JP2018192787A - インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 得られる画像の発色性に優れるインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】 第1インクを記録媒体に付与する記録工程と、第2インクを、前記第1インクを付与した領域の少なくとも一部に重なるように前記記録媒体に付与する記録工程とを有するインクジェット記録方法であって、前記第1インクが、銀粒子を含有する水性インクであり、前記第2インクが、アニオン性染料を含有する水性インクであり、前記記録媒体が、多価金属塩、及びカチオン性樹脂の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性化合物を含有するインク受容層を有し、前記インク受容層の単位面積あたりの前記カチオン性化合物の含有量(g/m2)が、0.20g/m2以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
金属粒子を含有するインクは、用いる金属粒子の特徴を利用して、電気回路の形成に使用されてきたが、近年では、クリスマスカードなどのメタリック感を表現する用途にも使用されるようになってきている。特に、カラー画像の装飾性を高めるために、メタリック感のあるカラー画像(以下、「カラーメタリック画像」と記載)を記録することが求められている。カラーメタリック画像を記録するために、アルミニウム顔料を含有する油性インクと、染料を含有する油性インクとのインクセットが提案されている(特許文献1参照)。また、記録媒体に無機粒子を含有する処理剤を付与し、処理剤を付与した領域に、銀粒子を含有する水性インク、及び顔料を含有する水性インクを順に重ねて付与するインクジェット記録方法が提案されている(特許文献2参照)。さらに、銀粒子を含有するインク、及び染料を含有するインクをこの順に重ねて付与するインクジェット記録方法が記載されている(特許文献3参照)。
特開2016−14141号公報 特開2015−193126号公報 特開2015−193127号公報
特許文献1に記載されているような油性インクは、揮発した有機溶剤の臭気対策が必要となるため、本発明者らは、油性インクではなく、水性インクを使用することを前提とした。また、透明性に優れる画像を得るために、顔料を含有する水性インクを、染料を含有する水性インクに変更したこと以外は特許文献2に記載されているインクジェット記録方法と同様の方法で、画像を記録した。その結果、画像の発色性が得られないことがわかった。さらに、特許文献3に記載されているインクジェット記録方法と同様の方法で画像を記録したところ、画像の発色性が得られないことがわかった。
したがって、本発明の目的は、画像の発色性に優れるインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクジェット記録方法を使用するインクジェット記録装置を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、第1インクを記録媒体に付与する記録工程と、第2インクを、前記第1インクを付与した領域の少なくとも一部に重なるように前記記録媒体に付与する記録工程とを有するインクジェット記録方法であって、前記第1インクが、銀粒子を含有する水性インクであり、前記第2インクが、アニオン性染料を含有する水性インクであり、前記記録媒体が、多価金属塩、及びカチオン性樹脂の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性化合物を含有するインク受容層を有し、前記インク受容層の単位面積あたりの前記カチオン性化合物の含有量(g/m)が、0.20g/m以上であることを特徴とするインクジェット記録方法に関する。
また、本発明は、第1インクを記録媒体に付与した後に、第2インクを前記記録媒体に付与する手段を備えたインクジェット記録装置であって、前記第1インクが、銀粒子を含有する水性インクであり、前記第2インクが、アニオン性染料を含有する水性インクであり、前記記録媒体が、多価金属塩、及びカチオン性樹脂の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性化合物を含有するインク受容層を有し、前記インク受容層の単位面積あたりの前記カチオン性化合物の含有量(g/m)が、0.20g/m以上であることを特徴とするインクジェット記録装置に関する。
本発明によれば、画像の発色性に優れるインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に述べる。各種の物性値は、特に断りのない限り、温度25℃における値である。本発明において、発色性を有する画像とは、銀色ではなく使用した染料の色調を有する画像のことである。
一般に、インクジェット用の水性インクには、吐出安定性を考慮して、数nm〜数百nmの粒径を有する粒子を用いる必要があるので、色材としての銀粒子も小粒径化しなければならない。銀粒子は、銀原子で構成されている。粒径の大きな銀粒子と比べて、粒径の小さい銀粒子は、全銀原子数に占める、銀粒子の表面に存在している銀原子の割合が多くなる。まわりの銀原子との金属結合により動きにくくなっている銀粒子内部の銀原子と比べて、銀粒子の表面に存在している銀原子は動きやすいため、近くの銀粒子の表面に存在している銀原子と金属結合することで、融着する。このように、粒径の小さい銀粒子は、近くの銀粒子と融着するため、画像の光沢性が発現する。
銀粒子を含有するインクを記録媒体に付与した後に、染料を含有するインクを、銀粒子を含有するインクを付与した領域の少なくとも一部に重なるように記録媒体に付与すると、画像の光沢性は向上するものの、画像の発色性が得られないことが判明した。
この画像を解析したところ、記録媒体に形成される銀層は、銀粒子と銀粒子が部分的に融着しているものの、数nmの細孔が存在していた。そして、インク中の染料がこの銀層の細孔を通って、記録媒体にまで浸透していくことで、画像の発色性が得られないことがわかった。
そこで、本発明者らは、画像の発色性を得るための、インクジェット記録方法の構成を検討した。本発明のインクジェット記録方法は、第1インクを記録媒体に付与する記録工程と、第2インクを、前記第1インクを付与した領域の少なくとも一部に重なるように前記記録媒体に付与する記録工程とを有する。第1インクは、銀粒子を含有する水性インクであり、第2インクは、アニオン性染料を含有する水性インクである。さらに、記録媒体は、多価金属塩、及びカチオン性樹脂の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性化合物を含有するインク受容層を有し、インク受容層の単位面積あたりのカチオン性化合物の含有量(g/m)は、0.20g/m以上である。このような構成のインクジェット記録方法により、画像の発色性が得られるメカニズムについて、詳細に説明する。
記録媒体に第1インクが付着して、第1インク中の液体成分が蒸発すると、銀粒子と銀粒子が近づくため、銀粒子が融着する。これにより、細孔は存在するものの、銀粒子が融着している銀層が形成される。
ここに第2インクが付与されると、第2インク中の液体成分にインク受容層中のカチオン性化合物が溶解する。そして、カチオン性化合物は、銀層の細孔を通って銀層の表面側にまで滲み出す。この過程で、カチオン性化合物は、銀粒子を分散させている成分を捕捉又は塩析して、銀粒子を凝集させるので、銀層中の細孔が少なくなり、緻密な銀層が形成される。この場合、後述するように染料が凝集していないとしても、銀層に染料が留まりやすくなり、画像の発色性が得られる。
また、銀層の表面側にまで滲みだしたカチオン性化合物は、染料の有するアニオン性基と反応したり、溶解していた染料を塩析により析出させたりする。これにより、染料が凝集して、銀層の細孔を通りづらくなるので、銀層に染料が留まりやすくなり、画像の発色性が得られる。
記録媒体のインク受容層は、多価金属塩、カチオン性樹脂の塩のいずれかのカチオン性化合物を含有していればよい。
