JP2018527416A - 生分解性ポリエステル組成物 - Google Patents

Abstract

本発明は、生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、スチレンの重量含有量が０．１ｐｐｍ−３０ｐｐｍである生分解性ポリエステル組成物を開示する。本発明は、生分解性ポリエステル組成物の処方にスチレンを添加して且つその重量含有量を生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して０．１ｐｐｍ−３０ｐｐｍに制御することによって、生分解性ポリエステル組成物に優れた透光率とヘイズ効果を付与するとともに、生分解性ポリエステル組成物に適切な抗紫外線機能を持たせ、さらに生分解性ポリエステル組成物の分解速度を低下させることがない。

Description

本発明は高分子材料変性分野に属し、具体的には、優れた透光率、ヘイズ効果及び適切な分解速度を有する生分解性ポリエステル組成物に関する。

生分解性ポリエステルは生物資源を原料とする高分子材料である。石油化学資源を原料とする石油系ポリマーに比べて、生分解性ポリエステルは生物又は生化学的作用過程又は生物環境において分解可能であり、従来の生分解性プラスチックのうち、研究が盛んに行われているとともに、将来性が期待できる分解性材料の１種である。

生分解性ポリエステルは、柔らかくて、無毒で、加工しやすく、化学的安定性に優れて、一定の強度を有し、良好な化学溶剤耐性と耐寒性の特徴を有し、農業用マルチシートの分野に幅広く適用される。農業用マルチシートは、特別な役割を果たすため、一般的にその透明性に対して高要求が求められるとともに、その抗紫外線機能にも特別な要件を必要とする。従来、生分解性ポリエステルフィルムの抗紫外線機能を向上させるために使用される方法は、生分解性ポリエステルフィルムに抗紫外線添加剤又はＵＶ吸収剤、ＵＶ安定剤等を所定の含有量で添加することである。たとえば、ＣＮ １０３６８７９０２において、ＵＶ吸収剤とＨＡＬＳ安定剤、又は両方を組み合わせた光安定剤をマルチシートに用いてＵＶ安定性ｗ提供することが記載されている。しかしながら、抗紫外線添加剤又はＵＶ吸収剤、ＵＶ安定剤の添加によって、生分解性ポリエステルフィルムの分解速度をある程度で低下させて、生分解性ポリエステルフィルムは所望時間内で完全に分解できなくなり、それにより土地の耕起や農作物の耕種に悪影響を与えるとともに、土壤の肥力を低下させる。

本発明は研究した結果、驚くことに、生分解性ポリエステル組成物の処方に、微量のスチレンを添加することによって、生分解性ポリエステル組成物に優れた透光率とヘイズ効果を付与するとともに、生分解性ポリエステル組成物に適切な抗紫外線機能を持たせ、さらに生分解性ポリエステル組成物の分解速度を低下させることがないことを見出した。

本発明の目的は、微量のスチレンを添加することによって、分解速度を低下させずに優れた透光率、ヘイズ効果及び抗紫外線性能を付与できる生分解性ポリエステル組成物を提供することである。

本発明の上記目的は下記技術案により達成される。

生分解性ポリエステル組成物であって、成分として、
ｉ）生分解性脂肪族−芳香族ポリエステル６０重量部−１００重量部と、
ｉｉ）ポリ乳酸０−４０重量部と、
ｉｉｉ）有機フィラー及び／又は無機フィラー０−３５重量部とを含む。

生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、スチレンの重量含有量は０．１ｐｐｍ−３０ｐｐｍ、好ましくは０．５ｐｐｍ−１０ｐｐｍである。前記スチレンの重量含有量とは生分解性ポリエステル組成物に最終的に残留された重量含有量を意味する。

