JP2018155398A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
車輪用軸受装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2018155398A JP2018155398A JP2017248102A JP2017248102A JP2018155398A JP 2018155398 A JP2018155398 A JP 2018155398A JP 2017248102 A JP2017248102 A JP 2017248102A JP 2017248102 A JP2017248102 A JP 2017248102A JP 2018155398 A JP2018155398 A JP 2018155398A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- lip
- seal lip
- seal
- wheel bearing
- bearing device
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Sealing With Elastic Sealing Lips (AREA)
- Sealing Devices (AREA)
- Rolling Contact Bearings (AREA)
Abstract
【課題】シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】内周に複列の外側軌道面が一体に形成された外輪2と、小径段部3aに圧入された少なくとも一つの内輪4を有し、外周に複列の内側軌道面が形成されたハブ輪3と、外輪2とハブ輪3とのそれぞれの軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体5a・5bと、弾性体からなるシールリップ7d・9dが設けられ、シールリップ7d・9dがシールリップ摺動面に接触することで外輪2とハブ輪3との間をシールするインナー側シール部材6アウター側シール部材9と、を備えた車輪用軸受装置1において、シールリップ7d・9dの先端部分に高吸水性ポリマー10が設けられ、高吸水性ポリマー10が吸水すると、高吸水性ポリマー10によってシールリップ7d・9dにシールリップ摺動面へ押し付ける方向の力が加わる。
【選択図】図3
【解決手段】内周に複列の外側軌道面が一体に形成された外輪2と、小径段部3aに圧入された少なくとも一つの内輪4を有し、外周に複列の内側軌道面が形成されたハブ輪3と、外輪2とハブ輪3とのそれぞれの軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体5a・5bと、弾性体からなるシールリップ7d・9dが設けられ、シールリップ7d・9dがシールリップ摺動面に接触することで外輪2とハブ輪3との間をシールするインナー側シール部材6アウター側シール部材9と、を備えた車輪用軸受装置1において、シールリップ7d・9dの先端部分に高吸水性ポリマー10が設けられ、高吸水性ポリマー10が吸水すると、高吸水性ポリマー10によってシールリップ7d・9dにシールリップ摺動面へ押し付ける方向の力が加わる。
【選択図】図3
Description
本発明は車輪用軸受装置に関する。
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置では、車輪に接続されるハブ輪が転動体を介して回転自在に支持されている。車輪用軸受装置では、内部のグリースが減ったり、雨水や粉塵が入り込んだりしたりすることで錆が発生するなどして軸受寿命が短くなる。このため、車輪用軸受装置には、外方部材と内方部材との間から内部に封入されているグリースの漏出を防止するとともに、外部から雨水や粉塵等の入り込みを防止するシール部材がインナー側とアウター側とに設けられていることがある。
このような車輪用軸受装置において、軸受寿命を長くするために、シール部材に複数のシールリップを設けたり、シールリップの緊迫力を大きくしたりしてシール性を向上させているものがある。このように構成することで、車輪用軸受装置は、内部への雨水や粉塵の入り込みを抑制して長寿命化を図ることができる。しかし、シールリップの数を増やしたり、シールリップの緊迫力を大きくしたりすると、摩擦トルクが増大する。このため、摩擦トルクの増加を抑制しつつ、内部に入り込み易い雨水等の水分の潤滑剤への混入を抑制することができる車輪用軸受装置等のシール構造(シール部材)が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載のシール構造は、ばね付きリップ部を有するオイルシールから構成されている。オイルシールには、芯金にばね付きリップ部が設けられている。オイルシールには、芯金が軸受の外輪に固定されるとともに、回転側である内輪の外周面にばね付きリップ部が接触するように構成されている。さらに、オイルシールには、芯金の内部側壁面に高吸水性ポリマーからなる吸水部が設けられている。高吸水性ポリマーは、水分を吸収して高分子ハイドロゲルとして固定化することができる。つまり、オイルシールは、ばね付きリップ部から内部に入り込んだ水分を吸収部で保持し、水分が潤滑油に混入しないように構成されている。
特許文献1に記載のオイルシールでは、軸受の摩擦トルクを抑制するためにばね付きリップ部のばねの緊迫力が低く設定されている。つまり、オイルシールは、ばね付きリップ部からある程度の水分が入り込む前提で構成されている。オイルシールの内部に入り込んだ水分は、体積の数百倍の水分を吸収することができる高吸水性ポリマーで吸水される。しかし、高吸水性ポリマーの許容吸水量を超える水分が内部に入り込んだ場合、潤滑油への水分の混入を防ぐ手立てがない。このため、特許文献1に記載の技術は、軸受の摩擦トルクを低減するためにシール性能を低下させたことで、軸受の使用環境が限定されてしまう問題があった。
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる車輪用軸受装置の提供を目的とする。
即ち、第一の発明は、内周に複列の外側軌道面が一体に形成された外方部材と、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、外周に前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面が形成された内方部材と、前記外方部材と前記内方部材とのそれぞれの軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、弾性体からなるシールリップが設けられ、前記シールリップがシールリップ摺動面に接触することで前記外方部材と内方部材との間をシールするシール部材と、を備えた車輪用軸受装置において、前記シールリップの先端部分に高吸水性ポリマーが設けられ、前記高吸水性ポリマーが吸水すると、前記高吸水性ポリマーによって前記シールリップに前記シールリップ摺動面へ押し付ける方向の力が加わるものである。
第二の発明は、前記シールリップが、複数のシールリップから構成され、前記高吸水性ポリマーが、前記複数のシールリップのうち径方向内側のシールリップに設けられている車輪用軸受装置である。
第三の発明は、高吸水性ポリマーが、前記シールリップの根元部分の径方向外側の表面に更に設けられている車輪用軸受装置である。
第四の発明は、前記シールリップの先端部分に設けられている高吸水性ポリマーが、前記シールリップの内部に設けられている車輪用軸受装置である。
第五の発明は、前記シールリップの先端部分における前記高吸水性ポリマーが、前記シールリップの厚さ方向において前記シールリップ摺動面側に寄って配置されている車輪用軸受装置である。
第六の発明は、前記シールリップの先端部分における前記高吸水性ポリマーが、前記シールリップ摺動面に沿って配置されている車輪用軸受装置である。
第七の発明は、前記高吸水性ポリマーが前記シールリップ全体に混合されている車輪用軸受装置である。
第八の発明は、前記シールリップの先端部分が、前記高吸水性ポリマーの水分の吸収による膨張によって前記シールリップ摺動面に接触し、前記高吸水性ポリマーの水分の蒸発による収縮によって前記シールリップ摺動面から離間する車輪用軸受装置である。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、シールリップの先端部分に水分が存在する場合にのみシールリップがシールリップ摺動面に接触したりシールリップの緊迫力が増大したりする。つまり、車輪用軸受装置は、水分がシール部材の内部に入り込んだ初期に水分が接触するシールリップの先端部分が高吸水性ポリマーによってシールリップ摺動面に接触したりシールリップの緊迫力が増大したりする。これにより、シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる。
第二の発明によれば、径方向内側のシールリップの先端部分に水分が存在する場合にのみ径方向内側のシールリップがシールリップ摺動面に接触したりシールリップの緊迫力が増大したりする。これにより、シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる。
