JP7311673B2 - 抹茶風味付与剤及びこれを含有する緑茶飲料 - Google Patents

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Description

本発明は、抹茶等の粉砕茶葉の風味を増強し得る抹茶風味付与剤に関する。また、本発明は、粉砕茶葉の風味が増強された緑茶飲料に関する。
玉露茶、煎茶、番茶などの緑茶葉は、生の茶葉を蒸すか炒って加熱し、揉みながら乾燥して製した荒茶を選別して製造されており、これを温水により抽出して緑茶飲料としている。一方、抹茶は、遮光栽培により得られた生茶葉を蒸した後、直ちに(蒸し葉を揉まないで)乾燥してから石臼で微粉末とし、これに少量の湯を注ぎ茶筅で練ったものが、濃茶や薄茶として飲用として供されている。また、抹茶とグラニュー糖から成り、湯や牛乳を入れて攪拌して飲用に供される「グリーンティー(うす茶糖)」も知られている。
近年、緑茶飲料の機能性に対する健康志向の高まりから、常温流通を可能にした容器詰緑茶飲料の市場が拡大している。この容器詰緑茶飲料は、加熱殺菌によって緑茶本来の良好な香りが大幅に減少してしまい、緑茶飲料本来のコクや甘味が低下する。そこで、抹茶等の粉砕茶葉を利用して、緑茶飲料の風味を向上する方法が種々提案されている。そのような方法には、例えば、粒子径2μm以下の微細化抹茶を高濃度で含有する粉末茶に特定量のグリセロ糖脂質を混合して微細化抹茶の香り立ちを増強する方法(特許文献1)、粒子径10~80μmの粉砕茶葉を含有する緑茶飲料にヘキサナールやリナロールを含有させることにより茶葉由来粒子のざらつき感を低減し、粉砕茶葉が持つコクと深い味わいを十分に味わうことができる緑茶飲料を得る方法(特許文献2,3)、テアニン及び/又はグルタミン酸濃度を特定範囲に調整して高濃度に含有する茶葉由来粒子のざらつき感を低減する方法(特許文献4)、などがある。
抹茶等の粉砕茶葉を含む飲料は、湯に抽出されない茶葉成分(油溶成分)をも摂取できるという利点がある。しかし、湯に抽出されない油溶成分は、光、酸素、熱等に対して非常にセンシティブであり、抹茶等の粉砕茶葉を使用した飲料は極めて変色しやすいという問題がある。そこで、二価金属イオンを利用した緑色を保持する技術が種々提案されている。例えば、亜鉛とビタミン類を組み合わせて用いることにより、大麦若葉の粉砕物と抹茶等を含む緑色系飲料の緑色を保持する方法(特許文献5)、ケール、大麦若葉、小麦若葉、明日葉、クワ若葉などの緑葉を原料とする青汁飲料の製造において、銅イオン又は亜鉛イオンから選択される金属イオンを5~50ppm程度添加することにより、鮮やかな緑色を保持しており、かつ青汁特有の異臭を低減させた容器詰青汁飲料の製造方法(特許文献6)、緑茶抽出液に金属酵母、グルコン酸塩、硫酸塩等の中から選ばれる少なくとも一つの形で亜鉛イオン及び/又は銅イオンを添加して抽出物中の金属と亜鉛イオン、銅イオンを置換処理することで、緑色度の高い茶飲料を得る方法(特許文献7)等がある。
特開2014-68636号公報 特開2018-139581号公報 特開2018-139582号公報 特開2017-000071号公報 特開2014-54200号公報 特開2009-165439号公報 特開2005-333862号公報
抹茶入り緑茶飲料において、抹茶風味を高めようとする場合、生産量や価格の面で原料として高濃度の抹茶を工業的に使用することが困難であった。また、高濃度の抹茶を用いた場合にも、水不溶性固形分に起因する異物感やざらつきがあり飲料としてのドリンカビリティが損なわれるため、風味増強するほどの含有量を使用することは困難であった。
本発明は、抹茶の使用量を増やすことなく抹茶風味を増強することができる、抹茶風味付与剤を提供することを目的とする。また、本発明は、抹茶風味が増強された抹茶入り緑茶飲料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、抹茶等の粉砕茶葉に対して所定量の亜鉛を含有させることにより、抹茶風味を増強できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、これに限定されるものではないが、以下の態様を包含する。
[1]
亜鉛を有効成分として含有する、抹茶風味付与剤。
[2]
緑茶飲料の呈味を強化するための、[1]に記載の抹茶風味付与剤。
[3]
亜鉛源、緑茶葉エキス、並びに粉砕茶葉を含有し、以下、(A)、(B)及び(C)を満たす緑茶飲料:
(A)飲料中の亜鉛含有量が、0.08~4mg/100mLである;
(B)飲料の680nmにおける吸光度が、0.08~0.85である;
(C)飲料のpHが5~7である。
[4]
粉砕茶葉が抹茶である、[3]に記載の緑茶飲料。
[5]
カテキン類の濃度が40mg/100mL以下である、[3]又は[4]に記載の飲料。
[6]
粉砕茶葉が0.001g/100mL~0.1g/100mL添加されている、[3]~[5]のいずれか一項に記載の飲料。
[7]
亜鉛源が亜鉛の水溶性塩又は亜鉛含有酵母である、[3]~[6]のいずれか一項に記載の緑茶飲料。
[8]
亜鉛源が亜鉛を4質量%以上含有する亜鉛含有酵母エキスである、[7]に記載の緑茶飲料。
[9]
