化する場合があり、50ppm未満であると耐ホットオフセット性、粉砕性、画像強度及びトナーの流動性が悪化する場合がある。好ましくは100〜1500ppm、特に好ましくは150〜1000ppmであり、最も好ましくは200〜500ppmである。
特に本発明においては、ポリエステル(A1)をラジカル反応開始剤(c)を用いて架橋反応させ、(c)の分解物が発生する反応を用いた場合でも、発生した分解物である有機溶剤含有量を上記範囲にすることにより、臭気、耐ホットオフセット性、粉砕性、画像強度及びトナーの流動性に優れたトナーを得ることができるものである。
有機溶剤含有量を制御する方法としては、例えば(1)有機溶剤使用量の制御、(2)開始剤量の制御(開始剤分解物の制御)、(3)(1)及び/又は(2)で含有した有機溶剤の脱溶剤による制御等が挙げられる。
(3)において、有機溶剤を脱溶剤する方法としては、特に限定ないが、トナーバインダーを粉砕したものを二軸押出機に供給し、溶融搬送しながらベント口から減圧を行う方法等が挙げられる。このとき、溶融温度や軸回転数、減圧度などを調整することで、トナーバインダー中の有機溶剤量を制御できる。また、トナーバインダーを任意の温度下で減圧操作することでも脱溶剤できる。なお、攪拌機を用いて撹拌しながら減圧しても良い。このとき、温度や減圧度、撹拌速度などを調整することで、トナーバインダー中の有機溶剤量を制御できる。脱溶剤の温度について好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは30〜170℃、最も好ましくは40〜160℃である。脱溶剤の減圧度について好ましくは0.01〜100kPa、さらに好ましくは0.1〜95kPa、最も好ましくは1〜90kPaである。
一方、二軸押出機にて原料を反応させながら、同時にベント口から減圧を行うこともできる。また、反応容器中に原料を仕込んで反応させた場合、反応後にそのまま減圧操作にて脱溶剤する方法でも脱溶剤を行うことができる。このとき、上記と同様の項目を調整することで、トナーバインダー中の有機溶剤量を制御できる。
あるいは、トナーバインダーを粉砕したものを温度及び圧力(常圧ないし減圧)の調整された乾燥機に入れることで、トナーバインダー中の有機溶剤量を制御できる。
また、トナーバインダーが、非晶性ポリエステル樹脂(B)及び/又は結晶性樹脂(C)を含有する場合は、短時間で脱溶剤する方法が、ポリエステル樹脂(A)と非晶性ポリエステル樹脂(B)及び/又は結晶性樹脂(C)とのエステル交換反応が起こりにくく、耐ホットオフセット性と低温定着性が良好なため好ましい。
なお、有機溶剤の含有量(ppm)は、例えばガスクロマトグラフ分析やガスクロマトグラフ質量分析で下記条件で測定することができる。
本発明の実施例と比較例のトナーバインダー中の有機溶剤の含有量は、以下の条件で測定した。
[ガスクロマトグラフ分析測定条件]
ガスクロマトグラフ :Agilent 6890N
質量分析装置 :Agilent 5973 inert
カラム :ZB−WAX(液相:(14%−シアノプロピル−フェニル)メチルポリシロキサン) 0.25mm×30m df=1.0μm
カラム温度 :70℃→300℃(10℃/分)
インジェクション温度:200℃
スプリット比 :50:1
注入量 :1μl
ヘリウム流量 :1ml/分
検出器 :MSD
トナーバインダーが含有する有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、エタノール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコール、2−エチルヘキサノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3−オキソラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ヘキサン、ペンタン、ベンゼン、へプタン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロロベンゼン、スチレン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソペンチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸メチル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノン、ジクロロメタン、オルトジクロロベンゼン、ジメチルスルホキシド、無水酢酸、酢酸、ヘキサメチルフォスフォリックトリアミド、トリエチルアミン、ピリジン、アセトフェノン、t−ヘキシルアルコール、t−アミルアルコール、t−ブトキシベンゼンなどが挙げられる。
これらのうち、耐熱保存性及び臭気の観点から、好ましくは炭素数が2〜10である化合物であり、更に好ましくは炭素数が3〜8であり、特に好ましくはアセトン、イソプロピルアルコール及びt−ブタノールである。
トナーバインダーが含有する有機溶剤は、耐熱保存性及び臭気の観点から、融点が30℃未満であり、更に好ましくは融点が10℃未満であり、特に好ましくは融点が−10℃未満である。
トナーバインダーが含有する有機溶剤は、耐熱保存性及び臭気の観点から、沸点が30℃より高く300℃以下であり、更に好ましくは沸点が40℃より高く200℃以下であり、特に好ましくは沸点が50℃より高く150℃以下である。
トナーバインダー中の界面活性剤の含有量は、帯電性の観点から好ましくは1000ppm以下である。トナーバインダー中の界面活性剤の含有量が1000ppm以下であると、飽和帯電量や帯電安定性が良好となり、荷電制御剤や流動化剤の添加量が低減でき、低温定着性が良好となる。より好ましくは500ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。
界面活性剤とは分子内に疎水部分と親水部分の両方を有する化合物で、水相中で粒子を造粒する乳化凝集法、懸濁重合法、乳化重合等により得られるケミカルトナーを製造するときに一般的に使用する界面活性剤のことである。水相中で樹脂、モノマー、重合開始剤、着色剤及び離型剤等から安定な油滴を形成させるために必要となる。
