JP2018139557A - 容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。【解決手段】容器詰緑茶飲料の製造において、前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含む方法を実行し、及び、前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率を4以上に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0に調整することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法に関する。
緑茶飲料の中でも手軽に飲用できる容器詰緑茶飲料は近年の主流となっており、多くの商品が市場に流通、販売されている。消費者の嗜好の多様化に伴い、緑茶飲料の香味の差別化ならびに高付加価値化が望まれており、容器詰緑茶飲料が製造後一定期間の間に消費されるという点を鑑みると、その香味や緑色の外観の持続、ということに関しても関心が高い。
容器詰緑茶飲料を常温流通させるためには、食品衛生法上、加熱殺菌工程が必須となっている。かかる加熱殺菌により、緑茶に含まれる緑の色素(クロロフィル)の一部が破壊されてしまう。また、容器詰緑茶飲料は、市場に流通している間にも色素(クロロフィル)が酸化されるため、茶色様や赤色様となってしまうことも多かった。
これまでに、緑茶飲料の緑色安定性を改善する技術について開発が進められている。例えば、特許文献1〜4には、緑茶飲料の製造に用いる緑茶葉原料の処理方法を工夫することにより、緑色安定性を向上させようとする試みが開示されている。より具体的には、特許文献1には、茶の摘葉を蒸葉する際に使用する蒸気に中性水を使用することで、緑の色調が良好な緑茶飲料の製造法が記載されており、特許文献2には、茶葉の生葉を弱アルカリ性温水に浸漬させた後、所定の大きさにカットしてペースト状にし、さらに真空凍結したことを特徴とする水性の緑茶ペーストについて記載されており、特許文献3には、緑茶葉を加熱水蒸気で処理して酸化酵素を失活させたのちに茶葉をトレハロースと接触させることを特徴とする、緑茶葉の変色を阻止した緑茶組成物が記載されており、特許文献4には、荒茶の製造工程においてアルカリを添加し、得られる緑茶を粉砕して133倍量の重量の水を加えて懸濁液とした際にpHが6.8〜8.0の範囲になるように調整することで、緑色の保存安定性および風味安定性に優れた緑茶を製造する方法が開示されている。しかし、これら特許文献1〜4はいずれも、緑茶葉原料の処理方法に特徴がある技術であり、加熱殺菌した容器詰緑茶飲料については言及がなされておらず、ましてや、加熱殺菌した容器詰緑茶飲料における緑色安定性に関しては言及がなされていない。したがって、加熱殺菌した容器詰緑茶飲料における緑色安定性を十分に向上できるとは考えられない。
また、特許文献5〜8には、緑茶等の飲食品にミネラルを添加することにより、緑色安定性を向上させようとする試みが開示されている。より具体的には、特許文献5には、ミネラル含有乳酸菌体をクロロフィル含有食品の加熱時に共存させて食品の退色を防止または退色した緑色を復元する方法が記載されており、特許文献6には、クロロフィルが含まれている食品と亜鉛イオンが含まれる溶液を混合し加熱殺菌することで、変性による退色が抑制されたクロロフィル含有食品が記載されており、特許文献7には、微量の有機酸を含む水溶液を銅製の容器に入れて、所定時間加熱し、その後緑色植物と亜鉛イオンを水溶液に混合し、60℃以上で加熱することを特徴とする緑色植物の熱変色防止法が記載されており、特許文献8には、緑茶葉の抽出物に銅を置換反応させ、クロロフィルを銅クロロフィル化させることを特徴とする緑茶抽出物の緑色安定化方法が記載されている。これら特許文献5〜8における緑色安定性の向上方法はいずれも、ミネラルを添加することに特徴があるが、ミネラルは緑茶飲料において異味、雑味の原因ともなるため、これらの方法を容器詰緑茶飲料に適用することは、香味上困難である場合が多い。
特許文献9は、クロロフィルを含有する液体のpHを中性またはアルカリ性に調整し、該液体を加熱殺菌し、加熱殺菌された該液体に酸を添加することを特徴とする、緑色飲料に関するものである。しかし、この方法では殺菌直後は緑色を維持することができたとしても、経時による緑色の退色は抑制しきれていないという課題があった。また、特許文献10には、緑茶葉をpH8.0〜10.0で温水抽出し、該抽出液のpHを5.5〜7.0、濁度が660nmにおけるT%で83〜93%となるように調整した後充填する半透明緑茶飲料が記載されている。しかし、かかる半透明緑茶飲料は、緑茶粉末を全く使用せず、色調も薄い黄緑色と記載されているため(特許文献10の[0001]や[0007])、本発明が目指す本格的な手入れ茶の緑色とは異なる。また、特許文献11には、殺菌処理を施し保存性を有する茶飲料を製造するにあたり、茶飲料をアルカリイオン水を用いて抽出することで、風味、色調に優れた保存性を有する茶飲料の製造方法について記載されている。この方法は、pH8〜11程度のアルカリイオン水を用いて茶飲料を抽出する方法であるが、抽出後の溶液はpH5〜6.5程度に低下している旨が記載されている。かかる方法では、加熱殺菌後の緑色安定性を十分に備えた容器詰緑茶飲料を製造することはできなかった。
以上のように、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料はこれまでになかった。
特開平05−276868号公報 特開2007−135534号公報 特開2002−10736号公報 特開2014−198039号公報 特開2006−217914号公報 特開2004−201639号公報 特開2011−239761号公報 特開平07−000112号公報 特開2014−183764号公報 特開2005−130734号公報 特開平05−336885号公報
本発明の課題は、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等を提供することにある。
前述したような背景技術の状況下、本発明者は、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料を製造する方法について鋭意検討を行った。その結果、
容器詰緑茶飲料の製造において、
前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0(好ましくは8.1〜9.0)となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、