第三の発明によれば、シールリップ部分に水分が存在する場合にのみ高吸水性ポリマーによってシールリップの根元部分が押されて、シールリップ摺動面に接触したりシールリップの緊迫力が増大したりする。これにより、シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる。
第四の発明によれば、シールリップの先端部分に水分が存在する場合にのみ高吸水性ポリマーによってシールリップが内部から押されて、シールリップ摺動面に接触したりシールリップの緊迫力が増大したりする。これにより、シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる。
第五の発明によれば、高吸水性ポリマーに対してシールリップ摺動面側の弾性部材の厚さが高吸水性ポリマーに対して芯金側の弾性部材の厚さよりも薄いので、高吸水性ポリマーの膨張力が小さくても弾性部材がシールリップ摺動面側に押し付けられ易くる。これにより、シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる。
第六の発明によれば、高吸水性ポリマーの膨張の度合に応じてシールリップの摺動面への接触面積が変動する。これにより、シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる。
第七の発明によれば、シールリップ全体に高吸水性ポリマーが設けられているため、当該高吸水性ポリマーの膨潤によってシールリップの外形が大きくなり、シールリップ摺動面に接触したりシールリップの緊迫力が増大したりする。これにより、シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる。
第八の発明によれば、水分の有無による高吸水性ポリマーの膨張または収縮によってシールリップとシールリップ摺動面との接触状態が変更される。つまり、車輪用軸受装置は、水分が入り込んでいる状態において、シールリップとシールリップ摺動面とが接触してシールリップとシールリップ摺動面との密着度が高くなり、水分が入り込んでいない状態ではシールリップとシールリップ摺動面とが離間して摩擦トルクが発生しない。これにより、シール性を維持しつつ、摩擦トルクを抑制することができる。
以下に、図1から図3を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。
図1と図2とに示すように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2、内方部材であるハブ輪3、内輪4、転動列である二列のインナー側ボール列5a、アウター側ボール列5b、シール部材であるインナー側シール部材6、シール部材であるアウター側シール部材9を具備する。なお、本明細書において、インナー側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。
図2に示すように、外方部材である外輪2は、ハブ輪3と内輪4を支持するものである。外輪2は、略円筒状に形成され、例えば、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。外輪2において、車載時に車体側に配置される外輪2のインナー側端部には、インナー側シール部材6が嵌合可能なインナー側開口部2aが形成されている。外輪2において、車載時に車輪側に配置されるアウター側端部には、アウター側シール部材9が嵌合可能なアウター側開口部2bが形成されている。
外輪2の内周面には、環状に形成されているインナー側の外側軌道面2cとアウター側の外側軌道面2dとが周方向に互いに平行になるように形成されている。インナー側の外側軌道面2cとアウター側の外側軌道面2dとには、例えば、高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲とする硬化層が形成されている。外輪2の外周面には、図示しない懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体に形成されている。
内方部材を構成するハブ輪3は、図示しない車両の車輪を回転自在に支持するものである。ハブ輪3は、有底円筒状に形成され、例えば、S53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。ハブ輪3において、車載時に車体側に配置されるインナー側端部には、外周面に縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3において、車載時に車輪側に配置されるアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、円周等配位置にハブボルト3dが設けられている。また、ハブ輪3は、アウター側の内側軌道面3cが外輪2のアウター側の外側軌道面2dに対向するように配置されている。
ハブ輪3は、例えば、インナー側の小径段部3aからアウター側の内側軌道面3cまでを高周波焼入れにより表面硬さを58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。これにより、ハブ輪3は、車輪取り付けフランジ3bに付加される回転曲げ荷重に対して充分な機械的強度を有し、ハブ輪3の耐久性が向上する。ハブ輪3には、小径段部3aに内輪4が設けられる。ハブ輪3の内周は、トルク伝達用のセレーション(またはスプライン)が形成されている。
内輪4は、転動列であって車載時に車体側に配置されるインナー側ボール列5aと車載時に車輪側に配置されるアウター側ボール列5bとに予圧を与えるものである。内輪4は、円筒状に形成されている。内輪4は、例えば、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。内輪4の外周面には、周方向に環状の内側軌道面4aが形成されている。内輪4は、圧入によりハブ輪3のインナー側端部に固定されている。つまり、ハブ輪3のインナー側には、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。ハブ輪3は、インナー側端部の内輪4の内側軌道面4aが外輪2のインナー側の外側軌道面2cに対向し、アウター側の内側軌道面3cが外輪2のアウター側の外側軌道面2dに対向するように配置されている。
転動列であるインナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとは、ハブ輪3を回転自在に支持するものである。インナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとは、転動体である複数のボールが保持器によって環状に保持されている。インナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとは、例えば、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼からなり、ズブ焼入れにより芯部まで62〜67HRCの範囲で硬化処理されている。インナー側ボール列5aは、内輪4の内側軌道面4aと、外輪2のインナー側の外側軌道面2cとの間に転動自在に挟まれている。アウター側ボール列5bは、ハブ輪3の内側軌道面3cと、外輪2のアウター側の外側軌道面2dとの間に転動自在に挟まれている。つまり、インナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとは、外輪2に対してハブ輪3と内輪4とを回転自在に支持している。
車輪用軸受装置1は、外輪2とハブ輪3と内輪4とインナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとから複列アンギュラ玉軸受が構成されている。なお、本実施形態において、車輪用軸受装置1には、複列アンギュラ玉軸受が構成されているがこれに限定されるものではなく、複列円錐ころ軸受等で構成されていてもよい。
図2と図3(a)とに示すように、インナー側シール部材6は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材6は、二枚のシールリップを接触させる2サイドリップタイプのエンコーダ付パックシールから構成されている。インナー側シール部材6は、略円筒状のシール板7と略円筒状のスリンガ8とを具備する。
図3(a)に示すように、シール板7は、芯金とシールリップとから構成されている。芯金は金属製であり、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)やオーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)から構成されている。芯金は、円環状の鋼板の外縁部がプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略L字状に形成されている。これにより、芯金は、シール板円筒部7aと、その端部から軸心に向かって延びる円環状の支持部7bとが構成されている。シール板7は、シール板円筒部7aが外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されて外輪2と一体的に構成されている。