さらに、インク受容層の単位面積あたりのこれらカチオン性化合物の含有量(g/m)は、0.20g/m以上である。なお、従来の一般的なインクジェット用のインク受容層を有する記録媒体は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリ塩化アルミニウムなどのカチオン性物質を含有するものもある。しかし、その含有量は本発明で規定する0.20g/m以上という範囲よりもはるかに少ない。本発明のインクジェット記録方法の重要なポイントは、記録媒体のインク受容層の有するカチオン性化合物が0.20g/m以上と多いことにある。前記含有量が0.20g/m未満であると、インク受容層の単位面積あたりのカチオン性化合物の含有量が少ないため、銀粒子又は染料が凝集しにくくなる。これにより、第2インク中の染料が記録媒体に留まりにくくなることで、画像の発色性が得られない。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、第1インクを記録媒体に付与する記録工程と、第2インクを、第1インクを付与した領域の少なくとも一部に重なるように記録媒体に付与する記録工程とを有するインクジェット記録方法である。
記録工程では、インクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出して、画像を記録することが好ましい。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが好ましい。なお、本発明のインクジェット記録方法では、活性エネルギー線の照射を行う必要はない。
図1は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
<第1インク>
第1インクは、銀粒子を含有する水性インクである。以下、第1インクを構成する成分について説明する。
(銀粒子)
銀粒子は、銀原子で構成されている。銀粒子は、銀原子以外にも、他の金属原子、酸素原子、硫黄原子、炭素原子などを含んで構成されていてもよいが、銀粒子中の銀原子の割合(%)は、50.0質量%以上であることが好ましい。
銀粒子の製造方法としては、例えば、銀の塊をボールミルやジェットミルなどの粉砕機で粉砕する方法(粉砕法)、銀イオン又は銀錯体を還元剤により還元して凝集させる方法(還元法)などが挙げられる。本発明においては、銀粒子の粒径制御のしやすさ、及び銀粒子の分散安定性の観点から、銀粒子を還元法により製造することが好ましい。
[銀粒子の体積基準の累積50%粒径(D50)]
銀粒子の体積基準の累積50%粒径とは、粒径積算曲線において、測定された銀粒子の総体積を基準として小粒径側から積算して50%となった粒子の直径のことである。銀粒子の体積基準の累積50%粒径(nm)は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。その理由は以下のとおりである。
50が150nm以下であると、銀粒子の粒径がより小さくなるため、全銀原子数に占める、銀粒子の表面に存在している銀原子の割合がより多くなる。つまり、銀粒子中で動きやすい銀原子の割合が多くなることで、近くの銀粒子の表面に存在している銀原子と、金属結合により、融着しやすくなる。これにより、画像の光沢性はさらに向上する。D50は、得られた画像の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などで観察して求めた値である。D50は、1nm以上であることがさらに好ましい。
[銀粒子の分散方法]
銀粒子の分散方法としては、分散剤として界面活性剤を用いる界面活性剤分散タイプ、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散タイプなどが挙げられる。勿論、第1インクにおいては、分散方法が異なる銀粒子を併用することも可能である。
界面活性剤分散タイプにおいて分散剤として用いる界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステルなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系化合物、シリコーン系化合物などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリンなどが挙げられる。
なかでも、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。アニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩であることが好ましく、ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。
樹脂分散タイプにおいて分散剤として用いる樹脂は、親水性部位と疎水性部位を共に有することが好ましい。樹脂としては、ポリビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系高分子化合物などが挙げられる。
樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により得られるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上100,000以下であることが好ましく、3,000以上50,000以下であることがさらに好ましい。
第1インク中の分散剤の含有量(質量%)は、銀粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以下であることが好ましい。前記質量比率が1.0倍を超えると、銀粒子に対して分散剤が多すぎるため、銀粒子と銀粒子が近づきにくくなり、銀粒子と銀粒子が融着しにくくなる。これにより、画像の光沢性が十分に得られない場合がある。
分散剤が界面活性剤である場合、前記質量比率は、0.02倍以上であることがさらに好ましい。分散剤が樹脂である場合、前記質量比率は、0.05倍以上であることがさらに好ましい。分散剤が界面活性剤である場合、前記質量比率が0.02倍未満であると、第1インク中の銀粒子に対して分散剤が少なすぎるため、第1インク中で銀粒子が安定に分散しにくくなる。これにより、インクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。分散剤が樹脂である場合、前記質量比率が0.05倍未満であると、上記と同様の理由から、インクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。
第1インク中の銀粒子の含有量(質量%)は、第1インク全質量を基準として、2.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。前記含有量が2.0質量%未満であると、銀粒子が少なすぎるため、銀粒子と銀粒子が近づきにくくなる。これにより、銀粒子と銀粒子が融着しにくくなるため、画像の光沢性が十分に得られない場合がある。前記含有量が15.0質量%を超えると、銀粒子が多すぎるため、インクの粘度が上昇し、インクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。第1インク中の銀粒子の含有量(質量%)は、第1インク全質量を基準として、2.0質量%以上8.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(界面活性剤)
第1インクは、銀粒子の分散剤として用い得る界面活性剤とは別に、さらに界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを用いることができる。なかでも、界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤であることが好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。なかでも、ノニオン性界面活性剤は、グリフィン法によるHLB値が10以上であることが好ましい。HLB値が10より小さいと、疎水性が高いため、第1インク中で溶けにくくなる。ここで、グリフィン法によるHLB値は、界面活性剤のエチレンオキサイド基の式量と界面活性剤の分子量から、HLB値=20×(界面活性剤のエチレンオキサイド基の式量)/(界面活性剤の分子量)の式より算出される。HLB値は、界面活性剤(化合物)の親水性や親油性の程度を、0から20の範囲で示すものである。HLB値が低いほど化合物の親油性(疎水性)が高いことを示す。一方、HLB値が高いほど化合物の親水性が高いことを示す。
第1インク中の、銀粒子の分散剤として用いる界面活性剤の含有量(質量%)は、0.1質量%以上3.0質量%以下であることが好ましい。第1インク中の、銀粒子の分散剤として用いる界面活性剤以外の界面活性剤の含有量(質量%)は、0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
(水性媒体)
