(実施形態1)
(1.1)全体概要
本実施形態に係る回路判定システムは、分電盤に用いられ、複数の分岐回路の各々の種類を判定するためのシステムである。
例えば単相三線式の配電方式であれば、分電盤は、図1に示すように、第1電圧線(L1相)41と第2電圧線(L2相)42と中性線(N相)43とを有する電力線4に電気的に接続される。この場合、第1電圧線41は「第1電線」を構成し、第2電圧線42は「第2電線」を構成し、中性線43は「第3電線」を構成する。
そして、分電盤は、この電力線4からの交流電力を複数(図1の例では7つ)の分岐回路51〜57に分配する。そのため、複数の分岐回路51〜57には、「第1分岐回路」と、「第2分岐回路」と、「第3分岐回路」との3種類が存在する。「第1分岐回路」は、第1電圧線41及び中性線43に電気的に接続される。「第2分岐回路」は、第2電圧線42及び中性線43に電気的に接続される。「第3分岐回路」は、第1電圧線41及び第2電圧線42に電気的に接続される。なお、以下では、複数の分岐回路51〜57を特に区別しない場合には、複数の分岐回路51〜57の各々を「分岐回路5」ともいう。また、ここでいう「分岐回路」は、分岐ブレーカ、並びに分岐ブレーカの二次側に接続される配線路、配線器具(アウトレット、壁スイッチなど)、及び各種の機器(照明器具、調理家電など)を含んでいる。
ここで、第1電圧線41又は第2電圧線42と、中性線43との間の電圧が100〔V〕(実効値)であるとすれば、「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」には100〔V〕が印加され、「第3分岐回路」には200〔V〕が印加されることになる。回路判定システムは、複数の分岐回路5の各々について、上述のように印加電圧の異なる3種類の分岐回路(第1分岐回路、第2分岐回路、第3分岐回路)のいずれに当たるかを、自動的に判定するためのシステムである。
すなわち、本実施形態の回路判定システムは、図1に示すように、計測装置2と、判定装置3とを備えている。計測装置2は、少なくとも第1電圧線(L1相)41を流れる第1電流I1及び第2電圧線(L2相)42を流れる第2電流I2の各々を計測する。判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、少なくとも複数の分岐回路5の各々が、「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」と、「第3分岐回路」とのどちらであるかを判定する。このとき、判定装置3は、第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化を電流変化とし、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致するか否かによって、複数の分岐回路5の各々の種類を判定する。
要するに、本実施形態の回路判定システムでは、電力線4のうち少なくとも第1電圧線41及び第2電圧線42の各々を流れる電流(第1電流I1、第2電流I2)を計測装置2が計測し、その計測結果を用いて、判定装置3が分岐回路5の種類を判定する。ここで、判定装置3では、第1電流I1の電流変化(第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化)と第2電流I2の電流変化(第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化)の一致、不一致により、分岐回路5の種類を判定する。つまり、判定装置3は、ある期間(第1期間及び第2期間)内において、時間経過に伴って第1電流I1に生じる変化と第2電流I2に生じる変化との一致、不一致により、分岐回路5の種類を判定する。
また、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しない分岐回路5について、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する。このとき、判定装置3は、分岐電流の電流変化が第1電流I1の電流変化及び第2電流I2の電流変化のいずれに一致するかによって、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する。
ところで、近年、複数の分岐回路5の各々について、消費電力と消費電力量との少なくとも一方を計測値として計測する電力計測システムが普及している。一般的な電力計測システムにおいては、複数の分岐回路5の各々に印加されている電圧値と、複数の分岐回路5の各々に流れる電流値とから、複数の分岐回路5の各々での消費電力や消費電力量が求められる。そのため、複数の分岐回路5に、上述したように印加電圧の異なる3種類の分岐回路が含まれている場合、電力計測システムにおいて、消費電力や消費電力量を精度よく求めるには、複数の分岐回路5の各々の種類が正しく設定されている必要がある。つまり、複数の分岐回路5の各々について、印加電圧が100〔V〕か200〔V〕かを表す情報(以下、「電圧区分」という)が正しく設定される必要がある。
この種の電力計測システムにおいて、従来、電圧区分の設定は、ディップスイッチ等のメカニカルスイッチや専用の設定装置を用いて、分電盤や電力計測システムの施工業者が手動で行っている。ただし、施工業者が手動で設定を行う場合には、人為的ミスにより、設定し忘れたり設定を間違ったりする可能性があるため、電圧区分の設定の自動化が望まれている。
そこで、本実施形態では、複数の分岐回路5の各々の種類を自動的に判定するための回路判定システムを電力計測システムに適用し、電圧区分の設定を自動化する場合を例に、回路判定システムについて説明する。ただし、本実施形態の回路判定システムの用途は、複数の分岐回路5の各々の種類を自動的に判定する用途であればよく、電力計測システムに限らず、例えば施工状況の確認のために用いられてもよい。
(1.2)詳細説明
以下、本実施形態に係る回路判定システムについて詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
本実施形態では、回路判定システムは、需要家施設において消費電力と消費電力量との少なくとも一方を計測するための電力計測システムに適用され、複数の分岐回路5の各々について電圧区分の設定に用いられる。ここでいう「需要家施設」は、電力の需要家の施設を意味しており、電力会社等の電気事業者から電力の供給を受ける施設だけでなく、太陽光発電設備等の自家発電設備から電力の供給を受ける施設も含む。本実施形態では、戸建住宅を需要家施設の一例として説明する。
(1.2.1)基本構成
ここではまず、回路判定システムが適用される電力計測システム1の基本構成について、図1を参照して説明する。
本実施形態の電力計測システム1は、図1に示すように、計測装置2及び判定装置3の他、消費電力と消費電力量との少なくとも一方を演算する演算装置11と、電圧区分を記憶する記憶装置12と、電圧区分を設定する設定装置13とを更に備えている。さらに、電力計測システム1は、複数箇所の電流を計測するために、複数の電流センサ21,22,201〜207を備えている。ここで、電力計測システム1の構成要素は、演算装置11を除き、回路判定システムの構成要素と共通である。すなわち、本実施形態の回路判定システムは、計測装置2、判定装置3、記憶装置12、設定装置13、及び複数の電流センサ21,22,201〜207を備えている。なお、複数の電流センサ21,22,201〜207は、計測装置2に含まれていてもよい。
本実施形態では、これらの電力計測システム1の構成要素(計測装置2、判定装置3、演算装置11、記憶装置12、設定装置13、及び電流センサ21,22,201〜207)は、分電盤6(図2参照)のキャビネット60(図2参照)内に収納されている。
計測装置2には、一対の(主幹用)電流センサ21,22及び複数の(分岐用)電流センサ201〜207の各々が電気的に接続されている。一対の電流センサ21,22は、第1電圧線41及び第2電圧線42に一対一に対応して設けられている。また、複数の電流センサ201〜207は、複数の分岐回路5に一対一に対応して設けられている。これにより、計測装置2では、電流センサ21の出力から第1電圧線41を流れる第1電流I1が計測可能であり、電流センサ22の出力から第2電圧線42を流れる第2電流I2が計測可能である。また、計測装置2では、複数の電流センサ201〜207の出力から、複数の分岐回路5の各々を流れる電流(以下、「分岐電流」という)を計測可能である。以下では、分岐電流を計測するための複数の電流センサ201〜207を特に区別しない場合には、複数の電流センサ201〜207の各々を「電流センサ20」ともいう。
なお、以下では、分岐回路51を流れる分岐電流、つまり電流センサ201で計測される分岐電流を「分岐電流I11」という。同様に、分岐回路5n(nは自然数)を流れる分岐電流、つまり電流センサ20n(nは自然数)で計測される分岐電流を「分岐電流I1n」という。
判定装置3は、計測装置2と電気的に接続されており、計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々が、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのいずれであるかを判定する。ここでいう計測装置2の計測結果は、計測装置2での各電流(第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流)の計測結果であって、例えば実効値や電流波形などである。
ここで、判定装置3は、例えばマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成とし、マイコンのメモリに記録されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することにより、種々の機能を実現する。プログラムは、予めマイコンのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。なお、判定装置3の動作については、「(1.2.3)回路判定動作」の欄で詳しく説明する。
本実施形態では、判定装置3は、少なくとも回路判定システム(電力計測システム1)の起動時、つまり電源投入時に、複数の分岐回路5の各々の種類を判定する。判定装置3は、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのいずれであるかを一旦判定した分岐回路5については、以降、定期的に「第1分岐回路」と「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのいずれであるかを判定するように構成されている。これにより、判定装置3は、判定に関連する処理負荷(演算負荷)を低減することができる。