シール板円筒部7aのインナー側端部には、シール材が加硫接着されている。支持部7bの一側(インナー側)面には、シールリップであるラジアルリップ7c、ダストリップ7dおよびアキシアルリップ7eが一体に加硫接着されている。ラジアルリップ7c、ダストリップ7dおよびアキシアルリップ7eは、例えば、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムから構成されている。
スリンガ8は、例えば、シール板7と同等の鋼板から構成されている。スリンガ8は、円環状の鋼板の外縁部と内縁部とがプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略L字状に形成されている。これにより、スリンガ8は、スリンガ円筒部8aと、スリンガ円筒部8aの端部から径方向外側に向かって延びる円環状の立板部8bとから構成されている。シール板7よりもインナー側にスリンガ円筒部8aが内輪4に嵌合されて固定されている。この際、スリンガ8の立板部8bは、シール板7の支持部7bに軸方向に対向するように配置されている。立板部8bの一側(インナー側)面には、磁気エンコーダ8cが設けられている。このように、インナー側シール部材6は、外輪2のインナー側開口部2aに嵌合されたシール板7と内輪4に嵌合されたスリンガ8とが対向するように配置され、パックシールを構成している。
シール板7のラジアルリップ7cは、支持部7bの最も内径側に形成されている。シール板7のダストリップ7dとアキシアルリップ7eとは、ラジアルリップ7cの接触位置よりも外側(インナー側)で、スリンガ8の立板部8bに対向するように配置されている。また、ダストリップ7dとアキシアルリップ7eとは、径方向に並ぶようにして、内輪4側にダストリップ7dが配置され、外輪2側にアキシアルリップ7eが配置されている。つまり、シール板7には、径方向内側にダストリップ7dが配置され、径方向外側にアキシアルリップ7eが配置されている。
ラジアルリップ7cは、シールリップ摺動面であるスリンガ8のスリンガ円筒部8aにグリースの油膜を介して接触または近接し、車輪用軸受装置1の内部のグリースの外部への漏れを防止している。ダストリップ7dは、車輪用軸受装置1の外部から泥水や粉塵等の内部への入り込みを防止している。また、アキシアルリップ7eは、シールリップ摺動面であるスリンガ8の立板部8bにグリースの油膜を介して接触し、車輪用軸受装置1の外部から泥水や粉塵等の内部への入り込みを防止している。このように、インナー側シール部材6は、ラジアルリップ7c、ダストリップ7dおよびアキシアルリップ7eがグリースの油膜を介してスリンガ8に接触することでスリンガ8に対して摺動可能に構成されている。これにより、インナー側シール部材6は、外輪2のインナー側開口部2aからの潤滑グリースの漏れおよび外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止する。
図2と図3(b)とに示すように、アウター側シール部材9は、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間を塞ぐものである。アウター側シール部材9は、複数のシールリップが加硫接着された略円筒状の芯金によって構成されている。
芯金は金属製であり、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)やオーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)によって構成されている。芯金は、円環状の鋼板がプレス加工によって屈曲され、外方部材のアウター側開口部2bに嵌合可能な円筒部9aと円板部9bとが形成されている。芯金は、円筒部9aが外輪2のアウター側開口部2bに嵌合されている。
図3(b)に示すように、芯金の円板部9bの板面には、それぞれ円環状に形成されているラジアルリップ9c、内側アキシアルリップ9dおよび外側アキシアルリップ9eが一体に加硫接着されている。ラジアルリップ9c、内側アキシアルリップ9dおよび外側アキシアルリップ9eは、例えば、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムから構成されている。
芯金のラジアルリップ9cは、円板部9bの最も内径側に形成されている。外側アキシアルリップ9eと内側アキシアルリップ9dとは、ラジアルリップ9cよりも外側(アウター側)で、ラジアルリップ9cよりも外径側に形成されている。内側アキシアルリップ9dと外側アキシアルリップ9eとは、径方向に並ぶようにして、ハブ輪3側に内側アキシアルリップ9dが配置され、外輪2側に外側アキシアルリップ9eが配置されている。つまり、芯金には、径方向内側に内側アキシアルリップ9dが配置され、径方向外側に外側アキシアルリップ9eが配置されている。
ラジアルリップ9cは、潤滑材であるグリースの油膜を介してシールリップ摺動面であるハブ輪3に接触または近接し、車輪用軸受装置1の内部のグリースの外部への漏れを防止している。内側アキシアルリップ9dは、車輪用軸受装置1の外部から泥水や粉塵等の内部への入り込みを防止している。外側アキシアルリップ9eは、潤滑材であるグリースの油膜を介してシールリップ摺動面であるハブ輪3に接触し、車輪用軸受装置1の外部から泥水や粉塵等の内部への入り込みを防止している。このように、アウター側シール部材9は、ラジアルリップ9c、内側アキシアルリップ9dおよび外側アキシアルリップ9eがグリースの油膜を介してハブ輪3に接触することで金属環16に対して摺動可能に構成されている。これにより、アウター側シール部材9は、各シールリップと金属環16との良好な摺動状態を確保し、外輪2のアウター側開口部2bから内部のグリースの漏れおよび外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止する。
このように構成される車輪用軸受装置1には、ハブ輪3と内輪4とがインナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとを介して外輪2に回転自在に支持されている。また、車輪用軸受装置1は、外輪2のインナー側開口部2aと内輪4との隙間をインナー側シール部材6で塞がれ、外輪2のアウター側開口部2bとハブ輪3との隙間をアウター側シール部材9で塞がれている。これにより、車輪用軸受装置1は、内部からの潤滑グリースの漏れおよび外部からの雨水や粉塵等の入り込みを防止しつつ外輪2に支持されているハブ輪3と内輪4とが回転する。
次に、図3(a)と図4(a)とを用いて、高吸水性ポリマー10が設けられているインナー側シール部材6のダストリップ7dについて詳細に説明する。
図3(a)と図4(a)とに示すように、インナー側シール部材6は、シール板7のダストリップ7dとシールリップ摺動面であるスリンガ8の立板部8bとの間に所定幅Wの隙間が構成されている。すなわち、ダストリップ7dは、立板部8bに接触していない。さらに、インナー側シール部材6は、ダストリップ7dの根元部分であって、軸方向断面視におけるシール板7の支持部7bからダストリップ7dまでの角度が鋭角である側に高吸水性ポリマー10が設けられている。つまり、高吸水性ポリマー10は、支持部7bとダストリップ7dとに挟まれた空間にダストリップ7dとに接するように全周に渡って塗布されている。
高吸水性ポリマー10は、例えば、グラフト重合あるいはカルボキシメチル化によるデンプン系およびセルロース系、ポリアクリル酸塩系・ポリビニルアルコール系・ポリアクリルアミド系・ポリオキシエチレン系などの合成ポリマー系から構成されているが、性能とコストの両面からポリアクリル酸ナトリウム系が適している。高吸水性ポリマー10は、高分子電解質からなる三次元網目構造の分子間に、その対イオンからなる可動イオンと水の分子が束縛されることで水分を取り込み、保持することができる。高吸水性ポリマー10の吸水力は、イオンの浸透圧、高分子電解質の水との親和力、架橋密度で決まる。高吸水性ポリマー10の吸水力は、イオンの浸透圧と高分子電解質の水との親和性が高いほど吸水力が強くなり、架橋密度が低いほど吸水力が強くなる。高吸水性ポリマー10は、吸水することで三次元網目構造が風船のように膨らむ。つまり、高吸水性ポリマー10は、吸水することで膨張する力が発生する。
このように構成されているインナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10が吸水することにより支持部7bとダストリップ7dとに挟まれた空間で高吸水性ポリマー10が膨張する(図4(b)矢印参照)。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7dが支持部7bから離間する方向に移動される。つまり、ダストリップ7dには、高吸水性ポリマー10によって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(図4(b)白塗矢印参照)。
