(実施形態)
(1)概要
本開示のアーク検出システム100は、図1及び図2に示すように、分電盤1に接続されている回路C100(分岐回路C1及び幹線回路C2を含む)で発生するアーク故障を検出するために用いられる。
アーク検出システム100は、アーク検出ユニット33を備える。アーク検出ユニット33は、交流電源20と少なくとも1つの負荷回路(回路C100)との間を電気的に接続する複数の電路(配線C11(図3参照)を含む)の間に発生する交流電圧V1に基づいて、アーク故障の有無を検出する。アーク検出ユニット33は、交流電源20と少なくとも1つの負荷回路(回路C100)との間に電気的に接続される主幹開閉器(主幹ブレーカとも言う)3と一体的に設けられている。
本開示において、「負荷回路」は、分電盤1に接続されている回路C100であり、分岐回路C1と幹線回路C2とを少なくとも含む。幹線回路C2は、主幹開閉器3の二次側に電気的に接続されている回路である。分岐回路C1は、幹線回路C2に分岐開閉器(分岐ブレーカとも言う)4を介して電気的に接続される回路である。なお、幹線回路C2は、主幹開閉器3の二次側端子T2(図2参照)に電気的に接続される分岐開閉器4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、コンセント22、及び電気機器23,24を含み得る。幹線回路C2は、連系ブレーカ6の二次側端子に電気的に接続される分散電源21を含み得る。また、幹線回路C2は、分岐開閉器4の二次側端子に電気的に接続されるコンセント22若しくは電気機器24、又は分岐開閉器4の二次側端子に直接、電気的に接続される電気機器23を含み得る。分岐回路C1は、分岐開閉器4の二次側端子に電気的に接続されるコンセント22若しくは電気機器24を含み得る。なお、以下の説明において、主幹開閉器3、分岐開閉器4、感震ブレーカ5、及び連系ブレーカ6を特に区別しない場合、「開閉器2」という場合もある。本開示において、交流電源20と少なくとも1つの負荷回路(回路C100)との間を電気的に接続する複数の「電路」とは、電線及び導電バー等の導電部材を含み得る。導電バーは、例えば金属板により長尺板状に形成された導電部材である。
本開示でいう「アーク故障」は、回路C100に含まれる配線C11における絶縁劣化又は半断線等の配線異常によって発生し得る。本開示でいう「半断線」は、断線しかかっている状態を意味し、具体的には、配線C11がより線であれば、より線を構成する複数本の素線のうちの一部の素線が断線した状態である。アーク故障は、一例として、配線C11が一対の電線で構成される場合に、一対の電線間が短絡することでアーク(いわゆるパラレルアーク)が発生することを含み得る。また、アーク故障は、一例として、配線C11が一対の電線で構成される場合に、一対の電線のうちの一方が半断線することでアーク(いわゆるシリーズアーク)が発生することを含み得る。なお、パラレルアークによって配線C11に流れる電流の大きさは数十~数百A程度であるのに対して、シリーズアークによって配線C11に流れる電流の大きさは数A~30A程度である。
アーク検出システム100のアーク検出ユニット33は、複数の配線C11(図3参照)の間に発生する交流電圧V1に基づいて、アーク故障の有無を検出する。このアーク検出ユニット33は主幹開閉器3と一体的に設けられているので、アーク検出ユニット33は、主幹開閉器3に電気的に接続されている配線C11でのアーク故障の有無を検出することができる。よって、主幹開閉器3に複数の分岐回路C1が電気的に接続されている場合に、複数の分岐回路C1の各々にアーク故障の有無を検出するための回路を設ける必要がない。したがって、複数の分岐回路C1におけるアーク故障の有無をまとめて検出可能なアーク検出システム100を提供できる、との利点がある。
(2)詳細
以下、本実施形態のアーク検出システム100及びアーク検出システム100を備える分電盤1について図1及び図2を用いて詳細に説明する。
分電盤1の分電盤用キャビネット10(図2参照)は、例えば、戸建て住宅又は集合住宅の住戸等の施設500に設置されて使用される。なお、分電盤1が設置される施設500は、戸建て住宅又は集合住宅の各住戸に限定されず、非住宅の建物(例えば、工場、商業用ビル、オフィスビル、病院、学校等)に設置されてもよい。
以下の説明では、特に断りがない限り、図2においてX軸方向を左右方向、Z軸方向を上下方向と規定する。また、X軸方向及びZ軸方向とそれぞれ直交する方向を前後方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを右側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、分電盤用キャビネット10及び分電盤1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
(2.1)分電盤
まず、分電盤1について説明する。分電盤1は、図1に示すように、アーク検出システム100と、アーク検出システム100を収容する分電盤用キャビネット10と、を備えている。分電盤用キャビネット10は、図2に示すように、複数の開閉器2と、監視ユニット7と、電流計測装置8と、バックアップ電源9(図1参照)と、を収容する。ここで、開閉器2は、主幹開閉器3と、複数の分岐開閉器4と、感震ブレーカ5と、連系ブレーカ6と、を含んでいる。なお、分電盤用キャビネット10が、監視ユニット7、電流計測装置8、及びバックアップ電源9を収容することは必須ではなく、監視ユニット7、電流計測装置8及びバックアップ電源9の少なくとも一部が分電盤用キャビネット10の外側に配置されていてもよい。
分電盤用キャビネット10は、前面が開口した箱状のボディ11(図2参照)と、ボディ11の開口を塞ぐカバーと、を備えている。図2においては、カバーの図示を省略している。分電盤用キャビネット10は、例えば建物の壁110(図2参照)等、建物を構成する部材に取り付けられる。なお、分電盤用キャビネット10は、壁110に設けられた取付孔に一部又は全体が埋め込まれた状態で取り付けられてもよい。分電盤用キャビネット10は、例えば、平均的な身長の子供では手が届かないような高さ位置であって、平均的な身長の大人であれば操作が可能なような高さ位置に設けられている。
また、分電盤用キャビネット10は、分電盤用キャビネット10が壁110に取り付けられた状態でカバーの前面を覆う蓋体を更に備える。蓋体は、閉位置と開位置との間で移動可能な状態でカバーに取り付けられる。閉位置は、カバーの前面を覆う位置である。開位置は、カバーの前面の少なくとも一部を覆わない位置である。なお、蓋体は、ある方向からカバーを見た場合にカバーの前面の一部を覆っていればよく、本実施形態では、閉位置にある蓋体は、カバーを前方から見た場合にカバーの前面の略全体を覆っている。
