本実施形態の異常判定システムは、図1に示すように、検知部21と、計測部11と、判定部14と、を備えている。検知部21は、地震の発生を検知する。計測部11は、需要家施設における漏電電流I4を計測する。判定部14は、計測部11の計測結果に基づいて需要家施設における電気の使用状態が正常か否かを判定する。判定部14は、第1漏電電流と第2漏電電流との比較結果から電気の使用状態が正常か否かを判定する。第1漏電電流は、検知部21で地震が検知される前に計測部11で計測された漏電電流I4である。第2漏電電流は、検知部21で地震が検知された後に計測部11で計測された漏電電流I4である。
本実施形態の遮断システムは、図1に示すように、分電盤10と、上述の異常判定システムと、を備えている。分電盤10は、電力線5に電気的に接続された主幹ブレーカ3を介して電力線5からの電力を複数の分岐回路4A〜4Fに分配する。判定部14は、電気の使用状態を異常と判定した場合、主幹ブレーカ3又は複数の分岐回路4A〜4Fのうち対象の分岐回路4に含まれる分岐ブレーカを遮断する。
本実施形態の分電盤10は、上述の遮断システムに用いられる。
以下、本実施形態の異常判定システム、遮断システム、及び分電盤10について図面を参照して具体的に説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は下記の実施形態に限定されない。したがって、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本実施形態の異常判定システムは、需要家施設100において地震に伴う電気事故等の異常の有無を判定するためのシステムである。この異常判定システムは、例えば分電盤10とともに用いられて、地震に伴う電気事故が発生した際に後述の主幹ブレーカ3、又は複数の分岐回路4A〜4Fのうち対象の分岐回路4を遮断する遮断システムを構成する。ここでいう「需要家施設100」は、電力の需要家の施設を意味しており、電力会社等の電気事業者(電力供給業者)から電力の供給を受ける施設だけでなく、太陽光発電設備等の自家発電設備から電力の供給を受ける施設も含む。本実施形態では、戸建住宅を需要家施設100の一例として説明する。
まず、分電盤10について説明する。分電盤10は、例えば単相三線式の配電方式であれば、図1に示すように、第1電圧線(L1相)51と第2電圧線(L2相)52と中性線(N相)53とを有する電力線5に電気的に接続される。そして、分電盤10は、電力線5からの交流電力を複数(本実施形態では6つ)の分岐回路4A〜4Fに分配する。なお、以下では、複数の分岐回路4A〜4Fをとくに区別しない場合には、複数の分岐回路4A〜4Fの各々を「分岐回路4」ともいう。ここでいう「分岐回路」は、分岐ブレーカ、並びに分岐ブレーカの二次側に接続される配線路、配線器具(アウトレット、壁スイッチなど)、及び各種の機器(照明器具、調理家電など)を含んでいる。
本実施形態の分電盤10は、図1に示すように、計測ユニット1と、感震ユニット2と、主幹ブレーカ3と、複数(本実施形態では6つ)の分岐回路4A〜4Fと、複数(本実施形態では8つ)の電流センサ6A,6B,7A〜7Fと、を備えている。
主幹ブレーカ3の一次側端子は、3線式(第1電圧線51、第2電圧線52、及び中性線53)の電力線5を介して、系統電源に電気的に接続されている。主幹ブレーカ3の二次側端子には、L1相、L2相、N相の3極の導電バーが接続されている。これら3極の導電バーは、第1電圧線(L1相)51、第2電圧線(L2相)52、及び中性線(N相)53と一対一に電気的に接続される。
また、主幹ブレーカ3は、接点部31と、遮断部32と、漏電検出部33と、を備えている。接点部31は、第1電圧線51、第2電圧線52、及び中性線53にそれぞれ挿入された3つの接点を有し、遮断部32からの開信号により3つの接点が開くように構成されている。また、接点部31は、主幹ブレーカ3の筐体の前面側に設けられたハンドルを操作することによっても接点が開閉するように構成されている。遮断部32は、感震ユニット2の遮断判定部22(後述する)から出力される遮断信号S1(図2A参照)に応じて接点部31を開く開信号を生成し、生成した開信号を接点部31に出力する。漏電検出部33は、例えば零相変流器(ZCT)を有し、電力線5に流れる漏電電流I4を検出する。そして、漏電検出部33は、電力線5に流れる漏電電流I4を検出すると、検出結果を遮断部32、及び計測ユニット1の計測部11(後述する)に出力する。したがって、遮断部32は、感震ユニット2の遮断判定部22からの遮断信号S1が入力されなくても、漏電検出部33で検出された漏電電流I4の大きさが所定値(例えば、30mA)以上になると開信号を接点部31に出力する。