次に、図4を用いて、インナー側シール部材6のダストリップ7dの働きについて説明する。インナー側シール部材6は、ラジアルリップ7cがスリンガ8のスリンガ円筒部8aに接触し、内部のグリースの外部への漏れを防止している。また、インナー側シール部材6は、アキシアルリップ7eがスリンガ8の立板部8bに接触し、泥水等の内部への入り込みを防止している。
図4(a)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止されている場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいないので吸水により膨張しない。従って、ダストリップ7dは、高吸水性ポリマー10によって支持部7bから離間する方向に移動されない。つまり、インナー側シール部材6は、アキシアルリップ7eが立板部8bに接触し、ダストリップ7dが立板部8bに接触していない状態でシールしている。これにより、インナー側シール部材6は、アキシアルリップ7eによってシール性を維持しつつ、アキシアルリップ7eよりも径方向内側のダストリップ7dと立板部8bとが摺動しないので摩擦トルクの発生を抑制することができる。
図4(b)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止できていない場合、すなわち、ダストリップ7dに水分が存在する場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいるので吸水により膨張する(矢印参照)。従って、ダストリップ7dは、高吸水性ポリマー10によって支持部7bから離間する方向に移動され、立板部8bに接触する。つまり、ダストリップ7dには、高吸水性ポリマー10によって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(白塗矢印参照)。インナー側シール部材6は、ダストリップ7dとアキシアルリップ7eとが立板部8bに接触した状態でシールしている。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7dとアキシアルリップ7eとによってシール性を維持することができる。
次に、図3(b)と図5(a)とを用いて、高吸水性ポリマー10が設けられているアウター側シール部材9の内側アキシアルリップ9dについて詳細に説明する。
図3(b)と図5(a)とに示すように、アウター側シール部材9は、芯金の内側アキシアルリップ9dとシールリップ摺動面であるハブ輪3との間に所定幅Wの隙間が構成されている。すなわち、内側アキシアルリップ9dは、ハブ輪3に接触していない。さらに、アウター側シール部材9は、内側アキシアルリップ9dの根元部分であって、軸方向断面視における芯金の円板部9bから内側アキシアルリップ9dまでの角度が鋭角である側に高吸水性ポリマー10が設けられている。つまり、高吸水性ポリマー10は、円板部9bと内側アキシアルリップ9dとに挟まれた空間に内側アキシアルリップ9dとに接するように全周に渡って塗布されている。
このように構成されるアウター側シール部材9は、高吸水性ポリマー10が吸水することにより円板部9bと内側アキシアルリップ9dとに挟まれた空間で高吸水性ポリマー10が膨張する(図5(a)矢印参照)。これにより、アウター側シール部材9は、内側アキシアルリップ9dが円板部9bから離間する方向に移動される。つまり、内側アキシアルリップ9dには、高吸水性ポリマー10によってハブ輪3へ押し付ける方向の力が加わる(図5(a)白塗矢印参照)。
次に、図5を用いてアウター側シール部材9の内側アキシアルリップ9dの働きについて説明する。アウター側シール部材9は、ラジアルリップ9cがハブ輪3に接触し、内部のグリースの外部への漏れを防止している。また、アウター側シール部材9は、外側アキシアルリップ9eがハブ輪3に接触し、泥水等の内部への入り込みを防止している。
図5(a)に示すように、外側アキシアルリップ9eによって泥水等の水分の入り込みが阻止されている場合、アウター側シール部材9の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいないので吸水により膨張しない。従って、内側アキシアルリップ9dは、高吸水性ポリマー10によって円板部9bから離間する方向に移動されない。つまり、アウター側シール部材9は、外側アキシアルリップ9eがハブ輪3に接触し、内側アキシアルリップ9dがハブ輪3に接触していない状態でシールしている。これにより、アウター側シール部材9は、内側アキシアルリップ9dによってシール性を維持しつつ、外側アキシアルリップ9eよりも径方向内側の内側アキシアルリップ9dとハブ輪3とが摺動することにより発生する摩擦トルクを抑制することができる。
図5(b)に示すように、外側アキシアルリップ9eによって泥水等の水分の入り込みが阻止できていない場合、すなわち、内側アキシアルリップ9dの周囲に水分が存在する場合、アウター側シール部材9の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいるので吸水により膨張する(矢印参照)。従って、内側アキシアルリップ9dは、高吸水性ポリマー10によって円板部9bから離間する方向に移動され、ハブ輪3に接触する。つまり、内側アキシアルリップ9dには、高吸水性ポリマー10によってハブ輪3へ押し付ける方向の力が加わる(白塗矢印参照)。アウター側シール部材9は、内側アキシアルリップ9dと外側アキシアルリップ9eがハブ輪3に接触した状態でシールしている。これにより、アウター側シール部材9は、内側アキシアルリップ9dと外側アキシアルリップ9eによってシール性を維持することができる。
次に、図6(a)を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第二実施形態である車輪用軸受装置13について説明する。なお、以下の各実施形態に係る車輪用軸受装置13・14・15・16・17は、図1から図4に示す車輪用軸受装置1において、車輪用軸受装置1に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、符号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
以下に、車輪用軸受装置13において、高吸水性ポリマー10が設けられているインナー側シール部材6のダストリップ7fについて詳細に説明する。なお、第二実施形態において、図9(a)に示すアウター側シール部材9の内側アキシアルリップ9fは、内部空間9gに高吸水性ポリマー10が設けられているが、その構成、働き、作用、効果がダストリップ7fと略同一であるため、その具体的説明を省略する。
図6(a)に示すように、シール板7のダストリップ7fは、スリンガ8の立板部8bに近接する方向に延びている。そして、ダストリップ7fとシールリップ摺動面である立板部8bとの間に所定幅Wの隙間が構成されている。すなわち、ダストリップ7fは、立板部8bに接触していない。さらに、インナー側シール部材6は、ダストリップ7fの先端部分に円環状の内部空間7gが全周に渡って形成されている。内部空間7gには高吸水性ポリマー10が設けられている。すなわち、ダストリップ7fの先端部分に高吸水性ポリマー10が設けられている。ここで、ダストリップ7fの先端部分とは、ダストリップ7fのうち先端縁から少なくとも中央部までの間の部分を意味する。具体的には、ダストリップ7fの先端部分は、ダストリップ7fのうち支持部7bと軸方向に対向する部分である。本実施形態では、高吸水性ポリマー10は、ダストリップ7fのうち支持部7bと軸方向に対向する部分の先端に設けられている。ダストリップ7fには、外部から内部空間7gに水分が入り込むことができる図示しない連通孔やスリットが形成されている。
このように構成されているインナー側シール部材6は、図示しない連通孔やスリットから入り込んだ水分を高吸水性ポリマー10が吸水することによりダストリップ7fの内部空間7gで高吸水性ポリマー10が膨張する。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7fの先端部分が立板部8bに近接する方向に膨出される(図6(b)矢印参照)。つまり、ダストリップ7fの先端部分には、高吸水性ポリマー10によって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(図6(b)白塗矢印参照)。
次に、図6を用いて、インナー側シール部材6のダストリップ7fの働きについて説明する。
図6(a)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止されている場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいないので吸水により膨張しない。従って、ダストリップ7fは、高吸水性ポリマー10によって立板部8bに近接する方向に移動されない。これにより、インナー側シール部材6は、アキシアルリップ7eによってシール性を維持しつつ、アキシアルリップ7eよりも径方向内側のダストリップ7fと立板部8bとが摺動しないので摩擦トルクの発生を抑制することができる。
