(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る異常検知システム100の概要について、図1を参照して説明する。
異常検知システム100は、配電システム101の配線C11の状態を監視するためのシステムである。配電システム101は、分電盤システム1等を含み、分電盤システム1にて、例えば、系統電源20等から供給される電力を、複数の回路C1に分配する。配線C11は、複数の回路C1に含まれている。言い換えれば、複数の回路C1は、それぞれ配線C11を含んでいる。
本実施形態では、配電システム101は、少なくとも3つの極を含む。一例として、単相三線式であれば、配電システム101は、第1電圧極(L1極)、第2電圧極(L2極)、及び中性極(N極)の3つの極を含む。そして、配電システム101は、3つの極のうちの一対の極からなる複数の相のいずれかの相にて負荷に電力を供給する。すなわち、単相三線式であれば、第1電圧極、第2電圧極及び中性極のうちのいずれか一対の極からなる相として、L1−N相、L2−N相及びL1−L2相の3つの相がある。L1−N相は第1電圧極とN極とからなり、L2−N相は第2電圧極とN極とからなり、L1−L2相は第1電圧極と第2電圧極とからなる。配電システム101は、このような複数の相のうちのいずれかの相にて、負荷に電力を供給する。
本実施形態では、異常検知システム100は、複数の回路C1のいずれかにおける配線C11の異常を検知し、検知結果に応じた出力を行うように構成されている。これにより、異常検知システム100では、例えば、配線C11の異常の発生時に、ユーザに通知したり、回路C1を電気的に遮断したりすることが可能である。
本開示でいう「配線の異常」は、複数の回路C1に含まれる配線C11に生じ得る異常を意味し、配線C11における絶縁劣化又は半断線等の異常、例えば、配線C11がより線であれば、より線を構成する複数本の素線のうちの一部の素線が断線した状態等を含む。具体的には、配線C11の異常は、配線C11が一対の電線(極)で構成される場合に、一対の電線間が短絡することでアーク(いわゆるパラレルアーク)が発生することを含む。また、配線C11の異常は、配線C11が一対の電線(極)で構成される場合に、一対の電線のうちの一方が半断線することでアーク(いわゆるシリーズアーク)が発生することを含む。その他、例えば、配線C11に定格電流を超える過電流又は短絡電流が流れている状態、又は配線C11に漏電が生じている状態等も、配線C11の異常に含まれる。本実施形態では一例として、「配線の異常」は、配線C11におけるパラレルアーク(短絡)とシリーズアーク(半断線)との少なくとも一方であることと仮定する。
本実施形態では、異常検知システム100は、分電盤システム1の分電盤用キャビネット10(図2参照)に収容されている。つまり、異常検知システム100は分電盤システム1に含まれている。分電盤用キャビネット10内には、主幹ブレーカ3、及び複数の分岐ブレーカ4が収容されている。言い換えれば、本実施形態に係る分電盤システム1は、異常検知システム100と、複数の分岐ブレーカ4と、を備えている。複数の分岐ブレーカ4は、複数の回路C1にそれぞれ挿入されている。また、本実施形態では、複数の分岐ブレーカ4は、後述する制御部713にて制御される。さらに、本実施形態では、複数の分岐ブレーカ4は、(配電システム101における)複数の相のうちの少なくとも1つの相を複数の回路C1に分岐する。一例として、配電システム101が単相三線式であってL1−N相、L2−N相及びL1−L2相の3つの相を含む場合、このうちの少なくとも1つの相(例えばL1−N相)が、複数の分岐ブレーカ4にて複数の回路C1に分岐される。
ここで、本実施形態に係る異常検知システム100は、図1に示すように、検知部33と、推定部715と、を備えている。検知部33は、配電システム101における、配線C11の異常を検知する。配電システム101は、3つの極を含み3つの極のうちの一対の極からなる複数の相のいずれかの相にて負荷(電気機器23,24等)に電力を供給する。推定部715は、検知部33が異常の発生を検知した場合、検知部33の検知結果に基づいて、複数の相のうちのいずれの相が異常の発生元であるかを推定する。
本開示でいう「異常の発生元」は、検知部33にて配線C11の異常の発生が検知された場合における、この異常が発生している箇所を意味する。そして、本実施形態では、推定部715は、複数の相のうちのいずれの相が「異常の発生元」であるかを推定するので、「異常の発生元」は「相」単位で推定される。一例として、配電システム101が単相三線式であってL1−N相、L2−N相及びL1−L2相の3つの相を含む場合、L1−N相の配線C11にて異常が発生したとすれば、L1−N相が「異常の発生元」となる。
すなわち、本実施形態に係る異常検知システム100は、配線C11の異常を検知する検知部33に加えて、複数の相のうちのいずれの相が異常の発生元であるかを推定する推定部715を備えている。つまり、異常検知システム100では、配線C11の異常が発生した場合に、単に異常の発生が検知されるだけでなく、異常が、配電システム101に含まれる複数の相のうちのいずれの相で発生しているかを推定することができる。よって、同じような配線C11の異常の発生時であっても、例えば、異常の発生元がL1−N相である場合と、L2−N相である場合と、L1−L2相である場合とで、異なる措置をとることが可能となる。このように、異常検知システム100によれば、より多様な異常の検知が可能である、という利点がある。
(2)構成
以下、本実施形態に係る異常検知システム100及び分電盤システム1の構成について、さらに詳細に説明する。
(2.1)前提
異常検知システム100を含む分電盤システム1は、例えば、戸建て住宅又は集合住宅の住戸等の施設500に設置されて使用される。分電盤システム1が設置される施設500は、戸建て住宅又は集合住宅の各住戸に限定されず、非住宅の施設(例えば、工場、商業用ビル、オフィスビル、病院又は学校等)であってもよい。
以下の説明では、特に断りがない限り、図2においてX軸方向を左右方向、Z軸方向を上下方向と規定する。また、X軸方向及びZ軸方向とそれぞれ直交する方向を前後方向と規定する。さらに、X軸方向の正の向きを右側、Z軸方向の正の向きを上側と規定する。ただし、これらの方向は一例であり、分電盤用キャビネット10及び分電盤システム1の使用時の方向を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
本開示でいう「回路」は、検知部33での異常の検知対象となる配線C11を含む回路であって、例えば、分電盤システム1の内部に設置されている複数の分岐ブレーカ4を含み得る。また、回路C1は、分岐ブレーカ4の二次側に電気的に接続されるコンセント22若しくは電気機器24、又は分岐ブレーカ4の二次側に直接、電気的に接続される電気機器23を含み得る。以下では、分岐ブレーカ4のように、回路(回路C1)を遮断する機能を有する機器を「開閉器2」ともいう。
例えば、分電盤システム1の分電盤用キャビネット10内に、主幹ブレーカ3と、複数の分岐ブレーカ4と、が含まれる場合、主幹ブレーカ3の二次側端子T2につながっている幹線の電力が、分電盤システム1にて複数の分岐回路に分配されることになる。本開示でいう「分岐回路」は、幹線と電気的に接続され、分電盤システム1にて幹線から複数に分岐される個々の回路C1を意味する。このような分岐回路は、分岐ブレーカ4、配線C11、配線器具(スイッチ装置又はコンセント(アウトレット)等)及び電気機器23,24を含んでいる。回路C1は、主幹ブレーカ3の二次側端子T2につながる幹線であってもよいし、複数の分岐回路の各々であってもよい。本実施形態では一例として、複数の分岐回路の各々が回路C1である場合について説明する。
また、本開示でいう回路C1等の「遮断」は、電気的に遮断すること、つまり、電力の供給を停止することを意味する。例えば、一部の回路C1が遮断された状態とは、一部の回路C1への電力の供給が停止した状態を意味する。反対に、回路C1が遮断されていない状態とは、回路C1が通電状態にあることを意味する。遮断は、分岐ブレーカ4等の開閉器2によって行われる。つまり、開閉器2を介して系統電源20等の電源に接続された回路C1であれば、開閉器2がオン(導通)のときには遮断されておらず、開閉器2がオフ(非導通)のときに遮断されることになる。
(2.2)全体構成
次に、本実施形態に係る異常検知システム100及び分電盤システム1の構成について、図1、図2及び図3を参照して説明する。
上述した通り、本実施形態に係る分電盤システム1は、異常検知システム100と、複数の分岐ブレーカ4と、を備えている。本実施形態では、分電盤システム1は、複数の分岐ブレーカ4等を収容する分電盤用キャビネット10を更に備えている。本実施形態では、異常検知システム100は、分電盤用キャビネット10に収容されている監視ユニット7と、検知部33と、を主構成とする。
分電盤用キャビネット10は、図2に示すように、主幹ブレーカ3と、複数の分岐ブレーカ4と、感震ブレーカ5と、連系ブレーカ6と、検知部33と、監視ユニット7と、電流計測装置8と、バックアップ電源9(図1参照)と、を収容する。ここで、複数の分岐ブレーカ4の各々は、複数の回路C1の各々について通電/遮断を切り替えるための開閉器2を構成する。分電盤用キャビネット10が、検知部33、監視ユニット7、電流計測装置8及びバックアップ電源9を収容することは必須ではない。検知部33、監視ユニット7、電流計測装置8及びバックアップ電源9の少なくとも一部が分電盤用キャビネット10外にあってもよい。また、異常検知システム100を備える分電盤システム1としては、主幹ブレーカ3、感震ブレーカ5及び連系ブレーカ6は必須の構成ではなく、主幹ブレーカ3、感震ブレーカ5及び連系ブレーカ6の少なくとも1つは、適宜省略されてもよい。
分電盤用キャビネット10は、前面が開口した箱状のボディ11(図2参照)と、ボディ11の開口を塞ぐカバーと、を備えている。図2においては、カバーの図示を省略している。分電盤用キャビネット10は、例えば建物の壁110(図2参照)等、建物を構成する部材に取り付けられる。分電盤用キャビネット10は、壁110に設けられた取付孔に一部又は全体が埋め込まれた状態で取り付けられてもよい。分電盤用キャビネット10は、例えば、平均的な身長の子供では手が届かないような高さ位置であって、平均的な身長の大人であれば操作が可能なような高さ位置に設けられる。