複数の分岐回路4の各々は、分岐ブレーカを有している。分岐ブレーカは、導電バーに接続されることにより、主幹ブレーカ3の二次側端子に電気的に接続される。
計測ユニット1は、計測部11と、演算部12と、記憶部13と、判定部14と、報知部15と、を備えている。
計測部11には、一対の(主幹用)電流センサ6A,6B、及び複数の(分岐用)の電流センサ7A〜7Fが電気的に接続されている。また、計測部11には、主幹ブレーカ3に内蔵された漏電検出部33が電気的に接続されている。一対の電流センサ6A,6Bは、第1電圧線51及び第2電圧線52に一対一に対応して設けられている。また、複数の電流センサ7A〜7Fは、複数の分岐回路4A〜4Fに一対一に対応して設けられている。これにより、計測部11では、電流センサ6Aの出力から、第1電圧線51を流れる第1主幹電流I1が計測可能であり、電流センサ6Bの出力から、第2電圧線52を流れる第2主幹電流I2が計測可能である。また、計測部11では、複数の電流センサ7A〜7Fの出力から、複数の分岐回路4A〜4Fを流れる分岐電流I31〜I36をそれぞれ計測可能である。さらに、計測部11では、漏電検出部33の出力から、漏電電流I4を計測可能である。本実施形態において、計測部11は、上述の第1主幹電流I1、第2主幹電流I2、分岐電流I31〜I36、及び漏電電流I4を定期的に計測する。
ここで、電流センサ6A,6B,7A〜7Fとしては、例えばCT(Current Transformer)センサ、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗などが用いられる。本実施形態では一例として、電流センサ6A,6Bの各々はCTセンサからなる。一方、複数の電流センサ7A〜7Fの各々は、コアを用いない(コアレスの)空芯コイルからなり、貫通孔内を通過する電流に応じた出力を生じるロゴスキコイルである。
演算部12は、計測部11と電気的に接続されており、計測部11の計測結果を用いて、複数の分岐回路4の各々について、消費電力と消費電力量との少なくとも一方を計測値として計測する。計測値は、瞬時電力を表す消費電力であってもよいし、一定時間における電力の消費量(使用量)を表す消費電力量であってもよい。また、計測値は、消費電力と消費電力量との両方であってもよい。本実施形態では一例として、計測値は、消費電力を一定時間(例えば1分間)積算した消費電力量であることとする。
演算部12は、電力線(第1電圧線51、第2電圧線52、及び中性線53)5の線間電圧を監視している。演算部12は、例えばマイクロコンピュータを主構成とし、線間電圧と分岐電流I31〜I36とを用いて演算することにより、計測値を求める。なお、演算部12は、複数の分岐回路4の各々についての計測値だけでなく、需要家施設100の総消費電力量を計測値として求める構成であってもよい。
記憶部13は、複数の分岐回路4の各々に対応付けられた回路名を記憶する。本実施形態では、記憶部13は、分岐回路4Aの回路名として「電気ストーブ」を記憶し、分岐回路4Bの回路名として「テレビ」を記憶している。また、記憶部13は、分岐回路4Cの回路名として「照明」を記憶し、分岐回路4Eの回路名として「エアコン」を記憶している。さらに、記憶部13は、複数の分岐回路4の各々の電圧区分(印加電圧が100〔V〕か200〔V〕かを表す情報)についても記憶している。本実施形態では、記憶部13は、分岐回路4A〜4Dと100〔V〕の電圧区分とを対応付けて記憶し、分岐回路4E,4Fと200〔V〕の電圧区分とを対応付けて記憶している。また、記憶部13は、計測部11において定期的に計測される第1主幹電流I1、第2主幹電流I2、分岐電流I31〜I36、及び漏電電流I4についても記憶している。なお、以下の説明では、分岐回路4D,4Fに負荷が接続されていないこととする。
