以下に本発明において好ましい画像形成方法の構成を詳述する。
本発明における画像形成方法は、非磁性のトナー及び磁性のキャリアを有する現像剤を担持して、像担持体に対向する現像領域に回転搬送する円筒状の現像スリーブと、前記現像スリーブの内側に設けられると共に、前記現像領域の内側に対向して前記現像領域において担持されたキャリアを穂立ちさせる現像磁極を有する磁界発生手段とを備えた現像装置を用いる。そして、前記現像スリーブの外周面に対する前記現像磁極の法線方向の磁束密度の80%値幅と半値幅との比率が、正規分布である磁束密度の80%値幅と半値幅との比率より大きいことと、該トナーはトナー粒子と無機微粒子を含有するトナーであって、該トナー表面の無機微粒子の被覆率が30%以上であることを特徴とする。
本発明における現像装置は、非磁性のトナー及び磁性のキャリアを有する現像剤を担持して、像担持体に対向する現像領域に回転搬送する円筒状の現像スリーブと、前記現像スリーブの内側に設けられると共に、前記現像領域の内側に対向して前記現像領域において担持されたキャリアを穂立ちさせる現像磁極を有する磁界発生手段とを備え、前記現像スリーブの外周面に対する前記現像磁極の法線方向の磁束密度の80%値幅と半値幅との比率は、正規分布である磁束密度の80%値幅と半値幅との比率より大きいことが重要である。
現像装置がこの構成であるとき、現像効率を高めることができ、露光電位と現像スリーブ間の電位差を上げ電界強度を高めることなく現像することが可能となる。その結果、白ぬけの発生を抑制し、画像の均一性を保つことができる。本発明者らは、その要因について以下のように考えている。
現像スリーブの外周面に対する現像磁極の法線方向の磁束密度の80%値幅と半値幅との比率は、正規分布である磁束密度の80%値幅と半値幅との比率より大きい。このため、正規分布である磁束密度において単に現像磁極の半値幅を大きくして現像領域を増やした場合と比較して、磁束密度の80%値幅が広いため、現像領域の回転方向の上流部分と下流部分においても磁力線が感光ドラムの表面に対して直線的に向かう。これにより、磁気穂の先端が感光ドラムの表面に対して沿うことなく点状に接するので、トナーは現像スリーブ側から磁気穂によって阻害されることなく感光ドラムに飛翔することができる。したがって、現像領域を拡張しながらも、感光ドラムに対する磁気穂の先端の接触による現像効率の低下を抑制することができる。
本現象は、低湿環境下で悪化しやすいことが分かっていたが、本発明者らがさらに検討を行ったところ、トナー表面の無機微粒子の被覆率が30%以上のトナーを用いることで低湿環境下でも白ぬけの現象を改善することに成功した。本発明者らは、その要因について以下のように考えている。
トナー表面の無機微粒子の被覆率を30%以上にすることで、スペーサー効果が働き、トナーのキャリアへの付着力が減少する。本発明の現像装置では、トナーは現像スリーブ側から磁気穂によって阻害されることなく感光ドラムに飛翔するため、付着力が減少することでより飛翔しやすくなったと考えている。
以下に本発明において好ましい現像装置及びトナーの構成を詳述する。
<現像装置>
以下、本発明の実施の形態の現像装置を、図1、2、4、5を参照しながら詳細に説明する。尚、本実施の形態では、現像装置を、画像形成装置の一例としてタンデム型のフルカラープリンタに適用した場合について説明している。但し、本発明はタンデム型の画像形成装置の現像装置に限られず、他の方式の画像形成装置の現像装置であってもよく、また、フルカラーであることにも限られず、モノクロやモノカラーであってもよい。あるいは、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施することができる。また、本実施の形態では、画像形成装置1は、中間転写ベルト44bを有し、感光ドラム81から中間転写ベルト44bに各色のトナー像を一次転写した後、各色の複合トナー像をシートSに一括して二次転写する方式としている。但し、これには限られず、シート搬送ベルトで搬送されたシートに感光ドラムから直接に転写する方式を採用してもよい。
図1に示すように、画像形成装置1は、筐体としての画像形成装置本体(以下、装置本体という)10を備えている。装置本体10は、画像読取部11と、シート給送部30と、画像形成部40と、シート搬送部50と、シート排出部60と、制御部70と、を備えている。なお、記録材であるシートSは、トナー像が形成されるものであり、具体例として、普通紙、普通紙の代用品である樹脂製のシート、厚紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート等がある。
画像読取部11は、装置本体10の上部に設けられている。画像読取部11は、原稿載置台としての不図示のプラテンガラスと、プラテンガラスに載置された原稿に光を照射する不図示の光源と、反射光をデジタル信号に変換する不図示のイメージセンサ等を備えている。
シート給送部30は、装置本体10の下部に配置されており、記録紙等のシートSを積載して収容するシートカセット31a,31bと、給送ローラ32a,32bとを備え、収容されたシートSを画像形成部40に給送する。
画像形成部40は、画像形成ユニット80と、トナーホッパ41と、トナー容器42と、レーザスキャナ43と、中間転写ユニット44と、二次転写部45と、定着装置46とを備えている。画像形成部40は、画像情報に基づいてシートSに画像を形成可能である。なお、本実施の形態の画像形成装置1は、フルカラーに対応するものであり、画像形成ユニット80y,80m,80c,80kは、イエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)、ブラック(k)の4色それぞれに同様の構成で別個に設けられている。トナーホッパ41y,41m,41c,41k及びトナー容器42y,42m,42c,42kも同様に、イエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)、ブラック(k)の4色それぞれに同様の構成で別個に設けられている。このため、図1中では4色の各構成について同符号の後に色の識別子を付して示すが、図2及び明細書中では色の識別子を付さずに符号のみで説明する場合がある。
トナー容器42は、例えば円筒形状のボトルであり、トナーが収容され、各画像形成ユニット80の上方に、トナーホッパ41を介して連結して配置されている。レーザスキャナ43は、帯電ローラ82により帯電された感光ドラム81の表面を露光して、感光ドラム81の表面上に静電潜像を形成する。
画像形成ユニット80は、4色のトナー画像を形成するための4個の画像形成ユニット80y,80m,80c,80kを含んでいる。各画像形成ユニット80は、トナー画像を形成する感光ドラム(像担持体)81と、帯電ローラ82と、現像装置20と、クリーニングブレード84とを備えている。また、感光ドラム81と、帯電ローラ82と、現像装置20と、クリーニングブレード84と、後述する現像スリーブ24とについても、イエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)、ブラック(k)の4色それぞれに同様の構成で別個に設けられている。
感光ドラム81は、アルミニウムシリンダの外周面に負極性の帯電極性を持つよう形成された感光層を有し、所定のプロセススピード(周速度)で矢印方向に回転する。帯電ローラ82は、感光ドラム81の表面に接触して、感光ドラム81の表面を、例えば、一様な負極性の暗部電位に帯電させる。感光ドラム81の表面では、帯電後、レーザスキャナ43によって画像情報に基づいて静電像が形成される。感光ドラム81は、形成された静電像を担持して、周回移動し、現像装置20によってトナーで現像される。現像装置20の詳細な構成については、後述する。
現像されたトナー像は、後述する中間転写ベルト44bに一次転写される。一次転写後の感光ドラム81は、不図示の前露光部によって表面を除電される。クリーニングブレード84は、感光ドラム81の表面に接して配置され、一次転写後の感光ドラム81の表面に残留する転写残留トナー等の残留物を清掃する。
中間転写ユニット44は、画像形成ユニット80y,80m,80c,80kの上方に配置されている。中間転写ユニット44は、駆動ローラ44aや従動ローラ44d、1次転写ローラ44y,44m,44c,44k等の複数のローラと、これらのローラに巻き掛けられた中間転写ベルト44bとを備えている。1次転写ローラ44y,44m,44c,44kは、感光ドラム81y,81m,81c,81kにそれぞれ対向して配置され、中間転写ベルト44bに当接する。
