以下、本発明の一実施形態について説明する。下記の実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。また、下記の実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(実施形態1)
(1)判定システムの概要
本実施形態に係る判定システムは、分電盤に用いられ、少なくとも1つの電流計測部のうちの判定対象となる一の電流計測部が、複数の電圧計測部のうちのいずれの電圧計測部と対になるかを判定するためのシステムである。
例えば単相3線式の配電方式であれば、分電盤は、図1に示すように、第1電圧線(L1)41と第2電圧線(L2)42と中性線(N)43とを有する電力線4に電気的に接続される。この場合、分電盤は、第1電圧線41及び中性線43が電気的に接続された第1電圧系統81と、第2電圧線42及び中性線43が電気的に接続された第2電圧系統82と、第1電圧線41及び第2電圧線42が電気的に接続された第3電圧系統83と、を有する。
そして、分電盤は、電力線4を介して第1電圧系統81、第2電圧系統82及び第3電圧系統83から供給される交流電力を複数(図1の例では3つ)の分岐回路51〜53に分配する。分岐回路51は、第1電圧線41と中性線43とに電気的に接続され、第1電圧系統81から電力が供給される。分岐回路52は、第2電圧線42と中性線43とに電気的に接続され、第2電圧系統82から電力が供給される。分岐回路53は、第1電圧線41と第2電圧線42とに電気的に接続され、第3電圧系統83から電力が供給される。
なお、以下では、複数の分岐回路51〜53を特に区別しない場合には、複数の分岐回路51〜53の各々を「分岐回路5」ともいう。また、ここでいう「分岐回路」は、分岐ブレーカ、並びに分岐ブレーカの二次側に接続される配線路、配線器具(アウトレット、壁スイッチなど)、及び各種の機器(照明器具、調理家電など)を含んでいる。
ここで、第1電圧線41又は第2電圧線42と、中性線43との間の電圧が100〔V〕(実効値)であるとすれば、分岐回路51,52には100〔V〕が印加され、分岐回路53には200〔V〕が印加されることになる。つまり、分岐回路51,52は100V回路であり、分岐回路53は200V回路である。
本実施形態に係る判定システム2は、図1に示すように、複数の電圧計測部(第1電圧計測部111、第2電圧計測部112、第3電圧計測部113)と、少なくとも1つの電流計測部20〜22と、判定部13と、を備えている。複数の電圧計測部は、複数の電圧系統(第1電圧系統81、第2電圧系統82、第3電圧系統83)の各々における一対の基準電位点(P11、P12、P13)から抵抗成分(R1、R2、R3)を介した一対の計測点(P1、P2、P3)間の電圧を計測する。少なくとも1つの電流計測部は、複数の電圧系統のうち少なくとも1つの電圧系統に電気的に接続された特定回路(主幹回路9、分岐回路5)を流れる電流(I1、I2、I11〜I13)を計測する。判定部13は、少なくとも1つの電流計測部のうちの判定対象となる一の電流計測部が、複数の電圧計測部のうちのいずれの電圧計測部と対になるかを判定する。そして、判定部13は、複数の電圧計測部のうち、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と相関のある電圧の変化が生じている電圧計測部が、一の電流計測部と対であると判定する。
ここで、「相関」があるとは、判定対象の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と、判定対象の電流計測部と対になる電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化との間に何らかの関わりがあることをいう。例えば、特定回路が接続されている電圧系統に電流が流れた場合、この電圧系統に電気的に接続されている電圧線の抵抗によって電圧降下が生じる。そのため、この場合には、電流計測部の計測結果に基づく電流の変化(上昇)と、この電流計測部と対になる電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化(低下)との間に相関があることになる。なお、判定部13の判定処理の具体例については、「(3)判定部の判定処理」の欄にて説明する。
このように、電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化との間に相関があるか否かによって、判定対象の電流計測部が複数の電圧計測部のうちのいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。そして、この判定システムを電力計測システムに適用した場合には、電流計測部と電圧計測部との組み合わせを正しく設定することができ、その結果、正しい電力計測を行うことができる。
(2)判定システムの詳細
本実施形態では、判定システムは、需要家施設において消費電力と消費電力量との少なくとも一方を計測するための電力計測システムに適用される。ここでいう「需要家施設」は、電力の需要家の施設を意味しており、電力会社等の電気事業者から電力の供給を受ける施設だけでなく、太陽光発電設備等の自家発電設備から電力の供給を受ける施設も含む。本実施形態では、戸建住宅を需要家施設の一例として説明する。
(2.1)基本構成
ここではまず、判定システム2が適用される電力計測システム1の基本構成について、図1を参照して説明する。
本実施形態に係る電力計測システム1は、図1に示すように、電圧計測部11と、取得部12と、判定部13と、電力演算部14と、記憶部15と、を備えている。さらに、電力計測システム1は、複数箇所の電流を計測するために、複数の電流計測部21,22,201〜203を備えている。ここで、電力計測システム1の構成要素は、判定システム2の構成要素と共通である。すなわち、本実施形態の判定システム2は、電圧計測部11と、取得部12と、判定部13と、電力演算部14と、記憶部15と、複数の電流計測部21,22,201〜203と、を備えている。
本実施形態では、電力計測システム1の構成要素(電圧計測部11、取得部12、判定部13、電力演算部14、記憶部15、及び電流計測部21,22,201〜203)は、分電盤6(図2参照)のキャビネット60(図2参照)内に収納されている。
