JP2019173878A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】気密性を低下させることなく、軸受内部の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制することができる車輪用軸受装置を提供する。【解決手段】カバー7が嵌合される嵌合部7aと、を有するインナー側開口部2aと、が形成された外輪2と、ハブ輪3の小径段部3aに圧入された少なくとも一つの内輪4を有する内方部材と、カバー嵌合部2cに嵌合され、インナー側開口部2aを密封するカバー7と、外輪2のアウター側開口部2gに嵌合され、外輪2とハブ輪3との間をシールするアウター側シール部材9と、を備えた車輪用軸受装置1において、カバー嵌合部2cは、軸受内部の密閉空間の圧力をそれぞれ異なる圧力に設定する複数のカバー嵌合位置のうち一のカバー嵌合位置にカバー7を配置させる位置決め手段を有する。【選択図】図2
Description
本発明は車輪用軸受装置に関する。
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。例えば、車輪用軸受装置は、車輪に接続される内方部材であるハブ輪が転動体を介して回転自在に支持されている。車輪用軸受装置は、外方部材と内方部材の内部に封入されたグリースが漏出したり、内部に泥水および砂塵等の異物が入り込むことで転動体および軌道面が損傷する懸念がある。このため、車輪用軸受装置は、泥水および砂塵等の異物の入り込みを防止するために外方部材と内方部材との隙間にシール部材等を設けて密封性を向上させている。
このような密封性を高めた車輪用軸受装置において、外方部材のインナー側開口部(車輪用軸受装置を車体に取り付けた際の車体側)に保護カバーが嵌合されたものがある。保護カバーには、嵌合時の密封性を高めるために嵌合面に合成ゴムからなる弾性部材が一体に接合されている。弾性部材には、帯状の環状突起とリップ形状の環状突起が形成されている。保護カバーは、弾性部材の環状突起が外方部材のシール嵌合面に圧着された状態で外方部材に嵌合されている。これにより、車輪用軸受装置は、金属製の保護カバーであっても嵌合部分の気密性を高めて密封性を向上させている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
このような密封性を高めた車輪用軸受装置において、標高の高い地域で気密性の高い保護カバーを組み付けた場合、標高の低い地域において使用する際に外部の大気圧が軸受内部の圧力よりも大きくなる。このため、車輪用軸受装置は、軸受組立地と使用地との気圧差によってアウター側シール部材のシールリップが摺動面に吸着して回転トルクが増大する。この課題を解決するために、例えば、特許文献2のように、外方部材に、軸受内部空間と軸受外部空間とを連通する連通孔を設けることが考えられる。
特許文献2に記載の車輪用軸受装置は、外方部材の連通孔がナックルによって封止されている。しかし、外方部材とナックルとは、互いに金属同士であるため隙間が存在する。また、車輪用軸受装置は、外方部材およびナックルの嵌合孔の加工状態、加工精度、組み付け状態によって外方部材とナックルとの隙間の大きさが変動する。このため、車輪用軸受装置は、部品の加工状態および組み付け状態によって気密性が低下する可能性があった。
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、気密性を低下させることなく、軸受内部空間の軸受外部空間の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制することができる車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
即ち、第一の発明は、内周に形成された複列の外側軌道面と、インナー側開口部にカバー嵌合部とを有する外方部材と、外周に小径段部が形成されたハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、前記ハブ輪と前記内輪との外周面に、前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面が形成された内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記カバー嵌合部に嵌合され、前記インナー側開口部を密封するカバーと、前記外方部材のアウター側開口部に嵌合され、前記外方部材と前記内方部材との間をシールするアウター側シール部材と、を備えた車輪用軸受装置において、前記カバー嵌合部は、軸受内部空間の圧力をそれぞれ異なる圧力に設定する複数のカバー嵌合位置のうち一のカバー嵌合位置に前記カバーを配置させる位置決め手段を有するものである。
第二の発明の車輪用軸受装置は、前記位置決め手段が、カバー嵌合部に設けられる複数の円周溝であるものである。
第三の発明の車輪用軸受装置は、前記カバーには、前記円周溝に係合し、軸方向インナー側への移動を制限するかえりが設けられているものである。
第四の発明の車輪用軸受装置は、前記位置決め手段が、前記カバー嵌合部に設けられるピンであるものである。
