JP2008025644A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シールの密封性と耐久性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】シール8が、外方部材10の端部に内嵌される嵌合部15a、およびこの嵌合部15aから屈曲して形成され、径方向内方に延びる内側部15bを有する芯金15と、この芯金15に一体に接合され、複数のサイドリップ16a、16bを有するシール部材16とからなると共に、車輪取付フランジ4の基部17が断面円弧状の曲面に形成され、この基部17に複数のサイドリップ16a、16bが所定のシメシロを介して摺接する車輪用軸受装置において、芯金15の内側部15bの内端縁15cが基部17の曲面の接線方向に沿った傾斜角αを持ち、内端縁15cにシール部材16が回り込んで固着されると共に、所定の径方向隙間を介して基部17に対峙し、この基部17との間でラビリンスシール18が構成されている。
【選択図】図2
【解決手段】シール8が、外方部材10の端部に内嵌される嵌合部15a、およびこの嵌合部15aから屈曲して形成され、径方向内方に延びる内側部15bを有する芯金15と、この芯金15に一体に接合され、複数のサイドリップ16a、16bを有するシール部材16とからなると共に、車輪取付フランジ4の基部17が断面円弧状の曲面に形成され、この基部17に複数のサイドリップ16a、16bが所定のシメシロを介して摺接する車輪用軸受装置において、芯金15の内側部15bの内端縁15cが基部17の曲面の接線方向に沿った傾斜角αを持ち、内端縁15cにシール部材16が回り込んで固着されると共に、所定の径方向隙間を介して基部17に対峙し、この基部17との間でラビリンスシール18が構成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、自動車等の車輪を懸架装置に対して回転自在に支承する車輪用軸受装置に関し、詳しくは、軸受部に装着されたシールの密封性と耐久性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置に関するものである。
従来から自動車等の車輪を支持する車輪用軸受装置は、車輪を取り付けるためのハブ輪を複列の転がり軸受を介して回転自在に支承するもので、駆動輪用と従動輪用とがある。構造上の理由から、駆動輪用では内輪回転方式が、従動輪用では内輪回転と外輪回転の両方式が一般的に採用されている。また、車輪用軸受装置には、懸架装置を構成するナックルとハブ輪との間に複列アンギュラ玉軸受等からなる車輪用軸受を嵌合させた第1世代と称される構造から、外方部材の外周に直接車体取付フランジまたは車輪取付フランジが形成された第2世代構造、また、ハブ輪の外周に一方の内側転走面が直接形成された第3世代構造、あるいは、ハブ輪と等速自在継手の外側継手部材の外周にそれぞれ内側転走面が直接形成された第4世代構造とに大別されている。
これらの軸受部には、軸受内部に封入されたグリースの漏れを防止すると共に、外部から雨水やダスト等の侵入を防止するためにシールが装着されている。近年、自動車のメンテナンスフリー化が進み、車輪用軸受装置においてもさらなる長寿命化が要求されるようになっているが、市場回収品の軸受損傷状況を検証すると、剥離等の本来の軸受寿命よりも、シール不具合による損傷が多くを占めている。したがって、シールの密封性と耐久性を高めることにより、軸受寿命の向上を図ることができる。
従来から、密封性を高めたシールに関しては種々提案されているが、こうしたシールの一例を図4に示す。シール50は、内周に外側転走面51aが形成された外輪51と、この外側転走面51aに対向する内側転走面52aが形成されたハブ輪52との間に装着され、外輪51の内周面とハブ輪52の外周面との間に存在する外端開口部を塞いでいる。このシール50は、外輪51の内周面に圧入された軟鋼板等の金属板製の芯金53と、この芯金53に接合され、ゴムの如きエラストマー等の弾性材製のシール材54とからなる。このシール材54は、互いに同心の3本のシールリップ、すなわち、サイドリップ55と、ダストリップ56と、グリースリップ57とを備えている。
これら3本のシールリップのうち、最も外径側に設けられたサイドリップ55は、先端縁に向う程径方向外方に位置する方向に傾斜したもので、その先端縁はハブ輪52の外周面に設けられた車輪取付フランジ58の内側面内径寄り部分に、全周に亙ってシメシロを持った状態で摺接している。
中間に設けられたダストリップ56は、先端縁を内部空間59と反対側に向けた状態で、車輪取付フランジ58の内側面とハブ輪52の外周面との連結部に設けられた曲面部60に、全周に亙ってシメシロを持った状態で摺接している。