亜鉛源が亜鉛を4質量%以上含有する亜鉛含有酵母エキスであり、飲料の680nmにおける吸光度が0.08~0.85である、[8]に記載の緑茶飲料。
[10]
加熱殺菌済である、[3]~[9]のいずれか一項に記載の緑茶飲料。
[11]
加熱殺菌済容器詰緑茶飲料である、[10]に記載の緑茶飲料。
[12]
亜鉛の水溶性塩又は亜鉛含有酵母、緑茶葉エキス、粉砕茶葉、アスコルビン酸又はその塩、並びにpH調整のためのアルカリ金属塩からなる、[7]~[11]のいずれか一項に記載の緑茶飲料。
[13]
緑茶葉エキス及び粉砕茶葉を含有する緑茶飲料の製造方法であって:
(A)亜鉛源を用いて飲料中の亜鉛含有量を0.08~4mg/100mLに調整する工程;
(B)飲料の680nmにおける吸光度を0.08~0.85に調整する工程;及び
(C)飲料のpHを5~7に調整する工程
を含む、上記製造方法。
[14]
以下の工程(イ)~(ホ):
(イ)緑茶葉を、水、熱水又は抽出助剤を添加した水溶液で抽出して、緑茶葉エキス
を調製する工程;
(ロ’-1)前記緑茶葉エキスに水不溶性亜鉛含有酵母を混合して、混合液中の亜鉛含有量を0.08~4mg/100mLに調整する工程;
(ロ’-2)前記混合液から固液分離手段により固体(水不溶性成分)を除去する工程;
(ハ’)前記固体が除去された液に粉砕茶葉を混合して、緑茶飲料の680nmにおける吸光度を0.08~0.85に調整する工程;
(ニ)pH調整剤を用いて前記緑茶飲料のpHを5~7に調整する工程;及び
(ホ)前記緑茶飲料を容器に充填する工程
を含む、容器詰緑茶飲料の製造方法。
本発明によれば、抹茶等の粉砕茶葉の使用量を減らしながらも、粉砕茶葉のコクや甘みが増強された緑茶飲料を提供することが可能となる。
(抹茶風味付与剤)
本発明では、抹茶風味付与剤として亜鉛(Zn)を有効成分として用いることを特徴とする。本発明では、抹茶等の粉砕茶葉とともに亜鉛を共存させることにより、粉砕茶葉の有する爽快な苦味・甘さ・香ばしさのある豊かな風味を付与又は増強することができる。粉砕茶葉として抹茶を用いた場合には、じんわりと拡がる旨味と濃茶を点てたときのような濃厚で深い味わい(本明細書中、「コク」という)を付与又は増強することが可能となる。本明細書では、粉砕茶葉の有する爽快な苦味・甘さ・香ばしさのある豊かな風味、及びじんわりと拡がる旨味と濃茶を点てたときのような濃厚で深い味わいを合わせて「抹茶風味」と呼ぶ。
ここで、本明細書でいう「粉砕茶葉」とは、抹茶や、煎茶、かぶせ茶、玉露等の緑茶葉を粉末状にしたものを意味する。水に不溶の粒子からなり、その形状は特に制限されるものではなく、繊維状のものも含まれる。粉砕茶葉は、1種類を用いてもよいし、複数種類を併用して用いてもよい。粉砕茶葉は、粉砕方式(湿式粉砕、乾式粉砕)や粉砕機の種類(石臼、ミル、ミキサー、ホモジナイザー、ラインミキサー、エマルダー、マイルダー、チョッパー、パルパーフィッシャー等)等、特に制限されず、当該分野でよく知られた方法によって製造できる。
粉砕茶葉の粒子径は、効果の顕著さから、90積算%粒子径(D90)が1~80μmであることが好ましく、10~70μmであることが好ましく、20~60μmであることがより好ましく、25~50μmであることがさらに好ましい。ここで、90%積算粒子径(D90)とは、レーザー回折型粒度分布測定装置で測定したD90の方法で測定したものであり、体積分率で粒子の小さい方から90%が含まれる粒子径を意味する。
本発明における亜鉛としては、食品に用いることができる態様で添加しうるものであれば特に制限されない。本発明の抹茶風味付与剤は、亜鉛源として、グルコン酸塩、硫酸塩、塩化亜鉛、クエン酸塩等の亜鉛の水溶性塩や、亜鉛含有酵母等を含有することができる。特に、亜鉛含有酵母を用いた場合、亜鉛以外の酵母由来の水溶性成分が亜鉛と相加的又は相乗的に作用して、粉砕茶葉の有する風味を増強させることができる。亜鉛含有酵母を用いるのは本発明の好適な態様の一例である。ここで、亜鉛含有酵母とは、パン酵母やビール酵母等を培養する段階で亜鉛を取り込ませ、亜鉛として2質量%、好ましくは3質量%、より好ましくは4質量%以上含有する酵母をいう。本明細書において、「亜鉛含有酵母」には、亜鉛含有酵母の生菌体又は死菌体を含む水不溶性亜鉛含有酵母、及び亜鉛含有酵母に酵素、熱水などの処理を行って酵母の有用な成分(亜鉛等)を抽出した亜鉛含有酵母エキスが含まれる。市販品としては、亜鉛イースト(GROW社製)、ミネラル酵母-
Zn(オリエンタル酵母社製)、亜鉛イースト(Bio Springer社製)等の食用酵母(亜鉛含有)を挙げることができる。水不溶性亜鉛含有酵母を用いる場合には、香味及び食感の観点から、ろ過等の固液分離手段を用いて飲料中から水不溶性成分を除去することが好ましい。
したがって、本発明の抹茶風味付与剤は、一態様としては亜鉛の水溶性塩を含有するか又はこれからなる。本発明の抹茶風味付与剤は、別の態様としては、亜鉛含有酵母を含有するか又はこれからなる。