図6(b)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止できていない場合、すなわち、ダストリップ7fの近傍に水分が存在する場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいるので連通孔やスリットから水分を吸収して膨張する。従って、ダストリップ7fの先端部分は、高吸水性ポリマー10によって立板部8bに近接する方向に膨張される(矢印参照)。つまり、ダストリップ7fの先端部分には、高吸水性ポリマー10によって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(白塗矢印参照)。インナー側シール部材6は、ダストリップ7fとアキシアルリップ7eとが立板部8bに接触した状態でシールしている。
インナー側シール部材6は、水分がシール部材の内部に入り込んだ初期に水分が接触するダストリップ7fの先端部分が立板部8bに接触するので、ダストリップ7fと立板部8bとの隙間からの水分の張り込みを防ぐことができる。また、インナー側シール部材6のうちダストリップ7fの先端部分に高吸水性ポリマー10を設けることで、ダストリップ7fの途中部又は根元部分に設けて、ダストリップ7f自体を支持している場合に比べて外部からの力が加わりにくいので耐久性が向上する。このように、ダストリップ7fのうち立板部8bと最も近接する部分である先端部分に高吸水性ポリマー10が設けられていることで、水分が接触した際に立板部8bへ押し付ける方向の力が加わり易い。本実施形態の構成により、インナー側シール部材6は、ダストリップ7fとアキシアルリップ7eとによってシール性を維持することができる。
次に、図7(a)を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第三実施形態である車輪用軸受装置14について説明する。
以下に、車輪用軸受装置14において、高吸水性ポリマー10が設けられているインナー側シール部材6のダストリップ7hについて詳細に説明する。なお、第三実施形態において、図9(b)に示すアウター側シール部材9の内側アキシアルリップ9hは、高吸水性ポリマー10が混合されている。具体的には、内側アキシアルリップ9hの全体に高吸水性ポリマーが設けられているが、その構成、働き、作用、効果がダストリップ7hと略同一であるため、その具体的説明を省略する。なお、本実施形態では、内側アキシアルリップ9hのみに高吸水性ポリマーが混合されているが、内側アキシアルリップ9hの他にラジアルリップ9c又は外側アキシアルリップ9eに高吸水性ポリマーが混合されていてもよい。
図7(a)に示すように、インナー側シール部材6は、シール板7のダストリップ7hとシールリップ摺動面であるスリンガ8の立板部8bとの間に所定幅Wの隙間が構成されている。すなわち、ダストリップ7hは、立板部8bに接触していない。さらに、インナー側シール部材6は、ダストリップ7hに高吸水性ポリマー10が混合されている。具体的には、ダストリップ7hの全体に高吸水性ポリマーが設けられている。すなわち、ダストリップ7hは、水膨張ゴムから形成されている。インナー側シール部材6は、合成ゴム等で覆われている支持部7bに水膨張ゴムからなるダストリップ7hが一体的に設けられている。なお、本実施形態では、ダストリップ7hのみに高吸水性ポリマーが混合されているが、ダストリップ7hの他にラジアルリップ7c又はアキシアルリップ7eに高吸水性ポリマーが混合されていてもよい。
このように構成されているインナー側シール部材6は、ダストリップ7hの表面から入り込んだ水分を高吸水性ポリマー10が吸水することによりダストリップ7hの全体が膨張する。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7hが立板部8bに近接する方向に膨出される(図7(b)矢印参照)。つまり、ダストリップ7hには、混合されている高吸水性ポリマー10によって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(図7(b)白塗矢印参照)。
次に、図7を用いて、インナー側シール部材6のダストリップ7hの働きについて説明する。
図7(a)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止されている場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいないので吸水により膨張しない。従って、ダストリップ7hは、高吸水性ポリマー10によって立板部8bに近接する方向に移動されない。これにより、インナー側シール部材6は、アキシアルリップ7eによってシール性を維持しつつ、アキシアルリップ7eよりも径方向内側のダストリップ7hと立板部8bとが摺動しないので摩擦トルクの発生を抑制することができる。
図7(b)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止できていない場合、すなわち、ダストリップ7hに水分が存在する場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいるのでダストリップ7hの表面に付着した水分を吸収して膨張する。従って、ダストリップ7hは、高吸水性ポリマー10によって立板部8bに近接する方向に膨張される(矢印参照)。つまり、ダストリップ7hの先端部分には、高吸水性ポリマー10によって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(白塗矢印参照)。インナー側シール部材6は、ダストリップ7hとアキシアルリップ7eとが立板部8bに接触した状態でシールしている。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7hとアキシアルリップ7eとによってシール性を維持することができる。
次に、図8(a)を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第四実施形態である車輪用軸受装置15について説明する。
以下に、車輪用軸受装置15において、高吸水性ポリマー10が設けられているインナー側シール部材6のダストリップ7iについて詳細に説明する。なお、第四実施形態において、図9(c)に示すアウター側シール部材9の内側アキシアルリップ9iは、その先端部分に高吸水性ポリマー10が設けられているが、その構成、働き、作用、効果がダストリップ7iと略同一であるため、その具体的説明を省略する。
図8(a)に示すように、インナー側シール部材6は、シール板7のダストリップ7iとシールリップ摺動面であるスリンガ8の立板部8bとの間に所定幅Wの隙間が構成されている。すなわち、ダストリップ7iは、立板部8bに接触していない。さらに、インナー側シール部材6は、ダストリップ7iの先端部分を覆うように高吸水性ポリマー10が設けられている。
このように構成されているインナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10が吸水することによりダストリップ7iの先端部分で高吸水性ポリマー10が膨張する。つまり、インナー側シール部材6は、ダストリップ7iの先端部分から高吸水性ポリマー10が立板部8bに近接する方向に膨出される(図8(b)矢印参照)。これにより、高吸水性ポリマー10には、ダストリップ7fによって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(図8(b)白塗矢印参照)。
次に、図8を用いて、インナー側シール部材6のダストリップ7iの働きについて説明する。
図8(a)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止されている場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいないので吸水により膨張しない。従って、ダストリップ7iは、先端部分の高吸水性ポリマー10が立板部8bに接触しない。これにより、インナー側シール部材6は、アキシアルリップ7eによってシール性を維持しつつ、アキシアルリップ7eよりも径方向内側のダストリップ7fと立板部8bとが摺動しないので摩擦トルクの発生を抑制することができる。
図8(b)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止できていない場合、すなわち、ダストリップ7iの先端部分に水分が存在する場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいるので吸水して膨張する。つまり、ダストリップ7iは、先端部分の高吸水性ポリマー10が立板部8bに近接する方向に膨張する(矢印参照)。これにより、ダストリップ7iの高吸水性ポリマー10には、ダストリップ7iによって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(白塗矢印参照)。インナー側シール部材6は、ダストリップ7fの高吸水性ポリマー10とアキシアルリップ7eとが立板部8bに接触した状態でシールしている。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7iとアキシアルリップ7eとによってシール性を維持することができる。