また、分電盤用キャビネット10は、分電盤用キャビネット10が壁110に取り付けられた状態でカバーの前面を覆う蓋体を更に備える。蓋体は、閉位置と開位置との間で移動可能な状態でカバーに取り付けられる。閉位置は、カバーの前面を覆う位置である。開位置は、カバーの前面の少なくとも一部を覆わない位置である。蓋体は、ある方向からカバーを見た場合にカバーの前面の一部を覆っていればよく、本実施形態では、閉位置にある蓋体は、カバーを前方から見た場合にカバーの前面の略全体を覆っている。
分電盤用キャビネット10の内部には、図2に示すように、主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、検知部33、監視ユニット7及び電流計測装置8が収容されている。主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、検知部33、監視ユニット7及び電流計測装置8は、ボディ11に直接又は取付用の部品等を介して取り付けられている。図2は、分電盤用キャビネット10の内部における主幹ブレーカ3、複数の分岐ブレーカ4、感震ブレーカ5、連系ブレーカ6、検知部33、監視ユニット7及び電流計測装置8の配置を示しているが、これらの配置は一例であり、適宜変更が可能である。また、図2ではバックアップ電源9の図示を省略しているが、バックアップ電源9は分電盤用キャビネット10の内部の適宜の位置に配置されていればよい。
主幹ブレーカ3は、分電盤用キャビネット10の内部において、左右方向の中央よりもやや左側の位置に配置されている。分電盤用キャビネット10の内部での主幹ブレーカ3の位置は、例えば中央よりも右側等、他の位置であってもよい。主幹ブレーカ3は、一次側端子T1と二次側端子T2との間に電気的に接続された接点31(図1参照)を備える。主幹ブレーカ3は、接点31をオン又はオフにするための操作レバーを前面に備えている。また、主幹ブレーカ3は、例えば接点31に漏電電流が流れる異常状態を検出する検出部32(図1参照)を備えている。主幹ブレーカ3は、検出部32にて接点31に漏電電流が流れる異常状態を検出すると、接点31を開極させる。これにより、主幹ブレーカ3は、主幹ブレーカ3の二次側の回路への電力供給を遮断し、回路を保護している。また、主幹ブレーカ3は、検出部32にて短絡電流又は過負荷電流等の過電流を検出すると、接点31を開極させる。また、主幹ブレーカ3の検出部32は、単相三線式配線における中性線の欠相状態を検出する機能を有する。そして、主幹ブレーカ3は、検出部32が中性線の欠相状態を検出すると、接点31を開極させる。主幹ブレーカ3は、所定の制限値を超える電流が流れると、接点31を開極させるリミッタ機能を備えていてもよい。
主幹ブレーカ3の一次側端子T1には、図2に示すように、系統電源20の単相三線式の引込線CB1が電気的に接続される。主幹ブレーカ3の二次側端子T2には、単相三線式配線における第1電圧極(L1極)の導電バーCB21(図3参照)、第2電圧極(L2極)の導電バーCB22(図3参照)、及び中性極(N極)の導電バーCB20(図3参照)が接続されている。
本実施形態では、配電システム101は、単相三線式であって、第1電圧極(L1極)、第2電圧極(L2極)、及び中性極(N極)の3つの極を含んでおり、各極の導電バーCB21,CB22,CB20を有している。そして、配電システム101は、3つの極のうちの一対の極からなる複数の相のいずれかの相にて負荷(電気機器23,24等)に電力を供給する。
すなわち、単相三線式であれば、第1電圧極、第2電圧極及び中性極のうちのいずれか一対の極からなる相として、第1相(L1−N相)、第2相(L2−N相)及び第3相(L1−L2相)の3つの相がある。つまり、第1相(L1−N相)は第1電圧極とN極とからなり、第2相(L2−N相)は第2電圧極とN極とからなり、第3相(L1−L2相)は第1電圧極と第2電圧極とからなる。第1相(L1−N相)及び第2相(L2−N相)にはそれぞれ100V回路が接続され、第3相(L1−L2相)には200V回路が接続される。各導電バーCB21,CB22,CB20は、導電部材により左右方向に長い長尺板状に形成されており、分電盤用キャビネット10の内部において、上下方向の中央であって主幹ブレーカ3の右側の位置に配置されている。
複数の分岐ブレーカ4は、各導電バーCB21,CB22,CB20の上側と下側とに分かれて、それぞれ複数個ずつ左右方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、図2に示すように、各導電バーCB21,CB22,CB20の上側には、12個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。また、各導電バーCB21,CB22,CB20の下側には、10個の分岐ブレーカ4が左右方向に並ぶように配置されている。
各分岐ブレーカ4は、一対の一次側端子と、一対の二次側端子と、を備えている。各分岐ブレーカ4は、一次側端子と二次側端子との間に電気的に接続される接点を有している。各分岐ブレーカ4の前面には、各分岐ブレーカ4が内蔵する接点をオン又はオフにするための操作レバーが設けられている。
分岐ブレーカ4には、100V回路に含まれる100V用と、200V回路に含まれる200V用とがある。100V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バーCB21及び第2電圧極の導電バーCB22のうちの一方と、中性極の導電バーCB20とにそれぞれ電気的に接続される。これにより、100V回路は、第1相(L1−N相)又は第2相(L2−N相)に分類される。つまり、100V回路は、第1相又は第2相に含まれることになる。200V用の分岐ブレーカ4が備える一対の一次側端子は、第1電圧極の導電バーCB21と、第2電圧極の導電バーCB22とにそれぞれ電気的に接続される。これにより、200V回路は、第3相(L1−L2相)に分類される。つまり、200V回路は、第3相に含まれることになる。また、分岐ブレーカ4の二次側端子には、対応する配線C11が電気的に接続される。各分岐ブレーカ4の二次側端子に接続された配線C11には、例えば、照明器具、給湯設備等の電気機器23、コンセント22(図1参照)又は壁スイッチ等の配線器具が負荷として1つ以上接続される。したがって、分電盤システム1は、分岐ブレーカ4の二次側端子に配線C11を介して接続された電気機器23、又はコンセント22に接続された電気機器24(例えば空調機器又はテレビ受像器等)等に電力を供給することができる。
また、開閉器2としての分岐ブレーカ4は、検出部202(図1参照)と、遮断部203(図1参照)と、を備えている。遮断部203は、分岐ブレーカ4に内蔵され、分岐ブレーカ4における一次側端子と二次側端子との間に電気的に接続された接点を含んでいる。遮断部203は、例えば、電磁駆動により、この接点を開閉する。遮断部203は、少なくとも、接点を開極させることによって、分岐ブレーカ4における一次側端子から二次側端子を電気的に切り離す。このように、遮断部203が接点を開極させることにより、分岐ブレーカ4がオフ(非導通)となり、この分岐ブレーカ4を含む回路C1が遮断される。反対に、遮断部203は、接点を閉成させることによって、分岐ブレーカ4における一次側端子と二次側端子とを電気的に接続する。
検出部202は、短絡電流又は過負荷電流等の過電流が流れる異常状態を検出する。分岐ブレーカ4は、検出部202にて遮断部203の接点に過電流が流れる異常状態を検出すると、遮断部203を駆動して接点を開極させる。これにより、分岐ブレーカ4は、過電流等の異常状態が発生すると、分岐ブレーカ4の二次側の回路への電力供給を遮断し、回路を保護している。また、検出部202は、分岐ブレーカ4に接続された配線C11の漏電状態を検出する機能を備えていてもよい。この場合、分岐ブレーカ4は、検出部202が漏電の発生を検出すると、接点を開極させる。
ここで、開閉器2(分岐ブレーカ4)は、通信部201を更に備えている。通信部201は、監視ユニット7の通信部72(後述する)と通信可能に構成されている。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信の適宜の通信方式により、直接的、又はネットワーク若しくは中継器等を介して間接的に、信号を授受できることを意味する。すなわち、開閉器2(通信部201)と監視ユニット7(通信部72)とは、互いに信号を授受することができる。ここでは、複数の開閉器2の各々には固有のアドレスが設定されている。つまり、通信部201は、開閉器2に設定されたアドレス(メモリ等に記憶されたアドレス)を用いて、監視ユニット7と通信を行う。
本実施形態では、通信部201と監視ユニット7とは、互いに双方向に通信可能であって、通信部201から監視ユニット7への信号の送信、及び監視ユニット7から通信部201への信号の送信の両方が可能である。
また、本実施形態では、通信部201は、電流計測装置8の基板を、監視ユニット7との間の通信経路の少なくとも一部に用いる。言い換えれば、基板の導電層が、通信部201と監視ユニット7との間の通信経路の一部を構成する。通信部201と基板との間の通信方式は、例えば、RS−485、又は有線LAN(Local Area Network)等の通信規格に準拠した有線通信を適宜採用可能である。
このように、通信部201及び遮断部203を備えた開閉器2(分岐ブレーカ4)においては、通信部201が受信する制御信号に応じて、遮断部203の接点を開閉することが可能である。そのため、開閉器2(分岐ブレーカ4)は、例えば、遠隔制御によって、遮断部203が接点を開極させることにより回路C1を遮断したり、遮断部203が接点を閉成させることにより回路C1を通電したりすることができる。
感震ブレーカ5は、導電バーCB21,CB22,CB20の下側において、分岐ブレーカ4と左右方向に並ぶように配置されている。感震ブレーカ5は、分電盤用キャビネット10に加わる振動を検出する感震センサ51を有している。感震センサ51が所定の基準値(例えば震度「5」の地震動)を超える大きさの振動を検出すると、感震ブレーカ5は回路を遮断する遮断動作を行う。感震ブレーカ5は、例えば第1電圧極又は第2電圧極と中性極との間を比較的低抵抗のインピーダンス要素を介して電気的に接続することで疑似的な漏電状態を発生させる。感震ブレーカ5が疑似的な漏電状態を発生させると、主幹ブレーカ3の検出部32が、感震ブレーカ5が発生させた疑似的な漏電状態を検出し、接点31を開極させる。これにより、地震等によって分電盤用キャビネット10に基準値を超える大きさの振動が加わると、主幹ブレーカ3の二次側に接続された回路への電力供給を遮断することができる。