第1インクは、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有する。水としては脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤としては特に限定されるものではなく、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、及び含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。また、これらの水溶性有機溶剤の1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
第1インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、第1インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、第1インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が3.0質量%未満であると、第1インクをインクジェット記録装置に用いる場合に耐固着性などの信頼性が十分に得られない場合がある。また、水溶性有機溶剤の含有量が50.0質量%超であると、インクの粘度が上昇して、インクの供給不良が起きる場合がある。
(その他の成分)
第1インクには、上記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの温度25℃で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。また、第1インクには、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
(第1インクの物性)
第1インクの温度25℃における粘度(mPa・s)は、1mPa・s以上5mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上3mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、インクの温度25℃における表面張力(mN/m)は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがより好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であることがさらに好ましい。インクの表面張力は、インク中の界面活性剤の種類や含有量を適宜決定することで、調整できる。
<第2インク>
第2インクは、染料を含有する水性インクである。以下、第2インクを構成する成分について説明する。
(染料)
染料は、一般のインクジェット用のインクの色材として用いることのできるアニオン性染料であれば、特に限定されるものではない。なかでも染料は、アゾ骨格、フタロシアニン骨格、アントラピリドン骨格、及びキサンテン骨格からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物であることが好ましい。さらに、染料としては、インクの信頼性の観点から、インク中では溶解し、画像の発色性の観点から、記録媒体で凝集しやすい染料であることが好ましい。染料の有する骨格の種類やアニオン性基の数などにより、インク中での溶解性と、記録媒体での凝集性とのバランスを調整できる。
第2インク中の染料の含有量(質量%)は、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上8.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(水性媒体)
第2インクは、水性媒体として水を含有する水性インクである。水性媒体には、さらに水溶性有機溶媒を含有させることができる。水としては脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤としては特に限定されるものではなく、アルコール類、グリコール類、アルキレングリコール類、ポリエチレングリコール類、含窒素化合物類、及び含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。また、これらの水溶性有機溶剤の1種又は2種以上をインクに含有させることができる。
第2インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、第2インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、第2インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量が3.0質量%未満であると、インクをインクジェット記録装置に用いる場合に耐固着性などの信頼性が得られない場合がある。また、水溶性有機溶剤の含有量が50.0質量%超であると、インクの供給不良が起きる場合がある。
(その他の成分)
第2インクには、前記成分の他に、尿素やその誘導体、トリメチロールプロパン、及びトリメチロールエタンなどの常温(温度25℃)で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。また、第2インクには、必要に応じて、界面活性剤、樹脂、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。
(第2インクの物性)
第2インクの温度25℃における粘度(mPa・s)は、1mPa・s以上5mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上3mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、第2インクの温度25℃における表面張力(mN/m)は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがより好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であることがさらに好ましい。第2インクの表面張力は、第2インク中の界面活性剤の種類や含有量を適宜決定することで、調整できる。
<記録媒体>
記録媒体は、インク受容層を有する。インク受容層は、多価金属塩、及びカチオン性樹脂の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性化合物を含有する。インク受容層は通常、基材上に設けられる。
(基材)
基材は、樹脂層を有する紙を用いることが好ましい。樹脂層は、紙の片面に設けられてもよいし、紙の両面に設けられてもよい。樹脂層を有する紙としては、例えば、熱可塑性樹脂を含有する樹脂層を有する紙などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。なかでも熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレンなどが挙げられる。なかでもポリオレフィン樹脂は、ポリエチレンであることが好ましい。ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)であることが好ましい。樹脂層は、不透明度、白色度、色相などを調整するために、白色顔料や蛍光増白剤や群青などを含有してもよい。なかでも、不透明度を向上するために、白色顔料を含有することが好ましい。白色顔料としては、酸化チタンなどが挙げられる。樹脂層中の白色顔料の含有量(質量%)は、25.0質量%以下であることが好ましい。紙としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じてポリプロピレンなどの合成パルプや、ナイロン及びポリエステルなどの合成繊維を加えて抄紙したものが挙げられる。木材パルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)などが挙げられる。基材の厚さ(μm)は、50μm以上400μm以下であることが好ましい。
(インク受容層)
インク受容層は、単層でもよいし、2層以上の複層でもよい。また、インク受容層は、上記基材の片面のみに設けられてもよく、両面に設けられてもよい。