記憶部13は、演算部12と電気的に接続されている。演算部12では、記憶部13に記憶されている電圧区分に応じて演算結果を補正することで、計測値を精度よく求めることができる。ここに、本実施形態では、感震ユニット2の検知部21(後述する)で地震が検知される前に計測部11で計測される漏電電流I4が第1漏電電流である。また、本実施形態では、検知部21で地震が検知された後に計測部11で計測された漏電電流I4が第2漏電電流である。
判定部14は、記憶部13と電気的に接続されており、記憶部13に記憶されている第1漏電電流と第2漏電電流との比較結果から需要家施設100における電気の使用状態が正常か否かを判定する。具体的には、判定部14は、第1漏電電流と第2漏電電流との差分を求め、この差分が規定値(例えば、15mA)以上の場合、電気の使用状態を異常と判定する。すなわち、判定部14は、検知部21で地震が検知された後に計測された第2漏電電流と、検知部21で地震が検知される前に計測された第1漏電電流との差分が規定値以上の場合、電気の使用状態を異常と判定する。
判定部14は、例えばマイクロコンピュータを主構成とし、マイクロコンピュータのメモリに記録されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサで実行することにより、種々の機能を実現する。プログラムは、予めマイクロコンピュータのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。なお、判定部14の判定処理については後述する。
報知部15は、例えばスピーカ及びブザーを有しており、判定部14の判定結果を音声で報知したり、ブザーを鳴動させて報知したりする。これにより、判定部14の判定結果をユーザに知らせることができる。
感震ユニット2は、図1に示すように、検知部21と、遮断判定部22と、を備えている。
検知部21は、加速度センサを用いて構成されており、感震ユニット2に加わった加速度に基づいて揺れの大きさ(震度)を検知する。つまり、検知部21は、地震の発生時に揺れの大きさを計測するように構成されており、感震ユニット2の揺れの大きさを監視することで地震の発生を検知する。検知部21は、検知した揺れの大きさを、例えば「レベル1」〜「レベル10」の10段階で表し、検知結果として遮断判定部22に出力するように構成されている。
遮断判定部22は、検知部21で検知された揺れの大きさ(震度)を、予め設定されている所定震度(例えば、震度5)と比較する。そして、遮断判定部22は、検知部21で検知された揺れの大きさが所定震度以上であれば、遮断信号S1を遮断部32に出力する。遮断部32は、この遮断信号S1に従って接点部31を開き、主幹ブレーカ3を遮断する。なお、所定震度は、上述した「レベル1」〜「レベル10」の10段階の揺れの大きさから選択され、例えば分電盤10の出荷前に設定される。
また、遮断判定部22は、図1に示すように、上述の判定部14に電気的に接続されており、判定部14の判定結果に応じて主幹ブレーカ3を遮断することもできる。例えば、遮断判定部22は、検知部21の検知結果から地震の発生を検知すると、地震の発生を検知したことを表す検知信号を判定部14に出力する。判定部14は、この検知信号に従って判定処理を行う。そして、判定部14は、判定結果から需要家施設100における電気の使用状態を異常と判定した場合、電気の使用状態が異常であることを表す異常信号を遮断判定部22に出力する。遮断判定部22は、この異常信号に従って主幹ブレーカ3を遮断する遮断信号S1(図2A参照)を生成し、生成した遮断信号S1を主幹ブレーカ3の遮断部32に出力する。遮断部32は、この遮断信号S1に従って接点部31を開き、主幹ブレーカ3を遮断する。その結果、系統電源から需要家施設100への電力供給が遮断される。
ここに、本実施形態では、計測部11と判定部14と報知部15と検知部21とで異常判定システムが構成されている。なお、報知部15については省略されていてもよい。また、本実施形態では、分電盤10と異常判定システムとで遮断システムが構成されている。
次に、判定部14の判定処理について、図2A及び図2Bを参照して説明する。図2Aは、地震に伴う電気事故が発生していないときの第1主幹電流I1、分岐電流I31〜I35、及び漏電電流I4の波形図である。また、図2Bは、地震に伴う電気事故が発生したときの第1主幹電流I1、分岐電流I31〜I35、及び漏電電流I4の波形図である。
