以下の実施形態は、分電盤管理システム、及びプログラムに関し、特に第1電線と第2電線と第3電線とを有する電力線に接続された分電盤に用いられる分電盤管理システム、及びプログラムに関する。
本実施形態の分電盤管理システムは、分電盤に用いられ、複数の分岐回路の各々について設定された識別情報(分岐回路の種類を表す情報)を修正するためのシステムである。
例えば、単相三線式の配電方式であれば、分電盤は、図1に示すように、第1電圧線41(L1)と第2電圧線42(L2)と中性線43(N)とを有する電力線4に電気的に接続される。この場合、第1電圧線41は「第1電線」を構成し、第2電圧線42は「第2電線」を構成し、中性線43は「第3電線」を構成する。
そして、分電盤は、この電力線4からの交流電力を複数(本実施形態では7つ)の分岐回路51〜57に分配する。そのため、複数の分岐回路51〜57には、第1電圧線41と第2電圧線42との一方及び中性線43に電気的に接続された「第1分岐回路」と、第1電圧線41及び第2電圧線42に電気的に接続された「第2分岐回路」との2種類が存在する。なお、以下では、複数の分岐回路51〜57をとくに区別しない場合には、複数の分岐回路51〜57の各々を「分岐回路5」ともいう。また、ここでいう「分岐回路」は、分岐ブレーカ、並びに分岐ブレーカの二次側に接続される配線路、配線器具(アウトレット、壁スイッチなど)、及び各種の機器(照明器具、調理家電など)を含んでいる。
ここで、第1電圧線41又は第2電圧線42と、中性線43との間の電圧が100〔V〕(実効値)であるとすれば、「第1分岐回路」には100〔V〕が印加され、「第2分岐回路」には200〔V〕が印加されることになる。分電盤管理システムは、複数の分岐回路5の各々について、このように印加電圧の異なる2種類の分岐回路(第1分岐回路、第2分岐回路)のいずれに当たるかを判定する機能を有している。また、分電盤管理システムは、上記判定機能による判定結果と記憶装置に予め記憶させている識別情報とが異なる分岐回路について、記憶装置に予め記憶させている識別情報を自動的に書き換える機能を有している。
すなわち、本実施形態の分電盤管理システムは、図1に示すように、判定装置3と、記憶装置12と、設定装置13とを備えている。判定装置3は、複数の分岐回路5の各々が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する。記憶装置12は、複数の分岐回路5の各々が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを識別するための識別情報を記憶する。設定装置13は、複数の分岐回路5のうち、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている識別情報とが異なる分岐回路5について、判定結果に応じて記憶装置12に記憶されている識別情報を書き換える。
ところで、近年、複数の分岐回路5の各々について、消費電力と消費電力量との少なくとも一方を計測値として計測する電力計測システムが普及している。一般的な電力計測システムにおいては、複数の分岐回路5の各々に印加されている電圧値と、複数の分岐回路5の各々を流れる電流値とから、複数の分岐回路5の各々での消費電力や消費電力量が求められる。そのため、複数の分岐回路5に、上述したように印加電圧の異なる2種類の分岐回路が含まれている場合、電力計測システムにおいて、消費電力や消費電力量を精度よく求めるには、複数の分岐回路5の各々の種類が正しく設定されている必要がある。つまり、複数の分岐回路5の各々について、印加電圧が100〔V〕か200〔V〕かを表す情報(以下、「電圧区分」という)が正しく設定される必要がある。そのため、分岐回路5に含まれる機器への供給電圧が変更になった場合には、当該分岐回路5の電圧区分を修正する必要がある。
そこで、本実施形態では、複数の分岐回路5の各々の種類を表す情報、すなわち識別情報(電圧区分)を自動的に修正するための分電盤管理システムを電力計測システムに適用する。そして、電圧区分の修正が必要な分岐回路5について電圧区分を自動的に修正する場合を例に、分電盤管理システムについて説明する。ただし、本実施形態の分電盤管理システムの用途は、複数の分岐回路5の各々の種類を表す情報を自動的に修正する用途であればよく、電力計測システムに限らない。