第五の発明の車輪用軸受装置は、前記カバーには、前記ピンに係合し、軸方向アウター側への移動を制限する軸方向長さの異なる複数の切欠き部が設けられているものである。
第六の発明の車輪用軸受装置は、エンコーダリングを更に備え、前記内輪に複数の円周溝が設けられ、前記エンコーダリングには、前記内輪の円周溝に係合し、軸方向インナー側への移動を制限するかえりが設けられているものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、第一の発明は、複数のカバー嵌合位置から任意のカバー嵌合位置を選択することで、軸受内部の圧力が車輪用軸受装置の組立て地域の環境および使用地域の環境に基づいた所望の圧力に設定される。これにより、気密性を低下させることなく、軸受内部の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制することができる。
第二の発明は、位置決め手段として複数の円周溝がカバーを囲むように配置されているので容易に所望する嵌合位置にカバーが嵌合される。これにより、気密性を低下させることなく、軸受内部の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制することができる。
第三の発明は、位置決め手段である円周溝を用いてカバーの軸方向インナー側への移動を制限するので、外方部材に対するカバーとの嵌合量が少なくても外方部材に嵌合された状態が維持される。これにより、気密性を低下させることなく、軸受内部の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制することができる。
第四の発明は、位置決め手段としてピンが径方向に突出しているのでカバーの端部をピンに接触させることで容易に所望する嵌合位置にカバーが嵌合される。これにより、気密性を低下させることなく、軸受内部の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制することができる。
第五の発明は、複数の切欠き部がカバーに設けられているのでカバーの周方向の向きを変更してピンと接触する切欠きを選択することで容易に所望する嵌合位置にカバーが嵌合される。これにより、気密性を低下させることなく、軸受内部の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制することができる。
第六の発明は、エンコーダリングの軸方向の位置が変更できるので、エンコーダリングと干渉することなく所望する嵌合位置にカバーが嵌合される。これにより、気密性を低下させることなく、軸受内部の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制することができる。
以下に、図1から図3を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。
図1と図2とに示すように、車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材である外輪2、内方部材であるハブ輪3、内輪4、転動列である二列のインナー側ボール列5a(図2参照)、アウター側ボール列5b(図2参照)、エンコーダリング6、カバー7、カバー7に設けられている円環状のインナー側シール部材8(図2参照)、アウター側シール部材9(図2参照)を具備する。ここで、インナー側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、アウター側とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。また、軸方向とは、車輪用軸受装置1の回転軸に沿った方向を表す。
図2に示すように、外輪2は、例えばS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。
外輪2の内周面には、環状に形成されているインナー側の外側軌道面2dと、アウター側の外側軌道面2eとが形成されている。インナー側の外側軌道面2dとアウター側の外側軌道面2eとには、例えば高周波焼入れによって表面硬さを58〜64HRCの範囲とする硬化層が形成されている。外輪2の外周面には、図示しない車体側の部材(ナックル)に取り付けるための車体取り付けフランジ2fが一体に形成されている。外輪2のアウター側開口部2gには、アウター側シール部材9が嵌合されている。
外輪2のインナー側開口部2aには、インナー側シール嵌合部2bとカバー嵌合部2cとが同一軸心上に形成されている。外輪2のインナー側シール嵌合部2bは、インナー側シール部材8が嵌合される。カバー嵌合部2cは、カバー7が嵌合される。カバー嵌合部2cの外径は、インナー側シール嵌合部2bのシール嵌合径よりも小さい。また、カバー嵌合部2cは、インナー側シール嵌合部2bのアウター側端から所定の軸方向長さの孔を有している。つまり、外輪2のインナー側開口部2aの内周には、外側(インナー側)から順に大径側のインナー側シール嵌合部2bと小径側のカバー嵌合部2cとが形成されている。