前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含む方法を実行し、及び、
前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率(以下、「Chls/OD」とも表示する。)を4以上(好ましくは4.5以上)に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0(好ましくは7.5〜8.0)に調整すると、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料を製造することができることを初めて見いだした。かかる知見に基づき、本発明者らは本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)容器詰緑茶飲料の製造において、
前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、
前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含み、
前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率を4以上に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0に調整する、容器詰緑茶飲料の製造方法や、
(2)緑茶調合液を調製する際に、さらに緑茶抽出物を添加する上記(1)に記載の容器詰緑茶飲料の製造方法や、
(3)緑茶調合液を加熱殺菌した後に、酸を添加する工程を含まない上記(1)又は(2)のいずれか1つに記載の容器詰緑茶飲料の製造方法に関する。
また、本発明は、
(4)緑茶抽出物と、0.01〜0.4重量%の粉砕茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類とを含有し、
660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率が4以上であり、
pHが7.0〜8.0である、加熱殺菌された容器詰緑茶飲料に関する。
さらに、本発明は、
(5)容器詰緑茶飲料の製造において、
前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、
前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含み、
前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率を4以上に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0に調整する、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、容器詰緑茶飲料における加熱殺菌後の緑色安定性を改善する方法に関する。
本発明によれば、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等を提供することができる。
本発明は、
[1]容器詰緑茶飲料の製造において、
前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0(好ましくは8.1〜9.0)となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、
前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含み、
前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率を4以上(好ましくは4.5以上)に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0(好ましくは7.5〜8.0)に調整する、容器詰緑茶飲料の製造方法(以下、「本発明の製造方法」とも表示する。);
[2]緑茶抽出物と、0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)の粉砕茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類とを含有し、
660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率が4以上(好ましくは4.5以上)であり、
pHが7.0〜8.0(好ましくは7.5〜8.0)である、加熱殺菌された容器詰緑茶飲料(以下、「本発明の容器詰飲料」とも表示する。);
[3]容器詰緑茶飲料の製造において、
前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0(好ましくは8.1〜9.0)となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、
前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含み、
前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率を4以上(好ましくは4.5以上)に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0(好ましくは7.5〜8.0)に調整する、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、容器詰緑茶飲料における加熱殺菌後の緑色安定性を改善する方法(以下、「本発明の緑色安定性の改善方法」とも表示する。);
等を含む。
なお、本明細書において、「〜」で表された数値範囲には、特に言及がない限り、「〜」の両端の数値も当然含まれる。
(粉砕緑茶葉)
本発明において「粉砕緑茶葉」とは、緑茶葉を、平均粒子径1〜100μmに粉砕したものを意味する。かかる粉砕方法としては、例えば公知の方法を採用することができ、例えば、石臼、ボールミル、ジェットミル、ハンマーミル、ローラーミル、カッターミル等を用いて緑茶葉を粉砕する方法が挙げられる。「粉砕緑茶葉」として具体的には、抹茶(碾茶を粉砕したもの)が挙げられるが、碾茶以外の緑茶葉を粉砕したものも挙げられる。なお、碾茶とは、緑茶葉の一種であり、栽培時に一定期間日光を遮って栽培した茶樹から得られる茶葉を蒸してから揉まずに乾燥して得られる緑茶葉である。
