以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
この実施形態に係る配電線検査システムは、マンションやアパートといった集合住宅やテナントビルなどの複数室を構える建物に敷設された配電線の誤配線及び誤結線を検査するのに用いられる。以下では、当該配電線検査システムについて、集合住宅の配電線の検査に用いる場合を例に挙げて説明する。
図1に、集合住宅100の配電系統111の概念図を示す。図2に、集合計器盤103の電力量計105と各住戸101の分電盤103との配線関係の概念図を示す。また、図3に、電力量計105と分電盤103との結線関係の概念図を示す。なお、図1及び図2では、3本の配電線109を一本のラインで省略して表している。
集合住宅100においては、図1に示すように、複数の住戸101が存在しており、各住戸101に分電盤103が設置されている。また、各住戸101で消費した電力を積算して計量する電力量計105(住戸数に応じた複数の電力量計105)が、同一の集合計器盤107に収納した状態で一箇所に設置されている。
集合計器盤107内の各電力量計105と対応する住戸101の分電盤103とは、図2に示すように、建物に敷設された配電線109によって一対一の関係で接続されている。集合住宅100の配電系統111には、配電線109を3本用いる単相三線式の配電方式が採用されている。各電力量計105は、図示しない電気室やハンドホールに設置された変圧器を介するなどして、或いは引込線113を通じて直接に電力系統115と接続されている。
電力系統115は、電力事業者が需用者に電力を供給する、単相三線式に対応した交流電力システムである。電力系統115から引込線113を通じて集合住宅100に引き込んだ電力は、各電力量計105を経由した後に各住戸101の分電盤103に供給される。分電盤103は、単相三線式に対応する回路設備であって、図示しないが配線用遮断器や漏電遮断器などの各種ブレーカを収容し、電力系統115から供給された電力を住戸101内に敷設された分岐線を介して電気機器などの負荷に分配するように構成されている。
配電線109は、それぞれ非接地の第1の電圧線121及び第2の電圧線123と、接地された中性線125との3本である。以下では、第1の電圧線121、第2の電圧線123及び中性線125を区別しない場合、配電線109と称する。図3に示すように、第1の電圧線121、第2の電圧線123及び中性線125の一端は、電力量計105の二次側にそれぞれ接続されており、第1の電圧線121、第2の電圧線123及び中性線125の他端は、分電盤103の一次側にそれぞれ接続されている。
第1の電圧線121は、電力量計105における第1の電圧極(L1)の端子127と分電盤103における第1の電圧極(L1)の端子129とを電気的に接続する。中性線125は、電力量計105における中性極(N)の端子131と、分電盤103における中性極(N)の端子133とを電気的に接続する。第2の電圧線123は、電力量計105における第2の電圧極(L2)の端子135と分電盤103における第2の電圧極(L2)の端子137とを電気的に接続する。
電力量計105及び分電盤103の端子には、それぞれ対応する電圧極毎に識別表示がされている。識別表示としては、色分け表示や記号表示などが用いられる。色分け表示では、例えば、第1の電圧極の端子127,129に赤色マークが付され、中性極の端子131,133に白色マークが付され、第2の電圧極の端子135,137に黒色マークが付される。記号表示では、例えば、第1の電圧極の端子127,129に番号「1」が付され、中性極の端子131,133に番号「2」が付され、第2の電圧極の端子135,137に番号「3」が付される。
こうした端子127〜137の識別表示に対し、第1の電圧線121、第2の電圧線123及び中性線125は色分けされている。具体的には、第1の電圧線121は、赤色の絶縁体に被覆されてなる。第2の電圧線123は、黒色の絶縁体に被覆されてなる。中性線125は、白色の絶縁体に被覆されてなる。そのことで、第1の電圧線121、第2の電圧線123及び中性線125とこれら配電線109を接続すべき電圧極の端子127〜137との対応関係が視覚的に分かるようになっている。