分電盤用キャビネット10の内部には、図2に示すように、主幹開閉器3、複数の分岐開閉器4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、監視ユニット7、及び電流計測装置8が収容されている。主幹開閉器3、複数の分岐開閉器4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、監視ユニット7、及び電流計測装置8は、ボディ11に直接又は取付用の部品等を介して取り付けられている。図2は、分電盤用キャビネット10の内部における主幹開閉器3、複数の分岐開閉器4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、監視ユニット7、及び電流計測装置8の配置を示しているが、これらの配置は一例であり、適宜変更が可能である。また、図2ではバックアップ電源9の図示を省略しているが、バックアップ電源9は分電盤用キャビネット10の内部の適宜の位置に配置されていればよい。
主幹開閉器3は、合成樹脂製の箱形の第1ケース39を備えている。主幹開閉器3は、分電盤用キャビネット10の内部において、左右方向の中央よりもやや左側の位置に配置されている。なお、分電盤用キャビネット10の内部での主幹開閉器3の位置は、例えば中央よりも右側等、他の位置であってもよい。主幹開閉器3の第1ケース39には、一次側端子T1と二次側端子T2との間に電気的に接続された接点30(図1参照)が収容されている。主幹開閉器3は、接点30をオン又はオフにするための操作レバーを第1ケース39の前面に備えている。また、主幹開閉器3は、例えば主幹開閉器30より下流側の電路で漏電が発生している異常状態を検出する検出回路31(図1参照)と、検出回路31が異常電流(漏電発生時の電流、過電流、中性線の欠相状態での電流の少なくとも1つ)を検出すると接点30を遮断する遮断回路34と、を有している。また、主幹開閉器3は、漏電の有無を検出する上記の検出回路31と、交流電源20から一次側端子T1を介して電力を得て検出回路31に動作電力を供給する電源回路32を更に有している。この電源回路32は、上述したアーク検出ユニット33にも動作電力を供給する。
主幹開閉器3では、検出回路31にて接点30に漏電電流が流れる異常状態を検出すると、遮断回路34が接点30を開極させる。これにより、主幹開閉器3は、主幹開閉器3の二次側の回路への電力供給を遮断し、回路を保護している。また、検出回路31は、接点30に短絡電流又は過負荷電流等の過電流が流れる異常状態を検出する機能を備え、単相三線式配線における中性線の欠相状態を検出する機能を更に備えている。検出回路31にて短絡電流又は過負荷電流等の過電流を検出すると、遮断回路34が接点30を開極させる。また、検出回路31が中性線の欠相状態を検出すると、遮断回路34が接点30を開極させる。なお、主幹開閉器3は、所定の制限値を超える電流が流れると、接点30を開極させるリミッタ機能を備えていてもよい。
主幹開閉器3の一次側端子(第1接続端子)T1は、図2に示すように、主幹開閉器3の第1ケース39の上面から上向きに突出している。主幹開閉器3の一次側端子T1には、交流電源20(系統電源)の単相三線式の引込線CB1が電気的に接続される。また、図1に示すように、主幹開閉器3の一次側の引込線CB1には、幹線回路C2に流れる電流(主幹電流)を計測するための主幹電流計測装置70が取り付けられている。主幹電流計測装置70は、例えばカレントトランス(CT)であって、引込線CB1を流れる電流、つまり主幹開閉器3の一次側の回路を流れる一次電流を計測する。
主幹開閉器3の二次側端子T2は、主幹開閉器3の第1ケース39の右側面から横方向に突出している。主幹開閉器3の二次側端子T2には、単相三線式配線における第1電圧極(L1相)の導電バー、第2電圧極(L2相)の導電バー、及び中性極(N相)の導電バーが接続されている。各導電バーは、導電部材により左右方向に長い長尺板状に形成されており、分電盤用キャビネット10の内部において、上下方向の中央であって主幹開閉器3の右側の位置に配置されている。
複数の分岐開閉器4は、各導電バーの上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、図2に示すように、各導電バーの上側には、12個の分岐開閉器4が左右方向に並ぶように配置されている。また、各導電バーの下側には、11個の分岐開閉器4が左右方向に並ぶように配置されている。
各分岐開閉器4は、一対の一次側端子と、一対の二次側端子と、を備えている。各分岐開閉器4は、一次側端子と二次側端子との間に電気的に接続される接点を有している。各分岐開閉器4の前面には、各分岐開閉器4が内蔵する接点をオン又はオフにするための操作レバーが設けられている。
分岐開閉器4には、100V用と200V用とがある。100V用の分岐開閉器4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バー及び第2電圧極の導電バーのうちの一方と、中性極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。200V用の分岐開閉器4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バーと、第2電圧極の導電バーとにそれぞれ電気的に接続される。また、分岐開閉器4の二次側端子には、対応する配線C11が電気的に接続される。各分岐開閉器4の二次側端子に接続された配線C11には、例えば、照明器具、給湯設備等の電気機器23、コンセント22(図1参照)又は壁スイッチ等の配線器具が負荷として1つ以上接続される。したがって、分電盤1は、分岐開閉器4の二次側端子に配線C11を介して接続された電気機器23、又はコンセント22に接続された電気機器24(例えば空調機器又はテレビ受像機等)等に電力を供給することができる。
また、分岐開閉器4は、分岐開閉器4が内蔵する接点に、短絡電流又は過負荷電流等の過電流が流れる異常状態を検出する検出部41(図1参照)を備えている。分岐開閉器4は、検出部41の検出結果に応じて、分岐開閉器4が内蔵する接点を開極させる遮断部42を備えている。分岐開閉器4では、検出部41にて接点に過電流が流れる異常状態を検出すると、遮断部42が接点を開極させる。また、検出部41は、分岐開閉器4に接続された分岐回路C1の漏電状態を検出する機能を備えている。そして、分岐開閉器4では、検出部41が漏電の発生を検出すると、遮断部42が接点を開極させる。これにより、分岐開閉器4は、接点に過電流が流れる異常状態又は漏電の発生時に、分岐開閉器4の二次側の分岐回路C1への電力供給を遮断することによって、分岐回路C1を保護している。
