本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを意味する。
本発明の二成分系現像剤は、トナーと、磁性キャリアを含む二成分系現像剤であって、
該トナーは、ポリエステル樹脂、ワックス、スチレンに由来するユニットを含む重合体Aを含有するトナー粒子を有するトナーであり、該トナーの重量平均粒径(D4)が4.0μm以上6.5μm以下であり、該重合体Aは該トナー粒子の質量を基準として3.0質量%以上15.0質量%以下含有されており、
該磁性キャリアは、磁性キャリアコア及び該磁性キャリアコア表面に形成された樹脂被覆層を有する磁性キャリア粒子を有し、
該樹脂被覆層がスチレンに由来するユニットを含む重合体Bを含有し、
該重合体Bが該樹脂被覆層の質量を基準として10.0質量%以上50.0質量%以下含有されていることを特徴とする。
文字品位の高い、高精細な画像を得るための方法の一つとして、トナーの小粒径化が挙げられるが、単純にトナーを小粒径化した場合、トナーとキャリアの接触回数が増加するため、特に低温低湿環境でトナーの過剰帯電が発生し、使用初期と長期間使用後での画像濃度の変化が大きくなる場合や、画像面内の濃度ムラが発生する場合がある。
二成分系現像剤中のトナー濃度を変更し、低温低湿環境でトナーの過剰帯電を抑制する方法は存在する。しかしその場合、高温高湿下での使用時にトナーの帯電性が低下し、使用初期と長期間使用後での画像濃度の変化が大きくなる場合がある。
本発明者らは、長期間にわたる使用において画像濃度の変化、画像面内の濃度ムラや細線再現性の低下による文字品位の低下の抑制と現像剤の長寿命化とを、使用環境によらず両立させることを目的に鋭意検討した結果、上記構成のトナーと磁性キャリアの組み合わせが重要であることを見出した。
本発明の二成分系現像剤により、上記課題を解決できるメカニズムについて以下のように考えている。
本発明の二成分系現像剤はトナー粒子、および磁性キャリアコア粒子表面にそれぞれスチレンモノマーに由来するユニットを含む重合体を含有している。そのため、トナーと磁性キャリアが摩擦帯電する際、トナー粒子及び磁性キャリアコア粒子それぞれの表面にスチレンモノマーに由来するユニットが存在するため、キャリアからトナーへの電荷の移動が抑制され、低湿下でのトナーの過剰帯電が抑制される。また、トナーが帯電したのちの、トナーからキャリアへの電荷の漏洩が抑制され、高温高湿下でのトナーの帯電低下が抑制される。そのため、低湿下でのトナーの過剰帯電や、高温高湿下での帯電性の低下が抑制できるため、低湿下から高温高湿下までの様々な環境において使用初期と長期間使用後での画像濃度の変化や、画像面内の濃度ムラの発生を抑制し、長期間にわたる使用において画像面内の濃度ムラや細線再現性の低下による文字品位の低下の抑制し、高精細で高品位な画像を得ることができる。
画像濃度の変化、画像面内の濃度ムラや細線再現性の低下の抑制の観点から、該重合体Aは該トナー粒子の質量を基準として3.0質量%以上15.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以上7.5質量%以下含有されていることが重要である。該重合体Aが該トナー粒子の質量を基準として3.0質量%未満であると、トナー粒子と磁性キャリア粒子が接触した際スチレンモノマーに由来するユニット同士が接触する部分が少なくなり、低湿下での過剰帯電が発生する場合があり、長期間使用時に画像濃度が変化しやすくなる。一方、該重合体Aが該トナー粒子の質量を基準として15.0質量%より多いと、トナー粒子と磁性キャリア粒子が接触した際の電荷の移動が過剰に抑制されるため、高温高湿下で長期間使用時に画像濃度が変化しやすくなる。
また、同様の観点から、該重合体Bは磁性キャリアコア粒子の表面に形成された樹脂被覆層の質量を基準として10.0質量%以上50.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以上45.0質量%以下含有されていることが重要である。該重合体Bが該樹脂被覆層の質量を基準として10.0質量%未満であると、トナー粒子と磁性キャリア粒子が接触した際スチレンモノマーに由来するユニット同士が接触する部分が少なくなり、低湿下での過剰帯電が発生する場合があり、長期間使用時に画像濃度が変化しやすくなる。一方、該重合体Bが該樹脂被覆層の質量を基準として50.0質量%より多いと、トナー粒子と磁性キャリア粒子が接触した際の電荷の移動が過剰に抑制されるため、高温高湿下で長期間使用時に画像濃度が変化しやすくなる。
〔重合体A〕
本発明のトナー粒子に含有される重合体Aは、スチレンに由来するユニットを含有する重合体が必要である。本発明の効果を十分発現させるために、該重合体Aに含まれるスチレンモノマーに由来するユニットは、重合体Aの質量を基準として50.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、55.0質量%以上85.0質量%以下であることがより好ましい。この範囲だとトナーの低湿下の過剰帯電を抑制できるとともに、高温高湿下での過剰に電荷移動が抑制されることがなくなるため、長期間使用時の画像濃度変化が少なくなるとともに、濃度ムラや細線再現性の低下が抑制できる。
該重合体Aに用いられるその他のモノマーとしては、トナー粒子の疎水性の観点から飽和脂環式化合物由来の構造部位を有したモノマーに由来するユニットを含有することが好ましい。
例えば、重合体Aが、下記式(1)で表されるモノマーに由来するユニットを有する態様が挙げられる。
ここで、モノマーに由来するユニットとは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
[式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は飽和脂環式基を表す。]
上記R2における飽和脂環式基としては、飽和脂環式炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数3以上18以下の飽和脂環式炭化水素基、さらに好ましくは炭素数4以上12以下の飽和脂環式炭化水素基である。飽和脂環式炭化水素基には、シクロアルキル基、縮合多環炭化水素基、橋かけ環炭化水素基、スピロ炭化水素基などが包含される。
このような飽和脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデカニル基、デカヒドロ-2-ナフチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル基、ペンタシクロペンタデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンタニル基などを挙げることができる。
また、飽和脂環式基は、置換基としてアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基などを有することもできる。該アルキル基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基が好ましい。
これらの飽和脂環式基のうち、シクロアルキル基、縮合多環炭化水素基、橋かけ環炭化水素基が好ましく、炭素数3以上18以下のシクロアルキル基、置換又は非置換のジシクロペンタニル基、置換又は非置換のトリシクロペンタニル基がより好ましく、炭素数4以上12以下のシクロアルキル基がさらに好ましく、炭素数6以上10以下のシクロアルキル基が特に好ましい。
なお、置換基の位置及び数は任意であり、置換基を2以上有する場合、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
本発明において、式(1)で表されるモノマーに由来するユニットの含有割合は、該重合体Aを基準として、1.5質量%以上45.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上25.0質量%以下であることがより好ましい。この範囲であるとトナーの疎水性が高まるため、高温高湿下での濃度変化が小さくなる。
上記重合体Aは、スチレンと飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するモノマーの共重合体でもよいが、その他のモノマーとの共重合体であってもよい。
該飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するモノマーとしては、シクロプロピルアクリレート、シクロブチルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、ジヒドロシクロペンタジエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートなどのモノマー及びこれらの併用が挙げられる。
これらの中でも、疎水性の観点から、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレートが好ましい。
該その他のモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸のアルキルエステル(該アルキルの炭素数が1以上18以下);酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;ビニルメチルエーテルのようなビニルエーテル系モノマー;塩化ビニルのようなハロゲン元素含有ビニル系モノマー;ブタジエン、イソブチレンなどのジエン系モノマー及びこれらの併用が挙げられる。
また極性調整のため、酸基や水酸基を付加するモノマーを添加してもよい。酸基や水酸基を付加するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、アクリル酸2エチルヘキシルなどが挙げられる。
該重合体Aは、トナー粒子中でワックス分散剤として使用することも可能である。その場合、該トナー用ワックス分散剤は炭化水素化合物に重合体Aがグラフトしたものであることが好ましい。
該炭化水素化合物は、特に限定されることはないが、トナー粒子中でのワックスとの親和性の観点から、後述する本発明のトナーに用いられるワックスから選択するとよい。