演算装置11は、計測装置2と電気的に接続されており、計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々について、消費電力と消費電力量との少なくとも一方を計測値として計測する。計測値は、瞬時電力を表す消費電力であってもよいし、あるいは一定時間における電力の消費量(使用量)を表す消費電力量であってもよい。また、計測値は、消費電力と消費電力量との両方であってもよい。本実施形態では一例として、計測値は、消費電力を一定時間(例えば1分間)積算した消費電力量であることとする。
演算装置11は、電力線(第1電圧線41、第2電圧線42、及び中性線43)4の線間電圧を監視している。演算装置11は、例えばマイコン(マイクロコンピュータ)からなり、線間電圧と分岐電流を用いて演算することにより、計測値を求める。なお、演算装置11では、複数の分岐回路5の各々についての計測値だけでなく、需要家施設の総消費電力量を計測値として求める構成であってもよい。
記憶装置12は、複数の分岐回路5の各々について、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのいずれであるかを記憶する。言い換えれば、記憶装置12は、複数の分岐回路5の各々の電圧区分(印加電圧が100〔V〕か200〔V〕かを表す情報)を記憶する。つまり、複数の分岐回路51〜57のうち、「第1分岐回路」である分岐回路51,52、及び「第2分岐回路」である分岐回路53,54については、100〔V〕との電圧区分が対応付けて記憶される。また、複数の分岐回路51〜57のうち、「第3分岐回路」である分岐回路55〜57については、200〔V〕との電圧区分が対応付けて記憶される。
本実施形態では、複数の分岐回路5の各々を識別するための識別符号として回路番号(1,2,3…)が用いられ、分岐ブレーカ62の位置ごとに個別の回路番号が割り当てられる。例えば、上段の分岐ブレーカ62については、主幹ブレーカ61側から順に奇数番号(1,3,5,7…)が回路番号として割り当てられる。下段の分岐ブレーカ62については、主幹ブレーカ61側から順に偶数番号(2,4,6,8…)が回路番号として割り当てられる。そして、記憶装置12は、複数の分岐回路5に電圧区分(分岐回路の種類)が一対一で対応するように、識別符号(回路番号)ごとに電圧区分をテーブル形式で記憶する。なお、分岐回路5への回路番号の割り当て方は、上述した例に限らず任意に決めることができる。
記憶装置12は、演算装置11と電気的に接続されている。演算装置11では、記憶装置12に記憶されている電圧区分に応じて演算結果を補正することで、計測値を精度よく求めることができる。
設定装置13は、記憶装置12に電気的に接続されており、記憶装置12に記憶される電圧区分を設定する。ここで、設定装置13には、判定装置3が電気的に接続されており、設定装置13は、判定装置3の判定結果を記憶装置12に書き込むように構成されている。すなわち、設定装置13は、複数の分岐回路5の各々が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのいずれであるかを表す、判定装置3での判定結果を受けて、記憶装置12に電圧区分の書き込みを行う。
(1.2.2)分電盤
次に、分電盤6の構成について説明する。
分電盤6は、図2に示すように、電力線4に電気的に接続される主幹ブレーカ61と、主幹ブレーカ61の二次側端子に電気的に接続される複数の分岐ブレーカ62とをキャビネット60内に備えている。さらに、分電盤6は、計測ユニット63、設定ユニット64、電流センサ21,22、及びセンサ群23,24をキャビネット60内に備えている。
本実施形態では一例として、電力計測システム1の構成要素のうち、計測装置2、判定装置3及び演算装置11としての機能は、計測ユニット63に設けられている。同様に、記憶装置12及び設定装置13としての機能は、設定ユニット64に設けられている。
主幹ブレーカ61の一次側端子は、3線式(第1電圧線41、第2電圧線42、及び中性線43)の電力線4を介して、系統電源7(図1参照)に電気的に接続されている。主幹ブレーカ61の二次側端子には、3極(L1相、L2相、N相)の導電バーが接続されている。これら3極の導電バーは、第1電圧線(L1相)41、第2電圧線(L2相)42、及び中性線(N相)43と一対一に電気的に接続される。
複数の分岐ブレーカ62は、導電バーに接続されることにより、主幹ブレーカ61の二次側端子に電気的に接続される。なお、複数の分岐ブレーカ62は、導電バーの幅方向の両側(上段と下段)に分かれて、それぞれ複数ずつ配置されている。
ここで、複数の分岐ブレーカ62のうち、「第1分岐回路」である分岐回路51,52に含まれる分岐ブレーカ62は、L1相の導電バーとN相の導電バーとに接続されている。また、複数の分岐ブレーカ62のうち、「第2分岐回路」である分岐回路53,54に含まれる分岐ブレーカ62は、L2相の導電バーとN相の導電バーとに接続されている。さらに、複数の分岐ブレーカ62のうち、「第3分岐回路」である分岐回路55〜57に含まれる分岐ブレーカ62は、L1相の導電バーとL2相の導電バーとに接続されている。これにより、「第1分岐回路」となる分岐回路51,52の各々は、第1電圧線(L1相)41及び中性線(N相)43に対して電気的に接続されることになる。また、「第2分岐回路」となる分岐回路53,54の各々は、第2電圧線(L2相)42及び中性線(N相)43に対して電気的に接続されることになる。さらに、「第3分岐回路」となる分岐回路55〜57の各々は、第1電圧線(L1相)41及び第2電圧線(L2相)42に対して電気的に接続されることになる。
ここにおいて、100〔V〕用の分岐ブレーカ62、つまり「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」に分類される分岐回路5の分岐ブレーカ62は、導電バーの上段に取り付けられた状態では、第1電圧線41及び中性線43に対して電気的に接続される。一方、導電バーの下段に取り付けられた状態では、100〔V〕用の分岐ブレーカ62は、第2電圧線42及び中性線43に対して電気的に接続される。また、200V用の分岐ブレーカ62、つまり「第3分岐回路」に分類される分岐回路5の分岐ブレーカ62は、導電バーの上段、下段に関わらず、第1電圧線41及び第2電圧線42に対して電気的に接続される。
計測ユニット63には、一対の電流センサ21,22及びセンサ群23,24の各々が電気的に接続されている。電流センサ21,22,201〜207としては、例えばCT(Current Transformer)センサ、ホール素子、GMR(Giant Magnetic Resistances)素子等の磁気抵抗素子、シャント抵抗などが用いられる。本実施形態では一例として、電流センサ21,22,201〜207の各々はCTセンサからなる。
一対の電流センサ21,22は、主幹ブレーカ61の一次側端子に接続された電力線4の電流を計測するように、電力線4に取り付けられている。ここでは、一対の電流センサ21,22のうち、一方の(第1の)電流センサ21は第1電圧線41に取り付けられ、他方の(第2の)電流センサ22は第2電圧線42に取り付けられている。これにより、計測ユニット63に設けられた計測装置2では、電流センサ21の出力から第1電圧線41を流れる第1電流I1が計測可能となり、電流センサ22の出力から第2電圧線42を流れる第2電流I2が計測可能となる。
センサ群23,24の各々は、複数の電流センサ20を具備し、これら複数の電流センサ20が、複数の分岐ブレーカ62に一対一に対応するようにして、複数の分岐ブレーカ62と導電バーとの間に取り付けられている。これにより、計測ユニット63に設けられた計測装置2では、センサ群23,24の各々の出力から、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流が計測可能となる。
ここで、導電バーの上段の分岐ブレーカ62は、100〔V〕用か200〔V〕用かによらず、いずれも第1電圧線41に対して電気的に接続される。一方、導電バーの下段の分岐ブレーカ62は、100〔V〕用か200〔V〕用かによらず、いずれも第2電圧線42に対して電気的に接続される。そこで、上段の分岐ブレーカ62の電流を計測するセンサ群23においては、複数の電流センサ20は、第1電圧線41と分岐ブレーカ62との間に設置され、第1電圧線41と分岐ブレーカ62との間の電流を計測する。一方、下段の分岐ブレーカ62の電流を計測するセンサ群24においては、複数の電流センサ20は、第2電圧線42と分岐ブレーカ62との間に設置され、第2電圧線42と分岐ブレーカ62との間の電流を計測する。
また、設定ユニット64は、計測ユニット63に電気的に接続されている。設定ユニット64には、記憶装置12及び設定装置13としての機能が設けられている。したがって、設定ユニット64では、計測ユニット63の判定装置3の判定結果を用いて、自動的に電圧区分の設定が行われる。
なお、設定ユニット64は、分電盤6の外部に設けられたコントローラと通信を行い、計測ユニット63で得られた計測値をコントローラへ送信する通信アダプタとしての機能を有している。ここでいうコントローラは、HEMS(Home Energy Management System)コントローラであって、計測値をモニタへ表示したり、計測値に基づいて(HEMS対応)機器を制御したりすることができる。
(1.2.3)回路判定動作
次に、本実施形態の電力計測システム1(回路判定システム)における、判定装置3の動作(回路判定動作)について説明する。
本実施形態では、判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、少なくとも複数の分岐回路5の各々が、「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」と、「第3分岐回路」とのどちらであるかを判定する。言い換えれば、判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、少なくとも複数の分岐回路5の各々の電圧区分が100〔V〕か200〔V〕かを判定する。このとき、判定装置3は、第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化を電流変化とし、第1電流I1の電流変化と、第2電流I2の電流変化とが一致するか否かによって、複数の分岐回路5の各々の種類を判定する。要するに、判定装置3は、ある期間(第1期間及び第2期間)内において、時間経過に伴って第1電流I1に生じる変化と第2電流I2に生じる変化との一致、不一致により、分岐回路5の種類を判定する。
ここでいう電流変化は、第1期間と第2期間との間で生じる電流波形の特徴量の変化である。具体的には、判定装置3は、例えば第1電流I1については、第1期間の電流波形と第2期間の電流波形との差分(差分波形)を、電流波形の特徴量の変化、つまり第1電流I1の電流変化として求める。判定装置3は、第2電流I2についても同様に、第1期間の電流波形と第2期間の電流波形との差分(差分波形)を、電流変化として求める。