次に、図10(a)を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第五実施形態である車輪用軸受装置16について説明する。
以下に、車輪用軸受装置16において、高吸水性ポリマー10が設けられているインナー側シール部材6のダストリップ7jについて詳細に説明する。なお、第五実施形態において、アウター側シール部材9は、同様の構成とすることでその働き、作用、効果がインナー側シール部材6と略同一であるため、その具体的説明を省略する。
図10(a)に示すように、インナー側シール部材6は、シール板7のダストリップ7jとシールリップ摺動面であるスリンガ8の立板部8bとの間に所定幅Wの隙間が構成されている。すなわち、ダストリップ7jは、立板部8bに接触していない。さらに、ダストリップ7jは、その先端から基端に向かって所定の長さで二股に分割されることで、摺動面(立板部8b)側の壁7kと芯金(又はアキシアルリップ7e)側の壁7lとが円環状に形成されている。これにより、ダストリップ7jの先端部分には、摺動面側の壁7kと芯金側の壁7lとから円環状の溝7mが形成されている(図10(a)のA部分参照)。
溝7mは、ダストリップ7jの厚さ方向においてスリンガ8の立板部8b側寄りに形成されている。すなわち、溝7mを形成している摺動面側の壁7kの壁厚Yは、芯金(又はアキシリアルリップ7e)側の壁7lの壁厚Xよりも薄く形成されている(図10(a)のA部分参照)。溝7mには、高吸水性ポリマー10が設けられている。ダストリップ7jの先端が開口しているので(高吸水性ポリマー10が露出しているので)、溝7m(高吸水性ポリマー10)の内部に水分が入り込むことができる。高吸水性ポリマー10は、ダストリップ7jの厚さ方向において立板部8b側に寄って配置されている。
このように構成されているインナー側シール部材6は、ダストリップ7jの先端部分から入り込んだ水分を高吸水性ポリマー10が吸水することにより溝7m内で高吸水性ポリマー10が膨張する。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7jの先端部分が立板部8bに近接する方向に膨出される(図10(b)矢印参照)。つまり、ダストリップ7jの先端部分には、高吸水性ポリマー10によって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(図10(b)白塗矢印参照)。
次に、図10を用いて、インナー側シール部材6のダストリップ7jの働きについて説明する。
図10(a)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止されている場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいないので吸水により膨張しない。この場合、ダストリップ7jは、高吸水性ポリマー10によって立板部8bに近接する方向に移動されない。これにより、インナー側シール部材6は、アキシアルリップ7eによってシール性を維持しつつ、アキシアルリップ7eよりも径方向内側のダストリップ7jと立板部8bとが摺動しないので摩擦トルクの発生を抑制することができる。
図10(b)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止できていない場合、すなわち、ダストリップ7jの近傍に水分が存在する場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいるので溝7mの開口部分から水分を吸収して膨張する。溝7mを形成している摺動面側の壁7kは、芯金側の壁7lよりも壁厚が薄いので高吸水性ポリマー10の膨張によって芯金側の壁7lよりも変形し易い。従って、ダストリップ7jの先端部分は、芯金側の壁7lを支持部材として摺動面側の壁7kが高吸水性ポリマー10によって立板部8bに近接する方向に膨張される(矢印参照)。つまり、ダストリップ7jの摺動面側の壁7kには、高吸水性ポリマー10によって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(白塗矢印参照)。そして、インナー側シール部材6は、ダストリップ7jとアキシアルリップ7eとが立板部8bに接触した状態でシールすることになる。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7jとアキシアルリップ7eとによってシール性を維持することができる。
このように、本実施形態では、壁7kの壁厚Yを壁厚7mの厚さよりも薄くすることで、すなわち、高吸水性ポリマー10がダストリップ7jの厚さ方向において立板部8b側に寄って配置されることで、高吸水性ポリマー10の膨張力が小さくても壁7kが立板部8b側に押し付けられ易くなる。これにより、インナー側シール部材6のシール性を容易に維持することができる。また、高吸水性ポリマー10がダストリップ7jの先端部分から露出しているため、当該高吸水性ポリマー10がダストリップ7jの内部に設けられている構成と比べて、浸入した水分が高吸水性ポリマー10に吸収され易くなる。
次に、図11(a)を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第六実施形態である車輪用軸受装置17について説明する。
以下に、車輪用軸受装置17において、高吸水性ポリマー10が設けられているインナー側シール部材6のダストリップ7nについて詳細に説明する。なお、第六実施形態において、アウター側シール部材9は、同様の構成とすることでその働き、作用、効果がインナー側シール部材6と略同一であるため、その具体的説明を省略する。
図11(a)に示すように、インナー側シール部材6は、シール板7のダストリップ7nの先端から所定の範囲がシールリップ摺動面であるスリンガ8の立板部8bに沿うように形成されている。ダストリップ7nとシールリップ摺動面であるスリンガ8の立板部8bとの間には、所定の範囲に径方向に所定幅Wの隙間が構成されている。すなわち、ダストリップ7nの先端部分は、所定の範囲に立板部8bとの間で所定幅Wのラビリンスが構成されている。さらに、ダストリップ7nは、先端から立板部8bに沿うように所定の長さで二股に分割されることで、摺動面側の壁7pと芯金側の壁7qとが円環状に形成されている。これにより、ダストリップ7nの先端部分には、円環状の溝7rが形成されている(図11(a)のC部分参照)。
溝7rは、ダストリップ7nの厚さ方向においてスリンガ8の立板部8b側寄りに形成されている。すなわち、溝7rを形成している摺動面側の壁7pは、芯金側の壁7qよりも薄い壁厚に形成されている。溝7rは、ダストリップ7nの先端が開口しているので溝7mの内部に水分が入り込むことができる。溝7rには、高吸水性ポリマー10が設けられている。高吸水性ポリマー10は、ダストリップ7nの厚さ方向において立板部8b側に寄って配置されている。
このように構成されているインナー側シール部材6は、溝7rの開口部分から入り込んだ水分を高吸水性ポリマー10が吸水することにより溝7r内で高吸水性ポリマー10が膨張する。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7nの先端部分が立板部8bに近接する方向に膨出される(図11(b)矢印参照)。つまり、ダストリップ7nの先端部分には、高吸水性ポリマー10によって立板部8bへ押し付ける方向の力が加わる(図11(b)白塗矢印参照)。
次に、図11を用いて、インナー側シール部材6のダストリップ7nの働きについて説明する。
図11(a)に示すように、アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止されている場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいないので吸水により膨張しない。従って、ダストリップ7nは、高吸水性ポリマー10によって立板部8bに近接する方向に移動されない。これにより、インナー側シール部材6は、アキシアルリップ7eとダストリップ7nのラビリンスによってシール性を維持しつつ、アキシアルリップ7eよりも径方向内側のダストリップ7nと立板部8bとが摺動しないので摩擦トルクの発生を抑制することができる。
アキシアルリップ7eによって泥水等の水分の入り込みが阻止できていない場合、すなわち、ダストリップ7nの近傍に水分が存在する場合、インナー側シール部材6の高吸水性ポリマー10は、周囲にまで水分が入り込んでいるので溝7rの開口部分から水分を吸収して膨張する。従って、ダストリップ7nの先端部分は、摺動面側の壁7pよりも厚い芯金側の壁7qを支持部材として摺動面側の壁7pが高吸水性ポリマー10によって立板部8bに近接する方向に膨張される。
図11(b)に示すように、インナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10の水分吸収量が増加するにつれて、ダストリップ7nの摺動面側の壁7pと立板部8bとの間のラビリンスの所定幅Wが狭くなり、ラビリンスのシール性が向上する。
