(実施形態1)
(1.1)全体概要
本実施形態に係る計測システムは、複数の負荷(電気機器)に流れる電流の総和から、複数の負荷の各々に流れる電流を推定するためのシステムである。
計測システム1は、図1に示すように、主接続線20を介して主電源2に電気的に接続され、かつ副接続線30を介して副電源3に電気的に接続される母線40から、複数の負荷5に電力を分配する配電システム50に用いられる。計測システム1は、主計測器11と、副計測器12と、合成部13と、推定部14とを備えている。
主計測器11は、主接続線20を流れる主電流I11,I12を計測する。副計測器12は、副接続線30を流れる副電流I21,I22を計測する。合成部13は、主計測器11及び副計測器12を用いて、主電源2及び副電源3から複数の負荷5に流れる合成電流に相当する合成値を出力する。推定部14は、合成値に基づいて、複数の負荷5のうち1つの負荷5を流れる電流を推定する。
ここでいう「主電源2」は、たとえば系統電源(商用電源)であって、「副電源3」は、たとえば太陽光発電設備等の分散電源である。「母線40」は、本実施形態では分電盤6(図2参照)内において主幹ブレーカ61(図2参照)の二次側端子に電気的に接続された導電バーである。なお、主電源2等の「主」の語、及び副電源3等の「副」の語は、ここでは両者を区別するために用いているに過ぎず、両者の関係性(どちらが主であるか)に技術的な意義を有する趣旨ではない。
ところで、主接続線20を流れる主電流I11,I12を主計測器11にて計測するだけの構成では、たとえば太陽光発電設備等の分散電源(副電源3)を用いた場合に、複数の負荷5の各々に流れる電流の推定精度が低下する可能性がある。つまり分散電源(副電源3)は、分電盤6内において分岐ブレーカ62(図2参照)と同様に導電バー(母線40)に接続された連系ブレーカ63(図2参照)に接続される。この場合、分散電源からの電流は、連系ブレーカ63及び導電バーを通して複数の負荷5へ供給されることで、主幹ブレーカ61に電気的に接続された主接続線20を通らないことがある。その結果、複数の負荷の電流の合計値と主計測器11の計測値(主接続線20を流れる主電流I11,I12)との間にずれが生じて、複数の負荷5の各々に流れる電流の推定精度が低下する可能性がある。
これに対して、本実施形態の計測システム1によれば、推定部14が、主電源2及び副電源3から複数の負荷5に流れる合成電流に相当する合成値に基づいて、複数の負荷5のうち1つの負荷5を流れる電流を推定する。つまり、推定部14では、主電源2から複数の負荷5に流れる電流だけでなく、分散電源からなる副電源3から複数の負荷5に流れる電流も加味して、複数の負荷5の各々に流れる電流を推定することができる。したがって、たとえば太陽光発電設備等の分散電源(副電源3)を用いた住宅等においても、複数の負荷5の電流の合計値と推定に用いられる計測値(合成値)との間にずれが生じにくい。その結果、複数の負荷5の各々に流れる電流の推定精度の向上を図ることができる、という利点がある。
(1.2)詳細説明
以下、本実施形態に係る計測システムについて詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本実施形態では、計測システム1を、需要家施設において複数の負荷5の各々の消費電力を可視化(見える化)するための電力監視システムに適用する場合を例に、計測システム1について説明する。ただし、本実施形態の計測システム1の用途は、電力監視システムに限らず、たとえば負荷5の異常(故障等)を監視する機器監視システムや、負荷5の動作状態から人の行動を監視する見守りシステム、防犯システムなどに計測システム1が用いられてもよい。ここでいう「需要家施設」は、電力の需要家の施設を意味しており、電力会社等の電気事業者から電力の供給を受ける施設を意味する。本実施形態では、電気事業者からだけでなく、太陽光発電設備等の分散電源からも電力の供給を受ける戸建住宅を需要家施設の一例として説明する。
(1.2.1)分電盤
ここではまず、計測システム1に用いられる分電盤6の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、図2に示す分電盤6における母線40、主接続線20、副接続線30、及び複数の負荷5等の電気的な接続関係を概念的に表した図である。
分電盤6は、主接続線20を介して主電源2に電気的に接続され、かつ副接続線30を介して副電源3に電気的に接続される母線40から、複数の負荷5に電力を分配する配電システム50を構成する。本実施形態では、副電源3は太陽電池301とパワーコンディショナ302とで構成された分散電源である。