ここで、判定装置3は、第1電流I1と第2電流I2とで差分波形(第1期間の電流波形と第2期間の電流波形との差分)同士を比較することにより、両者の一致、不一致を判断し、判断結果から分岐回路5の種類を判定する。このとき、判定装置3は、第1電流I1と第2電流I2とで差分波形同士を比較するにあたり、例えばパターンマッチングにより、両者の一致度(合致度)を数値化して求める。そして、一致度が閾値以上であれば、判定装置3では、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致すると判断する。
また、本実施形態では、計測装置2は、上述したように、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流を計測するように構成されている。判定装置3は、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しない場合、第1電流I1及び第2電流I2の各々と分岐電流とで差分波形同士を比較する。この場合においても、パターンマッチングにより差分波形同士を比較する。
ここで、第1期間と第2期間とは、互いに同じ時間幅(時間長さ)、かつ同じ位相であることが好ましい。これにより、第1期間の電流波形と第2期間の電流波形との差分(差分波形)は、電流変化が生じていない場合にはゼロになり、電流変化が生じている場合には、電流変化分だけが反映された波形となる。したがって、判定装置3では、第1電流I1、第2電流I2及び分岐電流の電流変化を精度よく求めることができ、その結果、判定精度が向上する。
特に、第1期間及び第2期間は、電力線4の電圧波形に同期して設定されていることが好ましい。言い換えれば、判定装置3は、第1電圧線41及び第2電圧線42間に印加されている交流の電圧波形に同期して、第1期間及び第2期間を設定する。具体的には、第1期間と第2期間との開始時点及び終了時点を、第1電流I1、第2電流I2及び分岐電流のゼロクロス点と一致させることで、第1電流I1、第2電流I2及び分岐電流の電流変化が精度よく求まることになる。その結果、判定装置3での判定精度が向上する。
本実施形態において、判定装置3は、第1期間と第2期間とを1組とする判定期間を設定し、判定期間内で生じる電流の変化、つまり第2期間と第1期間との差分波形を、第1期間と第2期間との間で生じる電流変化として抽出する。少なくとも回路判定システム(電力計測システム1)の起動時、つまり電源投入時には、判定装置3は判定期間を繰り返し設定し、複数の分岐回路5の各々の種類を判定する。なお、回路判定システムの起動時以外であっても、判定期間は定期的(周期的)に設定されていてもよいし、不定期で設定されていてもよい。また、判定期間は連続的に繰り返し設定されていてもよい。
例えば、第1期間から第2期間にかけて、複数の分岐回路51〜57のうちの1つの分岐回路5に含まれる機器がオン(あるいはオフ)することで、この分岐回路5の通電状態が変化した場合を想定する。以下では、第1期間から第2期間にかけて通電状態が変化した分岐回路5を「対象回路」ともいう。
この場合において、通電状態が変化した分岐回路(対象回路)5が、第1電圧線41及び中性線43に接続された「第1分岐回路」、例えば分岐回路51であったとする。このとき、分岐回路51の通電状態の変化に起因して、第1電圧線41及び中性線43を通して分岐回路51を流れる電流に、変化が生じることになる。言い換えれば、分岐回路51の通電状態の変化に起因した電流変化は、第2電圧線42には生じず、第1電圧線41のみに生じる。そのため、「第1分岐回路」にて通電状態が変化した場合、第1電流I1に生じる電流変化と第2電流I2に生じる電流変化とは一致しないこと(不一致)になる。
また、通電状態が変化した分岐回路(対象回路)5が、第2電圧線42及び中性線43に接続された「第2分岐回路」、例えば分岐回路53であったとする。このとき、分岐回路53の通電状態の変化に起因して、第2電圧線42及び中性線43を通して分岐回路53を流れる電流に、変化が生じることになる。言い換えれば、分岐回路53の通電状態の変化に起因した電流変化は、第1電圧線41には生じず、第2電圧線42のみに生じる。そのため、「第2分岐回路」にて通電状態が変化した場合、第1電流I1に生じる電流変化と第2電流I2に生じる電流変化とは一致しないこと(不一致)になる。
これに対して、通電状態が変化した分岐回路(対象回路)5が、第1電圧線41及び第2電圧線42に接続された「第3分岐回路」、例えば分岐回路55であったとする。このとき、分岐回路55の通電状態の変化に起因して、第1電圧線41及び第2電圧線42を通して分岐回路55を流れる電流に、変化が生じることになる。言い換えれば、分岐回路55の通電状態の変化に起因した電流変化は、第1電圧線41と第2電圧線42との両方に生じる。そのため、「第3分岐回路」にて通電状態が変化した場合、第1電流I1に生じる電流変化と第2電流I2に生じる電流変化とは一致することになる。
そこで、判定装置3は、第1電流I1に生じる電流変化と第2電流I2に生じる電流変化とが一致しなければ、つまり不一致であれば、対象回路が「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」であると判定する。一方、第1電流I1に生じる電流変化と第2電流I2に生じる電流変化とが一致すれば、判定装置3は、対象回路が「第3分岐回路」であると判定する。
また、対象回路が「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」のいずれかである場合、分岐回路5の通電状態の変化に起因した電流変化、言い換えると分岐電流に生じる電流変化は、第1電圧線41と第2電圧線42との一方のみに生じる。したがって、この場合には、分岐電流に生じる電流変化は、第1電流I1に生じる電流変化と第2電流I2に生じる電流変化との一方と一致することになる。
そこで、判定装置3は、分岐電流に生じる電流変化と第1電流I1に生じる電流変化とが一致すれば、対象回路が「第1分岐回路」であると判定する。また、判定装置3は、分岐電流に生じる電流変化と第2電流I2に生じる電流変化とが一致すれば、対象回路が「第2分岐回路」であると判定する。
このように、判定装置3は、「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とで電流の経路が異なることを利用し、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致するか否かによって、対象回路の種類を判定する。したがって、本実施形態の回路判定システムによれば、電力線4のうち少なくとも第1電圧線及び第2電圧線42の各々を流れる電流の計測結果を用いることで、分岐回路5の種類を判定することが可能である。
さらに、本実施形態では、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流を計測装置2が計測し、その計測結果を用いて、判定装置3が複数の分岐回路5の種類を判定するように構成されている。そのため、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しない場合において、分岐電流の電流変化が第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とのいずれに一致するかによって、分岐回路5の種類を判定することも可能である。
上述のように、判定装置3は、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しない場合、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の電流変化が第1電流I1の電流変化と一致する分岐回路5について、「第1分岐回路」であると判定する。また、判定装置3は、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しない場合、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の電流変化が第2電流I2の電流変化と一致する分岐回路5について、「第2分岐回路」であると判定する。
すなわち、判定装置3は、判定の対象となる対象回路(第1期間から第2期間にかけて通電状態が変化した分岐回路5)を、分岐電流の電流変化(第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化)に基づいて、複数の分岐回路5の中から特定する。対象回路が「第1分岐回路」であれば、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致せず、かつ、対象回路の分岐電流の電流変化は第1電流I1の電流変化と一致することになる。また、対象回路が「第2分岐回路」であれば、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致せず、かつ、対象回路の分岐電流の電流変化は第2電流I2の電流変化と一致することになる。言い換えれば、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しない場合には、分岐電流の電流変化が第1電流I1及び第2電流I2のいずれかの電流変化と一致する分岐回路5が、対象回路であると推定される。そこで、判定装置3は、分岐電流の電流変化が第1電流I1の電流変化と一致する分岐回路5については、「第1分岐回路」であると判定する。また、判定装置3は、分岐電流の電流変化が第2電流I2の電流変化と一致する分岐回路5については、「第2分岐回路」であると判定する。
同様に、判定装置3は、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致する場合、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の電流変化が第1電流I1及び第2電流I2の両方の電流変化と一致する分岐回路5について、「第3分岐回路」であると判定する。
すなわち、対象回路が「第3分岐回路」であれば、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致し、かつ、対象回路の分岐電流の電流変化は第1電流I1及び第2電流I2の両方の電流変化と一致することになる。言い換えれば、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致する場合には、分岐電流の電流変化が第1電流I1及び第2電流I2の両方の電流変化と一致する分岐回路5が、対象回路であると推定される。そこで、判定装置3は、分岐電流の電流変化が第1電流I1及び第2電流I2の両方の電流変化と一致する分岐回路5については、「第3分岐回路」であると判定する。
(1.2.4)具体例
以下では、判定装置3での回路判定動作の具体例について、図3〜6を参照して説明する。図3Aにおいては、横軸を時間軸として、第1電流I1、第2電流I2、対象回路(ここでは分岐回路51)の分岐電流(ここでは「I11」)の電流波形を表している。図3Bにおいては、横軸を時間軸として、第1電流I1、第2電流I2、対象回路の分岐電流について、第2期間T2の電流波形と第1期間T1の電流波形との差分(第2期間T2−第1期間T1)からなる差分波形を表している。つまり、図3Bに示す差分波形が、第1電流I1、第2電流I2、対象回路の分岐電流の各々の電流変化となる。図4A,4Bは、対象回路が分岐回路53の場合における図3A,3Bに対応する図面、図5A,5Bは、対象回路が分岐回路55の場合における図3A,3Bに対応する図面である。また、図6A,6Bは、対象回路(分岐回路55)の通電状態がオンからオフに変化した場合における図5A,5Bに対応する図面である。