インク受容層は、塩化物イオンを含有することが好ましい。塩化物イオンは、多価金属塩のカウンターイオンとしてインク受容層中に含有されていてもよい。塩化物イオンを含有する場合、以下のメカニズムにより、銀粒子と銀粒子の融着が促進され、より緻密な銀層が形成される。インク受容層が塩化物イオンを含有すると、塩化物イオンと、銀粒子の表面のイオン化された銀(銀イオン)が反応することで塩化銀が形成される。その塩化銀を核として銀粒子と銀粒子の融着が促進され、より緻密な銀層が形成される。これにより、銀層に染料が留まりやすくなり、画像の発色性が向上する。
しかし、塩化物イオンを含有するインク受容層に記録された画像は、光や窒素酸化物などのガスにさらされると、銀層が徐々に劣化し、画像の光沢性が低下していくことがわかった。これは、塩化物イオンと銀イオンの反応により、塩化銀が必要以上に形成されてしまうことで、銀層が塩化銀により白くなるからである。
そこで、インク受容層は、塩化物イオン、並びに、塩化物イオンの捕捉剤、及び有機系の酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。ここで、塩化物イオンの捕捉剤は、塩化物イオンと銀イオンの反応により塩化銀が形成されることを抑制できるものである。インク受容層が塩化物イオンの捕捉剤を含有すると、銀粒子の表面に捕捉剤が付着することで、銀イオンが塩化物イオンと反応しにくくなる。これにより、塩化銀が必要以上に形成されにくくなり、銀層が塩化銀により白くなることが抑制され、画像の光沢性の低下を抑制できる。また、インク受容層が有機系の酸化防止剤を含有すると、銀粒子のイオン化(還元)を抑制できる。これにより、塩化銀が必要以上に形成されにくくなり、銀層が塩化銀により白くなることが抑制され、画像の光沢性の低下を抑制できる。
[塩化物イオンの捕捉剤]
塩化物イオンの捕捉剤は、1,2,3−ベンゾトリアゾール又はその誘導体であることが好ましい。1,2,3−ベンゾトリアゾールの誘導体としては、1−(メトキシメチル)−1H−ベンゾトリアゾール、1−(ヒドロキシメチル)−1H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
インク受容層の単位面積あたりの塩化物イオンの捕捉剤の含有量(g/m)は、0.02g/m以上0.15g/m以下であることが好ましい。前記含有量が0.02g/m未満であると、塩化物イオンの捕捉剤が少ないため、銀粒子の表面に捕捉剤が付着しにくく、銀イオンが塩化物イオンと反応しやすい。そのため、塩化銀が必要以上に形成されやすくなり、銀層が塩化銀により白くなることが促進され、画像の光沢性の低下を十分に抑制できない場合がある。前記含有量が0.15g/mを超えると、塩化物イオンの捕捉剤が多いため、銀粒子の表面に捕捉剤が付着しやすく、銀イオンが塩化物イオンと反応しにくい。これにより、塩化銀が必要以上に形成されにくくなり、銀層が塩化銀により白くなることが抑制され、画像の光沢性の低下を抑制できる。しかし、銀粒子の表面に付着した捕捉剤により、銀粒子の融着が起こりにくく、緻密な銀層を形成しにくいため、画像の光沢性が十分に得られない場合がある。さらに、銀粒子の表面に付着した捕捉剤により、銀粒子と銀粒子の間に隙間が生じやすいため、銀粒子と銀粒子の間を通って染料が浸透してしまい、画像の発色性が十分に得られない場合がある。
[有機系の酸化防止剤]
有機系の酸化防止剤は、アスコルビン酸又はその塩であることが好ましい。アスコルビン酸の塩を形成するカチオンとしては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属のイオン、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属のイオンなどが挙げられる。
インク受容層の単位面積あたりの有機系の酸化防止剤の含有量(g/m)は、0.05g/m以上0.25g/m以下であることが好ましい。前記含有量が0.05g/m未満であると、銀粒子のイオン化を抑制しにくいため、塩化銀が必要以上に形成されやすくなり、画像の光沢性の低下を十分に抑制できない場合がある。前記含有量が0.25g/mを超えると、銀粒子の近くに有機系の酸化防止剤が存在しやすいため、銀粒子の融着が起こりにくく、緻密な銀層が形成できず、画像の光沢性が十分に得られない場合がある。さらに、有機系の酸化防止剤が多いと、記録媒体が黄色味を呈してしまうため、画像の発色性が十分に得られない場合がある。
[無機粒子]
インク受容層は、無機粒子を含有することが好ましい。無機粒子の一次平均粒子径は、150nm以下が好ましく、1nm以上100nm以下がより好ましく、3nm以上30nm以下がさらに好ましい。無機粒子の一次平均粒子径は、電子顕微鏡によって観察した際の無機粒子の一次粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径の数平均粒子径である。このとき100点以上で測定を行う。
無機粒子は、分散剤によって分散されている状態で、インク受容層を形成するための塗工液(以下、「第1塗工液」と記載)に用いられることが好ましい。分散状態での無機粒子の二次平均粒子径は、0.1nm以上500nm以下が好ましく、1nm以上300nm以下がより好ましく、10nm以上250nm以下がさらに好ましい。なお、分散状態での無機粒子の二次平均粒子径は、動的光散乱法により測定できる。
インク受容層中の無機粒子の含有量(質量%)は、インク受容層全質量を基準として、50.0質量%以上98.0質量%以下であることが好ましく、70.0質量%以上96.0質量%以下であることがさらに好ましい。
インク受容層を形成する際に塗布する無機粒子の塗布量(g/m)は、8g/m以上45g/m以下であることが好ましい。上記範囲とすることで、好ましいインク受容層の膜厚となりやすい。
無機粒子としては、アルミナ水和物、アルミナ、シリカ、コロイダルシリカ、二酸化チタンなどが挙げられる。これらの無機粒子は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。なかでも無機粒子は、インクの吸収性が高い多孔質構造を形成することができるアルミナ水和物、アルミナ、及びシリカを用いることが好ましい。
アルミナ水和物としては、ベーマイト型のアルミナ水和物又は非晶質のアルミナ水和物が好ましい。また、アルミナとしては、気相法アルミナが好ましい。気相法アルミナとしては、γ−アルミナ、α−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、χ−アルミナなどを挙げることができる。なかでも気相法アルミナは、画像の光学濃度やインク吸収性の観点から、γ−アルミナを用いることが好ましい。
アルミナ水和物及びアルミナは、水分散液として第1塗工液に混合することが好ましく、その分散剤として酸を使用することが好ましい。酸としては、画像の滲みを抑制する効果が得られるため、R−SOHで表される化合物を用いることが好ましい。式中、Rは水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、又は炭素数1以上4以下のアルケニル基を表す。Rは、オキソ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、及びアシル基で置換されていてもよい。
前記酸の含有量は、アルミナ水和物及びアルミナの合計の含有量を基準として、1.0質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、1.3質量%以上1.6質量%以下であることがさらに好ましい。
インク受容層に用いるシリカの製法は、湿式法と乾式法(気相法)に大別される。湿式法としては、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ、凝集沈降させて含水シリカを得る方法が知られている。一方、乾式法(気相法)としては、ハロゲン化ケイ素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)や、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が知られている。乾式法(気相法)により得られるシリカ(以下、「気相法シリカ」ともいう)を用いることが好ましい。気相法シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性が特に高く、また、屈折率が低いので、インク受容層に透明性を付与できる。これにより、良好な発色性が得られる。
アルミナ水和物、アルミナ、及びシリカは併用してもよい。具体的には、アルミナ水和物、アルミナ、及びシリカから選択される少なくとも2種を、粉体状態で混合、分散して分散液とする方法が挙げられる。本発明においては、無機粒子として、アルミナ水和物及び気相法シリカを共に用いることが好ましい。