しかし、本発明のトナーは、界面活性剤の使用が必要なケミカルトナーではなく、界面活性剤を使用しない製造方法、例えば粉砕法でトナーを製造することが好ましく、粉砕法でトナーを製造する場合は界面活性剤を実質的に添加しないため、仮に含んでいたとしても含有量が1000ppm以下である。トナーの界面活性剤の含有量は、好ましくは500ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。
なお、トナーバインダー及びトナー中の界面活性剤の含有量の測定方法は、例えば、トナー中の界面活性剤をTHFやメタノールなどの有機溶媒に抽出させ高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC−MS)、核磁気共鳴装置(NMR)等で化学組成の同定と定量を行うような方法が挙げられる。
本発明においてトナーバインダーとトナー中の界面活性剤の含有量は、以下の方法で測定した値である。
(1)<サンプル調製>トナーまたはトナーバインダー200mgをスクリュー管に秤量し、メタノール25mlを入れ30分超音波を当て界面活性剤を抽出する。その後、遠心分離をかけ、上澄みをサンプリングし、ろ過して測定用サンプルを調製する。
(2)測定条件は以下の通りである。
分析装置:LCMS−8030((株)島津製作所製)
カラム:InertSustainSwift(GLサイエンス(株)製)粒子径1.9μm、内径2.1mm、長さ50mm
移動相:A(10mM酢酸アンモニウム水溶液/メタノール=80/20〔体積比〕)
Bメタノール A/B=40/60〔体積比〕
流速:0.3mL/分
注入量:0.2μl
イオン源:ESI(±)
なお、今回の上記の定量分析方法では、界面活性剤量5ppm以下が検出限界のため、実施例中の表3及び4において、界面活性剤量5ppm以下の場合検出されずとした。
ポリエステル(A1)中の炭素−炭素二重結合量は、特に制限されないが、架橋反応が有効に起こり、トナーの耐ホットオフセット性が良好になるという観点から、好ましくは(A1)の重量に基づいて0.02〜2.0ミリモル/g、更に好ましくは0.06〜1.9ミリモル/g、特に好ましくは0.10〜1.5ミリモル/g、最も好ましくは0.15〜1.0ミリモル/gである。
本発明のトナーバインダーにおいて、ポリエステル(A1)中の炭素−炭素二重結合量とはポリエステル樹脂(A1)を構成するアルコール成分、カルボン酸成分等の原料の合計1g中に含まれる炭素−炭素二重結合のミリモル数のことである。
実際の計算方法としては、例えばポリエステル樹脂の原料としてフマル酸(0.1g)及びビスフェノールA・PO2モル付加物(0.9g)を使用した場合は、原料の合計1gに対して炭素−炭素二重結合を1つ含有し分子量が116のフマル酸を0.1g有しているため、
0.1/116×1000=0.86ミリモル/gとなる。
例えばポリエステル樹脂の原料としてフマル酸(0.3g)及びビスフェノールA・PO2モル付加物(0.7g)を使用した場合は、原料の合計1gに対して炭素−炭素二重結合を1つ含有し分子量が116のフマル酸を0.3g有しているため、
0.3/116×1000=2.59ミリモル/gとなる。
ポリエステル(A1)の酸価は、帯電性安定性の観点から好ましくは0〜30mgKOH/g、更に好ましくは0〜25mgKOH/g、特に好ましくは0〜10mgKOH/gである。
ポリエステル(A1)の酸価、JIS K0070(1992年版)に規定の方法で測定することができる。
本発明のトナーバインダーのガラス転移温度Tgは好ましくは−35〜80℃であり、更に好ましくは、35〜65℃である。ガラス転移温度Tgが−35℃以上の場合は、耐熱保存性が良好になり、80℃以下であると定着性が良好になる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で示差走査熱量測定され、DSCによるチャートでガラス転移温度(Tg)を示す変曲点を確認することができる。例えばセイコーインスツル(株)製DSC20、SSC/580を用いて測定できる。
ところで、本発明のトナーバインダーは、低温定着性を更に向上させる目的で、非線形ポリエステル樹脂(A)と(A)を除く非晶性ポリエステル樹脂(B)とを併用することが好ましい。
この目的で併用する非晶性ポリエステル樹脂(B)としては、飽和アルコール成分(x)と飽和カルボン酸成分(w)を構成単量体とし、不飽和カルボン酸成分(y)と不飽和アルコール成分(z)を構成単量体として含まない樹脂であり、架橋した構造を有していたとしても、架橋した構造を形成する結合に、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子と炭素原子の直接結合により架橋した構造を含まない樹脂である。
非晶性ポリエステル樹脂(B)の「非晶性」とは、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解熱の最大ピーク温度(融点)を持っていない又は高化式フローテスターにより測定される軟化温度と、融解熱の最大ピーク温度(融点)との比(軟化温度/融解熱の最大ピーク温度(融点))が0.80〜1.55の範囲外である性質のことである。
また、非晶性ポリエステル樹脂(B)としては、THF不溶解分を実質的に含まないものが好ましく、好ましい(B)としては、例えばTHF不溶解分の含有量が1.0重量%以下のものである。
非晶性ポリエステル樹脂(B)に用いる飽和アルコール成分(x)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは、炭素数2〜10のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数2〜5)及びノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(オキシアルキレン単位の数2〜30)であり、特に好ましくは、炭素数2〜6のアルキレングリコール及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(付加モル数2〜5)であり、最も好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール及びビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(付加モル数2〜3)である。