連系ブレーカ6には、施設500に設けられた分散電源21が接続される。連系ブレーカ6は、主幹ブレーカ3の二次側端子T2に電気的に接続された導電バーCB21,CB22,CB20と、分散電源21との間に電気的に接続される。連系ブレーカ6の接点がオンになると、分散電源21が系統電源20と連系して負荷に電力を供給することができる。一方、連系ブレーカ6の接点がオフになると、分散電源21が系統電源20から解列される。連系ブレーカ6は、例えば漏電の発生を検出する検出機能を有している。連系ブレーカ6が検出機能にて漏電の発生を検出すると、連系ブレーカ6は遮断動作を行い、分散電源21を系統電源20から解列させる。連系ブレーカ6は、短絡電流等の過電流を検出する検出機能を備えていてもよく、この場合に、連系ブレーカ6が過電流を検出すると、連系ブレーカ6が遮断動作を行うように構成されてもよい。
電流計測装置8は、複数の分岐ブレーカ4の各々に電気的に接続された負荷(電気機器23,24等)に流れる電流を計測するように構成されている。電流計測装置8は、例えば、基板と、複数のコイルと、を有している。基板は、左右方向に長い板状である。基板には、複数の孔が形成されている。複数の孔には、導電バーCB21,CB22,CB20から延びて分岐ブレーカ4の一次側端子に接続される端子がそれぞれ挿入される。コイルは、例えばロゴスキコイルであり、基板の孔の周りに形成されている。本実施形態では、電流計測装置8は、複数の分岐ブレーカ4及び連系ブレーカ6の各々に流れる電流を計測する。ここにおいて、電流計測装置8(電流センサ)は、分電盤システム1が設置される施設500で使用されるエネルギーを管理するエネルギーマネジメントシステムに用いられるセンサと共用される。
バックアップ電源9は、ニッケル水素電池又はリチウムイオン電池等の二次電池であるバッテリ91と、バッテリ91を充電する充電回路と、を含む。バックアップ電源9の充電回路は、例えば、主幹ブレーカ3の一次側から電力の供給を受けて、バッテリ91を充電する。バックアップ電源9は、例えば、系統電源20が停電した場合に、バッテリ91を電源として監視ユニット7等に電力を供給する。したがって、系統電源20が停電した場合でも、監視ユニット7は、バックアップ電源9から電力の供給を受けて動作することができる。系統電源20の正常時には、監視ユニット7は、主幹ブレーカ3の一次側、つまり系統電源20から電力の供給を受けて動作する。
ところで、監視ユニット7は、複数の分岐回路(回路C1)の電流と電力との少なくとも一方を計測する計測機能、及び分電盤用キャビネット10の外部に配置されたコントローラ25との通信機能を有している。
検知部33は、配電システム101における、配線C11の異常を検知する。本実施形態では、検知部33は、監視ユニット7とは別体であって、監視ユニット7とは別のユニットを構成する。検知部33は、監視ユニット7との通信機能を有しており、検知結果を監視ユニット7に出力(送信)可能に構成されている。
検知部33及び監視ユニット7は、異常検知システム100の主構成となるので、検知部33及び監視ユニット7において異常検知システム100に関連する構成の詳細については「(2.3)異常検知システムの構成」の欄で説明する。
コントローラ25は、HEMS(Home Energy Management System)に対応する機器(以下、HEMS対応機器という)の制御又は監視を行う。ここに、HEMS対応機器は、例えばスマートメータ、太陽光発電装置、蓄電装置、燃料電池、電気自動車、空調装置、照明器具、給湯装置、冷蔵庫、電動カーテン、電動シャッタ又はテレビジョン受像機等を含む。HEMS対応機器は、これらの機器に限定されない。本実施形態では、電気機器23,24は、いずれもHEMS対応機器として、コントローラ25と通信可能に構成されている。
また、監視ユニット7は、施設500の外部にある管理サーバ300とも通信可能に構成されている。監視ユニット7は、直接的又はルータ等を介して間接的にインターネット等のネットワーク200に接続され、ネットワーク200を介して管理サーバ300と通信可能になる。これにより、監視ユニット7は、管理サーバ300だけでなく、ネットワーク200に接続される情報端末400等とも通信可能となる。情報端末400は、例えば、施設500の住人(ユーザ)が所有するスマートフォン又はタブレット端末等の携帯端末である。
管理サーバ300又は情報端末400と、監視ユニット7との間の通信は、例えば、コントローラ25を介して行われてもよい。すなわち、コントローラ25がネットワーク200に接続されることで、監視ユニット7は、コントローラ25経由で、ネットワーク200に接続されている管理サーバ300又は情報端末400と通信可能になる。
本実施形態に係る分電盤システム1では、監視ユニット7は、電流計測装置8が計測した複数の分岐回路(回路C1)の各々に流れる電流値を、電流計測装置8から受け取る。さらに、監視ユニット7は、主幹ブレーカ3に流れる電流を計測する主幹電流計測装置が計測した電流値を、主幹電流計測装置から受け取る。監視ユニット7は、電流計測装置8、及び主幹電流計測装置が計測した電流値のそれぞれを電力値(瞬時電力値)に変換する。監視ユニット7は、収集した瞬時電力のデータを所定時間にわたって積算した電力量のデータを演算する機能を有している。したがって、コントローラ25は、複数の分岐回路の各々での瞬時電力や電力量に基づいてHEMS対応機器を制御又は監視することができる。
また、監視ユニット7は、太陽光発電装置、蓄電装置、及び電気自動車に電気的に接続される電力変換装置のうちの少なくとも1つとの間で通信する機能(通信機能)を有している。電力変換装置は、分電盤システム1から電気自動車への単方向充電を行うための電力変換の他、双方向に電力変換を行うことで電気自動車の蓄電池の充電と放電との両方に用いられる構成であってもよい。
また、監視ユニット7は、ガスメータと水道メータとの少なくとも一方との通信機能を有している。監視ユニット7と太陽光発電装置、蓄電装置、及び電力変換装置との間の通信方式は、例えば、RS−485等の通信規格に準拠した有線通信である。監視ユニット7とガスメータ、水道メータとの間の通信方式は、有線通信に限らず、無線通信であってもよい。監視ユニット7は、例えば、貯湯型の給湯装置等と通信可能であってもよい。
(2.3)異常検知システムの構成
次に、異常検知システム100の構成について図1〜図3を用いて説明する。
本実施形態では、既に述べたように、異常検知システム100は、分電盤用キャビネット10に収容される検知部33及び監視ユニット7を主構成としている。そこで、以下では、検知部33及び監視ユニット7の説明と併せて、異常検知システム100について説明する。
まず、検知部33は、図2に示すように、分電盤用キャビネット10の内部において、主幹ブレーカ3の右側に配置されている。検知部33は、導電バーCB21,CB22,CB20の下側において、分岐ブレーカ4と左右方向に並ぶように配置されている。検知部33は、一例として、分岐ブレーカ4又は感震ブレーカ5等と同様のサイズ及び外観を有している。検知部33は、図3に示すように、第1電圧極(L1極)の導電バーCB21、第2電圧極(L2極)の導電バーCB22、及び中性極(N極)の導電バーCB20に対して電気的に接続される。これにより、検知部33は、第1相(L1−N相)、第2相(L2−N相)及び第3相(L1−L2相)の複数の相に対して、電気的に接続されることになる。
本実施形態では、検知部33は、複数の相の各々に印加される電圧V1,V2に関する電圧情報に基づいて配線C11の異常を検知する。ここでは一例として、検知部33は、配電システム101における第1相(L1−N相)、第2相(L2−N相)及び第3相(L1−L2相)の各相に印加される電圧に関する電圧情報として、主幹ブレーカ3の二次側端子T2の電圧を用いる。一例として、検知部33は、主幹ブレーカ3の二次側端子T2に電気的に接続された導電バーCB21,CB22,CB20間の電圧V1,V2に関する情報を、電圧情報として用いて配線C11の異常を検知する。
具体的には、検知部33は、図3に示すように、複数の相のうちの2以上の相に設けられた検知回路331を有している。本実施形態では、検知部33は、2つの検知回路331を有し、第1相(L1−N相)、第2相(L2−N相)及び第3相(L1−L2相)の3つの相のうちの、第1相及び第2相の2つの相に対して、それぞれ検知回路331が設けられている。検知回路331は、3つの極(第1電圧極、第2電圧極及び中性極)のうち、各相を構成する一対の極間に挿入されている。ここで、第1相(L1−N相)に設けられる検知回路331は、第1電圧極(L1極)の導電バーCB21及び中性極(N極)の導電バーCB20間に挿入されている。第2相(L2−N相)に設けられる検知回路331は、第2電圧極(L2極)の導電バーCB22及び中性極(N極)の導電バーCB20間に挿入されている。
各検知回路331は、コンデンサ335と、被測定部である抵抗334と、の直列回路であるCR回路を含む。つまり、検知回路331は、各相を構成する一対の極(第1電圧極及び中性極、又は第2電圧極及び中性極)間に電気的に接続される、コンデンサ335と抵抗(被測定部)334との直列回路を有している。第1相(L1−N相)に設けられる検知回路331においては、第1相を構成する第1電圧極及び中性極間に電気的に接続される、コンデンサ335と抵抗(被測定部)334との直列回路を有している。第2相(L2−N相)に設けられる検知回路331においては、第2相を構成する第2電圧極及び中性極間に電気的に接続される、コンデンサ335と抵抗(被測定部)334との直列回路を有している。
また、検知部33は、抵抗334に発生する電圧を測定する測定回路332と、測定回路332の測定結果に基づいて配線C11の異常の有無を判定する判定回路333と、を更に有している。本実施形態では、検知部33は、2つの測定回路332を有し、第1相(L1−N相)に設けられる検知回路331、及び第2相(L2−N相)に設けられる検知回路331に対して、それぞれ測定回路332が接続されている。第1相(L1−N相)側の検知回路331に接続された測定回路332は、第1相に印加される電圧V1に応じた電圧を測定する。第2相(L2−N相)側の検知回路331に接続された測定回路332は、第2相に印加される電圧V2に応じた電圧を測定する。