まず、「第1分岐回路」である分岐回路51において、第1期間T1(時刻t1〜t2)から第2期間T2(時刻t2〜t3)にかけて、通電状態がオフからオンに変化した場合について、図3A,3Bを参照して説明する。ここでは、第1期間T1と第2期間T2との境界となる時刻t2において、分岐回路51の通電状態が変化した場合を例示する。
この場合、図3Aに示すように、時刻t2以前の第1期間T1には分岐電流I11はゼロであり、時刻t2以降の第2期間T2には特定波形の分岐電流I11が流れることになる。これに伴い、第1電圧線41には、時刻t2以降の第2期間T2において、時刻t2以前の第1期間T1の第1電流I1に、分岐電流I11を合成した第1電流I1が流れることになる。一方、第2電圧線42には、時刻t2以降の第2期間T2においても、時刻t2以前の第1期間T1と同様の第2電流I2が継続的に流れることになる。
この場合、判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、図3Bに示すように、第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流I11の各々について、電流変化(差分波形)を求める。ここで、分岐電流I11の電流変化は、第1電流I1の電流変化と一致し、第2電流I2の電流変化とは不一致である。そのため、判定装置3は、対象回路としての分岐回路51について、「第1分岐回路」であると判定する。
次に、「第2分岐回路」である分岐回路53において、第1期間T1(時刻t1〜t2)から第2期間T2(時刻t2〜t3)にかけて、通電状態がオフからオンに変化した場合について、図4A,4Bを参照して説明する。ここでは、第1期間T1と第2期間T2との境界となる時刻t2において、分岐回路53の通電状態が変化した場合を例示する。
この場合、図4Aに示すように、時刻t2以前の第1期間T1には分岐電流I13はゼロであり、時刻t2以降の第2期間T2には特定波形の分岐電流I13が流れることになる。これに伴い、第2電圧線42には、時刻t2以降の第2期間T2において、時刻t2以前の第1期間T1の第2電流I2に、分岐電流I13を合成した第2電流I2が流れることになる。一方、第1電圧線41には、時刻t2以降の第2期間T2においても、時刻t2以前の第1期間T1と同様の第1電流I1が継続的に流れることになる。
この場合、判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、図4Bに示すように、第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流I13の各々について、電流変化(差分波形)を求める。ここで、分岐電流I13の電流変化は、第2電流I2の電流変化と一致し、第1電流I1の電流変化とは不一致である。そのため、判定装置3は、対象回路としての分岐回路53について、「第2分岐回路」であると判定する。
さらに、「第3分岐回路」である分岐回路55において、第1期間T1(時刻t1〜t2)から第2期間T2(時刻t2〜t3)にかけて、通電状態がオフからオンに変化した場合について、図5A,5Bを参照して説明する。ここでは、第1期間T1と第2期間T2との境界となる時刻t2において、分岐回路55の通電状態が変化した場合を例示する。
この場合、図5Aに示すように、時刻t2以前の第1期間T1には分岐電流I15はゼロであり、時刻t2以降の第2期間T2には特定波形の分岐電流I15が流れることになる。これに伴い、第1電圧線41には、時刻t2以降の第2期間T2において、時刻t2以前の第1期間T1の第1電流I1に、分岐電流I15を合成した第1電流I1が流れることになる。さらに、第2電圧線42においても第1電圧線41と同様に、時刻t2以降の第2期間T2には、時刻t2以前の第1期間T1の第2電流I2に、分岐電流I15を合成した第2電流I2が流れることになる。
この場合、判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、図5Bに示すように、第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流I15の各々について、電流変化(差分波形)を求める。ここで、分岐電流I15の電流変化は、第1電流I1の電流変化と一致し、第2電流I2の電流変化とも一致する。そのため、判定装置3は、対象回路としての分岐回路55について、「第3分岐回路」であると判定する。
次に、「第3分岐回路」である分岐回路55において、第1期間T1(時刻t1〜t2)から第2期間T2(時刻t2〜t3)にかけて、通電状態がオンからオフに変化した場合について、図6A,6Bを参照して説明する。ここでは、第1期間T1と第2期間T2との境界となる時刻t2において、分岐回路55の通電状態が変化した場合を例示する。
この場合、図6Aに示すように、時刻t2以前の第1期間T1には特定波形の分岐電流I15が流れ、時刻t2以降の第2期間T2には分岐電流I15はゼロになる。これに伴い、第1電圧線41には、時刻t2以降の第2期間T2において、時刻t2以前の第1期間T1の第1電流I1から、分岐電流I15を差し引いた第1電流I1が流れることになる。さらに、第2電圧線42においても第1電圧線41と同様に、時刻t2以降の第2期間T2には、時刻t2以前の第1期間T1の第2電流I2から、分岐電流I15を差し引いた第2電流I2が流れることになる。
この場合、判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、図6Bに示すように、第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流I15の各々について、電流変化(差分波形)を求める。ここで、分岐電流I15の電流変化は、第1電流I1の電流変化と一致し、第2電流I2の電流変化とも一致する。そのため、判定装置3は、対象回路としての分岐回路55について、「第3分岐回路」であると判定する。
(1.3)効果
本実施形態の回路判定システムによれば、電力線4のうちの少なくとも第1電圧線41及び第2電圧線42を流れる第1電流I1及び第2電流I2を計測装置2が計測し、その計測結果を用いて、判定装置3が分岐回路5の種類を判定する。ここで、判定装置3では、第1電流I1の電流変化(第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化)と第2電流I2の電流変化(第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化)の一致、不一致により、分岐回路5の種類を判定する。つまり、判定装置3は、ある期間(第1期間及び第2期間)内において、時間経過に伴って第1電流I1に生じる変化と第2電流I2に生じる変化との一致、不一致により、分岐回路5の種類を判定する。
また、判定装置3は、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しなければ、分岐回路5の分岐電流の電流変化が第1電流I1の電流変化及び第2電流I2の電流変化のいずれに一致するかによって、分岐回路5の種類を判定する。
したがって、この回路判定システムでは、計測装置2での計測結果(電流)を用いることにより、複数の分岐回路5の各々について、3種類の分岐回路(第1分岐回路、第2分岐回路、第3分岐回路)のいずれに当たるかを、自動的に判定することができる。その結果、特許文献1に記載されている情報担体などの部品を分岐ブレーカ62に付加する必要がなく、分岐ブレーカ62の部品点数の増加を抑えながらも、分岐回路5の種類を判定することができる、という利点がある。
特に、回路判定システムが電力計測システム1に適用される場合には、電力計測用の計測装置2を、分岐回路5の種類の判定に利用することができる。したがって、既存の電力計測システム1の構成を利用することで、新たなハードウェア資源を追加しなくても、分岐回路5の種類を判定することが可能である。そして、電力計測システム1において、分岐回路5の種類(電圧区分)の設定が自動化されることで、施工業者が手動で設定を行う場合に比べ、設定し忘れや設定の間違いを減らすことができる。
また、本実施形態のように、計測装置2は、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流を更に計測するように構成されていることが好ましい。判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しない分岐回路5について、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する。例えば、判定装置3は、分岐電流の電流変化が第1電流I1の電流変化と一致していれば、対象回路が「第1分岐回路」であると判定し、分岐電流の電流変化が第2電流I2の電流変化と一致していれば、対象回路が「第2分岐回路」であると判定する。この構成によれば、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しない場合に、計測装置2での分岐電流の計測結果から、判定装置3は、判定の対象となる対象回路を特定することができる。したがって、判定装置3は、計測装置2での計測結果のみから、いずれの分岐回路5が「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」であるかを特定することができる。
さらに、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致する分岐回路5について、分岐電流の電流変化が第1電流I1及び第2電流I2の両方の電流変化と一致していれば、「第3分岐回路」であると判定する。この構成によれば、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致する場合に、計測装置2での分岐電流の計測結果から、判定装置3は、判定の対象となる対象回路を特定することができる。したがって、判定装置3は、計測装置2での計測結果のみから、いずれの分岐回路5が「第3分岐回路」であるかを特定することが可能である。
また、本実施形態のように、電流変化は、第1期間と第2期間との間で生じる電流波形の特徴量の変化であることが好ましい。この構成によれば、判定装置3では、電流波形の特徴量の変化から、分岐回路5の種類を判定することになるので、判定の正確性が向上する。例えば、偶然、同じタイミングで複数の分岐回路5の通電状態が変化した場合でも、これらの分岐回路5の電流波形の特徴量が異なっていれば、判定装置3では、誤判定を回避することができる。