電圧計測部11は、図1に示すように、第1電圧計測部111と、第2電圧計測部112と、第3電圧計測部113と、を有している。本実施形態では、配電方式が単相3線式であり、複数の電圧系統として、第1電圧系統81と、第2電圧系統82と、第3電圧系統83と、を有している。第1電圧計測部111は、第1電圧系統81における一対の基準電位点P11,P13から抵抗R1,R3を介した一対の計測点P1,P3間の第1電圧VL1を計測する。言い換えると、第1電圧VL1は、計測点P3から見たときの計測点P1の電位である。第2電圧計測部112は、第2電圧系統82における一対の基準電位点P12,P13から抵抗R2,R3を介した一対の計測点P2,P3間の第2電圧VL2を計測する。言い換えると、第2電圧VL2は、計測点P2から見た計測点P3の電位である。第3電圧計測部113は、第3電圧系統83における一対の基準電位点P11,P12から抵抗R1,R2を介した一対の計測点P1,P2間の第3電圧(VL1+VL2)を計測する。なお、図1における抵抗R1〜R3は、それぞれ、第1電圧線41、第2電圧線42及び中性線43の配線抵抗であり、本実施形態では、これらの抵抗R1〜R3が抵抗成分である。
取得部12には、一対の(主幹用)電流計測部21,22及び複数の(分岐用)電流計測部201〜203の各々が電気的に接続されている。本実施形態では、これらの電流計測部21,22,201〜203は電流センサである。一対の電流計測部21,22は、第1電圧線41及び第2電圧線42に一対一に対応して設けられている。また、複数の電流計測部201〜203は、複数の分岐回路5に一対一に対応して設けられている。これにより、取得部12では、電流計測部21の出力から第1電圧線41を流れる第1電流I1を取得(計測)可能であり、電流計測部22の出力から第2電圧線42を流れる第2電流I2を取得(計測)可能である。また、取得部12では、複数の電流計測部201〜203の出力から、複数の分岐回路5の各々を流れる電流(以下、「分岐電流」という)を取得(計測)可能である。以下では、分岐電流を計測するための複数の電流計測部201〜203を特に区別しない場合には、複数の電流計測部201〜203の各々を「電流計測部20」ともいう。
なお、以下では、分岐回路51を流れる分岐電流、つまり電流計測部201で計測される分岐電流を「分岐電流I11」という。同様に、分岐回路5n(nは自然数)を流れる分岐電流、つまり電流計測部20n(nは自然数)で計測される分岐電流を「分岐電流I1n」という。
判定部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)及びメモリを主構成とするマイクロコンピュータで構成されている。そして、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータが判定部13として機能する。CPUが実行するプログラムは、ここではマイクロコンピュータのメモリに予め記録されているが、メモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。さらに、CPUが実行するプログラムは、記憶部15(後述する)に予め記録されていてもよい。
判定部13は、複数の電流計測部21,22,201〜203のうちの判定対象となる一の電流計測部が、複数の電圧計測部(第1電圧計測部111、第2電圧計測部112及び第3電圧計測部113)のうちのいずれの電圧計測部と対になるかを判定する。このとき、判定部13は、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と、複数の電圧計測部の各々の計測結果に基づく電圧の変化との間に相関があるか否かによって判定する。
一例として、判定部13は、電流計測部21が判定対象である場合、電流計測部21の計測結果に基づく電流の変化と、第1電圧計測部111及び第2電圧計測部112の計測結果に基づく電圧の変化との間に相関があるか否かを判定する。このとき、例えば、分岐回路51の通電状態がオフからオンになることで第1電圧系統81に第1電流I1が流れる。そのため、第1電圧系統81では、第1電圧線41及び中性線43の抵抗R1,R3と第1電流I1によって電圧降下が生じ、これにより第1電圧計測部111にて計測される第1電圧VL1が低下する。一方、第2電圧系統82では、第1電流I1が中性線43を流れることによって第2電圧計測部112にて計測される第2電圧VL2は上昇する。この場合、判定部13は、電流計測部21にて計測される第1電流I1の変化と、この第1電流I1によって低下する第1電圧VL1の変化との間に相関があると判定し、電流計測部21と第1電圧計測部111とが対であると判定する。なお、判定部13の判定処理の具体例については、「(3)判定部の判定処理」の欄にて説明する。
電力演算部14は、電圧計測部11及び取得部12と電気的に接続されている。電力演算部14は、電圧計測部11の計測結果と取得部12の取得結果(計測結果)とを用いて、特定回路(主幹回路9、分岐回路5)の消費電力と消費電力量との少なくとも一方を計測値として計測する。計測値は、瞬時電力を表す消費電力であってもよいし、あるいは一定時間における電力の消費量(使用量)を表す消費電力量であってもよい。また、計測値は、消費電力と消費電力量との両方であってもよい。本実施形態では一例として、計測値は、消費電力を一定時間(例えば1分間)積算した消費電力量であることとする。
電力演算部14は、例えばマイクロコンピュータからなり、電圧計測部11の計測結果である線間電圧と、取得部12の取得結果である計測電流とを用いて演算することにより、計測値を求める。
記憶部15は、データを書き換え可能なメモリであって、特に不揮発性メモリであることが好ましい。記憶部15は、電力演算部14の演算結果である計測値(消費電力量)を記憶するように構成されている。また、記憶部15は、判定対象の電流計測部と、この電流計測部と対であると判定された電圧計測部とを紐付けて記憶するように構成されている。
(2.2)分電盤
次に、分電盤6の構成について説明する。
分電盤6は、図2に示すように、電力線4に電気的に接続される主幹ブレーカ61と、主幹ブレーカ61の二次側端子に電気的に接続される複数の分岐ブレーカ62とをキャビネット60内に備えている。さらに、分電盤6は、計測ユニット63、電流計測部21,22、及びセンサユニット23,24をキャビネット60内に備えている。
本実施形態では一例として、電力計測システム1の構成要素のうち、電圧計測部11、取得部12、判定部13、電力演算部14及び記憶部15としての機能は、計測ユニット63に設けられている。同様に、電流計測部201〜203としての機能は、センサユニット23,24に設けられている。
主幹ブレーカ61の一次側端子は、3線式(第1電圧線41、第2電圧線42、及び中性線43)の電力線4を介して、柱上変圧器3(図1参照)の二次側の第1系統電源31及び第2系統電源32(図1参照)に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、主幹ブレーカ61と、第1系統電源31及び第2系統電源32との間にスマートメータ100が電気的に接続されている。主幹ブレーカ61の二次側端子には、3極(L1、L2、N)の導電バーが接続されている。これら3極の導電バーは、第1電圧線(L1)41、第2電圧線(L2)42、及び中性線(N)43と一対一に電気的に接続される。ここに、本実施形態では、主幹ブレーカ61と、主幹ブレーカ61の二次側端子に接続されている3極の導電バーとが主幹回路9に含まれている。言い換えると、主幹回路9は、主幹ブレーカ61と、3極の導電バーと、を有している。この主幹回路9は、第1電圧系統81、第2電圧系統82及び第3電圧系統83に電気的に接続され、第1電圧系統81、第2電圧系統82及び第3電圧系統83から供給される電力を複数の分岐回路に分配する。