配電線109が正しく結線されている場合、中性線125の対地電圧は0Vであり、第1の電圧極(L1)と中性極(N)との間と、第2の電圧極(L2)と中性極(N)との間とには、100Vの交流電圧がそれぞれ発生する。第1の電圧極(L1)と中性極(N)との間の電圧と、第2の電圧極(L2)と中性極(N)との間の電圧とは、逆位相の電圧である。よって、第1の電圧極(L1)と第2の電圧極(L2)との間には200Vの交流電圧が発生する。
すなわち、配電系統111は、配電線109の組合せによって互いに異なる3つの相を形成する。第1の相は、第1の電圧極(L1)と中性極(N)との組合せからなる100Vの相(L1−N相)である。第2の相は、第2の電圧極(L2)と中性極(N)との組合せからなる第1の相とは逆位相の100Vの相(L2−N相)である。第3の相は、第1の電圧極(L1)と第2の電圧極(L2)との組合せからなる200Vの相(L1−L2相)である。
配電線109は、敷設作業における人為的過誤により、配電線109が予定している住戸101とは別の住戸101の分電盤103に誤って配線されたり、誤った電圧極の端子127〜137に結線されたりすることが起こり得る。配電線109が誤配線や誤結線されたままになると、対応する電力量計105が使用された電力量と異なる値を計測することになるため、電力の使用料金に誤った課金が発生する。しかも、配電線109の誤配線や誤結線は発見されるまでの期間が長期化しやいため、保証金額が多額になる傾向にある。
この実施形態に係る配電線検査システム10は、そうした電気料金の誤った課金を防止すべく、集合住宅100の竣工後において、配電線109の誤配線および誤結線を検査するためのシステムである。
以下に、この配電線検査システム10の構成を、図4〜図8を参照しながらそれぞれ説明する。図4は、配電線検査システム10の概略構成図である。図5は、抵抗付加器11の概略構成図である。図6は、抵抗付加器11が有する抵抗回路29の回路図である。図7は、測定器13の概略構成図である。図8は、測定器13の構成要素のブロック図である。なお、図4では、複数の抵抗付加器11について1つを除いて小型に簡略化して示している。
配電線検査システム10は、図4に示すように、複数の抵抗付加器11と、測定器13とを備える。この実施形態では、抵抗付加器11を25個備える態様を例に挙げて説明する。各抵抗付加器11には、「001」〜「025」の識別番号(図4で各抵抗付加器11の下側に示す)が表記されている。
抵抗付加器11は、分電盤103の一次側に接続される機能モジュールである。この抵抗付加器11は、図5に示すように、機器本体15と、機器本体15に設けられた3つのリードアタッチメント17とを備える。リードアタッチメント17は、機器本体15から延びるケーブル19と、ケーブル19の先端に設けられたアリゲータークリップ式(ワニ口クリップ式)の接続端子21とによって構成されている。
3つのリードアタッチメント17は、分電盤103において、第1の電圧極(L1)の端子129に接続される第1のリードアタッチメント23と、中性極(N)の端子133に接続される第2のリードアタッチメント25と、第2の電圧極(L2)の端子137に接続される第3のリードアタッチメント27とである。これら第1〜第3のリードアタッチメント23,25,27は、ケーブル19や接続端子21のカバー部分が対応する電圧極に応じた色で色分けされており、接続すべき電圧極の端子129,133,137との対応関係が視覚的に分かるようになっている。
機器本体15には、抵抗回路29が内蔵されている。抵抗回路29は、図6にも示すように、第1のリードアタッチメント23のケーブル19に繋がる第1の配線31と、第2のリードアタッチメント25のケーブル19に繋がる第2の配線33と、第3のリードアタッチメント27のケーブル19に繋がる第3の配線35と、第1の配線31の終端と第2の配線33の終端との間に設けられた第1の抵抗37と、第2の配線33と第3の配線35との間に設けられた第2の抵抗39とを有する。
抵抗付加器11が分電盤103の一次側に接続されると、第1の配線31は、分電盤103における第1の電圧極(L1)の端子129を介してその端子129と繋げられた配電線109に電気的に接続される。第2の配線33は、分電盤103における中性極(N)の端子133を介してその端子133と繋げられた配電線109に電気的に接続される。第3の配線35は、分電盤103における第2の電圧極(L2)の端子137を介してその端子137と繋げられた配電線109に電気的に接続される。
