JP7428498B2 - 粉末茶及び粉末茶組成物の製造方法 - Google Patents

粉末茶及び粉末茶組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、粉末茶及び当該粉末茶を含む粉末茶組成物の製造方法に関する。
現在の日本では、高齢化や共働き家庭の増加などにより、食の孤食化や簡便化に対応した飲食品のニーズが著しく高まっており、なるべく手間をかけずに、食べたいときに必要な量だけ食べられ、且つ味も良い飲食品が強く求められている。
また、高齢化や共働き家庭の増加に加え、インターネットショッピング、宅配流通の普及などから、自宅で食事をとる人々が増加しており、「自宅で簡単においしい食事をとりたい」といった現代社会を反映した新たなニーズも高まっている。
特に近年では、食べたいときに必要な量を解凍するだけで、すぐに料理に使える冷凍ネギや冷凍ブロッコリーなどの生鮮冷凍食品の需要が急速に高まっている。これらの生鮮食品は、冷凍食品であることから長期間の保存でも香味の変化が少なく、鮮度が保持されている特徴を有しており、まさに現代の孤食化、簡便化のニーズに沿った食品形態といえる。
一方、茶についても上述したニーズが潜在的にあるものの、現状では急須で淹れるお茶よりも比較的簡便性の高いインスタント茶やティーバッグ茶が普及している程度であり、新たに生まれた孤食化、簡便化のニーズに対応した簡便性が向上しつつ、香味や鮮度が保持された茶は見受けられない。
一般的に茶葉(煎茶)の加工は、摘採された茶葉の生葉を、蒸気で蒸して茶葉の生葉に含まれる酸化酵素を不活性化(殺青)させた後、粗揉、揉捻、中揉及び精揉等によって揉込みと乾燥を繰り返すことで荒茶とし、さらに、このようにして得た荒茶を、火入れ乾燥、ふるい分け、切断による整形、風力や電気的感応による選別などの工程を経て仕上げ茶とすることが伝統的に行われてきた(非特許文献1参照)。
古来より、荒茶や仕上げ茶は、長時間の乾燥により水分を除くことで長期間の保存に耐え、また繰り返し揉み込むことで、茶葉の組織を破壊し、溶媒で抽出した際に茶葉の成分が溶出しやすいように製造されている。しかし、茶の香味や鮮度の観点のみを考慮すると、加熱や揉み込みを極力省き、加熱乾燥や揉み込みによる品質劣化や香味変化を最少減とするのが望ましい。
しかし、上述したように、茶葉は長期保存に耐え、流通が可能な乾燥状態であること、更には溶媒で抽出した際に十分な香味が溶出することが、商業的な価値として認識されていることから、香味や鮮度のみを優先し、茶の加熱乾燥や揉み込みを省くといったことは考え難く、ましてや当業者にとって、長期保存や流通が困難であったり、飲用の際に抽出が困難であったりする茶について、香味や鮮度を向上、調整するといった発想は見受けられない。
以上より、孤食化や簡便化のニーズに対応した茶葉、すなわち香味と鮮度が保持されながらも、販売、流通が可能であり、且つ茶飲料としてだけでなく、食品への応用が可能な香味を有する新規粉末茶が求められている。
このように茶葉を直接飲食する観点から、各種粉末茶の製造方法が提案されている。
例えば特許文献1には、 茶原料を粉砕する工程と、前記工程により得られる粉末茶を分級する工程を含むことを特徴とする微粉砕分級茶の製造方法が開示されている。
特許文献2には、荒茶製造工程中、粗揉工程と同時或いはそれ以後であって中揉工程と同時或いはそれ以前のタイミングに、茶葉を細断する工程が組み込まれており、その後精揉工程を経ずに乾燥工程に移行することを特徴とする飲料用原料茶葉の製法が開示されている。
特許文献3には、茶葉を乾燥茶葉に加工する乾燥茶葉製造工程の後に、乾燥茶葉を粉末茶に加工する粉末茶製造工程を実施する粉末茶の製造方法であって、乾燥茶葉製造工程は、切断工程、蒸熱工程、冷却工程、葉打ち工程、粗揉工程、揉ねん工程、中揉工程、選別工程、およびブレンド工程を含み、これら記載の順番で工程を実施し、蒸熱工程において弱アルカリ性に調整された水を使用し、粗揉工程において茶葉の含水率を30~40%まで低減し、揉ねん工程において茶葉の含水率を20~25%まで低減し、中揉工程において茶葉の含水率を約8%まで低減し、粉末茶製造工程の微粉砕工程において気流式粉砕機を使用することを特徴とする粉末茶の製造方法が開示されている。
特許文献4には、湯水に分散させて飲用可能な粉末茶の製造方法であって、碾茶を焙煎して細粉砕する工程を有することを特徴とする粉末茶の製造方法が開示されている。
静岡県茶業会議所編、1988、「新茶業全書」、静岡県茶業会議所、p275-276
特開2002-125593号公報 特開2012-000025号公報 特開2008-35769号公報 特開2014-207915号公報
かかる消費者ニーズを満たすための茶は、従来の荒茶や仕上げ茶の製造工程によって得られる乾燥状態の茶葉から実現するのは困難であり、更に上記の先行技術文献についても、孤食化や簡便化ニーズに対応した飲食品形態を想定した香味を有するものではない。現代社会の新たなニーズに対応するためには、今までにはない新規の粉末茶の製造方法を確立する必要がある。
本発明の第1の課題は、香味と鮮度が保持された状態で販売、流通が可能であり、且つ茶飲料としてだけでなく、食品への応用が可能な香味を有する粉末茶の製造方法を提供することである。具体的には、生葉のような鮮度感のある青みと、緑色の色沢を有し、更に苦渋味を低減した粉末茶の製造方法を提供することである。