ハブ輪3は、例えばS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。ハブ輪3のインナー側端部には、外周面にアウター側端部よりも縮径された小径段部3aが形成されている。ハブ輪3のアウター側端部には、車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジ3bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ3bには、円周等配位置に複数のハブボルト3eが設けられている。また、ハブ輪3には、外輪2のアウター側の外側軌道面2eに対向するようにアウター側の内側軌道面3cが設けられている。また、ハブ輪3には、車輪取り付けフランジ3bの基部側にアウター側シール部材9のリップ摺動面3dが形成されている。ハブ輪3には、小径段部3aに内輪4が設けられている。
内輪4は、転動列であって車載時に車体側に配置されるインナー側ボール列5aと車載時に車輪側に配置されるアウター側ボール列5bとに予圧を与えるものである。内輪4は、例えばSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼から構成され、ズブ焼入れにより芯部まで58〜64HRCの範囲で硬化処理されている。内輪4の外周面には、周方向に環状の内側軌道面4aが形成されている。内輪4は、圧入および加締加工によりハブ輪3の小径段部3aに固定されている。つまり、ハブ輪3のインナー側には、内輪4によって内側軌道面4aが構成されている。ハブ輪3は、インナー側端部の内輪4の内側軌道面4aが外輪2のインナー側の外側軌道面2dに対向している。
転動列であるインナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとは、転動体である複数のボール5が保持器10によって環状に保持されている。インナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとは、例えばSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼から構成され、ズブ焼入れにより芯部まで62〜67HRCの範囲で硬化処理されている。インナー側ボール列5aは、内輪4の内側軌道面4aと、外輪2のインナー側の外側軌道面2dとの間に転動自在に挟まれている。アウター側ボール列5bは、ハブ輪3の内側軌道面3cと、外輪2のアウター側の外側軌道面2eとの間に転動自在に挟まれている。
車輪用軸受装置1は、外輪2とハブ輪3と内輪4とインナー側ボール列5aとアウター側ボール列5bとから複列アンギュラ玉軸受が構成されている。なお、本実施形態において、車輪用軸受装置1には、複列アンギュラ玉軸受が構成されているが、複列円錐ころ軸受等の軸受で構成されていてもよい。
エンコーダリング6は、フェライト等の磁性紛体が混入された合成ゴムが環状に形成され、周方向に等ピッチで磁極Nと磁極Sとに着磁されたものである。エンコーダリング6は、支持環6aを介して内輪4の外周面に支持されている。支持環6aは、インナー側端部が径方向外側に向かって屈曲された折り曲げ部を有する円筒状部材である。支持環6aは、防錆性の向上と検出精度の安定性の向上のため強磁性体の鋼板、例えば、フェライト系のステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS430系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成されている。支持環6aの折り曲げ部には、例えば加硫接着によってエンコーダリング6が固着されている。支持環6aのアウター側端部には、内輪4が圧入されている。これにより、エンコーダリング6は、内輪4と一体で回転する。
図3に示すように、カバー7は、外輪2のインナー側開口部2a(図2(a)参照)を塞いで外部から泥水等の異物の入り込みを防止し、エンコーダリング6を保護するものである。カバー7は、プレス加工によって形成されている。カバー7の軸方向アウター側は、開口している。カバー7の軸方向インナー側には、底面が形成されている。カバー7は、例えばフェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)やオーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)から構成されている。カバー7は、嵌合部7a、段部7b、シール支持部7c、遮蔽部7dおよび底部7eが一体に連結されたものである。
カバー7の円筒部分には、嵌合部7aとシール支持部7cとが同一軸心上に形成されている。嵌合部7aは、外輪2のカバー嵌合部2cに嵌合される。嵌合部7aは、カバー7の開口側端部に形成されている。嵌合部7aは、外輪2のインナー側シール嵌合部2bの内径よりも小さく、カバー嵌合部2cの内径よりも大きい外径に形成されている。つまり、嵌合部7aは、インナー側シール嵌合部2bに接触することなく、カバー嵌合部2cに圧入嵌合可能な外径および軸方向長さを有している。
シール支持部7cは、インナー側シール部材8を支持する。シール支持部7cの外周面は、外輪2のインナー側シール嵌合部2bの内周面と平行になるように形成されている。シール支持部7cは、段部7bを介して、嵌合部7aのインナー側に隣接して配置されている。カバー7は、外周面のうち任意の位置から軸方向のインナー側に嵌合部7aよりも小さい外径のシール支持部7cを有している。これにより、シール支持部7cは、カバー嵌合部2cの内周面との間にインナー側シール部材8を配置可能な空間を構成している。