さらに、最も内部空間59寄りに設けられたグリースリップ57は、先端縁をこの内部空間59に向けた状態で、ハブ輪52の外周面に近接対向してラビリンス隙間61が形成されている。このラビリンス隙間61が内部空間59の外端開口部のうち内径寄り部分に存在するため、この内部空間59内に封入されたグリースは、ハブ輪52の回転に伴って加わる遠心力により、この内部空間59の外径寄りに集まる傾向になる。
すなわち、ハブ輪52が回転すると、この内部空間59に設置されたボール62および保持器63が、このハブ輪52の回転速度の凡そ1/2の回転速度で回転し、この回転がグリースに伝わる。この結果、このグリースは内部空間59の外径寄りに集まり、ラビリンス隙間61が存在する内径寄り部分には殆どグリースが存在しない状態となる。したがって、前記グリースリップ57を径方向内方に向う程内部空間59に向う方向に傾斜させたことと相俟って、前記グリースがラビリンス隙間61を通過して内部空間59外に漏れ出すのを防止することができ、必要とするシール性能を確保しつつ、ハブ輪52の回転抵抗を低減し、車両の走行性能を向上させることができる。
特開2003−222145号公報
然しながら、こうした従来のシール50では、グリースリップ57のラビリンス隙間61によってグリース漏れを有効に防止することができるが、軸受の昇温によって内部圧力が増大した場合、グリースリップ57が内部空間59の外側に押圧されて変形し、ハブ輪52の外周面に接触して摩耗が促進される恐れがある。したがって、こうした摩耗により所望のラビリンス隙間61が確保できないばかりか、軸受冷却時にこのグリースリップ57がハブ輪52の外周面に吸着してハブ輪52の回転抵抗が大きくなり、所望のシール性能を確保できないと言った不具合が発生する恐れがあった。
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたもので、シールの密封性と耐久性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
係る目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、外周に懸架装置に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪部材からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシールとを備え、これらシールのうちアウター側のシールが、前記外方部材の端部に内嵌される円筒状の嵌合部、およびこの嵌合部から屈曲して形成され、径方向内方に延びる内側部を有する芯金と、この芯金に一体に接合され、複数のサイドリップを有するシール部材とからなると共に、前記車輪取付フランジの基部が断面円弧状の曲面に形成され、この基部に前記複数のサイドリップが所定のシメシロを介して摺接する車輪用軸受装置において、前記芯金の内側部の内端縁が所定の径方向隙間を介して前記基部に対峙し、この基部との間でラビリンスシールが構成されている。
このように、アウター側のシールが、外方部材の端部に内嵌される円筒状の嵌合部、およびこの嵌合部から屈曲して形成され、径方向内方に延びる内側部を有する芯金と、この芯金に一体に接合され、複数のサイドリップを有するシール部材とからなると共に、車輪取付フランジの基部が断面円弧状の曲面に形成され、この基部に複数のサイドリップが所定のシメシロを介して摺接する車輪用軸受装置において、芯金の内側部の内端縁が所定の径方向隙間を介して基部に対峙し、この基部との間でラビリンスシールが構成されているので、軸受の昇温によって内部圧力が増大した場合においても、ラビリンスシールが変形することはなく、また、軸受冷却時にこのラビリンスシールが基部に吸着することもなく、所定の隙間を常に確保することができる。したがって、ハブ輪の回転トルクを低減させると共に、所望のシール性能を確保でき、シールの密封性と耐久性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
また、請求項2に記載の発明のように、前記内端縁が垂直に径方向内方に延びていても良いし、また、請求項3に記載の発明のように、前記内端縁が軸受内部側に屈曲して形成されていても良い。
また、請求項4に記載の発明のように、前記内端縁が前記基部の曲面の接線方向に沿った傾斜角を持っていれば、ラビリンスシールの径方向隙間を充分小さく設定することが可能となり、グリースの流出を一層防止することができる。
また、請求項5に記載の発明のように、前記シール部材が前記内端縁に回り込んで固着されていれば、径方向隙間を精度良く設定することができ、ラビリンスシールの径方向隙間を充分小さく設定することができる。