そして、第1の抵抗37は、第1の電圧極(L1)の端子129に繋げられた配電線109と中性極(N)の端子133に繋げられた配電線109との間に付加される。また、第2の抵抗39は、中性極(N)の端子133に繋げられた配電線109と第2の電圧極(L2)の端子137に繋げられた配電線109との間に付加される。このように、抵抗付加器11は、配電線109同士を第1の抵抗37及び第2の抵抗39を介して接続することで、配電線109検査用の回路を形成する。
第1の抵抗37と第2の抵抗39との抵抗値は、各抵抗付加器11で異なっている。そして、これら第1の抵抗37及び第2の抵抗39における抵抗値の組合せは、抵抗付加器11毎に異なっていて、一意的(ユニーク)な抵抗値の組合せを構成するように設定されている。また、第1の抵抗37と第2の抵抗39との直列接続による合成抵抗値は、各抵抗付加器11の第1の抵抗37及び第2の抵抗39の抵抗値とは異なり、且つ抵抗付加器11毎に異なっている。
この実施形態では、第1の抵抗37として、各抵抗付加器11で抵抗値の同じ抵抗が用いられている。そして、第2の抵抗39には、各抵抗付加器11で互いに異なる抵抗値の抵抗が用いられている。これら第1の抵抗37及び第2の抵抗39の抵抗値は、例えば100Ω〜10000Ωの範囲内で設定される。
第1の抵抗37の抵抗値は、全ての抵抗付加器11における第2の抵抗39の中間程度の大きさに設定される。この実施形態における第1の抵抗37の抵抗値は、例えば、12番目に大きな第2の抵抗39の抵抗値と13番目に大きな第2の抵抗39の抵抗値との間の大きさか、或いは13番目に大きな第2の抵抗39の抵抗値と14番目に大きな第2の抵抗39の抵抗値との間の大きさに設定される。
第2の抵抗39の抵抗値は、第1の抵抗37の抵抗値と100Ω以上の差があるように、好ましくは150Ω以上の差があるように、さらに好ましくは200Ω以上の差があるように設定される。そして、第2の抵抗39の抵抗値は、第2の抵抗39同士の抵抗値の間にも100Ω以上の差があるように、好ましく150Ω以上の差があるように、さらに好ましくは200Ω以上の差があるように設定される。
測定器13は、電力量計105の二次側に接続される機能モジュールである。この測定器13は、電池駆動式に構成されており、図7に示すように、機器本体41と、機器本体41に設けられた電圧印加用の3つのリードアタッチメント43と、2つの電流センサ45とを備える。リードアタッチメント43は、配電線109に電圧を印加するためのものであり、機器本体41から延びるケーブル47と、ケーブル47の先端に設けられたアリゲータークリップ式(ワニ口クリップ式)の電圧印加端子(VA端子)49とによって構成されている。
3つのリードアタッチメント43は、電力量計105において、第1の電圧極(L1)の端子127に接続される第1のリードアタッチメント51と、中性極(N)の端子133に接続される第2のリードアタッチメント53と、第2の電圧極(L2)の端子135に接続される第3のリードアタッチメント55とである。これら第1〜第3のリードアタッチメント51,53,55は、ケーブル47や電圧印加端子49のカバー部分が対応する電圧極に応じた色で色分けされており、接続すべき電圧極の端子127,131,135との対応関係が視覚的に分かるようになっている。
電流センサ45としては、CT(Current Transformer)センサと呼ばれる電磁誘導方式の電流センサが用いられる。この電流センサ45は、機器本体41に接続されたケーブル57と、ケーブル57の先端に設けられたセンサ本体59とによって構成されている。センサ本体59は、ワンタッチクランプ型(クリップ式)の構造を有し、磁性体コア及び検出コイルなどからなる回路を収容する回路収納部61と、回路収納部61に対し一端を軸にして回動可能に取り付けられた蓋部63とからなり、回路収納部61と蓋部63との間に形成される中空部65に通した配電線109に流れる電流を検出するようになっている。
機器本体41は、液晶ディスプレイなどからなる表示部67と、電源スイッチ69及び測定スイッチ71とを前面に備える。また、図示しないが、機器本体41の前面には、電源のON/OFF状態を示すLED(Light Emitting Diode)からなる電源インジケータなどの状態表示ランプも設けられている。さらに、機器本体41は、図8に示すように、CPU(Central Processing Unit)からなる演算部73と、演算部73に電気的に接続されたEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などからなるメモリ75と、リードアタッチメント43に電気的に接続された電圧供給部77と、交換可能な駆動用の電池79とを内蔵している。