粉砕緑茶葉の原料となる「緑茶葉」としては、カメリア属の茶樹の葉、茎等から不発酵の製茶工程によって製造される緑茶葉であり、一般に不発酵茶として分類されるものであれば特に制限はなく、樹種や部位等や製法の非本質的相違によって限定されるものではない。生の茶葉から緑茶葉の製法としては、生の茶葉を蒸す又は煎って加熱する工程と、それを乾燥する工程を含む製法が挙げられる。「緑茶葉」として具体的には、玉露、かぶせ茶、碾茶、深蒸し茶、煎茶、番茶、釜炒り茶、中国の緑茶(龍井茶など)などが挙げられる。緑茶葉は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
粉砕緑茶葉としては、市販のものを使用してもよいし、市販されている緑茶葉を粉砕したものを使用してもよい。
粉砕緑茶葉の使用量(飲料における含有量又は飲料への添加量)としては、容器詰緑茶飲料における最終濃度で0.01〜0.4重量%である限り特に制限されないが、0.05〜0.3重量%が好ましく挙げられる。粉砕緑茶葉の使用量が少なすぎると、クロロフィル含量が十分に確保できず、Chls/ODの下限値である4を確保できず、粉砕緑茶葉の使用量が多すぎると、濁度(OD660)が高くなりすぎて、容器詰緑茶飲料として好ましくない外観になってしまうからである。
(アスコルビン酸、アスコルビン酸類)
本発明における「アスコルビン酸」や「アスコルビン酸類」としては、飲料への配合が許容されるものであれば特に制限されない。本発明における「アスコルビン酸」には、L−アスコルビン酸のみならず、その異性体(イソアスコルビン酸等)も含まれる。
本発明における「アスコルビン酸類」には、アスコルビン酸の塩、アスコルビン酸の誘導体、アスコルビン酸の誘導体の塩が含まれ、中でも、アスコルビン酸の塩が好ましく含まれる。アスコルビン酸の誘導体としては、アスコルビン酸脂肪酸エステル(例えばアスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル等)、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸硫酸エステル、アスコルビン酸配糖体等が挙げられる。
アスコルビン酸やその誘導体の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸塩;アンモニウム塩、トリシクロヘキシルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等を挙げることができ、中でも、アルカリ金属塩や、アルカリ土類金属塩が好ましく挙げられる。
アスコルビン酸の塩として具体的には、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム、イソアスコルビン酸ナトリウムが好ましく挙げられる。また、アスコルビン酸の誘導体又はその塩として、より具体的には、アスコルビン酸2,6−ジパルミテート、アスコルビン酸6-ステアレート、アスコルビン酸−2リン酸ナトリウム、アスコルビン酸−2硫酸2ナトリウム、アスコルビン酸2-グルコシド、アスコルビン酸グルコサミン、L-デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸6-パルミテート、テトライソパルミチン酸L-アスコルビン、テトラ2−ヘキシルデカン酸アスコルビル、リン酸L-アスコルビルマグネシウム等が挙げられる。
本発明に用いる「アスコルビン酸」や「アスコルビン酸類」としては、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、「アスコルビン酸」や「アスコルビン酸類」としては、市販のものを使用することができる。
本発明におけるアスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類の使用量(飲料における含有量又は飲料への添加量)としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、容器詰緑茶飲料中の「アスコルビン酸」及び「アスコルビン酸類」の合計をアスコルビン酸無水物に換算した濃度で、0.001〜0.5重量%が挙げられ、好ましくは0.001〜0.1重量%が挙げられ、更に好ましくは0.001〜0.05重量%が挙げられ、より更に好ましくは0.001〜0.035重量%が挙げられる。
(アルカリ)
本発明に用いる「アルカリ」としては、飲料への配合が許容されるものであって、本発明における工程Aの緑茶調合液に添加することによって、その緑茶調合液のpHを7.5〜9.0に調整することができるものである限り、特に制限されないが、弱アルカリが好ましく挙げられる。かかる弱アルカリとして具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、コハク酸二ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、乳酸カルシウム、及びグルコン酸カルシウムが挙げられ、中でも、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムが好ましい。かかるアルカリは、1種類を単独で用いてもよいし2種類以上を併用してもよい。また、「アルカリ」としては、市販のものを使用することができる。
本発明におけるアルカリの使用量(飲料における含有量又は飲料への添加量)としては、緑茶調合液のpHが7.5〜9.0となるような範囲である限り特に制限されない。かかる使用量は、当業者であればその緑茶調合液のpHを測定するなどして、適宜設定することができる。
(pHの測定方法)
本発明における緑茶調合液や容器詰緑茶飲料のpHは、市販のpHメーター等により測定することができる。
(緑茶調合液のpH)
緑茶調合液のpHは、7.5〜9.0である限り特に制限されないが、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性をより十分に改善する観点から、8.1〜9.0であることが好ましい。
(容器)
本発明に用いられる容器については、容器の種類に制限はなく、紙容器、PETボトル、缶、瓶など、容器詰緑茶飲料の容器として、通常用いられる容器を用いることができる。かかる容器としては、市販のものを使用することができる。
(加熱殺菌)