また、本実施形態のように、第1期間及び第2期間は、電力線4の電圧波形に同期して設定されることが好ましい。この構成によれば、第1期間や第2期間の開始時点及び終了時点を、第1電流I1、第2電流I2及び分岐電流のゼロクロス点と一致させることで、第1電流I1、第2電流I2及び分岐電流の電流変化を精度よく求めることができる。その結果、判定装置3での判定精度が向上する。ただし、この構成は回路判定システムに必須の構成ではなく、第1期間及び第2期間は、電力線4の電圧波形に対して非同期であってもよい。
また、回路判定システムは、複数の分岐回路5の各々について「第1分岐回路」と「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのいずれであるかを記憶する記憶装置12と、判定装置3の判定結果を記憶装置12に書き込む設定装置13とを更に備えることが好ましい。この構成によれば、判定装置3の判定結果を受けて複数の分岐回路5の各々について「第1分岐回路」と「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのいずれであるかが記憶装置12に自動的に書き込まれるので、分岐回路5の種類の設定までも自動化することができる。さらに、施工業者が手動で設定を行った後で設定装置13が判定結果を書き込むことで、施工業者の設定が間違っていた場合にも正しい設定に修正することが可能である。ただし、この構成は回路判定システムに必須の構成ではなく、記憶装置12及び設定装置13の少なくとも一方は省略されていてもよい。
(1.4)回路判定方法、プログラム
以下の回路判定方法を採用することで、専用の計測装置2及び判定装置3を用いなくても、本実施形態の回路判定システムと同等の機能を実現できる。
すなわち、回路判定方法は、分電盤6に用いられ、複数の分岐回路5の各々が、少なくとも「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」と、「第3分岐回路」とのどちらであるかを判定する方法であって、判定ステップを含んでいる。判定ステップは、少なくとも第1電線(第1電圧線41)を流れる第1電流I1及び第2電線(第2電圧線42)を流れる第2電流I2の各々を計測する計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々の種類を判定するステップである。判定ステップは、計測装置2の計測結果を用いて、第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化を電流変化とし、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致するか否かによって、分岐回路5の種類を判定する。つまり、判定ステップでは、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致するか否かによって、少なくとも複数の分岐回路5の各々が「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのどちらであるかを判定する。
この回路判定方法によれば、専用の計測装置2及び判定装置3を用いなくても、本実施形態の回路判定システムと同等の機能を実現でき、分岐ブレーカ62の部品点数の増加を抑えながらも、分岐回路5の種類を判定することができる、という利点がある。
また、判定装置3がコンピュータ(マイコンを含む)を主構成とする場合、コンピュータのメモリに記録されるプログラムは、分電盤6と共に用いられるコンピュータに判定処理を実行させるためのプログラムである。判定処理では、少なくとも第1電線(第1電圧線41)を流れる第1電流I1及び第2電線(第2電圧線42)を流れる第2電流I2の各々を計測する計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々の種類を判定する。判定処理では、第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化を電流変化とし、第1電流I1及び第2電流I2の電流変化が一致するか否かによって、少なくとも複数の分岐回路5の各々が「第1,第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのどちらであるかを判定する。
このプログラムによれば、専用の計測装置2及び判定装置3を用いなくても、本実施形態の回路判定システムと同等の機能を実現でき、分岐ブレーカ62の部品点数の増加を抑えながらも、分岐回路5の種類を判定することができる、という利点がある。
(1.5)変形例
(1.5.1)第1変形例
図7A及び図7Bを参照して本実施形態の第1変形例について説明する。
第1変形例では、図7Aに示すように、系統電源7に系統連系する分散電源8が設けられている。分散電源8は、例えば主幹ブレーカ61の二次側端子に接続された連系ブレーカに電気的に接続される。分散電源8は、例えば太陽光発電装置及びパワーコンディショナである。分散電源8の出力電流I8は、電流センサ28にて計測される。電流センサ28は、例えばセンサ群23,24の各々に含まれる複数の電流センサ20の1つからなる。なお、図7A,7Bでは、電力計測システム1を構成する計測装置2、判定装置3、演算装置11、記憶装置12、及び設定装置13の図示を省略している。
上記構成のシステムは、系統電源7と分散電源8とを一まとめにすることで、図7Bに示すような等価回路で表すことができる。図7Bによれば、第1電圧線41には、系統電源7からの電流I1に加えて分散電源8の出力電流I8が流れることになる。この構成においても、判定装置3は、ある期間(第1期間及び第2期間)内において、時間経過に伴って第1電流に生じる変化と第2電流に生じる変化との一致、不一致により、分岐回路5の種類を判定することができる。
(1.5.2)第2変形例
図8及び図9A〜図9Cを参照して本実施形態の第2変形例について説明する。
本実施形態では、上述のように、判定装置3は、第1電流I1、第2電流I2及び複数の分岐回路5の各々の分岐電流について差分波形(第1期間の電流波形と第2期間の電流波形との差分)を比較することにより、複数の分岐回路5の種類を判定している。このように、波形同士で差分演算を行う場合には演算量が多くなり、CPU(判定装置3)において膨大な演算処理が必要になる。特に、測定対象となる分岐回路の数が多くなると、その分だけ演算処理も増えることになる。
第2変形例では、判定装置3は、演算量を減らすことができるように、第1電流I1、第2電流I2及び複数の分岐回路5の各々の分岐電流の実効値から、複数の分岐回路5の種類を判定するように構成されている。
図8は、第1電流I1、第2電流I2及び対象回路(ここでは分岐回路55)の分岐電流(ここでは「I15」)の各々について、一定時間ごとに求めた電流の実効値、実効値の差分、及び3つの差分が一致した回数をカウントしたカウント値C3を表す図面である。一定時間は、例えば1秒である。
判定装置3は、第1電流I1、第2電流I2及び対象回路の分岐電流の各々について、一定時間ごとの実効値を求める(図8における上段参照)。また、判定装置3は、第1電流I1、第2電流I2及び対象回路の分岐電流の各々について、第1期間T1における実効値と第2期間T2における実効値との差分を求める(図8における中段参照)。第1期間T1及び第2期間T2は、時間的に連続する2つの期間である。判定装置3は、第1電流I1の実効値の差分、第2電流I2の実効値の差分及び対象回路の分岐電流の実効値の差分がすべて一致した回数をカウントする(図8における下段参照)。そして、判定装置3は、所定時間T3(例えば1時間)におけるカウント値C3が閾値(図8の例では3)以上であれば、対象回路が「第3分岐回路」であると判定する。また、判定装置3は、所定時間T3におけるカウント値C3が閾値よりも小さければ、対象回路が「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」であると判定する。
ところで、判定装置3は、複数の分岐回路5の各々について、3つの差分が一致した回数をカウントするカウント値C3だけでなく、カウント値C1,C2(図9A〜図9C参照)についてもカウントしている。カウント値C1は、第1電流I1の実効値の差分と対象回路の分岐電流の実効値の差分とが一致した回数をカウントした値である。また、カウント値C2は、第2電流I2の実効値の差分と対象回路の分岐電流の実効値の差分とが一致した回数をカウントした値である。
例えば、対象回路が「第3分岐回路」である場合、図9Cに示すように、所定時間T3におけるカウント値C3のみが閾値n1以上になり、判定装置3は、カウント値C3のみが閾値n1以上になっていることから、対象回路が「第3分岐回路」であると判定する。また、対象回路が「第1分岐回路」である場合、図9Aに示すように、所定時間T3におけるカウント値C1のみが閾値n1以上になり、判定装置3は、カウント値C1のみが閾値n1以上になっていることから、対象回路が「第1分岐回路」であると判定する。さらに、対象回路が「第2分岐回路」である場合、図9Bに示すように、所定時間T3におけるカウント値C2のみが閾値n1以上になり、判定装置3は、カウント値C2のみが閾値n1以上になっていることから、対象回路が「第2分岐回路」であると判定する。
第2変形例によれば、判定装置3は、第1電流I1、第2電流I2及び対象回路の分岐電流の各々について、一定時間ごとに求められた実効値の差分に基づいて、対象回路の種類を判定している。したがって、上述の実施形態1の回路判定システムのように、第1電流I1、第2電流I2及び対象回路の分岐電流について差分波形を比較する場合に比べて、判定装置3での演算量を減らすことができる。
(1.5.3)その他の変形例
本実施形態では、戸建住宅を需要家施設の一例として説明しているが、この例に限らず、需要家施設は、集合住宅の各住戸などの戸建住宅以外の住宅、あるいは事務所、店舗等の被住宅であってもよい。
また、電力計測システム1の構成要素の分電盤6内での配置は、上述した構成に限らず適宜変更可能である。例えば、計測装置2、判定装置3、演算装置11、記憶装置12、及び設定装置13の全ての機能が、計測ユニット63及び設定ユニット64の一方に集約して設けられていてもよい。さらに、電力計測システム1の構成要素の少なくとも一部は、分電盤6のキャビネット60の外側に設けられていてもよい。
また、第1期間と第2期間とは、互いに同じ時間幅(時間長さ)、かつ同じ位相に限らない。つまり、第1期間と第2期間とでは、時間幅が異なっていてもよいし、位相が異なっていてもよい。さらに、第1期間と第2期間とは連続していることは必須でなく、第1期間と第2期間との間に一定期間が挟まれていてもよい。
また、判定装置3での判定に用いられる電流変化は、第1期間と第2期間との間で生じる電流波形の特徴量の変化に限らず、例えば第1期間と第2期間との間で生じる電流の実効値の変化であってもよい。また、電流変化は、第1期間と第2期間との間で生じる電流の周波数(周波数成分)の変化であってもよい。さらには、電流変化は、第1期間と第2期間との間で生じる電流波形の波高値の変化であってもよい。