中間転写ベルト44bに1次転写ローラ44y,44m,44c,44kによって正極性の転写バイアスを印加することにより、感光ドラム81y,81m,81c,81k上のそれぞれの負極性を持つトナー像が順次中間転写ベルト44bに多重転写される。これにより、中間転写ベルト44bは、感光ドラム81y,81m,81c,81kの表面で静電像を現像して得られたトナー像を転写して移動する。
二次転写部45は、二次転写内ローラ45aと、二次転写外ローラ45bとを備えている。二次転写外ローラ45bに正極性の二次転写バイアスを印加することによって、中間転写ベルト44bに形成されたフルカラー画像をシートSに転写する。定着装置46は、定着ローラ46a及び加圧ローラ46bを備えている。定着ローラ46aと加圧ローラ46bとの間をシートSが挟持され搬送されることにより、シートSに転写されたトナー像は加熱及び加圧されてシートSに定着される。
シート搬送部50は、二次転写前搬送経路51と、定着前搬送経路52と、排出経路53と、再搬送経路54とを備え、シート給送部30から給送されたシートSを画像形成部40からシート排出部60に搬送する。
シート排出部60は、排出経路53の下流側に配置された排出ローラ対61と、排出ローラ対61の下流側に配置された排出トレイ62とを備えている。排出ローラ対61は、排出経路53から搬送されるシートSをニップ部から給送し、装置本体10に形成された排出口10aを通して排出トレイ62に排出する。排出トレイ62は、フェイスダウントレイになっており、排出口10aから矢印X方向に排出されたシートSを積載する。
制御部70はコンピュータにより構成され、例えばCPUと、各部を制御するプログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、外部と信号を入出力する入出力回路とを備えている。CPUは、画像形成装置1の制御全体を司るマイクロプロセッサであり、システムコントローラの主体である。CPUは、入出力回路を介して、画像読取部11、シート給送部30、画像形成部40、シート搬送部50、シート排出部60、操作部に接続され、各部と信号をやり取りすると共に動作を制御する。
次に、このように構成された画像形成装置1における画像形成動作について説明する。
画像形成動作が開始されると、まず感光ドラム81が回転して表面が帯電ローラ82により帯電される。そして、レーザスキャナ43により画像情報に基づいてレーザ光が感光ドラム81に対して発光され、感光ドラム81の表面上に静電潜像が形成される。この静電潜像にトナーが付着することにより、現像されてトナー画像として可視化され、中間転写ベルト44bに転写される。
一方、このようなトナー像の形成動作に並行して給送ローラ32a,32bが回転し、シートカセット31a,31bの最上位のシートSを分離しながら給送する。そして、中間転写ベルト44bのトナー画像にタイミングを合わせて、二次転写前搬送経路51を介してシートSが二次転写部45に搬送される。更に、中間転写ベルト44bからシートSに画像が転写され、シートSは、定着装置46に搬送され、ここで未定着トナー像が加熱及び加圧されてシートSの表面に定着され、排出ローラ対61により排出口10aから排出されて排出トレイ62に積載される。
次に、現像装置20について、図2に基づいて詳細に説明する。現像装置20は、現像剤を収容する現像容器21と、第1搬送スクリュ22及び第2搬送スクリュ23と、現像スリーブ24と、規制部材25とを有している。現像容器21は、感光ドラム81に対向する位置に、現像スリーブ24が露出する開口部21aを有している。
現像容器21には、トナーが充填されたトナー容器42(図1参照)からトナーが供給される。現像容器21は、略中央部にて長手方向に延在する隔壁27を有している。現像容器21は、この隔壁27によって水平方向に現像室21bと撹拌室21cとに区画されている。現像剤は、これら現像室21b及び撹拌室21cに収容されている。現像室21bは、現像スリーブ24に現像剤を供給する。撹拌室21cは、現像室21bに連通し、現像スリーブ24からの現像剤を回収して撹拌する。
第1搬送スクリュ22は、現像室21bに現像スリーブ24の軸方向に沿って現像スリーブ24と略平行に配置され、現像室21b内の現像剤を撹拌しつつ搬送する。第2搬送スクリュ23は、撹拌室21c内に第1搬送スクリュ22の軸と略平行に配置され、撹拌室21c内の現像剤を第1搬送スクリュ22と反対方向に搬送する。即ち、現像室21bと撹拌室21cとは、現像剤を撹拌しつつ搬送する現像剤の循環経路を構成している。トナーは、各スクリュ22,23によって撹拌されることにより、キャリアと摺擦して負極性に摩擦帯電される。
現像スリーブ24は、非磁性のトナー及び磁性のキャリアを有する現像剤を担持して、感光ドラム81に対向する現像領域Daに回転搬送する。本実施の形態では、現像領域Daは、現像スリーブ24の表面上でキャリアにより形成された磁気穂Bが感光ドラム81に接触する範囲としている(図4(a)参照)。現像スリーブ24は、例えば直径20mmの円筒状で、例えばアルミニウムや非磁性ステンレス等の非磁性材料で構成され、本実施の形態ではアルミニウム製としている。また、本実施の形態では、現像領域Daでの最短間隔は約320μmである。これにより、現像領域Daに搬送した現像剤を、磁気穂状態で感光ドラム81と接触させて現像が行なえるように設定されている。即ち、二成分現像剤を用いた現像方式では、現像時に磁性体のキャリアがマグネットローラ24mの磁束に拘束されて現像スリーブ24の表面に担持される。現像スリーブ24の表面では、正極性に帯電したキャリアの表面に負極性に帯電したトナーが静電気的に拘束されて磁気穂を形成する。そして、現像スリーブ24に印加する直流電圧と感光ドラム81の静電潜像との間に電位差を設けることにより、トナーTを感光ドラム81に飛翔させ潜像を可視像化する(図4(b)参照)。
即ち、現像容器21の現像剤は、現像スリーブ24の内部において固定配置されたマグネットローラ24mにより現像スリーブ24上に担持される。その後、現像スリーブ24上の現像剤は規制部材25により層厚を規制され、現像スリーブ24が回転することによって感光ドラム81と対向した現像領域Daに搬送される。現像領域Daで現像スリーブ24上の現像剤は穂立ちして磁気穂を形成する。磁気穂を感光ドラム81に接触させることにより、トナーを感光ドラム81に供給することで、感光ドラム81上の静電潜像をトナー像として現像する。
ここで、現像領域Daにおける感光ドラム81へのトナーの現像過程について説明する。感光ドラム81は帯電ローラ82によって帯電電位Vd[V]に一様に帯電された後、画像部分はレーザスキャナ43によって露光されて露光電位Vl[V]になる。現像スリーブ24には、静電潜像へのトナーの付与率を向上させるために、通常は直流電圧と交流電圧を重畳した現像バイアスが印加される。現像スリーブ24の直流成分の電圧をVdcとしたとき、露光電位との差分の絶対値|Vdc−Vl|をVcontと呼び、これがトナーを画像部分へと運ぶ電界を形成する。尚、直流電圧Vdcと帯電電位Vdとの差分の絶対値|Vdc−Vd|はVbackと呼ばれ、トナーに対しては感光ドラム81から現像スリーブ24の方向に引き戻す電界を形成する。これは、トナーが非画像部分に付着する所謂かぶり現象を抑制するために設けられている。
規制部材25は、マグネットローラ24mの規制磁極N1に対向して、現像容器21に設けられている。規制部材25は、先端を現像スリーブ24に対して所定の隙間を空けた状態で現像容器21に固定され、現像スリーブ24の表面に担持された現像剤の磁気穂の穂切りによって層厚を規制する。規制部材25は、現像スリーブ24の長手方向に配置した非磁性の金属板(例えばアルミニウム板)からなり、規制部材25の先端部と現像スリーブ24との間を現像剤が通過して現像領域Daへ送られる。
現像スリーブ24の内側には、ローラ状のマグネットローラ(磁界発生手段)24mが、現像容器21に対して非回転状態で固定設置されている。マグネットローラ24mは、5つのマグピースを有し、それぞれ現像スリーブ24に対向する表面に汲み上げ磁極S1、規制磁極N1、現像磁極S2、搬送磁極N2、剥離磁極S3を有している。