複数の分岐ブレーカ62は、導電バーに接続されることにより、主幹ブレーカ61の二次側端子に電気的に接続される。なお、複数の分岐ブレーカ62は、導電バーの幅方向の両側(上段と下段)に分かれて、それぞれ複数ずつ配置されている。
ここで、複数の分岐ブレーカ62のうち、分岐回路51に含まれる分岐ブレーカ62は、L1の導電バーとNの導電バーとに接続されている。また、複数の分岐ブレーカ62のうち、分岐回路52に含まれる分岐ブレーカ62は、L2の導電バーとNの導電バーとに接続されている。さらに、複数の分岐ブレーカ62のうち、分岐回路53に含まれる分岐ブレーカ62は、L1の導電バーとL2の導電バーとに接続されている。これにより、分岐回路51は、第1電圧線(L1)41及び中性線(N)43に対して電気的に接続されることになる。また、分岐回路52は、第2電圧線(L2)42及び中性線(N)43に対して電気的に接続されることになる。さらに、分岐回路53は、第1電圧線(L1)41及び第2電圧線(L2)42に対して電気的に接続されることになる。
ここにおいて、100〔V〕用の分岐ブレーカ62は、導電バーの上段に取り付けられた状態では、第1電圧線41及び中性線43に対して電気的に接続され、導電バーの下段に取り付けられた状態では、第2電圧線42及び中性線43に対して電気的に接続される。また、200V用の分岐ブレーカ62は、導電バーの上段、下段に関わらず、第1電圧線41及び第2電圧線42に対して電気的に接続される。
計測ユニット63には、一対の電流計測部21,22及びセンサユニット23,24の各々が電気的に接続されている。電流計測部21,22,201〜203としては、例えばCT(Current Transformer)センサ、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗などが用いられる。本実施形態では一例として、電流計測部21,22の各々はCTセンサからなる。一方、センサユニット23,24に設けられた複数の電流計測部20の各々は、コアを用いない(コアレスの)空芯コイルからなり、貫通孔内を通過する電流に応じた出力を生じるロゴスキコイルである。
一対の電流計測部21,22は、主幹ブレーカ61の一次側端子に接続された電力線4の電流を計測するように、電力線4に取り付けられている。ここでは、一対の電流計測部21,22のうち、一方の(第1の)電流計測部21は第1電圧線41に取り付けられ、他方の(第2の)電流計測部22は第2電圧線42に取り付けられている。これにより、計測ユニット63では、電流計測部21の出力から第1電圧線41を流れる第1電流I1が計測可能となり、電流計測部22の出力から第2電圧線42を流れる第2電流I2が計測可能となる。
センサユニット23,24の各々は、複数の電流計測部20を具備し、これら複数の電流計測部20が、複数の分岐ブレーカ62に一対一に対応するようにして、複数の分岐ブレーカ62と導電バーとの間に取り付けられている。これにより、計測ユニット63では、センサユニット23,24の各々の出力から、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流が計測可能となる。
ここで、導電バーの上段の分岐ブレーカ62は、100〔V〕用か200〔V〕用かによらず、いずれも第1電圧線41に対して電気的に接続される。一方、導電バーの下段の分岐ブレーカ62は、100〔V〕用か200〔V〕用かによらず、いずれも第2電圧線42に対して電気的に接続される。そこで、上段の分岐ブレーカ62の電流を計測するセンサユニット23においては、複数の電流計測部20は、第1電圧線41と分岐ブレーカ62との間に設置され、第1電圧線41と分岐ブレーカ62との間の電流を計測する。一方、下段の分岐ブレーカ62の電流を計測するセンサユニット24においては、複数の電流計測部20は、第2電圧線42と分岐ブレーカ62との間に設置され、第2電圧線42と分岐ブレーカ62との間の電流を計測する。
(3)判定部の判定処理
ところで、上述した従来の回路判定システムを電力計測システムに適用した場合に、各分岐回路の電圧と電流との組み合わせが誤っていると、計測装置の計測結果に誤差が生じたり、異常値になったりする可能性があった。例えば、分岐回路51を流れる電流を計測する電流計測部201と第3電圧計測部113とが対になっている場合には、分岐回路51の計測値(消費電力量)が2倍程度になってしまう。そのため、分岐回路の電圧と電流との組み合わせを判定可能なシステムが望まれている。
そこで、本実施形態に係る判定システム2では、特定回路に印加される電圧と特定回路を流れる電流との組み合わせが正しく設定されるように、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定する判定部13を備えている。以下、図3〜図5を参照して具体的に説明する。
図3は、分岐回路51の通電状態に応じた電流波形及び電圧波形を概念的に表した波形図である。実線a1は、電流計測部21にて計測した第1電流I1を表し、破線a2は、電流計測部22にて計測した第2電流I2を表している。また、実線b1は、第1電圧計測部111にて計測した第1電圧VL1(一対の計測点P1,P3間の電圧)を表し、破線b2は、第2電圧計測部112にて計測した第2電圧VL2(一対の計測点P2,P3間の電圧)を表している。
図3に示す例では、時刻t1のときに分岐回路51の通電状態がオフからオンになり、時刻t2のときに分岐回路51の通電状態がオンからオフになっている。つまり、図3に示す例では、時刻t1から時刻t2の間において、分岐回路51の通電状態がオンになっている。この場合、特定回路は主幹回路9であり、判定対象は第1電流I1を計測する電流計測部21である。
分岐回路51の通電状態がオンになり、第1電圧系統81に第1電流I1が流れると、第1電圧線41及び中性線43の抵抗R1,R3と第1電流I1によって電圧降下が生じ、これにより第1電圧VL1は低下する(図3中の実線b1参照)。一方、第1電流I1が中性線43を流れることによって計測点P3の電位が上昇するため、第2電圧計測部112にて計測される第2電圧VL2は上昇する(図3中の破線b2参照)。この場合、第2電圧系統82に接続された分岐回路52の通電状態がオフであるため、第2電流I2は変動しない(図3中の破線a2参照)。