まず、地震に伴う電気事故が発生していないときの判定部14の判定処理について図2Aを参照して説明する。
感震ユニット2の検知部21で地震が検知される時刻t1以前では、遮断判定部22から出力される遮断信号S1はローレベルであるため、接点部31は閉じた状態にあり、主幹ブレーカ3は遮断していない。
時刻t1のときに、検知部21で地震が検知されると、遮断判定部22は、検知部21の検知結果から主幹ブレーカ3を遮断すべきか否かを判定する。そして、遮断判定部22は、検知部21で検知された揺れの大きさが所定震度以上の場合には、主幹ブレーカ3を遮断すべきと判定し、所定時間(例えば、3分)が経過した時刻t2のときにハイレベルの遮断信号S1を主幹ブレーカ3の遮断部32に出力する。遮断部32は、遮断判定部22からの遮断信号S1により接点部31を開き、主幹ブレーカ3を遮断する。
時刻t3のときに、住人が主幹ブレーカ3を再投入すると、接点部31が閉じることで系統電源から需要家施設100への電力供給が再開される。ここで、計測ユニット1の判定部14は、検知部21で地震が検知される前の第1主幹電流I1の実効値と検知部21で地震が検知された後の第1主幹電流I1の実効値との比較結果から需要家施設100における電気の使用状態が正常か否かを判定する。図2Aに示す例では、判定部14は、地震が発生する前の第1期間TE1における第1主幹電流I1の実効値と地震が発生した後の第2期間TE2における第1主幹電流I1の実効値とを比較する。
ここで、第1期間TE1では、分岐回路4Aに接続された「電気ストーブ」はオンであり、分岐回路4Aには所定の大きさの分岐電流I31が流れている。また、分岐回路4Bに接続された「テレビ」、及び分岐回路4Cに接続された「照明」は共にオフであるが、分岐回路4B,4Cにはいわゆる待機電流(分岐電流I32,I33)が流れている。さらに、分岐回路4Eに接続された「エアコン」はオンであり、分岐回路4Eには所定の大きさの分岐電流I35が流れている。そして、主幹ブレーカ3に接続された第1電圧線51を流れる第1主幹電流I1は、これらの分岐電流I31〜I33,I35の合計電流となる。なお、図2Aに示す例では、分岐回路4Dに負荷が接続されていないため、分岐回路4Dの分岐電流I34はゼロである。
また、第2期間TE2では、地震が発生する前と同じ大きさの分岐電流I31〜I33が分岐回路4A〜4Cにそれぞれ流れている。一方、分岐回路4Eに接続された「エアコン」は、主幹ブレーカ3が一旦遮断されたことによりリセットされ、オン状態からオフ状態に切り替えられる。そのため、分岐回路4Eには、いわゆる待機電流(分岐電流I35)のみが流れることになる。その結果、第2期間TE2において計測される第1主幹電流I1は、第1期間TE1において計測される第1主幹電流I1よりも小さくなる(図2A参照)。言い換えれば、第2期間TE2における第1主幹電流I1の実効値が第1期間TE1における第1主幹電流I1の実効値よりも小さくなる。
そして、判定部14は、第2期間TE2における第1主幹電流I1の実効値が第1期間TE1における第1主幹電流I1の実効値よりも小さいことから、地震に伴う電気事故が発生していないと判定する。すなわち、判定部14は、需要家施設100における電気の使用状態を正常と判定する。
次に、地震に伴う電気事故が発生しているときの判定部14の判定処理について図2Bを参照して説明する。
感震ユニット2の検知部21で地震が検知される時刻t1以前では、遮断判定部22から出力される遮断信号S1はローレベルであるため、接点部31は閉じた状態にあり、主幹ブレーカ3は遮断していない。
時刻t1のときに、検知部21で地震が検知されると、遮断判定部22は、検知部21の検知結果から主幹ブレーカ3を遮断すべきか否かを判定する。そして、遮断判定部22は、検知部21で検知された揺れの大きさが所定震度以上の場合には、主幹ブレーカ3を遮断すべきと判定し、所定時間(例えば、3分)が経過した時刻t2のときにハイレベルの遮断信号S1を主幹ブレーカ3の遮断部32に出力する。遮断部32は、遮断判定部22からの遮断信号S1により接点部31を開き、主幹ブレーカ3を遮断する。