遮蔽部7dと底部7eは、カバー7の底面を構成している。遮蔽部7dは、シール支持部7cのインナー側端部から径方向内側に延びる円環状に形成され、エンコーダリング6に僅かな軸方向すきまを介して対峙している。底部7eは、遮蔽部7dの内周縁からインナー側に突出しつつ、外輪2のインナー側開口部2aを覆っている。
環状のインナー側シール部材8は、外輪2とカバー7との間の隙間を塞ぐものである。インナー側シール部材8は、カバー7のシール支持部7cの外周面に、例えば加硫接着により固着されている。つまり、インナー側シール部材8は、嵌合部7aと隣接するようにして設けられている。インナー側シール部材8は、例えばNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムから構成されている。
インナー側シール部材8は、外輪2のインナー側シール嵌合部2bの内径よりも大きい外径に形成されている。インナー側シール部材8には、帯状部8aとシールリップ8bとが形成されている。帯状部8aは、外周面のうち所定の軸方向幅の範囲が嵌合部7aの外径よりも径方向外側に突出している。シールリップ8bは、インナー側シール部材8のインナー側部分からインナー側かつ径方向外側に向かって延びている。
インナー側シール部材8は、カバー7の嵌合部7aが外輪2のカバー嵌合部2cに嵌合された際、インナー側シール嵌合部2bの内周面に密着するように構成されている。嵌合部7aは、カバー嵌合部2cよりも大きいインナー側シール嵌合部2bの内周面に接触することなくカバー嵌合部2cに嵌合される。また、インナー側シール部材8は嵌合時に、帯状部8aとシールリップ8bとがインナー側シール嵌合部2bに弾性変形して圧着されることで、外輪2とカバー7との隙間を塞いでいる。なお、インナー側シール部材8は、インナー側シール嵌合部2bの内周面に密着するように構成されているが、カバー嵌合部2cの内周面に密着するように構成してもよい。
アウター側シール部材9は、主に外輪2とハブ輪3との隙間を塞ぐものである。アウター側シール部材9は、略円筒状に形成された芯金に、例えばNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)等の合成ゴムからなる複数のシールリップが加硫接着されている。アウター側シール部材9は、外輪2のアウター側開口部2gに円筒部分が嵌合され、ハブ輪3のリップ摺動面3dに複数のシールリップが油膜を介して接触または近接することでハブ輪3に対して摺動可能に構成されている。
車輪用軸受装置1では、カバー7の遮蔽部7dを介してエンコーダリング6に対峙している磁気センサ12によってエンコーダリング6の磁性が検出される。磁気センサ12は、エンコーダリング6から所定のエアギャップ(軸方向すきま)になるように車体側に保持されている。磁気センサ12は、ハブ輪3と一体的に回転することにより交互に検出面を通過するエンコーダリング6の各磁性の通過時間を検出する。これにより、車輪用軸受装置1は、センサホルダに取り付けられる磁気センサ12をエンコーダリング6に対して適切な位置で容易に保持することができる。なお、車輪用軸受装置1は、外輪2のインナー側開口部2aにセンサホルダ嵌合部を設け、磁気センサ12のセンサホルダを嵌合させる構成でもよい。
次に、図3から図6を用いて、車輪用軸受装置1における軸受内部空間の圧力の調整について説明する。車輪用軸受装置1では、外輪2のカバー嵌合部2cに設けられているカバー7の位置決め手段である円周溝とカバー7とによって軸受内部の圧力が環境に応じた所望の圧力に設定される。ここで、車輪用軸受装置1における「環境に応じた所望の圧力」とは、車輪用軸受装置1が組み立てられる地域の大気圧と車輪用軸受装置1が使用される地域の大気圧が異なる場合に、軸受内部の圧力と使用される地域の圧力との圧力差によってアウター側シール部材9のシール性が低下したり、ハブ輪3(内輪4)の回転抵抗が増大したりしないように調整された軸受内部の圧力を言う。また、車輪用軸受装置1が組み立てられる地域と使用される地域との大気圧の差が小さくても、組み立てられる地域の温度と使用される地域の温度との温度差に応じて調整された軸受内部の圧力を含む。
図3に示すように、カバー嵌合部2cである外輪2の内周面には、カバー7の位置決め手段である複数の円周溝として、インナー側から順に常圧嵌合位置用溝2h、中圧嵌合位置用溝2iおよび高圧嵌合位置用溝2jが軸方向に所定の間隔を開けて形成されている。常圧嵌合位置用溝2hは、カバー7の常圧嵌合位置Bを規定し、中圧嵌合位置用溝2iは、カバー7の中圧嵌合位置Cを規定し、高圧嵌合位置用溝2jは、カバー7の高圧嵌合位置Dを規定する。常圧嵌合位置Bは、カバー7の嵌合によって上昇する車輪用軸受装置1の軸受内部の圧力を外部の大気圧に近似する所定値(以下、単に「常圧基準値」と記す)以下に設定する位置である。中圧嵌合位置Cは、嵌合によって上昇する車輪用軸受装置1の軸受内部の圧力を常圧基準値よりも高い所定値の範囲(以下、単に「中圧下限値から中圧上限値」と記す)に設定するものである。高圧嵌合位置用溝2jは、嵌合によって上昇する車輪用軸受装置1の軸受内部の圧力を中圧上限値よりも高い所定値の範囲(以下、単に「高圧下限値から高圧上限値」と記す)に設定するものである。