本発明において加熱殺菌は、UHT殺菌、レトルト殺菌等の公知の加熱殺菌手段を用いることができる。加熱殺菌における加熱処理条件としては、特に制限されないが、加熱温度110℃〜145℃、F値1〜40となるような、加熱温度及び加熱時間を挙げることができる。F値とは、基準温度(121.1℃)で一定数の微生物を死滅させるのに要する加熱時間(分)であって、121.1℃における加熱時間として定義される。例えば、F=1と同等の殺菌条件とは、111.1℃では10分、121.1℃では1分、F=20と同等の殺菌条件とは、121.1℃では20分、137.2℃では30秒のように設定できる。
(容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率)
本発明において、容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率(「Chls/OD」)は4以上である。
容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)は、分光光度計U−3310(日立社製)等の市販の分光光度計を用いて、660nmにおける緑茶飲料の吸光度を測定することにより求めることができる。その際、緑茶飲料の濁度(OD660)の測定値が1.0を超える場合は、濁度が0.2〜1.0になるように、その緑茶飲料を適宜イオン交換水で希釈し、よく撹拌した後、その希釈液について速やかに濁度(OD660)を測定し、その測定値から、希釈前の緑茶飲料サンプルの濁度(OD660)を算出することができる。例えば、イオン水で2倍に希釈した液の濁度(OD660)が0.6の場合は、その原液である茶飲料の濁度(OD660)は1.2(0.6×2)と算出することができる。
容器詰緑茶飲料のクロロフィル濃度(μg/mL)は、例えば以下の方法で測定することができる。
緑茶飲料2mLにアセトン8mLを加えて良く撹拌してクロロフィルを抽出した後、遠心分離機(久保田商事社製5930)を用いて3000rpmで5分間、5℃条件下で遠心し、得られた上清の吸光度を測定することができる。吸光度の測定は、646.6nmと663.6nmの波長について行い、公知の以下の式により緑茶飲料サンプル中のクロロフィル濃度を算出することができる。
緑茶飲料中のクロロフィル濃度(μg/mL)=(17.76×A646.6+7.34×A663.6)×5
容器詰緑茶飲料のChls/ODは、「容器詰緑茶飲料のクロロフィル濃度(μg/mL)」の値を、「その容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)」の値で除すことにより算出することができる。
本発明におけるChls/ODは、製造後、室温(例えば25℃)で1日〜30日(好ましくは製造後3〜20日、より好ましくは3〜7日)静置した容器詰緑茶飲料のクロロフィル濃度(μg/mL)及び濁度(OD660)を用いて算出した値を意味する。
本発明において、容器詰緑茶飲料のChls/ODの値は、4以上である限り特に制限されないが、加熱殺菌後の緑色安定性をより十分に改善する観点から、4.5以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。Chls/ODの上限値は特に制限されないが、通常、10は超えない。
(容器詰緑茶飲料のpH)
容器詰緑茶飲料のpHは、7.0〜8.0である限り特に制限されないが、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性をより十分に改善する観点から、7.5〜8.0であることが好ましい。
(緑茶抽出物)
本発明における必須成分は、「粉砕緑茶葉」、「アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類」及び「アルカリ」である。本発明において、緑茶抽出物をさらに使用し(含有させ又は添加し)なくてもよいが、容器詰緑茶飲料において、より十分な飲みごたえを得る観点から、緑茶抽出物をさらに使用する(含有させる又は添加する)ことが好ましい。
本発明において「緑茶抽出物」とは、緑茶葉を水で抽出した緑茶抽出液、又は、該緑茶抽出液を濃縮処理若しくは乾燥処理したものを意味する。かかる「緑茶抽出物」の形態としては、液体、スラリー、半固体、固体(粉体等)等のいずれであってもよいが、液体(緑茶抽出液)が好ましく挙げられる。
緑茶葉を水で抽出する方法としては、撹拌抽出、カラム抽出、ドリップ抽出等の公知の方法を採用することができる。抽出に使用する水の温度は特に制限されないが、好ましくは50〜100℃、より好ましくは60〜98℃が挙げられる。また、抽出時間は、スケール等により一様ではないが、例えば2〜60分、好ましくは3〜40分、より好ましくは3〜20分が挙げられる。
本発明における「緑茶抽出物」の好適な態様として、緑茶葉を水で抽出した後、その緑茶葉を抽出液から分離する処理を経た緑茶抽出液、又は、該緑茶抽出液を濃縮処理若しくは乾燥処理したものが挙げられる。緑茶葉を抽出液から分離する処理としては、濾過処理や遠心分離処理が挙げられ、濾過処理と遠心分離処理の両方を行うことが好ましく挙げられる。かかる濾過処理としては、濾紙、ステンレス等の金属製フィルタ等によるフィルタ分離が挙げられ、遠心分離処理としては、遠心分離装置による遠心分離が挙げられる。前述のフィルタ分離に用いるフィルタの目開きとしては、例えば1μm〜2mmが、好ましくは10μm〜1mmが挙げられる。また、前述の遠心分離処理としては、例えば2000gで、5〜15分の条件などが挙げられる。
緑茶抽出物は、緑茶葉を水で抽出して製造したものを用いてもよいし、市販の緑茶抽出物を用いてもよい。
本発明において緑茶抽出物を併用する場合、その使用量(飲料における含有量又は飲料への添加量)としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されないが、容器詰緑茶飲料中の緑茶抽出物を、その抽出に用いられる緑茶葉(乾燥)に換算した濃度で、0.02重量%以上が好ましく挙げられ、その上限の濃度として、例えば5重量%が挙げられる。
(任意成分)
本発明における必須成分は、「粉砕緑茶葉」、「アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類」及び「アルカリ」であるが、前述の緑茶抽出物以外の任意成分として、他の原材料や、食品添加物を使用してもよい。かかる他の原材料や、食品添加物として、例えば、香料、緑茶以外の茶の抽出物、茶以外の植物原料若しくは抽出物、ビタミン類、ミネラル類、着色成分、高甘味度甘味料等を使用してもよい。しかし、背景技術でも述べたように、亜鉛や銅等のミネラルは、容器詰緑茶飲料において異味、雑味の原因ともなるため、亜鉛や銅を添加しないことが好ましい。また、本発明においては、色素等の着色成分を別途使用しなくとも十分な緑色が保持できるため、自然な緑色の容器詰緑茶飲料を得る観点から、着色成分を添加しないことが好ましい。また、乳、豆乳等の白濁する原材料を添加すると、緑色の外観が認識できない場合又は認識し難くなる場合があるため、乳、豆乳等の白濁する原材料は添加しないことが好ましい。