ここで、判定回路333で判定の対象とする配線C11の異常は、配線C11におけるパラレルアーク(短絡)とシリーズアーク(半断線)との少なくとも一方からなる「アーク故障」である。判定回路333は、抵抗334の両端間に発生する電圧のピーク値の絶対値と所定の閾値との高低を比較することによって、配線C11の異常(アーク故障)の有無を判定する。この閾値は、回路C1においてアーク故障が発生していない場合に抵抗334の両端間に発生する電圧のピーク値(絶対値)よりは高く、アーク故障が発生している場合に抵抗334の両端間に発生する電圧のピーク値(絶対値)よりも低い電圧値に設定されている。
ここで、各相を構成する一対の極間において回路C1と並列に接続される検知回路331は、コンデンサ335と抵抗334との直列回路であるCR回路で構成されているので、検知回路331のインピーダンスは、周波数が高くなるほど低下する。回路C1においてアーク故障が発生しておらず、回路C1に系統電源20の周波数(例えば50又は60Hz)と同程度の周波数の交流電流が流れている場合、検知回路331にはほとんど電流が流れないように、CR回路の遮断周波数が設定されている。
回路C1においてアーク故障が発生していない場合、回路C1には比較的に低周波(系統電源20の周波数と同程度の周波数)の交流電流が流れる。したがって、検知回路331にはほとんど電流が流れず、測定回路332が測定した抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)は閾値よりも低くなるので、判定回路333は回路C1においてアーク故障が発生していないと判定する。
一方、回路C1においてアーク故障が発生すると、回路C1が接続される一対の極間に高周波の電流が流れるため、検知回路331に高周波の電流が流れることになる。したがって、測定回路332が測定した抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)は閾値以上になるので、判定回路333は、回路C1においてアーク故障が発生したと判定する。
判定回路333は、測定回路332が測定した抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)が閾値以上になるとアーク故障が発生したと判定しているが、この構成に限らない。例えば、判定回路333は、抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)が閾値以上になる状態が、所定時間内に所定回数以上発生すると、アーク故障が発生したと判定してもよい。これにより、ノイズ等によって抵抗334の両端電圧のピーク値(絶対値)が単発的に閾値以上になったことをもって、判定回路333が、アーク故障と誤検出する可能性を低減できる。
本実施形態では、上述した通り、検知部33は、第1相(L1−N相)及び第2相(L2−N相)の2つの相に対応するように、検知回路331及び測定回路332を2つずつ有している。そのため、判定回路333は、第1相側の検知回路331に接続された測定回路332の測定値(抵抗334の両端電圧)からは、第1相に含まれるいずれかの回路C1における配線C11の異常(アーク故障)の有無を判定できる。一方で、判定回路333は、第2相側の検知回路331に接続された測定回路332の測定値(抵抗334の両端電圧)からは、第2相に含まれるいずれかの回路C1における配線C11の異常(アーク故障)の有無を判定できる。したがって、判定回路333では、第1相及び第2相の2つの相については、個別に、配線C11の異常(アーク故障)の有無を判定することが可能である。
このように、本実施形態では、検知部33は、配線C11の異常として、少なくともアークの発生(アーク故障)を検知することが可能である。具体的には、検知部33は、アーク短絡保護遮断器(AFCI:Arc Fault Circuit Interrupter)と同様の技術により、配線C11でアークが発生しているか否かを判定することができる。すなわち、アーク短絡保護遮断器では、電子回路を使用して、配線C11で発生するアークに特有の電流特性及び電圧特性を認識し、配線C11で発生するアークを検知できる。これと同様の原理により、検知部33は、回路C1の配線C11でアークが発生しているか否かを判定することが可能である。
ここで、配線C11で発生し得るアークには、既に述べたように、パラレルアークと、シリーズアークと、の2種類が存在する。以下に、パラレルアーク及びシリーズアークについて、図4A〜図5Bを参照して簡単に説明する。図5A及び図5Bは、横軸を時間、縦軸を電流として、それぞれパラレルアーク及びシリーズアークが生じた場合に配線C11を流れる電流波形の一例を示している。
パラレルアークは、例えば図4Aに示すように、配線C11を構成する一対の電線C10の導体が接触する等して短絡することにより発生し得る。図4Aにおける点線の矢印I1は、パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の経路を模式的に表している。パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、例えば、数十〔A〕〜数百〔A〕である。パラレルアークは、例えば、施設500にある器物(一例として家具等)の端縁に配線C11が引っ掛かることで被覆C12が損傷したり、ステップル等の金属製の部材で配線C11を挟み込んだりすることで生じ得る。また、パラレルアークは、例えば配線C11に過電流が流れて被覆C12が溶融したり、動物が配線C11をかじって被覆C12が損傷したりすることでも生じ得る。その他、パラレルアークは、配線C11が長期的に紫外線を浴び続けることで被覆C12が絶縁劣化した場合にも生じ得る。
図5Aは、パラレルアークの発生時において配線C11を流れる電流の波形の一例を示す。図5Aに示すように、パラレルアークの発生時においては、配線C11には、断続的にパルス電流が流れる。つまり、パラレルアークの発生時においては、配線C11に流れる電流の波形には、パラレルアークの発生に伴う固有のパターンが含まれる。
シリーズアークは、例えば図4Bに示すように、配線C11を構成する一対の電線C10のうちの一方が半断線することにより発生し得る。図4Bにおける点線の矢印I2は、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の経路を模式的に表している。シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、数〔A〕〜30〔A〕である。そのため、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の大きさは、異常の発生していない正常時において配線C11に接続される負荷(例えば、電気機器23,24)に流れる電流の大きさよりも小さくなることもある。シリーズアークは、例えば配線C11が繰り返し曲げられたり、配線C11が過度な力で引っ張られたりすることで生じ得る。
図5Bは、シリーズアークの発生時において配線C11を流れる電流の波形の一例を示す。図5Bに示すように、シリーズアークの発生時においては、配線C11には、負荷(例えば、電気機器23,24)に供給される電流に対して、シリーズアークに特有の高周波成分が重畳された電流が流れる。つまり、シリーズアークの発生時に配線C11を流れる電流は、図5Bに例示するようなシリーズアークに特有の高周波成分を含み得る。
ここにおいて、検知部33は、回路C1に関する1以上の物理量からなる監視対象に基づいて異常を検知する。すなわち、本実施形態では、上述したように、検知部33は、複数の相の各々に印加される電圧に関する電圧情報に基づいて配線C11の異常を検知している。各相に印加される電圧は、回路C1に関する物理量であるので、本実施形態では、少なくとも複数の回路C1に印加される電圧が監視対象に含まれることになる。また、検知部33は、電圧だけでなく、回路C1に関する1以上の物理量を監視対象として、監視対象に基づいて配線C11の異常を検知することが可能である。
電圧以外に、監視対象となり得る物理量としては、例えば、電流、温度、色、音、匂い又は変形等がある。すなわち、回路C1の配線C11において、上述したアーク(パラレルアーク又はシリーズアーク)のような異常が発生すると、電圧以外の物理量にも何かしらの特徴が現れることがある。一例として、この種の配線C11の異常が発生した回路C1においては、配線C11を流れる電流の波形に、異常の発生に伴う固有のパターンが含まれることがある。また、この種の配線C11の異常が発生した回路C1においては、例えば、配線C11の発熱等に伴い、配線C11について、温度変化、色変化(変色)、音(振動音等)、匂い又は変形等に固有の特徴が含まれることがある。
そこで、検知部33は、例えば、温度センサ、イメージセンサ、匂いセンサ又はその他の物理量センサの出力を用いて、電圧と共に又は電圧に代えて、電圧以外の物理量からなる監視対象に基づいて異常を検知してもよい。このように、検知部33で用いられる監視対象としての物理量は、電圧だけでなく、例えば、電流、温度、色、音、匂い又は変形等の電圧以外の物理量も含み得る。
さらに、本実施形態では、検知部33は、上述したような監視対象が異常を表す状態が、ある検知時間にわたって継続した場合に、初めて配線C11の異常が発生していると判定する。つまり、回路C1を流れる電流等の監視対象が異常を表す状態が、検知時間に達する前に解消された場合には、検知部33は、配線C11の異常が発生したとは判定しない。これにより、検知部33では、例えば、ノイズ等の影響で監視対象が異常を表す状態が一瞬だけ生じた場合に、誤って配線C11の異常と判定しにくくなり、配線C11の異常の検知精度が向上する。
次に、監視ユニット7の配置に関して、監視ユニット7は、例えば、分電盤用キャビネット10の内部において、主幹ブレーカ3の左側に配置されている(図2参照)。監視ユニット7は、主幹ブレーカ3の一次側から電力の供給を受けて動作するので、主幹ブレーカ3が遮断動作を行った場合でも動作が可能である。系統電源20が停電した場合には、監視ユニット7は、バックアップ電源9から電力の供給を受けるので、系統電源20の停電時でも動作が可能である。
監視ユニット7は、電流計測装置8と電気的に接続されている。さらに、監視ユニット7には、主幹ブレーカ3に流れる電流を計測する主幹電流計測装置が電気的に接続されている。そして、監視ユニット7は、電流計測装置8及び主幹電流計測装置が計測した電流の値に基づいて電力値を演算する機能(計測機能)を有している。電流計測装置8は、複数の分岐回路の各々に流れる電流を計測するので、監視ユニット7では、電流計測装置8が計測した電流値に基づいて、各分岐回路の電流と電力との少なくとも一方を計測する。