本発明の抹茶風味付与剤は、亜鉛源に加えて、食品として許容される担体等と共に製剤化してもよい。 本発明の抹茶風味付与剤は、さまざまな食品に添加して抹茶風味を付与又は増強することができるが、特に、緑茶飲料の呈味を強化するために好適に用いられる。たとえば、本発明の抹茶風味付与剤は、加熱殺菌済みの容器詰緑茶飲料の呈味強化剤として好適に用いられる。ここで、本明細書でいう緑茶飲料とは、緑茶葉から水や熱水、抽出助剤を添加した水溶液で抽出した緑茶葉エキスを主成分として含有する飲料を意味する。抽出原料となる緑茶葉には、やぶきた種に加えて、ゆたかみどり、おくみどり、さえみどり、さやまかおり、あさつゆ、おくひかり、さみどり、及びごこう等の緑茶の調製にふさわしい植物品種が含まれる。本発明の抹茶風味付与剤を添加するための緑茶飲料としては、抹茶等の粉砕茶葉を含むものであることが好ましい。本発明の抹茶風味付与剤を添加するための緑茶飲料としては、抹茶等の粉砕茶葉を含み、680nmにおける吸光度が0.08~0.85、0.1~0.8、又は0.2~0.7であるものであることが好ましい。粉砕茶葉は、最終的に緑茶飲料の680nmにおける吸光度を上記範囲に調整するために必要な量を添加、含有させる。粉砕茶葉を添加する場合、その添加量は0.001~0.1g/100mL、0.005~0.05g/100mL、又は0.007~0.02g/100mLであることが好ましい。緑茶飲料中の粉砕茶葉含有量は、水不溶性固形分を回収してその乾燥重量を求めることによって、たとえば以下の方法により便宜的に測ることができる。25℃に恒温した緑茶飲料サンプルを良く攪拌し均一な状態にし、10gを遠沈管に定量し、卓上多本架遠心機(KOKVSAN H-28F)を用いて、処理温度20℃、回転数3000rpmで10分間遠心する。保留粒子径が5μm(たとえばADVANTEC No.3
直径150mm)の濾紙の乾燥質量を測定した後、遠沈管内の遠心後の上清固形分を減圧濾
過により集める。次に遠沈管中にイオン交換水を加えて攪拌し、再び同条件で10分間遠心する。遠沈管内の遠心後の上清固形分を該濾紙上に減圧濾過により集める。さらに遠沈管中にイオン交換水を加えて攪拌し、同条件で10分間遠心する。遠沈管内の遠心後の上清固形分を該濾紙上に減圧濾過により集める。残った固形分も該濾紙上に集めて水洗し、減圧濾過する。水洗に用いたイオン交換水は全量で100mLとする。該濾紙を乾燥後に質量を測定する。(水不溶性固形分量(質量%))=((乾燥後の濾紙質量(g))-(濾紙の初期乾燥質量(g)))/10(g)×100とする。
本発明の抹茶風味付与剤の使用量は所望により適宜選択すればよいが、緑茶飲料の呈味を強化するために用いる場合、緑茶飲料中の亜鉛の含有量が0.08~4mg/100mL、0.1~3.0mg/100mL、又は0.15~2.0mg/100mLとなるように配合することが好ましい。
(緑茶飲料)
本発明は、抹茶等の粉砕茶葉の有する豊かな風味が付与された緑茶飲料にも関する。具体的には、ざらつきを感じない程度の少量の粉砕茶葉を含有する緑茶飲料に、特定量の亜鉛を共存させることにより、粉砕茶葉の風味を付与、強化した緑茶飲料にも関する。粉砕茶葉として抹茶を用いた場合、室温以下の温度帯で飲用した際にも、豊かな旨味と濃厚なコクを味わうことが可能となる。ここで、「少量の粉砕茶葉を含有する緑茶飲料」とは、濁度を指標として粉砕茶葉の含有度合いを表したときに、0.08~0.85となる量の粉砕茶葉を含有する緑茶飲料をいう。本明細書でいう「濁度」とは、飲料を500mLP
ETボトルに充填して20℃にし、攪拌(上下に10回振る)して10秒静置後に取得される、680nmにおける吸光度OD680を意味する。濁度が0.85を超える量の粉砕茶葉を含有する飲料は、水不溶性固形分に起因する異物感やざらつきを感じることがある。また、濁度が0.08未満となる量の粉砕茶葉では、亜鉛を共存させても粉砕茶葉の有する風味を十分に付与することができないことがある。本発明の緑茶飲料は、粉砕茶葉を、濁度が0.1~0.8となる量で含有することが好ましく、0.2~0.7となる量を含有することがより好ましい。濁度が0.08~0.85となる量の粉砕茶葉とは、具体的には、0.001~0.1g/100mL、0.005~0.05g/100mL、又は0.007~0.02g/100mLとなる量の粉砕茶葉を添加した緑茶飲料である。
本発明の緑茶飲料は、粉砕茶葉とともに特定量の亜鉛を含有することを特徴とする。本発明の緑茶飲料における亜鉛含有量は、0.08~4mg/100mLである。0.08mg/100mL未満では、本発明の抹茶風味付与効果が十分に発揮されない。また、亜鉛含有量が多いと、粉砕茶葉の油溶性成分や不溶性固形物と相俟って、濃厚過ぎる、くどいなど、不快感を感じるような強い味として感じられることがあることから、亜鉛含有量の上限は4mg/100mL程度である。亜鉛含有量は、0.1~3.0mg/100mLが好ましく、0.15~2.0mg/100mLがより好ましい。亜鉛の含有量は、ICP発光分光法により測定することができる。亜鉛は水溶性塩又は亜鉛含有酵母の形態で配合することができるが、特に亜鉛含有酵母を用いることが好ましい。
緑茶飲料の風味強化やバランスの観点から、本発明の緑茶飲料のpHは5~7である。より好ましくは5.3~6.8であり、さらに好ましくは5.5~6.6である。pHは、飲料100mLを300mLのビーカーに量り取り、20℃に温度調整をしてpHメーターにより測定される値とする。緑茶飲料のpHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重曹などのアルカリ金属塩を用いて調整することができる。