(加熱殺菌後の緑色安定性の改善)
本発明において、「加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された」容器詰緑茶飲料とは、緑茶調合液のpHが7.5未満であること、又は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸類のいずれも含有しないこと、又は、容器詰緑茶飲料のpHが7.0未満であること以外は、同種の原料を同様に用いて同じ製法で製造した容器詰緑茶飲料(以下、「コントロール飲料A」とも表示する。)と比較して、加熱殺菌後の緑色安定性が改善された容器詰緑茶飲料を意味する。
容器詰緑茶飲料における加熱殺菌後の緑色安定性が、コントロール飲料Aと比較してどのようであるか(例えば、改善されているかどうか)は、訓練されたパネラーであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネラー間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができ、例えば、後述の実施例の試験2に記載の評価基準(表1)等を用いた方法と同様の方法、好ましくは、後述の実施例の試験2に記載の評価基準(表1)等を用いた方法と同じ方法を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、製造後、室温(例えば25℃)で1週間静置したコントロール飲料A(以下、「保存後のコントロール飲料A」とも表示する。)と比較して、製造後、室温(例えば25℃)で1日〜30日(好ましくは製造後3〜20日、より好ましくは3〜7日)静置した容器詰緑茶飲料(以下、「保存後の容器詰緑茶飲料」とも表示する。)の緑色が十分である、及び/又は、緑色が鮮やかである場合は、その容器詰緑茶飲料は、保存前、保存中、保存後であっても、「加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された」容器詰緑茶飲料に含まれる。また、保存後のコントロール飲料Aの外観を、後述の実施例の試験2に記載の評価基準(表1)等を用いて評価した評価結果と比較して、保存後の容器詰緑茶飲料その評価結果が向上している場合は、その容器詰緑茶飲料は、保存前、保存中、保存後であっても、「加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された」容器詰緑茶飲料に含まれる。なお、本発明において、「加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された」は、「加熱殺菌後の緑色の退色が抑制された」と言い換えることができる。かかる緑色は、粉砕緑茶葉由来の緑色、又は、粉砕緑茶葉及び緑茶抽出物由来の緑色であり、かかる緑色には、急須で淹れた直後の緑茶の緑色が好適に含まれる。
(容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持)
本発明における「容器詰緑茶飲料としての好ましい香味が保持された」容器詰緑茶飲料として、より具体的には、容器詰緑茶飲料として好ましくない異味及び/又は雑味(特に、アルカリが過剰であることによる好ましくない塩味やぬめり)が、容器詰緑茶飲料の香味を妨げるほどに強くは感じられない容器詰飲料が含まれ、中でも、容器詰緑茶飲料として好ましくない前述の異味及び/又は雑味が、あまり感じられない(好ましくは、ほとんど感じられない、より好ましくは全く感じられない)容器詰飲料が好適に含まれる。容器詰緑茶飲料として好ましくない異味及び/又は雑味(例えば、アルカリが過剰であることによる好ましくない香味(塩味やぬめり))がどの程度であるかは、訓練されたパネラーであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネラー間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができ、例えば、後述の実施例の試験2に記載の評価基準(表2)を用いた方法と同様の方法、好ましくは、後述の実施例の試験2に記載の評価基準(表2)を用いた方法と同じ方法を好適に用いることができる。より具体的には、後述の実施例の試験2に記載の表2の評価基準において、「容器詰緑茶飲料として好ましくない異味及び/又は雑味(塩味、ぬめり)が、緑茶飲料としての香味を妨げるほど強く感じる」(評価:「×」)容器詰緑茶飲料は、容器詰緑茶飲料として好ましくない異味及び/又は雑味(特に、アルカリが過剰であることによる好ましくない塩味やぬめり)が、容器詰緑茶飲料の香味を妨げるほどに強く感じる容器詰緑茶飲料に当然該当し、「容器詰緑茶飲料として好ましい香味だが、その香味がやや薄く感じる。」(評価:「△」)容器詰緑茶飲料や、「容器詰緑茶飲料として好ましい香味を十分に有する」(評価:「○」)容器詰緑茶飲料は、容器詰緑茶飲料として好ましい香味が保持された容器詰緑茶飲料に含まれる。
(飲みごたえ)
本発明における「飲みごたえ」とは、容器詰緑茶飲料の飲用中又は飲用後に口腔内又は鼻腔内に感じられる、緑茶飲料の好ましい香味の多さを意味する。本発明において「より十分な飲みごたえのある」容器詰緑茶飲料とは、緑茶抽出物を含有させない(又は添加しない)こと以外は、同種の原料を同じ最終濃度になるように用いて同じ製法で製造した容器詰緑茶飲料(以下、「コントロール飲料B」とも表示する。)と比較して、飲みごたえが増加した、緑茶抽出物を含有する容器詰緑茶飲料を意味する。
容器詰緑茶飲料の飲みごたえが、コントロール飲料Bと比較してどのようであるか(例えば、増加しているかどうか)は、訓練されたパネラーであれば、容易かつ明確に決定することができる。評価の基準や、パネラー間の評価のまとめ方は、一般的な方法を用いることができ、例えば、後述の実施例の試験2に記載の評価基準(表2)等を用いた方法と同様の方法、好ましくは、後述の実施例の試験2に記載の評価基準(表2)等を用いた方法と同じ方法を好適に用いることができる。より具体的には、例えば、製造後、室温(例えば25℃)で1週間静置したコントロール飲料B(以下、「保存後のコントロール飲料B」とも表示する。)と比較して、製造後、室温(例えば25℃)で1週間静置した容器詰緑茶飲料(以下、「保存後の容器詰緑茶飲料」とも表示する。)の容器詰緑茶飲料としての好ましい香味がより多い場合は、その容器詰緑茶飲料は、保存前、保存中、保存後であっても、飲みごたえが増加した容器詰緑茶飲料に含まれる。より具体的には、後述の実施例の試験2に記載の表2の評価基準において、「容器詰緑茶飲料として好ましい香味を十分に有する」(評価:「○」)容器詰緑茶飲料は、飲みごたえが増加した容器詰緑茶飲料に含まれる。
