JP2018206626A - 膜−電極接合体 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1では熱プレスを用いる手法(熱プレス法)、特許文献2では熱ラミネートを用いる手法(熱ラミネート法)がそれぞれ開示されている。上記熱プレス法は、固体高分子電解質膜とその両側に転写基材に担持させた触媒層を配して一対の平板に挟んで熱圧着させることで膜−電極接合体を製造する。
また、熱ラミネート法は固体高分子電解質膜とその両側に配された触媒層を担持した長尺の触媒層担持基材とを接触させ、一対の熱ラミネートロールで熱圧着させることで膜−電極接合体を製造する。
前記I/C2は0.6以上1.5以下であり、かつ前記I/C1が前記I/C2よりも0.2以上0.4以下の範囲で大きいことを特徴とする膜−電極接合体である。
本構成により、第一触媒層と第二触媒層との間のアイオノマーの濃度勾配によって、第二触媒層から第一触媒層へのアイオノマーの移動を抑制することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る膜−電極接合体20の断面図を示している。固体高分子電解質膜8の両面にはそれぞれ、カソード触媒層100、アノード触媒層200が形成されている。また、カソード触媒層100、アノード触媒層200の周囲を密着して取り囲むようにガスケット材6が形成されている。さらに、カソード触媒層100、アノード触媒層200の固体高分子電解質膜8と反対側の面にはガス拡散層9が形成されている。
カソード触媒層100は二層から構成され、固体高分子電解質膜8側から順に、第二カソード触媒層1、第一カソード触媒層2が積層されている。また、アノード触媒層200は二層から構成され、固体高分子電解質膜8側から順に、第二アノード触媒層3、第一アノード触媒層4が積層されている。
I/C1が0.8未満のとき、もしくはI/C1がI/C2+0.2未満のとき、第一カソード触媒層2と第二カソード触媒層1との間のアイオノマー12の濃度勾配が小さくなるので、アイオノマー12の偏在抑制効果は上記範囲内のときよりも低くなる。
また、I/C1が1.9を超えるとき、あるいはI/C1がI/C2+0.4を超えるときには、触媒層の膜厚方向におけるアイオノマーの偏在は抑制できるが、触媒粒子10とアイオノマー12が過剰に絡み合う箇所が発生することで触媒層の排水性が低下することがある。
また、I/C2が0.6未満のときには、アイオノマー12のプロトンパスが乏しく、発電性能が低下する。さらに、I/C2が1.5を超えるときも、触媒層の排水性が低下して、燃料電池の発電性能が低下する。
触媒粒子10は同元素、同組成の金属元素のほか、金属酸化物、若しくはこれらの合金が使用できる。本実施形態で用いる触媒粒子10としては、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素のほか、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属、若しくはこれらの合金が使用できる。また、酸化物、複酸化物等も使用できる。さらに、これらの触媒の粒径は、例えば0.1nm以上1μm以下、好ましくは0.5nm以上100nm以下、更に好ましくは1nm以上10nm以下程度である。
触媒粒子10を担持する導電性担体11は、一般的にカーボン粒子が使用される。カーボン粒子の種類は、微粒子状で導電性を有し、触媒粒子10におかされないものであればどのようなものでも構わないが、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン等が使用できる。
第二カソード触媒層1、第一カソード触媒層2に含まれるアイオノマー12としては、同じ種類でも異なっていてもよく、プロトン伝導性を有するものであれば良い。また、以下で述べる固体高分子電解質膜8と同様の素材を用いることができ、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質等を用いることができる。なお、フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社製のNafion(登録商標)系材料等を用いることができる。また、炭化水素系高分子電解質膜としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の高分子電解質膜を用いることができる。中でも、アイオノマー12としてフッ素系高分子電解質としてパーフルオロスルホン酸を含む材料を好適に用いることができる。