緑茶飲料のベースとなる緑茶葉エキスは、1種類の緑茶葉から抽出されたものであってもよく、2種類以上の緑茶葉からそれぞれ別個に調整された緑茶葉エキスの混合物でもよく、2種類以上の緑茶葉の混合物から抽出された緑茶葉エキスであってもよい。なお、ここでいう緑茶葉エキスには、緑茶葉抽出液、及び抽出液を乾燥処理して粉末化した粉末状のものが含まれる。緑茶葉エキスは、常法により製造することができる。通常、緑茶葉から熱水又は水、所望により抽出助剤等を用いた抽出処理によって製造されるが、抽出処理の温度や抽出時間は、茶葉の種類や所望する飲料品質を考慮して適宜設計することができる。なお、緑茶葉エキスは市販されているものを用いてもよい。
上記のとおり、本発明の緑茶飲料は緑茶葉エキス及び粉砕茶葉を含有することからカテキン類を含有する。本発明の亜鉛による粉砕茶葉の甘みやコクの増強作用は、カテキン類の渋味が少ない方が知覚し易い。効果の顕著さから、本発明の緑茶飲料におけるカテキン類の濃度は、40mg/100mL以下であることが好ましい。本発明において、「カテキン類」というときは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート又はこれらのいずれかの混合物をいい、カテキン類の含有量をいうときは、これらの総量を指す。飲料中のカテキン類含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法によって、測定・定量される。
このようなカテキン類含有量が少ない渋味の少ない本発明の緑茶飲料は、抹茶等の粉砕茶葉のコクや甘みを十分に感じることができる、嗜好性の高い緑茶飲料である。緑茶飲料におけるカテキン類含有量は、35mg/100mL以下がより好ましく、33mg/100mL以下がさらに好ましく、30mg/100mL以下が特に好ましい。カテキン類
の渋味は茶飲料の風味を形成するのに重要であることから、カテキン類は少なくとも10mg/100mL以上含有することが好ましく、15mg/100mL以上であることがより好ましく、20mg/100mL以上であることがさらに好ましい。カテキン類の含有量は、緑茶葉エキスの抽出温度や配合割合を調整する、緑茶葉エキスに酵素処理を行う、市販のカテキン類製剤を使用するなど、公知の方法を用いて調整することができる。
ところで、常温で長期間保存可能な容器詰緑茶飲料は、過酷な加熱殺菌やアルカリ成分の添加によるpH調整など、容器詰緑茶飲料特有の処理に伴い、緑茶本来のコクや甘みが大きく減少することが知られている。本発明の緑茶飲料は、粉砕茶葉の有するコクや甘みといった抹茶風味が付与又は増強された緑茶飲料であり、このような過酷な加熱殺菌やアルカリ金属塩が添加された容器詰緑茶飲料において、顕著な効果が知覚される。したがって、効果の顕著さから、加熱殺菌済飲料は、本発明の緑茶飲料の好適な態様の一例である。ここで、加熱殺菌済飲料とは、60~150℃(好ましくは90~150℃、より好ましくは110~150℃)で、1秒間~60分間(好ましくは1秒間~30分間)の加熱殺菌処理が行われた飲料をいう。加熱殺菌処理の方法は、容器によって適宜選択することができ、容器として耐熱性容器(金属缶、ガラス等)を使用する場合には、レトルト殺菌(110~140℃、1~数十分間)を行えばよい。また、容器として非耐熱性容器(PETボトル、紙容器等)を用いる場合は、例えば、調合液を予めプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌(UHT殺菌:110~150℃、1~数十秒間)し、一定の温度まで冷却した後、容器に充填することができる。
また、上記のようなpH調整のためのアルカリ成分に加えて、酸化防止剤としてのアスコルビン酸又はその塩が添加された飲料は、アスコルビン酸又はその塩を含まない飲料よりもアルカリ成分が多く含まれるために、緑茶飲料のコクや甘みが損なわれやすい。このようなアスコルビン酸及びアルカリ金属塩が添加された飲料も、本発明の緑茶飲料の好適な態様の一例である。本発明の緑茶飲料におけるアスコルビン酸の含有量は、10~80mg/100mLが好ましく、15~70mg/100mLがより好ましく、20~60mg/100mLがさらに好ましい。
本発明の緑茶飲料は、粉砕茶葉のコクや甘みが強化された結果、レトロネーザルアロマ(飲料を飲み込んだ後に喉から鼻を通じて戻ってくる香り)も強化される。通常、PETボトルやボトル缶のような開口部の狭い容器に飲料を詰めて飲用する場合には、コップのような開口部の広い容器を用いた場合と比べて、飲料の表面からの香りが鼻に直接には入りにくいため、香りが弱く感じられる傾向があるが、本発明の緑茶飲料は、開口部の狭い容器に詰められた場合であっても、レトロネーザルアロマが強化されている。効果の顕著さから、開口部の狭い容器に詰められた容器詰緑茶飲料も本発明の好適な態様の一例である。ここで、開口部の狭い容器とは、飲み口となる開口部の面積が1200mm以下、好ましくは1000mm以下、より好ましくは900mm以下、特に好ましくは800mm以下の容器をいう。そのような開口部の狭い飲料用容器としては、キャップ(φ28mm、φ38mm)を備えたPETボトルやボトル缶、プルタブ式又はステイオンタブ式など蓋の一部のみが開口するパーシャルオープンエンドの缶蓋を備えるアルミ缶やスチール缶、ストローが付けられた紙パック、同じくストローが付けられたチルドカップなどが挙げられる。