さらに好ましい課題、すなわち本発明の第2の課題は、長期間保管した場合でも、生葉のような鮮度感のある青みと、緑色の色沢を有し、更に苦渋味を低減した粉末茶の製造方法を提供することである。
本発明は、粉末茶の製造方法であって、摘採した茶葉のクロロフィル含有量を加熱によって調整してクロロフィル調整茶葉を得る加熱工程と、当該クロロフィル調整茶葉を粉砕して粉末茶を得る粉砕工程とを含むことを特徴とする粉末茶の製造方法を提案する。
本発明はまた、粉末茶組成物の製造方法であって、摘採した茶葉のクロロフィル含有量を加熱によって調整してクロロフィル調整茶葉を得る加熱工程と、当該クロロフィル調整茶葉を粉砕して粉末茶を得る粉砕工程と、当該粉末茶に添加物を加えて粉末茶組成物とする調合工程と、を含むことを特徴とする粉末茶組成物の製造方法を提案する。
本発明が提案する粉末茶及び粉末茶組成物の製造方法によれば、香味と鮮度が保持された冷凍状態で販売、流通が可能であり、且つ茶飲料としてだけでなく、食品への応用が可能な香味を有する粉末茶及び粉末茶組成物を製造することができる。
また、茶葉を抽出して得た抽出液成分を粉末化するのではなく、熱を掛けて加工して得た茶葉を粉砕する製法であるから、得られた粉末茶又は粉末茶組成物を飲食すれば、茶葉そのものの香味を感じることができ、更に茶葉に含まれる有効成分の全てを摂取することができる。
さらにまた、茶葉に含まれるクロロフィルは、加熱されるとフェオフィチンに変化するため、茶葉に含まれるクロロフィル含有量を測定すれば、茶葉に対する熱履歴を知ることができる。よって、粉砕工程に供する茶葉の熱履歴、すなわち、加熱工程で負荷された熱履歴を、茶葉に含まれるクロロフィル乃至フェオフィチンの含有量を指標として管理及び調整することで、粉末茶又は粉末茶組成物を飲食する際、茶の香味を調整することができる。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<<本製造方法>>
本発明の実施形態の一例に係る粉末茶の製造方法(「本製造方法」と称する)は、摘採した茶葉(「生茶葉」又は「生葉」とも称する)から粉末茶又は粉末茶組成物を製造する方法であって、生茶葉を加熱することにより、茶葉のクロロフィル含有量を調整してクロロフィル調整茶葉を得(この工程を「加熱工程」と称する)、当該クロロフィル調整茶葉を粉砕して粉末茶を得る(この工程を「粉砕工程」と称する)ことを特徴とする粉末茶又は粉末茶組成物の製造方法である。
本発明において「粉末茶」とは、加熱加工した茶葉を粉砕したものであり、その形状は任意である。茶葉の状態であっても、顆粒状であっても、粉末状であっても、成形体状であってもよい。
また、「粉末茶組成物」とは、前記粉末茶を含有する組成物であり、一例としては、茶葉及び任意の添加物を含有する組成物である。
また、本発明において「生茶葉」及び「生葉」とは、酵素の失活処理(殺青)が為されていない茶葉をいう。
本発明において「工程」とは、一連の製造ラインで行うものでなくてもよく、断続的であってもよく、その際、時間をおいたり、装置を変えたり、場所を変えたりして断続的に行うものであってもよい。
本製造方法は、前記工程を備えていれば、前記各工程の順番を変更することは可能であるし、又、他の工程又は他の処理を適宜追加することも可能である。例えば後述する「乾燥・凍結工程」のほか、現在公知の粉末茶の製造方法で行われる工程や処理を適宜追加することが可能である。
<茶葉の摘採>
摘採する茶は、その品種、栽培方法及び摘採時期を限定するものではない。例えば、収穫前に一定期間被覆栽培して摘採した覆下茶葉を使用してもよいし、被覆栽培しない茶葉を使用することもできる。また、一番茶、二番茶、三番茶、四番茶、秋冬番茶などを使用することもできる。
また、茶の品種や、茶の栽培方法や、摘採時期などが異なる二種類以上の茶葉を組み合わせて使用することも可能である。
「摘採した茶葉」は、茶葉茎部及び茶葉非茎部からなるものである。通常は、一本の茎部に2~5枚の茶葉が結合した状態である。
「茶葉茎部」は、茎及び葉柄であり、「茶葉非茎部」は、当該茶葉茎部以外の部分である。
摘採した茶葉に含まれるクロロフィル含有量は400~1000mg/100gであり、フェオフィチン含有量は50mg/100g以下であるのが通常である。
なお、本発明において、「クロロフィル」とは、4つのピロールが環を巻いた構造であるテトラピロールに、フィトールと呼ばれる長鎖アルコールがエステル結合した基本構造をもつものであり、植物においては葉緑素と呼ばれるものである。茶葉は、クロロフィルa及びクロロフィルbの2種類を含んでいる。
そして、「クロロフィル含有量」とは、クロロフィルa及びクロロフィルbの総量であり、本発明における「クロロフィル含有量」は、乾燥した茶葉、すなわち茶葉の水分量を除いた状態における茶葉100gに含まれるクロロフィル量を示す。
また、「フェオフィチン」とは、クロロフィル分子からマグネシウムイオンがとれて水素原子2つと置き換わったものであって、クロロフィルが大気下で加熱されたり、酸性下に置かれたりするなどしてクロロフィルがフェオフィチン化したものであり、本発明における「フェオフィチン含有量」は、乾燥した茶葉、すなわち茶葉の水分量を除いた状態における茶葉100gに含まれるフェオフィチン量を示す。