時刻t3のときに、住人が主幹ブレーカ3を再投入すると、接点部31が閉じることで系統電源から需要家施設100への電力供給が再開される。ここで、計測ユニット1の判定部14は、検知部21で地震が検知される前の第1主幹電流I1の実効値と検知部21で地震が検知された後の第1主幹電流I1の実効値との比較結果から需要家施設100における電気の使用状態が正常か否かを判定する。図2Bに示す例では、判定部14は、地震が発生する前の第1期間TE1における第1主幹電流I1の実効値と地震が発生した後の第2期間TE2における第1主幹電流I1の実効値とを比較する。
ここで、第1期間TE1では、分岐回路4Aに接続された「電気ストーブ」はオフであり、分岐回路4Aの分岐電流I31はゼロである。また、分岐回路4Bに接続された「テレビ」、及び分岐回路4Cに接続された「照明」も共にオフであるが、分岐回路4B,4Cには待機電流(分岐電流I32,I33)が流れている。さらに、分岐回路4Eに接続された「エアコン」はオンであり、分岐回路4Eには所定の大きさの分岐電流I35が流れている。そして、主幹ブレーカ3に接続された第1電圧線51を流れる第1主幹電流I1は、これらの分岐電流I31〜I33,I35の合計電流となる。
また、第2期間TE2では、分岐回路4Aに流れる分岐電流I31がゼロから所定の大きさに変化している。これは、地震により落下した物体で「電気ストーブ」の電源スイッチがオフからオンになった場合が想定される。したがって、この場合には、「電気ストーブ」の周りに、例えばカーテンなどの燃えやすい物があると火事になる可能性がある。また、分岐回路4B,4Cについては、地震が発生する前と同じ大きさの分岐電流(待機電流)I32,I33が流れている。さらに、「エアコン」が接続された分岐回路4Eには、図2Aと同様に待機電流(分岐電流I35)が流れている。また、例えば分岐回路4Fに接続された電線において半断線や短絡が生じている場合、主幹ブレーカ3が再投入されることでオンとオフとをランダムに繰り返すようなアーク電流(図2Bの第2期間TE2における分岐電流I34)が分岐回路4Fに流れる。以上のことから、第2期間TE2において計測される第1主幹電流I1は、第1期間TE1において計測される第1主幹電流I1よりも大きくなる(図2B参照)。言い換えれば、第2期間TE2における第1主幹電流I1の実効値が第1期間TE1における第1主幹電流I1の実効値よりも大きくなる。
そして、判定部14は、第2期間TE2における第1主幹電流I1の実効値が第1期間TE1における第1主幹電流I1の実効値よりも大きいことから、地震に伴う電気事故が発生していると判定する。すなわち、判定部14は、需要家施設100における電気の使用状態を異常と判定する。ここに、「電気の使用状態が正常」とは、上述のように、半断線や短絡によるアーク電流が流れたり、ゼロであった負荷電流が所定値まで変化したり、漏電電流I4(後述する)が流れたりしていないことをいう。すなわち、アーク電流や漏電電流I4が流れたり、ゼロであった負荷電流が所定値まで変化したりしている場合には、電気の使用状態は異常である。
ところで、図2Bに示す例において、例えば分岐回路4Fにアーク電流(分岐電流I34)が流れていない場合には、第2期間TE2における第1主幹電流I1が、第1期間TE1における第1主幹電流I1とほぼ同じか、小さくなる可能性がある。そして、この場合、判定部14は、需要家施設における電気の使用状態が異常であるにもかかわらず、正常と判定してしまい、そのため分岐回路4Aに接続された「電気ストーブ」により火災が起こる可能性がある。すなわち、主幹ブレーカ3を流れる第1主幹電流I1による比較処理だけでは、誤判定する可能性がある。
そのため、需要家施設100における電気の使用状態が正常か否かを判定する際に、主幹ブレーカ3における第1主幹電流I1に基づいて判定処理を行うだけでなく、分岐回路4ごとに判定処理を行うことが好ましい。例えば、図2Bに示す例では、分岐回路4Aにおいて、第2期間TE2での分岐電流I31が第1期間TE1での分岐電流I31以上であることから、判定部14は、需要家施設100における電気の使用状態を異常と判定することができる。また、判定部14は、分岐回路4Fについて、第2期間TE2における分岐電流I34が第1期間TE1における分岐電流I34以上であることから、需要家施設100における電気の使用状態を異常と判定することができる。上述のように、分岐回路4ごとに判定処理を行うことにより、判定処理の精度を向上させることができ、これにより地震に伴う電気事故等の異常を低減することができる。