触媒粒子10、導電性担体11、アイオノマー12を含む触媒インクの分散媒として使用される溶媒は、触媒粒子10を担持した導電性担体11やアイオノマー12を浸食することがなく、アイオノマー12を流動性の高い状態で溶解若しくは微細ゲルとして分散できるものあれば特に制限はない。
転写基材5を構成する材料としては、その表面に触媒層を形成できるものであり、かつ触媒層を固体高分子電解質膜8に転写できるものであれば良い。例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリパルバン酸アラミド、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート等の高分子フィルムを用いることができる。また、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性フッ素樹脂を用いることもできる。
膜電極接合体に用いられる固体高分子電解質膜8としては、プロトン伝導性を有するものであればよく、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質等を用いることができる。なお、フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社製のNafion(登録商標)、旭硝子(株)製のFlemion(登録商標)、旭化成(株)製のAciplex(登録商標)等を用いることができる。また、炭化水素系高分子電解質膜としては、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質膜を用いることができる。中でも、高分子電解質膜8としてフッ素系高分子電解質としてパーフルオロスルホン酸を含む材料を好適に用いることができる。
本発明の触媒層は転写法で固体高分子電解質膜8に転写される。転写方法としては、まず転写基材5上に第一カソード触媒層2を塗工する。乾燥後、第二カソード触媒層1を塗工、乾燥させればよい。最後に、2層構成となったカソード触媒層100を固体高分子電解質膜8に転写する。
具体的な転写方法について図3を用いて説明する。図3は、本発明の一実施形態である触媒層の転写工程を示している。図3(a)は、図2に記載の第二カソード触媒層1および第一カソード触媒層2からなるカソード触媒層100が塗工された転写基材5、ガスケット材6および支持基材7で構成された積層体である。図3(b)は、第二カソード触媒層1、第一カソード触媒層2、転写基材5、ガスケット材6に打ち抜き加工によるハーフカットを行なっている。図3(c)は、ハーフカットされた第二カソード触媒層1、第一カソード触媒層2および転写基材5の外周部のみを剥離することでカソード凸形状転写積層体を作成する。
図3(a)に示すようにハーフカットを行うには、打ち抜き加工などの刃物型を用いることで、形状、寸法に優れたハーフカットを行うことができる。図3(b)のように、刃物型はカソード触媒層100、転写基材5及びガスケット材6まで貫通し、これらの断面が不連続となるよう断裁する必要がある。カソード触媒層100とガスケット材6を同時に同一形状で断裁することで、膜−電極接合体とした際のカソード触媒層100とガスケット材6との間に隙間をなくすことができる。さらに、図3(c)のように、形成したハーフカット線に沿って外周部の転写基材5のみを剥離して除去することで、ガスケット材6を露出させることが出来る。
以下、本発明を実施例について具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
第一カソード触媒層2を形成するための触媒インクは、フッ素系のアイオノマー分散溶液(Nafion)、白金触媒、1−プロパノールおよび水で構成されており、粒径φ3mmのジルコニア粒子によるボールミルで100分間の分散および混合することで、第一カソード触媒層2の触媒インクを調液した。なお、第一カソード触媒層2用の触媒インクのI/C1が0.8以上1.9以下となるように、アイオノマー量を調整し、かつ第一カソード触媒層2用の触媒インクの固形分を3%以上5%以下となるように調整した。第一アノード触媒層4用の触媒インクも同一の材料により調液した。以下では、第一カソード触媒層2の触媒インク及び第一アノード触媒層4用の触媒インクを合わせて第一触媒インクとも呼ぶ。