常圧嵌合位置用溝2h、中圧嵌合位置用溝2iおよび高圧嵌合位置用溝2jは、外輪2の軸に対して垂直な仮想面とカバー嵌合部2cである外輪2の内周面との交線上に円環状に形成されている。常圧嵌合位置用溝2h、中圧嵌合位置用溝2iおよび高圧嵌合位置用溝2jの溝形状は、溝方向の断面視で矩形状になるように形成されている。なお、本実施形態において、車輪用軸受装置1には、三つの円周溝が形成されているがこれに限定するものではない。
カバー7の嵌合部7aのアウター側端部には、複数のかえり7fが形成されている。かえり7fは、嵌合部7aのアウター側端の一部を塑性変形させて径方向外側に突出させた突出部である。かえり7fは、外輪2の常圧嵌合位置用溝2h,中圧嵌合位置用溝2i,高圧嵌合位置用溝2jと係合する。複数のかえり7fは、少なくとも二つ形成され、嵌合部7aのアウター側端部に等配されている。かえり7fは、嵌合部7aのアウター側端からインナー側に向かうにつれて径方向外側に突出するテーパ状に形成されている。かえり7fのアウター側端は、嵌合部7aの外周面よりも径方向内側に形成されている。かえり7fのインナー側端は、嵌合部7aの外周面よりも径方向外側に突出し、かつ外輪2のインナー側シール嵌合部2bの内周面に接触しないように形成されている。なお、かえり7fは、嵌合部7aのアウター側端の全周に亘って形成されていてもよい。
同様に、内輪4の外周面には、エンコーダリング6の位置決め手段である複数の円周溝として、インナー側から順に常圧嵌合位置用溝4b、中圧嵌合位置用溝4cおよび高圧嵌合位置用溝4dが形成されている。常圧嵌合位置用溝4b、中圧嵌合位置用溝4cおよび高圧嵌合位置用溝4dは、外輪2のカバー嵌合部2cに形成されている常圧嵌合位置用溝2h、中圧嵌合位置用溝2iおよび高圧嵌合位置用溝2jの間隔と同一の間隔で軸方向に形成されている。常圧嵌合位置用溝4b、中圧嵌合位置用溝4cおよび高圧嵌合位置用溝4dは、内輪4の軸に対して垂直な仮想面と内輪4の外周面との交線上に円環状に形成されている。常圧嵌合位置用溝4b、中圧嵌合位置用溝4cおよび高圧嵌合位置用溝4dの溝形状は、溝方向の断面視で矩形状になるように形成されている。
エンコーダリング6の支持環6aのアウター側端部には、複数のかえり6bが形成されている。かえり6bは、支持環6aのアウター側端の一部を塑性変形させて径方向外側に突出させた突出部である。かえり6bは、内輪4の常圧嵌合位置用溝4b,中圧嵌合位置用溝4c,高圧嵌合位置用溝4dと係合する。複数のかえり6bは、少なくとも二つ形成され、支持環6aのアウター側端に等配されている。かえり6bは、支持環6aのアウター側端からインナー側に向かうにつれて径方向内側に突出するテーパ状に形成されている。かえり6bのアウター側端は、支持環6aの内周面よりも径方向内側に形成されている。かえり6bのインナー側端は、支持環6aの内周面よりも径方向内側に突出している。
図4(a)に示すように、外輪2にカバー7を嵌合する際、カバー7は、嵌合部7aのアウター側端から外輪2のインナー側シール嵌合部2bに挿入される。このとき、かえり7fは、インナー側シール嵌合部2bの内周面に接触することなくインナー側シール嵌合部2bを通過する。嵌合部7aのアウター側端がカバー嵌合部2cに到達すると、カバー7のインナー側シール部材8がインナー側シール嵌合部2bに嵌合される(初期嵌合位置A)。
図4(b)に示すように、嵌合部7aがカバー嵌合部2cに挿入されると、かえり7fは、カバー嵌合部2cの内周面に押されて径方向内側に弾性変形される。かえり7fは、カバー嵌合部2cの常圧嵌合位置用溝2hと径方向視で重複する位置で径方向外側に広がり、常圧嵌合位置用溝2hに係合する(引っかかる)。これにより、カバー7は、カバー嵌合部2cの常圧嵌合位置Bで嵌合される。カバー7は、かえり7fによりインナー側への移動が制限される(図3参照)。
図5に示すように、カバー7は、さらにアウター側に向かって挿入されると、かえり7fが常圧嵌合位置用溝2hから抜けてカバー嵌合部2cの内周面によって径方向内側に弾性変形される。かえり7fは、カバー嵌合部2cの中圧嵌合位置用溝2iと径方向視で重複する位置で径方向外側に広がり、中圧嵌合位置用溝2iに係合する(引っかかる)。これにより、カバー7は、カバー嵌合部2cの中圧嵌合位置Cに嵌合されるとともに、かえり7fによりインナー側への移動が制限される。
図6に示すように、カバー7は、さらにアウター側に向かって挿入されると、かえり7fが中圧嵌合位置用溝2iから抜けて高圧嵌合位置用溝2jと径方向視で重複する位置で径方向外側に広がり、高圧嵌合位置用溝2jに係合する(引っかかる)。これにより、カバー7は、カバー嵌合部2cの高圧嵌合位置Dに嵌合されるとともに、かえり7fによりインナー側への移動が制限される。
また、車輪用軸受装置1では、カバー7の嵌合位置に応じて、カバー7の遮蔽部7dと僅かな軸方向すきまを介して対峙しているエンコーダリング6の嵌合位置が変更される。
図3に示すように、カバー7が常圧嵌合位置Bで嵌合されている場合、エンコーダリング6は、かえり6bが内輪4の常圧嵌合位置用溝4bに引っかかる位置で嵌合される。