本発明の緑茶飲料には、上記成分に加え、本発明の初期の目的を逸脱しない範囲であれば、必要に応じて、香料、甘味成分、乳成分、各種エキス類等を配合することができるが、自然な緑茶飲料の風味が味わえることから、これら成分を配合しないことが好ましい。本発明の効果が最も発現される飲料は、本発明の効果が顕著に知覚される飲料は、亜鉛の水溶性塩又は亜鉛含有酵母、緑茶葉エキス、粉砕茶葉、アスコルビン酸又はその塩、及びpH調整のためのアルカリ金属塩からなる、緑茶飲料である。
(緑茶飲料の製造方法)
本発明は、抹茶風味が付与又は増強された緑茶飲料の製造方法にも関する。本発明の緑茶飲料の製造方法は、緑茶葉エキス及び粉砕茶葉を含有する緑茶飲料の製造方法であって、(A)亜鉛源を用いて飲料中の亜鉛含有量を0.08~4mg/100mLに調整する工程;(B)飲料の680nmにおける吸光度を0.08~0.85に調整する工程;及び(C)飲料のpHを5~7に調整する工程を含む。上記工程(B)では、粉砕茶葉を0.001~0.1g/100mLとなる濃度で添加して、飲料の680nmにおける吸光度を0.08~0.85に調整することが好ましい。
本発明の緑茶飲料の製造方法では、亜鉛源として亜鉛含有酵母を用いることが好ましいが、亜鉛含有酵母には酵母臭等の独特の臭い及び酵母味等の独特の味が存在することから、亜鉛含有酵母由来の水不溶性成分を含まないように製造することが好ましい。すなわち、以下の工程(イ)~(ハ)を含む工程とすることが好ましい。
(イ)亜鉛含有酵母エキスと緑茶葉エキスを混合して、混合液中の亜鉛含有量を0.08~4mg/100mLに調整する工程、
(ロ)前記混合液に粉砕茶葉を混合して、飲料の680nmにおける吸光度を0.08~0.85に調整する工程、及び
(ハ)pH調整剤を用いて飲料のpHを5~7に調整する工程
上記工程(イ)の亜鉛含有酵母エキスには、市販品を用いてもよいし、水不溶性亜鉛含有酵母に抽出溶媒(水、水溶性有機溶媒、又はこれらの混合物)を混合、攪拌した後、固液分離して得られる抽出物を用いても良い。水不溶性亜鉛含有酵母から抽出物を得る場合、通常、水不溶性亜鉛含有酵母1重量部に対して5~100重量部程度の抽出溶媒が用い
られる。抽出効率の観点から、抽出溶媒は温水であることが好ましい。具体的には、20~100℃の温水、好ましくは40~95℃の温水、より好ましくは60~90℃の温水、さらに好ましくは70~90℃の温水である。攪拌手段としては、食品等の製造工程で通常使用される各種の攪拌機を使用すればよい。具体例としては、プロペラ攪拌機、高速ミキサー、ホモミキサー、カッター等の各種ミキサーや、ニーダー、エクストルーダー、タービュライザーに代表される混錬機等が挙げられる。中でも、高速に攪拌できるミキサー類を用いるのが好ましい。攪拌時間は、適宜選択すればよいが、通常、1分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上である。生産性の観点から、攪拌時間は24時間以下、好ましくは12時間である。固液分離手段としては、遠心分離やその他濾過手段(例えば、限外濾過、微細濾過、精密濾過、逆浸透膜濾過、電気透析、生物機能性膜などの膜濾過等)から選択される一以上を用いることができる。中でも酸化劣化の影響の少なさ、操作の簡便性等から遠心分離が好適に用いられる。遠心分離は、例えば流速:200~10000L/h、回転数:5000~20000rpmの条件で行えばよく、この際、流速、回転数、遠心沈降面積(Σ)などを変えることで最終的に得られる抽出液の清澄度を調整することができる。
上記の工程(イ)~(ハ)に変えて、以下の工程(イ’)~(ニ’)を含む工程を含む工程であってもよい。
(イ’)水不溶性亜鉛含有酵母と緑茶葉エキスを混合して、混合液中の亜鉛含有量を0.08~4mg/100mLに調整する工程、
(ロ’)前記混合液から固液分離手段により固体(水不溶性成分)を除去する工程、
(ハ’)前記固体が除去された液に粉砕茶葉を混合して、飲料の680nmにおける吸光度を0.08~0.85に調整する工程、及び
(ニ’)pH調整剤を用いて飲料のpHを5~7に調整する工程
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定される
ものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
本実施例中、飲料中の各成分の分析は以下の測定により実施した。
(亜鉛含有量の分析)
緑茶飲料中の亜鉛含有量は、ICP発光分光分析装置(Optima2100DV、パーキンエルマー社製)を用いてICP発光分光分析法により測定した。
(カテキン類含有量の分析)
試料となる緑茶飲料をフィルター(0.45μm)でろ過し、HPLC分析に供した。HPLCの分析条件は以下のとおり。
・HPLC装置:TOSOH HPLCシステム LC8020 model II
・カラム:TSKgel ODS80T sQA(4.6mm×150mm)
・カラム温度:40℃
・移動相A:水-アセトニトリル-トリフルオロ酢酸(90:10:0.05)
・移動相B:水-アセトニトリル-トリフルオロ酢酸(20:80:0.05)
・検出:UV275nm
・注入量:20μL
・流速:1mL/min.