本発明に係る車輪用軸受装置は、外周に懸架装置に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪部材からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシールとを備え、これらシールのうちアウター側のシールが、前記外方部材の端部に内嵌される円筒状の嵌合部、およびこの嵌合部から屈曲して形成され、径方向内方に延びる内側部を有する芯金と、この芯金に一体に接合され、複数のサイドリップを有するシール部材とからなると共に、前記車輪取付フランジの基部が断面円弧状の曲面に形成され、この基部に前記複数のサイドリップが所定のシメシロを介して摺接する車輪用軸受装置において、前記芯金の内側部の内端縁が所定の径方向隙間を介して前記基部に対峙し、この基部との間でラビリンスシールが構成されているので、軸受の昇温によって内部圧力が増大した場合においても、ラビリンスシールが変形することはなく、また、軸受冷却時にこのラビリンスシールが基部に吸着することもなく、所定の隙間を常に確保することができる。したがって、ハブ輪の回転トルクを低減させると共に、所望のシール性能を確保でき、シールの密封性と耐久性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
外周に懸架装置に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に圧入され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪からなる内方部材と、この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシールとを備え、これらシールのうちアウター側のシールが、前記外方部材の端部に内嵌される円筒状の嵌合部、およびこの嵌合部から屈曲して形成され、径方向内方に延びる内側部を有する芯金と、この芯金に一体に接合され、複数のサイドリップを有するシール部材とからなると共に、前記車輪取付フランジの基部が断面円弧状の曲面に形成され、この基部に前記複数のサイドリップが所定のシメシロを介して摺接する車輪用軸受装置において、前記芯金の内側部の内端縁が前記基部の曲面の接線方向に沿った傾斜角を持ち、当該内端縁に前記シール部材が回り込んで固着されると共に、所定の径方向隙間を介して前記基部に対峙し、この基部との間でラビリンスシールが構成されている。
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2(a)は、図1の要部拡大図、(b)は、(a)のA部拡大図、図3(a)は、図2の変形例を示す要部拡大図、(b)は、(a)のB部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図面左側)、中央寄り側をインナー側(図面右側)という。
図1は、本発明に係る車輪用軸受装置の一実施形態を示す縦断面図、図2(a)は、図1の要部拡大図、(b)は、(a)のA部拡大図、図3(a)は、図2の変形例を示す要部拡大図、(b)は、(a)のB部拡大図である。なお、以下の説明では、車両に組み付けた状態で車両の外側寄りとなる側をアウター側(図面左側)、中央寄り側をインナー側(図面右側)という。
この車輪用軸受装置は駆動輪用で、内方部材1と外方部材10、および両部材1、10間に転動自在に収容された複列の転動体(ボール)6、6とを備え、第3世代と称される構成をなしている。内方部材1は、ハブ輪2と、このハブ輪2に所定のシメシロを介して圧入された内輪3とからなる。
ハブ輪2は、アウター側の端部に車輪(図示せず)を取り付けるための車輪取付フランジ4を一体に有し、外周に一方(アウター側)の内側転走面2aと、この内側転走面2aから軸方向に延びる円筒状の小径段部2bが形成され、内周にはトルク伝達用のセレーション(またはスプライン)2cが形成されている。また、車輪取付フランジ4の周方向等配位置にハブボルト5が植設されている。内輪3は、外周に他方(インナー側)の内側転走面3aが形成され、ハブ輪2の小径段部2bに所定のシメシロを介して圧入固定されている。
ハブ輪2はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中炭素鋼で形成され、内側転走面2aをはじめ、後述するシール8のシールランド部となる車輪取付フランジ4の基部17から小径段部2bに亙って高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。一方、内輪3および転動体6はSUJ2等の高炭素クロム鋼で形成され、ズブ焼入れによって芯部まで58〜64HRCの範囲に硬化処理されている。