以下、本実施形態の分電盤管理システムについて詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記の実施形態に限定されない。したがって、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本実施形態では、分電盤管理システムは、需要家施設において消費電力と消費電力量との少なくとも一方を計測するための電力計測システムに適用され、複数の分岐回路5の各々について電圧区分の設定及び修正に用いられる。ここでいう「需要家施設」は、電力の需要家の施設を意味しており、電力会社等の電気事業者から電力の供給を受ける施設だけでなく、太陽光発電設備等の自家発電設備から電力の供給を受ける施設も含む。本実施形態では、戸建住宅を需要家施設の一例として説明する。
まず、分電盤管理システムが適用される電力計測システム1の基本構成について、図1を参照して説明する。
本実施形態の電力計測システム1は、図1に示すように、計測装置2と、判定装置3と、演算装置11と、記憶装置12と、設定装置13と、入力装置14とを備えている。計測装置2は、第1電圧線41を流れる第1電流I1、第2電圧線42を流れる第2電流I2、及び複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流を計測する。つまり、計測装置2は、少なくとも複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流を計測する。判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する。演算装置11は、消費電力や消費電力量を演算する。記憶装置12は、複数の分岐回路5の各々の電圧区分を記憶する。設定装置13は、複数の分岐回路5の各々について、電圧区分を設定する。入力装置14は、作業者の操作に応じて、許可信号S1を設定装置13に出力する。
さらに、電力計測システム1は、複数箇所の電流を計測するために、複数の電流センサ21,22,201〜207を備えている。ここで、電力計測システム1の構成要素は、演算装置11を除き、分電盤管理システムの構成要素と共通である。すなわち、本実施形態の分電盤管理システムは、計測装置2、判定装置3、記憶装置12、設定装置13、入力装置14、及び複数の電流センサ21,22,201〜207を備えている。なお、複数の電流センサ21,22,201〜207は、計測装置2に含まれていてもよい。
本実施形態では、電力計測システム1を構成する上述の構成要素は、分電盤6(図2参照)のキャビネット60(図2参照)内に収納されている。
計測装置2には、一対の(主幹用)電流センサ21,22及び複数の(分岐用)電流センサ201〜207の各々が電気的に接続されている。一対の電流センサ21,22は第1電圧線41及び第2電圧線42に一対一に対応して設けられており、複数の電流センサ201〜207は複数の分岐回路5に一対一に対応して設けられている。これにより、計測装置2では、電流センサ21の出力から第1電圧線41を流れる第1電流I1が計測可能であり、電流センサ22の出力から第2電圧線42を流れる第2電流I2が計測可能である。また、計測装置2では、複数の電流センサ201〜207の出力から、複数の分岐回路5の各々を流れる電流(以下、「分岐電流」という)を計測可能である。以下では、分岐電流を計測するための複数の電流センサ201〜207をとくに区別しない場合には、複数の電流センサ201〜207の各々を「電流センサ20」ともいう。
なお、以下では、分岐回路51を流れる分岐電流、つまり電流センサ201で計測される分岐電流を「分岐電流I11」という。同様に、分岐回路5n(nは自然数)を流れる分岐電流、つまり電流センサ20n(nは自然数)で計測される分岐電流を「分岐電流I1n」という。
判定装置3は、計測装置2と電気的に接続されており、計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する。ここでいう計測装置2の計測結果は、計測装置2での各電流(第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流)の計測結果であって、例えば実効値や電流波形などである。