<本発明の製造方法>
本発明の製造方法としては、
容器詰緑茶飲料の製造において、
前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0(好ましくは8.1〜9.0)となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、
前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含み、
前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率を4以上(好ましくは4.5以上)に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0(好ましくは7.5〜8.0)に調整する、容器詰緑茶飲料の製造方法である限り、特に制限されない。
(工程A)
上記工程Aとしては、前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程Aである限り、特に制限されず、かかる緑茶調合液を調製できる限り、「粉砕緑茶葉」、「アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類」、「水」、「アルカリ」は、どのような順序で、どのような組み合わせで添加及び/又は混合等してもよい。
工程Aの好ましい態様として、容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)となるように粉砕緑茶葉を懸濁した液に、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、pHが7.5〜9.0となるようにアルカリを添加して緑茶調合液を調製する工程が挙げられる。また、緑茶抽出物等の任意成分は、緑茶調合液に含有させる(添加する)ことができる。
工程AにおけるpH7.5〜9.0とは、緑茶調合液のpHを表す。工程AにおけるpHは、7.5〜9.0である限り特に制限されないが、加熱殺菌後の緑色安定性をより十分に改善する観点から、8.1〜9.0であることが好ましい。
(工程B)
上記工程Bとしては、工程Aで調整した緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程である限り特に制限されず、容器への充填と加熱殺菌はいずれを先に行ってもよい。また、緑茶調合液に用いる「必須成分」又は、「必須成分及び任意成分」のうちの一部の成分を、その他の成分とは別に加熱殺菌処理した後、一部の成分とその他の成分を混合して容器詰緑茶飲料を得ること等も、便宜上、本発明における工程Bに含まれる。
(容器詰緑茶飲料のChls/ODを4以上に、及び、容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0に調整すること)
本発明においては、基本的には、工程A及びBを実行すれば、容器詰緑茶飲料のChls/ODを4以上に、及び、容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0に調整することができるが、工程A及びB以外の処理や調整をさらに行うことを排除するものではない。
(任意工程)
本発明の製造方法は、工程Aより前に、容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0(好ましくは8.1〜9.0)となるような量のアルカリとを用意する工程を含んでいてもよい。
また、本発明の製造方法は、緑茶調合液を加熱殺菌した後に、酸を添加する工程を含んでいてもよいが、かかる工程を含まないことが好ましい。
<本発明の容器詰緑茶飲料>
本発明の容器詰飲料としては、
緑茶抽出物と、0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)の粉砕茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類とを含有し、
660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率が4以上(好ましくは4.5以上)であり、
pHが7.0〜8.0(好ましくは7.5〜8.0)である、加熱殺菌された容器詰緑茶飲料である限り特に制限されない。
本発明の容器詰飲料は、前述の本発明の製造方法により製造することができる。
<本発明の緑色安定性を改善する方法>
本発明の緑色安定性を改善する方法としては、
容器詰緑茶飲料の製造において、
前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%(好ましくは0.05〜0.3重量%)となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0(好ましくは8.1〜9.0)となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、
前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含み、
前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率を4以上(好ましくは4.5以上)に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0(好ましくは7.5〜8.0)に調整する、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、容器詰緑茶飲料における加熱殺菌後の緑色安定性を改善する方法である限り、特に制限されない。
本発明の緑色安定性を改善する方法としては、本発明の製造方法と同様の方法を用いることができる。
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
試験1[容器詰緑茶飲料サンプルの調製]
(1)粉砕緑茶葉
粉砕緑茶葉として、市販品の抹茶(碾茶の石臼粉砕物)を用意した。
(2)緑茶抽出液の調製
緑茶葉100gに対して70℃の熱水3000gを添加し、5分間抽出した。抽出後、10℃まで冷却し、目開き100μmのメッシュを通し、3000rpm10分の条件で遠心分離処理をおこない、イオン交換水で3000gにメスアップして緑茶抽出液を得た。以下の緑茶飲料サンプルを調製する際には、記載された緑茶葉添加率の30倍の配合量の緑茶抽出液を配合した。