該炭化水素化合物は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大吸熱ピークのピーク温度が60℃以上110℃以下であることが好ましい。また、該炭化水素化合物は、重量平均分子量(Mw)が900以上50000以下であることが好ましい。
本発明においては、該炭化水素化合物が、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックスであることが好適に例示できる。
また、該炭化水素化合物は、該重合体Aの製造時の反応性の観点から、ポリプロピレンのように枝分かれ構造を持つことが好ましい。
該炭化水素化合物の含有割合は、炭化水素化合物にグラフト変性した重合体Aの総量に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以上12.0質量%以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、炭化水素化合物を重合体Aでグラフト変性する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、炭化水素化合物を有機溶媒に溶解させ、重合体Aの重合とともにグラフトさせる方法がある。
〔重合体B〕
重合体Bは、スチレンに由来するユニットを含有することが必要である。本発明の効果を阻害しない程度に、(メタ)アクリル酸エステルモノマー等のその他のモノマーを用いてもよい。
重合体Bとして用いられる樹脂としては特に限定されないが、例えば、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸オクチル共重合体などのスチレン系共重合体が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて使用してもよい。
重合体Bを形成させるためのユニットのうち、スチレンに由来するユニットが該重合体の質量を基準として99.0質量%以上含まれていることが好ましい。
スチレンモノマーに由来するユニットの割合を上記範囲にすることにより、樹脂被覆層の強靭性が高まり、樹脂被覆層の靱性、耐摩耗性が向上し画像濃度の変化、画像面内の濃度ムラや細線再現性の低下の抑制が両立できる。
前記樹脂被覆層のテトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量分布において、重合体B由来のピークが分子量1000以上9500以下の範囲に存在することが好ましく。重合体B由来のピークが分子量2000以上9000以下の範囲に存在することがより好ましい。重合体B由来のピークが上記の範囲であると、樹脂被覆層の帯電緩和性が適度に維持されるため、長期間使用時の濃度変化や面内濃度ムラが抑制される傾向にある。
また、該重合体Bは下記式(3)で示される化合物に由来するユニットを含むことがより好ましい。式(3)で示される化合物に由来するユニットを含むことにより、低湿環境下での過剰帯電を抑制でき、画像濃度の変化、画像面内の濃度ムラや細線再現性の低下を抑制できる。
(式(3)中、R
1はH又はCH
3を示し、nは2以上8以下の整数を示す。)
例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等が挙げられる。
〔重合体C〕
樹脂被覆層に用いられる重合体Cは、
(a)脂環式の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、
(b)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、および(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーの重合体であるマクロモノマーと、
を含むモノマーの共重合体であることが好ましい。本発明の効果を阻害しない程度に、脂環式の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル、及び該特定のマクロモノマー以外のその他のモノマーを用いてもよい。
重合体Cにおいて、脂環式の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むモノマーの重合体部分は、磁性キャリアコア表面に被覆された樹脂層の塗膜面を平滑にする。その結果、磁性キャリアに対するトナー由来成分の付着を抑制し、帯電能低下を抑える働きがある。また、マクロモノマー部分は、磁性キャリアコアとの密着性を向上させるため、画像濃度安定性が向上する。さらに、長期間高湿環境で磁性キャリア中の被覆樹脂層のミクロな薄層部分の電荷漏えいを低減でき、細線再現性も安定する。
上記脂環式の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル(モノマー)としては、例えば、アクリル酸シクロブチル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸シクロヘプチル、アクリル酸ジシクロペンテニル、アクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸シクロブチル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘプチル、メタクリル酸ジシクロペンテニル及びメタクリル酸ジシクロペンタニルなどが挙げられる。脂環式の炭化水素基は、シクロアルキル基であることが好ましく、炭素数は、3以上10以下が好ましく、4以上8以下がより好ましい。これらは、1種又は2種以上を選択して使用してもよい。
上記マクロモノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びメタクリル酸2-エチルヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーの重合体であるマクロモノマーが挙げられる。
また、重合体Cには、上記脂環式の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び上記マクロモノマー以外の、その他の(メタ)アクリル系モノマーをモノマーとして用いてもよい。
その他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル(n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル又はtert-ブチル。以下同様)、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸又はメタクリル酸などが挙げられる。
その他の(メタ)アクリル系モノマーの比率は、0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。
〔ポリエステル樹脂〕
本発明のトナーは、ポリエステル樹脂を含有することが必要である。
該結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合、ポリエステル樹脂とワックスとの相溶性は低い。そのため、ワックスをそのままの状態で添加してトナー粒子に含有させた場合には、トナー粒子中にワックスが偏析して存在し、遊離ワックスなども発生することから、結果的に帯電不良などの不具合が発生し、好ましくない場合があった。
一方、本発明のトナーが上述の重合体Aを含有することで、トナー粒子中のワックスの分散状態が制御される。その結果、帯電性が厳しい状況下においても、十分な帯電性を発揮することができる。
また、トナー粒子における上記重合体Aの含有量は、上記ポリエステル樹脂を結着樹脂として含むトナー粒子の質量を基準として、3.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、4.0質量%以上7.5質量%以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。
ポリエステル樹脂の製造に用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価又は3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価又は3価以上のカルボン酸)及びそれらの酸無水物又はそれらの低級アルキルエステルとが挙げられる。
ここで、分岐ポリマーを作製する場合には、ポリエステル樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、そのためには、3価以上の多官能化合物を使用するとよい。すなわち、モノマーとして、3価以上のカルボン酸及びその酸無水物又はその低級アルキルエステル、及び/又は3価以上のアルコールを含めるとよい。
ポリエステル樹脂の製造に用いられる多価アルコール及び多価カルボン酸としては、以下が例示できる。
2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記式(A)で表されるビスフェノール及びその誘導体;及び下記式(B)で表されるジオール類。
2価のカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、及びイソオクチルコハク酸が挙げられる。また、これらの酸無水物及び低級アルキルエステルを用いてもよい。
これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、アジピン酸、n-ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
3価以上のアルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
これらのうち、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールが好適に例示できる。
3価以上のカルボン酸は、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸が挙げられる。また、これらの酸無水物及び低級アルキルエステルを用いてもよい。
これらのうち、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。