ここで、柱上変圧器3の第1系統電源31の電源電圧をV1、第2系統電源32の電源電圧をV2と、抵抗R1〜R3の抵抗値をr1〜r3とした場合、第1電圧VL1及び第2電圧VL2は、(1)式及び(2)式により求められる。
VL1=V1−(r1+r3)×I1 ・・・(1)
VL2=V2+r3×I1 ・・・(2)
なお、第1電圧線41、第2電圧線42及び中性線43は、同じ電力線4に含まれているため、抵抗R1〜R3の抵抗値r1〜r3は同じであるとみなすことができる。したがって、第1電圧VL1の変化量ΔVL1の絶対値は第2電圧VL2の変化量ΔVL2の絶対値の2倍程度になる。また、第1電圧VL1は低下し、第2電圧VL2は上昇しているため、第1電圧VL1の変化量ΔVL1の符号はマイナス(負)であり、第2電圧VL2の変化量ΔVL2はプラス(正)である。ここで、本実施形態では、第1電流I1の変化量、第1電圧VL1の変化量ΔVL1、及び第2電圧VL2の変化量ΔVL2は、それぞれ、瞬時値ではなく、実効値である。
上述のように、第1電流I1が第1電圧系統81に流れた場合には、第1電圧計測部111の計測結果に基づく電圧の変化量ΔVL1の符号と、第2電圧計測部112の計測結果に基づく電圧の変化量ΔVL2の符号とが異なる。したがって、判定部13は、電圧の変化量ΔVL1,ΔVL2の正負によって、電流の変化と電圧の変化との間に相関があるか否かを判定することができる。図3に示す例では、第1電流I1が流れることによって電圧降下が生じていることから、判定部13は、変化量ΔVL1の符号がマイナス(負)になっている第1電圧VL1の変化と第1電流I1の変化との間に相関があると判定する。言い換えると、判定部13は、第1電圧計測部111及び第2電圧計測部112のうち、第1電流I1の変化と相関のある第1電圧VL1の変化が生じている第1電圧計測部111が、電流計測部21と対であると判定する。
なお、特定回路は主幹回路9に限らず、例えば、分岐回路51であってもよい。言い換えると、分岐回路51を流れる分岐電流I11を計測する電流計測部201が判定対象であり、判定部13は、電流計測部201がいずれの電圧計測部(第1電圧計測部111)と対になるかを判定してもよい。
図4は、分岐回路52の通電状態に応じた電流波形及び電圧波形を概念的に表した波形図である。実線a3は、電流計測部21にて計測した第1電流I1を表し、破線a4は、電流計測部22にて計測した第2電流I2を表している。また、実線b3は、第1電圧計測部111にて計測した第1電圧VL1(一対の計測点P1,P3間の電圧)を表し、破線b4は、第2電圧計測部112にて計測した第2電圧VL2(一対の計測点P2,P3間の電圧)を表している。
図4に示す例では、時刻t1のときに分岐回路52の通電状態がオフからオンになり、時刻t2のときに分岐回路52の通電状態がオンからオフになっている。つまり、図4に示す例では、時刻t1から時刻t2の間において、分岐回路52の通電状態がオンになっている。この場合、特定回路は主幹回路9であり、判定対象は第2電流I2を計測する電流計測部22である。
分岐回路52の通電状態がオンになり、第2電圧系統82に第2電流I2が流れると、第2電圧線42及び中性線43の抵抗R2,R3と第2電流I2によって電圧降下が生じ、これにより第2電圧VL2は低下する(図4中の破線b4参照)。一方、第2電流I2が中性線43を流れることによって計測点P3の電位が低下するため、第1電圧計測部111にて計測される第1電圧VL1は上昇する(図4中の実線b3参照)。この場合、第1電圧系統81に接続された分岐回路51の通電状態がオフであるため、第1電流I1は変動しない(図4中の実線a3参照)。
図4に示す例では、第1電圧VL1及び第2電圧VL2は、(3)式及び(4)式により求められる。
VL1=V1+r3×I2 ・・・(3)
VL2=V2−(r2+r3)×I2 ・・・(4)
したがって、この場合には、第2電圧VL2の変化量ΔVL2の絶対値は第1電圧VL1の変化量ΔLVL1の絶対値の2倍程度になる。また、第2電圧VL2は低下し、第1電圧VL1は上昇しているため、第1電圧VL1の変化量ΔVL1の符号はプラス(正)であり、第2電圧VL2の変化量ΔVL2はマイナス(負)である。
上述のように、第2電流I2が第2電圧系統82に流れた場合には、第1電圧計測部111の計測結果に基づく電圧の変化量ΔVL1の符号と、第2電圧計測部112の計測結果に基づく電圧の変化量ΔVL2の符号とが異なる。したがって、判定部13は、電圧の変化量ΔVL1,ΔVL2の正負によって、電流の変化と電圧の変化との間に相関があるか否かを判定することができる。図4に示す例では、第2電流I2が流れることによって電圧降下が生じていることから、判定部13は、変化量ΔVL2の符号がマイナス(負)になっている第2電圧VL2の変化と第2電流I2の変化との間に相関があると判定する。言い換えると、判定部13は、第1電圧計測部111及び第2電圧計測部112のうち、第2電流I2の変化と相関のある第2電圧VL2の変化が生じている第2電圧計測部112が、電流計測部22と対であると判定する。
なお、特定回路は主幹回路9に限らず、分岐回路52であってもよい。言い換えると、分岐回路52を流れる分岐電流I12を計測する電流計測部202が判定対象であり、判定部13は、電流計測部202がいずれの電圧計測部(第2電圧計測部112)と対になるかを判定してもよい。
図5は、分岐回路53の通電状態に応じた電流波形及び電圧波形を概念的に表した波形図である。実線a5は、電流計測部21にて計測した第1電流I1を表し、破線a6は、電流計測部22にて計測した第2電流I2を表している。また、実線b5は、第1電圧計測部111にて計測した第1電圧VL1(一対の計測点P1,P3間の電圧)を表し、破線b6は、第2電圧計測部112にて計測した第2電圧VL2(一対の計測点P2,P3間の電圧)を表している。
図5に示す例では、時刻t1のときに分岐回路53の通電状態がオフからオンになり、時刻t2のときに分岐回路53の通電状態がオンからオフになっている。つまり、図5に示す例では、時刻t1から時刻t2の間において、分岐回路53の通電状態がオンになっている。この場合、特定回路は分岐回路53であり、判定対象は分岐電流I13を計測する電流計測部203である。
分岐回路53の通電状態がオンになり、第3電圧系統83に分岐電流I13が流れると、第1電圧線41及び第2電圧線42の抵抗R1,R2と分岐電流I13とによって電圧降下が生じる。これにより、第1電圧VL1及び第2電圧VL2はそれぞれ低下する(図5中の実線b5及び破線b6参照)。
図5に示す例では、第1電圧VL1及び第2電圧VL2は、(5)式及び(6)式により求められる。
VL1=V1−r1×I1 ・・・(5)
VL2=V2−r2×I2 ・・・(6)