汲み上げ磁極S1は、現像室21bに対向して配置されている。規制磁極N1は、規制部材25に対向して配置されている。搬送磁極N2は、現像領域Daの回転方向下流側に配置されている。剥離磁極S3は、汲み上げ磁極S1の回転方向上流側に隣接して配置されている。
現像磁極S2は、現像領域Daに対向して配置されている。尚、本実施の形態では、マグネットローラ24mは、現像磁極S2として磁束密度Brのピークを1つのみ有するマグピースを適用している。現像磁極S2は、現像領域Daに対向する平面状の平面部24sを有している。即ち、マグネットローラ24mは、全体としては所謂断面Dカット形状をしており、現像磁極S2を有するマグピースは断面略扇形状をしている。平面部24sの回転方向の両縁部は、角部24cを形成している。即ち、現像磁極S2は、現像スリーブ24の外周面における現像領域Daよりも回転方向上流側及び回転方向下流側のそれぞれに対向する部位に角部24cを有し、それぞれの角部24cの間に平面部24sを有している。これにより、磁束密度Brのθ方向変化が大きくてピークとなる部分を現像領域Daよりも上流側及び下流側に設けることができ、磁気吸引力Frのピークも上流側及び下流側に設けることができる。このため、現像領域Daにおいて磁気吸引力Frを高く維持することができ(図5参照)、磁気穂が現像スリーブ24にしっかりと拘束されるため、磁気穂が現像スリーブ24上で滑りにくくなり、磁気穂の速度低下を抑制できる。
即ち、現像磁極S2は、現像スリーブ24の外周面における現像領域Daよりも回転方向上流側及び回転方向下流側のそれぞれに対向する部位に、現像スリーブ24の中心方向への磁気吸引力のピークを有する(図5参照)。また、磁気吸引力のピークは、回転方向上流側よりも前記回転方向下流側の方が大きく、回転方向上流側のピークと回転方向下流側のピークとの間において、回転方向上流側よりも回転方向下流側の方が大きい(図5参照)。これにより、現像領域Daの回転方向上流側よりも回転方向下流側の方が大きな磁気吸引力を有するので、回転方向下流側での感光ドラム81に対するキャリア付着を抑制することができる。
<結着樹脂>
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、非晶性ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価もしくは3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価もしくは3価以上のカルボン酸)、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとが用いられる。ここで、分岐ポリマーを作製する場合には、結着樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、そのためには、3価以上の多官能化合物を使用することが好ましい。従って、ポリエステルユニットの原料モノマーとして、3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステル、及び/又は3価以上のアルコールを含むことが好ましい。
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価アルコールモノマーとしては、以下の多価アルコールモノマーを使用することができる。
2価のアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、また式(A)で表わされるビスフェノール及びその誘導体;
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x及びyはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0以上10以下である。)
式(B)で示されるジオール類;
3価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。これらのうち、好ましくはグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。これらの2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
ポリエステル樹脂のポリエステルユニットに用いられる多価カルボン酸モノマーとしては、以下の多価カルボン酸モノマーを使用することができる。
2価のカルボン酸成分としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、これらの酸の無水物及びこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、n−ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物又はこれらの低級アルキルエステルが挙げられる。これらのうち、特に1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、すなわちトリメリット酸又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。これらの2価のカルボン酸等及び3価以上のカルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
ポリエステル樹脂を主成分とするならば他の樹脂成分を含有するハイブリッド樹脂であっても良い。例えば、ポリエステル樹脂とビニル系樹脂とのハイブリッド樹脂が挙げられる。ハイブリッド樹脂のような、ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニットとポリエステル樹脂の反応生成物を得る方法としては、ビニル系樹脂やビニル系共重合ユニット及びポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方もしくは両方の樹脂の重合反応を行う方法が好ましい。
例えば、ポリエステル樹脂成分を構成するモノマーのうちビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。ビニル系共重合体成分を構成するモノマーのうちポリエステル樹脂成分と反応し得るものとしては、カルボキシル基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸もしくはメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、本発明では結着樹脂として、ポリエステル樹脂を主成分とするならば、上記のビニル系樹脂以外にも、従来より結着樹脂として知られている種々の樹脂化合物を併用することができる。このような樹脂化合物としては、例えばフェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
また、本発明の結着樹脂は、低分子量の結着樹脂Lと高分子量の結着樹脂Hを混ぜ合わせて使用しても良い。高分子量の結着樹脂Hと低分子量の結着樹脂Lの含有比率(H/L)は質量基準で10/90以上60/40以下であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
高分子量の結着樹脂Aのピーク分子量は10000以上20000以下であることが、耐ホットオフセット性の観点から好ましい。また、高分子量の結着樹脂の酸価は2mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
低分子量の結着樹脂Bの数平均分子量は3000以上7000以下であることが、低温定着性の観点から好ましい。また、低分子量の結着樹脂の酸価は10mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
<結晶性樹脂>
本発明のトナーは、特に限定されないが、低温定着性向上のため結晶性樹脂を含有してもよい。
結晶性樹脂は結晶性エステル化合物、または結晶性エーテル化合物であることが重要である。結晶性エステル化合物、または結晶性エーテル化合物を用いることで、結着樹脂のポリエステル樹脂を可塑し低温定着性を向上させることができる。また可塑効果を十分に発揮させるためには、結晶性樹脂としてポリエステルを使用することが好ましい。