・グラジエントプログラム:
時間(分) %A %B
0 100 0
5 92 8
11 90 10
21 90 10
22 0 100
29 0 100
30 100 0
・標準物質:カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート(クリタ高純度試薬)
(アスコルビン酸含有量の分析)
試料となる緑茶飲料をフィルター(0.45μm)でろ過した液1~5gに5%メタリン酸溶液に加え(50mL)て希釈した。これを遠心分離、ろ過した後、ろ液1mLを小試験管にとり、5%メタリン酸溶液1mLを加えた後、0.2%ジクロロフェノールインドフェノール溶液100μLと2%チオ尿素-5%メタリン酸溶液2mLを加え、これに2%2,4-ジニトロフェニルヒドラジン-4.5mol/L硫酸0.5mLを加え、38~42℃で16時間反応させた。反応後、酢酸エチル3mL(振盪60分間)で抽出して無水硫酸ナトリウムで乾燥し、HPLC分析に供した。HPLCの分析条件は以下のとおり。
・HPLC装置:LC-10AS(島津製作所製)
・検出:UV-VIS検出器(波長495nm)、SPD-10AV(島津製作所製)
・カラム:Senshupak Silca-1100(4.6mm×100mm)、
・カラム温度:35℃
・移動相:酢酸エチル-ヘキサン-酢酸-水の混合液(60:40:5:0.05)
・流速:1.5mL/min
(濁度の測定)
飲料の濁度は、飲料を500mLPETボトルに充填して20℃にし、攪拌(上下に10回振る)して10秒静置後に、分光光度計(島津製作所 分光光度計 UV-1600)を用いて、680nmにおける吸光度OD680を測定した。
(pHの測定)
飲料100mLを300mLのビーカーに量り取り、20℃に温度調整をしてpHメーター(堀場製作所製、HORIBA pHメーターF21)を用いて測定した。
実験1:亜鉛による抹茶風味付与効果(1:亜鉛の水溶性塩)
まず、緑茶飲料のベースとなる緑茶葉エキスを製造した。煎茶葉(一番茶を中心とした弱火煎茶)の乾燥重量に対して30重量部の水を抽出溶媒として用いた。60℃の水で5分間抽出した後、茶葉を分離し、さらに遠心分離処理(6000rpm、10分)して粗大な粉砕茶組織や茶粒子などの固形分を除去して、カテキン類含有量が60mg/100mL緑茶葉エキスを得た(緑茶葉エキスA)。緑茶葉エキスAをカテキン類含有量が12.5mg/100mLとなるように水で希釈して、緑茶抽出液を製造した。この緑茶抽出液に、粉砕茶葉として、碾茶を石臼で挽いて製造された抹茶(D90:20μm)を0.007g/100mLとなるように混合した。これに、40mg/100mLの濃度となるようにアスコルビン酸を添加し、さらにpH6.4となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を混合した。さらに、グルコン酸亜鉛(扶桑化学社製、亜鉛含有量約14%)を亜
鉛含有量が表1の含有量となるように添加した。これを125℃で7分間加熱殺菌処理した。この加熱殺菌済緑茶飲料をPET容器(500mL)に充填して容器詰緑茶飲料を得た。容器詰緑茶飲料のカテキン類含有量は13mg/100mL、アスコルビン酸含有量は31mg/100mLであり、濁度(OD680)は0.15、pHは6.2であった。
得られた容器詰緑茶飲料について、専門パネル6名にて、抹茶風味の指標として、緑茶飲料の濃厚感(コクや甘みの強さ)を評価した。評価は、20℃の飲料50mLずつをプラスチックカップに注いで飲用し、亜鉛無添加を1点(コントロール)、サンプル1-10の飲料の濃厚感を4点として4段階評価法にて評価した。すなわち、1点:コントロールと同程度の濃厚感である、2点:濃厚感がわずかに付与されている、3点:濃厚感が付与されている、4点:濃厚感がよく付与されている、として、各パネルが評価した結果を再度全員で自由討議し、全員の合意のもとに整数値で表記した。なお、評価点は、3点以上のものが嗜好性の高い香味良好な緑茶飲料であると判定した。評価結果を表1に示す。0.08mg/100mL以上の亜鉛を含有する緑茶飲料は、じんわりと拡がる旨味と濃厚で深い味わい(コクや甘み)を有する緑茶飲料であった。
また、この緑茶飲料をPETボトルから直接に飲用した際の抹茶風味の強さについても評価した。6名のパネル全員が、PETボトルから直接飲用した場合に、亜鉛無添加の飲料と0.08mg/100mL以上の亜鉛を含有する緑茶飲料の違いがより鮮明であり、特に、飲用後の余韻(コクとレトロネーザルアロマ)が強化されていると答えた。
Figure 0007311673000001
実験2:粉砕茶葉の効果(1:含有量)
実験1の1-5の緑茶飲料について、表2の濁度となる量の抹茶を配合すること以外は、実験1と同様にして容器詰緑茶飲料(アスコルビン酸含有量:31mg/100mL、pHは6.1)を製造し、評価した。また、参考例として、グルコン酸亜鉛中のグルコン酸と同量のグルコン酸を配合した緑茶飲料(アスコルビン酸含有量:31mg/100mL、pHは6.1)を製造した。
評価結果を表2に示す。グルコン酸のみを配合し、亜鉛を含まない緑茶飲料(参考例)では全く抹茶風味付与効果が確認できなかったことから、亜鉛が粉砕茶葉の風味を増強していることが判明した。この亜鉛による抹茶風味付与効果は、濁度が0.08以上となる粉砕茶葉が含有されている場合に発現することが示唆された。