分電盤6は、交流電力を母線40から複数(図1の例では6つ)の分岐回路51〜56に分配する。本実施形態では、一例として、複数の分岐回路51〜56の各々には負荷5が1つずつ含まれており、複数の分岐回路51〜56が複数の負荷5に一対一に対応する。以下では、複数の分岐回路51〜56をとくに区別しない場合には、複数の分岐回路51〜56の各々を「負荷5」ともいう。ただし、複数の分岐回路51〜56が複数の負荷5に一対一に対応することは計測システム1に必須の構成ではなく、たとえば複数の分岐回路51〜56の各々に1つ以上の負荷5が含まれていてもよい。また、ここでいう「分岐回路」は、負荷5としての各種の機器(照明器具、調理家電など)の他、分岐ブレーカ62、並びに分岐ブレーカ62の二次側端子に接続される配線路、配線器具(アウトレット、壁スイッチなど)を含んでいる。
本実施形態では一例として、単相三線式の配電方式を想定する。この場合、母線40は、第1電圧線(L1相)41と第2電圧線(L2相)42と中性線(N相)43とを有することになる。この場合、第1電圧線41は「第1導体」に相当し、第2電圧線42は「第2導体」に相当し、中性線43は「第3導体」に相当する。つまり、母線40は、互いに電気的に絶縁された第1導体(第1電圧線41)及び第2導体(第2電圧線42)を有している。複数の分岐回路51〜56には、第1電圧線41と第2電圧線42との一方及び中性線43に電気的に接続された「第1分岐回路」と、第1電圧線41及び第2電圧線42に電気的に接続された「第2分岐回路」との2種類が存在する。第1電圧線41又は第2電圧線42と、中性線43との間の電圧が100〔V〕(実効値)であるとすれば、「第1分岐回路」には100〔V〕が印加され、「第2分岐回路」には200〔V〕が印加されることになる。
分電盤6は、図2に示すようにキャビネット60を備えている。キャビネット60には、主幹ブレーカ61と、複数の分岐ブレーカ62と、導電バーからなる母線40(図1参照)とが収納されている。複数の分岐ブレーカ62は、主幹ブレーカ61の二次側端子に母線40を介して電気的に接続される。さらに、キャビネット60には、連系ブレーカ63が収納される。
主幹ブレーカ61の一次側端子611は、L1相、L2相、N相の3線式の主接続線20を介して、主電源2に電気的に接続されている。つまり、主接続線20は、第1主接続線21、第2主接続線22、及び第3主接続線23を有している。主幹ブレーカ61の二次側端子には、上述したように導電バーからなる母線40が電気的に接続されている。第1主接続線21は第1電圧線(L1相)41に電気的に接続され、第2主接続線22は第2電圧線(L2相)42に電気的に接続され、第3主接続線23は中性線(N相)43に電気的に接続される。これにより、母線40には、主接続線20を介して主電源2が電気的に接続される。
複数の分岐ブレーカ62は、母線40に接続されることにより、主幹ブレーカ61の二次側端子に電気的に接続される。ここでは、母線40は、帯状に形成された金属板からなる導電バーにて構成されている。なお、複数の分岐ブレーカ62は、導電バー(母線40)の幅方向の両側(上段と下段)に分かれて、それぞれ複数ずつ配置されている。
ここで、複数の分岐ブレーカ62のうち、「第1分岐回路」である分岐回路51〜54に含まれる分岐ブレーカ62は、第1電圧線41と第2電圧線42との一方及び中性線43に電気的に接続される。また、複数の分岐ブレーカ62のうち、「第2分岐回路」である分岐回路55〜56に含まれる分岐ブレーカ62は、第1電圧線41及び第2電圧線42に電気的に接続される。これにより、「第1分岐回路」となる分岐回路51〜54の各々は、第1電圧線(L1相)41と第2電圧線(L2相)42との一方、及び中性線(N相)43に対して電気的に接続されることになる。また、「第2分岐回路」となる分岐回路55〜56の各々は、第1電圧線(L1相)41及び第2電圧線(L2相)42に対して電気的に接続されることになる。
ここにおいて、100〔V〕用の分岐ブレーカ62、つまり「第1分岐回路」に分類される分岐回路の分岐ブレーカ62は、母線40の上段に取り付けられた状態では、第1電圧線41と中性線43とに対して電気的に接続される。一方、母線40の下段に取り付けられた状態では、100〔V〕用の分岐ブレーカ62は、第2電圧線42と中性線43とに対して電気的に接続される。また、200〔V〕用の分岐ブレーカ62、つまり「第2分岐回路」に分類される分岐回路の分岐ブレーカ62は、母線40の上段、下段に関わらず、第1電圧線41と第2電圧線42とに対して電気的に接続される。
また、連系ブレーカ63は、複数の分岐ブレーカ62と同様に、母線40に接続されることにより、主幹ブレーカ61の二次側端子に電気的に接続される。なお、連系ブレーカ63は、導電バー(母線40)の上段に配置されている。
連系ブレーカ63の二次側端子は、L1相、L2相の2線式の副接続線30を介して、副電源3に電気的に接続されている。つまり、副接続線30は、第1副接続線31、及び第2副接続線32を有している。連系ブレーカ63の一次側端子には、導電バーからなる母線40が電気的に接続されている。第1副接続線31は第1電圧線(L1相)41に電気的に接続され、第2副接続線32は第2電圧線(L2相)42に電気的に接続される。これにより、母線40には、副接続線30を介して副電源3が電気的に接続される。