ここで、分岐回路4ごとに判定処理を行う場合、第1期間TE1において計測された分岐電流の波形のひずみ率に応じて判定処理を行う分岐回路4の順番を決定することが好ましい。言い換えれば、複数の分岐回路4のうち、分岐電流の波形のひずみ率が基準値(例えば、5%)以下である負荷が接続された特定の分岐回路4について、特定の分岐回路4を除く残りの分岐回路4よりも先に電気の使用状態が正常か否かを判定することが好ましい。上記分岐電流の波形は、第1期間TE1において計測される。例えば、特定の分岐回路である分岐回路4Aに接続された「電気ストーブ」は、一般的に抵抗負荷であるため、分岐回路4Aを流れる分岐電流I31は正弦波に近い波形となり、ひずみ率は5%以下である。言い換えれば、分岐回路4Aに接続される「電気ストーブ」は抵抗負荷であることから、力率が1に近く、数A以上の分岐電流I31が分岐回路4Aに流れることになる。したがって、第1期間TE1において計測された電流の波形のひずみ率が基準値以下、言い換えれば力率が1に近い負荷の接続された分岐回路4について優先的に判定処理を行うことで、判定処理を効率的に行うことができる。
また、第2期間TE2における第1主幹電流I1が、第1期間TE1における第1主幹電流I1とほぼ同じか、小さい場合でも、漏電電流I4が検出される場合には、需要家施設100における電気の使用状態を異常と判定することが好ましい。言い換えれば、第2期間TE2における漏電電流(第2漏電電流)I4と第1期間TE1における漏電電流(第1漏電電流)I4との差分が規定値(例えば、15mA)以上の場合、需要家施設100における電気の使用状態を異常と判定することが好ましい。例えば、図2Bに示す例では、第1期間TE1では漏電電流I4がゼロであるのに対して、第2期間TE2では所定の大きさの漏電電流I4が計測されている。このとき、第2期間TE2における漏電電流I4と第1期間TE1における漏電電流I4の差分が規定値以上の場合には、判定部14は、需要家施設100における電気の使用状態を異常と判定することができる。
次に、本実施形態の遮断システムの動作について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。なお、ステップST5における比較処理(判定処理)については既に説明しているため、ここでは詳細な説明を省略する。
感震ユニット2の遮断判定部22は、検知部21の検知結果に基づいて地震が発生したか否かを判定する(ステップST1)。検知部21で地震が検知されていない場合(ステップST1のNo)には、遮断判定部22から計測ユニット1の判定部14に検知信号が入力されない。この場合、主幹ブレーカ3はオンのままである。
一方、検知部21で地震が検知された場合(ステップST1のYes)には、遮断判定部22は、検知部21の検知結果から地震の震度を判定する(ステップST2)。ステップST2において地震の震度が所定震度以上の場合、遮断判定部22は、主幹ブレーカ3の遮断部32に遮断信号S1を出力し、この遮断信号S1により主幹ブレーカ3が遮断される(ステップST3)。主幹ブレーカ3が遮断されると、計測ユニット1の判定部14は、住人が主幹ブレーカ3を再投入したか否かを判定し(ステップST4)、主幹ブレーカ3が再投入されるまでステップST4の処理を繰り返し行う。
主幹ブレーカ3が再投入されると(ステップST4のYes)、判定部14は、検知部21で地震が検知される前の漏電電流I4(第1漏電電流)と検知部21で地震が検知された後の漏電電流I4(第2漏電電流)とを比較する(ステップST5)。また、ステップST2において地震の震動が所定震度未満である場合にも、判定部14は、検知部21で地震が検知される前の漏電電流I4と検知部21で地震が検知された後の漏電電流I4とを比較する(ステップST5)。そして、判定部14は、ステップST5において比較結果から電気の使用状態を正常と判定した場合には、遮断判定部22に異常信号を出力せず、そのため主幹ブレーカ3は遮断されない(ステップST6)。一方、判定部14は、ステップST5において比較結果から電気の使用状態を異常と判定した場合には、遮断判定部22に異常信号を出力し、この異常信号に従って主幹ブレーカ3が遮断される(ステップST7)。また、判定部14は、需要家施設100における電気の使用状態が異常である旨の報知を報知部15に行わせる(ステップST8)。