[バインダー]
インク受容層は、バインダーを含有することが好ましい。バインダーとは、無機粒子を結着し、膜を形成することができる材料を意味する。
インク吸収性の観点から、インク受容層中のバインダーの含有量は、無機粒子の含有量に対する質量比率で、0.50倍以下であることが好ましく、0.30倍以下であることがさらに好ましい。また、インク受容層の結着性の観点から、前記質量比率は、0.05倍以上であることが好ましく、0.08倍以上であることがさらに好ましい。
バインダーとしては、カチオン基を用いて重合体をカチオン化したもの;カチオン性界面活性剤を用いて重合体の表面をカチオン化したもの;カチオン性ポリビニルアルコール下で重合体を構成するモノマーを重合し、重合体の表面にポリビニルアルコールを分布させたもの;カチオン性コロイド粒子の懸濁分散液中で重合体を構成するモノマーを重合し、重合体の表面にカチオン性コロイド粒子を分布させたもの;メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂などの水性バインダー;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステルの重合体及び共重合体などの合成樹脂が挙げられる。これらのバインダーは、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。
上記のバインダーのなかでも、透明な膜を形成することができる、ポリビニルアルコールやその誘導体を用いることが好ましい。ポリビニルアルコールの誘導体としては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールなどが挙げられる。
第1塗工液を調製する際は、ポリビニルアルコールやその誘導体を水溶液として使用することが好ましい。その際、ポリビニルアルコール又はその誘導体の含有量は、第1塗工液全質量を基準として、3.0質量%以上20.0質量%以下が好ましい。
[架橋剤]
インク受容層の耐水性を高めるために、インク受容層は、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、ジルコニウム系化合物、アミド系化合物、アルミニウム系化合物、ホウ酸、及びホウ酸塩などが挙げられる。これらの架橋剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いることができる。特にバインダーとしてポリビニルアルコールやその誘導体を用いる場合は、上記した架橋剤の中でも、ホウ酸やホウ酸塩を用いることが好ましい。ポリビニルアルコールやその誘導体は、親水性が高く、ポリビニルアルコールやその誘導体の有するヒドロキシ基とインク中の水が反応して、膨潤してしまう。これにより、インクの吸収性が低下してしまう場合がある。インク受容層がポリビニルアルコールやその誘導体を含有する場合でも、インク受容層が架橋剤を含有することで、インク中の水ではなく、架橋剤とヒドロキシ基が反応するため、インクの吸収性の低下を抑制できる。
インク受容層は、ポリビニルアルコール又はその誘導体、及び架橋剤を含有し、インク受容層中の架橋剤の含有量は、ポリビニルアルコール又はその誘導体の含有量に対して、0.40当量以上1.00当量以下であることが好ましい。これにより、画像の発色性、及び光沢性がさらに向上する。ここで、理論上、ポリビニルアルコール又はその誘導体の有するヒドロキシ基と過不足なく反応する架橋剤の量を1.00当量とする。架橋剤が0.40当量未満であると、ポリビニルアルコール又はその誘導体に対して架橋剤が少ないため、ポリビニルアルコール又はその誘導体が膨潤してしまう。これにより、銀粒子を含有するインクが付与されても、インク中の水が吸収されにくく、銀粒子が融着しにくいため、緻密な銀層を形成しにくい。そのため、画像の発色性、及び光沢性が十分に得られない場合がある。架橋剤が1.00当量を超えると、ポリビニルアルコールに対して架橋剤が必要以上に存在するため、インク中の液体成分が吸収されにくい。これにより、銀粒子が融着しにくいため、緻密な銀層を形成しにくい。これにより、画像の発色性、及び光沢性が十分に得られない場合がある。
ホウ酸としては、オルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸、ジホウ酸などが挙げられる。ホウ酸塩としては、前記ホウ酸の水溶性の塩が好ましい。例えば、ホウ酸のナトリウム塩やカリウム塩などのホウ酸のアルカリ金属塩;ホウ酸のマグネシウム塩やカルシウム塩などのホウ酸のアルカリ土類金属塩;ホウ酸のアンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも、オルトホウ酸を用いることが、第1塗工液の経時安定性とクラックの発生を抑制する効果の観点から好ましい。
架橋剤の使用量は、製造条件などに応じて適宜調整することができる。インク受容層中の、架橋剤の含有量が、バインダーの含有量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下が好ましく、5.0質量%以上40.0質量%以下がさらに好ましい。
[カチオン性化合物]
カチオン性化合物は、多価金属塩、及びカチオン性樹脂の塩からなる群より選択される少なくとも1種である。カチオン性樹脂の塩の分子量は、1,000以上100,000以下であることが好ましい。カチオン性樹脂の塩のアミン価は、50mgKOH/g以上であることが好ましく、300mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。
多価金属塩は、(i)鉄、アルミニウム、及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属のイオンと、酢酸イオン、塩化物イオン、及び硫酸イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陰イオンとの塩、並びに、(ii)ポリ塩化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。鉄、アルミニウム、及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属のイオンと、酢酸イオン、塩化物イオン、及び硫酸イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陰イオンとの塩としては、酢酸ジルコニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄(II)、塩酸ジルコニウムなどが挙げられる。なかでも多価金属塩は、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄(II)、及びポリ塩化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
カチオン性樹脂の塩は、1級乃至4級アミン構造を有する樹脂の硝酸塩、1級乃至4級アミン構造を有する樹脂の硫酸塩、及び下記一般式(1)で表される基を有するカチオン性化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
(一般式(1)中、Rは、水素原子、又は炭素数1以上30以下のアルキル基であり、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上6以下のアルキル基である。)
1級乃至4級アミン構造を有する樹脂の硝酸塩としては、ポリアリルアミン硝酸塩などが挙げられる。1級乃至4級アミン構造を有する樹脂の硫酸塩としては、ジシアンジアミド/ジエチレントリアミン樹脂の硫酸塩などが挙げられる。一般式(1)で表されるカチオン性化合物は、「ヒンダードアミン」として市販されており、例えば、アデカスタブLA−63P、LA−68(ADEKA製)などが挙げられる。なかでもカチオン性樹脂の塩は、ポリアリルアミン硝酸塩、及びアデカスタブLA−63Pからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
銀粒子、又は染料の凝集力は、30%以上であることが好ましい。試料溶液に光を当てる際に、溶液中の物質によって光が吸収されることで、溶液を透過する光は弱くなる。溶液に当てる光の強さをI、溶液を透過する光の強さをIとする。透過率Tは、I/Iで表され、吸光度Kは、−Log10Tで表すことができる。よって、吸収される光が多い(透過率Tの値が小さい)と、吸光度Kは大きくなり、吸収される光が少ない(透過率Tの値が大きい)と、吸光度Kは小さくなる。