ここで、判定装置3は、例えばマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、マイコンのメモリに記録されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することにより、種々の機能を実現する。プログラムは、予めマイコンのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。なお、判定装置3の判定動作については後述する。
本実施形態では、判定装置3は、少なくとも分電盤管理システム(電力計測システム1)が起動(または再起動)したとき、つまり電源が投入されたときに、複数の分岐回路5の各々の種類を判定する。判定装置3は、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを一旦判定した分岐回路5については、以降、定期的に「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定するように構成されている。これにより、判定装置3は、判定に関連する処理負荷(演算負荷)を低減することができる。
演算装置11は、計測装置2と電気的に接続されており、計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々について、消費電力と消費電力量との少なくとも一方を計測値として計測する。計測値は、瞬時電力を表す消費電力であってもよいし、あるいは一定時間における電力の消費量(使用量)を表す消費電力量であってもよい。また、計測値は、消費電力と消費電力量との両方であってもよい。本実施形態では一例として、計測値は、消費電力を一定時間(例えば1分)積算した消費電力量であることとする。
演算装置11は、電力線4(第1電圧線41、第2電圧線42、及び中性線43)の線間電圧を監視している。演算装置11は、例えばマイコン(マイクロコンピュータ)からなり、線間電圧と分岐電流とを用いて演算することにより、計測値を求める。なお、演算装置11では、複数の分岐回路5の各々についての計測値だけでなく、需要家施設の総消費電力量を計測値として求める構成であってもよい。
記憶装置12は、複数の分岐回路5の各々について、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを記憶する。言い換えれば、記憶装置12は、複数の分岐回路5の各々の電圧区分(印加電圧が100〔V〕か200〔V〕かを表す情報)を記憶する。つまり、複数の分岐回路51〜57のうち、「第1分岐回路」である分岐回路51〜54については、100〔V〕との電圧区分が対応付けて記憶され、「第2分岐回路」である分岐回路55〜57については、200〔V〕との電圧区分が対応付けて記憶される。ここに、本実施形態では、複数の分岐回路55〜57の各々に対応付けて記憶装置12に記憶される電圧区分が識別情報であり、分岐回路5の種類を表す情報である。
本実施形態では、複数の分岐回路5の各々を識別するための識別符号として回路番号(1,2,3…)が用いられ、分岐ブレーカ62の位置ごとに個別の回路番号が割り当てられる。例えば、上段の分岐ブレーカ62については、主幹ブレーカ61側から順に奇数番号(1,3,5,7…)が回路番号として割り当てられる。また、下段の分岐ブレーカ62については、主幹ブレーカ61側から順に偶数番号(2,4,6,8…)が回路番号として割り当てられる。そして、記憶装置12は、複数の分岐回路5に電圧区分(分岐回路の種類、識別情報)が一対一で対応するように、識別符号(回路番号)ごとに電圧区分をテーブル形式で記憶する。なお、分岐回路5への回路番号の割り当て方は、上述した例に限らず任意に決めることができる。
記憶装置12は、演算装置11と電気的に接続されている。演算装置11では、記憶装置12に記憶されている電圧区分に応じて演算結果を補正することにより、計測値を精度よく求めることができる。
設定装置13は、記憶装置12と電気的に接続されており、記憶装置12に記憶される電圧区分を設定する。ここで、設定装置13には、判定装置3が電気的に接続されており、設定装置13は、判定装置3の判定結果を記憶装置12に書き込むように構成されている。すなわち、設定装置13は、複数の分岐回路5の各々が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを表す、判定装置3での判定結果を受けて、記憶装置12に電圧区分の書き込みを行う。また、設定装置13は、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている電圧区分とが異なっている場合に、判定結果に応じて記憶装置12に記憶されている電圧区分を書き換える。すなわち、設定装置13は、記憶装置12に記憶されている電圧区分の修正が必要である場合、判定装置3の判定結果に応じて、記憶装置12に記憶されている電圧区分を正しい電圧区分に書き換える。
