JP2018136295A - 樹脂包埋試料およびその製造方法、並びに透過型電子顕微鏡用試料およびその製造方法 - Google Patents
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Description
液状樹脂を基板上に塗布し塗布層を形成する塗布工程と、
前記塗布層上に粉末試料を散布して前記塗布層中に沈降させる沈降工程と、
前記塗布層を硬化させて樹脂層を形成する硬化工程と、を有し、
前記粉末試料が、前記樹脂層の厚さ方向において、一方の面から他方の面に向かって数密度が増えるように偏在する、樹脂包埋試料を製造する、樹脂包埋試料の製造方法が提供される。
前記液状樹脂が熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂である。
前記液状樹脂が常温硬化性樹脂であって、
前記粉末試料を前記塗布層に沈降させつつ前記塗布層を硬化させて、前記沈降工程とともに前記硬化工程を行う。
前記液状樹脂が常温硬化性のエポキシ樹脂である。
前記塗布工程の前に、前記基板における前記液状樹脂を塗布する面を粗化処理する粗化工程を有する。
前記沈降工程では、前記粉末試料を散布した後に前記塗布層上に板状部材を載置し、前記粉末試料を前記塗布層中に押し込み沈降させる。
前記沈降工程では、前記粉末試料に、基板方向への遠心力を作用させ、前記塗布層中に沈降させる。
前記粉末試料が磁性粒子であり、
前記沈降工程では、前記粉末試料に、基板方向への磁力を作用させ、前記塗布層中に沈降させる。
液状樹脂を硬化させた硬化物から形成される樹脂層と、
前記樹脂層中に包埋される粉末試料と、を備え、
前記粉末試料が、前記樹脂層の厚さ方向において、一方の面から他方の面に向かって数密度が増えるように偏在している、樹脂包埋試料が提供される。
以下、本発明の一実施形態について、樹脂包埋試料から透過型電子顕微鏡用試料を製造する場合を例として説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる透過型電子顕微鏡用試料の製造方法における製造工程図である。
まず、粉末試料13を準備する。粉末試料13としては、例えば金属、金属化合物もしくは無機化合物を含む微粒子が挙げられる。粉末試料13の粒子径は例えば1μm〜10μm程度である。
続いて、塗布工程の前に予め、基板11における液状樹脂を塗布する面を粗化する。液状樹脂は表面張力が大きく基板11上に塗布したときに球状に丸まろうとするため、塗布層12の厚さが厚くなることがある。塗布層12が厚くなると、後述の沈降工程にて粉末試料13が沈降する距離が長くなり、粉末試料13を沈降させる時間が長くなるため、樹脂包埋試料10の生産性が低下するおそれがある。一方、粗化工程によれば、基板11の表面を傷つけて液状樹脂の表面張力を低減できるので、液状樹脂を薄く展延させることで塗布層12を薄く形成でき、樹脂包埋試料10の生産性を向上させることができる。なお、研磨材としては、サンドペーパなど公知のものを用いることができる。
続いて、基板11の粗化した表面(粗化面)に液状樹脂を塗布し塗布層12を形成する。本実施形態では、基板11の粗化面に液状樹脂を塗布することで塗布層12を薄く形成する。これにより、塗布層12の厚さを例えば100μm〜1000μmとすることができる。
熱硬化性樹脂としては、常温硬化性もしくは加熱硬化性いずれの樹脂でも使用することができるが、常温硬化性樹脂が好ましい。常温硬化性樹脂によれば、加熱の必要がなく、また後述の沈降工程にて粉末試料13を塗布層12に沈降させている間に塗布層12を徐々に硬化させることができるので、工程数を減らして製造を簡略化することができる。TEM用試料20を分析する際の取り扱いやすさと使用実績が多いことから、熱硬化性樹脂としては常温硬化性のエポキシ樹脂が好ましい。
光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂やエポキシアクリレート樹脂などを用いることができる。
続いて、図1(a)に示すように、液状樹脂からなる塗布層12の上に粉末試料13を散布する。本実施形態では、粉末試料13を散布した後、静置する。散布された粉末試料13は自重により塗布層12に沈降することになる。そのため、粉末試料13は外部応力によって変質することなく、かつ液状樹脂と接触して粉末試料13同士で凝集することがない。そして、図1(b)に示すように、粉末試料13は、所定時間の経過により塗布層12の基板11側に沈降することで、塗布層12の基板11側に向かって数密度が増えるように偏在することになる。なお、沈降させる時間は、液状樹脂の粘度や粉末試料13の密度によって異なるため、液状樹脂や粉末試料13の種類に応じて適宜変更するとよい。
続いて、図1(b)に示すように、粉末試料13を沈降させた後、液状樹脂からなる塗布層12を硬化させて樹脂層14とする。樹脂層14は、液状樹脂の硬化物から形成されることになる。これにより粉末試料13は樹脂層14の基板11側に偏在した状態で固定・担持され、粉末試料13が樹脂層14に包埋されるとともに基板11側に向かって数密度が増えるように樹脂層14中に偏在する樹脂包埋試料10を形成する。