上記2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独であるいは複数を併用して用いることができる。同様に、上記2価のカルボン酸など及び3価以上のカルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
本発明において、ポリエステル樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布において、ピーク分子量が、4000以上13000以下であることが好ましい。上記範囲を満たすことは、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
また、ポリエステル樹脂の酸価は、2mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電性の観点から好ましい。
さらに、ポリエステル樹脂の水酸基価は、2mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが、高温高湿下における帯電性の観点から好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂は、ピーク分子量が4500以上7000以下である低分子量のポリエステル樹脂、及び、ピーク分子量が8500以上9500以下である高分子量のポリエステル樹脂を含有する態様もある。
この場合、高分子量のポリエステル樹脂と低分子量の非晶性ポリエステル樹脂の混合比率(B/C)は、質量基準で10/90以上60/40以下であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
高分子量のポリエステル樹脂のピーク分子量は、8500以上9500以下であることが、耐ホットオフセット性の観点から好ましい。また、高分子量のポリエステル樹脂の酸価は、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電性の観点から好ましい。
低分子量のポリエステル樹脂のピーク分子量は、4500以上7000以下であることが、低温定着性の観点から好ましい。また、低分子量のポリエステル樹脂の酸価は、10mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電性の観点から好ましい。
なお、上記酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に準じて測定する。
〔ワックス〕
本発明において、トナー粒子はワックスを含有する。該ワックスとしては、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、及びモンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、及びバリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、及びメリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びモンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、及びメリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、及びラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、及びヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、及びN,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、及びN,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸マグネシウムのような脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、低温定着性、及び耐ホットオフセット性を向上させるという観点で、低分子量ポリプロピレン、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス、又は、カルナバワックスのような脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本発明においては、耐ホットオフセット性がより向上する点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
本発明において、ワックスの含有量は、トナー粒子の質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。
また、ワックスの示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大吸熱ピークのピーク温度は、45℃以上140℃以下であることが好ましく、70℃以上100℃以下であることがより好ましい。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内である場合、トナーの耐ブロッキング性と耐ホットオフセット性を両立させる観点からより好ましい。
〔着色剤〕
本発明において、トナー粒子は、着色剤を含有してもよい。用いられる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色トナー用着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
上記着色剤の含有量は、トナー粒子の質量を基準として、0.1質量%以上30.0質量%以下であることが好ましい。
〔荷電制御剤〕
本発明において、トナー粒子は、必要に応じて荷電制御剤を含有してもよい。
該荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。
ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
荷電制御剤は、トナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
荷電制御剤の含有量は、トナー粒子の質量を基準として、0.01質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
〔無機微粒子〕
本発明のトナーは、必要に応じて無機微粒子を含有してもよい。
該無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよいし、外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。
外添剤として含有する場合は、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子のような無機微粒子が好ましい。
該無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
該無機微粒子がトナーの流動性向上のために使用される場合は、その比表面積が50m2/g以上400m2/g以下であることが好ましい。
一方、該無機微粒子がトナーの耐久性向上のために使用される場合は、その比表面積が10m2/g以上50m2/g以下であることが好ましい。
該流動性向上や耐久性向上を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粒子を併用してもよい。
該無機微粒子を外添剤として含有させる場合は、トナー粒子の質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。トナー粒子と無機微粒子との混合は、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いるとよい。
〔トナーの製造方法〕
本発明において、トナー粒子の製造方法は特に限定されることはないが、溶融混練法、又は、乳化凝集法を用いることが好ましく、溶融混練法を用いることがより好ましい。
ここで、溶融混練法とは、結着樹脂、ワックス、及びトナー用ワックス分散剤を含有する混合物を溶融及び混練して溶融混練物を得る工程(以下、単に溶融混練工程ともいう)を含む、トナー粒子の製造方法である。
トナー粒子が溶融混練工程を経て製造されることで、ワックスの分散性が向上する。
該溶融混練工程では、熱とシェアによって、トナー粒子の原材料がしっかりと混合されるために、トナー粒子中のワックスの分散性が向上する。その結果、トナー粒子中でワックスが微分散し、耐ホットオフセット性が向上する。
本発明において、トナー粒子の製造方法は、上記溶融混練工程において得られた溶融混練物を冷却後、粉砕して得られた樹脂粒子を熱処理する工程(以下、単に熱処理工程ともいう)を含むことが好ましい。
以下、溶融混練法を用いたトナー粒子の製造手順について説明する。
まず、原料混合工程では、トナー原料として、ポリエステル樹脂、ワックス、並びに、重合体Aなどを所定量秤量して配合し、混合する。
該混合に使用される装置の一例としては、ヘンシェルミキサー(日本コークス社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)などがある。
次に、得られた混合物を溶融及び混練して、樹脂類を溶融し、その中にワックス及びトナー用ワックス分散剤などを分散させる(溶融混練工程)。
溶融混練に使用される装置の一例としては、TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);ニーデックス(三井鉱山社製)などが挙げられる。連続生産できるなどの優位性から、バッチ式練り機よりも、1軸又は2軸押出機といった連続式の練り機が好ましい。
次に、得られた溶融混練物は、2本ロールなどで圧延され、水冷などで冷却する。
得られた冷却物は、所望の粒径にまで粉砕される。まず、クラッシャー、ハンマーミル、又はフェザーミルなどで粗粉砕され、さらに、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)などで微粉砕され、樹脂粒子を得る。
得られた樹脂粒子は、所望の粒径に分級して、トナー粒子としてもよい。分級に使用される装置としては、ターボプレックス、ファカルティ、TSP、TTSP(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)などがある。