非晶性樹脂とするために、直鎖型ジオールの含有率は使用するジオール成分の70モル%以下が好ましく、更に好ましくは60モル%以下である。また、非晶性ポリエステル樹脂(B)を構成する飽和アルコール成分(x)において、ジオール(x2)が90〜100モル%であることが好ましい。
飽和カルボン酸成分(w)としては低温定着性と耐ホットオフセット性との両立の観点から好ましいものは、炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸等)、炭素数2〜50の脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸等)、炭素数9〜20の3価以上の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)及びこれらの組合せである。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
非線形ポリエステル樹脂(A)の原料に使用した炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)の相当量と非晶性ポリエステル樹脂(B)の重量との比〔重量比(A1)/(B)〕は、低温定着性、耐ホットオフセット性及び耐熱保存性の両立の点から、5/95〜50/50が好ましく、更に好ましくは7/93〜45/60であり、特に好ましくは、10/90〜40/60である。
また、非晶性ポリエステル樹脂(B)は線形であっても非線形であってもよいが、低温定着性と耐熱保存性の観点から線形が好ましい。
具体的には、飽和アルコール成分(x)と、飽和カルボン酸成分(w)とを組み合わせて縮合したポリエステル樹脂である。
また、非晶性ポリエステル樹脂(B)はポリエステル(A0)に含まれる炭素原子と炭素原子の直接結合により架橋した構造を含まない微量の架橋点を有していても構わないし、分子末端をポリカルボン酸(3価以上のものでもよい)の無水物の無水トリメリット酸、無水フタル酸等で変性したものであってもよい。
非晶性ポリエステル樹脂(B)のTHF可溶分のMnは、トナーの耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、1,000〜15,000が好ましく、更に好ましくは1,200〜10,000、特に好ましくは1,500〜5,000である。
非晶性ポリエステル樹脂(B)のTHF可溶分のMwは、トナーの耐ホットオフセット性と耐熱保存性と低温定着性の両立の観点から、2,000〜30,000が好ましく、更に好ましくは2,500〜20,000、特に好ましくは3,000〜10,000である。
非晶性ポリエステル樹脂(B)を用いた場合、例えば、分子内に炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)と、非晶性ポリエステル樹脂(B)とが混合した状態で、(A1)中の不飽和カルボン酸成分(y)及び/又は不飽和アルコール成分(z)に起因する炭素−炭素二重結合同士で少なくとも一部が架橋反応して化学結合して、非線形ポリエステル樹脂(A)を製造するような方法が挙げられ、架橋反応を短時間で均一にできる点で好ましい方法である。
更に上記に加え、ラジカル反応開始剤(c)を用いてポリエステル(A1)の炭素−炭素二重結合同士で少なくとも一部が架橋して非線形ポリエステル樹脂(A)を製造するような方法は架橋反応が有効に起こり、架橋反応を短時間で均一にできる点でより好ましい方法である。
また、低温定着性、光沢性を更に向上させる目的で、本発明のトナーバインダーにおいて非線形ポリエステル樹脂(A)に加えて、(A)を除く結晶性樹脂(C)を含有することが好ましい。さらに結晶性樹脂(C)を用いた場合も非晶性ポリエステル樹脂(B)と同様に、例えば、分子内に炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)と、結晶性樹脂(C)とが混合した状態で、(A1)中の不飽和カルボン酸成分(y)及び/又は不飽和アルコール成分(z)に起因する炭素−炭素二重結合同士で少なくとも一部が架橋反応して化学結合して、非線形ポリエステル樹脂(A)を製造するような方法が挙げられ、架橋反応を短時間で均一にできる点で好ましい方法である。
本発明における結晶性樹脂の「結晶性」とは、高化式フローテスターにより測定される軟化温度と、示差走査熱量計(DSC)により測定される融解熱の最大ピーク温度(融点)との比(軟化温度/融解熱の最大ピーク温度(融点))が0.80〜1.55であることをいい、熱により急峻に軟化する性状であり、この性状を有する樹脂を「結晶性樹脂」とする。
非線形ポリエステル樹脂(A)の原料に使用した炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)の相当量と結晶性樹脂(C)の重量との比〔重量比(A1)/(C)〕は、トナーの流動性、耐熱保存性、粉砕性、定着後の画像強度、低温定着性及び光沢性の観点から、5/95〜95/5が好ましく、更に好ましくは15/85〜85/15であり、特に好ましくは、40/60〜60/40である。
結晶性樹脂(C)としては、非線形ポリエステル樹脂(A)と定着時に相溶するものであれば特にその化学構造は限定されない。
例えば結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性ポリウレア樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、結晶性ポリビニル樹脂などの樹脂が挙げられる。この中でも相溶性の観点から結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、ジオール成分(X)とジカルボン酸成分(Y)とを必須構成単量体とするポリエステル樹脂等が挙げられ、必要に応じて3価以上のアルコール成分や3価以上のポリカルボン酸成分を併用してもよい。ジオール成分(X)としては、上記ジオール(x2)で例示したもの等が挙げられる。ジカルボン酸成分(Y)としては、飽和カルボン酸成分(w)として例示したもののうちジカルボン酸として例示したもの等が挙げられる。