第二カソード触媒層1を形成するための触媒インクも、第一カソード触媒層2用の触媒インクと同じ条件で調液を行うことで得た。但し、第二カソード触媒層1用の触媒インクの場合、I/C2を0.6以上1.5以下となるように、アイオノマー量を調整し、かつ第二カソード触媒層1用の触媒インクの固形分を6%以上11%以下となるように調整した。第二アノード触媒層3用の触媒インクも同一の材料により調液した。以下では、第二カソード触媒層1の触媒インク及び第二アノード触媒層3用の触媒インクを合わせて第二触媒インクとも呼ぶ。
転写基材5として用いるフッ素系樹脂フィルム上に、上述の第一触媒インクをスプレーコーターにて厚みが2μm以上4μm以下になるように塗布し、100℃の温度で30秒間乾燥し、第一カソード触媒層2を形成した。白金触媒を変えた以外は同様にして、第一アノード触媒層4を形成した。以下では、第一カソード触媒層2及び第一アノード触媒層4を合わせて第一触媒層とも呼ぶ。
転写基材5として用いるフッ素系樹脂フィルム上に、上記の第二触媒インクをダイコーターにて厚みが5μm以上11μm以下になるように塗布し、100℃の温度で5分間乾燥し、第二カソード触媒層1を形成した。白金触媒を変えた以外は同様にして、第二アノード触媒層3を形成した。以下では、第二カソード触媒層1及び第二アノード触媒層3を合わせて第二触媒層と呼ぶことがある。また、カソード触媒層100およびアノード触媒層200を区別することなく触媒層と呼ぶことがある。
支持基材7として用いる粘着剤付きのポリエステルフィルム、ガスケット材6として用いるアクリル系粘着性フィルム付きのPENフィルム(帝人製テオネックス(商標登録)、厚み12μm)及び触媒層を塗布した転写基材5をこの順に貼合した。
次に図3に示したように、触媒層側から打ち抜き加工を行い、触媒層、転写基材5及びガスケット材6に対し、触媒層側から見た平面視において5cm×5cmの正方形状に切り込みを入れることでハーフカットを形成した。最後にハーフカットされた触媒層、転写基材5の外周部のみを剥離することでカソード凸形状転写積層体およびアノード凸形状転写積層体をそれぞれ作成した。
固体高分子電解質膜8としてNafionを使用した。固体高分子電解質膜8の両面にそれぞれカソード凸形状転写積層体とアノード凸形状転写積層体を向かい合わせ、カソード触媒層100及びアノード触媒層200の位置が一致するように調整することで、固体高分子電解質膜8の両面にカソード凸形状転写積層体及びアノード凸形状転写積層体を積層した。積層時には、熱プレス加工にて140℃、4.0MPa条件で熱圧着した。最後に、図4(b)に示すように転写基材5及び支持基材7を剥離し、膜−電極接合体を得た。
各実施例および比較例で作製した膜−電極接合体を挟持するように、ガス拡散層として用いるカーボンペーパーを貼りあわせ、これを発電評価セル内に設置した。燃料電池測定装置を用いて、セル温度80℃とし、カソード触媒層100及びアノード触媒層200ともフル加湿条件で電流電圧測定を行った。燃料ガスとして水素、酸化剤ガスとして空気を用い、利用率一定による流量制御を行った。なお、背圧は100kPaとした。
各実施例および比較例で作製した膜−電極接合体の第一触媒層および第二触媒層を切り出して、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察を行い、細孔率を求めた。細孔率が低い触媒層は触媒粒子10とアイオノマー12との接触面積が高いため、細孔率とアイオノマーの偏在は相関関係にある。以上のことから、細孔率をアイオノマー偏在の指標とした。また、第一触媒層と第二触媒層との細孔率の差が4%以上のものを、アイオノマーが偏在した膜−電極接合体とみなした。発電性能に関しては、比較例1に対して6%以上の増加が確認されたものを、発電性能が向上したと判定した。
なお、触媒層の厚みおよび固形分量についても、断面SEMで計測した。なお、厚みは転写基材に塗工された状態で計測している。
塗工時におけるI/Cを変更した膜−電極接合体の発電評価の結果に関して、表1にまとめて記載した。
表1の結果より、I/C1が0.8以上1.9以下で、かつI/C2が0.6以上1.5以下の調液で得られた膜−電極接合体は、第一触媒層と第二触媒層の細孔率の差が4%未満であり、かつ発電性能も向上していることが確認できる。すなわち、比較例1で示したI/C1とI/C2が同一の場合の膜−電極接合体と比較して、アイオノマーの偏在が改善していることが分かる。