(1.2.2)計測システムの構成
次に、計測システム1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
本実施形態の計測システム1は、図1に示すように、計測ユニット64と、一対の電流センサ101,102と、サーバ装置7と、表示端末8とを備えている。電流センサ101,102の各々は、主計測器11及び副計測器12として共用されている。本実施形態では、計測ユニット64及び電流センサ101,102は、分電盤6のキャビネット60に収納されている。
計測ユニット64は、計測システム1の構成要素のうち合成部(第1の合成部131及び第2の合成部132)13としての機能を有している。さらに、計測ユニット64は、処理部15及び通信部16を有している。
計測ユニット64には、一対の電流センサ101,102の各々が電気的に接続されている。電流センサ101,102の各々は、貫通孔10を有し、貫通孔10を貫通する導体に流れる電流に応じた電気信号を出力するように構成されている。本実施形態では一例として、電流センサ101,102の各々はCT(Current Transformer)センサからなる。
本実施形態では、電流センサ101,102の各々は、貫通孔10に主接続線20及び副接続線30の両方が貫通した状態で使用される。要するに、本実施形態では、電流センサ101,102にて、主電源2及び副電源3から複数の負荷5に流れる合成電流を計測する。そのため、電流センサ101,102は、主電源2から複数の負荷5に流れる電流を計測する主計測器11、及び副電源3から複数の負荷5に流れる電流を計測する副計測器12として共用される。
さらに詳しく説明すると、本実施形態では、3極の母線40のうち、L1相の第1電圧線41を流れる電流は電流センサ101で計測し、L2相の第2電圧線42を流れる電流は電流センサ102が計測する。つまり、第1主接続線21及び第1副接続線31が電流センサ101の貫通孔10を貫通するように、電流センサ101が第1主接続線21及び第1副接続線31に取り付けられる。同様に、第2主接続線22及び第2副接続線32が電流センサ102の貫通孔10を貫通するように、電流センサ102が第2主接続線22及び第2副接続線32に取り付けられる。
言い換えれば、主計測器11は、一対の電流センサ101,102を有しており、一方の電流センサ101が第1センサに相当し、他方の電流センサ102が第2センサに相当する。ここでいう第1センサは、(主接続線20を流れる)主電流のうち第1導体(第1電圧線41)を流れる第1電流I11に応じた電気信号を出力し、第2センサは、主電流のうち第2導体(第2電圧線42)を流れる第2電流I12に応じた電気信号を出力する。同様に、副計測器12は、一対の電流センサ101,102を有しており、一方の電流センサ101が第3センサに相当し、他方の電流センサ102が第4センサに相当する。ここでいう第3センサは、(副接続線30を流れる)副電流のうち第1導体(第1電圧線41)を流れる第3電流I21に応じた電気信号を出力し、第4センサは、副電流のうち第2導体(第2電圧線42)を流れる第4電流I22に応じた電気信号を出力する。
なお、本実施形態において、第1副接続線31を流れる第3電流I21と、第2副接続線32を流れる第4電流I22とは、大きさ(絶対値)が同じでかつ逆極性の関係にある。
合成部13は、一対の出力端子133,134を有している。貫通孔10に主接続線20及び副接続線30の両方が貫通した状態の電流センサ101,102が、一対の出力端子133,134間に電気的に接続される。合成部13は、電流センサ101,102の出力を用いて合成値を出力するように構成されている。すなわち、本実施形態では、貫通孔10に主接続線20及び副接続線30の両方が貫通した状態の電流センサ101,102を用いることで、電流センサ101,102が主計測器11及び副計測器12として共用されている。そのため、一対の出力端子133,134間に電流センサ101,102が電気的に接続されるだけで、合成部13は、主計測器11及び副計測器12を用いて、主電源2及び副電源3から複数の負荷5に流れる合成電流に相当する合成値を出力することになる。
本実施形態では、一対の電流センサ101,102に合わせて、計測ユニット64には、合成部13として第1の合成部131及び第2の合成部132が設けられている。一対の出力端子133,134は、第1の合成部131及び第2の合成部132の各々に設けられている。ここで、第1の合成部131の出力端子133,134には、電流センサ101が電気的に接続され、第2の合成部132の出力端子133,134には、電流センサ102が電気的に接続される。