また、得られた樹脂粒子に熱処理を実施して、熱球形化処理トナー粒子としてもよい。
さらに、熱処理の実施後に粗大な粒子が存在する場合、必要に応じて、分級又は篩分によって粗大粒子を除去してもよい。分級に使用される装置としては、上記装置が挙げられる。一方、篩分に使用される装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ハイボルター(東洋ハイテック社製)などが挙げられる。
一方、上記熱処理工程の前に、得られた樹脂粒子に、必要に応じて無機微粒子などを添加しても構わない。
以下、図1に示す熱処理装置を用いて、樹脂粒子に熱処理を実施する方法を具体的に例示する。
原料定量供給手段31により定量供給された樹脂粒子は、圧縮気体流量調整手段32により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管33に導かれる。導入管33を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材34により均一に分散され、放射状に広がる38方向の供給管35に導かれ熱処理が行われる処理室36に導かれる。
このとき、処理室36に供給された樹脂粒子は、処理室36内に設けられた樹脂粒子の流れを規制するための規制手段39によって、その流れが規制される。このため処理室36に供給された樹脂粒子は、処理室36内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
供給された樹脂粒子を熱処理するための熱風は、熱風供給手段37から供給され、分配部材42で分配され、熱風を旋回させるための旋回部材43により、処理室36内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材43が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる(なお、41は熱風供給手段出口を示す)。処理室36内に供給される熱風は、熱風供給手段37の出口部における温度が100℃以上300℃以下であることが好ましく、130℃以上170℃以下であることがより好ましい。熱風供給手段37の出口部における温度が上記の範囲内であれば、樹脂粒子を加熱しすぎることによる粒子の融着や合一を防止しつつ、粒子を均一に処理することが可能となる。
熱風は熱風供給手段37から供給される。さらに熱処理された熱処理樹脂粒子は冷風供給手段8から供給される冷風によって冷却される。冷風供給手段38から供給される冷風の温度は-20℃以上30℃以下であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理樹脂粒子を効率的に冷却することができ、樹脂粒子の均一な熱処理を阻害することなく、熱処理樹脂粒子の融着や合一を防止することができる。また、冷風の絶対水分量は、0.5g/m3以上15.0g/m3以下であることが好ましい。
次に、冷却された熱処理樹脂粒子は、処理室6の下端にある回収手段40によって回収される。なお、回収手段40の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
また、粉体粒子供給口44は、供給された樹脂粒子の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、回収手段40も、旋回された樹脂粒子の旋回方向を維持するように、処理室36の外周部に接線方向に設けられている。さらに、冷風供給手段38から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体粒子供給口44から供給される熱処理前樹脂粒子の旋回方向、冷風供給手段38から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段37から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、熱処理前樹脂粒子に強力な遠心力がかかり、熱処理前樹脂粒子の分散性がさらに向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃った熱処理樹脂粒子を得ることができる。
本発明において、トナーの平均円形度は0.960以上であることが好ましく、より好ましくは0.965以上である。トナーの平均円形度が上記の範囲であることにより、細線再現性が向上する。
〔磁性キャリア〕
次に、本発明に使用する磁性キャリアコアについて説明する。
本発明の磁性キャリアに用いる磁性キャリアコアとしては、公知の磁性キャリアコアを用いることができる。空隙部に樹脂を含有する多孔質磁性コア粒子を用いることがより好ましい。
これは、磁性キャリアの真密度を低くできるため、トナーへの負荷を軽減することができる。これにより、長期間の使用においても、画質の劣化が少なく、トナーとキャリアで構成された現像剤の交換頻度を減らすことが可能となる。しかし上記に限定されず、市販の磁性キャリアコアを用いても、本発明の効果を十分に発揮させることができる。
次に、多孔質磁性コア粒子について説明する。
多孔質磁性コア粒子の材質としては、マグネタイト又はフェライトが好ましい。さらに、多孔質磁性コア粒子の材質は、フェライトであることが多孔質磁性コア粒子の多孔質の構造を制御したり、抵抗を調整できるため、より好ましい。
フェライトは次の一般式で表される焼結体である。
(M12O)x(M2O)y(Fe2O3)z
(式中、M1は1価、M2は2価の金属であり、x+y+z=1.0としたとき、x及びyは、それぞれ0≦(x,y)≦0.8であり、zは、0.2<z<1.0である。)
式中において、M1及びM2としては、Li、Fe、Mn、Mg、Sr、Cu、Zn、Caからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を用いることが好ましい。そのほかにもNi、Co、Ba、Y、V、Bi、In、Ta、Zr、B、Mo、Na、Sn、Ti、Cr、Al、Si、希土類なども用いることができる。
磁性キャリアでは、磁化量を適度に維持し、細孔径を所望の範囲にするため多孔質磁性コア粒子表面の凹凸状態を制御することが好ましい。また、フェライト化反応の速度を容易にコントロールでき、多孔質磁性コアの比抵抗と磁気力を好適にコントロールできることが好ましい。以上の観点から、Mn元素を含有する、Mn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Mn-Mg-Sr系フェライト、Li-Mn系フェライトがより好ましい。
以下に、磁性キャリアコアとして多孔質フェライト粒子を用いる場合の製造工程を詳細に説明する。
<工程1(秤量・混合工程)>
上記フェライトの原料を、秤量し、混合する。
フェライト原料としては、上記金属元素の金属粒子、又はその酸化物、水酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩などが挙げられる。
混合する装置としては、例えば以下のものが挙げられる。ボールミル、遊星ミル、ジオットミル、振動ミル。特にボールミルが混合性の観点から好ましい。
具体的には、ボールミル中に、秤量したフェライト原料、ボールを入れ、好ましくは0.1時間以上20.0時間以下、粉砕・混合する。
<工程2(仮焼成工程)>
粉砕・混合したフェライト原料を、大気中又は窒素雰囲気下で、好ましくは焼成温度700℃以上1200℃以下の範囲で、好ましくは0.5時間以上5.0時間以下仮焼成し、フェライト化する。焼成には、例えば以下の炉が用いられる。バーナー式焼却炉、ロータリー式焼成炉、電気炉などが挙げられる。
<工程3(粉砕工程)>
工程2で作製した仮焼フェライトを粉砕機で粉砕する。
粉砕機としては、所望の粒径が得られれば特に限定されない。例えば以下のものがあげられる。クラッシャーやハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ジオットミルなどが挙げられる。
フェライト粉砕品を所望の粒径にするために、例えば、ボールミルやビーズミルでは用いるボールやビーズの素材、粒径、運転時間を制御することが好ましい。具体的には、仮焼フェライトスラリーの粒径を小さくするためには、比重の重いボールを用いたり、粉砕時間を長くすればよい。また、仮焼フェライトの粒度分布を広くするためには、比重の重いボールやビーズを用い、粉砕時間を短くすることで得ることができる。また、粒径の異なる複数の仮焼フェライトを混合することでも分布の広い仮焼フェライトを得ることができる。
また、ボールミルやビーズミルは、乾式より湿式の法が、粉砕品がミルの中で舞い上がることがなく粉砕効率が高い。このため、乾式より湿式の方がより好ましい。
<工程4(造粒工程)>
仮焼フェライトの粉砕品に対し、水、バインダーと、必要に応じて、細孔調整剤を加える。細孔調整剤としては、発泡剤や樹脂微粒子が挙げられる。
発泡剤として、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウムが挙げられる。
樹脂微粒子として、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体のようなスチレン共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂;脂肪族多価アルコール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアルコール類及びジフェノール類から選択されるモノマーを構造単位として有するポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂の微粒子が挙げられる。
上記バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが用いられる。
工程3において、湿式で粉砕した場合は、フェライトスラリー中に含まれている水も考慮し、バインダーと必要に応じて細孔調整剤を加えることが好ましい。
得られたフェライトスラリーを、噴霧乾燥機を用い、好ましくは100℃以上200℃以下の加温雰囲気下で、乾燥・造粒する。噴霧乾燥機としては、所望の多孔質磁性コア粒子の粒径が得られれば特に限定されない。例えば、スプレードライヤーが使用できる。