同様にして、図5に示すように、カバー7が中圧嵌合位置Cに嵌合されている場合、エンコーダリング6は、内輪4の中圧嵌合位置用溝4cに引っかかる位置で嵌合される。図6に示すように、カバー7が高圧嵌合位置Dに嵌合されている場合、エンコーダリング6は、内輪4の高圧嵌合位置用溝4dに引っかかる位置で嵌合される。これにより、エンコーダリング6は、カバー7の嵌合位置が変更されても、遮蔽部7dとの僅かな軸方向すきまを維持することができる。
図3に示すように、カバー7が常圧嵌合位置Bで嵌合されている場合、エンコーダリング6は、かえり6bが内輪4の常圧嵌合位置用溝4bに引っかかる位置で嵌合される。
同様にして、図5に示すように、カバー7が中圧嵌合位置Cに嵌合されている場合、エンコーダリング6は、内輪4の中圧嵌合位置用溝4cに引っかかる位置で嵌合される。図6に示すように、カバー7が高圧嵌合位置Dに嵌合されている場合、エンコーダリング6は、内輪4の高圧嵌合位置用溝4dに引っかかる位置で嵌合される。これにより、エンコーダリング6は、カバー7の嵌合位置が変更されても、遮蔽部7dとの僅かな軸方向すきまを維持することができる。
図3に示すように、カバー7が常圧嵌合位置Bに嵌合されることで、カバー7、外輪2、ハブ輪3、内輪4およびアウター側シール部材9で囲まれている軸受内部空間が常圧基準値以下の圧力である密閉空間Sbとして構成される。図5に示すように、カバー7が中圧嵌合位置Cに嵌合されることで中圧下限値から中圧上限値の範囲の圧力である密閉空間Scが構成される。図6に示すように、車輪用軸受装置1は、カバー7が高圧嵌合位置Dに嵌合されることで高圧下限値から高圧上限値の範囲の圧力である密閉空間Sdが構成される。
図5に示すように、中圧嵌合位置Cにカバー7が嵌合されている場合の密閉空間Scの容積は、常圧嵌合位置Bにカバー7が嵌合されている場合の密閉空間Sbの容積に比べて、カバー7の軸方向視での投影面積と中圧嵌合位置用溝4cから常圧嵌合位置用溝4bまでの間隔との積だけ小さい。図6に示すように、高圧嵌合位置Dにカバー7が嵌合されている場合の密閉空間Sdの容積は、常圧嵌合位置Bにカバー7が嵌合されている場合の密閉空間Sbの容積に比べて、カバー7の軸方向視での投影面積と高圧嵌合位置用溝4dから常圧嵌合位置用溝4bまでの間隔との積だけ小さい。
カバー7が中圧嵌合位置Cまた高圧嵌合位置Dに嵌合されることで、密閉空間Sbから密閉空間Scまたは密閉空間Sdに圧縮される。車輪用軸受装置1の中圧嵌合位置Cまた高圧嵌合位置Dにカバー7が嵌合されている場合の軸受内部の圧力は、ボイルの法則に基づいて圧縮された容積の割合が大きいほど高くなる。このように、カバー7の嵌合位置を変更することで、密閉空間Sb、密閉空間Scおよび密閉空間Sdの圧力をそれぞれ異なる圧力に設定することができる。なお、本実施形態において、カバー7の嵌合位置は、常圧嵌合位置B、中圧嵌合位置Cおよび高圧嵌合位置Dから構成されているが、これに限らず、複数の嵌合位置が設定されていればよい。
次に、図7を用いて、例えば大気圧が略1気圧である標高(例えば標高100m未満)の地域で車輪用軸受装置1が組み立てられる場合と、例えば大気圧が1気圧よりも低い標高(例えば標高3000m)の地域で車輪用軸受装置1が組み立てられる場合におけるカバー7による軸受内部の圧力の設定について具体的に説明する。本実施形態において、車輪用軸受装置1は、主に大気圧が略1気圧である標高(例えば標高100m未満)の地域で走行する車両に搭載されるものとする。すなわち、軸受内部の圧力が使用される地域の大気圧と同じ略1気圧になるように組み立てることで、使用時にアウター側シール部材9のシールリップを摺動面に押さえつける力や、摺動面から離間させる力の発生を抑制することができる。
図7(a)に示すように、大気圧が略1気圧である標高の地域で車輪用軸受装置1が組み立てられる場合、車輪用軸受装置1が組み立てられる地域と使用される地域との大気圧が略同一であるため、車輪用軸受装置1は、カバー7の嵌合によって軸受内部の圧力が大きく高まらないように組み立てを行う必要がある。従って、大気圧が略1気圧である標高の地域で組み立てられる車輪用軸受装置1には、嵌合による軸受内部の圧力上昇が常圧基準値以下になる常圧嵌合位置Bにカバー7が嵌合される。
図7(b)に示すように、大気圧が1気圧よりも低い標高(例えば標高3000m)の地域で車輪用軸受装置1が組み立てられる場合、車輪用軸受装置1が組み立てられる地域の大気圧が使用される地域の大気圧よりも低いため、車輪用軸受装置1は、カバー7の嵌合によって軸受内部の圧力が所定の範囲内まで高くなるように組み立てを行う必要がある。従って、大気圧が1気圧よりも低い標高の地域で組み立てられる車輪用軸受装置1には、嵌合による軸受内部の圧力上昇が高圧下限値以上、高圧上限値以下になる高圧嵌合位置Dにカバー7が嵌合される。
さらに、使用される地域の温度よりも低い温度の地域で車輪用軸受装置1が組み立てられる場合、車輪用軸受装置1が組み立てられる地域の大気密度は、車輪用軸受装置1が使用される地域の大気密度よりも高い。または、使用される地域と組み立てられる地域が同一の地域環境において、組み立て時の温度が平均気温よりも低い温度の場合、車輪用軸受装置1が組み立てられる時期の大気密度は、他の時期の大気密度よりも高い。車輪用軸受装置1は、カバー7の嵌合によって軸受内部の圧力が大きく高まらないように組み立てを行う必要がある。従って、使用される地域の温度よりも低い温度の地域または低い温度の時期に組み立てられる車輪用軸受装置1には、嵌合による軸受内部の圧力上昇が常圧基準値以下になる常圧嵌合位置Bにカバー7が嵌合される。