ここで、r1とr2とは同じであり、かつ第1電流I1及び第2電流I2は分岐電流I13と同じであるため、第1電圧VL1の変化量ΔVL1と第2電圧VL2の変化量ΔVL2は同じである。また、第1電圧VL1及び第2電圧VL2は共に低下しているため、第1電圧VL1の変化量ΔVL1の符号及び第2電圧VL2の変化量ΔVL2の符号は共にマイナス(負)である。
上述のように、分岐電流I13が第3電圧系統83に流れた場合には、第1電圧計測部111の計測結果に基づく第1電圧VL1の変化量ΔVL1の符号と、第2電圧計測部112の計測結果に基づく第2電圧VL2の変化量ΔVL2の符号とが同じである。また、この場合、第1電圧VL1の変化量ΔVL1の大きさと、第2電圧VL2の変化量ΔVL2の大きさとが同じである。つまり、この場合には、第3電圧系統83に生じた電圧降下によって、第1電圧VL1及び第2電圧VL2が共に低下しており、判定部13は、分岐電流I13の変化と、第1電圧VL1及び第2電圧VL2の変化との間に相関があると判定する。言い換えると、判定部13は、所定条件を満たしている場合に、電流計測部203と第3電圧計測部113とが対であると判定する。所定条件を満たしている場合とは、判定対象の電流計測部203の計測結果に基づく電流の変化と第1電流VL1の変化との間に相関があり、かつ上記電流の変化と第2電流VL2の変化との間に相関がある場合である。
このように、本実施形態に係る判定システム2によれば、電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化との間に相関があるか否かによって、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。そして、この判定システム2を電力計測システム1に適用した場合には、電流計測部と電圧計測部との組み合わせを正しく設定することができ、その結果、正しい電力計測を行うことができる。
ところで、本実施形態のように、電流計測部が電流センサである場合には、電流センサを取り付ける相を間違える可能性がある。本実施形態に係る判定システム2によれば、このような施工ミスが生じている場合でも、電力演算を行う際の電圧と電流との組み合わせを正しく判定することができる。例えば、第1電圧線41を流れる第1電流I1を計測するための電流計測部21を第2電圧線42に、第2電圧線42を流れる第2電流I2を計測するための電流計測部22を第1電圧線41に取り付けた場合を想定する。この場合、電流計測部21と第2電圧計測部112とが対になり、電流計測部22と第1電圧計測部111が対になるため、電流計測部と電圧計測部との組み合わせは正しくない。しかしながら、第1電圧計測部111にて計測される第1電圧VL1と第2電圧計測部112にて計測される第2電圧VL2は同じ大きさ(100〔V〕)であるため、電力演算を行う際には問題ない。つまり、本実施形態の判定システム2によれば、電流センサの施工ミスがあった場合でも、電力演算を行う際の電圧と電流との組み合わせを正しく判定することができる。
また、本実施形態のように、電流計測部が電流センサである場合には、電圧線に対して電流センサを逆向きに取り付ける可能性もある。ここで、判定部13の判定処理では、電流の変化量及び電圧の変化量が実効値であるため、電流センサが逆向きに取り付けられていても、電流センサが取り付けられる相が正しければ、電流計測部と電圧計測部との対を正しく判定することができる。しかしながら、電力演算を行う際には、電流センサが逆向きに取り付けられているとマイナスの値になることから、判定部13は、演算結果がマイナスになっている場合には、電流センサが逆向きに取り付けられていると判断し、演算結果に(−1)を乗算する。つまり、本実施形態に係る判定システム2によれば、電流センサが逆向きに取り付けられている場合でも、正しい演算結果を得ることができる。
(4)判定方法、プログラム
以下の判定方法を採用することで、専用の計測ユニット63等を用いなくても、本実施形態に係る判定システム2と同等の機能を実現できる。
すなわち、判定方法は、電圧計測ステップと、電流計測ステップと、判定ステップと、を備える。電圧計測ステップは、複数の電圧系統(81、82、83)の各々における一対の基準電位点(P11、P12、P13)から抵抗成分(R1、R2、R3)を介した一対の計測点(P1、P2、P3)間の電圧を計測するステップである。電圧計測ステップでは、複数の電圧計測部(111、112、113)の各々にて上記電圧を計測する。電流計測ステップは、複数の電圧系統のうち少なくとも1つの電圧系統に電気的に接続された特定回路(主幹回路9、分岐回路5)を流れる電流を少なくとも1つの電流計測部(20、21、22)にて計測するステップである。判定ステップは、少なくとも1つの電流計測部のうちの判定対象となる一の電流計測部が、複数の電圧計測部のうちのいずれの電圧計測部と対になるかを判定するステップである。この判定方法では、判定ステップにおいて、複数の電圧計測部のうち、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と相関のある電圧の変化が生じている電圧計測部が、一の電流計測部と対である判定する。
この判定方法によれば、専用の計測ユニット63等を用いなくても、本実施形態に係る判定システム2と同等の機能を実現でき、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる、という利点がある。
また、計測ユニット63がコンピュータ(マイクロコンピュータを含む)を主構成とする場合を想定する。この場合、コンピュータのメモリに記録されるプログラムは、コンピュータに、電圧計測ステップと、電流計測ステップと、判定ステップと、を実行させる。電圧計測ステップは、複数の電圧系統(81、82、83)の各々における一対の基準電位点(P11、P12、P13)から抵抗成分(R1、R2、R3)を介した一対の計測点(P1、P2、P3)間の電圧を計測するステップである。電圧計測ステップでは、複数の電圧計測部(111、112、113)の各々にて上記電圧を計測する。電流計測ステップは、複数の電圧系統のうち少なくとも1つの電圧系統に電気的に接続された特定回路(主幹回路9、分岐回路5)を流れる電流を少なくとも1つの電流計測部(20、21、22)にて計測するステップである。判定ステップは、少なくとも1つの電流計測部のうちの判定対象となる一の電流計測部が、複数の電圧計測部のうちのいずれの電圧計測部と対になるかを判定するステップである。このプログラムでは、判定ステップにおいて、複数の電圧計測部のうち、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と相関のある電圧の変化が生じている電圧計測部が、一の電流計測部と対であると判定する。
このプログラムによれば、専用の計測ユニット63等を用いなくても、本実施形態に係る判定システム2と同等の機能を実現でき、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる、という利点がある。