ジオール成分(X)のジオールとしては、結晶性の観点から鎖状脂肪族ジオールが好ましい。炭素数は好ましくは2〜36個であり、2〜20個がさらに好ましい。具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール及び1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。これらのうち、炭素数2〜12(エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール及び1,12−ドデカンジオール)が好ましい。
結晶性、低温定着性及び耐熱保存性の観点から、ジオール成分の直鎖型脂肪族ジオールの含有率が、結晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体として使用するジオール成分(X)の合計モル数を基準として、80モル%以上である結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂を構成するジカルボン酸成分(Y)のジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸が結晶性、低温定着性及び耐熱保存性の観点から好ましく、直鎖型の脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸及びオクタデカンジカルボン酸等)が特に好ましい。
トナーバインダーの製造方法について説明する。
トナーバインダーは非線形ポリエステル樹脂(A)を含有していれば特に限定されず、たとえば2種類以上のポリエステル樹脂や添加剤を混合する場合、混合方法は公知の方法でよく、粉体混合、溶融混合、溶剤混合のいずれでもよい。また、トナー化時に混合してもよい。この方法の中では、均一に混合し、溶剤除去の必要のない溶融混合が好ましい。
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、及びバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置、及び連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロール等が挙げられる。
溶剤混合の方法としては、2種類以上のポリエステル樹脂を上記有機溶剤に溶解し、均一化させた後、脱溶剤、粉砕する方法や、2種類以上のポリエステル樹脂を上記有機溶剤に溶解し、水中に分散させた後、造粒、脱溶剤する方法などがある。
溶融混合を行うための具体的方法としてはポリエステル(A1)と必要により非晶性ポリエステル樹脂(B)及び/又は結晶性樹脂(C)との混合物を二軸押出機に一定速度で注入し、同時にラジカル反応開始剤(c)も一定速度で注入し、100〜200℃の温度で混練搬送しながら反応を行わせるなどの方法がある。
このとき、二軸押出機に投入又は注入される反応原料であるポリエステル(A1)と非晶性ポリエステル樹脂(B)及び/又は結晶性樹脂(C)は、それぞれ樹脂反応溶液から冷却することなくそのまま直接押出機に注入するようにしてもよいし、また一旦製造した樹脂を冷却、粉砕したものを二軸押出機に供給することにより行ってもよい。
また、溶融混合する方法がこれら具体的に例示された方法に限られるわけではなく、例えば反応容器中に原料を仕込み、溶液状態となる温度に加熱し、混合するような方法など適宜の方法で行うことができることはもちろんである。
また、このとき、開始剤分解物由来の有機溶剤を脱溶剤する方法としては、二軸押出機にて原料を反応させながら、ベント口から減圧を行ったり、一旦反応した樹脂を冷却、粉砕したものを再び二軸押出機に供給しベント口から減圧を行ったりしても良い。また、一旦反応した樹脂を冷却、粉砕したものをナウターミキサー等を用いて任意の温度で撹拌しながら減圧しても良い。反応容器中に原料を仕込み、溶液状態となる温度に加熱し、混合して反応させた場合は、反応後にそのまま減圧操作にて脱溶剤するような方法又は適宜の方法で脱溶剤を行うことができることはもちろんである。
本発明のトナーは、上記本発明のトナーバインダーを含有すればよいが、着色剤を含有してもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末若しくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部、更に好ましくは3〜10重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150重量部、更に好ましくは40〜120重量部である。
本発明のトナーは、トナーバインダー及び着色剤以外に、必要により、離型剤、荷電制御剤、流動化剤等から選ばれる1種以上の添加剤を含有させることができる。
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素ワックス及びそれらの酸化物、カルナバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステルワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるものおよび熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、並びにサゾールワックス等が挙げられる。
上記の中では低温定着性や耐ホットオフセット性の観点から好ましくは、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、カルナバワックス及びエステルワックスが好ましい。
離型剤としては、低温定着性及び耐ホットオフセット性の観点から、フローテスターによる軟化点〔Tm〕が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸及びこれらの混合物等が挙げられる。