入力装置14は、例えば押しボタンスイッチを有し、作業者が押しボタンスイッチを操作することによって、設定装置13に対して許可信号S1を出力する。この許可信号S1は、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている電圧区分とが異なっている場合に、設定装置13が記憶装置12に記憶されている電圧区分を正しい電圧区分に書き換えることを許可するための信号である。すなわち、設定装置13は、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている電圧区分とが異なっていても、許可信号S1が入力されるまでは書き換え動作を行なわずに待機し、許可信号S1が入力されると書き換え動作を行うのである。言い換えれば、設定装置13は、複数の分岐回路5のうち少なくとも1つの分岐回路5について、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている蓄積情報とが異なる場合、識別情報の書き換えを許可する許可信号S1が入力されるまで待機する。そして、設定装置13は、許可信号S1が入力されると、判定装置3の判定結果に応じて記憶装置12に記憶されている識別情報を書き換える。
次に、分電盤6の構成について、図2を参照して説明する。
分電盤6は、図2に示すように、電力線4に電気的に接続される主幹ブレーカ61と、主幹ブレーカ61の二次側端子に電気的に接続される複数の分岐ブレーカ62とをキャビネット60内に備えている。さらに、分電盤6は、計測ユニット63と、設定ユニット64と、電流センサ21,22と、センサユニット23,24とをキャビネット60内に備えている。
本実施形態では一例として、電力計測システム1の構成要素のうち、計測装置2及び判定装置3としての機能は、計測ユニット63に設けられている。同様に、記憶装置12、設定装置13及び入力装置14としての機能は、設定ユニット64に設けられ、演算装置11及び電流センサ201〜207としての機能は、センサユニット23,24に設けられている。
主幹ブレーカ61の一次側端子は、3線式(第1電圧線41、第2電圧線42、及び中性線43)の電力線4を介して、系統電源7(図1参照)に電気的に接続されている。主幹ブレーカ61の二次側端子には、L1、L2、Nの3極の導電バーが接続されている。これら3極の導電バーは、第1電圧線41(L1)、第2電圧線42(L2)、及び中性線43(N)と一対一に電気的に接続される。
複数の分岐ブレーカ62は、導電バーに接続されることにより、主幹ブレーカ61の二次側端子に電気的に接続される。なお、複数の分岐ブレーカ62は、導電バーの幅方向の両側(上段と下段)に分かれて、それぞれ複数ずつ配置されている。
ここで、複数の分岐ブレーカ62のうち、「第1分岐回路」である分岐回路51〜54に含まれる分岐ブレーカ62は、L1及びL2のいずれか一方の導電バーと、Nの導電バーとに接続されている。また、複数の分岐ブレーカ62のうち、「第2分岐回路」である分岐回路55〜57に含まれる分岐ブレーカ62は、L1の導電バーと、L2の導電バーとに接続されている。これにより、「第1分岐回路」となる分岐回路51〜54の各々は、第1電圧線41(L1)と第2電圧線42(L2)との一方、及び中性線43(N)に電気的に接続されることになる。また、「第2分岐回路」となる分岐回路55〜57の各々は、第1電圧線41(L1)及び第2電圧線42(L2)に電気的に接続されることになる。
ここにおいて、100〔V〕用の分岐ブレーカ62、つまり「第1分岐回路」に分類される分岐回路5の分岐ブレーカ62は、導電バーの上段に取り付けられた状態では、第1電圧線41と中性線43とに電気的に接続される。一方、導電バーの下段に取り付けられた状態では、100〔V〕用の分岐ブレーカ62は、第2電圧線42と中性線43とに電気的に接続される。また、200V用の分岐ブレーカ62、つまり「第2分岐回路」に分類される分岐回路5の分岐ブレーカ62は、導電バーの上段、下段に関わらず、第1電圧線41と第2電圧線42とに電気的に接続される。