また、監視ユニット7は、上述したように、HEMS対応機器の制御又は監視を行うように構成されたコントローラ25との間で通信する機能(通信機能)を有している。本実施形態では、上述したように、電気機器23,24は、いずれもHEMS対応機器として、コントローラ25と通信可能に構成されている。つまり、電気機器23,24は、いずれもコントローラ25による制御又は監視の対象である。
監視ユニット7とコントローラ25との間の通信方式は、例えば、920MHz帯の特定小電力無線局(免許を要しない無線局)、Wi-Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信規格に準拠した、電波を媒体とした無線通信である。監視ユニット7とコントローラ25との間の通信方式は、有線LAN等の通信規格に準拠した有線通信であってもよい。また、監視ユニット7とコントローラ25との間の通信における通信プロトコルは、例えば、Ethernet(登録商標)、ECHONET Lite(登録商標)等である。コントローラ25とHEMS対応機器(電気機器23,24を含む)との間の通信方式についても、監視ユニット7とコントローラ25との間の通信方式と同様に、適宜の通信方式を採用可能である。上記より、監視ユニット7は、コントローラ25を経由することで、HEMS対応機器(電気機器23,24)とも間接的に通信可能である。
ここで、本実施形態では、監視ユニット7とコントローラ25との間、及び監視ユニット7と管理サーバ300又は情報端末400との間のいずれにおいても、双方向の通信が可能である。したがって、例えば、監視ユニット7からコントローラ25を介してHEMS対応機器に信号を送信することもでき、反対に、HEMS対応機器からコントローラ25を介して監視ユニット7に信号を送信することもできる。
また、上述したように、監視ユニット7は、ネットワーク200を介して管理サーバ300又は情報端末400とも通信可能である。監視ユニット7と、管理サーバ300又は情報端末400との間においても、双方向の通信が可能である。
より詳しくは、監視ユニット7は、図1に示すように、情報処理部71と、通信部72と、提示部73と、記憶部74と、を備えている。
情報処理部71は、例えば、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムの1以上のメモリに記録されたプログラムを1以上のプロセッサが実行することによって、情報処理部71としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
情報処理部71は、計測部711、取得部712、制御部713、報知部714及び推定部715の機能を備える。
計測部711は、分電盤システム1内の主幹ブレーカ3及び分岐ブレーカ4の少なくとも一方を通過する電力を計測する。本実施形態の監視ユニット7は、主幹ブレーカ3に流れる電流を計測する主幹電流計測装置、及び電流計測装置8と電気的に接続されている。ここに、主幹電流計測装置は、例えばカレントトランス(CT)からなる電流センサを備えている。計測部711は、電流計測装置8が計測した複数の分岐ブレーカ4及び連系ブレーカ6の各々に流れる電流値を、電流計測装置8から受け取る。さらに、計測部711は、主幹電流計測装置が計測した電流値(つまり幹線に流れる電流値)を主幹電流計測装置から受け取る。計測部711は、電流計測装置8、及び主幹電流計測装置が計測した電流値のそれぞれを電力値(瞬時電力値)に変換する。また、計測部711は、収集した瞬時電力のデータを所定時間にわたって積算した電力量のデータを演算する機能を有している。
取得部712は、検知部33の検知結果を取得する。つまり、検知部33は、監視ユニット7とは別体であるため、監視ユニット7の取得部712は、検知部33から出力(送信)された検知結果を取得する。本実施形態では、検知部33が監視ユニット7との通信機能を有しているため、取得部712は、検知部33の判定回路333から送信された検知結果を、通信によって取得する。これにより、監視ユニット7では、配電システム101における配線C11の異常(アーク故障)の検知結果を、検知部33から取得することができる。
また、本実施形態では一例として、取得部712で取得された検知部33での検知結果は、報知部714から、情報端末400に送信される。さらに、取得部712で取得された検知部33の検知結果は、報知部714にて、記憶部74に書き込まれる。
制御部713は、複数の開閉器2(分岐ブレーカ4)の各々を制御する。本実施形態では、制御部713は、検知部33で異常の発生が検知された場合に電力供給を遮断する。制御部713は、後述する推定部715の推定結果に基づいて遮断を行う。例えば、制御部713は、推定部715の推定結果に基づいて、開閉器2(分岐ブレーカ4)を遮断することによって、開閉器2を含む回路C1への電力供給を遮断する。
本実施形態では一例として、制御部713は、回路C1の制御に際しては、回路C1を制御するための制御信号を回路C1へ出力する。これにより、制御部713は、複数の回路C1の各々を制御することが可能である。本開示でいう「回路C1の制御」は、回路C1への電力供給の遮断及び復旧、回路C1を流れる電流の制限、並びに回路C1に含まれる電気機器23,24の制御等を含み得る。
一例として、制御部713は、検知部33の検知結果に応じて、開閉器2の通信部201に制御信号を送信することにより、複数の開閉器2の各々を制御し、複数の回路C1の各々の通電/遮断を切り替える。つまり、制御部713は、いずれかの回路C1に含まれる開閉器2(通信部201)に制御信号を出力することで、この開閉器2に内蔵されている接点(遮断部203)を開極させ、この回路C1への電力供給を遮断することが可能である。また、制御部713は、いずれかの回路C1に含まれる電気機器23,24に対して、直接的に又はコントローラ25経由で、制御信号を出力することで、この電気機器23,24を制御することが可能である。
報知部714は、ユーザに対する報知を行う。報知部714は、検知部33で異常の発生が検知された場合に報知を行う。報知部714は、後述する推定部715の推定結果に基づいて報知を行う。ここでは一例として、検知部33の検知結果を通知するに際して、報知部714は、検知部33の検知結果を情報端末400に送信することで、情報端末400から検知結果をユーザに提示する。これにより、検知部33の検知結果を受信した情報端末400では、検知結果をユーザに対して通知(報知)可能となる。一例として、報知部714は、検知部33にて配線C11の異常が検知されると、検知結果を含む信号を、情報端末400へ送信する。ユーザは、情報端末400を操作して、例えばメールを閲覧したり、情報端末400にインストールされている異常検知システム100用のアプリケーションを起動したりすることにより、検知部33の検知結果を知ることができる。ただし、報知部714での報知の態様はこれに限らない。
すなわち、報知部714での報知の態様は様々であって、例えば、情報端末400(図1参照)への送信、表示(発光を含む)、音(音声を含む)出力、非一時的記録媒体への記録(書き込み)及び印刷(プリントアウト)等がある。例えば、報知部714は、監視ユニット7に備え付けの表示装置(例えば、液晶ディスプレイ等)等の提示部73、又は監視ユニット7に接続された表示装置に文字列及び/又は画像を表示することにより、視覚的に、検知結果をユーザに提示してもよい。この場合、提示部73は、監視ユニット7に備え付けのLED(Light Emitting Diode)等の固体発光素子を含んでいてもよい。また、報知部714は、例えば、監視ユニット7に備え付けのスピーカ等の提示部73、又は監視ユニット7に接続されたスピーカから音(音声及びアラーム音等を含む)を出力することにより、聴覚的に、検知結果をユーザに提示してもよい。その他にも、報知部714は、例えば、記憶部74への記録(書き込み)、及び印刷(プリントアウト)等の態様により、検知部33の検知結果に応じた出力を行ってもよい。
本実施形態では、報知部714は、少なくとも配線C11の異常の発生時に、異常の詳細を示す詳細情報を、検知結果に含めて提示する処理を実行する。詳細情報は、例えば、配線C11の異常の種別を示す種別情報、及び配線C11の異常の発生元に関する発生元情報を含み得る。ここでいう種別情報は、少なくともパラレルアーク及びシリーズアークの2つの種別を含む。ここでいう発生元情報は、推定部715の推定結果であって、例えば、複数の相のうちの異常が発生した相を識別する情報を含む。すなわち、推定部715は、複数の相のうちいずれの相が「異常の発生元」であるかを推定するので、発生元情報は、「相」単位で推定される「異常の発生元」を表すことになる。
さらに、詳細情報は、回路C1に含まれる機器に関する機器情報、及び配線C11の異常の時間に関する時間情報を含み得る。ここでいう機器情報は、異常が発生した回路C1に含まれる機器(例えば、電気機器23,24)の種類及び台数等の情報を含む。ここでいう時間情報は、配線C11の異常の発生タイミング(時刻)と、配線C11の異常が発生してから終了するまでの継続時間と、を表す情報を含む。
さらに、詳細情報は、検知部33と制御部713との少なくとも一方の動作履歴に関する履歴情報を含み得る。ここでいう履歴情報は、検知部33が作動(異常を検知)した時刻、及び/又は制御部713が作動(開閉器2を制御)した時刻の情報を含む。
推定部715は、異常の発生元を推定する。すなわち、推定部715は、検知部33が異常の発生を検知した場合、検知部33の検知結果に基づいて、複数の相のうちのいずれの相が異常の発生元であるかを推定する。要するに、複数の相のうちのいずれか1つの相の配線C11に異常が生じた場合に、推定部715は、複数の相のいずれが異常の発生元であるのか、その異常の発生元を推定する。つまり、推定部715は、複数の相の中から、異常の発生元であると推定される相を特定する。
本開示でいう「推定」は、おしはかって定める(決める)ことを意味し、特に、人があれこれ考えて決めることに限らず、ある事実に基づいて何らかの決定を行うこと全般を含む。そのため、例えば、コンピュータシステムに対して入力情報が入力された場合に、コンピュータシステムが、入力情報に基づいて演算を行って何らかの情報を出力情報として出力していれば、コンピュータシステムで出力情報が「推定」されたことになる。すなわち、推定部715であれば、検知部33の検知結果が入力され、この検知結果に基づいて異常の発生元である相を特定することにより、異常の発生元を推定することになる。