１．２０００ｇ±０．００５ｇの生分解性ポリエステル組成物を正確に秤量して、スタティックヘッドスペースサンプラーに投入し、スタティックヘッドスペース方法によって生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンのピーク面積をテストし、生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンのピーク面積とスチレンの検量線に基づき、生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンの重量含有量を算出し、スチレン検量線をスチレン／メタノール溶液で較正する方法によって、本発明の前記スチレンの重量含有量をテストする。

スチレンは、揮発しやすい有機小分子溶媒であり、適切な重量含有量のスチレンを添加した生分解性ポリエステル組成物は、ブロー成形により成膜した後、光照射等の条件の作用下で、スチレンが膜材の表面に小分子層を形成する。小分子層の形成によってフィルムの透光率とヘイズをある程度で向上できるとともに、フィルムの抗紫外線機能をある程度で向上できる。適切な重量含有量のスチレンを添加することは、本質的に生分解性ポリエステル組成物の構造や特性を変化しないため、生分解性ポリエステル組成物の分解速度にほぼ影響しないが、生分解性ポリエステル組成物においてスチレンの重量含有量が３０ｐｐｍを超え、すなわち、添加量が多すぎると、膜材のヘイズは過剰に高くなり、フィルムの透光率は低下し、生分解性ポリエステル組成物に添加されたスチレンの重量含有量が０．１ｐｐｍ未満であると、スチレンの小分子層の厚みは過度に小さくなり、且つ分布にむらが生じ、紫外線に対する抵抗力は不足になり、さらに膜材の分解速度は過度に高くなる。本発明は研究した結果、生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンの重量含有量を０．１ｐｐｍ−３０ｐｐｍに制御することによって、生分解性ポリエステル組成物に優れた透光率とヘイズ効果を付与できるとともに、生分解性ポリエステル組成物に適切な抗紫外線機能を持たせ、さらに生分解性ポリエステル組成物の分解速度を低下させることがないことを見出した。

本発明に係るスチレンの入手方法としては、生分解性ポリエステル組成物の混合加工過程においてスチレン又はスチレン含有物質（たとえば、ポリスチレン、臭化ポリスチレン、ポリ臭化スチレン等）を直接添加して生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンの重量含有量を調整してもよい。

好ましくは、前記生分解性ポリエステル組成物は、成分として、
ｉ）生分解性脂肪族−芳香族ポリエステル６５重量部−９５重量部と、
ｉｉ）ポリ乳酸５重量部−３５重量部と、
ｉｉｉ）有機フィラー及び／又は無機フィラー５重量部−２５重量部とを含む。

前記生分解性脂肪族−芳香族ポリエステルは、ポリブチレンアジペートテレフタレートＰＢＡＴ、ポリブチレンサクシネートテレフタレートＰＢＳＴ、ポリブチレンセバケートテレフタレートＰＢＳｅＴから選ばれる１種又は複数種である。

前記有機フィラーは、天然澱粉、可塑化澱粉、変性澱粉、天然繊維、木粉から選ばれる１種又は複数種、前記無機フィラーは、タルク粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、グラファイト、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、珪灰石、二酸化チタン、ケイ酸塩、雲母、ガラス繊維、鉱物繊維から選ばれる１種又は複数種である。

用途によっては、本発明に係る生分解性ポリエステル組成物にはさらに、可塑剤、離型剤、界面活性剤、ワックス、帯電防止剤、染料、抗ＵＶ助剤又はその他プラスチック添加剤の少なくとも１種を０−４部添加してもよい。

前記可塑剤は、クエン酸エステル、グリセリン、エポキシダイズ油のうちの１種又は２種以上の混合物であり、
前記離型剤は、シリコーンオイル、パラフィン、ホワイトミネラルオイル、ワセリンのうちの１種又は２種以上の混合物であり、
前記界面活性剤は、ポリソルベート、パルミテート又はラウレートのうちの１種又は２種以上の混合物であり、
前記ワックスは、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、蜜蝋又は蜜蝋エステルのうちの１種又は２種以上の混合物であり、
前記帯電防止剤は永久帯電防止剤であり、具体的には、ＰＥＬＥＳＴＡＴ−２３０、ＰＥＬＥＳＴＡＴ−６５００、ＳＵＮＮＩＣＯ ＡＳＡ−２５００のうちの１種又は２種以上の混合物が挙げられ、
前記染料は、カーボンブラック、ブラックマスターバッチ、チタン白、硫化亜鉛、フタロシアニンブルー、蛍光オレンジのうちの１種又は２種以上の混合物である。