計測ユニット63には、一対の電流センサ21,22及び一対のセンサユニット23,24の各々が電気的に接続されている。電流センサ21,22,201〜207としては、例えばCT(Current Transformer)センサ、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗などが用いられる。本実施形態では一例として、電流センサ21,22の各々はCTセンサからなる。一方、センサユニット23,24に設けられた複数の電流センサ20の各々は、コアを用いない(コアレスの)空芯コイルからなり、貫通孔内を通過する電流に応じた出力を生じるロゴスキコイルである。
一対の電流センサ21,22は、主幹ブレーカ61の一次側端子に接続された電力線4の電流を計測するように、電力線4に取り付けられている。ここでは、一対の電流センサ21,22のうち、一方の(第1の)電流センサ21は第1電圧線41に取り付けられ、他方の(第2の)電流センサ22は第2電圧線42に取り付けられている。これにより、計測ユニット63に設けられた計測装置2では、電流センサ21の出力から第1電圧線41を流れる第1電流I1が計測可能となり、電流センサ22の出力から第2電圧線42を流れる第2電流I2が計測可能となる。
一対のセンサユニット23,24の各々は、主幹ブレーカ61の二次側端子に接続された複数の分岐ブレーカ62の各々の電流を計測するように、複数の分岐ブレーカ62と導電バーとの間に取り付けられている。一対のセンサユニット23,24の各々は、複数の電流センサ20を具備し、これら複数の電流センサ20が、複数の分岐ブレーカ62に一対一に対応するように取り付けられている。これにより、計測ユニット63に設けられた計測装置2では、一対のセンサユニット23,24の出力から、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流が計測可能となる。
なお、本実施形態では、演算装置11としての機能は一対のセンサユニット23,24に設けられている。そのため、一対のセンサユニット23,24は、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流に加えて、演算装置11で求めた計測値(消費電力量)についても、計測ユニット63へ出力するように構成されている。
ここで、導電バーの上段の分岐ブレーカ62は、100〔V〕用か200〔V〕用かによらず、いずれも第1電圧線41に電気的に接続される。一方、導電バーの下段の分岐ブレーカ62は、100〔V〕用か200〔V〕用かによらず、いずれも第2電圧線42に電気的に接続される。そこで、上段の分岐ブレーカ62の電流を計測するセンサユニット23においては、複数の電流センサ20は、第1電圧線41と分岐ブレーカ62との間に設置され、第1電圧線41と分岐ブレーカ62との間の電流を計測する。一方、下段の分岐ブレーカ62の電流を計測するセンサユニット24においては、複数の電流センサ20は、第2電圧線42と分岐ブレーカ62との間に設置され、第2電圧線42と分岐ブレーカ62との間の電流を計測する。
設定ユニット64は、計測ユニット63と電気的に接続されている。設定ユニット64には、記憶装置12、設定装置13及び入力装置14としての機能が設けられている。したがって、設定ユニット64では、計測ユニット63の判定装置3の判定結果を用いて、自動的に電圧区分の設定が行われる。
ここで、本実施形態では、設定ユニット64は、図2に示すように、分電盤6の外部に設けられた通信装置8と通信を行う通信アダプタとしての機能を有しており、例えば通信装置8との間で無線通信を行う。また、通信装置8は、例えばインターネットなどのネットワーク10を介してサーバ装置9と接続されており、設定ユニット64から送信された演算装置11の計測値、及び設定装置13で設定した電圧区分をサーバ装置9へ送信する。
サーバ装置9は、図1に示すように、蓄積装置91と、書換装置92とを備えている。蓄積装置91は、通信装置8を介して設定ユニット64より受け取った演算装置11の計測値を、蓄積情報として蓄積する。すなわち、蓄積装置91は、複数の分岐回路5の各々について、分岐電流を用いて算出される電力及び電力量のうち少なくとも一方の計測値を蓄積情報として蓄積する。書換装置92は、分岐回路5の電圧区分が変更される場合、設定装置13で設定された電圧区分を通信装置8を介して受け取り、蓄積装置91に蓄積されている蓄積情報(計測値)のうち対応する分岐回路5の蓄積情報を、受け取った電圧区分を用いて書き換える。すなわち、書換装置92は、複数の分岐回路5のうち、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている識別情報(電圧区分)とが異なる分岐回路5について、判定結果に応じた識別情報を用いて蓄積情報(計測値)を書き換える。なお、書換装置92の書き換え動作については後述する。