10.0質量%の銀粒子を含有する液体1の吸光度をKとし、1.0質量%のカチオン性化合物を含有する液体2と前記液体1を混合した液体3の吸光度をKとする。通常、分散剤は吸光度に大きく影響を及ぼさないので、銀粒子を分散させるための分散剤が必要である場合は、液体1の調製の際にも分散剤を使用してもよい。K及びKは、いずれも波長420nmにおける値である。銀粒子を含有する第1インクに光が通る際には、銀粒子に光が吸収されるため、Kの値は大きくなる。しかし、カチオン性化合物と、銀粒子を含有する第1インクとの混合物に光が通ると、カチオン性化合物により銀粒子が凝集して沈殿するため、銀粒子に光が吸収されにくく、Kの値は小さくなる。よって、第1インク中のカチオン性化合物がどのくらい銀粒子を凝集させることができるのかを示す指標(銀粒子を凝集させる力(%))は、(K−K)/K×100で表すことができる。なお、吸光度Kは、分光光度計を用いて測定する。
銀粒子の凝集力が30%以上であるカチオン性化合物としては、塩酸ジルコニウム(60%)、硫酸鉄(II)(96%)、塩化アルミニウム(99%)、硫酸アルミニウム(99%)、アデカスタブLA−63P(92%)などが挙げられる。括弧内の値は、後述する実施例で調製した銀粒子の分散液1を利用して測定した凝集力である。なかでも、銀粒子の凝集力が60%以上のカチオン性化合物であることがさらに好ましい。
同様に、5.0質量%の染料を含有する液体4の吸光度をKとし、1.0質量%のカチオン性化合物を含有する液体2と前記液体4を混合した液体5の吸光度をKとする。K及びKは、いずれも染料の最大吸収波長λmaxにおける値である(ただし、ブラック染料の場合は波長500nmにおける値である)。染料を含有する第2インクに光が通る際には、染料に光が吸収されるため、Kの値は大きくなる。しかし、カチオン性化合物と、染料を含有する第2インクとの混合物に光が通ると、カチオン性化合物により染料が凝集して沈殿するため、染料に光が吸収されにくく、Kの値は小さくなる。よって、第2インク中のカチオン性化合物がどのくらい染料を凝集させることができるのかを示す指標(染料を凝集させる力(%))は、(K−K)/K×100で表すことができる。なお、吸光度Kは、分光光度計を用いて測定する。
染料の凝集力が30%以上であるカチオン性化合物としては、塩化アルミニウム(30%)、酢酸ジルコニウム(55%)、ジシアンジアミド/ジエチレントリアミン樹脂の硫酸塩(65%)、ポリ塩化アルミニウム(90%)、ポリアリルアミン硝酸塩(96%)などが挙げられる。括弧内の値は、後述する実施例で準備したカチオン性化合物2を利用して測定した凝集力である。なかでも、染料の凝集力が60%以上のカチオン性化合物であることがさらに好ましい。
インク受容層の単位面積あたりのカチオン性化合物の含有量(g/m)は、0.20g/m以上である。前記含有量は、0.70g/m以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、5.00g/m以下であることが好ましい。前記含有量が5.00g/mを超えると、インクの吸収性が低くなり、記録媒体にインク中の水が留まることで、銀粒子と銀粒子が融着しにくくなる。これにより、画像の光沢性が十分に得られない場合がある。
[その他の添加剤]
インク受容層は、これまで述べてきたもの以外のその他の添加剤を含有してもよい。具体的には、pH調整剤、増粘剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、硬化剤などが挙げられる。
〔記録媒体の物性〕
記録媒体の紙面pHは、6.0以下であることが好ましい。記録媒体の紙面pHとは、インク受容層のpHのことである。前記紙面pHが6.0を超えると、水酸化物イオンの量が多いため、水酸化物イオンと銀粒子の表面のイオン化された銀(銀イオン)が反応して、酸化銀(AgO)が形成される。この酸化銀により、銀粒子と銀粒子が融着しにくくなるため、緻密な銀層を形成しにくくなる。これにより、画像の発色性、及び光沢性が十分に得られない場合がある。
記録媒体の紙面pHは、JAPAN TAPPI No.49−1「紙及び板紙−表面pH試験方法−第1部:ガラス電極法」により、測定できる。
〔記録媒体の製造方法〕
記録媒体を製造する方法は、第1塗工液を調製する工程、及び第1塗工液を基材に塗工する工程を有することが好ましい。さらに、カチオン性化合物、並びに、塩化物イオンの捕捉剤及び有機系の酸化防止剤の少なくとも一方を含む液体(以下、「第2塗工液」と記載)を基材に塗工する工程を有することが好ましい。以下、記録媒体の製造方法について説明する。
基材にインク受容層を形成する方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。まず、第1塗工液を調製する。そして、基材に第1塗工液を塗工し、第1塗工液を塗工した基材を乾燥させる。さらに、インク受容層にカチオン性化合物、塩化物イオンの捕捉剤、及び有機系の酸化防止剤を含有させるために、第2塗工液を塗工し、第2塗工液を塗工した基材を乾燥させる。これにより、記録媒体を得ることができる。第1塗工液及び第2塗工液の塗工方法としては、カーテンコーター、エクストルージョン方式を用いたコーター、スライドホッパー方式を用いたコーターなどを用いることができる。なお、塗工時に、第1塗工液及び第2塗工液を加温してもよい。また、塗工後の乾燥方法は、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤーなどの熱風乾燥機を使用する方法や赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波などを利用した乾燥機を使用する方法などが挙げられる。
(形成された銀層の緻密度)
記録媒体に形成された銀層の緻密度は、走査型電子顕微鏡(SEM)で記録媒体の断面を観察することで得られる値である。銀層に細孔がない場合の緻密度を100%と定義する。そのため、銀層の緻密度が小さいほど、銀層に細孔が多いことを意味している。
記録媒体の有するインク受容層が、塩酸ジルコニウム、硫酸鉄(II)、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、又はアデカスタブLA−63Pを含有する場合、記録媒体に形成された銀層の緻密度は、75%以上であることが好ましい。銀層の緻密度が75%未満であると、第2インク中の染料が水とともに銀粒子と銀粒子の間に入り込み、さらには記録媒体にまで浸透してしまうことで、銀層に染料を留めておくことができず、画像の発色性が十分に得られない場合がある。銀層の緻密度は、90%以上であることがより好ましく、96%以下であることがさらに好ましい。
記録媒体の有するインク受容層が、塩化アルミニウム、酢酸ジルコニウム、ジシアンジアミド/ジエチレントリアミン樹脂の硫酸塩、ポリ塩化アルミニウム、又はポリアリルアミン硝酸塩を含有する場合、銀層の緻密度は、90%以下であることが好ましい。銀層の緻密度が90%を超えると、記録媒体にカチオン性化合物が入り込みにくくなるため、第2インク中の染料が記録媒体の有するカチオン性化合物と反応しにくくなる。これにより、記録媒体に染料を留めておくことができず、画像の発色性が十分に得られない場合がある。銀層の緻密度は、75%以下であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。
以下、実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」、及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<記録媒体の作製>
(基材1の作製)
カナダ標準濾水度が450mLCSFの広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)80部、カナダ標準濾水度が480mLCSFの針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)20部、カチオン化澱粉0.60部、重質炭酸カルシウム10部、軽質炭酸カルシウム15部、アルキルケテンダイマー0.10部、カチオン性ポリアクリルアミド0.03部を混合し、これらの固形分の含有量が3.0%となるように水を加えて、紙料を得た。次いで、紙料を長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行った後、多筒式ドライヤーで乾燥した。その後、サイズプレス装置で乾燥後の固形分が1.0g/mとなるように酸化澱粉水溶液を含浸、乾燥させた。さらに、マシンカレンダー仕上げをして、坪量が170g/m、ステキヒトサイズ度100秒、透気度50秒、ベック平滑度30秒、ガーレー剛度11.0mN、膜厚が100μmの基紙を作製した。次いで、低密度ポリエチレン(LDPE)70部、高密度ポリエチレン(HDPE)20部、及び酸化チタン10部の樹脂組成物を、乾燥塗工量が25g/mとなるように、基紙の片面に塗工した。なお、この面を基材の表面とする。さらに、低密度ポリエチレンを、基紙のもう一方の面に塗工することで、基材1を得た。