<工程5(本焼成工程)>
次に、造粒品を、好ましくは800℃以上1400℃以下で、好ましくは1時間以上24時間以下焼成する。
焼成温度を上げ、焼成時間を長くすることで、多孔質磁性コア粒子の焼成が進み、その結果、細孔径は小さく、かつ、細孔の数も減る。
<工程6(選別工程)>
以上の様に焼成した粒子を解砕した後に、必要に応じて、分級や篩で篩分して粗大粒子や微粒子を除去してもよい。
画像へのキャリア付着とガサツキの抑制の観点から、磁性コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)は、好ましくは18.0μm以上68.0μm以下である。
<工程7(充填工程)>
多孔質磁性コア粒子は、内部の細孔容積によっては物理的強度が低くなることがあり、磁性キャリアとしての物理的強度を高めるために、多孔質磁性コア粒子の空隙の少なくとも一部に樹脂の充填を行うことが好ましい。多孔質磁性コア粒子に充填される樹脂の量としては、多孔質磁性コア粒子中、2質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
磁性キャリア毎の樹脂含有量にバラつきが少なければ、内部空隙内の一部にのみ樹脂が充填されていても、多孔質磁性コア粒子の表面近傍の空隙にのみ樹脂が充填され内部に空隙が残っていても、内部空隙が完全に樹脂で充填されていてもよい。
多孔質磁性コア粒子の空隙に、樹脂を充填する方法としては、特に限定されないが、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、及び流動床のような塗布方法により多孔質磁性コア粒子を樹脂溶液に含浸させ、その後、溶剤を揮発させる方法が挙げられる。また、樹脂を溶剤に希釈し、これを多孔質磁性コア粒子の空隙に添加する方法も採用できる。
ここで用いられる溶剤は、樹脂を溶解できるものであればよい。有機溶剤に可溶な樹脂である場合は、有機溶剤として、トルエン、キシレン、セルソルブブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノールが挙げられる。また、水溶性の樹脂又はエマルジョンタイプの樹脂である場合には、溶剤として水を用いればよい。
上記樹脂溶液における樹脂固形分の量は、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上30質量%以下である。50質量%以下であると、粘度が高すぎず多孔質磁性コア粒子の空隙に樹脂溶液が均一に浸透しやすい。一方、1質量%以上であると樹脂量が適量であり、多孔質磁性コア粒子への樹脂の付着力が良好になる。
多孔質磁性コア粒子の空隙に充填する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のどちらを用いてもかまわない。多孔質磁性コア粒子に対する親和性が高いものであることが好ましい。親和性が高い樹脂を用いた場合には、多孔質磁性コア粒子の空隙への樹脂の充填と同時に、多孔質磁性コア粒子表面を樹脂で覆うこともできる。
上記充填する樹脂として、熱可塑性樹脂としては、以下のものが挙げられる。ノボラック樹脂、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリアリレート、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
また、上記熱硬化性樹脂としては、以下のものが挙げられる。フェノール系樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、などが挙げられる。
また、磁性キャリアは、磁性キャリアコア表面に樹脂被覆層を有する。
該樹脂被覆層は、前述のように重合体Bを含有していることが重要であり、さらに重合体Cを含有していることが好ましい。
該重合体Cを含有させる場合は、該重合体Bおよび該重合体Cを混合した被覆樹脂溶液を作成し、磁性キャリアコア粒子に被覆させることが好ましい。
磁性キャリアコア粒子の表面を樹脂で被覆する方法としては、特に限定されないが、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、乾式法、及び流動床のような塗布方法により被覆する方法が挙げられる。
また、樹脂被覆層に導電性を有する粒子や荷電制御性を有する粒子や材料を含有させて用いてもよい。導電性を有する粒子としては、カーボンブラック、マグネタイト、グラファイト、酸化亜鉛、酸化錫が挙げられる。
導電性を有する粒子の添加量としては、被覆樹脂の質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが磁性キャリアの抵抗を調整するためには好ましい。
荷電制御性を有する粒子としては、有機金属錯体の粒子、有機金属塩の粒子、キレート化合物の粒子、モノアゾ金属錯体の粒子、アセチルアセトン金属錯体の粒子、ヒドロキシカルボン酸金属錯体の粒子、ポリカルボン酸金属錯体の粒子、ポリオール金属錯体の粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂の粒子、ポリスチレン樹脂の粒子、メラミン樹脂の粒子、フェノール樹脂の粒子、ナイロン樹脂の粒子、シリカの粒子、酸化チタンの粒子、アルミナの粒子など挙げられる。
荷電制御性を有する粒子の添加量としては、被覆樹脂の質量を基準として、0.5質量%以上50.0質量%以下であることが摩擦帯電量を調整するためには好ましい。
磁性キャリア表面に存在する樹脂被覆層の含有量は、磁性キャリアコアの質量を基準として1.0質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。該含有量が1.0質量%以上の場合は樹脂の強靭性、耐摩耗性が高まり、画像濃度の変化が抑制される。一方、該含有量が3.0質量%以下の場合、帯電の緩和性がより高まり、画像面内の濃度ムラや細線再現性の低下がより抑制される。
〔画像形成方法〕
次に、二成分系現像剤及び補給用現像剤を用いる現像装置を備えた画像形成装置について例を挙げて説明するが、本発明はこれに限るものではない。
図2おいて、静電潜像担持体1は図中矢印方向に回転する。静電潜像担持体1は帯電手段である帯電器2により帯電され、帯電した静電潜像担持体1表面には、静電潜像形成手段である露光器3により露光させ、静電潜像を形成する。現像器4は、二成分系現像剤を収容する現像容器5を有し、現像剤担持体6は回転可能な状態で配置され、且つ、現像剤担持体6内部に磁界発生手段をしてマグネット7を内包している。マグネット7の少なくとも一つは潜像担持体に対して対向の位置になるように設置されている。
二成分系現像剤は、マグネット7の磁界により現像剤担持体6上に保持され、規制部材8により、二成分系現像剤量が規制され、静電潜像担持体1と対向する現像部に搬送される。現像部においては、マグネット7の発生する磁界により磁気ブラシを形成する。その後、直流電界に交番電界を重畳してなる現像バイアスを印加することにより静電潜像はトナー像として可視像化される。静電潜像担持体1上に形成されたトナー像は、転写帯電器11によって記録媒体12に静電的に転写される。
ここで、図3に示すように、静電潜像担持体1から中間転写体9に一旦転写し、その後、転写材(記録媒体)12へ静電的に転写してもよい。その後記録媒体12は、定着器13に搬送され、ここで加熱、加圧されることにより、記録媒体12上にトナーが定着される。その後、記録媒体12は、出力画像として装置外へ排出される。なお、転写工程後、静電潜像担持体1上に残留したトナーは、クリーナー15により除去される。
その後、クリーナー15により清掃された静電潜像担持体1は、前露光16からの光照射により電気的に初期化され、上記画像形成動作が繰り返される。
図3は、フルカラー画像形成装置の一例を示す。
図中のK、Y、C、Mなどの画像形成ユニットの並びや回転方向を示す矢印は何らこれに限定されるものではない。ちなみにKはブラック、Yはイエロー、Cはシアン、Mはマゼンタを意味している。図3において、静電潜像担持体1K、1Y、1C、1Mは図中矢印方向に回転する。各静電潜像担持体は帯電手段である帯電器2K、2Y、2C、2Mにより帯電され、帯電した各静電潜像担持体表面には、静電潜像形成手段である露光器3K、3Y、3C、3Mにより露光し、静電潜像を形成する。
その後、現像手段である現像器4K、4Y、4C、4Mに具備される現像剤担持体6K、6Y、6C、6M上に担持された二成分系現像剤により静電潜像はトナー像として可視像化される。さらに転写手段である中間転写帯電器10K、10Y、10C、10Mにより中間転写体9に転写される。さらに転写手段である転写帯電器11により、記録媒体12に転写され、記録媒体12は、定着手段である定着器13により加熱圧力定着され、画像として出力される。そして、中間転写体9のクリーニング部材である中間転写体クリーナー14は、転写残トナーなどを回収する。
現像方法としては、具体的には、現像剤担持体に交流電圧を印加して、現像領域に交番電界を形成しつつ、磁気ブラシが感光体に接触している状態で現像を行うことが好ましい。現像剤担持体(現像スリーブ)6と感光ドラムとの距離(S-D間距離)は、100μm以上1000μm以下であることが、キャリア付着防止及びドット再現性の向上において良好である。100μm以上であると現像剤の供給が十分であり、画像濃度が良好になる。1000μm以下であると、磁極S1からの磁力線が広がりにくく磁気ブラシの密度が良好になり、ドット再現性が向上する。また、磁性コートキャリアを拘束する力が高まりキャリア付着を抑制できる。
交番電界のピーク間の電圧(Vpp)は、好ましくは300V以上3000V以下、より好ましくは500V以上1800V以下である。また周波数は、好ましくは500Hz以上10000Hz以下、より好ましくは1000Hz以上7000Hz以下であり、それぞれプロセスにより適宜選択して用いることができる。
この場合、交番電界を形成するための交流バイアスの波形としては三角波、矩形波、正弦波、あるいはDuty比を変えた波形が挙げられる。ときにトナー像の形成速度の変化に対応するためには、非連続の交流バイアス電圧を有する現像バイアス電圧(断続的な交番重畳電圧)を現像剤担持体に印加して現像を行うことが好ましい。印加電圧が300V以上であると十分な画像濃度が得られやすく、また非画像部のカブリトナーを回収しやすくなる。また、3000V以下であると磁気ブラシを介した潜像の乱れが生じにくく、良好な画質が得られる。