摘採から加熱工程に供されるまでの時間は、1時間~48時間であるのが好ましく、中でも36時間以下、その中でも24時間以下であるのがさらに好ましい。
摘採した生茶葉は、必要に応じて、洗浄処理、乾燥処理、冷却処理を行った後、次に説明する加熱工程に供給することができる。
<加熱工程>
加熱工程では、生茶葉を加熱によって、茶葉中のクロロフィル含有量を調整するようにしてクロロフィル調整茶葉を得るのが好ましい。
本発明における「クロロフィル調整茶葉」とは、生茶葉を加熱することによって、茶葉中のクロロフィル含有量を所定範囲に調整した茶葉である。
加熱工程では、茶葉に含まれるクロロフィル含有量が200~800mg/100gとなるように生茶葉を加熱するのが好ましい。
前述したように茶葉に含まれるクロロフィルは、加熱されるとフェオフィチンに変化するため、茶葉に含まれるクロロフィル含有量を測定すれば、茶葉に対する熱履歴を知ることができる。かかる観点から、茶葉に含まれるクロロフィル含有量が200mg/100g以上となるように加熱すれば、青みと、緑色の色沢が良好な粉末茶を得ることができるから好ましく、800mg/100g以下となるように加熱すれば、苦渋味が抑制された粉末茶を得ることができるから好ましい。
また、加熱工程では、茶クロロフィル調整茶葉におけるフェオフィチン含有量が50~500mg/100gとなるように加熱条件を調整するのが好ましい。
クロロフィルが加熱されると、時間及び温度とともにフェオフィチンに変化するから、クロロフィル含有量乃至フェオフィチン含有量を熱履歴の指標として製造工程の管理及び調整することができる。
加熱工程では、クロロフィル調整茶葉において、茶葉非茎部に含まれるクロロフィル含有量が220~1100mg/100gとなるように調整するのが好ましく、茶葉非茎部のクロロフィル含有量を所定範囲に調整することで、茶葉の色沢を効率的に向上させることができるからである。
上述したように、茶葉に含まれるクロロフィルは、加熱されるとフェオフィチンに変化するため、茶葉に含まれるクロロフィル含有量を測定すれば、茶葉に対する熱履歴を知ることができる。中でも、茶葉非茎部に含まれるクロロフィルの含有量は、鮮度感のある青みと、緑色の色沢との関連が強く、その含有量を熱履歴の指標として製造工程を管理するのが特に好ましいことが分かった。よって、粉砕工程に供する茶葉の熱履歴を、茶葉非茎部に含まれるクロロフィルの含有量を指標として管理及び調整することで、生葉のような鮮度感をさらに向上させることができ、且つ香味の発揚をさらに高めることもできる。
クロロフィル調整茶葉の茶葉非茎部に含まれるクロロフィル含有量は、加熱条件を調整したり、生葉の茎部のみを除去したり、該茎部のみを加えたり、生葉の茶期・品種・育種などを変更することによって調整することができる。但し、この手段に限定するものではない。
加熱工程では、クロロフィル調整茶葉の茶葉に含まれるフェオフィチン含有量に対する、当該茶葉非茎部に含まれるクロロフィル含有量の比率(茶葉非茎部クロロフィル含有量/茶葉フェオフィチン含有量)が0.5~8.0となるように調整することが好ましい。クロロフィル調整茶葉の当該比率(茶葉非茎部クロロフィル含有量/茶葉フェオフィチン含有量)が前記範囲になるように調整することが好ましい。
粉砕工程に供する茶葉の当該比率(茶葉非茎部クロロフィル含有量/茶葉フェオフィチン含有量)を上記範囲とすることで、青みと、緑色の色沢が良好で、苦渋味が抑制された粉末茶を得ることができる。
かかる観点から、加熱工程では、当該比率(茶葉非茎部クロロフィル含有量/茶葉フェオフィチン含有量)が0.5~8.0となるように調整するのが好ましく、中でも0.7以上或いは7.7以下、その中でも2.0以上或いは4.0以下となるように調整するのがさらに好ましい。
なお、クロロフィル調整茶葉の非茎部に含まれるフェオフィチン含有量は、加熱条件を調整したり、酵素失活工程後の茶葉の茎部を除去したり、酵素失活工程後の茶葉の茎部を加えたりすることで調整することができる。
加熱工程では、クロロフィル調整茶葉すなわち加熱後の茶葉、言い換えれば粉砕工程に供する茶葉に含まれる水分量が7~60.7質量%となるように調整するのが好ましい。
クロロフィル調整茶葉に含まれる水分量を7質量%以上に調整すれば、粉砕工程において、茶葉を効率的に粉砕することができる一方、60.7質量%以下に調整すれば、粉砕工程後の成形や乾燥が実施しやすくなる。
なお、前記加熱工程で得られたクロロフィル調整茶葉は、水分量(含水率)をそのまま維持したままで粉砕工程に供することもできるが、粉砕工程に供する前に1又は2以上の他の工程を経ることもできる。この場合、クロロフィル調整茶葉中の水分量(含水率)は、時間経過と共に若干低下する場合もあり得るが、基本的には、加熱工程終了直後の7~60.7質量%であってよい。
上記加熱工程では、クロロフィル調整茶葉中の上記クロロフィル含有量、フェオフィチン含有量、茶葉非茎部に含まれるクロロフィル含有量、比率(茶葉非茎部クロロフィル含有量/茶葉フェオフィチン含有量)及び水分量のうちの一つ、又は、これらのうちの2つ以上(これらの成分をそれぞれ「加熱工程指標成分」と称し、それぞれの量を「加熱工程指標成分量」と称する)が、上記範囲に入るように、加熱工程及び加熱工程に包含される各種処理乃至工程の条件などを調整するのが好ましい。