外方部材10は、外周に懸架装置を構成するナックル(図示せず)に取り付けられるための車体取付フランジ10bを一体に有し、内周に内方部材1の内側転走面2a、3aに対向する複列の外側転走面10a、10aが形成されている。これら両転走面10a、2aおよび10a、3a間には保持器7を介して複列の転動体6、6が転造自在に収容されている。この外方部材10はS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中炭素鋼で形成され、少なくとも複列の外側転走面10a、10aが、高周波焼入れによって58〜64HRCの範囲に表面が硬化処理されている。
外方部材10と内方部材1との間に形成される環状空間の開口部にはシール8、9が装着され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から雨水やダスト等が軸受内部に侵入するのを防止している。
シール8、9のうちインナー側のシール9はスリンガ11と環状のシール板12とからなる、所謂パックシールを構成している。スリンガ11は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて断面が略L字状に形成され、内輪3に外嵌される円筒部11aと、この円筒部11aから径方向外方に延びる立板部11bとからなる。
一方、シール板12はスリンガ11に対向して外方部材10に装着され、断面略L字状に形成されている。そして、外方部材10の端部に内嵌される芯金13と、この芯金13に加硫接着により一体に接合されたシール部材14とからなる。芯金13は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)からプレス加工にて形成されている。
シール部材14はゴム等の弾性部材からなり、スリンガ11の立板部11bに摺接するサイドリップ14aと、円筒部11aに摺接する一対のラジアルリップ14b、14cを有している。また、スリンガ11における立板部11bの外縁は、芯金13と僅かな径方向隙間を介して対峙しラビリンスシールを構成している。
ここで、アウター側のシール8は、図2(a)に拡大して示すように、芯金15と、この芯金15に加硫接着により一体に接合されたシール部材16とからなる。芯金15は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)等、耐食性を有する鋼板等をプレス加工にて形成され、外方部材10の端部内周に内嵌される円筒状の嵌合部15aと、この嵌合部15aから屈曲して形成され、径方向内方に延びる内側部15bとを備えている。
一方、シール部材16は、ニトリルゴム等の合成ゴムからなり、芯金15の嵌合部15aの一部から、内側部15bの内端部に亙る範囲に固着され、一対のサイドリップ16a、16bを有している。車輪取付フランジ4の基部17は断面が円弧状の曲面に形成されると共に、一対のサイドリップ16a、16bは、それぞれ異なった長さで径方向外方に傾斜して形成され、基部17に所定のシメシロをもって摺接している。
本実施形態では、図2(b)に拡大して示すように、芯金15の内端縁15cが垂直に径方向内方に延びると共に、シール部材16がこの内端縁15cに回り込んで固着され、所定の径方向隙間を介して基部17に対峙し、この基部17との間でラビリンスシール18を構成している。このラビリンスシール18により軸受内部に封入されたグリースが外部に流出するのを防止している。すなわち、このラビリンスシール18が内部空間19の内径寄り部分に存在するため、この内部空間19内に残留するグリースが、ハブ輪2の回転に伴って加わる遠心力により、この内部空間19の外径寄りに集まる傾向になり、効果的にグリースの流出を防止することができる。
ここで、内端縁15cは基部17の曲面の接線方向に沿った傾斜角αを持って形成されているため、ラビリンスシール18の径方向隙間を充分小さく設定することが可能となり、グリースの流出を一層防止することができる。なお、芯金15の内端縁15cにシール部材16が回り込んで固着されず露出する構造であっても良いが、シール部材16が回り込んで固着されている方が径方向隙間を精度良く設定することができるので好ましい。
このように、芯金15の内端縁15cによってラビリンスシール18を構成しているため、軸受の昇温によって内部圧力が増大した場合においても、ラビリンスシール18が変形することはなく、また、軸受冷却時にこのラビリンスシール18が基部17に吸着することもなく、所定の隙間を常に確保することができる。したがって、吸着によるハブ輪2の回転トルクの増加を防止すると共に、所望のシール性能を確保でき、シール8の密封性と耐久性を高めて軸受の長寿命化を図った車輪用軸受装置を提供することができる。
なお、ここでは、転動体6にボールを使用した複列アンギュラ玉軸受を例示したが、本発明はこれに限らず、転動体6に円錐ころを使用した複列円錐ころ軸受であっても良い。また、本発明に係る車輪用軸受装置は、ハブ輪2に直接内側転走面2aが形成された構造であれば、例示した第3世代構造以外に、内輪部材となる等速自在継手の外側継手部材に内側転走面が形成された第4世代構造にも適用することができる。