良好に帯電したトナーを有する二成分系現像剤を使用することで、カブリ取り電圧(Vback)を低くすることができ、感光体の一次帯電を低めることができるために感光体寿命を長寿命化できる。Vbackは、現像システムにもよるが、好ましくは200V以下であり、より好ましくは150V以下である。コントラスト電位としては、十分な画像濃度が出るように100V以上400V以下が好ましく用いられる。
また、周波数が500Hzより低いと、プロセススピードにも関係するが、静電潜像担感光体の構成としては、通常、画像形成装置に用いられる感光体と同じでよい。例えば、アルミニウム、SUS等の導電性基体の上に、順に導電層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層、必要に応じて電荷注入層を設ける構成の感光体が挙げられる。
導電層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層は、通常、感光体に用いられるものでよい。感光体の最表面層として、例えば電荷注入層あるいは保護層を用いてもよい。
以下、本発明に関する物性の測定方法について説明する。
<樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30℃以上180℃以下の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。
一度、180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30℃以上100℃以下の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、DSC曲線におけるガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度を、樹脂のガラス転移温度(Tg:℃)とする。
<ワックスの吸熱ピークのピーク温度の測定>
ワックスの最大吸熱ピークのピークトップ温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TAインストルメント社製)を用いて、ASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。測定条件は以下の通りである。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
トナーを試料とする場合において、吸熱ピーク(結着樹脂由来の吸熱ピーク)がワックス以外の樹脂の吸熱ピークと重なっていない場合には、得られた最大吸熱ピークをそのままワックスに由来する吸熱ピークとして扱う。
一方、トナーを試料とする場合において、ワックスの吸熱ピークの判別は、トナーからヘキサン溶媒を使用したソックスレー抽出によってワックスを抽出し、ワックス単体の示差走査熱量測定を上記方法で行い、得られた吸熱ピークとトナーの吸熱ピークを比較することにより行う。
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことを意味する。また、該最大吸熱ピークのピーク温度を、融点とする。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重合体Aなどの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
まず、試料をテトラヒドロフラン(THF)中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうし、THFとよく混ぜ、試料の合一体が無くなるまで、さらに12時間以上静置する。
その時、THF中への放置時間が24時間となるようにする。その後、得られた溶液をサンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、例えばマイショリディスクH-25-2(東ソー社製))を通過させたものをGPCの試料とする。
また、試料濃度は、0.5mg/ml以上5.0mg/ml以下となるように調製する。この試料溶液を用いて、以下の条件で測定する。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、上記試料溶液を約100μl注入して測定する。
カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせる。昭和電工社製のshodex GPC KF-801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合せ、又は、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを用いる。
試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製又は昭和電工社製の分子量が1×102~1×107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いる。なお、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解水溶液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。さらに測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
<磁性キャリア、多孔質磁性コアの体積平均粒径(D50)の測定方法>
粒度分布測定は、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3300EX」(日機装社製)にて測定を行う。
磁性キャリア、多孔質磁性コアの体積平均粒径(D50)の測定には、乾式測定用の試料供給機「ワンショットドライ型サンプルコンディショナーTurbotrac」(日機装社製)を装着して行う。Turbotracの供給条件として、真空源として集塵機を用い、風量約33l/sec、圧力約17kPaとする。制御は、ソフトウエア上で自動的に行う。粒径は体積平均の累積値である50%粒径(D50)を求める。制御及び解析は付属ソフト(バージョン10.3.3-202D)を用いて行う。測定条件は下記の通りである。
SetZero時間:10秒
測定時間 :10秒
測定回数 :1回
粒子屈折率 :1.81%
粒子形状 :非球形
測定上限 :1408μm
測定下限 :0.243μm
測定環境 :23℃、50%RH
<多孔質磁性コアの細孔径及び細孔容積の測定>
多孔質磁性コアの細孔径分布は、水銀圧入法により測定される。
測定原理は、以下の通りである。
本測定では、水銀に加える圧力を変化させ、その際の細孔中に浸入した水銀の量を測定する。細孔内に水銀が浸入し得る条件は、圧力P、細孔直径D、水銀の接触角と表面張力をそれぞれθとσとすると、力の釣り合いから、PD=-4σCOSθで表せる。接触角と表面張力を定数とすれば、圧力Pとそのとき水銀が浸入し得る細孔直径Dは反比例することになる。このため、圧力Pとそのときに浸入液量Vを、圧力を変えて測定し得られる、P-V曲線の横軸Pを、そのままこの式から細孔直径に置き換え、細孔分布を求めている。
測定装置としては、ユアサアイオニクス社製、全自動多機能水銀ポロシメータPoreMasterシリーズ・PoreMaster-GTシリーズや、島津製作所社製、自動ポロシメータオートポアIV 9500 シリーズ等を用いて測定することができる。
具体的には、株式会社 島津製作所社のオートポアIV9520を用いて、下記条件・手順にて測定を行う。
測定条件
測定環境 20℃
測定セル 試料体積 5cm3、圧入体積 1.1cm3、用途 粉体用
測定範囲 2.0psia(13.8kPa)以上、59989.6psia(413.7kPa)以下
測定ステップ 80ステップ
(細孔径を対数で取った時に、等間隔になるようにステップを刻む)
圧入パラメータ 排気圧力 50μmHg
排気時間 5.0min
水銀注入圧力 2.0psia(13.8kPa)
平衡時間 5secs
高圧パラメータ 平衡時間 5secs
水銀パラメータ 前進接触角 130.0degrees
後退接触角 130.0degrees
表面張力 485.0mN/m(485.0dynes/cm)
水銀密度 13.5335g/mL
測定手順
(1)多孔質磁性コアを、約1.0g秤量し試料セルに入れる。
秤量値を入力する。
(2)低圧部で、2.0psia(13.8kPa)以上、45.8psia(315.6kPa)以下の範囲を測定。
(3)高圧部で、45.9psia(316.3kPa)以上、59989.6psia(413.6kPa)以下の範囲を測定。
(4)水銀注入圧力及び水銀注入量から、細孔径分布を算出する。
(2)、(3)、(4)は、装置付属のソフトウエアにて、自動で行う。
上記の様にして計測した細孔径分布から、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における微分細孔容積が最大となる細孔径を読み取り、それをもって、微分細孔容積が極大となる細孔径とする。
また、0.1μm以上3.0μm以下の細孔径の範囲における微分細孔容積を積分した細孔容積を、付属のソフトウエアを用いて算出し、細孔容積とする。
<磁性キャリアからの樹脂被覆層の分離及び樹脂被覆層中の重合体B及びCの分取>
磁性キャリアから樹脂被覆層を分離する方法としては、磁性キャリアをカップに取り、トルエンを用いて被覆用樹脂を溶出させる方法がある。
溶出させた樹脂を乾固させたのち、テトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、以下の装置を用いて分取する。
[装置構成]
LC-908(日本分析工業株式会社製)
JRS-86(同社;リピートインジェクタ)
JAR-2(同社;オートサンプラー)
FC-201(ギルソン社;フラクッションコレクタ)
[カラム構成]
JAIGEL-1H~5H(20φ×600mm:分取カラム)(日本分析工業株式会社製)
[測定条件]
温度:40℃
溶媒:THF
流量:5ml/min.