この際、茶葉を60℃より高温の温度に加熱すると、茶葉中のクロロフィルがフェオフィチンに変化し、加熱温度をさらに高めたり、加熱時間を長くしたりすることによって、茶葉中のクロロフィル含有量の減少率が大きくなることが確認されている。また、茶葉を精揉するなど、細胞が壊れる処理をして加熱すると、茶葉中のクロロフィルは大きく減少することも確認されている。
クロロフィル調整茶葉中のクロロフィル含有量の測定方法としては、例えば分光光度計を用いた吸光光度法によって測定するか、若しくは、クロロフィル調整茶葉をアセトン水溶液中で粉砕し、クロロフィルを抽出した後、高速液体クロマトグラフィーで測定すればよい。但し、この方法に限定するものではない。
クロロフィル調整茶葉中のフェオフィチン含有量の測定方法としては、例えば分光光度計を用いた吸光光度法によって測定するか、若しくは、クロロフィル調整茶葉をアセトン水溶液中で粉砕し、クロロフィルを抽出した後、高速液体クロマトグラフィーで測定すればよい。但し、この方法に限定するものではない。
クロロフィル調整茶葉中の水分量の測定方法としては、例えば赤外線水分計で測定すればよい。例えばFD-800(ケット科学研究所社製)によって測定することができる。但し、この方法に限定するものではない。
また、茶葉茎部及び茶葉非茎部におけるクロロフィル含有量及びフェオフィチン含有量は、茶葉茎部と茶葉非茎部とを分離して、それぞれの指標成分量を測定すればよい。
(加熱工程:酵素失活工程→乾熱加熱工程)
前述した加熱工程は、一連の工程であっても、二種類以上の工程を備えていてもよい。
加熱工程の一例として、生茶葉を加熱して酵素を失活させて酵素失活茶葉を得(「酵素失活工程」と称する)、当該酵素失活茶葉を乾熱より加熱してクロロフィル調整茶葉を得る(「乾熱加熱工程」と称する)方法において、各加熱工程指標成分量がそれぞれ前記範囲に入るように、前記酵素失活工程及び前記乾熱加熱工程のそれぞれの方法及び条件を調整する方法を挙げることができる。
よって、例えば酵素失活工程では、生茶葉を加熱して酵素を失活させると共に、茶葉のクロロフィル含有量乃至フェオフィチン含有量を調整して酵素失活茶葉を得る一方、乾熱加熱工程では、当該酵素失活茶葉を乾熱より加熱して、茶葉のクロロフィル含有量乃至フェオフィチン含有量を調整してクロロフィル調整茶葉を得る方法を、好ましい一例として挙げることができる。
(酵素失活工程)
この際、生茶葉を加熱して酵素を失活させる方法としては、例えば蒸機による蒸熱処理や炒り蒸処理のほか、蒸気が発生する熱風乾燥、釜炒りなどの直火加熱、熱風を当てる熱風殺青などの殺青方法を挙げることができる。また、これらを組み合わせて行うこともできる。例えば蒸機により蒸熱処理を行った後、熱風を当てる熱風殺青を行ってもよい。
当該「酵素失活工程」は、茶葉を加熱して酵素を失活させると共に、茶葉のクロロフィル含有量を調整して酵素失活茶葉を得る工程であり、酵素失活茶葉に含まれるクロロフィル含有量を300~900mg/100gに調整するのが好ましく、また、生茶葉に含まれるクロロフィル含有量の10~90質量%となるように処理するのが好ましい。
特に「酵素失活工程」では、青臭みをより低減する観点から酵素失活茶葉に含まれるフェオフィチン含有量に対するクロロフィル含有量(クロロフィル/フェオフィチン)を1.0~6.0に調整することが好ましく、中でも1.0~5.0に調整することがより好ましい。
酵素失活工程では、茶葉に対して過剰な加熱を防ぐ観点から、酵素失活茶葉のクロロフィル含有量に対する、酵素失活茶葉中の茶葉非茎部におけるクロロフィル含有量(非茎部クロロフィル/茶葉クロロフィル)を1.1~1.6に調整することが好ましく、中でも1.2以上或いは1.5以下に調整することがより好ましい。
(乾熱加熱工程)
前記「乾熱加熱工程」は、前記酵素失活茶葉を乾熱より加熱して、茶葉のクロロフィル含有量を調整してクロロフィル調整茶葉を得る工程である。
ここで、乾熱加熱工程における「乾熱」とは、湿熱に対する言葉であり、茶葉に熱を伝える媒体の水分含有量(質量%)が大気中に含まれる水分以下である乾いた状態のものを言う。
よって、乾熱加熱工程の一例として、粗揉、揉捻及び中揉のうちの何れか一つ又は2つ以上を組みわせた揉み工程、そのほか、釜炒り、又は、乾熱乾燥機、熱風発生機、赤外線乾燥機などを用いて加熱する方法を挙げることができる。
この際、本製造方法においては、荒茶工程乃至仕上工程で一般的に行われている精揉及び乾燥を行わないことが好ましい。ここで、該「精揉」とは、茶葉を揉んで細い針状などの適宜形状に成形する処理であり、該「乾燥」とは、茶葉の水分量を10質量%未満まで低減させる処理である。前述のように本製造方法において粉砕工程に供する茶は、成形する必要がない。また、茶葉を乾燥状態で保存する必要もないため、茶葉の水分量を10質量%未満にまで低減する必要もないからである。
特に香味の観点からは、精揉工程は時間をかけて茶葉を成形する工程であり、茶葉が酸化劣化しやすく、また乾燥工程も茶葉を高温条件下に長時間さらすため、茶葉の加熱酸化劣化が進みやすいことが知られており、これらの工程を省略することによって、茶葉の劣化を抑制することができる。
乾熱乾燥工程では、色沢をより向上させる観点から、クロロフィル調整茶葉に含まれるフェオフィチン含有量に対するクロロフィル含有量(クロロフィル/フェオフィチン)を0.5~5.0に調整することが好ましく、中でも1.0以上或いは4.0以下に調整することがより好ましい。