感震ブレーカ5は、導電バーの下側において、分岐開閉器4と左右方向に並ぶように配置されている。感震ブレーカ5は、分電盤用キャビネット10に加わる振動を検出する感震センサ51を有している。感震センサ51が所定の基準値(例えば震度5の地震動)を超える大きさの振動を検出すると、感震ブレーカ5は回路を遮断する遮断動作を行う。感震ブレーカ5は、例えば第1電圧極又は第2電圧極と中性極との間を比較的低抵抗のインピーダンス要素を介して電気的に接続することで疑似的な漏電状態を発生させる。感震ブレーカ5が疑似的な漏電状態を発生させると、主幹開閉器3の検出回路31が、感震ブレーカ5が発生させた疑似的な漏電状態を検出し、遮断回路34が接点30を開極させる。これにより、地震等によって分電盤用キャビネット10に基準値を超える大きさの振動が加わると、主幹開閉器3の二次側に接続された回路C100への電力供給を遮断することができる。
連系ブレーカ6には、施設500に設けられた分散電源21が接続される。連系ブレーカ6は、主幹開閉器3の二次側端子T2に電気的に接続された導電バーと、分散電源21との間に電気的に接続される。連系ブレーカの接点がオンになると、分散電源21が交流電源20と連系して負荷に電力を供給することができる。一方、連系ブレーカ6の接点がオフになると、分散電源21が交流電源20から解列される。連系ブレーカ6は、例えば漏電の発生を検出する検出機能を有している。連系ブレーカ6の検出機能が漏電の発生を検出すると、連系ブレーカ6は遮断動作を行い、分散電源21を交流電源20から解列させる。なお、連系ブレーカ6は、短絡電流等の過電流を検出する検出機能を備えていてもよく、連系ブレーカ6の検出機能が過電流を検出すると、連系ブレーカ6が遮断動作を行うように構成されてもよい。
電流計測装置8は、複数の分岐開閉器4の各々に接続された負荷(電気機器23,24等)に流れる電流を計測するように構成されている。電流計測装置8は、例えば、基板と、複数のコイルと、を有している。基板は、左右方向に長い板状である。基板には、複数の孔が形成されている。複数の孔には、導電バーから延びて分岐開閉器4の一次側端子に接続される端子がそれぞれ挿入される。コイルは、例えばロゴスキコイルであり、基板の孔の周りに形成されている。本実施形態では、電流計測装置8は、複数の分岐開閉器4及び連系ブレーカ6の各々に流れる電流を計測する。ここにおいて、電流計測装置8(電流センサ)は、分電盤1が設置される施設500で使用されるエネルギーを管理するエネルギー管理システム600に用いられるセンサと共用される。なお、電流計測装置8はロゴスキコイルを有する態様に限定されず、例えば、変流器(カレントトランス)、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗等のセンサを有する態様でもよい。
バックアップ電源9は、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池等の二次電池であるバッテリ91と、バッテリ91を充電する充電回路とを含む。バックアップ電源9の充電回路は、主幹開閉器3の一次側から電力の供給を受けて、バッテリ91を充電する。バックアップ電源9は、交流電源20が停電した場合に、バッテリ91を電源として監視ユニット7等に電力を供給する。したがって、交流電源20が停電した場合でも、監視ユニット7は、バックアップ電源9から電力の供給を受けて動作することができる。交流電源20の正常時には、監視ユニット7は、主幹開閉器3の一次側(交流電源20)から電力の供給を受けて動作する。
監視ユニット7は、分電盤用キャビネット10の内部において、主幹開閉器3の左側に配置されている。監視ユニット7は、主幹開閉器3の一次側から電力の供給を受けて動作するので、主幹開閉器3が遮断動作を行った場合でも動作が可能である。なお、交流電源20が停電した場合には、監視ユニット7は、バックアップ電源9から電力の供給を受けるので、交流電源20の停電時でも動作が可能である。
より詳しくは、本実施形態の監視ユニット7は、制御部71と、通信部72と、通知部73と、記憶部74と、を備えている。
制御部71は、例えば、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、制御部71としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
制御部71は、取得部711及び出力部712の機能を備える。
取得部711は、分電盤1内の主幹開閉器3及び分岐開閉器4の少なくとも一方を通過する電力を計測する。本実施形態の監視ユニット7は、主幹電流計測装置70及び電流計測装置8に電気的に接続されている。取得部711は、電流計測装置8が計測した複数の分岐開閉器4及び連系ブレーカ6の各々に流れる電流の値を、電流計測装置8から受け取る。さらに、取得部711は、主幹電流計測装置70が計測した電流値を主幹電流計測装置70から受け取る。取得部711は、電流計測装置8及び主幹電流計測装置70が計測した電流値のそれぞれを電力値(瞬時電力値)に変換する。また、取得部711は、収集した瞬時電力のデータを所定時間に亘って積算した電力量のデータを演算する機能を有している。
制御部71は、取得部711が取得した電力値又は電力量のデータを記憶部74に記憶する。また、制御部71は、取得部711が取得した電力値又は電力量のデータを、通信部72からコントローラ25又は管理サーバ300に出力する。
通信部72は、施設500に設置されたコントローラ25等との間で通信を行う。コントローラ25は、回路C100が配置された施設500でのエネルギーの使用量を管理するエネルギー管理システム600(例えばHEMS:Home Energy Management System)のコントローラである。コントローラ25は、エネルギー管理システム600に対応する機器(以下、HEMS対応機器という)の制御又は監視を行う。つまり、コントローラ25は、監視ユニット7と通信を行うことによって、複数の分岐開閉器4に接続された複数の負荷(電気機器23,24等)の各々での瞬時電力や電力量を取得することができ、HEMS対応機器を制御又は監視することができる。コントローラ25は、分電盤用キャビネット10の外部に配置されている。ここに、HEMS対応機器は、例えばスマートメータ、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池、電気自動車、エアコン、照明器具、給湯装置、冷蔵庫、又はテレビ受像機等を含む。なお、HEMS対応機器は、これらの機器に限定されない。
通信部72とコントローラ25との間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。通信部72とコントローラ25との間の通信方式は、有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、通信部72とコントローラ25との間の通信における通信プロトコルは、例えば、Ethernet(登録商標)、ECHONET Lite(登録商標)等である。