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
離型剤はトナー重量に基づき、0〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。
荷電制御剤はトナー重量に基づき、0〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5〜7.5重量%である。
流動化剤はトナー重量に基づき、0〜10重量%、好ましくは0〜5重量%、特に好ましくは0.1〜4重量%である。
また、添加剤の合計量はトナー重量に基づき、3〜70重量%、好ましくは4〜58重量%、特に好ましくは5〜50重量%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
本発明のトナーは、公知の混練粉砕法、乳化転相法、重合法等のいずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、更に分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
なお、体積平均粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
トナー中の有機溶剤の含有量は耐熱保存性、臭気、耐ホットオフセット性の観点から、好ましくは25〜2000ppmであり、さらに好ましくは40〜1700ppmであり、最も好ましくは50〜400ppmである。
本発明のトナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト、及び樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリア粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。トナーとキャリア粒子との重量比は、好ましくは1/99〜100/0である。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
本発明のトナーは、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像又は磁気潜像の現像に用いられ、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
<製造例1> [ポリエステル(A1−1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・EO2モル付加物739部(96.0モル%)、トリメチロールプロパン13部(4.0モル%)、テレフタル酸137部(42.0モル%)、アジピン酸147部(51.2モル%)、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、230℃で0.5〜2.5kPaの減圧下に5時間反応させた後、175℃まで降温した。重合禁止剤としてtert−ブチルカテコール1部を入れ、さらにフマル酸を40部(6.8モル%)入れ、窒素気流化に、生成する水を留去しながらで2時間反応させた。次に、0.5〜2.5kPaの減圧下に8時間反応させた後取り出し、ポリエステル(A1−1)を得た。 ポリエステル(A1−1)のTgA1は37℃、ピークトップ分子量は10,600、二重結合量は0.32ミリモル/gだった。
<製造例2〜3> [ポリエステル(A1−2)〜(A1−3)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、表1に記載したアルコール成分とカルボン酸成分を仕込み、それ以外は製造例1と同様に反応を行い、ポリエステル(A1−2)〜(A1−3)を得た。表1に得られたポリエステル(A1−2)〜(A1−3)の二重結合量、ガラス転移温度、ピークトップ分子量を記載した。
<製造例4> [ポリエステル(A1−4)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、3−メチル−1,5−ペンタンジオール559部(96.8モル%)、トリメチロールプロパン18部(3.2モル%)、テレフタル酸578部(86.6モル%)、アジピン酸45部(7.7モル%)、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5部を入れ、220℃で窒素気流化に、生成する水を留去しながら2時間反応させた。次に、0.5〜2.5kPaの減圧下に5時間反応させた後、175℃まで降温した。重合禁止剤としてtert−ブチルカテコール1部を入れ、さらにフマル酸を27部(5.7モル%)入れ、窒素気流化に、生成する水を留去しながらで2時間反応させた。次に、0.5〜2.5kPaの減圧下に8時間反応させた後取り出し、ポリエステル(A1−4)を得た。回収された3−メチル−1,5ペンタンジオールは86部であった。表1に得られたポリエステル(A1−4)の二重結合量、ガラス転移温度、ピークトップ分子量を記載した。
Figure 2019012260
<比較製造例1> [ポリエステル(A1’−1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、表1に記載したアルコール成分とカルボン酸成分を仕込み、それ以外は製造例1と同様に反応を行い、ポリエステル(A1’−1)を得た。
ポリエステル(A1’−1)は不飽和カルボン酸成分(y)を含有しないため、本発明のポリエステル(A1)には該当しない。
<製造例5> [非晶性ポリエステル樹脂(B−1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、表2に記載したビスフェノールA・PO2モル付加物389部(50.0モル%)、ビスフェノールA・EO2モル付加物365部(50.0モル%)、テレフタル酸266部(84.1モル%)、アジピン酸7部(6.9モル%)、縮合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート0.6部、220℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させた。更に、0.5〜2.5kPaの減圧下に10時間反応させた。次いで180℃まで冷却し、無水トリメリット酸29部(9.0モル%)を加え、常圧密閉下1時間反応後取り出し、非晶性ポリエステル樹脂(B−1)を得た。この(B−1)は不飽和カルボン酸成分(y)を含まない。