また、クロロフィル調整茶葉において、茎及び葉柄を除いた部分である「茶葉非茎部」におけるクロロフィル含有量を220~1100mg/100gに調整することが好ましく、茶葉非茎部のクロロフィル含有量を所定範囲に調整することで茶葉の色沢を効率的に向上させることができるからである。
更に乾熱乾燥工程において、茶葉に対して過剰な加熱を防ぐ観点から、クロロフィル調整茶葉のクロロフィル含有量に対する、クロロフィル調整茶葉中の茶葉非茎部におけるクロロフィル含有量(非茎部クロロフィル/茶葉クロロフィル)を1.0~1.5に調整することが好ましく、中でも1.1以上或いは1.4以下に調整することがより好ましい。
また、乾熱加熱工程において、茶葉の色沢を保護する観点から、クロロフィル調整茶葉に含まれるフェオフィチン含有量に対する、当該茶葉非茎部に含まれるクロロフィル含有量の比率(茶葉非茎部クロロフィル含有量/茶葉フェオフィチン含有量)を0.5~8.0となるように調整することが好ましく、中でも0.7以上或いは7.7以下、その中でも2.0以上或いは4.0以下となるように調整するのがさらに好ましい。
<粉砕工程>
本製造方法における粉砕工程は、前記加熱工程で得られたクロロフィル調整茶葉を粉砕して粉末茶を得る工程であって、目的とする飲食形態によって、粉末茶、若しくは粉末茶組成物の形状、大きさ、硬さを調整するために、粉砕方法を適宜選択することが好ましい。
クロロフィル調整茶葉の粉砕方法は、公知の粉砕方法を採用すればよい。例えば、石臼、ボールミル、ジェットミル、ピンミル、気流式粉砕機等の粉砕機を使用して既知の手法により粉砕する方法を挙げることができる。この際、粉砕の程度の目安としては、例えば20メッシュパス程度以下を挙げることができる。
さらに必要に応じて、高圧ホモジナイザー、遊星型ボールミル、振動ボールミル、超音波ボールミル、コロイドミルなどを用いて、微粉砕するようにしてもよい。
粉砕した茶葉は、必要に応じて、分級してもよい。
分級操作は、公知の分級機を用いて分級することができる。
粉砕工程では、上記のように前記クロロフィル調整茶葉を粉砕して粉末茶を得、当該粉末茶を成形するようにしてもよい。
この際、成形する形状は、顆粒状、塊状、球状、直方体状など任意である。また、成形方法も、成形する形状に合わせて任意の方法を採用することができる。
このように成形する際、前記クロロフィル調整茶葉由来の水分を結着剤に用いて成形するのが好ましい。すなわち、前記クロロフィル調整茶葉が水分を保持した状態で成形すればよい。このようにすれば、結着剤として添加剤を添加する必要がないばかりか、粉末茶を溶媒や食品に添加すると、当該結着剤が溶けて分散させることができる。
<乾燥・凍結工程>
得られた粉末茶は、必要に応じて、乾燥若しくは凍結させて、保存に適する状態とするのが好ましい。
茶葉の凍結方法としては、フリーズドライ(凍結乾燥)、真空乾燥、冷凍保管、急速冷凍などを挙げることができる。
中でも、急速冷凍するのが好ましい。急速凍結することで、茶葉の細胞壁が壊れやすくなり、香味の発揚をさらに高めることができるからである。
急速冷凍の一例として、30秒以内に-5℃まで冷却する冷凍方法を挙げることができる。
フリーズドライ(凍結乾燥)の方法としては、例えば凍結容器に茶葉を入れて、例えば0℃乃至-50℃の範囲内で凍結させると共に、凍結容器内の圧力を、例えば13Pa乃至100Paの範囲内まで減圧する方法を挙げることができる。凍結容器内を減圧すると、水の沸点が低下するため、茶葉の水分が昇華するから、茶葉を乾燥させることができる。
茶葉を真空パックした状態で、30秒以内に-5℃まで冷却する急速凍結する方法を挙げることができる。
また、茶葉を冷凍庫に入れるか、或いは、液体窒素等の冷却媒体に晒すかして冷凍状態とした後、通常の凍結乾燥機にかけて茶葉を乾燥させるようにしてもよい。
なお、例えばクロロフィル調整茶葉を粉砕、乾燥、凍結の順に行ってもよいし、凍結、粉砕、乾燥の順に行ってもよいし、凍結、乾燥、粉砕の順に行ってもよい。また、その際、これらのうちの2つ以上を同時に行ってもよい。
このようにして得た粉末茶に添加物を加えて粉末茶組成物を得るようにしてもよい(この工程を「調合工程」とも称する)。
例えば、前記粉末茶に水や乳、チョコレートを加えてペースト状にし、これを成形した後、乾燥させるようにしてもよい。
<粉末茶及び粉末茶組成物>
本製造方法で得られる粉末茶及び粉末茶組成物は、特に直接飲食するのに適した香味を有するものである。
直接飲食できるとは、溶媒や添加物と共に茶葉ごと飲食することであって、一般的な茶飲料、すなわち茶葉を溶媒で抽出した抽出液を飲用するものとは異なる。
より具体的には、粉末茶及び粉末茶組成物を、水乃至お湯に加えて攪拌することにより分散茶として飲用することができる。
また、例えばアイスクリーム、パン、チョコレートなどの菓子に添加したり、ご飯のふりかけなど他の食品にふりかけたり、シロップやソースなどの他の食品の風味付けに利用したりすることができ、添加する飲食形態に合わせて、粉末茶及び粉末茶組成物の形状を成形することが好ましい。
<<語句の説明>>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
(試験1)
<クロロフィル含有量、フェオフィチン含有量の測定>