メモリ75には、各電流センサ45により検出された電流に基づいて配電線109の間の抵抗値、つまり第1の電圧線123と中性線125との間の抵抗値と中性線125と第2の電圧線127との間の抵抗値とを算出するプログラムが格納されている。演算部73には、メモリ75の他、表示部67、測定スイッチ71、状態表示ランプ及び電圧供給部77も電気的に接続されている。
電圧供給部77は、第1〜第3のリードアタッチメント51,53,55に所定の電位を付与して、予め設定された規定電圧を各配電線109に印加する。例えば、第1のリードアタッチメント51には+10V程度の電位が付与され、第2のリードアタッチメント53には0Vの電位が付与され、第3のリードアタッチメント55には−10V程度の電位が付与され、規定電圧として、第1の電圧線123と中性線125との間、及び中性線と第2の電圧線127との間に、それぞれ10Vの直流電圧が印加される。
演算部73は、測定スイッチ71が押下(ON)されると、電圧供給部77に各配電線109への電圧印加を行わせ、メモリ75から読み出したプログラムに従って、配電線109の間の抵抗値(第1の電圧線123と中性線125との間の抵抗値と中性線125と第2の電圧線127との間の抵抗値)を算出する抵抗値算出処理を実行する。以下では、便宜上、第1の電圧線123と中性線125との間の抵抗値を「L1−N間抵抗値」と称し、中性線125と第2の電圧線127との間の抵抗値を「N−L2間抵抗値」と称する。
抵抗値算出処理では、測定器13の第1〜第3のリードアタッチメント51,53,55を接続した電力量計105と正常に敷設された配電線109を介して繋がっている分電盤103に抵抗付加器11が設置されている場合、L1−N間抵抗値として第1の抵抗37に相当する抵抗値が算出され、N−L2間抵抗値として第2の抵抗39に相当する抵抗値が算出される。演算部73は、これらL1−N間抵抗値及びN−L2間抵抗値を、各電流センサ45によって検出された電流の比率に基づいて算出する。それにより、L1−N間抵抗値及びN−L2間抵抗値の算出に配電線109自体の抵抗値が反映されるのを抑え、抵抗付加器11の分電盤103への接続によって第1の電圧線123と中性線125との間及び中性線125と第2の電圧線127との間にそれぞれ付加された抵抗の抵抗値を精度良く算出するようになっている。
さらに、演算部73は、算出した2つの抵抗値(L1−N間抵抗値及びN−L2間抵抗値)に基づいて、検査対象とする電力量計105に配電線109を介して接続された抵抗付加器11を識別する。抵抗付加器11が有する第1の抵抗37及び第2の抵抗39の抵抗値は一意的な組合せを構成し、これら第1の抵抗37と第2の抵抗39との直列接続による合成抵抗値はいずれの抵抗付加器11における第1の抵抗37の抵抗値とも第2の抵抗39の抵抗値とも異なり、且つ抵抗付加器11毎に異なっているから、L1−N間抵抗値及びN−L2間抵抗値が分かれば、それら2つの抵抗値に対応する抵抗付加器11を特定することができる。
このとき、配電線109が正しく配線されていれば、当該配電線109が接続されているべき分電盤103に関連させて設置した抵抗付加器11が識別される。一方で、配電線109が誤って配線されていると、当該配電線109が接続されているはずの分電盤103に関連させて設置した抵抗付加器11とは別の抵抗付加器11が識別される。
また、演算部73は、算出した2つの抵抗値に基づいて、検査対象とする電力量計105に接続された配電線109の分電盤103での誤結線の有無及び誤結線のパターンを判定する。第1の抵抗37と第2の抵抗39との抵抗値は互いに異なっているから、L1−N間抵抗値及びN−L2間抵抗値が分かれば、それら2つの抵抗値の違い(異なり方)に応じて誤結線があるかどうかを判定すると共に、誤結線がある場合には、その誤結線のパターンを特定することができる。
このとき、配電線109が正しく結線されていれば、第1の抵抗37が付加されているべき第1の電圧線121と中性線123との間にL1−N間抵抗値として第1の抵抗37の抵抗値が測定され、且つ第2の抵抗39が付加されているべき中性線123と第2の電圧線125との間にN−L2間抵抗値として第2の抵抗39の抵抗値が測定される。一方で、配電線109が誤って結線されていると、第1の抵抗37が付加されているはずの第1の電圧線121と中性線123との間にL1−N間抵抗値として第1の抵抗37とは異なる抵抗の抵抗値が測定されたり、第2の抵抗39が付加されているはずの中性線123と第2の電圧線125との間にN−L2間抵抗値として第2の抵抗39とは異なる抵抗の抵抗値が測定されたりする。