検出器:RI
被覆用樹脂の分子量分布に基づき、下記方法で特定した樹脂構成を用いて、樹脂A、樹脂Bのピーク分子量(Mp)となる溶出時間を予め測定し、その前後でそれぞれの樹脂成分を分取する。その後溶剤を除去し、乾燥させ、重合体B、及び重合体Cを得る。
なお、フーリエ変換赤外分光分析装置(Spectrum One:PerkinElmer社製)を用いて吸光波数から原子団を特定し、重合体B、及び重合体Cの樹脂構成を特定することができる。
<樹脂被覆層の重量平均分子量(Mw)、ピーク分子量(Mp)及び含有量比の測定>
重合体B、重合体C、及び樹脂被覆層の重量平均分子量(Mw)及びピーク分子量(Mp)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下の手順で測定する。
まず、測定試料は以下のようにして作製する。
試料(磁性キャリアから分離した被覆用樹脂)と、テトラヒドロフラン(THF)とを5mg/mlの濃度で混合し、室温にて24時間静置して、試料をTHFに溶解した。その後、サンプル処理フィルター(マイショリディスクH-25-2 東ソー社製)を通過させたものをGPCの試料とする。
次に、GPC測定装置(HLC-8120GPC 東ソー社製)を用い、前記装置の操作マニュアルに従い、下記の測定条件で測定する。
(測定条件)
装置:高速GPC「HLC8120 GPC」(東ソー社製)
カラム:Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液 :THF
流速 :1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量 :0.10ml
また、試料の重量平均分子量(Mw)及びピーク分子量(Mp)の算出にあたって、検量線は、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500)により作成した分子量較正曲線を使用する。
また、含有量比については、分子量分布測定のピーク面積比により求める。図4のように、領域1と領域2が完全に分かれているものは、それぞれの領域の面積比から、樹脂の含有量比を求める。図5のように、それぞれの領域が重なる場合は、GPC分子量分布曲線の変極点から垂直に横軸に降ろした線で分割し、図5に示す領域1と領域2の面積比から含有量比を求める。
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の処方において部は特に断りのない限り質量基準である。
<重合体A1~A7の製造例>
温度計及び撹拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン300.0部、ポリプロピレン(融点90℃)10.0部を入れ充分溶解し、窒素置換後、スチレン70.0部、シクロヘキシルメタクリレート5.0部、ブチルアクリレート15.0部、及びキシレン250.0部の混合溶液を180℃で3時間滴下し重合する。さらにこの温度で30分間保持し、脱溶剤を行い、重合体A1を得た。得られた重合体の組成を表1に示す。
また、表1に記載の原料を用いて、同様にして樹脂A2~A7を得た。
<重合体B1~B8の製造例>
オートクレーブにキシレン50部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で185℃まで昇温した。表2に記載の原料100部と、ジ-t-ブチルパーオキサイド50部、及びキシレン20部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を185℃にコントロールしながら、3時間連続的に滴下し重合させた。さらに同温度で1時間保ち重合を完了させ、溶媒を除去し、重合体B-1を得た。
また、表2に記載の原料を用いて、同様にして重合体B-2~B-8を得た。物性を表2に示す。
<重合体C1の製造例>
表3に記載の原料(合計109.0部)を、還流冷却器、温度計、窒素吸い込み管及びすり合わせ方式撹拌装置を配した4ツ口フラスコに添加し、更にトルエン100.0部、メチルエチルケトン100.0部、アゾビスイソバレロニトリル2.4部を加え、窒素気流下80℃で10時間保ち、重合体C1溶液(固形分35質量%)を得た。
また、表3に記載の原料を用いて、同様にして重合体C-2~C-4を得た。物性を表3に示す。
<トナーの製造例>
<非晶性ポリエステル樹脂の製造例>
<低分子量の非晶性ポリエステル樹脂(L)の製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.8)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
:76.6部
(0.17モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸 :17.4部
(0.10モル;多価カルボン酸総モル数に対して72.0mol%)
・アジピン酸 : 6.0部
(0.04モル;多価カルボン酸総モル数に対して28.0mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒) : 0.5部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対を備えた反応槽に、上記材料を秤量した。
次に反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤) : 0.1部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した反応物の軟化点が90℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め(第2反応工程)、非晶性ポリエステル樹脂(L)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂(L)は、ピーク分子量(Mp)が5000、軟化点(Tm)が90℃、ガラス転移温度(Tg)が52℃であった。
<高分子量の非晶性ポリエステル樹脂(H)の製造例>
・ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
:72.2部
(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸 :13.2部
(0.08モル;多価カルボン酸総モル数に対して48.0mol%)
・アジピン酸 : 8.2部
(0.06モル;多価カルボン酸総モル数に対して34.0mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒):0.5部
冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対を備えた反応槽に、上記材料を秤量した。
次に反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、160まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・トリメリット酸 : 6.3部
(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して18.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤) : 0.1部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した反応物の軟化点が140℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め(第2反応工程)、非晶性ポリエステル樹脂(H)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂(H)は、ピーク分子量(Mp)が8700、軟化点(Tm)が142℃、ガラス転移温度(Tg)が57℃であった。
<トナー1の製造例>
・低分子量の非晶性ポリエステル樹脂(L) 70.0部
・高分子量の非晶性ポリエステル樹脂(H) 30.0部
・重合体A1 8.0部
・フィッシャートロプシュワックス 8.0部
(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度が90℃)
・C.I.ピグメントブルー15:3 7.0部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.1部
(ボントロンE101 オリエント化学工業社製)
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業株式会社製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度150℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて溶融及び混練した。得られた溶融混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業株式会社製)にて微粉砕した。さらにファカルティF-300(ホソカワミクロン株式会社製)を用い、分級を行い、樹脂粒子1を得た。ファカルティF-300の運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とした。
得られた樹脂粒子1を用い、図1で示す熱処理装置によって熱処理を行い、トナー粒子1を得た。運転条件は、フィード量を5kg/hr、熱風温度を140℃、熱風流量を6m3/min.、冷風温度を-5℃、冷風流量を4m3/min.、ブロワー風量を20m3/min.、インジェクションエア流量を1m3/min.とした。
100部のトナー粒子1に、疎水性シリカ(比表面積:130m2/g)1.0部、及び、チタン酸ストロンチウム微粒子(比表面積:60m2/g)1.0部を、ヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業株式会社製)で回転数30s-1、回転時間10min.で混合して、トナー1を得た。
<トナー2~14の製造例>
表4に示すように材料の種類、添加量を変えた以外はトナー1の製造例と同様にして、トナー2~14を得た。なお、トナー11~14は熱処理を行わなかった。
<磁性キャリアコア1の製造例>
工程1(秤量・混合工程)
Fe2O3 68.3質量%
MnCO3 28.5質量%
Mg(OH)2 2.0質量%
SrCO3 1.2質量%
上記フェライト原材料を秤量し、フェライト原料80部に水20部を加え、その後、直径(φ)10mmのジルコニアを用いてボールミルで3時間湿式混合しスラリーを調製した。スラリーの固形分濃度は、80質量%とした。