また、第1の合成部131及び第2の合成部132の各々は、一対の出力端子133,134間に電気的に接続された抵抗135を有している。そのため、第1の合成部131は、電流センサ101の出力(計測値)に相当する大きさの電圧を、抵抗135の両端電圧として出力することになる。第2の合成部132は、電流センサ102の出力(計測値)に相当する大きさの電圧を、抵抗135の両端電圧として出力することになる。
言い換えれば、第1の合成部131は、電流センサ101の出力を用いて合成値を出力することになる。第1の合成部131が出力する合成値は、第1電圧線41に流れる電流であって、主電源2からの電流I11と副電源3からの電流I21との合成電流(I11+I21)に相当する。第2の合成部132は、電流センサ102の出力を用いて合成値を出力することになる。第2の合成部132が出力する合成値は、第2電圧線42に流れる電流であって、主電源2からの電流I12と副電源3からの電流I22との合成電流(I12+I22)に相当する。これにより、第1の合成部131からは、第1電圧線41に流れる合成電流(I11+I21)に相当する合成値が出力され、第2の合成部132からは、第2電圧線42に流れる合成電流(I12+I22)に相当する合成値が出力される。第1の合成部131及び第2の合成部132から出力される合成値は、処理部15に出力される。
つまり、第1の合成部131から出力される合成値、及び第2の合成部132から出力される合成値からは、第1電圧線(L1相)41及び第2電圧線(L2相)42を通して、主電源2及び副電源3から複数の負荷5に流れる合計電流が求まることになる。このように、本実施形態では、主電源2と副電源3とを1つの電源とみなし、この電源(主電源2と副電源3)から複数の負荷5に供給される総電流を、合成部13の出力から求めることができる。
処理部15は、第1の合成部131から出力される合成値と、第2の合成部132から出力される合成値とを用いて、主電源2及び副電源3から複数の負荷5に流れる合成電流の電流波形を表す波形データを求める。処理部15で求まる波形データは、第1電圧線(L1相)41及び第2電圧線(L2相)42を通して、主電源2及び副電源3から複数の負荷5に流れる総電流の電流波形を表している。処理部15は、たとえばマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、マイコンのメモリに記録されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することにより、種々の機能を実現する。プログラムは、予めマイコンのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。処理部15で求められた波形データは、通信部16に出力される。
通信部16は、ルータを介してインターネットなどのネットワーク9に接続されている。通信部16は、処理部15から入力された波形データを、ネットワーク9を介してサーバ装置7へ送信する機能を有している。
サーバ装置7は、計測システム1を用いた電力監視システムを運営する運営会社等に設けられている。サーバ装置7は、ネットワーク9に接続されている。サーバ装置7には、計測システム1の構成要素のうち推定部14としての機能が設けられている。さらに、サーバ装置7は、ネットワーク9を介して計測ユニット64と通信する通信部71を有している。サーバ装置7は、メモリに記録されたプログラムをCPUで実行することにより、推定部14としての機能を実現する。プログラムは、予めサーバ装置7のメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。
サーバ装置7は、通信部71にて計測ユニット64から、合成値を表す波形データを受信する。サーバ装置7は、推定部14にて、波形データ(合成値)に基づいて複数の負荷5のうち1つの負荷5を流れる電流を推定する。つまり、推定部14は、NILMにより、波形データから複数の負荷5の各々の電流波形を抽出(分離)する。
さらに、本実施形態では、計測システム1は、需要家施設において複数の負荷5の各々の消費電力を可視化するための電力監視システムに適用されている。そのため、サーバ装置7は、推定部14で推定された複数の負荷5の各々の電流に基づいて、複数の負荷5の各々の消費電力を算出する。サーバ装置7で算出された複数の負荷5の各々の消費電力を表す電力データは、通信部71からネットワーク9を介して表示端末8に送信される。
表示端末8は、需要家施設のユーザ(住人)によって管理されるスマートフォンやタブレット端末のような汎用の表示端末である。表示端末8は、ネットワーク9に接続されており、サーバ装置7から提供されるコンテンツ等を表示可能に構成される。表示端末8は、たとえばサーバ装置7から送信される電力データを受信することにより、需要家施設における複数の負荷5の各々の消費電力を、需要家施設のユーザに通知することができる。