(5)変形例
本実施形態では、判定部13の判定処理において、第1電圧計測部111の計測結果と第2電圧計測部112の計測結果とを用いているが、例えば、第1電圧計測部111の計測結果と第3電圧計測部113の計測結果とを用いてもよい。この場合、第3電圧計測部113の計測結果から第1電圧計測部111の計測結果を減算することによって、第2電圧計測部112にて計測される第2電圧VL2を求めることができる。
本実施形態では、判定対象の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化との間に相関があるか否かを判定部13が判定する際に、電圧の変化量の正負によって判定している。これに対して、判定部13は、複数の電流計測部の計測結果に基づく電圧の変化量の大きさの相対関係によって判定してもよい。例えば、図3に示す例では、第1電圧VL1の変化量ΔVL1は、第2電圧VL2の変化量ΔVL2の2倍であるから、第1電圧VL1の変化量ΔVL1と第2電圧VL2の変化量ΔVL2との比が2倍になる。この場合において、判定部13は、第1電圧VL1の変化量ΔVL1と第2電圧VL2の変化量ΔVL2との比が所定の閾値(例えば1.8〜2.2の範囲)内にあれば第1電圧VL1を計測する第1電圧計測部111と電流計測部21とが対であると判定する。一方、判定部13は、第1電圧VL1の変化量ΔVL1と第2電圧VL2の変化量ΔVL2との比が所定の閾値内になければ判定処理を行わない。この場合には、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化量の大きさの相対関係だけで、判定対象の電流計測部と対になる電圧計測部を判定することができる。また、第1電圧VL1の変化量ΔVL1と第2電圧VL2の変化量ΔVL2との比ではなく、差分であってもよい。
本実施形態では、複数の電圧系統の各々における一対の基準電位点(P11、P12、P13)から一対の計測点(P1、P2、P3)までの抵抗成分が第1電圧線41、第2電圧線42及び中性線43の抵抗である場合を例として説明している。これに対して、基準電位点から計測点までの間に抵抗器を挿入してもよい。つまり、新たに追加した抵抗器の抵抗が抵抗成分であってもよい。この場合、抵抗器は、第1電圧計測部111にて計測される第1電圧VL1の変化量ΔVL1と、第2電圧計測部112にて計測される第2電圧VL2の変化量ΔVL2とが比較可能な大きさとなるような抵抗値であることが好ましい。
分岐回51〜53の分岐電流I11〜I13をそれぞれ計測する電流計測部201〜203については、本実施形態に係る判定システム2によって対となる電圧計測部を判定しなくてもよい。例えば、分岐回路51については、上述した従来の回路判定システムを用いて、電流計測部201〜203と、第1電圧計測部111、第2電圧計測部112及び第3電圧計測部113との組み合わせを判定してもよい。また、電流の変化ではなく、電力の変化から電流計測部201〜203と、第1電圧計測部111、第2電圧計測部112及び第3電圧計測部113との組み合わせを判定してもよい。
本実施形態では、電流計測部の計測結果及び電圧計測部の計測結果が実効値である場合を例として説明しているが、実効値に限らず、絶対値の平均値であってもよい。実効値の場合には、複雑な演算処理(二乗演算、平方根演算等)が必要であるが、絶対値の平均値の場合には、絶対値の平均を演算するだけでよく、簡単な演算処理で済む、という利点がある。
本実施形態では、複数の電圧計測部(第1電圧計測部111、第2電圧計測部112、第3電圧計測部113)が分電盤6のキャビネット60内に設けられている場合を例として説明している。これに対して、複数の電圧計測部はスマートメータ100内に設けられていてもよい。つまり、この場合には、複数の電圧計測部の計測結果がスマートメータ100から計測ユニット63に伝送されることになる。
本実施形態では、単相3線式の配電方式の場合を例として説明しているが、配電方式は単相3線式に限らず、例えば三相4線式であってもよい。
本実施形態では、需要家施設が戸建住宅である場合を例として説明しているが、需要家施設は戸建住宅に限らず、マンション等の集合住宅の各住戸であってもよいし、工場、病院、オフィスビル等の非住宅であってもよい。
(実施形態2)
以下、判定システム2の実施形態2について、図6A、図6B及び図7を参照して説明する。本実施形態では、第1系統電源31及び第2系統電源32に系統連系する分散電源7が設けられている点で実施形態1と異なっている。分散電源7は、例えば主幹ブレーカ61の二次側端子に接続された連系ブレーカに電気的に接続される。分散電源7は、例えば太陽光発電装置及びパワーコンディショナである。分散電源7の出力電流I7は、電流計測部27にて計測される。電流計測部27は、電流計測部21,22と同じ電流センサである。なお、図6A及び図6Bでは、電力計測システム1を構成する電圧計測部11、取得部12、判定部13、電力演算部14、及び記憶部15の図示を省略している。
(1)判定部の判定処理
図7は、分散電源7からの電力の逆潮流の有無に応じた電流波形及び電圧波形を概念的に表した波形図である。実線a7は、電流計測部21にて計測した第1電流I1を表し、破線a8は、電流計測部22にて計測した第2電流I2を表している。また、実線b7は、第1電圧計測部111にて計測した第1電圧VL1(一対の計測点P1,P3間の電圧)を表し、破線b8は、第2電圧計測部112にて計測した第2電圧VL2(一対の計測点P2,P3間の電圧)を表している。なお、図7では、第1電流I1及び第2電流I2を上下方向にずらして図示し、かつ第1電圧VL1及び第2電圧VL2を上下方向にずらして図示しているが、区別できるようにずらしただけであり、実際には上下方向に重なっている。
図7に示す例では、時刻t1のときに分散電源7からの逆潮流が開始し、時刻t2のときに分散電源7からの逆潮流が終了している。つまり、図7に示す例では、時刻t1から時刻t2の間において、分散電源7からの逆潮流が起こっている。
分散電源7からの逆潮流が開始し、第3電圧系統83に出力電流I7が流れると、第1電圧線41及び第2電圧線42の抵抗R1,R2によって、第1電圧VL1及び第2電圧VL2がそれぞれ上昇する(図7中の実線b7及び破線b8参照)。
図7に示す例では、第1電圧VL1及び第2電圧VL2は、(7)式及び(8)式により求められる。
VL1=V1+r1×I7 ・・・(7)
VL2=V2+r2×I7 ・・・(8)
ここで、r1とr2とは同じであり、かつ第1電流I1及び第2電流I2は出力電流I7と同じであるため、第1電圧VL1の変化量ΔVL1と第2電圧VL2の変化量ΔVL2は同じである。また、第1電圧VL1及び第2電圧VL2は共に上昇しているため、第1電圧VL1の変化量ΔVL1の符号及び第2電圧VL2の変化量ΔVL2の符号は共にプラス(正)である。