本発明のトナーにおいて、トナー粒子に含まれる結晶性ポリエステルは、脂肪族ジオールと、脂肪族ジカルボン酸とを主成分として含む単量体組成物を重縮合反応させることにより得られる。脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸は、炭素数が6以上12以下であることが好ましい。
脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタジエングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコールネオペンチルグリコールが挙げられる。これらの中でも、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールの如き直鎖脂肪族、α,ω−ジオールが好ましく例示される。上記アルコール成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールから選ばれるアルコールである。
本発明において、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール単量体を用いることもできる。該多価アルコール単量体のうち2価アルコール単量体としては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等の芳香族アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、該多価アルコール単量体のうち3価以上の多価アルコール単量体としては、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール等が挙げられる。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のアルコ−ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えばn−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール等の1官能性アルコールなどが挙げられる。
一方、脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。具体例としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
本発明において、上記カルボン酸成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸から選ばれるカルボン酸である。
本発明において、脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。その他の多価カルボン酸単量体のうち、2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルなども含まれる。また、その他のカルボン酸単量体のうち、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステル等の誘導体等も含まれる。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステルの特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が挙げられる。
本発明における結晶性ポリエステルは、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコ−ル単量体とをエステル化反応、またはエステル交換反応せしめた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることで所望の結晶性ポリエステルを得ることができる。
上記エステル化またはエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記重縮合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化もしくはエステル交換反応または重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステルの強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたりしてもよい。また低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりする等の方法を用いてもよい。
該結晶性ポリエステルは、非晶性樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上15質量部以下含有することが好ましい。結晶性樹脂が1.0質量部以上であると、可塑効果が十分得られ、低温定着性が向上する。また15質量部以下であると、水分吸着が生じ難く、色味安定性が保たれる。
水分吸着を抑制する観点から、酸価は2mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが好ましい。
<ワックス分散剤>
本発明では、ワックス分散剤の使用についてとくに限定しないが、トナー中のワックス分散性を上げる観点で使用してもよい。
本発明のワックス分散剤は、スチレンアクリル系樹脂のGPCによる分子量分布において、重量平均分子量(Mw)が5000以上70000以下であることが好ましい。本発明のワックス分散剤が上記範囲であるとワックスの分散性が向上すると同時に耐ブロッキング性、耐ホットオフセット性が向上する。
重量平均分子量(Mw)が5000以上であると、ワックス分散剤がトナー中で安定し、すなわち、高温高湿放置によるワックスのトナー表面への溶出が抑えられ、トナーの耐ブロッキング性が保たれる。
また、重量平均分子量(Mw)が70000以下であると、トナー中に微分散したワックスが定着溶融時に迅速に溶融トナー表面に移行できるため、定着時の離型性が良くなり、高温オフセットが発生し難くなる。
該ポリオレフィンは、特に限定されることはないが、トナー粒子中でのワックスとの親和性の観点から、後述する本発明のトナーに用いられるワックスから選択するとよい。
該ポリオレフィンは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大級熱ピークのピーク温度が70℃以上90℃以下であることが好ましい。
本発明においては、該ポリオレフィンが、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックスであることが好適に例示できる。
また、該ワックス分散剤の製造時の反応性の観点から、ポリプロピレンのように枝分かれ構造を持つことが好ましい。
なお、本発明において、ポリオレフィンにスチレンアクリル系ポリマーをグラフト変性する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
本発明において、スチレンアクリル系ポリマーは、特に限定されることはないが、シクロアルキル(メタ)アクリレート由来のユニットを有していることが好ましい。
シクロアルキル(メタ)アクリレート由来のユニットとしては、飽和脂環式炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数3以上18以下の飽和脂環式炭化水素基、さらに好ましくは炭素数4以上12以下の飽和脂環式炭化水素基である。飽和脂環式炭化水素基には、シクロアルキル基、縮合多環炭化水素基、橋かけ環炭化水素基、スピロ炭化水素基などが包含される。
このような飽和脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデカニル基、デカヒドロ−2−ナフチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル基、ペンタシクロペンタデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンタニル基などを挙げることができる。
また、飽和脂環式基は、置換基としてアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基などを有することもできる。該アルキル基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましい。