抗ＵＶ助剤は、ＵＶ吸収剤とＵＶ安定剤を含み、
前記ＵＶ吸収剤は、ＵＶ−９４４、ＵＶ−２３４、ＵＶ５３１、ＵＶ３２６のうちの１種又は複数種であり、
前記ＵＶ安定剤は、ＵＶ−１２３、ＵＶ−３８９６、ＵＶ−３２８のうちの１種又は複数種であり、
前記その他プラスチック添加剤は、成核剤、防曇剤、潤滑剤（たとえば、ステアリン酸カルシウム）等であってもよい。

前記生分解性ポリエステル組成物の透光率は８８．５−９４．０である。

前記生分解性ポリエステル組成物のヘイズは２８．５９−３３．４５である。

前記生分解性ポリエステル組成物をブロー成形して、所定の厚みを有するフィルムを製造すると、膜材の透光率が高いほど、日光が膜材を透過しやすく、植物の光合成に役立つが、膜材の透光率が高いほど、植物に対して阻害作用を有する紫外線の透過も顕著になり、且つ紫外線の透過により膜材の分解が進んむため、膜材について抗紫外線処理を施す必要があり、たとえば、抗ＵＶ助剤を添加したり膜材のヘイズを向上させたりして、その透明性を低下させる。従って、フィルムの保護効果を活用するために、膜材の透光率とヘイズのバランスを取る必要があり、好ましい上記透光率とヘイズを有する生分解性ポリエステル組成物フィルムは、植物に対して最適な保護効果を奏するとともに、対応した膜材も適切な抗紫外線機能と分解速度を有する。

前記生分解性ポリエステル組成物の熱酸化老化時間は３０−４５日間である。この時間範囲以外では、生分解性ポリエステル組成物の分解速度の過不足を示す。

本発明に係る生分解性ポリエステル組成物はショッピングバッグ、堆肥袋、マルチシート、保護用被覆膜、サイロ用膜、フィルムテープ、織物、不織物、織物製品、魚網、荷重袋、ゴミ袋等の製造に用いられ得る。

従来技術に比べて、本発明は下記有益な効果を有する。

本発明は、生分解性ポリエステル組成物の処方にスチレンを添加し且つその重量含有量を生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して０．１ｐｐｍ−３０ｐｐｍに制御することによって、生分解性ポリエステル組成物に優れた透光率和ヘイズ効果を付与するとともに、生分解性ポリエステル組成物に適切な抗紫外線機能を持たせ、さらに生分解性ポリエステル組成物の分解速度を低下させることがない。

以下、実施形態をもって本発明を更に説明するが、以下の実施例は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の実施形態は下記実施例により制限されない。

本発明の実施例では、下記原料を用いるが、これら原料に制限されない。

成分ｉ）としてＰＢＡＴ、ＰＢＳＴまたはＰＢＳｅＴ、成分ｉｉ）としてＰＬＡ、成分ｉｉｉ）有機フィラーとして澱粉、成分ｉｉｉ）無機フィラーとしてタルク粉、炭酸カルシウム、可塑剤としてクエン酸エステル、その他プラスチック添加剤としてステアリン酸カルシウム、抗ＵＶ助剤としてＵＶ吸収剤とＵＶ安定剤、ワックスとしてエルカ酸アミドを用い、上記助剤、ＰＢＡＴ、、ＰＢＳＴ、ＰＢＳｅＴ及びＰＬＡ、スチレンはすべて市販品として入手される。