茶葉中のクロロフィル含有量及びフェオフィチン含有量は、分光光度計を用いた吸光光度法によって各成分量(mg/100g)を測定した。
また、茶葉非茎部におけるクロロフィル含有量及びフェオフィチン含有量は、茶葉茎部と茶葉非茎部とを分離して、茶葉非茎部中の各成分含有量(mg/100g)を上記同様に測定した。
<水分量の測定>
茶葉中の水分量(質量%)の測定は、赤外線水分計を用いて測定した。
<実施例1>
摘採してから24時間以内の生茶葉(静岡県産、やぶきた種、一番茶、露地栽培、クロロフィル含有量:850mg/100g、非茎部のクロロフィル含有量1000mg/100g)を、連続送帯式蒸し機を用いて無圧蒸気で40秒蒸熱処理して酵素失活茶葉を得、その後冷却した後、中揉機(カワサキ機工社製)を用いて40分間、茶葉温度35度で加熱し、クロロフィル調整茶葉を得た。
このようにして得られたクロロフィル調整茶葉を、水分量が表1に記載の数値となるまで真空乾燥した後、ミルミキサー(Iwatani社製)にて粉砕し、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例2>
実施例1において、蒸熱処理を20秒、中揉機での処理を30分間に変更した以外は実施例1と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例3>
実施例1において、蒸熱処理を60秒、中揉機での処理を50分間に変更した以外は実施例1と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例4>
実施例1において、釜炒りによって酵素失活茶葉を得、中揉機での処理を40分間に変更した以外は実施例1と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例5>
実施例1において、生茶葉(静岡県産、やぶきた種、一番茶、被覆栽培、クロロフィル含有量:1150mg/100g、非茎部のクロロフィル含有量1400mg/100g)を変更し、蒸熱処理を30秒分間に変更した以外は実施例1と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例6>
実施例5において、蒸熱処理を90秒、中揉機での処理を50分間に変更した以外は実施例5と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例7>
実施例1において、生茶葉(静岡県産、やぶきた種、二番茶、露地栽培、クロロフィル含有量:650mg/100g、非茎部のクロロフィル含有量750mg/100g)を変更した以外は実施例1と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例8>
実施例7において、蒸熱処理を80秒、中揉機での処理を50分間に変更した以外は実施例7と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例9>
実施例7において、蒸熱処理を20秒、中揉機での処理を30分間に変更した以外は実施例7と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例10>
実施例1において、生茶葉(静岡県産、やぶきた種、三番茶、露地栽培、クロロフィル含有量:410mg/100g、非茎部のクロロフィル含有量480mg/100g)を変更し、蒸熱処理を20秒に変更した以外は実施例1と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<実施例11>
実施例10において、中揉機での処理を10分間に変更した以外は実施例10と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<比較例1>
実施例1と同様の生茶葉を、水分量が13質量%になるように真空乾燥した後、クラッシュミキサーで粉砕し、比較例1の粉末茶(サンプル)を得た。
<比較例2>
実施例1と同様の生茶葉を、真空乾燥後の茶葉を粉砕せずにそのまま、比較例2の茶(サンプル)とした。
<比較例3>
実施例1と同様の生茶葉を、一般的な荒茶加工工程によって荒茶とし、得られた荒茶をミルミキサーで粉砕し、比較例3の粉末茶(サンプル)を得た。
<比較例4>
実施例1と同様の生茶葉を、蒸熱処理後に、中揉機等での加熱工程を行わず、そのまま真空乾燥した後、ミルミキサーで粉砕し、比較例4の粉末茶(サンプル)を得た。
<官能評価試験>
実施例・比較例で得た粉末茶(サンプル)について、茶の製造に従事する7人のパネラーを選出し、以下の評価方法に基づいて実施し、合議の結果、最も多かった評価を採用することとし、総合評価についても合議による結果を採用した。
先ず、事前にパネラーにコントロールを飲用してもらい、パネラー間でコントロールの香味についてディスカッションを行ってもらうことで、コントロールにおける「青み」「苦渋味」、「色沢」及び「水に分散した際の水色」の共通認識を持つようにした。
この際、コントロール1には、比較例1で得た生茶葉を粉砕した粉砕茶(サンプル)を採用し、コントロール2には比較例3で得た一般的な荒茶工程により製造した粉末茶を採用した。コントロール1、2、各実施例及び各比較例のサンプルについて粉末茶の状態での色沢、及び水に分散させた際の水色を目視により確認した後、直接食することで香味を評価した。