Figure 2019012260
<製造例6>[結晶性樹脂(C−1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ドデカン二酸716部と1,6−ヘキサンジオール394部及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5部を入れ、170℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させ、更に0.5〜2.5kPaの減圧下に反応させ、酸価が0.5以下になった時点で取り出し、結晶性樹脂(C−1)を得た。結晶性樹脂(C−1)の軟化温度は78℃、融点は72℃であった。軟化温度/融点が1.08であることから熱により急峻に軟化する性状であり、結晶性樹脂である。
<実施例1> [トナーバインダー(D−1)の製造]
ポリエステル(A1−1)15部と非晶性ポリエステル樹脂(B−1)85部を二軸混練器((株)栗本鉄工所製, S5KRCニーダー)に52kg/時で供給し、同時にラジカル反応開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)2.0部を1kg/時で供給して160℃で6分間混練押出して架橋反応を行った。得られたものを冷却し、3mm以下の粒径まで粉砕した粉末を二軸混練器に供給し、52kg/時で供給して160℃で6分間、軸回転数90rpm、減圧度90kPaの条件でベント口から脱溶剤を行い、本発明のトナーバインダー(D−1)を得た。
<実施例2> [トナーバインダー(D−2)の製造]
表3に示した重量部数のポリエステル(A1−1)と非晶性ポリエステル樹脂(B−1)と結晶性樹脂(C−1)及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)を仕込み、実施例1と同様に架橋反応、脱溶剤を行い、本発明のトナーバインダー(D−2)を得た。
<実施例3> [トナーバインダー(D−3)の製造]
表3に示した重量部数のポリエステル(A1−1)と非晶性ポリエステル樹脂(B−1)及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)を仕込み、実施例1と同様に架橋反応を行い、脱溶剤時間を20分に変更し、本発明のトナーバインダー(D−3)を得た。
<実施例4> [トナーバインダー(D−4)の製造]
表3に示した重量部数のポリエステル(A1−1)と非晶性ポリエステル樹脂(B−1)及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)を仕込み、実施例1と同様に架橋反応を行い、脱溶剤減圧度を35kPaに変更し、本発明のトナーバインダー(D−4)を得た。
<実施例5> [トナーバインダー(D−5)の製造]
表3に示した重量部数のポリエステル(A1−1)と非晶性ポリエステル樹脂(B−1)及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)を仕込み、実施例1と同様に架橋反応を行い、脱溶剤を反応釜中で40℃1440分撹拌回転数180rpm、減圧度90kPaで行い、本発明のトナーバインダー(D−5)を得た。
<実施例6> [トナーバインダー(D−6)の製造]
表3に示した重量部数のポリエステル(A1−1)、非晶性ポリエステル樹脂(B−1)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)、過酸化水素(c−2)、アスコルビン酸(d−1)を仕込み、実施例1と同様に架橋反応、脱溶剤を行い、本発明のトナーバインダー(D−6)を得た。
<実施例7> [トナーバインダー(D−7)の製造]
表3に示した重量部数のポリエステル(A1−1)、非晶性ポリエステル樹脂(B−1)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)、硫酸第二鉄(d−2)、ピロリン酸(d−3)を仕込み、実施例1と同様に架橋反応、脱溶剤を行い、本発明のトナーバインダー(D−7)を得た。
<実施例8> [トナーバインダー(D−8)の製造]
表3に示した重量部数のポリエステル(A1−1)、非晶性ポリエステル樹脂(B−1)、ジ−t−ブチルパーオキシド(c−3)を仕込み、実施例1と同様に架橋反応、脱溶剤を行い、本発明のトナーバインダー(D−8)を得た。
<実施例9〜13> [トナーバインダー(D−9)〜(D−13)の製造]
表4に示した重量部数のポリエステル(A1−1)〜(A1−4)、非晶性ポリエステル樹脂(B−1)、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)を仕込み、実施例1と同様に架橋反応、脱溶剤を行い、本発明のトナーバインダー(D−9)〜(D−13)を得た。
<実施例14> [トナーバインダー(D−14)の製造]
表4に示した重量部数のポリエステル(A1)、結晶性樹脂(C−1)及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)を仕込み、実施例1と同様に架橋反応、脱溶剤を行い、本発明のトナーバインダー(D−14)を得た。
<比較例1> [トナーバインダー(D’−1)の製造]
表4に示した重量部数のポリエステル(A1’−1)、非晶性ポリエステル樹脂(B−1)及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)をそれぞれ仕込み、実施例1と同様に反応、脱溶剤を行い、トナーバインダー(D’−1)を得た。トナーバインダー(D’−1)中の(A1’−1)は炭素−炭素結合により架橋されてないため、本発明のトナーバインダーには該当しない。
<比較例2> [トナーバインダー(D’−2)の製造]