図3(a)は図2の変形例で、他の実施形態を示す要部拡大図である。なお、この実施形態は、前述した実施形態と芯金の構成のみが異なるだけで、その他同一部品同一部位あるいは同一機能を有する部位には同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
アウター側のシール20は、芯金21と、この芯金21に加硫接着により一体に接合されたシール部材16とからなる。芯金21は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系等)や防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系等)等、耐食性を有する鋼板等をプレス加工にて形成され、外方部材10の端部内周に内嵌される円筒状の嵌合部21aと、この嵌合部21aから屈曲して形成され、径方向内方に延びる内側部21bとを備えている。
本実施形態では、図3(b)に拡大して示すように、芯金21の内端縁21cが、基部17の曲面の接線方向に沿った傾斜角αを持って内部空間19側に屈曲して形成され、所定の径方向隙間を介して基部17に対峙してラビリンスシール22を構成している。軸方向に長く延びるこのラビリンスシール22により、前述した実施形態に比べ、軸受内部に封入されたグリースが外部に流出するのを一層効果的に防止することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る車輪用軸受装置は、内輪回転方式で、ハブ輪に内側転走面が直接形成された第3または第4世代の車輪用軸受装置に適用できる。
1・・・・・・・・・・・・内方部材
2・・・・・・・・・・・・ハブ輪
2a、3a・・・・・・・・内側転走面
2b・・・・・・・・・・・小径段部
2c・・・・・・・・・・・セレーション
3・・・・・・・・・・・・内輪
4・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
5・・・・・・・・・・・・ハブボルト
6・・・・・・・・・・・・転動体
7・・・・・・・・・・・・保持器
8、20・・・・・・・・・アウター側のシール
9・・・・・・・・・・・・インナー側のシール
10・・・・・・・・・・・外方部材
10a・・・・・・・・・・外側転走面
10b・・・・・・・・・・車体取付フランジ
11・・・・・・・・・・・スリンガ
11a・・・・・・・・・・円筒部
11b・・・・・・・・・・立板部
12・・・・・・・・・・・シール板
13、15、21・・・・・芯金
14、16・・・・・・・・シール部材
14a、16a、16b・・サイドリップ
14b、14c・・・・・・ラジアルリップ
15a、21a・・・・・・嵌合部
15b、21b・・・・・・内側部
15c、21c・・・・・・内端縁
17・・・・・・・・・・・基部
18、22・・・・・・・・ラビリンスシール
19・・・・・・・・・・・内部空間
50・・・・・・・・・・・アウター側のシール
51・・・・・・・・・・・外方部材
51a・・・・・・・・・・外側転走面
52・・・・・・・・・・・ハブ輪
52a・・・・・・・・・・内側転走面
53・・・・・・・・・・・芯金
54・・・・・・・・・・・シール材
55・・・・・・・・・・・サイドリップ
56・・・・・・・・・・・ダストリップ
57・・・・・・・・・・・グリースリップ
58・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
59・・・・・・・・・・・内部空間
60・・・・・・・・・・・曲面部
61・・・・・・・・・・・ラビリンス隙間
62・・・・・・・・・・・ボール
63・・・・・・・・・・・保持器
α・・・・・・・・・・・・傾斜角
2・・・・・・・・・・・・ハブ輪
2a、3a・・・・・・・・内側転走面
2b・・・・・・・・・・・小径段部
2c・・・・・・・・・・・セレーション
3・・・・・・・・・・・・内輪
4・・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
5・・・・・・・・・・・・ハブボルト
6・・・・・・・・・・・・転動体
7・・・・・・・・・・・・保持器
8、20・・・・・・・・・アウター側のシール
9・・・・・・・・・・・・インナー側のシール
10・・・・・・・・・・・外方部材
10a・・・・・・・・・・外側転走面
10b・・・・・・・・・・車体取付フランジ
11・・・・・・・・・・・スリンガ
11a・・・・・・・・・・円筒部
11b・・・・・・・・・・立板部
12・・・・・・・・・・・シール板