このように、分岐回路51〜53のいずれにおいても電力消費がない場合であって、かつ第1電圧VL1及び第2電圧VL2がそれぞれ上昇している場合には、判定部13は、逆潮流が発生していると判定し、更に分散電源7が接続されていると判定する。
ここで、図6Aは、本実施形態に係る判定システム2の構成を示す概略回路図である。また、図6Bは、図6Aの等価回路を示す概略回路図である。図6A及び図6Bに示す例では、分散電源7から逆潮流があり、かつ分岐回路51の通電状態がオンになっている場合を例示している。この場合、特定回路は分岐回路51であり、判定対象は電流計測部201である。
図6Bにおいて、一対の計測点P1,P2間の第1電圧VL1及び一対の計測点P2,P3間の第2電圧VL2は、(9)式及び(10)式により求められる。
VL1=V1+r1×I1−r3×I11 ・・・(9)
VL2=V2+r2×I2+r3×I11 ・・・(10)
ここで、第1電圧計測部111にて計測される第1電圧VL1は、分岐電流I11が中性線43を流れることで生じた電圧降下(r3×I11)によって低下する。また、第2電圧計測部112にて計測される第2電圧VL2は、分岐電流I11が中性線43を流れることによって上昇する。したがって、判定部13は、分岐電流I11の変化と第1電圧VL1の変化との間に相関があると判定し、第1電圧計測部111が電流計測部21と対であると判定する。
このように、本実施形態に係る判定システム2によれば、電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化との間に相関があるか否かによって、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。そして、この判定システム2を電力計測システム1に適用した場合には、電流計測部と電圧計測部との組み合わせを正しく設定することができ、その結果、正しい電力計測を行うことができる。
(2)変形例
本実施形態では、分岐回路51の通電状態がオンになった場合を例として説明しているが、分岐回路52又は分岐回路53の通電状態がオンになっている場合についても同様である。例えば、分岐回路52の通電状態がオンになっている場合には、特定回路は分岐回路52であり、判定対象は電流計測部202である。また、分岐回路53の通電状態がオンになっている場合には、特定回路は分岐回路53であり、判定対象は電流計測部203である。
また、上述の実施形態1の変形例を本実施形態に適用することも可能である。
(まとめ)
以上述べた実施形態から明らかなように、第1の態様に係る判定システム(2)は、複数の電圧計測部(111、112、113)と、少なくとも1つの電流計測部(20、21、22)と、判定部(13)と、を備える。複数の電圧計測部は、複数の電圧系統(81、82、83)の各々における一対の基準電位点(P11、P12、P13)から抵抗成分(R1、R2、R3)を介した一対の計測点(P1、P2、P3)間の電圧(VL1、VL2)を計測する。少なくとも1つの電流計測部は、複数の電圧系統のうち少なくとも1つの電圧系統に電気的に接続された特定回路(主幹回路9、分岐回路5)を流れる電流(I1、I2、I11〜I13)を計測する。判定部13は、少なくとも1つの電流計測部のうちの判定対象となる一の電流計測部が、複数の電圧計測部のうちのいずれの電圧計測部と対になるかを判定する。判定部13は、複数の電圧計測部のうち、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と相関のある電圧の変化が生じている電圧計測部が、一の電流計測部と対になると判定する。
第1の態様によれば、電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化との間に相関があるか否かによって、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。そして、この判定システム(2)を電力計測システム(1)に適用した場合には、電流計測部と電圧計測部との組み合わせを正しく設定することができ、その結果、正しい電力計測を行うことができる。
第2の態様に係る判定システム(2)では、第1の態様において、判定部(13)は、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化と、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化との間に相関があるか否かを判定する。このとき、判定部(13)は、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化量の正負によって判定する。
第2の態様によれば、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化量の正負だけで、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。ただし、この構成は必須ではなく、判定部(13)は、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化量の正負によって、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定するように構成されていなくてもよい。
第3の態様に係る判定システム(2)では、第1又は2の態様において、判定部(13)は、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化と、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化との間に相関があるか否かを判定する。このとき、判定部(13)は、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化量の大きさの相対関係によって判定する。
第3の態様によれば、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化量の大きさの相対関係だけで、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。ただし、この構成は必須ではなく、判定部(13)は、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化量の大きさの相対関係によって、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定するように構成されていなくてもよい。
第4の態様に係る判定システム(2)では、第1〜3のいずれかの態様において、特定回路は、複数の電圧系統に電気的に接続され、複数の電圧系統から供給される電力を複数の分岐回路(5)に分配する主幹回路(9)である。