各性能指標のテスト標準又は評価方法

（１）生分解性ポリエステル組成物の分解速度の評定方法
本発明では、堆肥テストのかわりに、熱酸化老化テストを用いて生分解性ポリエステル組成物の分解速度を評定した。実験した結果、生分解性ポリエステル組成物は正常に堆肥する場合の分解時間に対応した熱酸化老化時間が約３０〜４５日間であり、この時間範囲以外では、生分解性ポリエステル組成物の分解速度の過不足を示す。

生分解性ポリエステル組成物の熱酸化老化テストの方法
生分解性ポリエステル組成物を真空化されていないアルミ箔袋に入れてシールし、アルミ箔袋を７０℃の熱風オーブンに入れて、熱酸化老化テストを行い、３日間おきにサンプリングして、サンプルのメルトインデックス（１９０℃／２．１６ｋｇ、ＩＳＯ １１３３に準じる）をテストした。サンプルのメルトインデックスが生分解性ポリエステル組成物の正常なメルトインデックスの範囲を超えると、生分解性ポリエステル組成物は明らかな熱酸化老化分解が発生したことを示し、生分解性ポリエステル組成物が明らかな熱酸化老化分解を発生させるテスト時点を記録した。

（２）生分解性ポリエステル組成物のヘイズ及び透光率のテスト
ＧＢ／Ｔ２４１０−２００８による透明プラスチックの透光率とヘイズの測定を参照して、本発明に係る生分解性ポリエステル組成物のヘイズと透光率の測定には、厚み１２μｍの単層膜を用いてテストした。

（３）スチレンの測定方法
１．２０００ｇ±０．００５ｇの生分解性ポリエステル組成物を正確に秤量して、スタティックヘッドスペースサンプラーに投入し、スタティックヘッドスペース方法によって生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンのピーク面積をテストし、生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンのピーク面積とスチレンの検量線に基づき、生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンの重量含有量を算出し、スチレン検量線をスチレン／メタノール溶液で較正した。
スタティックヘッドスペース用装置の型番及びパラメータは以下のとおりである。
Ａｇｉｌｅｎｔ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｉｅｓ ７６９７Ｈｅａｄｓｐａｃｅ Ｓａｍｐｌｅｒ；
Ａｇｉｌｅｎｔ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｉｅｓ ７８９０ＡＧＣ Ｓｙｓｔｅｍ；
カラム：Ｊ＆Ｗ １２２−７０３２：２５０℃：３０ｍｘ２５０μｍｘ０．２５μｍ；
試料注入：前ＳＳ試料注入口Ｎ_２；
排出：前検出器ＦＩＤ。

実施例１−２３及び比較例１−３

表１に示す処方に基づいて、ＰＢＡＴ又はＰＢＳＴ又はＰＢＳｅＴ、ＰＬＡ、有機フィラー、無機フィラー、可塑剤、抗ＵＶ助剤、ワックス、その他プラスチック添加剤等の助剤及びスチレンを均一に混合した後に単軸押出機に投入し、１４０℃−２４０℃で押し出して造粒し、生分解性ポリエステル組成物を得た。性能のテストデータは表１に示される。

表１ 実施例１−２３及び比較例１−３の各成分の配合比率（重量部）及び各性能のテスト結果

表１から明らかなように、生分解性ポリエステル組成物において、スチレンの重量含有量が０．１ｐｐｍ−３０ｐｐｍであるとき、生分解性ポリエステル組成物に優れた透光率とヘイズ効果を付与するとともに、生分解性ポリエステル組成物に適切な抗紫外線性能を持たせ、さらに生分解性ポリエステル組成物の分解速度を低下させることがない。スチレンを添加せず、すなわちスチレンの重量含有量が０ｐｐｍである比較例１では、生分解性ポリエステル組成物は高い透光率とヘイズを有するものの、熱酸化老化時間が過度に短く、それはポリマー組成物の分解速度が高すぎることを示す。スチレンの重量含有量が３０ｐｐｍを超える比較例２では、該生分解性ポリエステル組成物の熱酸化老化時間が長すぎて、それは該組成物の分解速度が過度に低く、且つ該ポリマー組成物の透光率とヘイズ効果が悪いことを示す。比較例３はスチレンを添加せず、抗ＵＶ助剤だけを添加したものであり、適切な透光率とヘイズを有するものの、熱酸化老化時間が長すぎて、該ポリマー組成物の分解速度が過度に低かった。