表4に示した重量部数のポリエステル(A1−1)、非晶性ポリエステル樹脂(B−1)及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)をそれぞれ仕込み、実施例1と同様に架橋反応を行い、脱溶剤工程を行わず、トナーバインダー(D’−2)を得た。トナーバインダー(D’−2)は有機溶含量が5000ppmであり、本発明のトナーバインダーに該当しない。
<比較例3> [トナーバインダー(D’−3)の製造]
表4に示した重量部数のポリエステル(A1−1)、非晶性ポリエステル樹脂(B−1)及びt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(c−1)をそれぞれ仕込み、実施例1と同様に架橋反応を行い、脱溶剤時間を180分、脱溶剤減圧度を35kPa、脱溶剤温度を180℃に変更し、トナーバインダー(D’−3)を得た。トナーバインダー(D’−3)は有機溶含量が48ppmであり、本発明のトナーバインダーには該当しない。
トナーバインダー(D−1)〜(D−14)及び比較のトナーバインダー(D’−1)〜(D’−3)それぞれのガラス転移温度、有機溶剤含有量及び界面活性剤含有量を表3及び表4に記載した。
Figure 2019012260
Figure 2019012260
<実施例15> [トナー(T−1)の製造]
トナーバインダー(D−1)85部に対して、顔料のカーボンブラックMA−100[三菱化学(株)製]6部、離型剤のカルナバワックス4部、荷電制御剤T−77[保土谷化学(製)]4部を加え下記の方法でトナー化した。
まず、ヘンシェルミキサ[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM−30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS−I]で分級し、体積平均粒径D50が8μmのトナー粒子を得た。
ついで、トナー粒子100部に流動化剤としてコロイダルシリカ[アエロジルR972:日本アエロジル製]1部をサンプルミルにて混合して、本発明のトナー(T−1)を得た。トナー(T−1)の評価結果を表5に記載した。
<実施例16〜28> [トナー(T−2)〜(T−14)の製造]
表5に記載した原料の配合部数で、実施例15と同様にトナーを製造し、本発明のトナー(T−2)〜(T−14)を得た。トナー(T−2)〜(T−14)の評価結果を表5に記載した。
Figure 2019012260
<比較例4〜6> [トナー(T’−1)〜(T’−3)の製造]
表5に記載した原料の配合で、実施例15と同様にトナーを製造し、トナー(T’−1)〜(T’−3)を得た。トナー(T’−1)〜(T’−3)の評価結果を表5に記載した。
[評価方法]
以下に、得られたトナーの低温定着性、光沢性、耐ホットオフセット性、耐熱保存性、帯電安定性、粉砕性、画像強度、臭気、流動性、耐折り曲げ性、ドキュメントオフセット性の測定方法と評価方法を、判定基準を含めて説明する。
<低温定着性>
トナーを紙面上に1.00mg/cmとなるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いる。
この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラの周速)213mm/秒の条件で通した時のコールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
この評価条件では、一般には125℃以下が必要とされる。
<光沢性>
低温定着性と同様に定着評価を行う。
画像の下に白色の厚紙を敷き、光沢度計(株式会社堀場製作所製、「IG−330」)を用いて、入射角度60度にて、印字画像の光沢度(%)を、コールドオフセットの発生温度(MFT)以上の温度からホットオフセットが発生した温度まで、5℃ごとに測定し、その範囲において最も高い光沢度(%)をトナーの光沢性の指標とした。
例えば、120℃では10%、125℃では15%、130℃では20%、135℃では18%であれば、130℃の20%が最も高い値なので20%を採用する。
光沢度が高いほど、光沢性に優れることを意味する。この評価条件では、20%以上が好ましい。
<耐ホットオフセット性(ホットオフセット発生温度)>
低温定着性と同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。加圧ローラー通過後、ホットオフセットが発生した温度を耐ホットオフセット性(℃)とした。この評価条件では、好ましい範囲は180℃以上である。
<耐熱保存性>
トナー1gを密閉容器に入れ、温度50℃、湿度50%の雰囲気で24時間静置し、ブロッキングの程度を目視で判断し、下記判定基準で耐熱保存性を評価した。
[判定基準]
○:ブロッキングが全く発生していない。
△:一部にブロッキングが発生している。
×:全体にブロッキングが発生している。
<帯電安定性>
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック(株)製、F−150)20gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間以上調湿する。(2)ターブラーシェーカーミキサーにて50rpm×10分間と60分間摩擦攪拌し、それぞれの時間での帯電量を測定した。
測定にはブローオフ帯電量測定装置[東芝ケミカル(株)製]を用いた。
「摩擦時間60分後の帯電量/摩擦時間10分後の帯電量」を計算し、これを帯電安定性の指標とした。
[判定基準]
○:0.7以上
△:0.6以上0.7未満
×:0.6未満
<粉砕性>
二軸混練機で混練、冷却した粗粉砕物(8.6メッシュパス〜30メッシュオンのもの)を、超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]により下記の条件で微粉砕した。
粉砕圧:0.5MPa
粉砕時間:10分
アジャスターリング:15mm
ルーバーの大きさ:中
これを分級せずに、体積平均粒径(μm)をコールターカウンター−TAII(米国コールター・エレクトロニクス社製)により測定し、下記の判定基準で粉砕性を評価した。
[判定基準]
○:10μm未満
△:10μm以上12μm未満