本実施形態では、上述したように、配電システム101は、単相三線式であるので、配電システム101に含まれる3つの極は、第1電圧極(L1極)、第2電圧極(L2極)及び中性極(N極)である。そして、配電システム101に含まれる複数の相は、第1電圧極及び中性極からなる第1相(L1−N相)と、第2電圧極及び中性極からなる第2相(L2−N相)と、第1電圧極及び第2電圧極からなる第3相(L1−L2相)と、を含む。そのため、推定部715は、少なくとも第1相又は第2相と、第3相とを区別して発生元を推定する。言い換えれば、推定部715は、第1相若しくは第2相が異常の発生元である場合と、第3相が異常の発生元である場合と、を少なくとも区別する。
本実施形態では、上述したように、検知部33の判定回路333では、第1相及び第2相の2つの相について、個別に、配線C11の異常の有無を判定している。そのため、推定部715は、第1相又は第2相と、第3相とを区別するだけでなく、第1相と第2相とについても区別して、発生元を推定する。結果的に、本実施形態では、3相を区別して異常の発生元を推定することが可能である。言い換えれば、推定部715は、第1相が異常の発生元である場合と、第2相が異常の発生元である場合と、第3相が異常の発生元である場合と、を区別する。
また、推定部715は、第1相及び第2相の各々の異常の相関関係に基づいて、異常の発生元を推定する。つまり、推定部715は、第1相で発生した配線C11の異常と第2相で発生した配線C11の異常との間に所定の相関関係があった場合に、第3相が発生元であると推定する。ここにおいて、「所定の相関関係」は、第1相での異常の発生タイミングと、第2相での異常の発生タイミングと、が重複することを含む。本開示でいう異常の発生タイミングの「重複」とは、異常が発生している期間が完全に一致する場合と、異常が発生している期間の一部のみが重複している場合と、を含む。後者であれば、例えば、先に第1相での異常が発生し、第1相での異常が継続している間に、第2相での異常が発生したときに、第1相での異常の発生タイミングと、第2相での異常の発生タイミングと、が重複することになる。
通信部72は、施設500に設置されたコントローラ25等との間で通信を行う。上述したように、コントローラ25は、HEMS対応機器の制御又は監視を行う。つまり、コントローラ25は、監視ユニット7と通信を行うことによって、複数の分岐ブレーカ4に接続された複数の負荷(電気機器23,24等)の各々での瞬時電力や電力量を取得することができ、HEMS対応機器を制御又は監視することができる。
また、通信部72は、検知部33及び電流計測装置8とも通信可能に構成されている。さらに、既に述べたように、通信部72は、例えば、電流計測装置8の基板の導電層の一部を用いて、各開閉器2(分岐ブレーカ4)の通信部201との間で通信を行う。つまり、通信部72は、コントローラ25との通信機能に加えて、電流計測装置8及び開閉器2(分岐ブレーカ4)との通信機能を有している。通信部72は、例えば、コントローラ25との通信用と、電流計測装置8及び開閉器2との通信用とで、個別の通信モジュールを有していてもよい。
提示部73は、既に延べたように、監視ユニット7に備え付けの表示装置又はスピーカ等の、視覚的又は聴覚的に、検知結果をユーザに提示する装置である。
記憶部74は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ、又はRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリ等を備える。記憶部74は、少なくとも検知部33での検知結果を記憶する機能を有している。
(3)動作
以下、本実施形態に係る異常検知システム100の動作について図6〜図7Cを参照して説明する。
(3.1)全体動作
図6は、異常検知システム100の全体動作、つまり異常検知システム100を用いた異常検知方法の一例を示すフローチャートである。
まず、異常検知システム100は、検知部33にて、配電システム101における配線C11の異常を検知する検知処理を実行し、配電システム101における配線C11の異常の有無を判断する(S1)。具体的には、例えば、配電システム101における配線C11にてシリーズアークが発生すると、検知部33は、複数の相の各々に印加される電圧に関する電圧情報に基づいて配線C11の異常(シリーズアーク)の発生を検知する。電圧情報は、複数の相のうちの2以上の相(第1相及び第2相)に設けられた検知回路331にて取得される。処理S1において、異常がなければ(S1:No)、異常検知システム100は、検知部33にて配線C11の異常を検知する検知処理(S1)を繰り返し実行する。
一方、配線C11の異常があれば(S1:Yes)、異常検知システム100は、推定部715にて、検知部33の検知結果に基づいて、第1相(L1−N相)と第2相(L2−N相)との間に所定の相関関係があるか否かを判断する(S2)。本実施形態では、上述したように、検知部33は、判定回路333にて、第1相及び第2相の2つの相について、個別に、配線C11の異常の有無を判定している。そこで、推定部715は、検知部33での第1相についての検知結果と、第2相についての検知結果との間に、の各々の検知結果の間に、相関関係があるか否かを判断する。このとき、第1相での異常の発生タイミングと、第2相での異常の発生タイミングと、が重複していれば、推定部715は、第1相と第2相との間に所定の相関関係があると推定する。第1相で発生した配線C11の異常と第2相で発生した配線C11の異常との間に所定の相関関係があれば(S2:Yes)、推定部715は、第3相が発生元であると推定する(S3)。
処理S2において、第1相で発生した配線C11の異常と第2相で発生した配線C11の異常との間に所定の相関関係がなければ(S2:No)、異常検知システム100は、推定部715にて、第1相(L1−N相)での異常の有無を判断する(S5)。このとき、推定部715は、検知部33での第1相についての検知結果に基づいて判断し、第1相での異常があれば(S5:Yes)、第1相が発生元であると推定する(S6)。一方で、第1相での異常がなければ(S5:No)、推定部715は、第2相が発生元であると推定する(S8)。
以上説明したような処理S2,S3,S5,S6,S8により、推定部715は、第1相と、第2相と、第3相と、を区別して、異常の発生元を推定する。
さらに、本実施形態では、検知部33で異常の発生が検知された場合、制御部713は、推定部715の推定結果に基づいて電力供給の遮断を行う。一例として、複数の相のうちいずれかの相が異常の発生元と推定されれば、異常検知システム100は、異常の発生元と推定された相についてのみ、回路C1を遮断する。つまり、異常検知システム100は、異常の発生元と推定された相に含まれる回路C1のみを遮断し、異常の発生元と推定された相以外の相に含まれる回路C1については遮断しない。
具体的には、第3相が発生元であると推定された場合(S3)、制御部713は、第3相(L1−L2相)に含まれる回路C1を「遮断対象」として遮断する処理を実行する(S4)。このとき、制御部713は、「遮断対象」である回路C1に含まれる開閉器2(分岐ブレーカ4)に制御信号を出力することで、この開閉器2に内蔵されている接点(遮断部203)を開極させ、この回路C1への電力供給を遮断する。これにより、第3相に含まれる全ての回路C1が、「遮断対象」として遮断される。同様に、第1相が発生元であると推定された場合(S6)、制御部713は、第1相(L1−N相)に含まれる回路C1を「遮断対象」として遮断する処理を実行する(S7)。第2相が発生元であると推定された場合(S8)、制御部713は、第2相(L2−N相)に含まれる回路C1を「遮断対象」として遮断する処理を実行する(S9)。
その後、異常検知システム100は、報知部714にて、ユーザに対する報知を行う(S10)。つまり、報知部714は、検知部33で異常の発生が検知された場合に報知を行う。このとき、報知部714は、一例として、検知部33の検知結果を情報端末400に送信することで、情報端末400から検知結果をユーザに提示する。しかも、報知部714は、異常の詳細を示す詳細情報を、検知結果に含めて報知する。詳細情報は、推定部715で推定された、複数の相のうちの異常が発生した相を識別する情報を発生元情報として含んでいる。つまり、報知部714は、推定部715の推定結果に基づいて報知を行う。
異常検知システム100は、上述した一連の処理S1〜S10を繰り返し実行する。図6のフローチャートは、異常検知システム100の動作の一例に過ぎず、処理を適宜省略又は追加してもよいし、処理の順番が適宜変更されていてもよい。
(3.2)具体動作例
次に、本実施形態に係る異常検知システム100の具体動作例について、図7A〜図7Cを参照して説明する。図7A〜図7Cにおいては、オフ(遮断)状態にある分岐ブレーカ4については、網掛け(ドットハッチング)を付して、オン(通電)状態にある分岐ブレーカ4と区別する。
ここでは、異常検知システム100は、複数の回路C101〜C108(それぞれ回路C1に相当する)を対象に配線C11の異常の有無を検知しており、いずれかの回路C1の配線C11に異常が生じた場合を例とする。さらに、複数の回路C101〜C108のうち、回路C101〜C103は、いずれも第1相(L1−N相)に含まれる100V回路であって、第1電圧極の導電バーCB21と、中性極の導電バーCB20とに電気的に接続される。複数の回路C101〜C108のうち、回路C105〜C107は、いずれも第2相(L2−N相)に含まれる100V回路であって、第2電圧極の導電バーCB22と、中性極の導電バーCB20とに電気的に接続される。複数の回路C101〜C108のうち、回路C104,C108は、いずれも第3相(L1−L2相)に含まれる200V回路であって、第1電圧極の導電バーCB21と、第2電圧極の導電バーCB22とに電気的に接続される。