これらの飽和脂環式基のうち、シクロアルキル基、縮合多環炭化水素基、橋かけ環炭化水素基が好ましく、炭素数3以上18以下のシクロアルキル基、置換又は非置換のジシクロペンタニル基、置換又は非置換のトリシクロペンタニル基がより好ましく、炭素数6以上10以下のシクロアルキル基がさらに好ましく、炭素数6のシクロヘキシル基が特に好ましい。
なお、置換基の位置及び数は任意であり、置換基を2以上有する場合、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
上記スチレンアクリル系ポリマーは、飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するビニル系モノマー(a)の単独重合体でもよいが、その他のモノマー(b)との共重合体であってもよい。
該ビニル系モノマー(a)としては、シクロプロピルアクリレート、シクロブチルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、ジヒドロシクロペンタジエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートなどのモノマー及びこれらの併用が挙げられる。
これらの中でも、疎水性の観点から、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレートが好ましい。
該その他のモノマー(b)としては、スチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、p−アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、ベンジルスチレンなどのスチレン系モノマー;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸のアルキルエステル(該アルキルの炭素数が1以上18以下);酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;ビニルメチルエーテルのようなビニルエーテル系モノマー;塩化ビニルのようなハロゲン元素含有ビニル系モノマー;ブタジエン、イソブチレンなどのジエン系モノマー及びこれらの併用が挙げられる。
また極性調整のため、酸基や水酸基を付加するモノマーを添加してもよい。酸基や水酸基を付加するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、アクリル酸2エチルヘキシルなどがあげられる。
本発明において、上記スチレンアクリル系樹脂は、下記式(1)で表されるモノマーユニットを有することが、トナーの低温定着性の観点から好ましい。
上記スチレンアクリル系樹脂が、式(1)で表されるモノマーユニットを有する場合、該重合体のガラス転移温度(Tg)が低下する傾向にある。その結果、該ワックス分散剤がトナー粒子に含有された場合、トナーが高温高湿下に放置されても帯電性が低下せず、かつ、低温定着性がさらに向上する。
[前記式(1)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、nは1以上18以下の整数を表す。(nは、2以上7以下の整数であることが好ましい。この範囲にあるときガラス転移温度(Tg)を効率よくさげることができる。2未満のときはガラス転移温度(Tg)を下げる効果が得られず、7より大きい場合は入れ目に対してガラス転移温度(Tg)が下がりすぎ、調整ができなくなる。)]
ワックス分散剤を用いてトナーを製造する場合、トナー用結着樹脂は特別限定されることはないが、ワックス分散剤が充分に効果を発揮するのは、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合である。
本発明において結着樹脂として使用するポリエステル樹脂と炭化水素系ワックスとの相溶性は、元来より乏しい。そのため、ワックスをそのままの状態で添加してトナー化した際には、トナー中にワックスが偏析して存在し、遊離ワックス等も発生することから、結果的に帯電不良等の不具合が発生する場合がある。
また、上記ワックス分散剤は、該結着樹脂100質量部に対して1.0質量部以上10.0質量部以下含有されることが好ましい。
<ワックス>
本発明のトナーに用いられるワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸の如き脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如きアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、ワックス分散剤との相互作用、および低温定着性、耐ホットオフセット性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス、もしくはカルナバワックスの如き脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本発明においては、耐ホットオフセット性がより向上する点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
本発明では、ワックスは、結着樹脂100質量部あたり1質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。
また、示差走査熱量測定(DSC)装置で測定される昇温時の吸熱曲線において、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度としては45℃以上140℃以下であることが好ましい。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内であるとトナーの保存性と耐ホットオフセット性を両立できるため好ましい。
<着色剤>
トナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
<荷電制御剤>
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
<無機微粒子>
本発明のトナーは、無機微粒子の被覆率が30%以上であることが重要である。無機微粒子の被覆率が30%以上の範囲にあるとき、外添剤のスペーサー効果が働き、キャリアへの付着力が低減する。
無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粒子が好ましく、とくにシリカが好ましい。無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
無機微粒子は、スペーサー効果を発揮するため、個数平均粒子径が60nm以上300nm以下が好ましい。
無機微粒子は、トナー粒子100質量部に対して0.5質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。無機微粒子は、トナー粒子に内添しても良いし外添剤としてトナー粒子と混合してもよく、トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m2/g以上400m2/g以下の無機微粉体が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m2/g以上50m2/g以下の無機微粉体であることが好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粉体を併用してもよい。
<現像剤>
本発明の画像形成方法では、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが必要である。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、或いは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、一般に公知のものを使用できる。
その際のキャリア混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。
<製造方法>