電流変化が実効値、周波数、又は波高値の変化であれば、判定装置3は、パターンマッチングなどに比べて低負荷となる演算処理で、電流変化を求めることができ、分岐回路5の種類の判定が可能である。特に、電流変化が実効値又は波高値の変化であれば、偶然、同じタイミングで複数の分岐回路5の通電状態が変化した場合でも、これらの分岐回路5で電流の大きさが異なっていれば、判定装置3では、誤判定を回避することができる。電流変化が周波数の変化であれば、偶然、同じタイミングで複数の分岐回路5の通電状態が変化した場合でも、これらの分岐回路5で電流の周波数が異なっていれば、判定装置3では、誤判定を回避することができる。
また、本実施形態では、判定装置3は、判定の対象となる対象回路を、分岐電流の電流変化に基づいて特定しているが、対象回路の特定方法はこの方法に限らない。例えば判定装置3が、HEMSのコントローラなどから、各分岐回路5に含まれる機器のオン(あるいはオフ)を表すオンオフ情報を取得する構成を想定する。この構成であれば、判定装置3は、オンオフ情報を用いて、第1期間から第2期間にかけて通電状態が変化した分岐回路5、つまり対象回路を特定することができる。この場合には、計測装置2は第1電流I1と第2電流I2とを計測する構成であればよく、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流を計測する機能が省略されていてもよい。
すなわち、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致しない場合に、計測装置2での分岐電流の計測結果から判定装置3が判定の対象となる対象回路を特定する構成は、回路判定システムに必須の構成ではない。同様に、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致する場合に、計測装置2での分岐電流の計測結果から判定装置3が判定の対象となる対象回路を特定する構成は、回路判定システムに必須の構成ではない。
また、本実施形態では、第1電圧線41が「第1電線」、第2電圧線42が「第2電線」、中性線43が「第3電線」である場合について説明したが、この例に限らない。例えば、第1電圧線41が「第1電線」、中性線43が「第2電線」、第2電圧線42が「第3電線」であってもよい。この場合、電力線4のうちの少なくとも第1電圧線41を流れる第1電流、及び中性線43を流れる第2電流を計測装置2が計測し、その計測結果を用いて、判定装置3が分岐回路5の種類を判定する。したがって、時間経過に伴って第1電流に生じる変化と第2電流に生じる変化との一致、不一致により、分岐回路5の種類を判定する。この場合、第1電圧線41と中性線43との一方及び第2電圧線42に電気的に接続された分岐回路5が「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」となり、第1電圧線41及び中性線43に電気的に接続された分岐回路5が「第3分岐回路」となる。そして、判定装置3では、第1電流の電流変化と第2電流の電流変化とが一致すれば、対象回路が「第3分岐回路」であると判定する。
さらに、本実施形態では、判定装置3は、対象回路が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する際に、分岐電流の電流変化が第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とのいずれに一致するかによって判定している。これに対して、判定装置3は、対象回路を流れる分岐電流に基づいて算出される電力(消費電力)の正負によって、対象回路が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定するように構成されていてもよい。以下では、判定装置3において、複数の分岐回路5のすべてが「第1分岐回路」であるとデフォルトで設定されている場合を想定する。
この場合、対象回路が「第1分岐回路」であれば、対象回路の分岐電流と印加電圧(線間電圧)とから算出される電力は正となり、対象回路が「第2分岐回路」であれば、対象回路の分岐電流と印加電圧とから算出される電力は負となる。つまり、複数の分岐回路5のすべてが「第1分岐回路」であるとデフォルトで設定されている場合、判定装置3は、電力が正であれば対象回路が「第1分岐回路」であると判定し、電力が負であれば対象回路が「第2分岐回路」であると判定する。しかもこの場合、判定装置3は、回路判定システム(電力計測システム1)の起動時、つまり電源投入時において瞬時に、対象回路が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定することができる。そのため、判定装置3は、その後の回路判定動作において、対象回路が、「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」と、「第3分岐回路」とのどちらであるかを判定するだけでよく、処理時間を短縮することができる。
また、複数の分岐回路5のすべてが「第2分岐回路」であるとデフォルトで設定されている場合、対象回路が「第1分岐回路」であれば、分岐電流と印加電圧とから算出される電力は負となり、対象回路が「第2分岐回路」であれば、上記電力は正となる。そして、判定装置3は、算出した電力の正負によって、対象回路が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する。
(実施形態2)
上述の実施形態1の回路判定システムでは、第1電流I1、第2電流I2及び複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の電流変化に基づいて、複数の分岐回路5の種類を判定した。これに対して、本実施形態の回路判定システムでは、第1電流I1、第2電流I2及び複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の特徴量に基づいて、複数の分岐回路5の種類を判定している。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
(1.1)詳細説明
本実施形態の回路判定システムが適用される電力計測システム1の基本構成及び分電盤6の構成については実施形態1と同様であり、ここでは詳細な説明を省略する。
(1.1.1)回路判定動作
本実施形態では、判定装置3は、計測装置2の計測結果を用いて、少なくとも複数の分岐回路5の各々が、「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」と、「第3分岐回路」とのどちらであるかを判定する。このとき、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第1電流I1及び第2電流I2の一方のみに含まれている分岐回路5について、「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」であると判定する。また、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれている分岐回路5について、「第3分岐回路」であると判定する。さらに、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第1電流I1のみに含まれている分岐回路5について、「第1分岐回路」であると判定する。また、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第2電流I2のみに含まれている分岐回路5について、「第2分岐回路」であると判定する。
ここでいう第1電流I1の特徴量、第2電流I2の特徴量、及び複数の分岐回路5の各々の分岐電流の特徴量は、電流の周波数スペクトルである。具体的には、判定装置3は、例えば第1電流I1については、判定期間T1(図10参照)に第1電圧線41を流れる電流の周波数ごとの強度を、第1電流I1の特徴量として求める。また、判定装置3は、第2電流I2についても同様に、判定期間T1に第2電圧線42を流れる電流の周波数ごとの強度を、第2電流I2の特徴量として求める。さらに、判定装置3は、複数の分岐回路5の各々の分岐電流についても同様に、判定期間T1に複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の周波数ごとの強度を、複数の分岐回路5の各々の分岐電流の特徴量として求める。
本実施形態において、判定装置3は、第1電流I1の特徴量、第2電流I2の特徴量、及び複数の分岐回路5の各々の分岐電流の特徴量を抽出する判定期間を設定する。少なくとも回路判定システム(電力計測システム1)が起動(又は再起動)したとき、つまり電源が投入されたときには、判定装置3は判定期間を設定し、複数の分岐回路5の種類を判定する。なお、回路判定システムが起動(又は再起動)したとき以外であっても、判定期間は定期的(周期的)に設定されていてもよいし、不定期に設定されていてもよい。また、判定期間は連続的に繰り返し設定されていてもよい。
例えば、複数の分岐回路51〜57のうちの1つの分岐回路5に含まれる機器がオンすることで、この分岐回路5の通電状態が変化した場合を想定する。以下では、通電状態が変化した分岐回路5を「対象回路」ともいう。
この場合において、通電状態が変化した分岐回路(対象回路)5が、第1電圧線41及び中性線43に接続された「第1分岐回路」、例えば分岐回路51であったとする。このとき、分岐回路51の通電状態の変化に起因して、第1電圧線41及び中性線43を通して分岐回路51を流れる分岐電流に変化が生じる。そして、この電流変化により分岐電流に表れる特徴量は、第2電圧線42には表れず、第1電圧線41のみに表れる。つまり、「第1分岐回路」において通電状態が変化した場合、分岐回路5の分岐電流の特徴量は、第1電流I1のみに含まれることになる。
また、通電状態が変化した分岐回路5が、第2電圧線42及び中性線43に接続された「第2分岐回路」、例えば分岐回路53であったとする。このとき、分岐回路53の通電状態の変化に起因して、第2電圧線42及び中性線43を通して分岐回路53を流れる分岐電流に変化が生じる。そして、この電流変化により分岐電流に表れる特徴量は、第1電圧線41には表れず、第2電圧線42のみに表れる。つまり、「第2分岐回路」において通電状態が変化した場合、分岐回路5の分岐電流の特徴量は、第2電流I2のみに含まれることになる。
これに対して、通電状態が変化した分岐回路5が、第1電圧線41及び第2電圧線42に接続された「第3分岐回路」、例えば分岐回路55であったとする。このとき、分岐回路55の通電状態の変化に起因して、第1電圧線41及び第2電圧線42を通して分岐回路55を流れる分岐電流に変化が生じる。そして、この電流変化により分岐電流に表れる特徴量は、第1電圧線41及び第2電圧線42の両方に表れる。つまり、「第3分岐回路」において通電状態が変化した場合、分岐回路5の分岐電流の特徴量は、第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれることになる。