通知部73は、インターネットのような広域ネットワーク200を介して、管理サーバ300又は情報端末400等の外部システムと通信する通信機能を有している。ここにおいて、情報端末400は、例えば分電盤1のユーザが携帯する端末であり、例えばスマートフォン又はタブレット型のコンピュータである。また、情報端末400は、例えばデスクトップ型又はラップトップ型のパーソナルコンピュータ等であってもよい。通知部73は、取得部711が取得した電力値又は電力量のデータ等を、管理サーバ300又は情報端末400に通知する。ユーザは、情報端末400を操作して、例えばメールを閲覧したり、情報端末400にインストールされているアプリケーションを起動したりすることにより、取得部711が取得した電力値又は電力量のデータを確認することができる。
記憶部74は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の電気的に書換え可能な不揮発性メモリ、及びRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ等を備える。記憶部74は、取得部711が取得した電力値又は電力量のデータ等を記憶する。
(2.2)アーク検出システム
次に、アーク検出システム100について図1及び図3を用いて説明する。アーク検出システム100は、上述したアーク検出ユニット33と、アーク検出ユニット33の検出結果を出力する出力部35と、を備えている。つまり、主幹開閉器3には、アーク検出ユニット33の検出結果を出力する出力部35が設けられている。なお、図3は、アーク検出システム100が備えるアーク検出ユニット33の概略的な回路構成を説明する回路図である。このアーク検出システム100は、上述したように主幹開閉器3に設けられている。
図3は、単相三線式配線における第1電圧極及び第2電圧極の一方と中性極との間に接続される負荷回路が接続された電路(配線C11)においてアーク故障の有無を検出するアーク検出ユニット33の一例を示している。
アーク検出ユニット33は、主幹開閉器3の二次側の回路C100が接続される異極の電路(配線C11)間に配置される検知ルート331を有している。この検知ルート331は、コンデンサ335と、被測定部である抵抗334との直列回路であるCR回路を含む。つまり、アーク検出ユニット33は、複数の電路(配線C11)の間に電気的に接続されるコンデンサ335と抵抗(被測定部)334との直列回路を有している。そして、アーク検出ユニット33は、抵抗334に発生する電圧を測定する測定回路332と、測定回路332の測定結果に基づいてアーク故障の有無を判定する判定回路333と、を備える。このコンデンサ335は主幹開閉器3に内蔵されている。判定回路333は、抵抗334の両端間に発生する電圧のピーク値の絶対値と所定の閾値との高低を比較することによって、アーク故障の有無を判定する。この閾値は、回路C100においてアーク故障が発生していない場合に抵抗334の両端間に発生する電圧のピーク値(絶対値)よりは高い電圧値であって、アーク故障が発生している場合に抵抗334の両端間に発生する電圧のピーク値(絶対値)よりも低い電圧値に設定されている。
ここで、回路C100と並列に接続される検知ルート331は、コンデンサ335と抵抗334との直列回路であるCR回路で構成されているので、検知ルート331のインピーダンスは、周波数が高くなるほど低下する。回路C100においてアーク故障が発生しておらず、回路C100に交流電源20の周波数(例えば50又は60Hz)と同程度の周波数の交流電流が流れている場合、検知ルート331には殆ど電流が流れないように、CR回路の遮断周波数が設定されている。
回路C100においてアーク故障が発生していない場合、回路C100には低周波(交流電源20の周波数と同程度の周波数)の交流電流が流れる。したがって、検知ルート331には殆ど電流が流れず、測定回路332が測定した抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)は閾値よりも低くなるので、判定回路333は回路C100においてアーク故障が発生していないと判定する。
一方、回路C100においてアーク故障が発生すると、回路C100が接続される異極の配線C11間に高周波の電流が流れるため、検知ルート331に高周波の電流が流れることになる。したがって、測定回路332が測定した抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)は閾値以上になるので、判定回路333は、回路C100においてアーク故障が発生したと判定する。
判定回路333が回路C100においてアーク故障が発生したと判定すると、遮断回路34が接点30を開極させている。すなわち、主幹開閉器3には、アーク検出ユニット33がアーク故障を検出した場合に電路(配線C11)を遮断する遮断回路34が設けられている。これにより、主幹開閉器3は、主幹開閉器3の二次側の回路への電力供給を遮断し、回路を保護することができる。
なお、判定回路333は、測定回路332が測定した抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)が閾値以上になるとアーク故障が発生したと判定しているが、抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)が閾値以上になる状態が所定時間内に所定回数以上発生すると、アーク故障が発生したと判定してもよい。これにより、ノイズ等によって抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)が単発的に閾値以上になったことをもって、判定回路333が、アーク故障と誤検出する可能性を低減できる。また、検知ルート331を構成するコンデンサ335は、主幹開閉器3に内蔵されているので、コンデンサ335を外付けで取り付ける手間を省くことができる。
ところで、上記の実施形態では、アーク検出ユニット33が、測定回路332が測定した抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)と閾値との高低を比較することでアーク故障の有無を判定しているが、配線C11に流れる電流の電流波形に基づいてアーク故障の有無を判定してもよい。