(基材2の作製)
軽質炭酸カルシウム20.0部を、広葉樹晒クラフトパルプ100.0部のスラリー中に添加し、カチオン澱粉2.0部、無水アルケニルコハク酸系中性サイズ剤0.3部を添加し、十分に混合して抄紙原料とした。長網多筒式抄紙機を用いて水分を10%まで乾燥させ、サイズプレスで酸化澱粉の7%溶液を両面で4g/m塗布し、さらに水分を7%まで乾燥させて坪量110g/mの基紙を作製した。その基紙の表裏両方の面に高密度ポリエチレン70部と低密度ポリエチレン20部で構成される樹脂組成物を、片面あたり30g/mの塗工量となるように溶融押し出し塗布して、基材2を得た。
<インク受容層用塗工液の作製>
(無機粒子分散液1の調製)
純水160.0g中に、アルミナ水和物(DISPERAL HP14、サソール製)40.0g、メタンスルホン酸0.6gを添加した。その後、ミキサーで30分間撹拌し、無機粒子であるアルミナ水和物を20.0%含有する無機粒子分散液1を調製した。無機粒子分散液中のアルミナ水和物の一次平均粒子径は130nmであった。
(無機粒子分散液2の調製)
イオン交換水498部に、酢酸2部を添加した。この酢酸水溶液をホモミキサー(T.K.ホモミキサーMARKII2.5型、特殊機化工業製)で3000rpmの回転条件で撹拌しながら、アルミナ水和物(DISPERAL HP14、サソール製)100部を少量ずつ添加した。その後、30分撹拌することで、酢酸によりアルミナ水和物が分散され、アルミナ水和物を23.0%含有する無機粒子分散液2を調製した。
(無機粒子分散液3の調製)
イオン交換水333部に、カチオン性ポリマー(シャロールDC902P、第一工業製薬製)4部を添加した。このカチオン性ポリマー水溶液をホモミキサー(T.K.ホモミキサーMARKII2.5型、特殊機化工業製)で3000rpmの回転条件で撹拌しながら、気相法シリカ(AEROSIL300、EVONIK製)100部を少量ずつ添加した。その後、得られた溶液をイオン交換水で希釈し、高圧ホモジナイザー(ナノマイザー、吉田機械興業社製)で2回処理することで気相法シリカを微粒子化して、気相法シリカを20.0%含有する無機粒子分散液3を調製した。
(第1塗工液1の調製)
ポリビニルアルコール(PVA235、クラレ製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、固形分8.0%のポリビニルアルコール水溶液を得た。そして、無機粒子分散液1にポリビニルアルコール水溶液を、無機粒子の含有量に対して、ポリビニルアルコールの含有量が10.0%となるよう混合した。さらに、架橋剤であるオルトホウ酸をイオン交換水中に溶解させて、オルトホウ酸を3.0%含有するホウ酸水溶液を得た。無機粒子の含有量に対して、ホウ酸の含有量が1.0%となるよう、ホウ酸水溶液を混合して、第1塗工液1を得た。
(第1塗工液2〜6の調製)
ポリビニルアルコール(PVA235クラレ製、重合度:3500、ケン化度:88%)をイオン交換水中に溶解させて、ポリビニルアルコールを8.0%含有するポリビニルアルコール水溶液を得た。さらに、架橋剤であるオルトホウ酸をイオン交換水中に溶解させて、オルトホウ酸を3.0%含有するホウ酸水溶液を得た。これらの水溶液を用いて、表1に記載の含有量(部)となるように、第1塗工液2〜6を調製した。
ここで、ポリビニルアルコール又はその誘導体に対する架橋剤の含有量(当量)の算出方法について、第1塗工液2を用いて説明する。架橋剤としてオルトホウ酸を用いていて、ホウ素の最大配位数が4であるため、ホウ素は、ポリビニルアルコールの有する4つのヒドロキシ基と反応できる。つまり、オルトホウ酸が過不足なくポリビニルアルコールと反応するためには、ポリビニルアルコールの有するヒドロキシ基のモル数×ポリビニルアルコールに対するオルトホウ酸の含有量(当量)=4×オルトホウ酸のモル数の式が成り立たなければならない。よって、ポリビニルアルコールに対するオルトホウ酸の含有量(当量)は、4×オルトホウ酸のモル数/ポリビニルアルコールの有するヒドロキシ基のモル数から算出できる。
ポリビニルアルコールの基本構造は、−(CH−CH(OH))−(CH−CH(OCOCH))−である。ポリビニルアルコールのケン化度(%)は、m/(m+n)×100であり、ポリビニルアルコール中のCH−CH(OH)の割合を示している。第1塗工液2で用いるポリビニルアルコールのケン化度は、88%であり、CH−CH(OH)の分子量(g/mol)は、44.00であり、CH−CH(OCOCH)の分子量(g/mol)は、86.00である。これにより、ポリビニルアルコールの有するヒドロキシ基のモル数は、11.00/{(44.00×88/100)+86.00×(100−88)/100}×88/100となる。そして、オルトホウ酸の分子量(g/mol)は、61.83であるため、オルトホウ酸のモル数は、1.01/61.83となる。これらの値から、ポリビニルアルコールに対するオルトホウ酸の含有量(当量)を算出できる。
作製した第1塗工液を、基材に、乾燥塗工量(g/m)が25g/mとなるように塗工し、温度90℃の熱風で乾燥し、インク受容層を得た。ついで、このインク受容層にカチオン性化合物、並びに、塩化物イオンの捕捉剤、及び有機系の酸化防止剤の少なくとも一方を含有させるために、表2〜4に記載の第2塗工液を調製した。そして、インク受容層に第2塗工液を塗工し、温度90℃の熱風で乾燥し、記録媒体を得た。表5〜7には、基材、第1塗工液、及び第2塗工液の組み合わせを示す。記録媒体1のインク受容層の単位面積あたりの塩化物イオンの含有量(g/m)は、0.00g/mであり、記録媒体2〜58のインク受容層の単位面積あたりの塩化物イオンの含有量(g/m)は、0.20g/mであった。さらに、記録媒体18の紙面pHは、6.0であり、記録媒体19の紙面pHは、7.0であった。記録媒体1〜17、及び20〜58の紙面pHは、4.2であった。記録媒体の紙面pHは、JAPAN TAPPI No.49−1「紙及び板紙−表面pH試験方法−第1部:ガラス電極法」により、電極設置時間を30秒として測定した値である。
<銀粒子分散液の調製>
国際公開第2008/049519号公報の実施例2の調製方法の記載に準じて、銀粒子の分散液1(銀粒子の含有量が20.0%、樹脂の含有量が2.0%)を得た。さらに、特開2004−285106号公報の実施例2−2の調製方法の記載に準じて、銀粒子の分散液2(銀粒子の含有量が20.0%、界面活性剤の含有量が2.0%)を得た。銀粒子の分散液3及び4は、銀粒子の分散液2と同様の方法で調製したが、調製の際に撹拌速度を変更することで、D50の値を変更した。銀粒子の分散液5、6、7及び8は、銀粒子の分散液1と同様の方法で調製したが、分散剤の含有量を変更した。銀粒子のD50は、得られた画像の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して求め、表7に記載した。さらに、分散液中の分散剤の含有量も表7に記載した。
<第1インクの調製>
表8に記載の各成分を混合して、十分撹拌した後、ポアサイズ1.2μmのフィルターにて加圧ろ過を行い、第1インクを得た。アセチレノールE100は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。アセチレノールE100は、グリフィン法により求められるHLB値が13である。化合物1は、後述に記載のとおり、C.I.アシッドブルー9である。
<第2インクの調製>
(染料の準備)
下記の化合物を準備した。化合物3の構造式は、遊離酸型で示すが、カリウム塩として使用した。
化合物1:C.I.アシッドブルー9
化合物2:C.I.アシッドレッド249
化合物3:特開2016−108545号公報の合成方法の記載に準じて合成した遊離酸型として、下記式(2)で表される化合物のカリウム塩
(第2インク)