Claims (10)

1. 生分解性ポリエステル組成物であって、成分として、
   ｉ）生分解性脂肪族−芳香族ポリエステル６０重量部−１００重量部と、
   ｉｉ）ポリ乳酸０−４０重量部と、
   ｉｉｉ）有機フィラー及び／又は無機フィラー０−３５重量部とを含むことを特徴とする生分解性ポリエステル組成物。
2. 生分解性ポリエステル組成物の全重量に対して、スチレンの重量含有量は０．１ｐｐｍ−３０ｐｐｍ、好ましくは０．５ｐｐｍ−１０ｐｐｍであることを特徴とする請求項１に記載の生分解性ポリエステル組成物。
3. １．２０００ｇ±０．００５ｇの生分解性ポリエステル組成物を正確に秤量して、スタティックヘッドスペースサンプラーに投入し、スタティックヘッドスペース方法によって生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンのピーク面積をテストし、生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンのピーク面積とスチレンの検量線に基づき、生分解性ポリエステル組成物におけるスチレンの重量含有量を算出し、スチレン検量線をスチレン／メタノール溶液で較正する方法によって、前記スチレンの重量含有量をテストすることを特徴とする請求項２に記載の生分解性ポリエステル組成物。
4. 成分として、
   ｉ）生分解性脂肪族−芳香族ポリエステル６５重量部−９５重量部と、
   ｉｉ）ポリ乳酸５重量部−３５重量部と、
   ｉｉｉ）有機フィラー及び／又は無機フィラー５重量部−２５重量部とを含むことを特徴とする請求項２に記載の生分解性ポリエステル組成物。
5. 前記生分解性脂肪族−芳香族ポリエステルは、ポリブチレンアジペートテレフタレートＰＢＡＴ、ポリブチレンサクシネートテレフタレートＰＢＳＴ、ポリブチレンセバケートテレフタレートＰＢＳｅＴから選ばれる１種又は複数種ことを特徴とする請求項１−３のいずれか１項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
6. 前記有機フィラーは、天然澱粉、可塑化澱粉、変性澱粉、天然繊維、木粉から選ばれる１種又は複数種、前記無機フィラーは、タルク粉、モンモリロナイト、カオリン、チョーク、炭酸カルシウム、グラファイト、石膏、導電性カーボンブラック、塩化カルシウム、酸化鉄、ドロマイト、シリカ、珪灰石、二酸化チタン、ケイ酸塩、雲母、ガラス繊維、鉱物繊維から選ばれる１種又は複数種であることを特徴とする請求項１−３のいずれか１項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
7. さらに、可塑剤、離型剤、界面活性剤、ワックス、帯電防止剤、染料、抗ＵＶ助剤又はその他プラスチック添加剤の少なくとも１種を含むことを特徴とする請求項１−３のいずれか１項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
8. 前記生分解性ポリエステル組成物の透光率は８８．５−９４．０であることを特徴とする請求項１−７のいずれか１項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
9. 前記生分解性ポリエステル組成物のヘイズは２８．５９−３３．４５であることを特徴とする請求項１−７のいずれか１項に記載の生分解性ポリエステル組成物。
10. 前記生分解性ポリエステル組成物の熱酸化老化時間は３０−４５日間であることを特徴とする請求項１−７のいずれか１項に記載の生分解性ポリエステル組成物。