13、15、21・・・・・芯金
14、16・・・・・・・・シール部材
14a、16a、16b・・サイドリップ
14b、14c・・・・・・ラジアルリップ
15a、21a・・・・・・嵌合部
15b、21b・・・・・・内側部
15c、21c・・・・・・内端縁
17・・・・・・・・・・・基部
18、22・・・・・・・・ラビリンスシール
19・・・・・・・・・・・内部空間
50・・・・・・・・・・・アウター側のシール
51・・・・・・・・・・・外方部材
51a・・・・・・・・・・外側転走面
52・・・・・・・・・・・ハブ輪
52a・・・・・・・・・・内側転走面
53・・・・・・・・・・・芯金
54・・・・・・・・・・・シール材
55・・・・・・・・・・・サイドリップ
56・・・・・・・・・・・ダストリップ
57・・・・・・・・・・・グリースリップ
58・・・・・・・・・・・車輪取付フランジ
59・・・・・・・・・・・内部空間
60・・・・・・・・・・・曲面部
61・・・・・・・・・・・ラビリンス隙間
62・・・・・・・・・・・ボール
63・・・・・・・・・・・保持器
α・・・・・・・・・・・・傾斜角
Claims (5)
- 外周に懸架装置に取り付けられるための車体取付フランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が形成された外方部材と、
一端部に車輪を取り付けるための車輪取付フランジを一体に有し、外周に前記複列の外側転走面に対向する一方の内側転走面と、この内側転走面から軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の小径段部に嵌合され、外周に前記複列の外側転走面に対向する他方の内側転走面が形成された内輪部材からなる内方部材と、
この内方部材と前記外方部材の両転走面間に保持器を介して転動自在に収容された複列の転動体と、
前記外方部材と内方部材との間に形成された環状空間の開口部に装着されたシールとを備え、
これらシールのうちアウター側のシールが、前記外方部材の端部に内嵌される円筒状の嵌合部、およびこの嵌合部から屈曲して形成され、径方向内方に延びる内側部を有する芯金と、この芯金に一体に接合され、複数のサイドリップを有するシール部材とからなると共に、
前記車輪取付フランジの基部が断面円弧状の曲面に形成され、この基部に前記複数のサイドリップが所定のシメシロを介して摺接する車輪用軸受装置において、
前記芯金の内側部の内端縁が所定の径方向隙間を介して前記基部に対峙し、この基部との間でラビリンスシールが構成されていることを特徴とする車輪用軸受装置。 - 前記内端縁が垂直に径方向内方に延びている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
- 前記内端縁が軸受内部側に屈曲して形成されている請求項1に記載の車輪用軸受装置。
- 前記内端縁が前記基部の曲面の接線方向に沿った傾斜角を持っている請求項1乃至3いずれかに記載の車輪用軸受装置。
- 前記シール部材が前記内端縁に回り込んで固着されている請求項1乃至4いずれかに記載の車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006196377A JP2008025644A (ja) | 2006-07-19 | 2006-07-19 | 車輪用軸受装置 |
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JP2006196377A JP2008025644A (ja) | 2006-07-19 | 2006-07-19 | 車輪用軸受装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010025193A (ja) * | 2008-07-17 | 2010-02-04 | Ntn Corp | 複列円錐ころ軸受 |
JP2013053642A (ja) * | 2011-09-01 | 2013-03-21 | Nissan Motor Co Ltd | 車輪用軸受 |
US8702312B2 (en) | 2008-05-27 | 2014-04-22 | Nsk Ltd. | Rolling bearing |
-
2006
- 2006-07-19 JP JP2006196377A patent/JP2008025644A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP5545210B2 (ja) * | 2008-05-27 | 2014-07-09 | 日本精工株式会社 | 転がり軸受 |
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