なお、本実施例における「青み」とは、生葉から感じる青い香味であり、植物の生っぽさ、鮮度感として認識され得るものである。また本実施例における「色沢」とは、液色の緑色の程度である。「苦渋味」とは、茶葉由来の渋味と、エグ味と、苦味とを総合的な強さで評価した。傾向として、加熱工程を弱める程、すなわち生葉に近い茶葉ほど「青み」が強く、「色沢」は濃い緑色であり、「苦渋味」は強くなる。実際に、比較例1で得た粉末茶、すなわち生葉を乾燥、粉砕した茶葉は濃い緑色であり、そのまま食すると青みと苦渋味が強かった。
(青み)
5:青みが強く、非常に鮮度感を感じる(コントロール1と同等)。
4:コントロール1よりも青みがわずかに弱いが、鮮度感を感じる。良好。
3:コントロール1よりも青みが弱いが、鮮度感を少し感じる。許容範囲である。
2:コントロール1よりも青みが非常に弱く、鮮度感をほとんど感じない。良くない。
1:青みをほとんど感じず、鮮度感がない(コントロール2と同等)。
(色沢)
5:緑色が濃く、非常に良好(コントロール1と同等)。
4:コントロール1よりわずかに緑色が薄いが、コントロール2よりは緑色が濃い。良好。
3:コントロール1よりも緑色が薄く、少し黄色がかっているが、コントロール2と同等で、許容範囲である。
2:コントロール2よりも更に緑色が薄く、黄色がかっており、良くない。
1:コントロール2よりも緑色が非常に薄く、かなり黄色がかっており、特にコントロール1とはかけ離れている、問題あり。
(苦渋味)
5:コントロール2よりも非常に苦渋味が弱く、非常に良好。
4:コントロール2よりも苦渋味がやや弱く、良好。
3:コントロール2と同等の苦渋味であり、許容範囲である。
2:コントロール2よりも苦渋味が強く、良くない。
1:コントロール2よりも苦渋味が非常に強く、飲用にあまり向いていない。問題あり(コントロール1と同等)。
(総合評価)
◎:合計点数が13~15点であり、且つ「1」及び「2」の評価が無く、非常に良好。
○:合計点数が10~12点であり、且つ「1」及び「2」の評価が無く、良好。
△:合計点数が6~9点であり、且つ「1」の評価が無い。やや問題あり。
×:合計点数が5点以下であるか、「1」の評価がある。問題あり。
Figure 0007428498000001
(考察)
上記実施例及びこれまで発明者が行ってきた試験結果から、粉砕工程に供する茶葉の熱履歴、すなわち、加熱工程で負荷された熱履歴を、茶葉に含まれるクロロフィルの含有量を指標として管理及び調整することで、生葉のような鮮度感のある青みと、緑色の色沢と、適度な苦渋味を有する粉末茶が得られることが分かった。
また、本発明の粉末茶、若しくは粉末茶組成物を分散させた茶飲料は、鮮度感のある青みと、緑色の色沢と、適度な苦渋味を有することが分かった。
(試験2)
更に本発明の実施態様が、長期保管後においても、「青み」、「苦渋味」、「色沢」及び「水に分散した際の水色」を保持しているかを検証した。なお、クロロフィル含有量、フェオフィチン含有量の測定及び水分量の測定は試験1と同様に行った。
参考例1
実施例7において、蒸熱処理を90秒間に変更した以外は実施例7と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
参考例2
実施例5において、蒸熱処理を30秒、中揉機での処理を30分間に変更した以外は実施例5と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
参考例3
実施例1において、蒸熱処理を20秒、中揉機での処理を1分間に変更した以外は実施例1と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
参考例4
実施例5において、蒸熱処理を110秒、中揉機での処理を50分間に変更した以外は実施例5と同様にして、粉末茶(サンプル)を得た。
<官能評価試験>
得られた参考例1~4のサンプルに加え、試験1で製造した実施例5,6,7,10及び11のサンプルを6ヶ月間、25℃の暗室に保管し、保管後のサンプルを評価することによって、長期保管後の香味と色沢の保持性を検証した。
官能評価の方法は、試験1と同様に実施したが、採用したコントロールと評価項目のみ下記のとおり変更した。
コントロールには、各実施例と同様のサンプルを再度製造し、乾燥、粉砕後したサンプルを直ちに採用した。
(青み)
3:コントロールと同等の青みを保持しており、良好である。
2:コントロールよりも青みが少し弱いが、許容範囲である。
1:コントロールよりも青みが明らかに弱く、あまり良くない。
(色沢)
3:コントロールと同等の緑色を保持しており、良好である。
2:コントロールよりも緑色が少し弱いが、許容範囲である。
1:コントロールよりも緑色が明らかに弱く、あまり良くない。
(苦渋味)
3:コントロールと同等に苦渋味を抑制しており、良好である。
2:コントロールよりも苦渋味を少し感じるが、許容範囲である。
1:コントロールよりも苦渋味が感じ、あまり良くない。
(水に分散した際の水色)
3:コントロールと同等の緑色を保持しており、良好である。
2:コントロールよりも緑色が少し弱いが、許容範囲である。
1:コントロールよりも緑色が明らかに弱く、あまり良くない。
(総合評価)