なお、計測ユニット64は、分電盤6の外部に設けられたコントローラと通信を行い、計測ユニット64で得られた計測値をコントローラへ送信する通信アダプタとしての機能を有していてもよい。ここでいうコントローラは、HEMS(Home Energy Management System)コントローラであって、計測値を表示端末8へ表示したり、計測値に基づいて(HEMS対応)機器を制御したりすることができる。
ところで、本実施形態では、主電源2と副電源3とを1つの電源とみなし、この電源(主電源2と副電源3)から複数の負荷5に供給される総電流(合成電流)に相当する合成値が、合成部13から出力されている。そのため、合成部13の出力においては、主電源2からの電流と副電源3からの電流とが混合している。そこで、たとえば副電源3の出力電力(発電電力)を監視する場合などには、主電源2からの電流と副電源3からの電流とに分離する必要がある。この場合、電流センサ101,102とは別に、副電源3からの電流のみを計測するための電流センサを副接続線30に取り付ければよい。ただし、本実施形態では、副電源3におけるパワーコンディショナ302に電流センサからなる内蔵センサ321が設けられているため、別途電流センサを設ける必要がない。すなわち、パワーコンディショナ302が内蔵センサ321の出力を用いて副電源3からの出力電流を計測し、計測結果を計測ユニット64に送信することにより、別途の電流センサは不要になる。
(1.2.3)計測システムの施工方法
次に、上述した構成の計測システム1を施工する方法について簡単に説明する。
この計測システム1の施工方法では、施工者は、電流センサ101,102の貫通孔10に主接続線20及び副接続線30の両方を貫通させる。具体的には、施工者は、電流センサ101の貫通孔10に第1主接続線21及び第1副接続線31を一緒に通すことにより、電流センサ101の貫通孔10に主接続線20及び副接続線30の両方が貫通した状態とする。また、施工者は、電流センサ102の貫通孔10に第2主接続線22及び第2副接続線32を一緒に通すことにより、電流センサ102の貫通孔10に主接続線20及び副接続線30の両方が貫通した状態とする。
ここで、電流センサ101の貫通孔10を貫通する第1主接続線21及び第1副接続線31については、母線(第1電圧線41)40との接続点を下流側とした場合の向き(どちらが下流か)を揃えた状態で、貫通孔10を貫通する。また、電流センサ102の貫通孔10を貫通する第2主接続線22及び第2副接続線32については、母線(第2電圧線42)40との接続点を下流側とした場合の向き(どちらが下流か)を揃えた状態で、貫通孔10を貫通する。
(1.3)効果
以上説明した本実施形態の計測システム1によれば、合成部13は、主計測器11及び副計測器12を用いて、主電源2及び副電源3から複数の負荷5に流れる合成電流に相当する合成値を出力する。推定部14は、合成値に基づいて、複数の負荷5のうち1つの負荷5を流れる電流を推定する。すなわち、推定部14では、主電源2から複数の負荷5に流れる電流だけでなく、分散電源からなる副電源3から複数の負荷5に流れる電流も加味して、複数の負荷5の各々に流れる電流を推定することができる。したがって、たとえば太陽光発電設備等の分散電源(副電源3)を用いた住宅等においても、複数の負荷5の電流の合計値と推定に用いられる計測値(合成値)との間にずれが生じにくい。その結果、複数の負荷5の各々に流れる電流の推定精度の向上を図ることができる、という利点がある。
また、本実施形態のように、貫通孔10を有し貫通孔10を貫通する導体に流れる電流に応じた電気信号を出力する電流センサ101,102が、主計測器11及び副計測器12として共用されていることが好ましい。この場合に、合成部13は、一対の出力端子133,134を有し、貫通孔10に主接続線20及び副接続線30の両方が貫通した状態の電流センサ101,102が一対の出力端子133,134間に電気的に接続されることが好ましい。これにより、合成部13は、電流センサ101,102の出力を用いて合成値を出力するように構成される。この構成によれば、合成部13は、電流センサ101,102を主計測器11及び副計測器12として共用することにより、演算を行うことなく、比較的簡単な構成で合成値を求めることができる。しかも、主計測器11としての電流センサ101,102に対して、副計測器12としての電流センサを追加することなく、合成値を求めることができるので、構成部品の増加を抑えることができる。
また、本実施形態のように、母線40が、互いに電気的に絶縁された第1導体(第1電圧線41)及び第2導体(第2電圧線42)を有し、主計測器11は、第1センサ(電流センサ101)と、第2センサ(電流センサ102)とを有することが好ましい。第1センサは、主電流のうち第1導体(第1電圧線41)を流れる第1電流I11に応じた電気信号を出力し、第2センサは、主電流のうち第2導体(第2電圧線42)を流れる第2電流I12に応じた電気信号を出力する。この構成によれば、たとえば単相三線式のように、母線40が3本(3線)以上の場合でも、主計測器11は、主接続線20を通して複数の負荷5に流れる主電流を漏れなく計測することができる。