そして、演算部73は、上述した抵抗付加器11の識別結果と誤結線の判定結果とを表示部67に出力する。表示部67は、演算部73による識別結果及び判定結果として、抵抗付加器11の識別番号「001」〜「025」と、誤結線の有無及び誤結線のパターンとを表示する。ここで、単相3線式の誤結線には5つのパターンがあるので、誤結線の有無及び誤結線のパターンの表示としては、例えば次のような表示が考えられる。
誤結線がない場合には「正常」と表示する。第1の電圧線121と中性線123とが誤結線により逆に接続されている場合には「L1−N逆接続」と表示する。第1の電圧線121と第2の電圧線125とが誤結線により逆に接続されている場合には「L1−L2逆接続」と表示する。中性線123と第2の電圧線125とが誤結線により逆に接続されている場合には「N−L2逆接続」と表示する。第1の電圧線121が分電盤103で中性極の端子133に、中性線123が分電盤103で第2の電圧極の端子137に、第2の電圧線125が分電盤103で第1の電圧極の端子129にそれぞれずれて接続されている場合には、「L1−N−L2誤結線1」と表示する。第1の電圧線121が第2の電圧極の端子1237に、中性線123が第1の電圧極の端子129に、第2の電圧線125が第1の電圧極の端子137にそれぞれずれて接続されている場合には、「L1−N−L2誤結線2」と表示する。
次に、上記の配電線検査システム10を用いて集合住宅100の配電線109を検査する作業を、図9〜図16を参照しながら説明する。図9及び図10は、配電線109の検査を行う様子を集合計器盤107の電力計105と各住戸101の分電盤103との配線関係において示す概念図である。図11〜図16は、配電線109の検査を行う様子を電力計105と分電盤103との結線関係において示す概念図である。
なお、図9及び図10では、図2と同様に3本の配電線109を一本のラインで表し、電圧印加端子49及び電流センサ45をそれぞれ省略して1つだけ図示する。そして、表示部67の表示例として、結線状態が正しい場合の表示を示している。また、図11〜図16では、第1の電圧線121を実線で示し、中性線123を破線で示し、第2の電圧線125を二点鎖線で示している。そして、表示部67の表示例として、101号室の住戸101の分電盤103に設置された抵抗付加器11が識別された場合の表示を示している。
配電線検査システム10を用いて集合住宅100の配電線109を検査するには、まず、図9及び図10に示すように、複数の抵抗付加器11を個々の住戸101の分電盤103の一次側にそれぞれ設置する。このとき、図11〜図16に示すように、抵抗付加器11の第1のリードアタッチメント23の接続端子21を分電盤103の第1の電圧極の端子129に接続し、第2のリードアタッチメント25の接続端子21を分電盤103の中性極の端子133に接続し、第3のリードアタッチメント27を分電盤103の第2の電圧極の端子137に接続する。
次いで、抵抗付加器11を設置した分電盤103に対応する各電力量計105の二次側に測定器13を順次接続して、電力量計105毎に配電線109の誤配線及び誤結線を検査する。このとき、各電力量計105に対して、測定器13の第1のリードアタッチメント51の電圧印加端子49を電力量計105の第1の電圧極の端子127に接続し、第2のリードアタッチメント53の電圧印加端子49を電力量計105の中性極の端子131に接続し、第3のリードアタッチメント55の電圧印加端子49を電力量計105の第2の電圧極の端子135に接続する。さらに、一方の電流センサ45を第1の電圧線121に取り付け、他方の電流センサ45を第2の電圧線125に取り付ける。そして、電源スイッチ69を押下(ON)して測定器13の電源を入れた状態で、測定スイッチ71を押下(ON)して配電線109の誤配線及び誤結線を検査する。
なお、集合住宅100の住戸数が抵抗付加器11の個数(この実施形態では26)を超える場合には、検査済みの住戸101の分電盤103から抵抗付加器11を回収した後、未検査である別の住戸101の分電盤103に抵抗付加器11を付け替えて、上記の検査作業を繰り返す。