次に、本実施形態の電力計測システム1における判定装置3の判定動作について、図3A、図3B、図4A及び図4Bを参照して説明する。
図3Aにおいては、横軸を時間軸として、第1電流I1、第2電流I2、対象回路(ここでは分岐回路51)の分岐電流(ここでは「I11」)の電流波形を表している。図3Bにおいては、横軸を時間軸として、第1電流I1、第2電流I2、対象回路の分岐電流について、第2期間T2の電流波形と第1期間T1の電流波形との差分(第2期間T2−第1期間T1)からなる差分波形を表している。つまり、図3Bに示す差分波形が、第1電流I1、第2電流I2、対象回路の分岐電流の各々の電流変化となる。図4A,4Bは、対象回路が分岐回路55の場合における図3A,3Bに対応する図面である。
まず、「第1分岐回路」である分岐回路51において、第1期間T1(時刻t1〜t2)から第2期間T2(時刻t2〜t3)にかけて、通電状態がオフからオンに変化した場合について、図3A,3Bを参照して説明する。ここでは、第1期間T1と第2期間T2との境界となる時刻t2において、分岐回路51の通電状態が変化した場合を例示する。
この場合、図3Aに示すように、時刻t2以前の第1期間T1には分岐電流I11はゼロであり、時刻t2以降の第2期間T2には特定波形の分岐電流I11が流れることになる。これに伴い、第1電圧線41には、時刻t2以降の第2期間T2において、時刻t2以前の第1期間T1の第1電流I1に、分岐電流I11を合成した第1電流I1が流れることになる。一方、第2電圧線42には、時刻t2以降の第2期間T2においても、時刻t2以前の第1期間T1と同様の第2電流I2が継続的に流れることになる。
この場合、判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、図3Bに示すように、第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流I11の各々について、電流変化(差分波形)を求める。ここで、分岐電流I11の電流変化は、第1電流I1の電流変化と一致し、第2電流I2の電流変化とは不一致である。そのため、判定装置3は、対象回路としての分岐回路51について、「第1分岐回路」であると判定する。
次に、「第2分岐回路」である分岐回路55において、第1期間T1(時刻t1〜t2)から第2期間T2(時刻t2〜t3)にかけて、通電状態がオフからオンに変化した場合について、図4A,4Bを参照して説明する。ここでは、第1期間T1と第2期間T2との境界となる時刻t2において、分岐回路55の通電状態が変化した場合を例示する。
この場合、図4Aに示すように、時刻t2以前の第1期間T1には分岐電流I15はゼロであり、時刻t2以降の第2期間T2には特定波形の分岐電流I15が流れることになる。これに伴い、第1電圧線41には、時刻t2以降の第2期間T2において、時刻t2以前の第1期間T1の第1電流I1に、分岐電流I15を合成した第1電流I1が流れることになる。さらに、第2電圧線42においても第1電圧線41と同様に、時刻t2以降の第2期間T2には、時刻t2以前の第1期間T1の第2電流I2に、分岐電流I15を合成した第2電流I2が流れることになる。
この場合、判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、図4Bに示すように、第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流I15の各々について、電流変化(差分波形)を求める。ここで、分岐電流I15の電流変化は、第1電流I1の電流変化と一致し、第2電流I2の電流変化とも一致する。そのため、判定装置3は、対象回路としての分岐回路55について、「第2分岐回路」であると判定する。
ところで、上述の電力計測システム1を設置した後において、例えばエアコンやIH調理器などの200〔V〕機器を増設した場合、対応する分岐回路5の電圧区分を100〔V〕から200〔V〕に変更する必要がある。従来の電力計測システムでは、作業者が、ディップスイッチや専用の設定装置を用いて電圧区分を変更しており、そのため変更し忘れる場合があった。また、分岐回路の電圧区分を変更し忘れた場合には、電圧区分を用いて算出される計測値(電力又は電力量)に誤差が生じることになる。すなわち、この場合には、正確な計測値を得ることができない。