図11(b)に示すように、インナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10の水分吸収量が増加するにつれて、ダストリップ7nの摺動面側の壁7pと立板部8bとの間のラビリンスの所定幅Wが狭くなり、ラビリンスのシール性が向上する。
図11(c)に示すように、インナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10の水分吸収量が更に増加すると、摺動面側の壁7pと立板部8bとが接触範囲Sで接触することによりシール性が高い接触形のシールを構成する。
図11(d)に示すように、インナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10の水分吸収量がさらに増加すると、摺動面側の壁7pと立板部8bとの接触範囲Sが増大してシール性が更に向上する。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7nとアキシアルリップ7eとによってシール性を維持することができる。
図11(d)に示すように、インナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10の水分吸収量がさらに増加すると、摺動面側の壁7pと立板部8bとの接触範囲Sが増大してシール性が更に向上する。これにより、インナー側シール部材6は、ダストリップ7nとアキシアルリップ7eとによってシール性を維持することができる。
上述した各実施形態において、インナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10の膨張の度合が増大するにつれてダストリップ7d・7f・7h・7i・7j・7nとスリンガ8の立板部8bとの接触箇所が増大する構成でもよい。
例えば、図12に示すように、ダストリップ7jは、摺動面側の壁7kの途中部に凸部7sが形成されている(図12(a)参照)。凸部7sは、壁7kのうち摺動面(立板部8b)と対向する面から当該摺動面側に向けて突出している。本実施形態では、凸部7sは、その断面形状が略三角形状である。また、凸部7sは、ダストリップ7jが延びる方向において高吸水性ポリマー10と重なる位置に設けられている。ダストリップ7jは、高吸水性ポリマー10の膨張が初期状態において先端部分のみがスリンガ8の立板部8bに接触している(図12(b)参照)。ダストリップ7jは、高吸水性ポリマー10の膨張が進むと、先端部分に加えて凸部7sが立板部8bに接触する(図12(c)参照)。アウター側シール部材9についても同様である。
例えば、図12に示すように、ダストリップ7jは、摺動面側の壁7kの途中部に凸部7sが形成されている(図12(a)参照)。凸部7sは、壁7kのうち摺動面(立板部8b)と対向する面から当該摺動面側に向けて突出している。本実施形態では、凸部7sは、その断面形状が略三角形状である。また、凸部7sは、ダストリップ7jが延びる方向において高吸水性ポリマー10と重なる位置に設けられている。ダストリップ7jは、高吸水性ポリマー10の膨張が初期状態において先端部分のみがスリンガ8の立板部8bに接触している(図12(b)参照)。ダストリップ7jは、高吸水性ポリマー10の膨張が進むと、先端部分に加えて凸部7sが立板部8bに接触する(図12(c)参照)。アウター側シール部材9についても同様である。
また、図13に示すように、インナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10がダストリップ7d・7f・7h・7i・7j・7nの先端部分に連続した円環状に配置されているが(図13(a)参照)、複数の円弧状の高吸水性ポリマー10をダストリップ7d・7f・7h・7i・7j・7nの先端部分に断続的な円環状に配置するように構成してもよい。
例えば、図13(b)に示すように、ダストリップ7jは、複数の所定の円弧長さの溝7mが先端部分に形成されている。溝7mは、所定の間隔で円弧状に配置されることで断続した円環を構成している。ダストリップ7jは、複数の溝7mに高吸水性ポリマー10が設けられている。アウター側シール部材9についても同様である。
例えば、図13(b)に示すように、ダストリップ7jは、複数の所定の円弧長さの溝7mが先端部分に形成されている。溝7mは、所定の間隔で円弧状に配置されることで断続した円環を構成している。ダストリップ7jは、複数の溝7mに高吸水性ポリマー10が設けられている。アウター側シール部材9についても同様である。
また、インナー側シール部材6は、ラジアルリップ7c、アキシアルリップ7eおよび実施形態毎のダストリップ7d・7f・7h・7i・7j・7nからなる構成であるがこれに限定するものではない。図14(a)に示すように、インナー側シール部材6は、更にダストリップ7tを備える構成でもよい。また、アウター側シール部材9は、ラジアルリップ9c、内側アキシアルリップ9iおよび外側アキシアルリップ9eがハブ輪3に摺動自在に接触しているがこれに限定するものではない。図14(b)に示すように、ハブ輪3に嵌合された金属環16にラジアルリップ9c、内側アキシアルリップ9iおよび外側アキシアルリップ9eが摺動自在に接触する構成でもよい。また、外輪2の外周面よりも径方向外側に堰部9jを備えるアウター側シール部材9でもよい。
また、インナー側シール部材6のダストリップ7d・7f・7h・7i・7j・7nは、立板部8bと所定幅Wの隙間が構成され、アウター側シール部材9の内側アキシアルリップ9d・9f・9hは、ハブ輪3と所定幅Wの隙間が構成されているが、これに限定するものではない。図15(a)に示すように、例えば、車輪用軸受装置1において、インナー側シール部材6のダストリップ7dは、所定の締め代で立板部8bに接触する構成でもよい。同様に、図15(b)に示すように、例えば、アウター側シール部材9の内側アキシアルリップ9dは、所定の締め代でハブ輪3と接触する構成でもよい。
各実施形態において、図16に示すように、シールリップ先端と摺動面との間に所定幅Wの隙間を有するように構成されて乾燥時に非接触であるシール部材の場合と、シールリップが所定の締め代を有するように構成されて乾燥時に接触しているシール部材の場合において、吸水する水分量の増加に伴って摩擦トルクが増大する。すなわち、インナー側シール部材6とアウター側シール部材9とは、水分量が増加するにつれて緊迫力(締め代)が増大してシール性能が向上するように構成されている。
また、インナー側シール部材6は、高吸水性ポリマー10から水分が蒸発することにより高吸水性ポリマー10が収縮し、ダストリップ7d・7f・7h・7i・7j・7nが立板部8bから離間する。同様に、アウター側シール部材9は、高吸水性ポリマー10の収縮により、内側アキシアルリップ9d・9f・9h・9iがハブ輪3または金属環16から離間する。つまり、車輪用軸受装置は、水分が入り込んでいる状態において、シールリップとシールリップ摺動面とが接触してシールリップとシールリップ摺動面との密着度が高くなり、水分が入り込んでいない状態ではシールリップとシールリップ摺動面とが離間して摩擦トルクが発生しない。これにより、車輪用軸受装置1は、高いシール性能が求められない使用環境において摩擦トルクを低減させ、内部に水分が入り込み易い使用環境においてシール性能を向上させることができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
加えて、本願における車輪用軸受装置1・13・14・15・16・17は、内方部材として一つの内輪4が嵌合されたハブ輪3を備え、取付フランジを有している外方部材である外輪2と内方部材である内輪4とハブ輪3の嵌合体で構成された内輪回転仕様の第3世代構造としているが、これに限定するものではない。外方部材である外輪2と内方部材である一対の内輪4で構成された第1世代構造や、取付フランジを有している外方部材である外輪2と内方部材である一対の内輪4とで構成され、この一対の内輪4がハブ輪3の外周に嵌合される内輪回転仕様の第2世代構造であってもよい。また、外方部材である外輪2がハブ輪3として形成されており、このハブ輪3と内方部材である一対の内輪4とで構成された外輪回転仕様の第2世代構造であってもよい。また、内方部材として一つの内輪4が嵌合された取付フランジを有している支持軸を備え、外方部材である外輪2がハブ輪3として形成されており、このハブ輪3と内方部材である内輪4と支持軸の嵌合体とで構成された外輪回転仕様の第3世代構造であってもよい。更に、内方部材としてハブ輪3と自在継手とが連結されており、取付フランジを有している外方部材である外輪2と内方部材であるハブ輪3と自在継手の嵌合体とで構成された第4世代構造であってもよい。
1 車輪用軸受装置
2 外輪
2a インナー側開口部
3 ハブ輪
4 内輪
5a インナー側ボール列
5b アウター側ボール列
6 インナー側シール部材
7 シール板
7a シール板円筒部
7b 支持部
7d ダストリップ
8 スリンガ
8a スリンガ円筒部
8b 立板部
9 アウター側シール部材
9d 内側アキシアルリップ
10 高吸水性ポリマー
2 外輪