この場合において、本実施形態のように、副計測器12は、第3センサ(電流センサ101)と、第4センサ(電流センサ102)とを有することが好ましい。第3センサは、副電流のうち第1導体(第1電圧線41)を流れる第3電流I21に応じた電気信号を出力し、第4センサは、副電流のうち第2導体(第2電圧線42)を流れる第4電流I22に応じた電気信号を出力する。この構成によれば、たとえば単相三線式のように、母線40が3本(3線)以上の場合でも、副計測器12は、副接続線30を通して複数の負荷5に流れる副電流を漏れなく計測することができる。
また、本実施形態のように、分電盤6は、計測システム1に用いられ、母線40、主計測器11、及び副計測器12を収納するキャビネット60を備えることが好ましい。この構成の分電盤6によれば、主電源2から複数の負荷5に流れる電流だけでなく、分散電源からなる副電源3から複数の負荷5に流れる電流も加味して、複数の負荷5の各々に流れる電流を推定することができる。したがって、たとえば太陽光発電設備等の分散電源(副電源3)を用いた住宅等においても、複数の負荷5の電流の合計値と推定に用いられる計測値(合成値)との間にずれが生じにくい。その結果、複数の負荷5の各々に流れる電流の推定精度の向上を図ることができる、という利点がある。ただし、この構成は計測システム1に必須の構成ではなく、分電盤6を用いずに構成された配電システム50に、計測システム1が適用されてもよい。
また、本実施形態のように、計測システム1の施工方法として、電流センサ101,102の貫通孔10に、主接続線20及び副接続線30の両方を貫通させることが好ましい。この方法によれば、合成部13は、電流センサ101,102を主計測器11及び副計測器12として共用することにより、演算を行うことなく、比較的簡単な構成で合成値を求めることができる。
(1.4)変形例
以下に、実施形態1の変形例を列挙する。
電流センサ101,102の各々は、CTセンサに限らず、たとえばホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗などを用いて構成されていてもよい。また、電流センサ101,102の各々は、コアを用いない(コアレスの)空芯コイルからなり、貫通孔10内を通過する電流に応じた出力を生じるロゴスキコイルであってもよい。
また、主電源2及び副電源3と母線40との接続形態は、主幹ブレーカ61の二次側端子に副電源3が電気的に接続される二次送り連系に限らず、主幹ブレーカ61の一次側端子に副電源3が電気的に接続される一次送り連系であってもよい。いずれの場合でも、母線40には、主接続線20を介して主電源2が電気的に接続され、かつ副接続線30を介して副電源3が電気的に接続されることになる。
また、実施形態1では、戸建住宅を需要家施設の一例として説明しているが、この例に限らず、需要家施設は、集合住宅の各住戸などの戸建住宅以外の住宅、または事務所、店舗等の被住宅であってもよい。
さらに、配電システム50の配電方式は単相三線式に限らず、たとえば単相二線式や三相三線式などであってもよい。単相二線式であれば、電流センサ101,102のいずれか一方を省略可能である。つまり、主計測器11が第1センサ(電流センサ101)と第2センサ(電流センサ102)との両方を有することは、計測システム1に必須の構成ではなく、第1センサと第2センサとの一方が省略されていてもよい。また、副計測器12が第3センサ(電流センサ101)と第4センサ(電流センサ102)との両方を有することは、計測システム1に必須の構成ではなく、第3センサと第4センサとの一方が省略されていてもよい。
また、計測システム1の構成要素の配置は、上述した構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、合成部13及び推定部14の両方が1つの装置(たとえば計測ユニット64)に一体的に設けられ、分電盤6のキャビネット60内に収納されていてもよい。合成部13及び推定部14の両方がキャビネット60の外側に設けられていてもよい。すなわち、計測システム1の構成要素は全て分電盤6に配置されている必要はなく、たとえば合成部13及び推定部14の両方がキャビネット60の外側にあるサーバ装置7に設けられていてもよい。また、サーバ装置7のような1つの装置に限らず、クラウド(クラウドコンピューティング)のように分散して存在するコンピュータによって、合成部13及び推定部14の少なくとも一方が実現されていてもよい。合成部13のみがキャビネット60の外側に設けられていてもよい。さらに、主計測器11及び副計測器12がキャビネット60の外側に設けられていてもよい。