以上説明したように、本実施形態の異常判定システムでは、地震が検知される前に計測された漏電電流I4(第1漏電電流)と、地震が検知された後に計測された漏電電流I4(第2漏電電流)とを比較している。そして、判定部14は、この比較結果から需要家施設100における電気の使用状態が正常か否かを判定している。このように、本実施形態の異常判定システムによれば、第1漏電電流と第2漏電電流とを比較するだけで、需要家施設100における電気の使用状態が正常か否かを判定することができる。すなわち、第1漏電電流と第2漏電電流とを比較するだけで、地震に伴う電気事故等の異常の有無を判定することができる。
また、本実施形態の遮断システムでは、判定部14は、需要家施設における電気の使用状態を異常と判定した場合、主幹ブレーカ3又は複数の分岐回路4A〜4Fのうち対象の分岐回路4に含まれる分岐ブレーカを遮断する。このように、本実施形態の遮断システムによれば、需要家施設における電気の使用状態が異常と判定された場合には、主幹ブレーカ3又は該当する分岐回路4の分岐ブレーカを遮断するので、地震に伴う電気事故等の異常を低減することができる。
また、本実施形態の分電盤10は、上述の遮断システムに用いられるので、地震に伴う電気事故等の異常を低減することができる。
ところで、以下の異常判定方法を採用することで、専用の計測ユニット1及び感震ユニット2を用いなくても、本実施形態の異常判定システムと同等の機能を実現することができる。
すなわち、異常判定方法は、検知ステップ(図3のステップST1)と、計測ステップと、判定ステップ(図3のステップST5)と、を含んでいる。検知ステップは、地震の発生を検知するステップである。計測ステップは、需要家施設100における漏電電流I4を計測するステップである。判定ステップは、計測ステップの計測結果に基づいて需要家施設100における電気の使用状態が正常か否かを判定するステップである。判定ステップにおいて、第1漏電電流と第2漏電電流との比較結果から需要家施設100における電気の使用状態が正常か否かを判定する。第1漏電電流は、検知ステップで地震が検知される前に計測ステップで計測された漏電電流である。第2漏電電流は、検知ステップで地震が検知された後に計測ステップで計測された漏電電流である。
この異常判定方法によれば、第1漏電電流と第2漏電電流とを比較するだけで、需要家施設における電気の使用状態が正常か否かを判定することができる。すなわち、第1漏電電流と第2漏電電流とを比較するだけで、地震に伴う電気事故等の異常の有無を判定することができる。また、この異常判定方法によれば、専用の計測ユニット1及び感震ユニット2を用いなくても、本実施形態の異常判定システムと同等の機能を実現することができる。
また、判定部14が、コンピュータ(マイクロコンピュータを含む)を主構成とする場合、コンピュータのメモリに記録されるプログラムは、コンピュータを判定部14として機能させるためのプログラムである。判定部14は、第1漏電電流と第2漏電電流との比較結果から需要家施設100における電気の使用状態が正常か否かを判定する。第1漏電電流は、地震の発生を検知する検知部21で地震が検知される前に計測部11で計測された需要家施設100における漏電電流I4である。第2漏電電流は、地震の発生を検知する検知部21で地震が検知された後に計測部11で計測された需要家施設100における漏電電流I4である。
このプログラムによれば、第1漏電電流と第2漏電電流とを比較するだけで、需要家施設における電気の使用状態が正常か否かを判定することができる。すなわち、第1漏電電流と第2漏電電流とを比較するだけで、地震に伴う電気事故等の異常の有無を判定することができる。また、このプログラムによれば、専用の計測ユニット1及び感震ユニット2を用いなくても、本実施形態の異常判定システムと同等の機能を実現することができる。
また、上述の異常判定方法において、判定ステップにおいて、第1漏電電流と第2漏電電流との比較結果として算出された第1漏電電流と第2漏電電流との差分が規定値以上の場合、電気の使用状態を異常と判定することが好ましい。この構成によれば、第1漏電電流と第2漏電電流との差分と規定値とを比較するだけで、需要家施設における電気の使用状態が正常か否かを判定することができる。ただし、この構成は異常判定方法の必須の構成ではなく、例えば第1漏電電流と第2漏電電流との大小のみで電気の使用状態が正常か否かを判定するように構成されていてもよい。