(3)容器詰緑茶飲料サンプルの調製
「所定の添加率となるような配合量の前述の抹茶」と、「緑茶葉が所定の添加率となるような配合量の上記(2)の緑茶抽出液」とを水に添加した後、所定のpHに調整して緑茶飲料サンプルとした。pHの調整は、アスコルビン酸、重曹、炭酸カリウム等の添加率を調整することによって行った。例えば表1の試験区1ではアスコルビン酸ナトリウムを0.03%、アスコルビン酸を0.005%、重曹を0.005%添加し、試験区4ではアスコルビン酸ナトリウムを0.03%、重曹を0.065%添加した。
なお、後述の表3〜5の試験区1〜7、9〜19において添加したアスコルビン酸とアスコルビン酸ナトリウムの合計をアスコルビン酸無水物濃度に換算すると、0.001〜0.5重量%であった。また、後述するように、試験区8では、アスコルビン酸もアスコルビン酸ナトリウムも添加しなかった。
調製した緑茶飲料サンプルをUHT殺菌(超高温殺菌)し、ペットボトルに充填することで表1(試験区1〜8)、表2(試験区9〜15)、表3(試験区16〜19)のそれぞれの容器詰緑茶飲料サンプルを得た。ただし、試験区7では、殺菌前にアスコルビン酸を添加するのではなく、殺菌後にアスコルビン酸を無菌的に添加することで、pHの調整を行った。また、試験区8では、アスコルビン酸もアスコルビン酸ナトリウムも添加せず、重曹のみを添加してpHを調整した。殺菌処理後の各容器詰緑茶飲料サンプルは、室温で1週間静置した後に、分析及び官能評価を行った。
試験2[容器詰緑茶飲料サンプルの分析]
(1)容器詰緑茶飲料サンプル(以下、単に「緑茶飲料サンプル」とも表示する。)のpH値の測定
それぞれの緑茶飲料サンプルについて、緑茶飲料サンプルの調合直後のpH値(以下、「調合pH値」とも表示する。)と、加熱殺菌後室温で1週間静置した緑茶飲料サンプルのpH値(以下、「製品pH値」とも表示する。)の両方を測定した。なお、一般的に、飲料を加熱殺菌すると、飲料のpHが多少低下することが知られている。
(2)緑茶飲料サンプル中のクロロフィル濃度の分析
緑茶飲料サンプル中のクロロフィル濃度の分析は、以下の方法により行った。緑茶飲料サンプル2mLにアセトン8mLを加えて良く撹拌してクロロフィルを抽出した後、遠心分離機(久保田商事社製5930)を用いて3000rpmで5分間、5℃条件下で遠心し、得られた上清の吸光度を測定した。吸光度の測定は、646.6nmと663.6nmの波長について行い、公知の以下の式により緑茶飲料サンプル中のクロロフィル濃度を算出した。
緑茶飲料サンプル中のクロロフィル濃度(μg/mL)=(17.76×A646.6+7.34×A663.6)×5
(3)緑茶飲料サンプルの濁度(OD660)の分析
緑茶飲料サンプルの濁度(OD660)は、分光光度計U−3310(日立社製)を用いて、660nmにおける吸光度を測定することで求めた。緑茶飲料サンプルの濁度(OD660)を測定する際、その濁度(OD660)が1.0を超える場合は、濁度が0.2〜1.0になるように、緑茶飲料サンプルを適宜イオン交換水で希釈し、よく撹拌した後、その希釈液を光路長10mmのセルに入れて速やかに測定し、希釈前の緑茶飲料サンプルの濁度(OD660)を算出した。
(4)濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率の算出
濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率(以下、「Chls/OD」とも表示する。)は、クロロフィル濃度(μg/mL)の値を、濁度(OD660)の値で除すことによって算出した。
(5)緑色の外観、緑茶の香味についての、緑茶飲料サンプルの官能評価
緑茶飲料サンプルの官能評価は、茶飲料の開発に精通したパネラー6人にて行った。緑色の外観については、以下の表1の評価基準を用い、緑茶の香味については、以下の表2の評価基準を用いた。外観、香味のいずれの官能評価も、試験区1の緑茶飲料サンプルを対照として評価した。また、最も多数のパネラーが示した評価を、そのサンプルの評価として採用した。
試験3[緑茶飲料サンプルのpH値が、緑茶飲料サンプルの緑色の外観に与える影響]
緑茶飲料サンプルのpH値が、緑茶飲料サンプルの緑色の外観に与える影響を以下の実験により調べた。
後述の表3に示すとおりの抹茶及び緑茶葉の添加率(重量%)となるように、それぞれ抹茶及び緑茶抽出液を水に添加し、上記試験1の方法にしたがって、試験区1〜8の容器詰緑茶飲料サンプルを調製した。ただし、試験区7では、殺菌前にアスコルビン酸を添加するのではなく、殺菌後にアスコルビン酸を無菌的に添加することで、pHの調整を行った。また、試験区8では、アスコルビン酸もアスコルビン酸ナトリウムも添加せず、重曹のみを添加してpHを調整した。
試験区1〜8について、上記試験2(1)の方法にしたがって測定した調合pH値と製品pH値を表3に示す。また、殺菌処理後の試験区1〜8の各容器詰緑茶飲料サンプルを、室温で1週間静置した後に、クロロフィル濃度及び濁度(OD660)を測定し、並びに、緑色の外観、緑茶の香味について官能評価を行った。試験区1〜8について、上記試験2(2)〜(4)の方法にしたがって算出したChls/ODの値、及び、上記試験2(5)の方法にしたがって行った官能評価の結果を表3に示す。
まず、表3の試験区1〜6の結果から、pHが6から9に高くなるにしたがって、Chls/ODの値が増加して、緑色の評価が向上する傾向が見られた。ただし、試験区1〜6の中でpHが最も高い試験区6(調合pH/製品pH=8.8/8.3)では、アルカリの含量が多いため、塩味、ぬめりが強く感じられ、容器詰緑茶飲料としては好ましくない香味となった。また、試験区7は、殺菌前にアスコルビン酸を添加するのではなく、殺菌後にアスコルビン酸を無菌的に添加して、製品pH値を6.4まで低下させたサンプルである。試験区7の調合pH値は、試験区5のそれと同様に8.3であるが、製品pH値を6.4まで低下させると、Chls/ODの値も3.98まで低下し、緑色の評価も×に低下してしまった。
試験区1〜7の結果をまとめると、調合pH値を7.5〜9.0(好ましくは8.1〜9.0)とし、かつ、製品pH値を7.1〜8.0とし、かつ、Chls/ODの値を4以上(好ましくは4.5以上、より好ましくは5以上)に調整すると、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料が得られることが示された。