Figure 0007311673000002
実験3:粉砕茶葉の効果(2:粉砕茶葉の種類(煎茶))
実験1の1-1、1-5、及び1-8の緑茶飲料で使用した抹茶を、煎茶(深蒸し茶)をミルで粉砕して得られた粉砕茶葉(D90:25μm)に変える以外は、実験1と同様にして容器詰緑茶飲料を製造して、評価した。評価結果を表3に示す。粉砕茶葉が煎茶の場合にも、亜鉛と粉砕茶葉を共存させることによりコクや甘みといった抹茶風味が強化された。
Figure 0007311673000003
実験4:粉砕茶葉の効果(3:粉砕茶葉の種類(微細化抹茶))
実験1の抹茶を20倍量の水に懸濁させて、マルチ撹拌システム(プライミクス株式会社製、商品名「T.K.ロボミックス」、仕様:T.K.ホモミキサー、処理条件:回転数10,000rpm×5分間)を用いて微細化抹茶(D90:2μm)の分散液を得た。この微細化抹茶分散液を、実験1の緑茶葉エキスAをカテキン類含有量が12.5mg/100mLとなるように水で希釈した緑茶抽出液に、15重量%、30重量%の濃度で混合し、さらに実験3と同様に、アスコルビン酸、重曹、グルコン酸亜鉛を添加し、加熱殺菌処理して容器詰緑茶飲料を得た。容器詰緑茶飲料のカテキン類含有量は13~14mg/100mL、アスコルビン酸含有量は31mg/100mLであり、pHは6.2であった。表4に、実験1と同様に評価した結果を示す。粉砕茶葉として微細化抹茶を用いた場合にも、亜鉛による抹茶風味付与効果が確認できた。
Figure 0007311673000004
実験5:亜鉛による抹茶風味付与効果(2)
実験1の緑茶葉エキスAをカテキン類含有量が16mg/100mLとなるように水で希釈し、抹茶の配合量を0.02g/100mLとなるようにした以外は、実験1と同様に、グルコン酸亜鉛を用いて種々の亜鉛含有量の容器詰緑茶飲料(アスコルビン酸含有量:31mg/100mL、pHは6.2)を製造した。実験1と同様に、亜鉛無添加を1点(コントロール)、サンプル5-7の飲料の濃厚感を4点として4段階評価法にて評価した。評価結果を表5に示す。濁度が0.4の緑茶飲料においても、亜鉛による抹茶風味付与効果が確認できた。緑茶飲料5-8について、少しくどいと感じるパネルが1名存在したことから、亜鉛量の上限は4mg/100mL程度であることが示唆された。
Figure 0007311673000005
実験6:カテキン類含有量の影響
表6に示すカテキン類含有量となるように、緑茶抽出液Aの希釈度合いを変える以外は、実験5-1、5-3、及び5-5の緑茶飲料と同様にして容器詰緑茶飲料(アスコルビン酸含有量:31mg/100mL、pHは6.2)を製造し、評価した。評価は、それぞれのカテキン類含有量の緑茶飲料において、亜鉛無添加の飲料の濃厚感を1点として4段階評価した以外は実験1と同様に行った。評価結果を表6に示す。カテキン類含有量が45mg/100mLの緑茶飲料は、カテキン類の渋味が強く知覚され、亜鉛による抹茶風味付与効果が知覚されにくい傾向にあった。カテキン類含有量が8mg/100mLの緑茶飲料は、亜鉛による抹茶風味付与効果は確認できるが、渋味が少なくて水っぽい(薄すぎる)と評価するパネルが存在した。これより、カテキン類含有量は、10~40mg/100mLの緑茶飲料が、亜鉛による抹茶風味付与効果が顕著にあり、風味豊かな緑茶飲料であることが示唆された。
Figure 0007311673000006
Figure 0007311673000007
実験7:亜鉛による抹茶風味付与効果(3)
実験6の6-7及び6-8の緑茶飲料について、抹茶配合量を表7に示す濁度となる量にする以外は、実験1と同様にして緑茶飲料と同様にして容器詰緑茶飲料(アスコルビン酸含有量:31mg/100mL、pHは6.2)を製造し、評価した。濁度0.08となるような少ない量の抹茶を添加した緑茶飲料においても、0.08mg/100mLの亜鉛による抹茶風味付与効果が確認できた。
Figure 0007311673000008
実験8:亜鉛による抹茶風味付与効果(4)
実験7の7-1及び7-2の緑茶飲料について、抹茶配合量を表8に示す濁度となる量にする以外は、実験1と同様にして緑茶飲料と同様にして容器詰緑茶飲料8-1及び8-3(アスコルビン酸含有量:31mg/100mL、pHは6.2)を製造し、評価した。また、亜鉛含有量を0.07mg/100mLとした以外は8-1及び8-3と同じ緑茶飲料8-2も製造した。結果を表8に示す。濁度0.09の緑茶飲料においても、0.08mg/100mLの亜鉛による抹茶風味付与効果が確認できた。
Figure 0007311673000009
実験9:亜鉛含有酵母による抹茶風味付与効果(5)
グルコン酸亜鉛を水溶性の亜鉛含有酵母エキス(イーストリッチシリーズ(亜鉛)、オリエンタル酵母工業株式会社、5質量%亜鉛含有)に変える以外は実験6-7及び6-9と同様にして、容器詰緑茶飲料(アスコルビン酸含有量:31mg/100mL、pHは6.2)を製造した。実験1と同様に、緑茶飲料の風味を評価した。濁度0.85の緑茶飲料においても、0.08mg/100mLの亜鉛による抹茶風味付与効果が確認できた
Figure 0007311673000010
実験10:亜鉛含有酵母による抹茶風味付与効果(1:水溶性の亜鉛含有酵母エキス)