そして、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第1電流I1のみに含まれている分岐回路5について、「第1分岐回路」であると判定する。また、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第2電流I2のみに含まれている分岐回路5について、「第2分岐回路」であると判定する。さらに、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれている分岐回路5について、「第3分岐回路」であると判定する。なお、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第1電流I1及び第2電流I2のいずれにも含まれていない分岐回路5については、「第1分岐回路」と「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とのいずれであるかを判定しない。
(1.1.2)具体例
以下では、判定装置3での回路判定動作の具体例について、図10及び図11A〜図11Cを参照して説明する。図10においては、横軸を時間軸として、第1電流I1、第2電流I2、及び対象回路(ここでは分岐回路55)の分岐電流(ここでは「I15」)の電流波形を表している。また、図11Aにおいては、横軸を周波数として、第1電流I1の周波数スペクトル(周波数ごとの強度)を表しており、図11Bにおいては、第2電流I2の周波数スペクトルを表している。さらに、図11Cにおいては、対象回路としての分岐回路55の分岐電流I15の周波数スペクトルを表している。ここで、本実施形態では、第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流I15の周波数ごとの強度を、いわゆる高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)により求めている。また、図11A〜図11Cにおいて、f1は基本周波数であり、f3、f5、f7、f9は、それぞれ第3次、第5次、第7次、第9次の高調波成分である。
「第3分岐回路」である分岐回路55において、時刻t1のときに、通電状態がオフからオンに変化した場合、分岐回路55には、図10に示すように、分岐電流I15が流れる。これに伴い、第1電圧線41には、時刻t1以降において、時刻t1以前の第1電流I1に、分岐電流I15を合成した第1電流I1が流れることになる。また、第2電圧線42においても、時刻t1以降において、時刻t1以前の第2電流I2に、分岐電流I15を合成した第2電流I2が流れることになる。
判定装置3は、時刻t1以降において判定期間T1(t3−t2)を設定し、判定期間T1における計測装置2の計測結果(電流)を用いて、第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流I15の各々の周波数ごとの強度を抽出する。第1電流I1は、図11Aに示すように、基本周波数f1に加えて、第3次、第5次、第7次、第9次の高調波成分f3,f5,f7,f9を有している。第2電流I2は、図11Bに示すように、基本周波数f1に加えて、第3次、第7次、第9次の高調波成分f3,f7,f9を有している。対象回路としての分岐回路55の分岐電流I15は、図11Cに示すように、基本周波数f1に加えて、第7次、第9次の高調波成分f7,f9を有している。
ここで、分岐電流I15の第7次、第9次の高調波成分f7,f9は、第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれており、かつ第1電流I1、第2電流I2、及び分岐電流I15の第7次、第9次の高調波成分f7,f9の強度は等しい。すなわち、この場合、分岐電流I15の特徴量である第7次,第9次の高調波成分f7,f9が、第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれており、判定装置3は、対象回路としての分岐回路5が「第3分岐回路」であると判定する。
また、「第1分岐回路」である分岐回路51が対象回路である場合には、分岐電流I11の特徴量が第1電流I1のみに含まれることになり、判定装置3は、対象回路としての分岐回路51が「第1分岐回路」であると判定する。さらに、「第2分岐回路」である分岐回路53が対象回路である場合には、分岐電流I13の特徴量が第2電流I2のみに含まれることになり、判定装置3は、対象回路としての分岐回路53が「第2分岐回路」であると判定する。
(1.2)効果
本実施形態の回路判定システムによれば、第1電圧線41及び第2電圧線42を流れる第1電流I1及び第2電流I2と、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流とを計測装置2が計測し、その計測結果を用いて、判定装置3が分岐回路5の種類を判定する。判定装置3では、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の特徴量が、第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれているか否かによって、分岐回路5の種類を判定する。
また、判定装置3は、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の特徴量が第1電流I1及び第2電流I2の一方のみに含まれている場合、第1電流I1及び第2電流I2のどちらに含まれているかによって、分岐回路5の種類を判定する。
したがって、この回路判定システムでは、計測装置2での計測結果(電流)を用いることにより、複数の分岐回路5の各々について、3種類の分岐回路(第1分岐回路、第2分岐回路、第3分岐回路)のいずれに当たるかを、自動的に判定することができる。その結果、特許文献1に記載されている情報担体などの部品を分岐ブレーカ62に付加する必要がなく、分岐ブレーカ62の部品点数の増加を抑えながらも、分岐回路5の種類を判定することができる、という利点がある。
特に、回路判定システムが電力計測システム1に適用される場合には、電力計測用の計測装置2を、分岐回路5の種類の判定に利用することができる。したがって、既存の電力計測システム1の構成を利用することで、新たなハードウェア資源を追加しなくても、分岐回路5の種類を判定することが可能である。そして、電力計測システム1において、分岐回路5の種類(電圧区分)の設定が自動化されることで、施工業者が手動で設定を行う場合に比べ、設定し忘れや設定の間違いを減らすことができる。
また、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第1電流I1のみに含まれている分岐回路5について、「第1分岐回路」であると判定する。さらに、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第2電流I2のみに含まれている分岐回路5について、「第2分岐回路」であると判定する。この構成によれば、分岐電流の特徴量が第1電流I1及び第2電流I2の一方のみに含まれている場合に、計測装置2の計測結果から、判定装置3は、判定対象となる対象回路を特定することができる。したがって、判定装置3は、計測装置2での計測結果のみから、いずれの分岐回路5が「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」であるかを特定することができる。
また、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち、分岐電流の特徴量が第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれている分岐回路5について、「第3分岐回路」であると判定する。この構成によれば、分岐電流の特徴量が第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれている場合に、計測装置2の計測結果から、判定装置3は、判定対象となる対象回路を特定することができる。したがって、判定装置3は、計測装置2での計測結果のみから、いずれの分岐回路5が「第3分岐回路」であるかを特定することができる。
また、本実施形態のように、第1電流I1の特徴量、第2電流I2の特徴量、及び分岐電流の特徴量は、電流の周波数スペクトルであることが好ましい。この構成によれば、分岐電流に含まれる周波数と同じ強度の周波数が第1電流I1、第2電流I2に含まれているか否かによって、分岐回路5の種類を判定することができる。
また、本実施形態のように、上述した判定処理を複数回行うことが好ましい。この構成によれば、例えば「第3分岐回路」に含まれる機器(200V機器)を動作させた場合、時間経過によって、分岐回路5を流れる電流の大きさだけでなく電流波形も変化する。そのため、判定処理を複数回行うことにより、例えば電源が投入されたときにのみ判定処理を行う場合に比べて、判定精度を向上させることができる。
(1.3)回路判定方法、プログラム
以下の回路判定方法を採用することで、専用の計測装置2及び判定装置3を用いなくても、本実施形態の回路判定システムと同等の機能を実現できる。
すなわち、回路判定方法は、分電盤6に用いられ、複数の分岐回路5の各々が、少なくとも「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」と、「第3分岐回路」とのどちらであるかを判定する方法であって、判定ステップを含んでいる。判定ステップでは、第1電線(第1電圧線41)を流れる第1電流I1、第2電線(第2電圧線42)を流れる第2電流I2、及び複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流を計測する計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々の種類を判定する。判定ステップでは、計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の特徴量が、第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれているか否かによって、分岐回路5の種類を判定する。つまり、判定ステップでは、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の特徴量が、第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれているか否かによって、複数の分岐回路5の各々が「第1,第2分岐回路」と、「第3分岐回路」とのどちらであるかを判定する。
この回路判定方法によれば、専用の計測装置2及び判定装置3を用いなくても、本実施形態の回路判定システムと同等の機能を実現でき、分岐ブレーカ62の部品点数の増加を抑えながらも、分岐回路5の種類を判定することができる、という利点がある。