図7Aは、第2相(L2−N相)に含まれる回路C107の配線C11に異常が生じた場合を例示する。図7Aの例では、検知部33は、判定回路333にて、第1相及び第2相の2つの相について、個別に、配線C11の異常の有無を判定した結果、第1相については配線C11の異常なし、第2相については配線C11の異常あり、と判定する。そのため、推定部715では、第1相と第2相との間に所定の相関関係がないと判断され、かつ第1相での異常がないと判断されるので、第2相が異常の発生元であると推定される。これにより、制御部713は、第2相に含まれる回路C105〜C107を「遮断対象」として遮断する。したがって、図7Aに示すように、異常の発生元と推定される第2相の回路C105〜C107のみが遮断され、その他の回路C101〜C104,C108については通電された状況が成立する。
図7Bは、第1相(L1−N相)に含まれる回路C101の配線C11に異常が生じた場合を例示する。図7Bの例では、検知部33は、判定回路333にて、第1相及び第2相の2つの相について、個別に、配線C11の異常の有無を判定した結果、第1相については配線C11の異常あり、第2相については配線C11の異常なし、と判定する。そのため、推定部715では、第1相と第2相との間に所定の相関関係がないと判断され、かつ第1相での異常があると判断されるので、第1相が異常の発生元であると推定される。これにより、制御部713は、第2相に含まれる回路C105〜C107を「遮断対象」として遮断する。したがって、図7Bに示すように、異常の発生元と推定される第1相の回路C101〜C103のみが遮断され、その他の回路C104〜C108については通電された状況が成立する。
図7Cは、第3相(L1−L2相)に含まれる回路C108の配線C11に異常が生じた場合を例示する。図7Cの例では、検知部33は、判定回路333にて、第1相及び第2相の2つの相について、個別に、配線C11の異常の有無を判定した結果、第1相については配線C11の異常あり、第2相についても配線C11の異常あり、と判定する。そのため、推定部715では、第1相と第2相との間に所定の相関関係があると判断されるので、第3相が異常の発生元であると推定される。これにより、制御部713は、第3相に含まれる回路C104,C108を「遮断対象」として遮断する。したがって、図7Cに示すように、異常の発生元と推定される第3相の回路C104,C108のみが遮断され、その他の回路C101〜C103,C105〜C107については通電された状況が成立する。
(4)変形例
実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。本開示において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、実施形態1に係る異常検知システム100と同様の機能は、異常検知方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
一態様に係る異常検知方法は、検知処理(図6の「S1」に相当)と、推定処理(図6の「S2」,「S3」,「S5」,「S6」,「S8」に相当)と、を有する。検知処理は、配電システム101における、配線の異常を検知する処理である。配電システム101は、3つの極を含み3つの極のうちの一対の極からなる複数の相のいずれかの相にて負荷に電力を供給する。推定処理は、異常の発生が検知された場合、検知結果に基づいて、複数の相のうちのいずれの相が異常の発生元であるかを推定する処理である。一態様に係るプログラムは、上記の異常検知方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
本開示における異常検知システム100は、例えば、情報処理部71等にコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における異常検知システム100としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
また、異常検知システム100の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは異常検知システム100に必須の構成ではなく、異常検知システム100の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。例えば、推定部715は、制御部713とは別の筐体に設けられていてもよい。また、制御部713又は推定部715等の機能は、例えば、サーバ等の、監視ユニット7とは別の装置に設けられていてもよい。さらに、異常検知システム100の少なくとも一部の機能、例えば、推定部715の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
反対に、実施形態1において、複数の装置に分散されている少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。例えば、検知部33は、監視ユニット7と一体であってもよく、この場合、1つの筐体内に監視ユニット7の機能と検知部33の機能とが集約される。また、検知部33は、例えば、主幹ブレーカ3と一体であってもよく、この場合、1つの筐体内に主幹ブレーカ3の機能と検知部33の機能とが集約される。
また、異常検知システム100は、検知部33に関する対象項目を変化させる機能を有していてもよい。本開示でいう「対象項目」は、検知部33に関する種々のパラメータ、アルゴリズム、動作のタイミング又はコンテンツ等の項目である。例えば、対象項目には、検知部33での、配線C11の異常が発生しているか否かの判定に係る感度(判定のための閾値等を含む)、又は判定アルゴリズム等が含まれる。そのため、異常検知システム100が、このような対象項目を変化させることにより、例えば、どのような場合に配線C11の異常と判定するか、を変化させることができる。すなわち、対象項目を変化させれば、例えば、電圧情報にどのよう特徴が現れると配線C11の異常と判定するか、その判定基準を調整できる。
また、検知部33が、配線C11の異常の検知に用いる電圧情報は、複数の相の各々に印加される電圧に関する情報であればよく、主幹ブレーカ3の二次側端子T2(導電バーCB21,CB22,CB20間)の電圧に関する情報に限らない。例えば、検知部33は、主幹ブレーカ3の一次側端子T1の電圧、又はいずれか1つの分岐ブレーカ4の一次側端子の電圧等に関する情報を、電圧情報として用いて配線C11の異常を検知してもよい。
また、実施形態1においては、検知部33は、回路C1に印加される電圧が閾値を超えた場合に、配線C11にアークが発生していると判定するが、この例に限らない。例えば、検知部33は、検知回路331(CR回路)に含まれる抵抗の両端に印加される電圧が閾値を超えた回数(つまり、高周波ノイズの一定時間当たりの発生回数)が設定値を超えた場合に、配線C11にアークが発生したと判定してもよい。
また、検知部33での異常の検知対象となる配線C11を含む回路C1は、分岐ブレーカ4を含む分岐回路に限らない。例えば、連系ブレーカ6及び分散電源21を含む回路C1が、検知部33での異常の検知対象となる配線C11を含んでいてもよい。この回路C1においては、連系ブレーカ6と分散電源21との間の配線C11が、検知部33での異常の検知対象となり、連系ブレーカ6が、回路C1を遮断する機能を有する開閉器2となる。さらに、感震ブレーカ5を含む回路C1が、検知部33での異常の検知対象となる配線C11を含んでいてもよく、この場合、感震ブレーカ5が回路C1を遮断する機能を有する開閉器2となる。さらに、主幹ブレーカ3を含む回路C1が、検知部33での異常の検知対象となる配線C11を含んでいてもよい。
また、制御部713は、検知部33で異常の発生が検知された場合に、異常の発生元と推定された相についてのみ回路C1を遮断するが、この例に限らない。例えば、制御部713は、検知部33で異常の発生が検知された場合に、全ての回路C1を遮断してもよいし、任意の回路C1のみを遮断しなくてもよい。
また、報知部714は、検知部33の検知結果を外部システム600に送信してもよい。具体的には、報知部714は、通信部72を介してコントローラ25(外部システム600)に検知結果を送信してもよい。また、報知部714は、ネットワーク200を介して、クラウドに検知結果を送信してもよい。この態様では、外部システム600は、例えば検知結果をビッグデータとして収集することで、配線C11の異常の発生の傾向、又は異常に対する措置等を研究するのに役立てることが可能である。
また、報知部714は、異常の発生時に、配線C11の異常から復旧するための手順を含む復旧情報を報知してもよい。一例として、報知部714は、いずれかの配線C11でアークが発生した場合、電気工事事業者への連絡先及び電気工事事業者への連絡を促す旨を復旧情報として提示してもよい。ここでいう「連絡先」は、例えば、電話番号、メールアドレス、又は電気工事事業者がホームページを開設している場合にはホームページのURL(Uniform Resource Locator)を含み得る。
また、推定部715は、例えば機械学習された分類器を用いて、配線C11の発生元を推定する態様であってもよい。分類器は、異常検知システム100の使用中において、再学習を実行可能であってもよい。
分類器は、例えばSVM(Support Vector Machine)等の線形分類器の他、ニューラルネットワークを用いた分類器、又は多層ニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)により生成される分類器を含み得る。分類器が学習済みのニューラルネットワークを用いた分類器である場合、学習済みのニューラルネットワークは、例えばCNN(Convolutional Neural Network:畳み込みニューラルネットワーク)、又はBNN(Bayesian Neural Network:ベイズニューラルネットワーク)等を含み得る。この場合、推定部715は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路に、学習済みのニューラルネットワークを実装することで実現される。
また、電流計測装置8はロゴスキコイルを有する態様に限定されず、例えば、変流器(カレントトランス)、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗等のセンサを有する態様でもよい。
また、実施形態1では、監視ユニット7の外部にバックアップ電源9が設けられているが、この構成に限らず、監視ユニット7にバックアップ電源9が内蔵されていてもよい。
また、配電システム101は、第1電圧極、第2電圧極及び中性極のような3つの極を含んでいればよく、単相三線式に限らず、例えば、4つの極を含む三相四線式等であってもよい。さらに、配電システム101は、例えば、三相三線式等であってもよい。