つまり、アーク検出ユニット33は、測定回路332によって測定された抵抗334の両端間の電圧と、配線C11に流れる電流の電流波形とに基づいて、配線C11の配線異常(アーク故障)を判定してもよい。すなわち、アーク検出ユニット33は、電路(配線C11)に流れる電流に更に基づいて、アーク故障の有無を検出する。ここで、アーク検出ユニット33は、測定回路332が測定した抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)が閾値以上になるか、又は、電路に流れる電流に基づいてアーク故障を検出すると、アーク故障が発生したと検出してもよく、アーク故障の検出漏れを抑制できる。また、アーク検出ユニット33は、測定回路332が測定した抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)が閾値以上になり、かつ、電路に流れる電流に基づいてアーク故障を検出すると、アーク故障が発生したと検出してもよく、アーク故障の誤検出を抑制できる。
アーク検出ユニット33が、配線C11に流れる電流の電流波形に基づいてアーク故障の有無を判定する場合、アーク検出ユニット33は、例えば、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、アーク検出ユニット33としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
アーク検出ユニット33は、カレントトランス等の電流センサを用いて、主幹開閉器3に接続された幹線回路C2の配線C11に流れる電流の波形を示す情報を取得する。そして、アーク検出ユニット33は、電流センサを用いて取得した電流の波形を示す情報に基づいて、主幹開閉器3に接続された配線C11における配線異常(アーク故障)を検知する。
ここにおいて、アーク検出ユニット33は、配線C11の配線異常(アーク故障)を検知するにあたって、幹線回路C2を流れる電流の波形から、分岐回路C1ごとの個別波形を推定する。そして、アーク検出ユニット33は、推定した個別波形に基づいて分岐回路C1ごとの配線異常を検知する。つまり、幹線回路C2を流れる電流の波形は、複数の分岐回路C1の各々を流れる電流の波形(個別波形)を合成した波形となる。したがって、アーク検出ユニット33は、例えばディスアグリゲーション(disaggregation)技術を用いて、幹線回路C2を流れる電流の波形から、分岐回路C1ごとの電流の波形を推定することが可能である。
具体的には、例えばアーク検出システム100とは異なる外部システムにおいて、あらかじめ分岐回路C1ごとに個別波形の特徴を抽出又は学習し、抽出又は学習した特徴をアーク検出ユニット33が有するメモリに記憶させる。ここでいう「個別波形の特徴」は、所定期間(例えば、1周期又は数周期)における個別波形の一部に現れる固有のパターンであってもよいし、所定期間における個別波形自体であってもよい。個別波形の特徴を抽出又は学習する方法としては、例えば、ニューラルネットワーク若しくはHMM(Hidden Markov Model:隠れマルコフモデル)を用いた機械学習の他、ウェーブレット変換を用いた抽出方法などが挙げられる。
アーク検出ユニット33によりアーク故障の有無を検出するにあたっては、分電盤1に接続されることが想定される多様な分岐回路C1について、個別波形の特徴を抽出又は学習しておくのが好ましい。例えば、外部システムは、分岐開閉器4にコンセント22のみが接続されている分岐回路C1の個別波形の特徴、及び分岐開閉器4にコンセント22を介して電気機器24が接続されている分岐回路C1の個別波形の特徴を抽出又は学習する。また、例えば、外部システムは、分岐開閉器4に直接、電気機器23が接続されている分岐回路C1の個別波形の特徴を抽出又は学習する。もちろん、分岐回路C1に含まれる電気機器23,24の種類及び台数に応じて個別波形の特徴が異なってくるので、外部システムは、電気機器23,24の種類及び台数を互いに異ならせた多様な分岐回路C1について、個別波形の特徴を抽出又は学習する。
さらに、外部システムは、分岐回路C1ごとに、配線C11の配線異常が生じていない正常時の個別波形の特徴と、配線C11の配線異常が生じている異常時の個別波形の特徴と、を抽出又は学習する。本実施形態では、配線C11の配線異常には、既に述べたように、パラレルアークの発生と、シリーズアークの発生と、が含まれる。
パラレルアークは、図4Aに示すように、配線C11を構成する一対の電線C10の各導体が接触する等して短絡することにより発生し得る。図4Aにおける点線の矢印I1は、パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の経路を表している。パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、例えば数十〔A〕~数百〔A〕である。パラレルアークは、例えば施設500にある器物(例えば、家具等)の端縁に配線C11が引っ掛かることで被覆C12が損傷したり、ステップル等の金属製の部材で配線C11を挟み込んだりすることで生じ得る。また、パラレルアークは、例えば配線C11に過電流が流れて被覆C12が溶融したり、動物が配線C11を噛んだりすることで生じ得る。その他、パラレルアークは、配線C11が長期的に紫外線を浴び続けることで劣化した場合にも生じ得る。
図5Aは、パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の波形の一例を示す。図5Aに示すように、パラレルアークの発生時においては、配線C11には、断続的にパルス電流が流れる。つまり、パラレルアークの発生時における個別波形の特徴は、正常時の個別波形の特徴と異なる。
シリーズアークは、図4Bに示すように、配線C11を構成する一対の電線C10のうちの一方が半断線することにより発生し得る。図4Bにおける点線の矢印I2は、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の経路を表している。シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、数〔A〕~十数〔A〕である。そのため、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、配線異常の発生していない正常時において配線C11に接続される負荷(例えば、電気機器23,24)に流れる電流の大きさよりも小さくなることもある。シリーズアークは、例えば配線C11を繰り返し曲げられたり、配線C11を過度な力で引っ張られたりすることで生じ得る。
図5Bは、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の波形の一例を示す。図5Bに示すように、シリーズアークの発生時においては、配線C11には、負荷(例えば、電気機器23,24)に供給される電流に対して、シリーズアークに特有の高周波成分が重畳された電流が流れる。つまり、シリーズアークの発生時に配線C11を流れる電流は、図5Bに例示するようなシリーズアークに特有の高周波成分を含み得る。つまり、シリーズアークの発生時における個別波形の特徴は、正常時の個別波形の特徴と、パラレルアークの発生時の個別波形の特徴と、のいずれとも異なる。