そこで、本実施形態の電力計測システム1では、分岐回路5の電圧区分を自動的に修正し、かつ分岐回路5の回路構成を変更してから正しい電圧区分に修正されるまでの間に計測された計測値を正しい計測値に書き換えることができる分電盤管理システムを適用する。以下、詳細に説明する。
判定装置3は、いずれかの分岐回路5の回路構成を変更した後に電源が投入されて、分電盤管理システム(電力計測システム1)が起動すると、複数の分岐回路5の各々について、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する。例えば、複数の分岐回路5のうち、「第1分岐回路」であった分岐回路51を「第2分岐回路」に変更した場合、判定装置3は、上述のような判定動作を行い、分岐回路51が「第2分岐回路」であると判定する。
設定装置13は、判定装置3の判定結果、及び記憶装置12に記憶されている分岐回路51の識別情報(電圧区分)をそれぞれ取得し、両者が一致するか否かを判定する。ここで、分岐回路51の回路構成を変更する前においては、分岐回路51は「第1分岐回路」であったため、記憶装置12には、分岐回路51の識別情報として、「第1分岐回路」に対応する電圧区分である100〔V〕が記憶されている。したがって、設定装置13は、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている識別情報とが異なっていることから、記憶装置12に記憶されている識別情報を、判定装置3の判定結果に応じた識別情報に書き換える。すなわち、設定装置13は、記憶装置12に記憶されている分岐回路51の電圧区分を100〔V〕から200〔V〕に書き換える。以上の手順により、設定装置13は、分岐回路51の電圧区分を自動的に正しい電圧区分に修正する。
次に、サーバ装置9の蓄積装置91に蓄積されている分岐回路51の蓄積情報(計測値)を書き換える手順について説明する。
設定ユニット64は、通信装置8と無線通信を行い、設定装置13で設定された分岐回路51の修正後の電圧区分をサーバ装置9の書換装置92へ送信する。ここで、分岐回路51の回路構成を変更してから設定装置13により正しい電圧区分に修正されるまでには時間を要するため、それまでに計測される計測値には誤差が生じてしまう。したがって、分岐回路51の回路を変更してから設定装置13により正しい電圧区分に修正されるまでの計測値については修正が必要である。そこで、書換装置92は、分岐回路51の回路構成を変更してから設定装置13により正しい電圧区分に修正されるまでの計測値について、修正後の電圧区分を用いて正しい計測値に書き換える。すなわち、書換装置92は、判定装置3の判定結果に応じた識別情報(修正後の電圧区分)を用いて、分岐回路51の回路構成を変更してから設定装置13により正しい電圧区分に修正されるまでに蓄積装置91に蓄積された蓄積情報(計測値)を書き換える。
以上説明した本実施形態の分電盤管理システムによれば、設定装置13は、複数の分岐回路5のうち、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている識別情報とが異なる分岐回路5について、記憶装置12に記憶されている識別情報を書き換える。
したがって、この分電盤管理システムによれば、計測装置2での計測結果(電流)を用いることにより、複数の分岐回路5の各々について、2種類の分岐回路(第1分岐回路、第2分岐回路)のどちらであるかを、自動的に判定することができる。そして、この分電盤管理システムによれば、複数の分岐回路5のうち、上記判定結果と記憶装置12に記憶されている識別情報とが異なっている分岐回路5について、設定装置13により正しい識別情報に書き換えることができる。その結果、特許文献1に記載されている情報担体などの部品を分岐ブレーカ62に付加する必要がなく、分岐ブレーカ62の部品点数の増加を抑えながらも、分岐回路5の種類を表す情報(識別情報)を自動的に修正することができる。