(1)図1では、カソード触媒層100、アノード触媒層200の高さとガスケット材6の高さはそれぞれ異なっている。しかしカソード触媒層100、アノード触媒層200の高さとガスケット材6の高さは一致していても良い。すなわち、カソード触媒層100を構成している第二カソード触媒層1の膜厚と第一カソード触媒層2の膜厚を足し合わせた膜厚と、ガスケット材6の膜厚とが一致していても良い。アノード触媒層200についてもカソード触媒層100と同様である。
(2)上記実施形態では、カソード触媒層100の第一触媒層及び第二触媒層のI/Cと、アノード触媒層200の第一触媒層及び第二触媒層のI/Cとがいずれも異なるよう設定した。しかしこれに限らず、カソード触媒層100及びアノード触媒層200の少なくとも一方の触媒層が本発明であるI/C条件を満たしていれば良い。換言すると、カソード触媒層100及びアノード触媒層200の少なくとも一方におけるI/C1がI/C2より大きく形成されていることで、本発明の効果を得られる。なお、いずれか一方の触媒層に本発明を採用する場合は、触媒層の元となる触媒インクが3種のみの製造で済むため、インクの製造効率の観点からみると好ましい。
(3)上記実施形態では、触媒層のうち、転写基材5側(固体高分子電解質膜8と反対側)となる第一触媒層に含有されるアイオノマー12の濃度を、第二触媒層に含有されるアイオノマー12の濃度よりも高く設定するといった2層構成としている。しかしこれに限らず、触媒層を3層以上の構成としてもよい。その場合は転写基材5側(固体高分子電解質膜8と反対側)に位置する触媒層のアイオノマー濃度をその他の触媒層よりも最も高く設定し、かつ転写基材5から積層方向に遠ざかるにつれて徐々にアイオノマー濃度を低く設定すればよい。
2…第一カソード触媒層
3…第二アノード触媒層
4…第一アノード触媒層
5…転写基材
6…ガスケット材
7…支持基材
8…固体高分子電解質膜
9…ガス拡散層
10…触媒粒子
11…導電性担体
12…アイオノマー
20…膜−電極接合体
100…カソード触媒層
200…アノード触媒層
Claims (5)
- 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の両面に接するようにそれぞれカソード触媒層及びアノード触媒層を備える膜−電極接合体であって、
前記カソード触媒層及び前記アノード触媒層の少なくとも一方の触媒層において、
前記固体高分子電解質膜と接する位置に形成された第二触媒層と、
前記固体高分子電解質膜から最も離れた位置に形成された第一触媒層と、を含み、
前記第一触媒層のアイオノマー量とカーボン量の比(I/C)をI/C1とし、前記第二触媒層のI/CをI/C2とすると、
前記I/C1は0.8以上1.9以下であり、
前記I/C2は0.6以上1.5以下であり、
かつ前記I/C1が前記I/C2よりも0.2以上0.4以下の範囲で大きい
ことを特徴とする膜−電極接合体。 - 前記第一触媒層の厚みが2μm以上4μm以下であり、
前記第二触媒層の厚みが5μm以上11μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の膜−電極接合体。 - 前記第一触媒層の固形分が3%以上5%以下であり、
前記第二触媒層の固形分が6%以上11%以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の膜−電極接合体。 - 固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の両面に接するようにそれぞれカソード触媒層及びアノード触媒層を備える膜−電極接合体の製造方法であって、
前記カソード触媒層及び前記アノード触媒層の少なくとも一方の触媒層において、
転写基材上に第一触媒層を塗工、乾燥する第一触媒層形成工程と、
前記第一触媒層の前記転写基材と反対側の面に第二触媒層を塗工、乾燥する第二触媒層形成工程と、
前記第二触媒層の前記第一触媒層と反対側の面を前記固体高分子電解質膜に貼合した後、熱圧着する工程と、を含み、
前記第一触媒層のアイオノマー量とカーボン量の比(I/C)をI/C1とし、前記第二触媒層のI/CをI/C2とすると、
前記I/C1は0.8以上1.9以下であり、
前記I/C2は0.6以上1.5以下であり、
かつ前記I/C1が前記I/C2よりも0.2以上0.4以下の範囲で大きい
ことを特徴とする膜−電極接合体の製造方法。 - 前記第一触媒層形成工程における塗工にスプレー塗工を用い、
前記第二触媒層形成工程における塗工にダイ塗工を用いる
ことを特徴とする請求項4に記載の膜−電極接合体の製造方法。
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