したがって、外部システムは、分岐回路C1ごとに、パラレルアークの発生時の個別波形の特徴と、シリーズアークの発生時の個別波形の特徴と、を抽出又は学習する。異常時の個別波形の特徴の抽出又は学習は、例えば対象となる分岐回路C1に含まれる配線C11に、パラレルアーク又はシリーズアークが発生した状態を意図的に再現することで可能である。
アーク検出システム100の運用中においては、アーク検出ユニット33は、電流センサを用いて幹線回路C2を流れる電流の波形を示す情報を取得する。そして、アーク検出ユニット33は、メモリに記憶されている複数の個別波形の特徴から、幹線回路C2に流れる電流の波形の特徴と一致する1以上の個別波形の特徴の組み合わせを探索する。これにより、アーク検出ユニット33は、幹線回路C2に流れる電流の波形から、分岐回路C1ごとの電流の波形(個別波形)を推定する。そして、探索した1以上の個別波形の特徴の組み合わせの中に異常時の個別波形の特徴が含まれている場合、アーク検出ユニット33は、この異常時の個別波形の特徴に対応する分岐回路C1において配線C11の配線異常がある、と検知する。アーク検出システム100では、アーク検出ユニット33が検出した配線C11でのアーク故障に関連するアーク発生情報を、アーク検出ユニット33が有するメモリに記憶する。
アーク検出システム100の出力部35は、アーク検出ユニット33の検出結果を出力する。出力部35は、アーク検出ユニット33での検出結果に応じた出力を行う。アーク検出ユニット33が少なくとも配線C11でのアーク故障の発生を検出すると、出力部35が、配線C11でのアーク故障の発生を提示する処理を実行する。例えば、出力部35は、主幹開閉器3に備え付けの発光ダイオードを用い、アーク故障の発生時と非発生時とで発光ダイオードを異なる点灯状態(点灯、点滅又は消灯)に制御することによって、ユーザに対してアーク故障の有無を視覚的に表示する。また、アーク検出ユニット33がアーク故障の発生を検出した場合に、出力部35が、主幹開閉器3に設けられたスピーカ等から報知音又は音声を出力させることによって、アーク故障の発生をユーザに対して聴覚的に提示してもよい。
なお、本実施形態において、出力部35が出力するアーク発生情報には、以下に列挙する全ての情報が含まれていてもよいし、全ての情報が含まれていなくてもよい。つまり、アーク発生情報には、以下に列挙する複数の情報のうち1以上の情報が含まれていればよい。
アーク発生情報は、アーク故障の種別を示す種別情報を含み得る。本実施形態では、アーク故障の種別は、少なくともパラレルアーク及びシリーズアークの2つの種別を含んでいる。本実施形態では、アーク検出ユニット33は、上述のようにパラレルアークの発生の有無、及びシリーズアークの発生の有無を判定することが可能である。言い換えれば、アーク検出ユニット33は、電流センサを用いて取得した幹線回路C2に流れる電流の波形の情報に基づいて、アーク故障の種別を推定することができる。よって、出力部35は、アーク検出ユニット33の検出結果に基づいて、配線C11でのアーク故障がパラレルアークの発生であるのか、又はシリーズアークの発生であるのかを出力(提示)することが可能である。
また、アーク発生情報は、アーク故障が発生した発生場所に関する場所情報を含み得る。この場所情報は、複数の分岐回路C1のうち、アーク故障が発生した1以上の分岐回路C1を示す情報を含んでいる。すなわち、本実施形態では、アーク検出ユニット33は、上述のディスアグリゲーション技術を用いて、どの分岐回路C1で配線C11のアーク故障が発生したのかを検知することができる。つまり、アーク検出ユニット33は、電流センサを用いて取得した幹線回路C2に流れる電流の波形の情報に基づいて、アーク故障の発生場所(ここでは、分岐回路C1)を推定することが可能である。さらに言えば、アーク検出ユニット33は、アーク故障の発生場所として、複数の分岐回路C1のうち1以上の分岐回路C1を推定することが可能である。したがって、アーク検出システム100の出力部35は、アーク検出ユニット33での検知結果に基づいて、どの分岐回路C1(言い換えれば、どの場所)でアーク故障が発生したのかを出力(提示)することが可能である。
また、アーク発生情報は、分岐回路C1に含まれる機器に関する機器情報を含み得る。すなわち、本実施形態では、アーク検出ユニット33は、上述のディスアグリゲーション技術を用いて、分岐回路C1に含まれる機器の種類及び台数等を推定することが可能である。つまり、アーク検出ユニット33は、電流センサを用いて取得した幹線回路C2に流れる電流の波形の情報に基づいて、分岐回路C1に含まれる機器を推定することが可能である。したがって、出力部35は、アーク検出ユニット33にてアーク故障の発生が検出された分岐回路C1に含まれる機器の種類及び台数等の情報を、アーク発生情報として提示することが可能である。
また、アーク発生情報は、アーク故障の発生タイミングと継続時間との少なくとも一方に関する時間情報を含み得る。すなわち、本実施形態では、アーク検出ユニット33は、測定回路332にて測定した抵抗334の両端電圧に基づいて、配線C11のアーク故障をリアルタイムに検知することが可能である。したがって、出力部35は、例えばアーク検出ユニット33が備えるタイマを用いて計時することによって、アーク故障の発生タイミングと、アーク故障が発生してから終了するまでの継続時間と、を提示(出力)することが可能になる。
また、アーク発生情報は、分岐回路C1を流れてアーク検出ユニット33での検知に用いられる電流の波形に関する電流情報を含み得る。すなわち、本実施形態では、アーク検出ユニット33は、上述のディスアグリゲーション技術を用いて、分岐回路C1を流れる電流の波形(個別波形)を推定することが可能である。したがって、出力部35は、配線異常の発生時においてアーク検出ユニット33にて推定された分岐回路C1を流れる電流の波形を例えば管理サーバ300又は情報端末400等に提示することも可能である。つまり、出力部35は、アーク検出ユニット33の検出結果を外部システム(例えば、管理サーバ300又は情報端末400等)に出力してもよい。例えば、出力部35は、アーク検出ユニット33の検出結果を監視ユニット7に出力する。監視ユニット7が出力部35からアーク検出ユニット33の検出結果を受け取ると、監視ユニット7の通知部73が、アーク検出ユニット33の検出結果を含む電子メールを、予め登録された情報端末400に送信する。ユーザは、情報端末400を操作して監視ユニット7から送信された電子メールを閲覧することによって、アーク検出ユニット33の検出結果を確認することができる。