2a インナー側開口部
3 ハブ輪
4 内輪
5a インナー側ボール列
5b アウター側ボール列
6 インナー側シール部材
7 シール板
7a シール板円筒部
7b 支持部
7d ダストリップ
8 スリンガ
8a スリンガ円筒部
8b 立板部
9 アウター側シール部材
9d 内側アキシアルリップ
10 高吸水性ポリマー
Claims (8)
- 内周に複列の外側軌道面が一体に形成された外方部材と、
外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、外周に前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面が形成された内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材とのそれぞれの軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
弾性体からなるシールリップが設けられ、前記シールリップがシールリップ摺動面に接触することで前記外方部材と内方部材との間をシールするシール部材と、を備えた車輪用軸受装置において、
前記シールリップの先端部分に高吸水性ポリマーが設けられ、前記高吸水性ポリマーが吸水すると、前記高吸水性ポリマーによって前記シールリップに前記シールリップ摺動面へ押し付ける方向の力が加わる車輪用軸受装置。 - 前記シールリップが、複数のシールリップから構成され、前記高吸水性ポリマーが、前記複数のシールリップのうち径方向内側のシールリップに設けられている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
- 高吸水性ポリマーが、前記シールリップの根元部分の径方向外側の表面に更に設けられている請求項1または請求項2に記載の車輪用軸受装置。
- 前記シールリップの先端部分に設けられている高吸水性ポリマーが、前記シールリップの内部に設けられている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
- 前記シールリップの先端部分における前記高吸水性ポリマーが、前記シールリップの厚さ方向において前記シールリップ摺動面側に寄って配置されている請求項4に記載の車輪用軸受装置。
- 前記シールリップの先端部分における前記高吸水性ポリマーが、前記シールリップ摺動面に沿って配置されている請求項4または請求項5に記載の車輪用軸受装置。
- 前記高吸水性ポリマーが前記シールリップ全体に混合されている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
- 前記シールリップの先端部分が、前記高吸水性ポリマーの水分の吸収による膨張によって前記シールリップ摺動面に接触し、前記高吸水性ポリマーの水分の蒸発による収縮によって前記シールリップ摺動面から離間する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017051984 | 2017-03-16 | ||
JP2017051984 | 2017-03-16 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2018155398A true JP2018155398A (ja) | 2018-10-04 |
Family
ID=63716488
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017248102A Pending JP2018155398A (ja) | 2017-03-16 | 2017-12-25 | 車輪用軸受装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2018155398A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114352640A (zh) * | 2021-12-21 | 2022-04-15 | 浙江万向精工有限公司 | 一种高密封自调节密封件及其轮毂轴承 |
CN114352641A (zh) * | 2021-12-21 | 2022-04-15 | 浙江万向精工有限公司 | 一种低转矩自调节密封组件及其轮毂轴承 |
CN117072552A (zh) * | 2023-10-18 | 2023-11-17 | 万向钱潮股份公司 | 一种轮毂轴承 |
-
2017
- 2017-12-25 JP JP2017248102A patent/JP2018155398A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN114352640A (zh) * | 2021-12-21 | 2022-04-15 | 浙江万向精工有限公司 | 一种高密封自调节密封件及其轮毂轴承 |
CN114352641A (zh) * | 2021-12-21 | 2022-04-15 | 浙江万向精工有限公司 | 一种低转矩自调节密封组件及其轮毂轴承 |
CN117072552A (zh) * | 2023-10-18 | 2023-11-17 | 万向钱潮股份公司 | 一种轮毂轴承 |
CN117072552B (zh) * | 2023-10-18 | 2024-01-05 | 万向钱潮股份公司 | 一种轮毂轴承 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6717524B2 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP6774278B2 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
US10900524B2 (en) | Sealing member, and bearing device for vehicle wheel comprising same | |
JP2018155398A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2009197883A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2018066448A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2011069422A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP6114605B2 (ja) | 車輪用軸受の密封装置 | |
US10975913B2 (en) | Bearing device for vehicle wheel | |
JP2011080570A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2013050132A (ja) | 車輪用軸受シール | |
JP2018059546A (ja) | アンギュラ玉軸受用の保持器及びハブユニット軸受 | |
JP2018100684A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP6951839B2 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2009115138A (ja) | シール装置 | |
JP2019128018A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2008025644A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP7080015B2 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP7141199B2 (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2018141471A (ja) | シール部材およびそれを備える車輪用軸受装置 | |
JP2019173878A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2018155348A (ja) | 車輪用軸受装置 | |
JP2013204733A (ja) | 車輪用軸受の密封装置 | |
JP7431495B2 (ja) | 車輪用軸受装置のシール部材およびそれを備える車輪用軸受装置 | |
JP2015158228A (ja) | 密封装置およびこれを備えた車輪用軸受装置 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
AA64 | Notification of invalidation of claim of internal priority (with term) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A241764 Effective date: 20180123 |