×:12μm以上
<画像強度>
低温定着性の評価で定着した画像を、JIS K5600に準じて、斜め45度に固定した鉛筆の真上から10gの荷重をかけ引っ掻き試験を行い、傷のつかない鉛筆硬度から画像強度を評価した。鉛筆硬度が高いほど画像強度に優れることを意味する。一般にはHB以上が必要とされる。
[判定基準]
○:HB以上
△:B
×:2B以下
<臭気試験>
トナーを蓋付ガラス製試験管(φ15mm×150mm)に1.0g入れ、密閉し、210℃にて5分間加熱した。その後、蓋を取り、10人のモニターが臭気を確認し、以下の判定基準で評価した。
[判定基準]
○:1人も臭わないか1人だけ臭うと回答
△:2〜6人が臭うと回答
×:7人以上が臭うと回答
<トナー流動性>
ホソカワミクロン製パウダーテスターでトナーの静かさ密度を測定し、トナー流動性を下記基準で判定した。△以上が実用範囲である。
[判定基準]
○:36g/100ml以上
△:30g/100ml以上36g/100ml未満
×:30g/100ml未満
<耐折り曲げ性>
低温定着性の評価で定着した画像を画像面が内側になるように紙を折り曲げ、30gの加重で3往復擦り、紙を広げて、画像上の折り曲げたあとの白すじの有無を目視で判定した。
[判定基準]
○:白すじなし
△:わずかに白すじあり
×:白すじあり
<ドキュメントオフセット性>
低温定着性の評価で得られた画像が定着されたA4の紙2枚を、定着面同士で重ね合わせ、420gの加重(0.68g/cm)をかけ、50℃で30分間静置する。重ね合わせた紙同士を引き離したときの状態について、下記の判定基準でドキュメントオフセット性を評価した。
[判定基準]
○:抵抗なし
△:パリパリと音がするが、紙面から画像は剥がれない
×:紙面から画像が剥がれる
表5の評価結果から明らかなように、本発明の実施例トナーはいずれもすべての性能評価が優れた結果が得られた。
一方、比較例のトナーは少なくとも1つの性能評価において劣る結果となった。
本発明のトナーバインダー及びトナーは、高いレベルの光沢を有しながら耐オフセット性を維持しつつ、低温定着性、粉砕性、画像強度、耐熱保存性に優れ、電子写真、静電記録や静電印刷等に用いる、フルカラー用静電荷像現像用トナー及びトナーバインダーとして好適に使用できる。
更に、塗料用添加剤、接着剤用添加剤、電子ペーパー用粒子などの用途として好適である。

Claims (14)

  1. 非線形ポリエステル樹脂(A)と有機溶剤とを含有するトナーバインダーであって、前記(A)がポリエステル(A0)を架橋した構造を有する樹脂であり、架橋した構造を形成する少なくとも1つの結合が、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子との直接結合であり、トナーバインダー中の有機溶剤の含有量が50ppm以上2000ppm以下であるトナーバインダー。
  2. 前記有機溶剤が、炭素数が2〜10である化合物であり、融点が30℃未満であり、かつ沸点が30℃より高く300℃以下である請求項1に記載のトナーバインダー。
  3. 前記有機溶剤が、アセトン、イソプロピルアルコール及びt−ブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載のトナーバインダー。
  4. 前記ポリエステル(A0)が、炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)を含有するポリエステルである請求項1〜3いずれかに記載のトナーバインダー。
  5. 非線形ポリエステル樹脂(A)が、炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)由来の炭素−炭素二重結合同士で少なくとも一部が架橋してなる樹脂である請求項4に記載のトナーバインダー。
  6. 炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)中の炭素−炭素二重結合量が(A1)の重量に基づいて0.02〜2.00ミリモル/gである請求項4又は5に記載のトナーバインダー。
  7. 炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)のガラス転移温度TgA1が−35〜45℃である請求項4〜6いずれかに記載のトナーバインダー。
  8. 非線形ポリエステル樹脂(A)を除く非晶性ポリエステル樹脂(B)を含有し、(B)が飽和カルボン酸成分及び飽和アルコール成分を構成単量体とする非晶性ポリエステル樹脂である請求項1〜7いずれかに記載のトナーバインダー。
  9. 非線形ポリエステル樹脂(A)を除く非晶性ポリエステル樹脂(B)を含有し、(B)が飽和カルボン酸成分及び飽和アルコール成分を構成単量体とする非晶性ポリエステル樹脂であり、非線形ポリエステル樹脂(A)の原料に使用した炭素−炭素二重結合を有するポリエステル(A1)の相当量と非晶性ポリエステル樹脂(B)の重量との比〔重量比(A1)/(B)〕が5/95〜50/50である請求項4〜7いずれかに記載のトナーバインダー。
  10. 更に非線形ポリエステル樹脂(A)を除く結晶性樹脂(C)を含有する請求項1〜9いずれかに記載のトナーバインダー。
  11. トナーバインダーのガラス転移温度Tgが−35〜80℃である請求項1〜10いずれかに記載のトナーバインダー。
  12. 請求項1〜11いずれかに記載のトナーバインダーを含有するトナー。
  13. 非線形ポリエステル樹脂(A)が、ラジカル反応開始剤(c)を用いてポリエステル(A0)に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子とを直接結合させて架橋されたものである請求項1〜11いずれかに記載のトナーバインダーの製造方法。
  14. 非線形ポリエステル樹脂(A)が、還元剤(d)を用いてポリエステル(A0)に含まれる炭素原子のうち少なくとも1つの炭素原子と、ポリエステル(A0)に含まれる炭素原子とを直接結合させて架橋されたものである請求項13に記載のトナーバインダーの製造方法。
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