特に、この分電盤管理システムが電力計測システム1に適用される場合には、電力計測用の計測装置2を、分岐回路5の識別情報の修正に利用することができる。したがって、既存の電力計測システム1の構成を利用することで、新たなハードウェア資源を追加しなくても、分岐回路5の識別情報を修正することが可能である。そして、電力計測システム1において、分岐回路5の種類(電圧区分)の設定及び修正が自動化されることで、施工業者が手動で設定を行う場合に比べ、設定し忘れや設定の間違いを減らすことができる。
また、本実施形態のように、設定装置13は、許可信号S1に従って書き換え動作を行うのが好ましい。すなわち、設定装置13は、許可信号S1が入力されるまでは待機し、許可信号S1が入力されると書き換え動作を行う。この構成によれば、許可信号S1が入力されるまでは識別情報が書き換えられないので、識別情報が勝手に書き換えられるのを抑えることができる。
また、本実施形態のように、計測装置2は、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流をさらに計測するのが好ましい。蓄積装置91は、複数の分岐回路5の各々について、分岐電流を用いて算出される電力及び電力量のうち少なくとも一方の計測値を蓄積情報として蓄積する。書換装置92は、複数の分岐回路5のうち、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている識別情報とが異なる分岐回路5について、判定結果に応じた識別情報を用いて蓄積情報を書き換える。この構成によれば、分岐回路5の回路構成を変更してから設定装置13により正しい識別情報に修正されるまでの間に蓄積した誤った計測値を、正しい計測値に自動的に修正することができる。
また、設定装置13がコンピュータ(マイコンを含む)を主構成とする場合、コンピュータのメモリに記録されるプログラムは、分電盤6とともに用いられるコンピュータを設定装置13として機能させるためのプログラムである。ここでいう設定装置13は、判定装置3の判定結果と記憶装置12に記憶されている識別情報とが異なる分岐回路5について、判定結果に応じて記憶装置12に記憶されている識別情報を書き換える。判定装置3は、分岐回路5の種類を判定する。記憶装置12は、複数の分岐回路5の各々の種類を記憶する。
このプログラムによれば、専用の計測装置2、判定装置3及び設定装置13を用いなくても、本実施形態の分電盤管理システムと同等の機能を実現でき、分岐ブレーカ62の部品点数の増加を抑えながらも、分岐回路5の種類を表す情報を修正することができる。
なお、本実施形態では、計測装置2、判定装置3、演算装置11、記憶装置12、及び設定装置13を分電盤6のキャビネット60内に設けているが、これらの装置のうち少なくとも1つは、キャビネット60外の通信装置8やサーバ装置9に設けられていてもよい。また、計測装置2、判定装置3、演算装置11、記憶装置12、設定装置13、蓄積装置91、及び書換装置92のうち少なくとも1つは、クラウド(クラウドコンピューティング)のように分散して存在するコンピュータによって実現されていてもよい。
さらに、本実施形態では、判定装置3は、第1電流I1、第2電流I2及び分岐回路5の分岐電流の電流波形をもとに分岐回路5の種類を判定しているが、判定装置3は、各電流の特徴量(例えば周波数スペクトルなど)をもとに分岐回路5の種類を判定してもよい。この場合、判定装置3は、分岐電流の何れかの周波数の強度が第1電流I1、第2電流I2に含まれているか否かにより、分岐回路5の種類を判定するように構成すればよい。
また、判定装置3は、複数の分岐回路5の各々で消費される電力量の総和が、第1電圧線41で消費される電力量と第2電圧線42で消費される電力量との和に一致するか否かにより、分岐回路5の種類を判定してもよい。さらに、判定装置3は、複数の分岐回路5の各々の分岐電流の実効値の総和が、第1電流I1の実効値と第2電流I2の実効値との和に一致するか否かにより、分岐回路5の種類を判定してもよい。
また、入力装置14は、押しボタンスイッチに限らず、例えば設定ユニット64(図2参照)にタッチパネルが設けられている場合には、タッチパネルに表示されるスイッチを入力装置14としてもよい。さらに、設定ユニット64と通信装置8との通信は、無線通信に限らず、有線通信であってもよい。
また、本実施形態では、計測装置2が第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流を計測する場合について説明したが、計測装置は、第1電圧線41、第2電圧線42、及び分岐回路5について、電圧などの物理量を計測するように構成されていてもよい。