このような配電線109の誤配線及び誤結線の検査において、集合住宅100に敷設された配電線109に誤配線がない場合には、いずれの電力量計105の二次側に測定器13を接続した状態での検査でも、表示部67には、当該配電線109が接続されているべき分電盤103に関連させて設置した抵抗付加器11の識別番号が表示される。
しかし、配電線109に誤配線がある場合には、当該配電線109が接続されているはずの分電盤103に関連させて設置した抵抗付加器11とは別の抵抗付加器11の識別番号が表示される。
例えば、図9に示すように、配電線109の誤配線により、101号室の住戸101の電力量計105が102号室の住戸101の分電盤103に接続され、102号室の住戸101の電力量計105が101号室の住戸101の分電盤103に接続されている場合には、101号室の電力量計105の二次側に測定器13を接続して検査を行ったときに、抵抗付加器11の識別番号として、102号室の住戸101の分電盤103に設置した抵抗付加器11の識別番号「002」が表示部67に表示される。また、102号室の住戸101の電力量計105の二次側に測定器13を接続して検査を行ったときには、抵抗付加器11の識別番号として、101号室の住戸101の分電盤103に設置した抵抗付加器11の識別番号「001」が表示部67に表示される。
また、図10に示すように、配電線109の誤配線により、102号室の住戸101の電力量計105が103号室の住戸101の分電盤103に接続され、103号室の住戸101の電力量計105が101号室の住戸101の分電盤103に接続されている場合には、102号室の住戸101の電力量計105の二次側に測定器13を接続して検査を行ったときに、抵抗付加器11の識別番号として、103号室の住戸101の分電盤103に設置した抵抗付加器11の識別番号「003」が表示部67に表示される。また、103号室の住戸101の電力量計105の二次側に測定器13を接続して検査を行ったときには、抵抗付加器11の識別番号として、102号室の住戸101の分電盤103に設置した抵抗付加器11の識別番号「002」が表示部67に表示される。
上述した配電線109の誤配線及び誤結線の検査において、集合住宅100に敷設された配電線109が図11に示すように正しく結線されており誤結線がない場合には、いずれの電力量計105の二次側に測定器13を接続した状態での検査においても、演算部73では、L1−N間抵抗値として第1の抵抗37の抵抗値が算出され、N−L2間抵抗値として第2の抵抗39の抵抗値が算出されて、表示部67には、抵抗付加器11の識別番号と共に「正常」と表示される。
しかし、配電線109に誤結線がある場合には、第1の抵抗37が付加されているはずの第1の電圧線121と中性線123との間にL1−N間抵抗値として第1の抵抗37とは異なる抵抗の抵抗値が測定されたり、第2の抵抗39が付加されているはずの中性線123と第2の電圧線125との間にN−L2間抵抗値として第2の抵抗39とは異なる抵抗の抵抗値が測定されたりする。この場合、それら2つの抵抗値(L1−N間抵抗値及びN−L2間抵抗値)に基づいて判定された誤結線のパターンが表示部67に表示される。
例えば、図12に示すように、配電線109の誤結線により、第1の電圧線121が分電盤103の中性極の端子133に接続され、中性線123が分電盤103の第1の電圧極の端子129に接続されている場合には、L1−N間抵抗値として第1の抵抗37の抵抗値が算出され、N−L2間抵抗値として第1の抵抗37と第2の抵抗39との直列接続による合成抵抗値が算出される。この場合、表示部67には、抵抗付加器11の識別番号と共に「L1−N逆接続」と表示される。
また、図13に示すように、配電線109の誤結線により、第1の電圧線121が分電盤103の第2の電圧極の端子137に接続され、第2の電圧線125が分電盤103の第1の電圧極の端子129に接続されている場合には、L1−N間抵抗値として第2の抵抗39の抵抗値が算出され、N−L2間抵抗値として第1の抵抗37の抵抗値が算出される。この場合、表示部67には、抵抗付加器11の識別番号と共に「L1−L2逆接続」と表示される。
また、図14に示すように、配電線109の誤結線により、中性線123が分電盤103の第2の電圧極の端子137に接続され、第2の電圧線125が分電盤103の中性極の端子133に接続されている場合には、L1−N間抵抗値として第1の抵抗37と第2の抵抗39との直列接続による合成抵抗値が算出され、N−L2間抵抗値として第2の抵抗39の抵抗値が算出される。この場合、表示部67には、抵抗付加器11の識別番号と共に「N−L2逆接続」と表示される。