本発明のトナーは、とくに製造方法を限定することはない。しかし、該結着樹脂、該着色剤、該ワックス、該樹脂組成物を含有する混合物を溶融混練、粉砕する工程を経て製造されることが好ましい。本発明のトナーの製造方法が溶融混練工程を経て製造されることで、材料の分散性が向上するためである。
本発明におけるトナーの製造手順について説明する。
まず、原料混合工程では、トナー原料として非晶性ポリエステル樹脂及び炭化水素系ワックス、ワックス分散剤等を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ヘンシェルミキサー(日本コークス社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)等がある。
更に、混合したトナー原料を溶融混練工程にて、溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中の着色剤等を分散させる。混練装置の一例としては、TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);ニーデックス(三井鉱山社製)等が挙げられるが、連続生産できる等の優位性から、バッチ式練り機よりも、1軸または2軸押出機といった連続式の練り機が好ましい。
トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)等で微粉砕され、トナー微粒子を得る。
得られたトナー微粒子は、分級工程にて、所望の粒径を有するトナー用粉体粒子に分級される。分級機としては、ターボプレックス、ファカルティ、TSP、TTSP(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)等がある。
続いて、得られたトナー用粉体粒子を熱処理工程で図6のような熱処理装置を用いて球形化処理を行うことが好ましい。この処理を行うことにより、外添剤がトナー表面に固着され、耐久使用時においても被覆率の減少が抑えられるため、スペーサー効果を維持しやすい。
原料定量供給手段1により定量供給された混合物は、圧縮気体調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。
このとき、処理室に供給された混合物は、処理室内に設けられた混合物の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室に供給された混合物は、処理室内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
供給された混合物を熱処理するための熱は、熱風供給手段7から供給され、分配部材12で分配され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。処理室内に供給される熱風は、熱風供給手段7の出口部における温度が100℃以上300℃以下であることが好ましく、130℃以上170℃以下であることがより好ましい。熱風供給手段の出口部における温度が上記の範囲内であれば、混合物を加熱しすぎることによるトナー粒子の融着や合一を防止しつつ、トナー粒子を均一に球形化処理することが可能となる。このときの円形度としては、0.955以上0.980以下であることが好ましい。熱風は熱風供給手段出口11から供給される。
更に熱処理された熱処理トナー粒子は冷風供給手段8から供給される冷風によって冷却され、冷風供給手段8から供給される温度は−20℃乃至30℃であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理トナー粒子を効率的に冷却することができ、混合物の均一な球形化処理を阻害することなく、熱処理トナー粒子の融着や合一を防止することができる。冷風の絶対水分量は、0.5g/m3以上15.0g/m3以下であることが好ましい。
次に、冷却された熱処理トナー粒子は、処理室の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
また、粉体粒子供給口14は、供給された混合物の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、表面処理装置の回収手段10は、旋回された粉体粒子の旋回方向を維持するように、処理室の外周部に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体供給口から供給される熱処理前トナー粒子の旋回方向、冷風供給手段から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、熱処理前トナー粒子に強力な遠心力がかかり、熱処理前トナー粒子の分散性が更に向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃った熱処理トナー粒子を得ることができる。
本発明のトナーの製造方法においては、熱処理工程の前に、得られたトナー用粉体粒子に必要に応じて無機微粒子等を添加しても構わない。トナー用粉体粒子に無機微粒子等を添加する方法としては、トナー用粉体粒子と公知の各種外添剤を所定量配合し、ヘンシェルミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)等の粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合する。
本発明のトナーの製造方法では、熱処理後に粗大な粒子が存在する場合、必要に応じて、分級によって粗大粒子を除去する工程を有していても構わない。粗大粒子を除去する分級機としては、分級機としては、ターボプレックス、TSP、TTSP、クリフィス(ホソカワミクロン社製)、エルボージェット(日鉄鉱業社製)等が挙げられる。
更に、熱処理後、必要に応じて、粗粒等を篩い分けるために、例えば、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ハイボルター(東洋ハイテック社製)等の篩分機を用いても良い。
尚、本発明の熱処理工程は上記微粉砕の後であっても良い。
本発明のトナーの平均円形度は0.960以上であることが好ましく、更に好ましくは0.965以上である。トナーの平均円形度が上記の範囲であることにより、トナーの転写効率が向上する。
以下に、トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
尚、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
<ESCAによる被覆率の測定方法>
本発明における無機微粒子の被覆率は、無機微粒子がシリカである場合を例に説明すると、ESCA(X線光電子分光分析)により測定される、トナー粒子表面に存在するシリカ由来のケイ素(以下、Siと省略する。)原子量から算出される。ESCAは、サンプル表面の深さ方向で数nm以下の領域の原資を検出する分析方法である。そのため、トナーの表面の原子を検出することが可能である。サンプルホルダーとしては、装置付属の75mm角のプラテン(サンプル固定用の約1mm径のねじ穴が具備されている)を用いた。そのプラテンのネジ穴は貫通しているため、樹脂等で穴をふさぎ、深さ0.5mm程度の粉体測定用の凹部を作成する。その凹部に測定試料をスパチュラ等で詰め込み、すり切ることでサンプルを作成した。
ESCAの装置及び測定条件は、下記の通りである。
使用装置:アルバック・ファイ社製 PHI5000VersaProbeII
分析方法:ナロー分析
測定条件:
X線源:Al−Kα
X線条件:100μ25W15kV
光電子取り込み角度:45°
PassEnergy:58.70eV
測定範囲:300μm×200μm
以上の条件より測定を行った。
解析方法は、まず炭素1s軌道のC−C結合に由来するピークを285eVに補正する。その後、100eV以上105eV以下にピークトップが検出されるケイ素2p軌道に由来するピーク面積から、アルバック−ファイ社提供の相対感度因子を用いることで、構成元素の総量に対するシリカに由来するSi量を算出する。次に、上記と同様の方法でトナーに適用したシリカ単体を測定し、構成元素の総量に対するシリカに由来するSi量を算出し、外添剤単体を測定した際のSi量に対するトナーを測定した際のSi量の割合を本発明におけるシリカ被覆率とする。
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に
のみ限定されるものではない。
<現像装置>