また、処理部15が合成電流の電流波形を表す波形データを求めることは、計測システム1に必須の構成ではない。たとえば、処理部15が合成電流の大きさ(実効値等)を表すデータを求める構成であってもよい。または、処理部15が省略され、合成部13から出力される合成値が推定部14に直接的に入力され、推定部14での電流の推定に用いられてもよい。
また、サーバ装置7から表示端末8に送信される電力データは、消費電力(瞬時値)に限らず消費電力量(積算値)などを表すデータであってもよい。また、電力データは、消費電力と消費電力量との両方を表すデータであってもよい。
(実施形態2)
(2.1)構成
本実施形態の計測システム1は、図3に示すように、合成部13は、主計測器11の計測値及び副計測器12の計測値について、演算処理を行うことにより、合成値を算出するように構成されている点で、実施形態1の計測システムと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
実施形態1では電流センサ101,102が、主計測器11及び副計測器12として共用されているのに対し、本実施形態では、主計測器11として電流センサ103,104が用いられ、副計測器12として電流センサ105が用いられている。すなわち、本実施形態では、主計測器11としての電流センサ103,104と、副計測器12としての電流センサ105とは別々に設けられている。
ここで、第1主接続線21が電流センサ103の貫通孔10を貫通するように、第1主接続線21には電流センサ103が取り付けられている。また、第2主接続線22が電流センサ104の貫通孔10を貫通するように、第2主接続線22には電流センサ104が取り付けられている。言い換えれば、主計測器11は、一対の電流センサ103,104を有しており、一方の電流センサ103が第1センサに相当し、他方の電流センサ104が第2センサに相当する。また、第1副接続線31が電流センサ105の貫通孔10を貫通するように、第1副接続線31には電流センサ105が取り付けられている。
合成部13は、主計測器(電流センサ103,104)11の計測値及び副計測器(電流センサ105)12の計測値について、加算と減算との少なくとも一方の演算処理を行うことにより、合成値を算出する。本実施形態では、合成部13は、一対の加算回路136,137を有している。加算回路136は、電流センサ103から出力される電気信号(アナログ信号)と、電流センサ105から出力される電気信号(アナログ信号)とを加算する。加算回路137は、電流センサ104から出力される電気信号(アナログ信号)と、電流センサ105から出力される電気信号(アナログ信号)とを加算する。
合成部13は、加算回路136にて、主計測器(電流センサ103)11の計測値及び副計測器(電流センサ105)12の計測値の加算を行い、合成値を算出する。つまり、加算回路136が出力する合成値は、第1電圧線41に流れる電流であって、主電源2からの電流I11と副電源3からの電流I21との合成電流(I11+I21)に相当する。また、合成部13は、加算回路137にて、主計測器(電流センサ104)11の計測値及び副計測器(電流センサ105)12の計測値の加算を行い、合成値を算出する。つまり、加算回路137が出力する合成値は、第2電圧線42に流れる電流であって、主電源2からの電流I12と副電源3からの電流I22との合成電流(I12+I22)に相当する。加算回路136,137から出力される合成値は、処理部15に出力される。
また、本実施形態では、合成部13は、加算回路136,137にて主計測器11の計測値及び副計測値12の計測値の加算を行っているが、副計測値12の極性が逆であれば、合成部13は、主計測器11の計測値から副計測器12の計測値の減算を行う。すなわち、副接続線30に対する電流センサ105の取り付けの向きが本実施形態と逆の場合、合成部13は、減算回路を有し、主計測器11の計測値から副計測器12の計測値の減算を行って合成値を算出することになる。
なお、本実施形態において、第1副接続線31を流れる第3電流I21と、第2副接続線32を流れる第4電流I22とは、大きさ(絶対値)が同じでかつ逆極性の関係にある。そのため、副計測器12として設けられた電流センサ105を、第3電流I21及び第4電流I22の計測に共用しているが、第3電流I21及び第4電流I22の各々を計測する電流センサが別々に設けられていてもよい。
(2.2)効果
以上説明した本実施形態の計測システム1によれば、合成部13は、主計測器11の計測値及び副計測器12の計測値について、加算と減算との少なくとも一方の演算処理を行うことにより、合成値を算出するように構成されている。この構成によれば、合成部13は、電流センサ101,102を主計測器11及び副計測器12として共用することなく、演算処理によって、合成値を求めることができる。したがって、電流センサ101,102の貫通孔10に主接続線20及び副接続線30の両方が貫通するように主接続線20及び副接続線30を引き回す必要がなく、配線作業が簡単になる。
(2.3)変形例