続いて、図1(c)に示すように、樹脂層14から基板11を取り除いて、樹脂包埋試料10を取り出す。図1(c)は、粉末試料13が偏在する面が上向きとなるように樹脂包埋試料10を配置した場合を示す。樹脂包埋試料10は、液状樹脂を硬化させた硬化物から形成される樹脂層14と、樹脂層14中に充填される粉末試料13と、を備え、粉末試料13が樹脂層14に包埋されるとともに一方の面側に向かって数密度が増えるように樹脂層14中に偏在して構成されている。
続いて、樹脂包埋試料10をTEMに適した形状に加工する。具体的には、例えばFIB装置を用いて、図1(c)の破線領域に示すように、樹脂包埋試料10の粉末試料13が偏在している面側の領域から一部を試料片として切り出し薄片化することにより、図1(e)に示すTEM用試料20を得る。
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
基板としてポリイミドフィルムを準備し、その一方の面に対して紙ヤスリ(メッシュ:1000番)を一方向に移動させて粗化処理を施して傷を付けた。次に、液状樹脂としてエポキシ樹脂(PRESI社製「MA2+」、硬化温度:常温、硬化時間:8時間)を準備し、ポリイミドフィルムの粗化面に塗布して所定厚さの塗布層を形成した。次に、塗布層上に粉末試料として電池正極活物質を散布した。散布後、粉末試料の液状樹脂への沈降を促すために、板状部材として傷を付けていないポリイミドフィルムを塗布層上に載置し、そのままエポキシ樹脂が硬化するまで静置した。硬化後、基板を取り除き、一方の面側に粉末試料が偏在する樹脂包埋試料を得た。
比較例1では、エポキシ樹脂に電池正極活物質を添加して爪楊枝で混合した後に硬化させた以外は、実施例1と同様に樹脂包埋試料を作製した。比較例1の樹脂包埋試料をFIB装置によりマイクロサンプリングしたところ、粉末試料の数密度が少なく、サンプリングする箇所の決定に時間を要するため、TEMでの観察効率が低いことが確認された。
比較例2では、粉末試料として電池正極活物質の代わりに被覆処理された金属粉を用いるとともに、数密度を高めるために実施例1よりも多くの粉末試料を液状樹脂に混合した以外は、比較例1と同様に樹脂包埋試料を作製した。この樹脂包埋試料を用いてTEM観察を実施した結果、混合時の応力で粉末粒子表面の被覆材が剥がれてしまい、試料本来の形状を捉えることができないことが確認された。
11 基板
12 塗布層
13 粉末試料
14 樹脂層
15 筋状の溝
20 TEM用試料
30 板状部材
Claims (11)
- 液状樹脂を基板上に塗布し塗布層を形成する塗布工程と、
前記塗布層上に粉末試料を散布して前記塗布層中に沈降させる沈降工程と、
前記塗布層を硬化させて樹脂層を形成する硬化工程と、を有し、
前記粉末試料が、前記樹脂層の厚さ方向において、一方の面から他方の面に向かって数密度が増えるように偏在する、樹脂包埋試料を製造する、樹脂包埋試料の製造方法。 - 前記液状樹脂が熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂である、請求項1に記載の樹脂包埋試料の製造方法。
- 前記液状樹脂が常温硬化性樹脂であって、
前記粉末試料を前記塗布層に沈降させつつ前記塗布層を硬化させて、前記沈降工程とともに前記硬化工程を行う、請求項1又は2に記載の樹脂包埋試料の製造方法。 - 前記液状樹脂が常温硬化性のエポキシ樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂包埋試料の製造方法。
- 前記塗布工程の前に、前記基板における前記液状樹脂を塗布する面を粗化処理する粗化工程を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂包埋試料の製造方法。
- 前記沈降工程では、前記粉末試料を散布した後に前記塗布層上に板状部材を載置し、前記粉末試料を前記塗布層中に押し込み沈降させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂包埋試料の製造方法。
- 前記沈降工程では、前記粉末試料に、基板方向への遠心力を作用させ、前記塗布層中に沈降させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂包埋試料の製造方法。
- 前記粉末試料が磁性粒子であり、
前記沈降工程では、前記粉末試料に、基板方向への磁力を作用させ、前記塗布層中に沈降させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂包埋試料の製造方法。 - 請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法により得られる樹脂包埋試料における前記粉末試料が偏在して数密度が高い面側の領域から試料片を採取して薄片化する、透過型電子顕微鏡用試料の製造方法。
- 液状樹脂を硬化させた硬化物から形成される樹脂層と、
前記樹脂層中に包埋される粉末試料と、を備え、
前記粉末試料が、前記樹脂層の厚さ方向において、一方の面から他方の面に向かって数密度が増えるように偏在している、樹脂包埋試料。 - 請求項10に記載の樹脂包埋試料における前記粉末試料が偏在して数密度が高い面側の領域から採取される、透過型電子顕微鏡用試料。
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