表9に記載の各成分を混合して、十分撹拌した後、ポアサイズ1.2μmのフィルターにて加圧ろ過を行い、第2インクを得た。アセチレノールE100は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。
<評価>
表10及び11に記載の第1インク及び第2インクを、それぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(PIXUS MG3630、キヤノン製)にセットした。本実施例において、第1インクは、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、約11.2ngのインク滴を2滴付与する条件で記録した画像を記録デューティが100%であると定義する。第2インクは、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、約5.7ngのインク滴を2滴付与する条件で記録した画像を記録デューティが100%であると定義する。前記インクジェット記録装置を用いて、表10及び表11に記載の記録媒体に、記録デューティ100%で第1インクを付与した。その後、前記第1インクを付与した領域と少なくとも一部が重なるように、記録デューティ100%で第2インクを付与した。本発明においては、下記の評価の評価基準で、AAA、AA、A又はBを許容できるレベルとし、Cを許容できないレベルとした。評価結果は、表10及び11に記載する。
(発色性)
積分球型測色計CM−2600d(コニカミノルタ製)のSCIモードを用いて、以下のように測定し、発色性の評価を行った。銀粒子を含有する第1インクのみを用いて記録デューティ100%で記録した画像のa 及びb 、銀粒子を含有するインク及び染料を含有するインクを用いて各インクを記録デューティ100%で記録した画像のa 及びb を測定した。これらの値を用いて、色差ΔEab={(a −a +(b −b 1/2の式からΔEabを算出した。a及びbは、CIE(国際照明委員会)により規定されたL表示系の値である。ΔEabが2.0以上であると、銀色ではなく使用した染料の色調が認識できる画像となる。ΔEabの値が大きいと、使用した染料の色調が良く認識される画像となる。
AAA:ΔEabが12.0以上だった
AA:ΔEabが10.0以上12.0未満だった
A:ΔEabが6.0以上10.0未満だった
B:ΔEabが2.0以上6.0未満だった
C:ΔEabが2.0未満だった。
(光沢性)
得られた画像について、変角分光光度計(GSP−2、村上色彩製)を用いて、鮮明度=L/w(Lは、分光光度計の受光部で測定される明度のうち、最も高い明度の値で、wはLの半値(L/2)を示す2点の受光角の幅)を測定した。鮮明度の値が0.2以上であれば、画像を目視で観察する場合に、観察する角度によって明度が変化するため、光沢性を有していると認識できる。
AA:鮮明度が0.6以上だった
A:鮮明度が0.4以上0.6未満だった
B:鮮明度が0.2以上0.4未満だった。
(光沢性の経時変化)
第1インクにより記録デューティが100%であるベタ画像を記録した。このベタ画像を、温度25℃、相対湿度50%の環境に1日置いて乾燥させ、光沢度計(VG7000、日本電色工業製)を用いて60度鏡面光沢度を測定した(試験前の光沢度aとする)。その後、槽内温度25℃、相対湿度80%としたガス腐食試験機(スガ試験機製)内にベタ画像を36時間載置することで、混合ガス(0.90ppmのNOガス、0.05ppmのSOガス、及び0.15ppmのOガス)にベタ画像を晒した。その後、ベタ画像の60度鏡面光沢度を再び測定した(試験後の光沢度bとする)。そして、b/a×100(%)の式に基づいて、光沢度の低下率を算出して、以下の基準で光沢性の経時変化を評価した。光沢度の低下率が小さいほど、光沢性の低下が抑制された画像であることを意味する。
A:光沢度の低下率が、50%未満だった
B:光沢度の低下率が、50%以上だった。

Claims (11)

  1. 第1インクを記録媒体に付与する記録工程と、
    第2インクを、前記第1インクを付与した領域の少なくとも一部に重なるように前記記録媒体に付与する記録工程とを有するインクジェット記録方法であって、
    前記第1インクが、銀粒子を含有する水性インクであり、
    前記第2インクが、アニオン性染料を含有する水性インクであり、
    前記記録媒体が、多価金属塩、及びカチオン性樹脂の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性化合物を含有するインク受容層を有し、
    前記インク受容層の単位面積あたりの前記カチオン性化合物の含有量(g/m)が、0.20g/m以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記多価金属塩が、(i)鉄、アルミニウム、及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の多価金属のイオンと、酢酸イオン、塩化物イオン、及び硫酸イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陰イオンとの塩、並びに、(ii)ポリ塩化アルミニウム、からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記カチオン性樹脂の塩が、1級乃至4級アミン構造を有する樹脂の硝酸塩、1級乃至4級アミン構造を有する樹脂の硫酸塩、及び下記一般式(1)で表される基を有するカチオン性化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。

    (一般式(1)中、Rは、水素原子、又は炭素数1以上30以下のアルキル基であり、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1以上6以下のアルキル基である。)
  4. 前記インク受容層の単位面積あたりの前記カチオン性化合物の含有量(g/m)が、5.00g/m以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記銀粒子の体積基準の累積50%粒径(nm)が、150nm以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記インク受容層が、塩化物イオン、並びに、塩化物イオンの捕捉剤、及び有機系の酸化防止剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記インク受容層が、下記の条件(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす請求項6に記載のインクジェット記録方法。
    条件(1) 前記インク受容層の単位面積あたりの前記塩化物イオンの捕捉剤の含有量(g/m)が、0.02g/m以上0.15g/m以下である。
    条件(2) 前記インク受容層の単位面積あたりの前記有機系の酸化防止剤の含有量(g/m)が、0.05g/m以上0.25g/m以下である。
  8. 前記インク受容層が、ポリビニルアルコール又はその誘導体、及び架橋剤を含有し、
    前記インク受容層中の前記架橋剤の含有量が、前記ポリビニルアルコール又はその誘導体の含有量に対して、0.40当量以上1.00当量以下である請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記記録媒体の紙面pHが、6.0以下である請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記インク受容層の単位面積あたりの前記カチオン性化合物の含有量(g/m)が、0.70g/m以上である請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 第1インクを記録媒体に付与した後に、第2インクを前記記録媒体に付与する手段を備えたインクジェット記録装置であって、
    前記第1インクが、銀粒子を含有する水性インクであり、
    前記第2インクが、アニオン性染料を含有する水性インクであり、
    前記記録媒体が、多価金属塩、及びカチオン性樹脂の塩からなる群より選択される少なくとも1種のカチオン性化合物を含有するインク受容層を有し、
    前記インク受容層の単位面積あたりの前記カチオン性化合物の含有量(g/m)が、0.20g/m以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
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