実施形態2の変形例として、図4に示すように、合成部13は、主計測器11の計測値及び副計測器12の計測値をデジタル値に変換するAD変換部138と、デジタル値について演算処理を行うことにより合成値を求める演算部139とを有していてもよい。なお、図4に示す例では、処理部の機能は演算部139に含まれている。
本変形例によれば、演算部139は、電流センサ103,104及び電流センサ105から出力される電気信号(アナログ信号)に直接的に演算処理を施すのではなく、デジタル値に変換後に演算処理を施すことになる。したがって、合成部13での演算処理が簡単になる。
その他の構成及び機能は実施形態1と同様である。なお、本実施形態で説明した構成は、実施形態1の変形例とも、適宜組み合わせて適用可能である。
(実施形態3)
(3.1)構成
本実施形態の計測システム1は、図5に示すように、合成部13が、一対の出力端子133,134間に電気的に直列に接続された主計測器11及び副計測器12の計測値を用いて合成値を出力するように構成されている点で、実施形態1の計測システムと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
実施形態1では電流センサ101,102が、主計測器11及び副計測器12として共用されているのに対し、本実施形態では、主計測器11として電流センサ106,107が用いられ、副計測器12として電流センサ108,109が用いられている。すなわち、本実施形態では、主計測器11としての電流センサ106,107と、副計測器12としての電流センサ108,109とは別々に設けられている。
ここで、第1主接続線21が電流センサ106の貫通孔10を貫通するように、第1主接続線21には電流センサ106が取り付けられている。また、第2主接続線22が電流センサ107の貫通孔10を貫通するように、第2主接続線22には電流センサ107が取り付けられている。言い換えれば、主計測器11は、一対の電流センサ106,107を有しており、一方の電流センサ106が第1センサに相当し、他方の電流センサ107が第2センサに相当する。また、第1副接続線31が電流センサ108の貫通孔10を貫通するように、第1副接続線31には電流センサ108が取り付けられている。また、第2副接続線32が電流センサ109の貫通孔10を貫通するように、第2副接続線32には電流センサ109が取り付けられている。言い換えれば、副計測器12は、一対の電流センサ108,109を有しており、一方の電流センサ108が第3センサに相当し、他方の電流センサ109が第4センサに相当する。
ここで、電流センサ106〜109は、同一特性の電流センサであると仮定する。
合成部13は、一対の出力端子133,134を有している。一対の出力端子133,134間には、主計測器11及び副計測器12が電気的に直列に接続されている。具体的には、第1の合成部131の出力端子133,134には、電流センサ106及び電流センサ108が電気的に直列に接続されている。第2の合成部132の出力端子133,134には、電流センサ107及び電流センサ109が電気的に直列に接続されている。
そのため、第1の合成部131は、電流センサ106,108の出力を用いて合成値を出力することになる。第1の合成部131が出力する合成値は、第1電圧線41に流れる電流であって、主電源2からの電流I11と副電源3からの電流I21との合成電流(I11+I21)に相当する。第2の合成部132は、電流センサ107,109の出力を用いて合成値を出力することになる。第2の合成部132が出力する合成値は、第2電圧線42に流れる電流であって、主電源2からの電流I12と副電源3からの電流I22との合成電流(I12+I22)に相当する。これにより、第1の合成部131からは、第1電圧線41に流れる合成電流(I11+I21)に相当する合成値が出力され、第2の合成部132からは、第2電圧線42に流れる合成電流(I12+I22)に相当する合成値が出力される。第1の合成部131及び第2の合成部132から出力される合成値は、処理部15に出力される。
なお、直列に接続される一対の電流センサ106,108の極性(向き)が逆であれば、合成部13から出力される値は(I11−I21)となるので、接続時、一対の電流センサ106,108の向きには留意する。
(3.2)効果
以上説明した本実施形態の計測システム1によれば、合成部13は、一対の出力端子133,134を有し、一対の出力端子133,134間に電気的に直列に接続された主計測器11及び副計測器12の計測値を用いて合成値を出力するように構成されている。この構成によれば、合成部13は、主計測器11及び副計測器12の接続関係を利用することにより、演算を行うことなく、比較的簡単な構成で合成値を求めることができる。
その他の構成及び機能は実施形態1と同様である。なお、本実施形態で説明した構成は、実施形態1の変形例とも、適宜組み合わせて適用可能である。