また、図15に示すように、配電線109の誤結線により、第1の電圧線121が分電盤103の中性極の端子133に接続され、中性線123が分電盤103の第2の電圧極の端子137に接続され、第2の電圧線125が分電盤103の第1の電圧極の端子129に接続されている場合には、L1−N間抵抗値として第2の抵抗39の抵抗値が算出され、N−L2間抵抗値として第1の抵抗37と第2の抵抗39との直列接続による合成抵抗値が算出される。この場合、表示部67には、抵抗付加器11の識別番号と共に「L1−N−L2誤結線1」と表示される。
また、図16に示すように、配電線109の誤配線により、第1の電圧線121が分電盤103の第2の電圧極の端子137に接続され、中性線123が分電盤103の第1の電圧極の端子129に接続され、第2の電圧線125が分電盤103の中性極の端子133に接続されている場合には、L1−N間抵抗値として第1の抵抗37と第2の抵抗39との直列接続による合成抵抗値が算出され、N−L2間抵抗値として第1の抵抗37の抵抗値が算出される。この場合、表示部67には、抵抗付加器11の識別番号と共に「L1−N−L2誤結線2」と表示される。
このような配電線検査システム10を用いた配電線109の検査では、作業者は、測定器13の表示部67に表示された識別結果に基づき、識別された抵抗付加器11がいずれの分電盤103に関連させて設置されたものであるかを確認することにより、配電線109が誤配線されているかどうかをチェックすることができる。また、測定器13の表示部67に表示された判定結果を確認することにより、誤結線の有無を確認し、誤結線がある場合には誤結線のパターンまでもチェックすることができる。それにより、一人あるいは少人数の作業者でも配電線109の誤配線及び誤結線を併せて効率的に検査することができ、検査で見つかった誤結線や誤配線を、表示部67に表示された識別結果及び判定結果に基づいて迅速且つ確実に正すことができる。
以上のように、ここに開示する技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、ここに開示する技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
配電線検査システム10において、測定器13は、SDカードなどの記録媒体が装着されるカードソケットを備え、そのカードソケットに装着された記録媒体に配電線109の検査結果を記録するようになっていてもよい。
例えば、配電線109の検査結果としては、住戸101毎、つまりは個々の住戸101に対応する電力量計105毎に、表示部67での表示内容と各配電線109の結線状態とが記録される。配電線109の結線状態は、配電線109が接続される電圧極の記号とその電圧極の端子への配電線109の結線が正しいか誤っているかが「○」、「×」で記録される。すなわち、配電線109が正しく結線されている場合には「L1:○ N:○ L2:○」のように記録され、第1の電圧線121と中性線123とが逆接続されている場合に「L1:× N:× L2:○」のように記録される。また、測定器13は、配電線109の誤結線が検査で見つかりその誤結線を正した後に当該配電線109の誤結線を再度検査したときにも、表示部67での表示内容と各配電線109の結線状態とを記録するようになっていることが好ましい。さらに、測定器13は、記録媒体に記録した配電線109の検査結果を表示部67に表示できるようになっていてもよい。
このような構成によると、記録媒体に記録された配電線109の検査結果は作業者が表示部67で纏めて見ることができるので、複数の電力量計105に接続された配電線109の検査を終えた後にも、誤配線や誤結線のある配電線109が接続された住戸101(電力量計105)を簡単にチェックすることができ、配電線109の検査作業をスムーズに行うことが可能になる。また、記録媒体に記録された配電線109の検査結果は、検査作業後に作業者でない者も確認することができるため、第三者による検査漏れなどのチェックにも用いることが可能である。
上記実施形態では、配電線検査システム10で単相三線式の配電線109を検査するとしたが、これに限らず、配電線検査システム10は、三相三線式の配電線を検査するのにも用いることができる。また、配電線検査システム10は、三相四線式の配電線109における誤配線及び誤結線を検査するのに用いられる構成とされていてもよい。