また、上述の異常判定方法において、判定ステップにおいて、第1漏電電流と第2漏電電流との比較結果から第2漏電電流が第1漏電電流以上の場合、電気の使用状態を異常と判定することが好ましい。この構成によれば、第1漏電電流と第2漏電電流との大小を比較するだけで、需要家施設における電気の使用状態が正常か否かを判定することができる。ただし、この構成は異常判定方法の必須の構成ではなく、例えば第1漏電電流と第2漏電電流との差分を規定値と比較することで電気の使用状態が正常か否かを判定するように構成されていてもよい。
また、上述の異常判定方法において、判定ステップの判定結果を報知する報知ステップ(図3のステップST8)をさらに含んでいることが好ましい。この構成によれば、判定ステップの判定結果をユーザに知らせることができる。ただし、この構成は異常判定方法の必須の構成ではなく、報知ステップは省略されていてもよい。
また、上述の異常判定方法において、分電盤10に用いられるのが好ましい。分電盤10は、電力線5に電気的に接続された主幹ブレーカ3を介して電力線5からの電力を複数の分岐回路4に分配する。この場合、第1漏電電流及び第2漏電電流は、複数の分岐回路4における漏電電流I4である。判定ステップでは、複数の分岐回路4の各々について電気の使用状態が正常か否かを判定する。この構成によれば、分岐回路4ごとに判定処理を行うので、該当する分岐回路4を特定することができて早期の対応が可能になる、という利点がある。ただし、この構成は異常判定方法の必須の構成ではなく、例えば主幹ブレーカ3において検出される漏電電流に基づいて判定処理を行うように構成されていてもよい。
以下、本実施形態の変形例について説明する。
上述の実施形態では、戸建住宅を需要家施設の一例として説明しているが、この例に限らず、需要家施設は、集合住宅の各住戸などの戸建住宅以外の住宅、あるいは事務所、店舗等の被住宅であってもよい。
また、上述の実施形態では、計測部11、判定部14及び報知部15が計測ユニット1に設けられ、検知部21が感震ユニット2に設けられているが、例えば計測部11、判定部14、報知部15及び検知部21が1つの装置に設けられていてもよい。例えば、計測部11、判定部14、報知部15及び検知部21が、計測ユニット1に設けられていてもよいし、感震ユニット2に設けられていてもよい。
さらに、上述の実施形態では、上述の異常判定方法を分電盤10に用いた場合を例に説明したが、上述の異常判定方法の適用対象は分電盤10に限らず、例えばスマートメータであってもよい。
また、上述の実施形態では、計測部11、演算部12、記憶部13、判定部14、及び遮断判定部22が分電盤10に設けられているが、これらのうち少なくとも1つは分電盤10外に設けられていてもよい。さらに、計測部11、演算部12、記憶部13、判定部14、及び遮断判定部22のうち少なくとも1つは、クラウド(クラウドコンピューティング)のように分散して存在するコンピュータによって実現されていてもよい。
さらに、上述の実施形態では、図3に示すように、主幹ブレーカ3を遮断した後に報知を行っているが、例えば漏電電流のように緊急を要しない電気事故であれば報知を行った後に主幹ブレーカ3を遮断してもよい。また、上述の実施形態では、需要家施設における電気の使用状態が異常の場合、主幹ブレーカ3を遮断したが、分岐回路4ごとに判定処理を行っている場合には、該当する分岐回路4のみを遮断するように構成されていてもよい。
さらに、上述の実施形態では、力率の大きい抵抗負荷として電気ストーブを例に説明したが、抵抗負荷は電気ストーブに限らず、例えば電気釜や電気暖房具、電気アイロン、電気コンロなどであってもよい。
また、上述の実施形態では、主幹ブレーカ3の漏電検出部33により漏電電流I4を検出したが、例えば主幹ブレーカ3の第1電圧線51を流れる第1主幹電流I1と、分岐回路4A〜4Fを流れる分岐電流I31〜I36との差分から漏電電流を算出してもよい。さらに、上述の実施形態では、主幹ブレーカ3において漏電電流I4を検出したが、分岐回路4A〜4Fごとに漏電電流を検出するように構成されていてもよい。