さらに、使用される地域の温度よりも高い温度の地域で車輪用軸受装置1が組み立てられる場合、車輪用軸受装置1が組み立てられる地域の大気密度が使用される地域の大気密度よりも低い。または、使用される地域と組み立てられる地域が同一の地域環境において、組み立て時の温度が平均気温よりも高い温度の場合、車輪用軸受装置1が組み立てられる時期の大気密度が他の時期の大気密度よりも低い。車輪用軸受装置1は、カバー7の嵌合によって軸受内部の圧力が所定の範囲内まで高くなるように組み立てを行う必要がある。従って、使用される地域の温度よりも高い温度の地域または高い温度の時期に組み立てられる車輪用軸受装置1には、嵌合による軸受内部の圧力上昇が高圧下限値以上、高圧上限値以下になる高圧嵌合位置Dにカバー7が嵌合される。
これにより、車輪用軸受装置1は、使用地域の大気圧に応じて、常圧嵌合位置B、中圧嵌合位置Cおよび高圧嵌合位置Dのうちいずれかの嵌合位置に嵌合されることで軸受内部の圧力と使用地域での大気圧との圧力差が許容値内に収まり、シール部材のシールリップを摺動面に押さえつける力や、摺動面から離間させる力によるシールリップの摩耗や回転トルクの上昇が抑制される。
このように構成することで、車輪用軸受装置1は、組立てが行われる環境に応じてカバー7を所望の嵌合位置に嵌合させることで軸受内部の容積が管理される。つまり、車輪用軸受装置1は、全体の大きさやカバー7が嵌合される外輪2の形状を変更することなく軸受内部の圧力が車輪用軸受装置1の組立て地域の環境および使用地域の環境に基づいた所望の圧力に設定される。また、カバー7は、かえり7fが円周溝に引っかかることで抜け耐力が増大されるので、カバー嵌合部2cに対するカバー7の嵌合量が少なくても気密性が維持される。これにより、車輪用軸受装置1は、気密性を低下させることなく軸受内部の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制し、圧力差によるシールリップの摩耗や回転トルクの上昇を防止することができる。
次に、図8を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第二実施形態である車輪用軸受装置1Aについて説明する。なお、以下の各実施形態に係る車輪用軸受装置1は、図1から図7に示す車輪用軸受装置1において、車輪用軸受装置1に替えて適用されるものとして、その説明で用いた名称、図番、符号を用いることで、同じものを指すこととし、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
図8に示すように、カバー嵌合部2cには、位置決め手段として複数のピン11が設けられている。複数のピン11は、カバー嵌合部2cから径方向内側に突出している。複数のピン11は、カバー嵌合部2cの周方向に等配されている。本実施形態において、車輪用軸受装置1には、四本のピン11が周方向に等配されている。
嵌合部7aのアウター側端部には、カバー7の位置決め手段である複数の切欠きとして、常圧嵌合位置用切欠き7k、中圧嵌合位置用切欠き7lおよび高圧嵌合位置用切欠き7mが周方向に所定の間隔で形成されている。常圧嵌合位置用切欠き7k、中圧嵌合位置用切欠き7lおよび高圧嵌合位置用切欠き7mは、外輪2の四本のピン11と対向する位置にそれぞれ四か所ずつ形成されている。中圧嵌合位置用切欠き7lのインナー側端(底部7e側端)は、常圧嵌合位置用切欠き7kのインナー側端から軸方向インナー側に所定の長さだけ離れた位置に形成されている。高圧嵌合位置用切欠き7mのインナー側端は、中圧嵌合位置用切欠き7lのインナー側端から軸方向インナー側に所定の長さだけ離れた位置に形成されている。常圧嵌合位置用切欠き7k、中圧嵌合位置用切欠き7lおよび高圧嵌合位置用切欠き7mの形状は、ピン11を挿入可能な所定の幅の溝状に形成されているがこれに限定するものではない。
外輪2の常圧嵌合位置Bにカバー7を嵌合する際、カバー7は、嵌合部7aの常圧嵌合位置用切欠き7kとカバー嵌合部2cのピン11とが軸方向視で重複する周方向位置で、嵌合部7aのアウター側端から外輪2のインナー側シール嵌合部2bに挿入される。嵌合部7aがカバー嵌合部2cに挿入されると、常圧嵌合位置用切欠き7kにピン11が挿入されて係合する。カバー7は、常圧嵌合位置用切欠き7kのインナー側端にピン11が接触することで、カバー嵌合部2cの常圧嵌合位置Bで嵌合される。
同様にして、外輪2の中圧嵌合位置Cにカバー7を嵌合する際、カバー7は、嵌合部7aの中常圧嵌合位置用切欠き7kとカバー嵌合部2cのピン11とが軸方向視で重複する状態で、嵌合部7aのアウター側端から外輪2のインナー側シール嵌合部2bに挿入される。カバー7は、中圧嵌合位置用切欠き7lのインナー側端にピン11が接触することで、カバー嵌合部2cの中圧嵌合位置Cで嵌合される。外輪2の高圧嵌合位置Dにカバー7を嵌合する際、カバー7は、嵌合部7aの高常圧嵌合位置用切欠き7kとカバー嵌合部2cのピン11とが軸方向視で重複する状態で、嵌合部7aのアウター側端から外輪2のインナー側シール嵌合部2bに挿入される。カバー7は、高圧嵌合位置用切欠き7mのインナー側端にピン11が接触することで、カバー嵌合部2cの高圧嵌合位置Dで嵌合される。