第4の態様によれば、主幹回路(9)を流れる電流を計測する電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。ただし、この構成は必須ではなく、例えば、特定回路は分岐回路(5)であってもよい。
第5の態様に係る判定システム(2)では、第1〜4のいずれかの態様において、複数の電圧計測部の計測結果に基づく電圧の変化量、及び一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化量は、それぞれ、実効値又は絶対値の平均値である。
第5の態様によれば、実効値又は絶対値の平均値の場合には正の値になるため、上記変化量の大きさのみで相関があるか否かを判定することができる。ただし、この構成は必須ではなく、上記変化量は実効値でなくてもよいし、絶対値の平均値でなくてもよい。
第6の態様に係る判定システム(2)は、第1〜5のいずれかにおいて、電力演算部(14)を更に備える。電力演算部(14)は、一の電流計測部の計測結果、及び複数の電圧計測部のうち一の電流計測部と対になる電圧計測部の計測結果に基づいて特定回路の消費電力と消費電力量との少なくとも一方を演算する。一の電流計測部は電流センサである。判定部(13)は、電力演算部(14)の演算結果の正負によって電流センサの極性を判定する。
第6の態様によれば、電力演算部(14)の演算結果の正負のみで電流センサの極性を判定することができる。ただし、この構成は必須ではなく、判定部(13)は、電力演算部(14)の演算結果の正負によって電流センサの極性を判定するように構成されていなくてもよい。
第7の態様に係る判定システム(2)では、第1〜6のいずれかの態様において、複数の電圧系統は、第1電圧系統(81)と、第2電圧系統(82)と、第3電圧系統(83)と、を含む。第1電圧系統(81)には、第1電圧線(41)及び中性線(43)が電気的に接続される。第2電圧系統(82)には、第2電圧線(42)及び中性線(43)が電気的に接続される。第3電圧系統(83)には、第1電圧線(41)及び第2電圧線(42)が電気的に接続される。複数の電圧計測部は、第1電圧計測部(111)と、第2電圧計測部(112)と、第3電圧計測部(113)と、を含む。第1電圧計測部(111)は、第1電圧系統(81)の第1電圧(VL1)を計測する。第2電圧計測部(112)は、第2電圧系統(82)の第2電圧(VL2)を計測する。第3電圧計測部(113)は、第3電圧系統(83)の第3電圧(VL1+VL2)を計測する。特定回路は、第1電圧系統(81)と第2電圧系統(82)と第3電圧系統(83)とのいずれかから電力が供給される分岐回路(5)である。判定部(13)は、所定条件を満たしている場合に、一の電流計測部と第3電圧計測部(113)とが対になると判定する。所定条件を満たしている場合とは、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と第1電圧(VL1)の変化との間に相関があり、かつ一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と第2電圧(VL2)の変化との間に相関がある場合である。
第7の態様によれば、単相3線式の場合、例えば分岐回路(5)が200V回路であれば、第1電圧(VL1)と第2電圧(VL2)とが同じように変化する。そのため、判定部(13)は、所定条件を満たすことにより、一の電流計測部と第3電圧計測部(113)とが対になると判定することができる。ただし、この構成は必須ではなく、配電方式は単相3線式に限らず、三相4線式であってもよい。
第8の態様に係る判定システム(2)では、第1〜7のいずれかの態様において、抵抗成分は、複数の電圧系統の各々に電気的に接続された電圧線(41、42、43)の抵抗(R1、R2、R3)である。
第8の態様によれば、抵抗成分を新たに追加することなく、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。ただし、この構成は必須ではなく、抵抗成分は、例えば、電圧系統に新たに追加した抵抗器の抵抗であってもよい。
第9の態様に係る判定方法は、電圧計測ステップと、電流計測ステップと、判定ステップと、を備える。電圧計測ステップは、複数の電圧系統(81、82、83)の各々における一対の基準電位点(P11、P12、P13)から抵抗成分(R1、R2、R3)を介した一対の計測点(P1、P2、P3)間の電圧を計測するステップである。電圧計測ステップでは、複数の電圧計測部(111、112、113)の各々にて上記電圧を計測する。電流計測ステップは、複数の電圧系統のうち少なくとも1つの電圧系統に電気的に接続された特定回路(主幹回路9、分岐回路5)を流れる電流を少なくとも1つの電流計測部(20、21、22)にて計測するステップである。判定ステップは、少なくとも1つの電流計測部のうちの判定対象となる一の電流計測部が、複数の電圧計測部のうちのいずれの電圧計測部と対になるかを判定するステップである。この判定方法では、判定ステップにおいて、複数の電圧計測部のうち、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と相関のある電圧の変化が生じている電圧計測部が、一の電流計測部と対である判定する。
第9の態様によれば、専用の計測ユニット等を用いることなく、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。
第10の態様に係るプログラムは、コンピュータに、電圧計測ステップと、電流計測ステップと、判定ステップと、を実行させる。電圧計測ステップは、複数の電圧系統(81、82、83)の各々における一対の基準電位点(P11、P12、P13)から抵抗成分(R1、R2、R3)を介した一対の計測点(P1、P2、P3)間の電圧を計測する。電圧計測ステップでは、複数の電圧計測部(111、112、113)の各々にて上記電圧を計測する。電流計測ステップは、複数の電圧系統のうち少なくとも1つの電圧系統に電気的に接続された特定回路(主幹回路9、分岐回路5)を流れる電流を少なくとも1つの電流計測部(20、21、22)にて計測するステップである。判定ステップは、少なくとも1つの電流計測部のうちの判定対象となる一の電流計測部が、複数の電圧計測部のうちのいずれの電圧計測部と対になるかを判定するステップである。このプログラムでは、判定ステップにおいて、複数の電圧計測部のうち、一の電流計測部の計測結果に基づく電流の変化と相関のある電圧の変化が生じている電圧計測部が、一の電流計測部と対であると判定する。
第10の態様によれば、専用の計測ユニット等を用いることなく、判定対象の電流計測部がいずれの電圧計測部と対になるかを判定することができる。