なお、アスコルビン酸もアスコルビン酸ナトリウムも添加せずに、重曹のみでpHを調整した試験区8では、調合pH7.7、製品pH7.3、Chls/OD 5.49であるにもかかわらず、緑色の評価は×であった。試験区8のこの結果と、試験区1〜7の結果を併せて考慮すると、0.001〜0.5重量%のアスコルビン酸又はその塩を少なくとも添加し、かつ、調合pH値を7.5〜9.0(好ましくは8.1〜9.0)とし、かつ、製品pH値を7.1〜8.0とし、かつ、Chls/ODの値を4以上(好ましくは4.5以上)に調整すると、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料が得られることが示された。
試験4[粉砕緑茶葉の添加率が、緑茶飲料サンプルの緑色の外観に与える影響]
緑茶飲料サンプルを製造する際の、粉砕緑茶葉の添加率が、緑茶飲料サンプルの緑色の外観に与える影響を以下の実験により調べた。
後述の表4に示すとおりの抹茶及び緑茶葉の添加率(重量%)となるように、それぞれ抹茶及び緑茶抽出液を水に添加し、上記試験1の方法にしたがって、試験区9〜15の容器詰緑茶飲料サンプルを調製した。
試験区9〜15について、上記試験2(1)の方法にしたがって測定した調合pH値と製品pH値を表4に示す。また、殺菌処理後の試験区9〜15の各容器詰緑茶飲料サンプルを、室温で1週間静置した後に、クロロフィル濃度及び濁度(OD660)を測定し、並びに、緑色の外観、緑茶の香味について官能評価を行った。試験区9〜15について、上記試験2(2)〜(4)の方法にしたがって算出したChls/ODの値、及び、上記試験2(5)の方法にしたがって行った官能評価の結果を表4に示す。
表4の試験区9〜15の結果から、抹茶の添加率が0.01%以上(好ましくは0.05%以上)であると、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料が得られることが示された。なお、表4には示していないが、抹茶添加率を0.4%以上とすると、苦味が強くなり、緑色も濃くなりすぎるため、抹茶添加率は0.4%以下が好ましいことが分かった。
試験5[緑茶抽出液の添加率が、緑茶飲料サンプルの緑色の外観に与える影響]
緑茶飲料サンプルを製造する際の、緑茶抽出液の添加率(表では、緑茶葉の添加率に換算して記載している。)が、緑茶飲料サンプルの緑色の外観に与える影響を以下の実験により調べた。
後述の表5に示すとおりの抹茶及び緑茶葉の添加率となるように、それぞれ抹茶及び緑茶抽出液を水に添加し、上記試験1の方法にしたがって、試験区16〜19の容器詰緑茶飲料サンプルを調製した。
試験区16〜19について、上記試験2(1)の方法にしたがって測定した調合pH値と製品pH値を表5に示す。また、殺菌処理後の試験区16〜19の各容器詰緑茶飲料サンプルを、室温で1週間静置した後に、クロロフィル濃度及び濁度(OD660)を測定し、並びに、緑色の外観、緑茶の香味について官能評価を行った。試験区16〜19について、上記試験2(2)〜(4)の方法にしたがって算出したChls/ODの値、及び、上記試験2(5)の方法にしたがって行った官能評価の結果を表5に示す。
表5の試験区16〜19のいずれも、緑色の外観の評価は○であり、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善されていた。しかし、緑茶抽出液を添加しない試験区16では、容器詰緑茶飲料として好ましい香味が得られたものの、その香味がやや薄く、飲みごたえが弱かった。一方、緑茶葉換算で0.02%以上となるように緑茶抽出液を添加した試験区17〜19では、容器詰緑茶飲料として好ましい香味が十分に得られ、飲みごたえが十分であった。
表5の試験区16〜19の結果から、緑茶抽出液を添加しなくても、容器詰緑茶飲料として好ましい香味が得られるものの、飲みごたえが弱いのに対し、緑茶葉換算で0.02%以上となるように緑茶抽出液を添加すると、容器詰緑茶飲料として好ましい香味が十分に得られ、十分な飲みごたえが得られるため、好ましいことが分かった。
本発明によれば、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、加熱殺菌後の緑色安定性が十分に改善された容器詰緑茶飲料、及びその製造方法等を提供することができる。

Claims (5)

  1. 容器詰緑茶飲料の製造において、
    前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、
    前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含み、
    前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率を4以上に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0に調整する、容器詰緑茶飲料の製造方法。
  2. 緑茶調合液を調製する際に、さらに緑茶抽出物を添加する請求項1に記載の容器詰緑茶飲料の製造方法。
  3. 緑茶調合液を加熱殺菌した後に、酸を添加する工程を含まない請求項1又は2のいずれか1項に記載の容器詰緑茶飲料の製造方法。
  4. 緑茶抽出物と、0.01〜0.4重量%の粉砕茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類とを含有し、
    660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率が4以上であり、
    pHが7.0〜8.0である、加熱殺菌された容器詰緑茶飲料。
  5. 容器詰緑茶飲料の製造において、
    前記容器詰緑茶飲料における最終濃度が0.01〜0.4重量%となるような量の粉砕緑茶葉と、アスコルビン酸及び/又はアスコルビン酸類と、水と、pHが7.5〜9.0となるような量のアルカリとを含む緑茶調合液を調製する工程A;及び、
    前記緑茶調合液を容器に充填すること、及び加熱殺菌することにより前記容器詰緑茶飲料を得る工程B;を含み、
    前記工程A及びBによって、前記容器詰緑茶飲料の660nmにおける吸光度として表わされる濁度(OD660)に対するクロロフィル濃度(μg/mL)の比率を4以上に、及び、前記容器詰緑茶飲料のpHを7.0〜8.0に調整する、容器詰緑茶飲料としての好ましい香味を保持しつつ、容器詰緑茶飲料における加熱殺菌後の緑色安定性を改善する方法。
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