工程2(仮焼成工程)
混合したスラリーをスプレードライヤー(大川原化工機社製)により乾燥した後、バッチ式電気炉で、窒素雰囲気下(酸素濃度1.0体積%)、温度1050℃で3.0時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
工程3(粉砕工程)
仮焼フェライトをクラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、水を加え、スラリーを調製した。スラリーの固形分濃度を70質量%とした。1/8インチのステンレスビーズを用いた湿式ボールミルで3時間粉砕し、スラリーを得た。さらにこのスラリーを直径1mmのジルコニアを用いた湿式ビーズミルで4時間粉砕し、体積基準の50%粒子径(D50)が1.3μmの仮焼フェライトスラリーを得た。
工程4(造粒工程)
上記仮焼フェライトスラリー100部に対し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール1.5部を添加した後、スプレードライヤー(大川原化工機社製)で球状粒子に造粒、乾燥した。得られた造粒物に対して、粒度調整を行った後、ロータリー式電気炉を用いて700℃で2時間加熱し、分散剤やバインダー等の有機物を除去した。
工程5(焼成工程)
窒素雰囲気下(酸素濃度1.0体積%)で、室温から焼成温度(1100℃)になるまでの時間を2時間とし、温度1100℃で4時間保持し、焼成した。その後、8時間をかけて温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
工程6(選別工程)
凝集した粒子を解砕した後に、目開き150μmの篩で篩分して粗大粒子を除去、風力分級を行って微粉を除去し、さらに磁力選鉱により低磁力分を除去して多孔質磁性コア粒子1を得た。この多孔質磁性コア粒子1の体積平均粒径は41μm、細孔径は0.45μm、細孔容積は45mm3/gであった、
多孔質磁性コア粒子1を100部、混合撹拌機(ダルトン社製の万能撹拌機NDMV型)の撹拌容器内に入れ、60℃に温度を保ち、常圧でメチルシリコーンオリゴマー:95.0質量%、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン:5.0質量%からなる充填樹脂を5部滴下した。
滴下終了後、時間を調整しながら撹拌を続け、70℃まで温度を上げ、各多孔質磁性コアの粒子内に樹脂組成物を充填した。
冷却後得られた樹脂充填型磁性コア粒子を、回転可能な混合容器内にスパイラル羽根を有する混合機(杉山重工業社製のドラムミキサーUD-AT型)に移し、窒素雰囲気下で、2℃/分の昇温速度で、撹拌しながら140℃まで上昇させた。その後140℃で50分間加熱撹拌を続けた。
その後室温まで冷却し、樹脂が充填、硬化されたフェライト粒子を取り出し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。さらに、振動篩にて粗大粒子を取り除き樹脂が充填された磁性キャリアコア1を得た。
<磁性キャリア1の製造例>
・磁性キャリアコア1 100部
・重合体B1 0.60部
・重合体C1 1.40部
磁性キャリアコア1:100部に対して、上記の部数の被覆用樹脂を樹脂成分が5%になるようにトルエンで希釈し、充分に撹拌された樹脂溶液を準備した。その後温度60℃で維持されている遊星運動型混合機(ホソカワミクロン社製のナウタミキサVN型)に、磁性キャリアコア1を入れ、上記の樹脂溶液を投入した。投入の仕方として、1/2の量の樹脂溶液を投入し、30分間溶媒除去及び塗布操作を行った。次いで、さらに1/2の量の樹脂溶液を投入し、40分間溶媒除去及び塗布操作を行った。
その後樹脂被覆層で被覆された磁性キャリアを回転可能な混合容器内にスパイラル羽根を有する混合機(杉山重工業社製のドラムミキサーUD-AT型)に移し、混合容器を1分間に10回転させて撹拌しながら、窒素雰囲気下に温度120℃で2時間熱処理した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口150μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、磁性キャリア1を得た。磁性キャリア1の体積平均粒径は43μmであった。
<磁性キャリア2~15の製造例>
表5に示すように材料の種類、添加量を変えた以外は磁性キャリア1の製造例と同様にして、磁性キャリア2~15を得た。磁性キャリア2~15の体積平均粒径はいずれも43μmであった。
トナー1~14と磁性キャリア1~15を用いて、トナー濃度が8質量%となるように各材料を、振とう機(YS-8D型:株式会社ヤヨイ製)にて振とうし、二成分系現像剤300gを調製した。振とう機の振幅条件は200rpm、2分間とした。
一方、8部の磁性キャリア1~15それぞれに対し、トナー1~14それぞれを92部加え、常温常湿23℃/50%RHの環境において、V型混合機により5分間混合し、補給用現像剤を得た。二成分系現像剤の詳細を表6に、補給用現像剤の詳細を表7に示す。
〔実施例1~22及び比較例1~6〕
得られた二成分系現像剤及び補給用現像剤を用いて以下の評価を行った。
画像形成装置として、キヤノン製カラー複写機imagePRESS C850 改造機を用いた。
各色現像器に二成分系現像剤を入れ、各色補給用現像剤を入れた補給用現像剤容器をセットし、画像を形成し、耐久試験での各種評価を行った。
耐久試験として、温度23℃/湿度5RH%(以下「N/L」)の温度30℃/湿度80RH%(以下「H/H」)および印刷環境の下で、画像比率1%のFFH出力のチャートを用いた。
FFHとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFHが256階調の256階調目(ベタ部)である。
画像出力枚数は、各環境とも100,000枚とした。
(条件)
紙:レーザービームプリンター用紙CS-814(81.4g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン株式会社)
画像形成速度:A4サイズ、フルカラーで85枚/min
現像条件:現像コントラストを任意値で調整可能にし、本体による自動補正が作動しないように改造した。交番電界のピーク間の電圧(Vpp)は、周波数2.0kHz、Vppが0.7kVから1.8kVまで0.1kV刻みで変えられるように改造した。各色とも、単色で画像が出力できるように改造した。
各評価項目を以下に示す。
(1)画像濃度変動
上記の環境、条件で耐久試験を行い、耐久試験中1,000枚ごとに、1cm×1cmのFFH濃度のパッチを、紙上に縦横に等間隔になるように9個配置された画像を出力した。すべてのパッチの反射濃度をX-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用いて測定し、その平均値を求め、その耐久枚数における画像濃度とした。その後、耐久中のすべての画像濃度の変動の標準偏差を算出した。この画像濃度の変動の標準偏差を以下に示す評価基準に基づいて評価した。100,000枚連続通紙期間中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行うこととする。
<評価基準>
A:標準偏差:0.02未満
B:標準偏差:0.02以上0.04未満
C:標準偏差:0.04以上0.06未満
D:標準偏差:0.06以上0.08未満
E:標準偏差:0.08以上0.10未満
F:標準偏差:0.10以上0.15未満
G:標準偏差:0.15以上0.20未満
H:標準偏差:0.20以上
(2)濃度ムラの評価
前記(1)の耐久試験後に、平均反射濃度0.80のスクリーンハーフトーンをA3サイズ紙で画像出力し、濃度の均一性を評価した。
評価紙は、コピー普通紙CS-814(A3、坪量81.4g/m2、キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
1枚中45か所の画像濃度を分光濃度計500シリーズ(X-Rite社)によって測定し、そのバラツキを標準偏差にて以下の評価基準にて評価した。
<評価基準>
A:標準偏差:0.010未満
B:標準偏差:0.010以上0.020未満
C:標準偏差:0.020以上0.030未満
D:標準偏差:0.030以上0.040未満
E:標準偏差:0.040以上0.050未満
F:標準偏差:0.050以上0.060未満
G:標準偏差:0.060以上0.080未満
H:標準偏差:0.080以上
(3)環境特性の評価
前記(1)の耐久評価において、同一耐久枚数での濃度差を比較し、環境特性を評価した。得られた濃度差のうち最大であったものについて、以下の評価基準にて評価した。
<評価基準>
A:濃度差:0.03未満
B:濃度差:0.03以上0.06未満
C:濃度差:0.06以上0.10未満
D:濃度差:0.10以上0.13未満
E:濃度差:0.13以上0.16未満
F:濃度差:0.16以上0.20未満
G:濃度差:0.20以上0.25未満
H:濃度差:0.25以上
(4)細線再現性の評価
高温高湿環境下(温度30℃、相対湿度85%)にてFFh画像のトナーの載り量を0.45mg/cm2となるように現像電圧を初期調整した。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hを1階調目(白地部)、FFhを256階調目(ベタ部)とする。
印字率100%となるベタ画像を200枚連続出力してトナーボトル・ホッパーから現像装置にフレッシュなトナー供給が行われた直後の状態にした。その後、電子写真感光体の表面にレーザー露光により600dpiの10dot縦パターン潜像(静電潜像のライン幅が420μmである。)を1cm間隔で書いた画像を1000枚連続でプリンアウトし、画像中心の線1本の線幅をマイクロスコープで1000本計測した。計測されたデータから標準偏差を算出し、以下の基準にて評価した。1,000枚連続通紙期間中は、1枚目と同じ現像条件、転写条件(キャリブレーション無し)で通紙を行うこととする。
A:標準偏差:5μm未満
B:標準偏差:5μm以上10μm未満
C:標準偏差:10μm以上15μm未満
D:標準偏差:15μm以上20μm未満
E:標準偏差:20μm以上30μm未満
F:標準偏差:30μm以上40μm未満
G:標準偏差:40μm以上50μm未満
H:標準偏差:50μm以上
(5)総合評価
上記評価項目(1)~(4)における評価ランクを数値化し、合計値を以下の基準により判定した。
A=8、B=7、C=6、D=5、E=4、F=3、G=2、H=1とした。
総合評価の合計値が20点以上のものを本発明の効果が得られていると判断した。
結果を表8に示す。