また、判定装置3がコンピュータ(マイコンを含む)を主構成とする場合、コンピュータのメモリに記録されるプログラムは、分電盤6と共に用いられるコンピュータに判定処理を実行させるためのプログラムである。判定処理では、第1電線(第1電圧線41)を流れる第1電流I1、第2電線(第2電圧線42)を流れる第2電流I2、及び複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流を計測する計測装置2の計測結果を用いて、分岐回路5の種類を判定する。判定処理では、計測装置2の計測結果を用いて、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の特徴量が、第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれているか否かによって、分岐回路5の種類を判定する。つまり、判定処理では、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の特徴量が、第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれているか否かによって、複数の分岐回路5の各々が「第1,第2分岐回路」と、「第3分岐回路」とのいずれであるかを判定する。
このプログラムによれば、専用の計測装置2及び判定装置3を用いなくても、本実施形態の回路判定システムと同等の機能を実現でき、分岐ブレーカ62の部品点数の増加を抑えながらも、分岐回路5の種類を判定することができる、という利点がある。
(1.4)変形例
(1.4.1)第1変形例
図12を参照して本実施形態の第1変形例について説明する。
第1変形例では、第1電流I1の特徴量、第2電流I2の特徴量、及び分岐回路5の分岐電流の特徴量は、電流波形である。図12は、分岐回路5に接続された負荷を流れる電流の電流波形を表す波形図である。この場合、判定装置3は、第1電流I1の電流波形、第2電流I2の電流波形、及び分岐回路5の分岐電流の電流波形WP1を比較する際、例えばパターンマッチングにより一致度(合致度)を数値化して求める。そして、判定装置3は、一致度が閾値以上であれば、電流波形が一致すると判定する。
その結果、分岐電流の電流波形WP1が、第1電流I1の電流波形及び第2電流I2の電流波形の一方のみに一致していれば、判定装置3は、対象の分岐回路5が「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」であると判定する。一方、分岐電流の電流波形WP1が、第1電流I1の電流波形及び第2電流I2の電流波形の両方に一致していれば、判定装置3は、対象の分岐回路5が「第3分岐回路」であると判定する。この構成によれば、判定装置3は、電流波形の一致度によって、分岐回路5の種類を判定することができる。
また、第1電流I1の特徴量、第2電流I2の特徴量、及び分岐回路5の分岐電流の特徴量は、図12に示すように、電流波形から求められる所定の電流値での信号幅W1や波高値P1などであってもよい。これらの場合、判定装置3は、分岐回路5の分岐電流の特徴量である信号幅W1や波高値P1が、第1電流I1の電流波形及び第2電流I2の電流波形の両方に含まれているか否かによって、分岐回路5の種類を判定する。すなわち、分岐電流の信号幅W1や波高値P1が、第1電流I1の電流波形及び第2電流I2の電流波形のいずれか一方のみに含まれていれば、判定装置3は、対象の分岐回路5が「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」であると判定する。一方、分岐電流の信号幅W1や波高値P1が、第1電流I1の電流波形及び第2電流I2の電流波形の両方に含まれていれば、判定装置3は、対象の分岐回路5が「第3分岐回路」であると判定する。この構成によれば、分岐回路5の分岐電流の信号幅W1や波高値P1が、第1電流I1の電流波形、第2電流I2の電流波形に含まれているか否かによって、分岐回路5の種類を判定することができる。
(1.4.2)その他の変形例
本実施形態では、第1電流I1、第2電流I2、及び対象の分岐回路5の分岐電流について、周波数ごとの強度を比較している。これに対して、分岐電流に含まれる周波数のうち、隣り合う周波数の強度の差分を求め、この差分が第1電流I1及び第2電流I2に含まれているか否かによって、分岐回路5の種類を判定してもよい。例えば、図11A〜図11Cにおいては、第1電流I1、第2電流I2、及び分岐回路5の分岐電流の各々について、第7次、第9次の高調波成分f7,f9の強度の差分を求める。判定装置3は、分岐回路5の分岐電流の差分が、第1電流I1の差分及び第2電流I2の差分のいずれか一方のみに一致していれば、対象の分岐回路5が「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」であると判定する。一方、分岐回路5の分岐電流の差分が、第1電流I1の差分及び第2電流I2の差分の両方に一致していれば、判定装置3は、対象の分岐回路5が「第3分岐回路」であると判定する。ここで、差分が一致するとは、2つの差分が完全に一致する場合だけでなく、2つの差分の差が閾値内にある場合も含まれる。この構成によれば、判定装置3は、第1電流I1の特徴量、第2電流I2の特徴量、及び分岐回路5の分岐電流の特徴量としての差分が一致するか否かによって、分岐回路5の種類を判定することができる。
また、分岐回路5の分岐電流に含まれる周波数のうち、強度が閾値を超える周波数が、第1電流I1及び第2電流I2の両方に含まれているか否かによって、分岐回路5の種類を判定してもよい。例えば、図11A〜図11Cにおいて、分岐回路5の分岐電流に含まれる第3次、第5次、第7次、第9次の高調波成分f3,f5,f7,f9のうち、強度が閾値を超えているのが第7次の高調波成分f7であるとする。この場合、判定装置3は、第1電流I1及び第2電流I2のいずれか一方のみで第7次の高調波成分f7が閾値を超えていれば、対象の分岐回路5が「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」であると判定する。一方、第1電流I1及び第2電流I2の両方で第7次の高調波成分f7が閾値を超えていれば、判定装置3は、対象の分岐回路5が「第3分岐回路」であると判定する。この構成によれば、判定装置3は、分岐回路5の分岐電流に含まれる周波数のうち、強度が閾値を超える周波数が、第1電流I1及び第2電流I2に含まれているか否かによって、分岐回路5の種類を判定することができる。
さらに、本実施形態では、判定装置3は、対象回路が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定する際に、分岐電流の特徴量が第1電流I1及び第2電流I2のいずれに含まれているか否かによって判定している。これに対して、判定装置3は、第1期間と第2期間との間で生じる電流の変化を電流変化とし、分岐電流の電流変化が第1電流の電流変化と第2電流I2の電流変化とのいずれに一致するかによって、分岐回路5の種類を判定するように構成されていてもよい。この構成によれば、第1電流I1及び第2電流I2の電流変化と分岐電流の電流変化とを比較するだけで、判定装置3は、対象回路が「第1分岐回路」と「第2分岐回路」とのどちらであるかを判定することができる。
さらに、本実施形態で説明した構成は、実施形態1の変形例とも、適宜組み合わせて適用可能である。
(実施形態3)
本実施形態の回路判定システムは、判定装置3が、分岐回路5を流れる分岐電流の大きさを、分岐回路5の種類を判定するための条件に用いる点で、実施形態1の回路判定システムと相違する。以下、実施形態1と同様の構成については、共通の符号を付して適宜説明を省略する。
すなわち、一般的に、100〔V〕が印加される「第1分岐回路」及び「第2分岐回路」と、200〔V〕が印加される「第3分岐回路」とでは、「第3分岐回路」の方が大きな電流が流れる(つまり、電流容量が大きい)。そこで、本実施形態では、判定装置3は、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の大きさから、「第3分岐回路」かどうかの当たりをつけ、分岐回路5の種類を判定する。
本実施形態では、判定装置3は、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致する場合、複数の分岐回路5のうち分岐電流の大きな分岐回路5から順に、「第3分岐回路」であるか否かを判定するように構成されている。ここでは、実施形態1で説明したように、判定装置3が、分岐電流の電流変化が第1電流I1及び第2電流I2の両方の電流変化と一致する分岐回路5については、「第3分岐回路」であると判定することを前提としている。要するに、判定装置3は、第1電流I1の電流変化と第2電流I2の電流変化とが一致する場合、複数の分岐回路5の各々の分岐電流を用いて、「第3分岐回路」である対象回路を特定する。このとき、判定装置3は、分岐電流の大きな分岐回路5から順に、分岐電流の電流変化を、第1電流I1及び第2電流I2の電流変化と比較する。
この構成によれば、判定装置3では、分岐電流の大きな分岐回路5、つまり「第3分岐回路」である可能性が高い分岐回路5から順に、優先的に「第3分岐回路」であるか否を判定できるので、「第3分岐回路」である対象回路を特定するまでの処理を少なくできる。また、偶然、同じタイミングで「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」と「第3分岐回路」とで通電状態が変化した場合でも、判定装置3では、分岐電流の大きな分岐回路5から先に判定を行うため、誤判定を低減でき、判定精度が向上する。
また、本実施形態の他の構成として、判定装置3は、複数の分岐回路5のうち分岐電流が所定の閾値以下の分岐回路5については、「第3分岐回路」であるとの判定を無効にするように構成されていてもよい。つまり、分岐電流の大きさが閾値以下であるような分岐回路5は、「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」である蓋然性が高いため、このような分岐回路5については、判定装置3は「第3分岐回路」との判定を無効にする。この場合において、判定装置3は、「第3分岐回路」との判定を無効にした分岐回路5についても、複数回、連続して「第3分岐回路」と判定した場合には、「第3分岐回路」との判定結果を出すように構成されていることが好ましい。
この構成によれば、判定装置3では、分岐電流の小さな分岐回路5、つまり「第3分岐回路」である可能性が低い分岐回路5については、「第3分岐回路」との判定が無効になるので、誤判定を低減することができる。したがって、判定精度が向上する、という利点がある。
なお、上記構成の他にも、例えば判定装置3は、分岐電流が所定の閾値より大きな分岐回路5のみに、「第3分岐回路」であるか否かの判定対象を絞り込んでもよい。また、判定装置3は、複数の分岐回路5の各々を流れる分岐電流の大きさから、「第1分岐回路」又は「第2分岐回路」かどうかの当たりをつけ、分岐回路5の種類を判定する構成であってもよい。
その他の構成及び機能は実施形態1と同様である。なお、本実施形態で説明した構成は、実施形態1の変形例とも、適宜組み合わせて適用可能である。