なお、上記の実施形態において、アーク検出ユニット33は、測定回路332にて測定された抵抗334の両端間に発生する電圧の波形の特徴を抽出し、機械学習することでアーク故障の有無を判定してもよい。
(3)動作
以下、本実施形態のアーク検出システム100の動作について図6を用いて説明する。以下では、出力部35が、分電盤1にてアーク発生情報をユーザに提示(出力)する態様について説明する。なお、出力部35は、アーク検出ユニット33が配線C11の配線異常(アーク故障)を検知すると、アーク発生情報を情報端末400等に通信により出力してもよい。
アーク検出ユニット33の測定回路332は、例えば、所定の測定周期が経過するごとに、抵抗334の両端間に発生する電圧を測定する測定処理を行う(ST1)。
測定回路332が電圧の測定処理を行うと、判定回路333が、測定回路332にて測定された電圧値のピーク値(絶対値)と、所定の閾値との高低を比較する(ST2)。
ST2の処理において測定回路332にて測定された電圧のピーク値(絶対値)が閾値よりも低い場合(ST2:No)、判定回路333は、分岐回路C1でアーク故障が発生していないと判定し、所定の測定周期が経過すると再び測定処理を実行する。
ST2の処理において測定回路332にて測定された電圧のピーク値(絶対値)が閾値以上である場合(ST2:Yes)、判定回路333は、いずれかの分岐回路C1でアーク故障が発生していると判定する。このとき、遮断回路34は、判定回路333の判定結果に基づいて接点30を遮断する遮断処理を行い(ST3)、主幹開閉器3の二次側の回路C100への電力供給を遮断することで、配線異常(アーク故障)が発生した回路を保護する。また、出力部35が、アーク検出ユニット33の検出結果に基づいて、例えば主幹開閉器3に備え付けの発光ダイオードを点灯、点滅又は消灯させることで、分岐回路C1でのアーク故障に関するアーク発生情報を出力する出力処理を行う(ST4)。
主幹開閉器3に設けられたアーク検出システム100が、上述した一連の処理ST1~ST4を繰り返し実行し、主幹開閉器3に電気的に接続された回路C100での配線異常(アーク故障)の有無を監視する。なお、図6のフローチャートはアーク検出システム100の動作の一例に過ぎず、処理を適宜省略又は追加してもよいし、処理の順番が適宜変更されてもよい。
ここにおいて、出力部35は、アーク故障の発生時において、分電盤1の周囲における人の存否を検知する人感センサ(例えば熱線感知式、電波式又は超音波式のセンサ)が人の存在を検知した場合のみ、アーク発生情報を出力してもよい。これにより、アーク故障の発生時において、分電盤1の周囲に人が存在する場合のみ、出力部35がアーク発生情報を出力するので、分電盤1の周囲にいる人に対して、アーク発生情報を確実に通知することができる。
上述のように、本実施形態では、アーク検出ユニット33は、幹線回路C2を流れる電流に基づいて、複数の分岐回路C1の各々における配線異常を検知している。このため、本実施形態では、複数の分岐回路C1の各々に配線異常(アーク故障)を検知する機能(アーク検出ユニット)を設ける必要がないので、配線異常(アーク故障)を検知する機能を分電盤1に導入しやすくなる、という利点がある。
(4)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
以下、上記の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
本開示におけるアーク検出システム100は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示におけるアーク検出システム100としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
また、アーク検出システム100における複数の機能が、主幹開閉器3の第1ケース39内に集約されていることはアーク検出システム100に必須の構成ではない。アーク検出システム100の構成要素(例えばアーク検出ユニット33、出力部35、及びアーク検出ユニット33の検出結果に基づいて接点30を遮断する遮断機能)は、図7に示すように、第2ケース330に収容されていてもよい。第2ケース330は、主幹開閉器3の第1ケース39とは別体であって、第1ケース39に対して取り付けられる。第2ケース330は例えば合成樹脂により箱状に形成されており、第2ケース330には、主幹開閉器3の一次側端子T1に対して引込線CB1と一緒に共締めされる接続端子(第2接続端子)T3が設けられている。換言すると、主幹開閉器3は複数の電路(配線C11)が電気的に接続される第1接続端子(一次側端子T1)を有している。そして、アーク検出ユニット33は、第1接続端子(一次側端子T1)に接触することによって複数の電路(配線C11)に電気的に接続される第2接続端子(接続端子T3)を有している。
ここで、主幹開閉器3の一次側端子T1に、引込線CB1と、第2ケース330の接続端子T3とが、端子ねじを用いて接続される。これにより、主幹開閉器3が有する第1ケース39と、アーク検出ユニット33を収容する第2ケース330とが互いに接続され、アーク検出ユニット33を収容する第2ケース330が第1ケース39に一体的に取り付けられる。そして、第2ケース330が第1ケース39に対して一体的に取り付けられた状態では、アーク検出ユニット33の検知ルート331が、主幹開閉器3の二次側の回路C100に対して電気的に並列に接続される。つまり、アーク検出ユニット33は、負荷回路(分岐回路C1)と電気的に並列に接続されており、主幹ブレーカ3に電気的に接続された電路においてアーク故障が発生すると、検知ルート331を構成する抵抗334の両端間に発生する電圧のピーク値(絶対値)が閾値以上になる。ここで、測定回路332が、検知ルート331を構成する抵抗334の両端間の電圧を測定し、判定回路333が、測定回路332の測定結果に基づいてアーク故障の有無を判定しているので、測定回路332の測定結果に基づいてアーク故障の有無を判定できる。
このように、アーク検出システム100の構成要素は、主幹開閉器3の第1ケース39に対して取り付けられる第2ケース330に収容されている。そして、第2ケース330を第1ケース39に対して取り付けることによって、アーク検出システム100は主幹開閉器3に一体的に設けられている。主幹開閉器3に一体的に設けられたアーク検出システム100は、主幹開閉器3に接続された電路に流れる電流に基づいてアーク故障の有無を検出する。したがって、アーク検出システム100は、主幹開閉器3に接続された幹線回路C2に流れる電流に基づいて、複数の分岐回路C1でのアーク故障の有無をまとめて検出することができ、個々の分岐回路C1に対してアーク検出ユニット33を設ける必要がないという利点がある。