本実施の形態では、図2に示す現像スリーブ24の外周面に対する現像磁極S2の法線方向の磁束密度Brの80%値幅と半値幅との比率は、例えば0.74としている。これに対し、正規分布である磁束密度Brの80%値幅と半値幅との比率は、約0.60となる。即ち、現像スリーブ24の外周面に対する現像磁極S2の法線方向の磁束密度Brの80%値幅と半値幅との比率は、正規分布である磁束密度Brの80%値幅と半値幅との比率より大きく、0.65以上である(図3及び表1参照)。また、本実施の形態では、現像スリーブ24の外周面に対する現像磁極S2の法線方向の磁束密度Brの80%値幅は、例えば35°としている。これに対し、現像領域Daの回転方向幅は28.6°としている。即ち、現像スリーブ24の外周面に対する現像磁極S2の法線方向の磁束密度Brの80%値幅は、現像領域Daの回転方向幅よりも広い(図3参照)。尚、現像スリーブ24の外周面における現像磁極S2の法線方向の磁束密度Brの半値幅は、40°以上としている。
これらのことにより、現像領域Daの回転方向の上流部分と下流部分においても、磁力線が感光ドラム81の表面に対して直線的に向かう。よって、磁気穂Bの先端が感光ドラム81の表面に対して沿うことなく点状に接するので(図4(a)参照)、トナーTは現像スリーブ24側から磁気穂Bによって阻害されることなく感光ドラム81に飛翔することができる(図4(b)参照)。
表1に、比較例1、比較例2、実施例について、半値幅及び80%値幅と、80%値幅を半値幅で割った値とをそれぞれ示す。
<ワックス分散剤の製造例>
温度計および撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン300質量部、炭化水素ワックス(軟化点90℃)10質量部を入れ充分溶解し、窒素置換後、スチレン68.0質量部、メタクリル酸5.0質量部、メタクリル酸シクロヘキシル5.0質量部、アクリル酸ブチル12.0質量部およびキシレン250質量部の混合溶液を180℃で3時間滴下し重合し、さらにこの温度で30分間保持した。次いで脱溶剤を行い、ワックス分散剤を得た。
<ポリエステル樹脂Lの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:72.0質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:28.0質量部(0.17モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した。
・無水トリメリット酸:3質量部(0.01モル;多価カルボン酸総モル数に対して4.0mol%)
・tert−ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が90℃に達したことを確認してから温度を下げて反応を止め、ポリエステル樹脂Lを得た。
<ポリエステル樹脂Hの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:72.3質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:18.3質量部(0.11モル;多価カルボン酸総モル数に対して65.0mol%)
・フマル酸:2.9質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して15.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸錫(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した。
・無水トリメリット酸:6.5質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
・tert−ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が137℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、ポリエステル樹脂Hを得た。
<結晶性樹脂(結晶性ポリエステル樹脂C)>
・1,6−ヘキサンジオール:34.5質量部(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸:65.5質量部(0.28モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2−エチルヘキサン酸錫:0.5質量部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻した後ラウリン酸を、原料モノマー100.0mol%に対し7.0mol%加え、常圧下にて200℃で2時間反応させた。
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂Cを得た。
<トナー1の製造例>
・非晶性ポリエステル樹脂L 50質量部
・非晶性ポリエステル樹脂H 50質量部
・結晶性ポリエステル樹脂C 5質量部
・ワックス分散剤 5質量部
・フィッシャートロプシュワックス(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 5質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM−30型、株式会社池貝製)にて混練した。混練時のバレル温度は、混練物の出口温度が115℃になるよう設定した。混練物の出口温度は、安立計器社製ハンディタイプ温度計HA−200Eを用い直接計測した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF−300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子1を得た。運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とした。
得られたトナー粒子1の100質量部に、疎水性シリカ(個数平均粒子径110nm)5.0質量部を加え、図8で示す表面処理装置によって熱処理を行い、トナーの熱処理粒子を得た。運転条件はフィード量=5kg/hrとし、また、熱風温度=150℃、熱風流量=6m3/min.、冷風温度=−5℃、冷風流量=4m3/min.、ブロワー風量=20m3/min.、インジェクションエア流量=1m3/min.とした。
得られたトナーの熱処理粒子100質量部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)で回転数30s-1、回転時間10min.で混合して、トナー1を得た。製造条件およびトナー物性を表2に示す。
<トナー2の製造例>
トナー粒子1に対し熱処理を行わず、得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)5.0質量部、疎水性シリカ(BET:200m2/g)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)で回転数30s-1、回転時間10min.で混合して、トナー2を得た。製造条件およびトナー物性を表2に示す。
<トナー3乃至14の製造例>
トナー1および2の製造例において、無機微粒子の添加量、製造条件を表2となるように適宜条件を変更した以外はトナー1または2の製造例と同様の操作を行い、トナー3乃至14を得た。製造条件およびトナー物性を表2に示す。
<磁性キャリアコアの製造例>
・工程1(秤量・混合工程)
Fe2O3:68.3質量%
MnCO3:28.5質量%
Mg(OH)2:2.0質量%
SrCO3:1.2質量%
フェライトの原料を秤量し、フェライトの原料80質量部に水20質量部を加えて粉砕し、スラリーを調製した。スラリーの固形分濃度は80質量%とした。
・工程2(仮焼成工程)
スプレードライヤー(大川原化工機(株)製)を用いてスラリーを乾燥させた後、バッチ式電気炉で、窒素雰囲気下(酸素濃度:1.0体積%)、温度1050℃で3.0時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
・工程3(粉砕工程)