また、実施形態1では、検知部33は、第1相及び第2相の2つの相にそれぞれ設けられた検知回路331、つまり2つの検知回路331を有しているが、この例に限らない。例えば、検知部33は、第1相、第2相及び第3相の3つの相にそれぞれ設けられた検知回路331、つまり3つの検知回路331を有していてもよい。反対に、検知回路331は、複数の相のいずれかの相にのみ設けられた1つのみであってもよい。
また、推定部715は、1相若しくは第2相が異常の発生元である場合と、第3相が異常の発生元である場合と、を少なくとも区別すればよく、第1相と第2相とについて区別して発生元を推定することは必須の構成ではない。つまり、推定部715は、第1相が異常の発生元である場合と、第2相が異常の発生元である場合と、を区別しなくてもよい。
(実施形態2)
本実施形態に係る異常検知システム100Aは、図8に示すように、検知部33の構成が、実施形態1に係る異常検知システム100とは相違する。以下、実施形態1と同様の構成については共通の符号を付して適宜説明を省略する。
本実施形態では、検知部33は、電圧情報に代えて、電流に基づいて、配線C11の異常を検知する。具体的には、検知部33は、実施形態1で説明した検知回路331に代えて、例えば、変流器(カレントトランス)からなる電流検出部336を有している。測定回路332は、電流検出部336の出力から電流を測定する。本実施形態では、一対の電流検出部336は、第1電圧極(L1極)の導電バーCB21、及び第2電圧極(L2極)の導電バーCB22に装着される。これにより、検知部33は、一対の電流検出部336にて、第1電圧極を流れる電流、及び第2電圧極を流れる電流の各々を計測することができる。そして、検知部33は、判定回路333にて、第1相及び第2相の2つの相については、個別に、その電流に基づいて配線C11の異常(アーク故障)の有無を判定することが可能である。つまり、電流検出部336は、複数の相のうちの2以上の相(ここでは第1相及び第2相)に設けられた検知回路に相当する。
また、本実施形態では、推定部715は、第1電圧極(L1極)及び第2電圧極(L2極)の両方で配線C11の異常が発生した場合に、第3相(L1−L2相)が発生元であると推定する。上述したように、検知部33は、第1電圧極を流れる電流、及び第2電圧極を流れる電流の各々を計測している。そのため、推定部715は、第1電圧極を流れる電流、及び第2電圧極を流れる電流の両方で配線C11の異常が発生していると判断される場合、異常の発生元は第3相であると推定する。
また、実施形態2では、検知部33は、電流のみに基づいて、配線C11の異常を検知しているが、この構成に限らず、検知部33は、電流に加えて、電圧情報に基づいて、配線C11の異常を検知してもよい。
また、監視ユニット7は、電流計測装置8が計測した電流値を取得している。このため、検知部33は、監視ユニット7に設けられ、複数の回路C1の各々に流れる電流に基づいて、個々の回路C1に含まれる配線C11の異常を検知することも可能である。つまり、監視ユニット7は、計測機能(複数の分岐回路の電流と電力との少なくとも一方を計測する機能)において用いる電流値を、検知部33での配線C11の異常の検知にも利用することができる。
また、検知部33は、主幹ブレーカ3の二次側端子T2側ではなく、主幹ブレーカ3の一次側端子T1側の電流に基づいて、配線C11の異常を検知してもよい。この場合、電流検出部336は、第1電圧極の導電バーCB21、及び第2電圧極の導電バーCB22に代えて、第1電圧極の引込線CB1、及び第2電圧極の引込線CB1に装着される。
また、電流検出部336は、変流器(カレントトランス)に限らず、例えば、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗等のセンサを有する態様でもよい。
実施形態2で説明した種々の構成(変形例を含む)は、実施形態1で説明した種々の構成(変形例を含む)と適宜組み合わせて採用可能である。
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る異常検知システム(100,100A)は、検知部(33)と、推定部(715)と、を備える。検知部(33)は、配電システム(101)における、配線(C11)の異常を検知する。配電システム(101)は、3つの極を含み3つの極のうちの一対の極からなる複数の相のいずれかの相にて負荷に電力を供給する。推定部(715)は、検知部(33)が異常の発生を検知した場合、検知部(33)の検知結果に基づいて、複数の相のうちのいずれの相が異常の発生元であるかを推定する。
この態様によれば、配線(C11)の異常が発生した場合に、単に異常の発生が検知されるだけでなく、異常が、配電システム(101)に含まれる複数の相のうちのいずれの相で発生しているかを推定することができる。よって、同じような配線(C11)の異常の発生時であっても、例えば、異常の発生元がL1−N相である場合と、L2−N相である場合と、L1−L2相である場合とで、異なる措置をとることが可能となる。このように、異常検知システム(100,100A)によれば、より多様な異常の検知が可能である、という利点がある。
第2の態様に係る異常検知システム(100,100A)では、第1の態様において、検知部(33)は、複数の相のうちの2以上の相に設けられた検知回路(331)を有する。
この態様によれば、2以上の相に設けられた検知回路(331)にて、2以上の相における配線(C11)の異常を検知しやすくなる。
第3の態様に係る異常検知システム(100,100A)では、第1又は2の態様において、3つの極は、第1電圧極(L1極)、第2電圧極(L2極)及び中性極(N極)である。複数の相は、第1電圧極(L1極)及び中性極(N極)からなる第1相(L1−N相)と、第2電圧極(L2極)及び中性極(N極)からなる第2相(L2−N相)と、第1電圧極(L1極)及び第2電圧極(L2極)からなる第3相(L1−L2相)と、を含む。推定部(715)は、少なくとも第1相(L1−N相)又は第2相(L2−N相)と、第3相(L1−L2相)とを区別して発生元を推定する。
この態様によれば、単相三線式の配電システム(101)において、少なくとも第1相(L1−N相)又は第2相(L2−N相)と、第3相(L1−L2相)とを異常の発生元として区別可能である。
第4の態様に係る異常検知システム(100,100A)では、第3の態様において、推定部(715)は、下記の場合に、第3相(L1−L2相)が発生元であると推定する。つまり、推定部(715)は、第1相(L1−N相)で発生した配線(C11)の異常と第2相(L2−N相)で発生した配線(C11)の異常との間に所定の相関関係があった場合に、第3相(L1−L2相)が発生元であると推定する。
この態様によれば、第3相(L1−L2相)については配線(C11)の異常の有無を判定しなくても、第3相(L1−L2相)が異常の発生元であることは推定できる。
第5の態様に係る異常検知システム(100,100A)では、第4の態様において、所定の相関関係は、第1相(L1−N相)での異常の発生タイミングと、第2相(L2−N相)での異常の発生タイミングと、が重複することを含む。
この態様によれば、第3相(L1−L2相)については配線(C11)の異常の有無を判定しなくても、第3相(L1−L2相)が異常の発生元であることは推定できる。
第6の態様に係る異常検知システム(100,100A)では、第3の態様において、推定部(715)は、第1電圧極(L1)及び第2電圧極(L2)の両方で配線(C11)の異常が発生した場合に、第3相(L1−L2相)が発生元であると推定する。
この態様によれば、第3相(L1−L2相)については配線(C11)の異常の有無を判定しなくても、第3相(L1−L2相)が異常の発生元であることは推定できる。
第7の態様に係る異常検知システム(100,100A)は、第1〜6のいずれかの態様において、検知部(33)で異常の発生が検知された場合に報知を行う報知部(714)を更に備える。報知部(714)は、推定部(715)の推定結果に基づいて報知を行う。
この態様によれば、推定部(715)の推定結果をユーザに報知できる。
第8の態様に係る異常検知システム(100,100A)は、第1〜7のいずれかの態様において、検知部(33)で異常の発生が検知された場合に電力供給を遮断する制御部(713)を更に備える。制御部(713)は、推定部(715)の推定結果に基づいて遮断を行う。
この態様によれば、推定部(715)の推定結果に応じた自動遮断が可能となる。
第9の態様に係る異常検知システム(100,100A)では、第1〜8のいずれかの態様において、検知部(33)は、複数の相の各々に印加される電圧に関する電圧情報に基づいて配線(C11)の異常を検知する。
この態様によれば、電流からの検知が困難な場合でも、配線(C11)の異常を検知可能である。
第10の態様に係る分電盤システム(1)は、第1〜9のいずれかの態様に係る異常検知システム(100,100A)と、複数の分岐ブレーカ(4)と、を備える。複数の分岐ブレーカ(4)は、複数の相のうちの少なくとも1つの相を複数の回路(C1)に分岐する。
この態様によれば、より多様な異常の検知が可能である、という利点がある。
第11の態様に係る異常検知方法は、検知処理と、推定処理と、を有する。検知処理は、配電システム(101)における、配線(C11)の異常を検知する処理である。配電システム(101)は、3つの極を含み3つの極のうちの一対の極からなる複数の相のいずれかの相にて負荷に電力を供給する。推定処理は、異常の発生が検知された場合、検知結果に基づいて、複数の相のうちのいずれの相が異常の発生元であるかを推定する処理である。
この態様によれば、より多様な異常の検知が可能である、という利点がある。
第12の態様に係るプログラムは、第11の態様に係る異常検知方法を、1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
この態様によれば、より多様な異常の検知が可能である、という利点がある。
上記態様に限らず、実施形態1及び実施形態2に係る異常検知システム(100,100A)の種々の構成(変形例を含む)は、上記異常検知方法又はプログラムにて具現化可能である。
第2〜9の態様に係る構成については、異常検知システム(100,100A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。