例えば、四線の配電線109における誤配線及び誤結線を検査する配電線検査システム10では、各抵抗付加器11の抵抗回路29に互いに異なる配電線109の間に付加される第1〜第3の抵抗を含み、電流センサ45を3つ備え、3つの電流センサ45により互いに異なる配電線109に流れる電流を検出し、各電流センサ45で検出された電流から異なる配電線109の間の抵抗値を算出し、それら3つの抵抗値に基づいて、測定器13の演算部73で抵抗付加器11の識別、配電線109の誤結線の有無、誤結線がある場合にそのパターンの判定を行う構成とすることが可能である。
また、上記実施形態では、測定器13は、各電流センサ45により検出された電流からL1−N間抵抗値及びN−L2間抵抗値を算出した上で、それらL1−N間抵抗値及びN−L2間抵抗値に基づいて測定器13が配電線109を介して接続された抵抗付加器11の識別、配電線109の誤結線の有無、誤結線がある場合にそのパターンの判定を行うとしたが、これに限らない。測定器13は、各抵抗付加器11の第1の抵抗37及び第2の抵抗39の抵抗値と、配電線109が正しく結線された場合と誤って結線された場合とでL1−N間抵抗値及びN−L2間抵抗値に応じて電流センサ45により検出される電流の大きさとの対応関係を示すデータが予めメモリ75に格納され、電流センサ45により検出された電流の大きさを当該データに照らし合わせることにより、抵抗付加器11の識別、配電線109の誤結線の有無、誤結線がある場合にそのパターンの判定を行うようになっていてもよい。
要は、配電線検査システム10は、複数の分電盤103と分電盤103毎に設けられた電力量計105とをそれぞれ接続するN本(Nは3以上の整数)の配電線109における誤配線及び誤結線を検査するためのシステムに適用される場合、分電盤103の一次側に接続される複数の抵抗付加器11と、電力量計103の二次側に接続される測定器13とを備え、抵抗付加器11が、互いに異なる配電線109の間に付加される第1〜第(N−1)の抵抗を有し、第1〜第(N−1)の抵抗の抵抗値は各抵抗付加器11で互いに異なり、且つ第1〜第(N−1)の抵抗における抵抗値の組合せは抵抗付加器11毎に異なっており、測定器13は、配電線109に所定の電圧を印加する電圧印加端子49と、電圧印加端子49による電圧の印加を以て互いに異なる配電線109に流れる電流を検出する少なくとも(N−1)個の電流センサ45と、電流センサ45により検出された電流に基づいて接続先の電力量計105に配電線109を介して接続された抵抗付加器11を識別すると共に配電線109の誤結線の有無及び誤結線のパターンを判定する演算部73と、演算部73による識別結果及び判定結果を表示する表示部67とを有していればよい。
また、上記実施形態では、電流センサ45としてCTセンサを用いるとしたが、これに限らない。CTセンサは、電流センサ45の一例に過ぎず、配電線109に流れる電流を検出可能なセンサであれば、ホール素子型のセンサやその他のタイプのセンサも電流センサ45として採用することができる。
また、上記実施形態では、測定器11が第1〜第3のリードアタッチメント51,53,55により第1の電圧線123と中性線125との間、及び中性線と第2の電圧線127との間に、規定電圧として直流電圧をそれぞれ印加するとしたが、これに限らない。第1の電圧線123と中性線125との間、及び中性線125と第2の電圧線127との間に印加する規定電圧は、直流電圧であっても交流電圧であってもよいが、配電線109などのリアクタンス分の影響を排除する観点から、直流電圧であることが好ましい。
また、上記実施形態では、配電線検査システム10について25個の抵抗付加器11を備えた構成を例に挙げて説明したが、これに限らない。抵抗付加器11は、24個以下であってもよいし、抵抗回路29の第1の抵抗37と第2の抵抗39との抵抗値が互いに異なり一意的な組合せを構成し、それら2つの抵抗値を電流センサ45によって検出可能であれば、26個以上備えていても構わない。
また、上記実施形態では、配電線109の誤結線を、電流センサ45によって検出された電流の向きと第1の電圧線121と中性線123との間の抵抗値と中性線123と第2の電圧線125との間の抵抗値とに基づいて検査するとしたが、これに限らない。配電線109の誤結線は、上記2つの抵抗値に加え或いはいずれか一方の抵抗値に代えて第1の圧電線121と第2の圧電線125との間の抵抗値を用いて検査してもよいし、配電線109の間の抵抗値のみに基づいて検査してもよい。