このように構成することで、車輪用軸受装置1は、組立てが行われる環境に応じてカバーを所望の嵌合位置に嵌合させることで軸受内部の容積が管理される。つまり、車輪用軸受装置1は、全体の大きさやカバー7が嵌合される外輪2の形状を変更することなくカバー7の嵌合時の周方向位置によって軸受内部の圧力が車輪用軸受装置1の組立て地域の環境および使用地域の環境に基づいた所望の圧力に設定される。これにより、気密性を低下させることなく、軸受内部の圧力と外部の圧力との圧力差を許容範囲内に抑制することができる。
本願における車輪用軸受装置1は、内方部材として一つの内輪4が嵌合されたハブ輪3を備え、外方部材である外輪2と内方部材である内輪4とハブ輪3の嵌合体で構成された内輪回転仕様の第3世代構造としているが、外方部材である外輪2と内方部材である一対の内輪4とで構成され、この一対の内輪4がハブ輪3の外周に嵌合される内輪回転仕様の第2世代構造であってもよい。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 車輪用軸受装置
2 外輪
2a インナー側開口部
2b インナー側シール嵌合部
2c カバー嵌合部
3 ハブ輪
3a 小径段部
4 内輪
5a インナー側ボール列
5b アウター側ボール列
7 カバー
9 アウター側シール部材
Sb、Sc、Sd 密閉空間
B 常圧嵌合位置
C 中圧嵌合位置
D 高圧嵌合位置
2 外輪
2a インナー側開口部
2b インナー側シール嵌合部
2c カバー嵌合部
3 ハブ輪
3a 小径段部
4 内輪
5a インナー側ボール列
5b アウター側ボール列
7 カバー
9 アウター側シール部材
Sb、Sc、Sd 密閉空間
B 常圧嵌合位置
C 中圧嵌合位置
D 高圧嵌合位置
Claims (6)
- 内周に形成された複列の外側軌道面と、インナー側開口部にカバー嵌合部とを有する外方部材と、
外周に小径段部が形成されたハブ輪、および前記ハブ輪の小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪を有し、前記ハブ輪と前記内輪との外周面に、前記複列の外側軌道面に対向する複列の内側軌道面が形成された内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材との両軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記カバー嵌合部に嵌合され、前記インナー側開口部を密封するカバーと、
前記外方部材のアウター側開口部に嵌合され、前記外方部材と前記内方部材との間をシールするアウター側シール部材と、を備えた車輪用軸受装置において、
前記カバー嵌合部は、軸受内部空間の圧力をそれぞれ異なる圧力に設定する複数のカバー嵌合位置のうち一のカバー嵌合位置に前記カバーを配置させる位置決め手段を有する車輪用軸受装置。 - 前記位置決め手段が、カバー嵌合部に設けられる複数の円周溝である請求項1に記載の車輪用軸受装置。
- 前記カバーには、前記円周溝に係合し、軸方向インナー側への移動を制限するかえりが設けられている請求項2に記載の車輪用軸受装置。
- 前記位置決め手段が、前記カバー嵌合部に設けられるピンである請求項1に記載の車輪用軸受装置。
- 前記カバーには、前記ピンに係合し、軸方向アウター側への移動を制限する軸方向長さの異なる複数の切欠き部が設けられている請求項4に記載の車輪用軸受装置。
- エンコーダリングを更に備え、
前記内輪に複数の円周溝が設けられ、
前記エンコーダリングには、前記内輪の円周溝に係合し、軸方向インナー側への移動を制限するかえりが設けられている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2018062854A JP2019173878A (ja) | 2018-03-28 | 2018-03-28 | 車輪用軸受装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2020153417A1 (ja) * | 2019-01-25 | 2020-07-30 | Ntn株式会社 | 車輪用軸受装置の製造方法および車輪用軸受装置 |
-
2018
- 2018-03-28 JP JP2018062854A patent/JP2019173878A/ja active Pending
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WO2020153417A1 (ja) * | 2019-01-25 | 2020-07-30 | Ntn株式会社 | 車輪用軸受装置の製造方法および車輪用軸受装置 |
JP2020118258A (ja) * | 2019-01-25 | 2020-08-06 | Ntn株式会社 | 車輪用軸受装置の製造方法および車輪用軸受装置 |
JP7330707B2 (ja) | 2019-01-25 | 2023-08-22 | Ntn株式会社 | 車輪用軸受装置の製造方法 |
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