実験6の6-9の緑茶飲料のグルコン酸亜鉛を亜鉛含有酵母に変えて、容器詰緑茶飲料を製造した。まず、実験1の緑茶葉エキスAをカテキン類含有量が25mg/100mLとなるように水で希釈して、緑茶抽出液を製造した。次に、この緑茶抽出液に、実験1の抹茶を0.02g/100mLとなるように混合した。これに、40mg/100mLの濃度となるようにアスコルビン酸を添加し、さらにpH6.4となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を混合した。さらに、水溶性の亜鉛酵母エキス(イーストリッチシリーズ(亜鉛)、オリエンタル酵母工業株式会社、5質量%亜鉛含有)を、緑茶飲料中の亜鉛含有量が0.2mg/100mLとなるように添加した。実験1と同様にして加熱殺菌処理して容器詰緑茶飲料(10-1)を得た。容器詰緑茶飲料のカテキン類含有量は26mg/100mL、アスコルビン酸含有量は32mg/100mLであり、濁度(OD680)は0.4、pHは6.2であった。
10名の専門パネルに対し、亜鉛含有酵母を用いて製造された緑茶飲料(10-1)と、グルコン酸亜鉛を用いて製造された緑茶飲料(6-9)とを組み合わせたペアを提示した。パネルは、提示されたペアのうちどちらの飲料が緑茶風味をより強く感じるか、2点識別試験により評価した。評価は、PETボトルから直接に飲用して行った。上記2点識別試験は日付を変えて3回繰り返して実施した。10名のパネルによる延べ30回分の結果を二項検定により有意差検定した。亜鉛含有酵母を用いた緑茶飲料(10-1)の抹茶風味を、グルコン酸亜鉛を用いた緑茶飲料(6-9)のそれと比較して強く感じると指摘した数は22/30であり、有意(p<0.01)に多かった。パネルは、緑茶飲料(10-1)は、レトロネーザルがより強いと指摘した。

実験11:亜鉛含有酵母による抹茶風味付与効果(2:水不溶性亜鉛含有酵母)
実験9の緑茶飲料の亜鉛含有酵母を水不溶性亜鉛含有酵母に変えて、容器詰緑茶飲料を製造した。まず、実験1の緑茶葉エキスAをカテキン類含有量が25mg/100mLとなるように水で希釈して、緑茶抽出液を製造した。この緑茶抽出液に、実験10の緑茶飲料10-1で用いた亜鉛酵母エキスと同量の水不溶性亜鉛含有酵母(ミネラル酵母シリーズ(亜鉛)、オリエンタル酵母工業株式会社、5質量%亜鉛含有)を混合して5分間攪拌
した後、遠心分離(株式会社コクサン製、商品名「冷却/高速遠心機 H-9R」、処理条件
:6300rpm、2分間)して上澄みを採取した。この上澄み液に実験1の抹茶0.02g/100mL、40mg/100mLのアスコルビン酸を添加し、さらにpH6.4となるように重曹(炭酸水素ナトリウム)を混合した。実験1と同様にして加熱殺菌処理して容器詰緑茶飲料(11-1)を得た。容器詰緑茶飲料のカテキン類含有量は25mg/100mL、亜鉛含有量は0.2mg/100mL、アスコルビン酸含有量は30mg/100mLであり、濁度(OD680)は0.4、pHは6.1であった。
専門パネル10名により、亜鉛含有酵母を用いた緑茶飲料(11-1)と、水溶性の亜鉛含有酵母(酵母エキス)を用いた緑茶飲料(10-1)とを比較し、実験10と同様の評価方法で評価した。その結果、緑茶風味(コク、甘み、レトロネーザル)において差はなく、いずれも濃厚な抹茶風味を有する緑茶飲料であるという指摘であった。
実験12:亜鉛含有酵母による抹茶風味付与効果(3:水溶性の亜鉛酵母エキス)
原材料名が緑茶、ビタミンC(アスコルビン酸)と表記された市販の緑茶飲料5種(A~E;表8参照)に、実験10で用いた水溶性の亜鉛酵母エキスを亜鉛含有量が0.08mg/100mL、0.2mg/100mLとなるように添加した。A~Eの飲料それぞれについて、亜鉛無添加飲料と亜鉛添加飲料をそれぞれ組み合わせたペアを提示して、実験10と同様に2点識別試験により評価した。濁りのある緑茶飲料で、カテキン類含有量が少ない緑茶飲料において、亜鉛添加による抹茶風味付与効果が有意に強く、コクや甘みが強いと指摘した。
Figure 0007311673000011
Figure 0007311673000012

Claims (4)

  1. 亜鉛の水溶性塩又は亜鉛含有酵母、緑茶葉エキス、90積算%粒子径(D90)が1~80μmである粉砕茶葉、アスコルビン酸又はその塩、及びpH調整のためのアルカリ金属塩を含む容器詰緑茶飲料であって、以下、(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)を満たす、前記緑茶飲料:
    (A)飲料中の亜鉛含有量が、0.08~4mg/100mLである;
    (B)飲料の680nmにおける吸光度が、0.08~0.85である;
    (C)飲料のpHが5~7である;
    (D)緑茶飲料中のアスコルビン酸の含有量が、10~80mg/100mLである;
    (E)緑茶飲料中の粉砕茶葉の添加量が0.001~0.1g/100mLである。
  2. カテキン類の濃度が40mg/100mL以下である、請求項1に記載の緑茶飲料。
  3. 加熱殺菌済である、請求項1又は2に記載の緑茶飲料。
  4. 前記緑茶飲料が、開口部の面積が1200mm以下の容器に充填されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の緑茶飲料。
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