なお、本実施形態では、アーク検出ユニット33の接続端子T3(第2接続端子)が、主幹ブレーカ3の一次側端子T1に接触しているが、主幹ブレーカ3の二次側端子T2に接触することによって、複数の電路(配線C11)に電気的に接続されてもよい。
また、上記の実施形態においてアーク検出システム100の少なくとも一部の機能(例えば、アーク検出ユニット33の機能)がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
反対に、上記の実施形態において、複数の筐体に分散されているアーク検出システム100の機能の少なくとも一部が、1つの筐体内に集約されていてもよい。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係るアーク検出システム(100)は、アーク検出ユニット(33)を備える。アーク検出ユニット(33)は、交流電源(20)と少なくとも1つの負荷回路(C1)との間を電気的に接続する複数の電路(C11)の間に発生する交流電圧(V1)に基づいてアーク故障の有無を検出する。アーク検出ユニット(33)が、交流電源(20)と少なくとも1つの負荷回路(C1)との間に電気的に接続される主幹開閉器(3)と一体的に設けられている。
この態様によれば、アーク検出ユニット(33)は、複数の電路(C11)の間に発生する交流電圧(V1)に基づいて、アーク故障の有無を検出する。このアーク検出ユニット(33)は主幹開閉器(3)と一体的に設けられているので、アーク検出ユニット(33)は、主幹開閉器(3)に電気的に接続されている電路(C11)でのアーク故障の有無を検出することができる。よって、主幹開閉器(3)に複数の分岐回路(C1)が電気的に接続されている場合に、複数の分岐回路(C1)の各々にアーク故障の有無を検出するための回路を設ける必要がない。したがって、複数の分岐回路(C1)におけるアーク故障の有無をまとめて検出可能なアーク検出システム(100)を提供できる、との利点がある。
第2の態様に係るアーク検出システム(100)では、第1の態様において、主幹開閉器(3)は、漏電の有無を検出する検出回路(31)と、検出回路(31)に動作電力を供給する電源回路(32)と、を有する。電源回路(32)が、アーク検出ユニット(33)に動作電力を供給する。
この態様によれば、漏電の検出回路(31)と、アーク検出ユニット(33)とに、1つの電源回路(32)から動作電力を供給することができる。
第3の態様に係るアーク検出システム(100)では、第1又は第2の態様において、主幹開閉器(3)が有する第1ケース(39)と、アーク検出ユニット(33)を収容する第2ケース(330)とが互いに接続されている。
この態様によれば、第2ケース(330)を第1ケース(39)に取り付けることによって、アーク検出ユニット(33)の機能を主幹開閉器(3)に後付けすることができる。
第4の態様に係るアーク検出システム(100)では、第1~第3のいずれかの態様において、アーク検出ユニット(33)は、負荷回路(C1)と電気的に並列に接続されている。
この態様によれば、複数の分岐回路(C1)におけるアーク故障の有無をまとめて検出可能なアーク検出システム(100)を提供できる、との利点がある。
第5の態様に係るアーク検出システム(100)では、第1~第4のいずれかの態様において、主幹開閉器(3)は、複数の電路(C11)が電気的に接続される第1接続端子(T1,T2)を有している。アーク検出ユニット(33)は、第1接続端子(T1,T2)に接触することによって複数の電路(C11)に電気的に接続される第2接続端子(T3)を有している。
この態様によれば、複数の分岐回路(C1)におけるアーク故障の有無をまとめて検出可能なアーク検出システム(100)を提供できる、との利点がある。
第6の態様に係るアーク検出システム(100)では、第1~第5のいずれかの態様において、アーク検出ユニット(33)は、コンデンサ(335)と抵抗(334)との直列回路と、測定回路(332)と、判定回路(333)と、を備える。コンデンサ(335)と抵抗(334)との直列回路は、複数の電路(C11)の間に電気的に接続される。測定回路(332)は、抵抗(334)に発生する電圧を測定する。判定回路(333)は、測定回路(332)の測定結果に基づいてアーク故障の有無を判定する。コンデンサ(335)が主幹開閉器(3)に内蔵されている。
この態様によれば、測定回路(332)は、コンデンサ(335)と抵抗(334)との直列回路において抵抗(334)に発生する電圧を測定している。コンデンサ(335)は主幹開閉器(3)に内蔵されているので、コンデンサ(335)を外付けする手間が不要になるとの利点がある。
第7の態様に係るアーク検出システム(100)では、第1~第6のいずれかの態様において、アーク検出ユニット(33)は、電路(C11)に流れる電流に更に基づいて、アーク故障の有無を検出する。
この態様によれば、アーク検出ユニット(33)は、複数の電路(C11)の間に発生する交流電圧(V1)と、電路(C11)に流れる電流との両方に基づいて、アーク故障の有無を検出することができる。
第8の態様に係るアーク検出システム(100)では、第1~第7のいずれかの態様において、アーク検出ユニット(33)の検出結果を出力する出力部(35)が主幹開閉器(3)に設けられている。
この態様によれば、出力部(35)によってアーク検出ユニット(33)の検出結果を出力することができる。
第9の態様に係るアーク検出システム(100)では、第8の態様において、出力部(35)は、アーク検出ユニット(33)の検出結果を外部システム(300,400)に出力する。
この態様によれば、アーク検出ユニット(33)の検出結果を外部システム(300,400)に出力することができる。
第10の態様に係るアーク検出システム(100)では、第1~第9のいずれかの態様において、アーク検出ユニット(33)がアーク故障を検出した場合に電路(C11)を遮断する遮断回路(34)が主幹開閉器(3)に設けられている。
この態様によれば、アーク故障を検出した場合に、遮断回路(34)が電路(C11)を遮断することで、主幹開閉器(3)の二次側に接続されている回路(C100)を保護することができる。
第11の態様に係る分電盤(1)は、第1~第10のいずれかの態様のアーク検出システム(100)と、アーク検出システム(100)を収容する分電盤用キャビネット(10)と、を備える。
この態様によれば、複数の分岐回路(C1)におけるアーク故障の有無をまとめて検出可能なアーク検出システム(100)を備える分電盤(1)を提供することができる。
第2~第10の態様に係る構成については、アーク検出システム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。