仮焼フェライトをクラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、水を加え、スラリーを調製した。スラリーの固形分濃度は70質量%とした。このスラリーを1/8インチのステンレスビーズを用いた湿式ボールミルに入れ、3時間粉砕処理を施し、スラリーを得た。さらに、このスラリーを直径1mmのジルコニアを用いた湿式ビーズミルに入れ、4時間粉砕処理を施し、含まれる仮焼フェライトの体積基準の50%粒子径(D50)が1.3μmである仮焼フェライトスラリーを得た。
・工程4(造粒工程)
上記仮焼フェライトスラリー100質量部に、分散剤としてのポリカルボン酸アンモニウム1.0質量部及びバインダーとしてのポリビニルアルコール1.5質量部を添加した後、スプレードライヤー(大川原化工機(株)製)で乾燥させ、球状粒子に造粒した。得られた造粒物に対して粒度調整を行った後、ロータリー式電気炉を用いて700℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーなどの有機物を除去した。
・工程5(焼成工程)
窒素雰囲気下(酸素濃度:1.0体積%)で、室温(25℃)から焼成温度(1100℃)になるまでの時間を2時間とし、温度1100℃で4時間保持し、焼成した。その後、8時間をかけて温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程)
凝集した粒子を解砕した後に、目開き150μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、風力分級を行って微粉を除去し、さらに磁力選鉱により低磁力分を除去して多孔質磁性コア
を得た。得られた多孔質磁性コア粒子は、多孔質状で空孔を有していた。
・工程7(充填工程)
得られた多孔質磁性コア粒子100質量部を混合撹拌機(商品名:万能撹拌機NDMV型、(株)ダルトン製)の撹拌容器内に入れ、温度を60℃に保ち、2.3kPaまで減圧しながら窒素を導入した。そこにシリコーンレジン(商品名:SR2410、東レ・ダウコーニング(株)製)50質量部に対して、トルエン49.5質量部及びγ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.5質量部をマルチブレンダーミキサーで10分撹拌し、混合したもの(樹脂溶液1)を多孔質磁性コア粒子に滴下した。滴下量は、多孔質磁性コア粒子100質量部に対し、樹脂成分の固形分として4.0質量部となるように調整した。
滴下終了後、2.5時間そのまま撹拌を続けた後、70℃まで温度を上げ、減圧下で溶剤を除去して、多孔質磁性コア粒子の粒子内に樹脂溶液1から得られる樹脂組成物を充填した。
冷却後、得られた樹脂充填型磁性コア粒子を、スパイラル羽根を有する撹拌機(混合機)(商品名:ドラムミキサーUD−AT型、杉山重工(株)製)の容器に移した。その後、窒素雰囲気下で、2℃/分の昇温速度で、撹拌機の設定温度である220℃に昇温した。この温度で1.0時間加熱しながら撹拌を行い、樹脂を硬化させ、さらに1.0時間、200℃を保持しながら撹拌を続けた。
その後、室温(25℃)まで冷却し、硬化された樹脂が充填されているフェライト粒子を取り出し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。さらに、振動篩にて粗大粒子を取り除き、樹脂が充填された磁性キャリアコア1を得た。磁性キャリアコア1の体積分布基準の50%粒径(D50)は、38.5μmであった。
<磁性キャリアの製造例>
減圧下(1.5kPa)、温度60℃で維持されている遊星運動型混合機(商品名:ナウタミキサVN型、ホソカワミクロン(株)製)に、表3及び表4に示す被覆用樹脂A及び被覆用樹脂Bを表5に示す比率で入れ、樹脂成分(被覆用樹脂A及び被覆用樹脂B)100質量部に対してトルエン900質量部を入れて、樹脂が十分に溶解するまで混合し、被覆用樹脂溶液を調製した。この被覆用樹脂を、上記磁性キャリアコア1の100質量部に対して、樹脂成分の固形分として2.1質量部になるように、被覆用樹脂溶液を投入した。
投入の仕方として、まず、1/3の量の樹脂溶液を投入し、20分間溶媒除去及び塗布操作を行った。次いで、さらに1/3の量の樹脂溶液を投入し、20分間溶媒除去及び塗布操作を行い、さらに1/3の量の樹脂溶液を投入し、20分間溶媒除去及び塗布操作を
行った。
その後、被覆用樹脂の組成物で被覆された磁性キャリアを回転可能な混合容器内にスパイラル羽根を有する撹拌機(混合機)(商品名:ドラムミキサーUD−AT型、杉山重工(株)製)の容器に移した。容器を1分間に10回転させて撹拌しながら、窒素雰囲気下、温度120℃で2時間熱処理を施した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口150μmの篩を通した後、風力分級器で分級した。体積分布基準の50%粒径(D50)が39.0μmの磁性キャリア1を得た。
以上のトナー1乃至14と磁性キャリア1で、トナー濃度が8.0質量%になるようにV型混合機(V−10型:株式会社徳寿製作所)で0.5s-1、回転時間5minで混合し、二成分系現像剤1乃至14を得た。
〔実施例1乃至10、比較例1乃至4〕
画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNER ADVANCE C9280 PRO改造機を用い、シアン位置または/及びマゼンタ位置の現像器に二成分系現像剤1を入れ、紙上のトナーの載り量が所望になる画像を形成し、後述の評価を行った。
改造点としては、プロセススピード、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、レーザーパワー、転写電流を自由に設定できるように変更した。画像出力評価は、所望の画像比率のFFh画像(ベタ画像)を出力した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。
以下の評価方法に基づいて評価し、その結果を表6に示す。二成分系現像剤1に代え、それぞれ二成分系現像剤2乃至14を用いた場合も同様に評価し、その結果を表6に示す。
<評価1:白抜け(N/L環境)>
N/L環境(23℃、5%RH)下で初期、及び連続通紙2000枚直後、転写紙の搬送方向に対して、ハーフトーン横帯(30H 幅10mm)とベタ黒横帯(FFH 幅10mm)を交互に並べたチャートを出力する。その画像をスキャナで読みとり、二値化処理を行う。二値化画像の搬送方向におけるあるラインの輝度分布(256階調)をとった。そのときのハーフトーンの輝度に接線を引き、ベタ部輝度と交わるまでのハーフトーン部後端の接線からずれた輝度の領域(面積:輝度数の和)をもって、白抜け度とし、以下の基準に基づき評価した。評価はシアン単色で行った。
A:30未満(非常に良好)
B:30以上40未満(良好)
C:40以上50未満(本発明において許容レベル)
D:50以上(本発明において不可レベル)
<評価2:白抜け(N/N環境)>
評価環境を(23℃、50%RH)に変更した以外は、評価1と同様に評価を行った。
<評価3:汚染性評価>
汚染性の評価は、高温高湿(30℃、80%RH)下で、A3紙全面に80hのベタ画像を印字し、以下の基準によって判断した。耐久評価前にA3紙全面に80hのベタ画像を出力し、その出力画像の6点の平均濃度dsとし、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、レーザーパワー、転写電流を耐久評価前と同様に設定し、耐久評価後の出力画像の6点の平均濃度deとを測定し、下記式より濃度変化を求めた。
濃度変化=de−ds
<評価基準>
A:濃度差が0.10未満 (非常に優れている)
B:濃度差が0.10以上0.15未満 (良好である)
C:濃度差が0.15以上0.25未満 (本発明では問題ないレベルである)
D:濃度差が0.25以上 (本発明では許容できない)
比較例1、2は現像スリーブの外周面に対する前記現像磁極の法線方向の磁束密度の80%値幅と半値幅との比率が本発明の範囲を満たしていない(表1参照)。図7(a)、(b)に示すように、現像スリーブ端部の磁気穂Bが立たず、キャリアの飛翔性を阻害するため、白抜けが改善されていない。
比較例3は現像スリーブの条件は本発明の範囲を満たしているが、トナーとしては被覆率の範囲を外れている。この場合低湿環境下で良好な結果を示さない。
比較例4は現像スリーブの条件、トナーの無機微粒子の被覆ともに本発明の範囲を満たさない。この場合は全体として白抜けが悪化している。