◎:合計点数が10~12点であり、非常に良好。
○:合計点数が8~9点であり、且つ「1」の評価が無い。良好。
△:合計点数が7点以下である、又は「1」の評価があり、良くない。
Figure 0007428498000002
(考察)
試験2結果から、粉末茶において、クロロフィルの含有量、フェオフィチン含有量及びフェオフィチン含有量に対するクロロフィル含有量を調整することによって、長期保管に供しても、生葉のような鮮度感のある青みと、緑色の色沢と、苦渋味の低減を保持できることが分かった。
よって、本発明の製造方法において、加えてクロロフィルの含有量、フェオフィチン含有量及びフェオフィチン含有量に対するクロロフィル含有量を調整することによって、保存による香味変化の少ない、すなわち保存性の高い粉末茶が得られることが分かった。
(試験3)
試験1及び試験2で得られた粉末茶(サンプル)を下記のとおり、様々な飲食品に添加し、飲食品の香味や色合いを確認した。
<実施例16>
実施例7で得られた粉末茶3gをアイスクリーム200ml(バニラ、明治エッセル社製)にふりかけ食したところ、茶葉の青みと、ほのかな苦渋味を感じるアイスクリームを得ることができた。
<実施例17>
実施例7の途中で得られたクロロフィル調整茶葉を、ローターバン(VIKRAM INDIA LIMITED社製)及びクラッシュミルサー(Iwatani社製)を用いて、粒子径が約0.5mmの顆粒状の粉末茶組成物を得た。
得られた粉末茶組成物3gを湯のみに入れ、180ml、10℃の湯に分散させることで茶飲料を得た。
得られた茶飲料は、茶葉の青みを強く感じ、濃い緑色であり、苦渋味をあまり感じないものであった。
<実施例18>
実施例7で得られた粉末茶10gをスポンジケーキミックス100g(日清製粉社製)に添加し、焼くことで緑茶スポンジケーキを得た。得られた緑茶スポンジケーキの香味は、茶葉の青みと、ほのかな苦渋味を感じるものであった。
<実施例19>
実施例7で得られた粉末茶2gを湯のみに入れ、180ml、80℃の湯に分散させることで茶飲料を得た。
得られた茶飲料は、茶葉の青みを強く感じ、濃い緑色であり、苦渋味をあまり感じないものであった。
(考察)
本発明の粉末茶、若しくは粉末茶組成物を添加・配合したアイスクリームやケーキにおいても生葉のような鮮度感のある青みと、緑色の色沢と、適度な苦渋味を有していた。本発明の粉末茶は、茶飲料としてだけでなく、食品への添加、配合に適した香味を有することが分かった。

Claims (7)

  1. 粉末茶の製造方法であって、
    摘採した茶葉のクロロフィル含有量を加熱によって調整してクロロフィル調整茶葉を得る加熱工程と、
    当該クロロフィル調整茶葉を粉砕して粉末茶を得る粉砕工程と、を含み、
    前記加熱工程では、茶葉に含まれるクロロフィル含有量を200~800mg/100gに調整し、茶葉に含まれるフェオフィチン含有量を50~500mg/100gに調整し、且つ、茶葉に含まれる水分量を7~60.7質量%に調整することを特徴とする粉末茶の製造方法。
  2. 前記摘採した茶葉が、茶葉茎部及び茶葉非茎部からなり、
    前記加熱工程では、当該茶葉に含まれるフェオフィチン含有量に対する、当該茶葉非茎部に含まれるクロロフィル含有量の比率(茶葉非茎部クロロフィル含有量/茶葉フェオフィチン含有量)を0.5~8.0に調整することを特徴とする、請求項に記載の粉末茶の製造方法。
  3. 前記加熱工程は、茶葉を加熱して酵素を失活させると共に、茶葉のクロロフィル含有量を調整して酵素失活茶葉を得る酵素失活工程と、当該酵素失活茶葉を乾熱より加熱して、茶葉のクロロフィル含有量を調整してクロロフィル調整茶葉を得る乾熱加熱工程と、を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末茶の製造方法。
  4. 前記粉砕工程では、前記クロロフィル調整茶葉を粉砕して粉末茶を得、当該粉末茶を成形することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の粉末茶の製造方法。
  5. 前記粉末茶由来の水分を結着剤として用いて成形を行うことを特徴とする請求項に記載の粉末茶の製造方法。
  6. 粉末茶組成物の製造方法であって、
    摘採した茶葉のクロロフィル含有量を加熱によって調整してクロロフィル調整茶葉を得る加熱工程と、
    当該クロロフィル調整茶葉を粉砕して粉末茶を得る粉砕工程と、
    当該粉末茶に添加物を加えて粉末茶組成物を得る調合工程と、を含み、
    前記加熱工程では、茶葉に含まれるクロロフィル含有量を200~800mg/100gに調整し、茶葉に含まれるフェオフィチン含有量を50~500mg/100gに調整し、且つ、茶葉に含まれる水分量を7~60.7質量%に調整することを特徴とする粉末茶組成物の製造方法。
  7. 前記摘採した茶葉が、茶葉茎部及び茶葉非茎部からなり、
    前記加熱工程では、当該茶葉に含まれるフェオフィチン含有量に対する、当該茶葉非茎部に含まれるクロロフィル含有量の比率(茶葉非茎部クロロフィル含有量/茶葉フェオフィチン含有量)を0.5~8.0に調整することを特徴とする、請求項に記載の粉末茶組成物の製造方法。
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