JP2016033899A - 粒子の観察方法及び分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂に埋包して薄片化した微粒子の粒子表面に存在する低濃度元素の分析及び分布状態が明らかになる元素マッピングを得る。
【解決手段】複数の粒子が埋包され薄片状に加工された樹脂薄片1の粒子2の観察方法及び分析方法であって、樹脂薄片1に対して観察手段の観察視野内に電子線を照射し、樹脂の一部を除去している間に、観察視野内にあり、樹脂薄片1の表裏の両面5、6で断面加工され他の粒子2と付着している被観察粒子2を観察手段で観察し、被観察粒子2を分析手段で分析する。
【選択図】図3
【解決手段】複数の粒子が埋包され薄片状に加工された樹脂薄片1の粒子2の観察方法及び分析方法であって、樹脂薄片1に対して観察手段の観察視野内に電子線を照射し、樹脂の一部を除去している間に、観察視野内にあり、樹脂薄片1の表裏の両面5、6で断面加工され他の粒子2と付着している被観察粒子2を観察手段で観察し、被観察粒子2を分析手段で分析する。
【選択図】図3
Description
本発明は、薄片試料中の粒子を観察する観察方法及び分析する分析方法に関し、より詳しくは、樹脂に埋包して薄片化した粒子表面に存在する低濃度元素の分布状態を、例えば電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分光(EDX)元素分析装置等を用いて分析する際に、分析対象となる粒子を特定するための粒子の観察方法及び特定した粒子の分析方法に関する。
粉末材料は、様々な分野・用途に使用されており、添加剤の分布状態や分散状態、結晶状態を正確に知ることが重要となる。通常、粉体の形状や粒度、構成元素、元素分布を一度に評価する場合には電子顕微鏡法が用いられ(例えば、特許文献1を参照。)、この場合には、試料を観察に適した形状に加工した後(例えば、特許文献2を参照。)、表面や断面を走査電子顕微鏡により観察し、目的に応じて元素分析を実施する。
また、nmオーダーの粉末材料を評価する場合には、透過電子顕微鏡法による観察やエネルギー分散型X線分析(以下EDXという。EDX:Energy dispersive X-ray spectrometry)、若しくは、エネルギー分散電子エネルギー損失分光法(以下EELSという。EELS:Electron Energy-Loss Spectroscopy)による元素分析が行われるが、その際には試料を観察が可能な薄片状態に加工する必要がある。
観察対象試料の加工方法としては、湿式研磨法、ミクロトーム法、イオンミリング法(例えば、特許文献3及び4を参照。)、及び集束イオンビーム(以下FIBという、FIB:Focused Ion Beam)法(例えば、特許文献5を参照。)が一般的に使用されている。
その中で、FIB法による薄片化試料作製では、観察対象の試料に対して自由な方向に薄片試料を切り出すことが可能であるため、近年、FIB法を用いた透過電子顕微鏡観察用試料作製が主流となっている。
一方で、粉末試料に対しては、直接試料を薄片化することが不可能であるため、集束イオンビームを用いて薄片試料を作製する場合には、エポキシ樹脂を用いて粉末を固定し、観察に適した形状に加工する必要がある(例えば、特許文献6を参照。)。
また、FIB法を用いない場合には、粉末試料を水やエタノールに分散させた状態でメッシュを用いて粒子を掬い上げて観察に供する方法等が用いられる。
薄片化された試料の元素分析を行う場合には、一般的にEDX元素分析装置による元素分析を実施することが多い。透過型電子顕微鏡付属のEDX元素分析装置を用いて分析を行う場合には、試料から発生するX線強度を最適化するため、試料厚さが数10nmから100nm程度になるように加工する。試料中に存在する微量元素を分析する場合には、分析時のX線取り込み時間を長くして積算時間を増やすことが必要であり、それによって目的元素の特性X線のS/N比が向上するように条件を確定する必要がある。また、元素マッピングを行なう場合には、長時間の電子線照射による薄片試料へのダメージや、試料ドリフトに注意しながら分析を行う必要がある。
粉末試料に対しては、上述したような方法によって透過電子顕微鏡観察用の試料が作製されている。粒子表面にわずかに存在する元素をEDX元素分析装置により分析し、元素の均一性を評価する目的で元素マッピングを作成する場合には、目的元素の絶対量が多い箇所に対して分析を行う方法と、目的元素の絶対量が少ない箇所を選択して、通常分析を行う条件よりも分析時間を長くし、積算回数を増やすことによって微量元素由来のピークを得て、画像データ化する方法が考えられる。
粒子表面の目的元素の絶対量が多い箇所に対して分析を行う方法としては、粉末試料を水やエタノールに分散させた状態でメッシュを用いて粒子を掬い上げ、直接分析に供する方法がある。この方法では、粒子は薄片加工されておらず、表面に付着した微量元素の絶対量は多くなっているため、高い特性X線強度が得られる。しかしながら、一方で、粒子から多量のX線が発生し、分析を行う際にX線の数え落しやゴーストピークの発生、バックグラウンドの増加等が発生する為、適切な元素分析、元素マッピングを行うことができない。
目的元素の絶対量が少ない箇所を選択して、通常分析を行う条件よりも分析時間を長くすることにより微量元素を分析、マッピングする方法としては、FIB法等により薄片化された試料を作製し、EDX分析に供する方法がある。この方法では、薄片化された試料を用いてEDX分析を行う為、適切なX線強度が得られ、粒子由来のバックグラウンドによる不適切なマッピングコントラストの発生を比較的抑制することが出来る。
しかしながら、長時間の電子線照射により粒子を埋包している樹脂が観察に耐えられず破壊されることによって、粒子は分析領域から大きく移動し、元素マッピングを継続することができない。
また、破壊に至らずとも、粒子を保持している樹脂が破壊されることによって分析前の画像と分析中の画像に大きな乖離が生じた場合には、通常EDXソフトウェアに付属している試料のドリフト補正機能が、試料の状態変化に起因するコントラスト変化に追従できなくなり、元素マッピングを継続することができなくなる。
そのため、透過型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線分光(EDX)元素分析装置を用いて、樹脂に埋包して薄片化した例えば直径1μm以下の粒子表面に存在する低濃度元素の分布状態が明らかになるような元素マッピング像を得る分析方法が要求されている。
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、透過型電子顕微鏡に付属するEDX元素分析装置を用いて、樹脂に埋包して薄片化した微粒子の粒子表面に存在する低濃度元素の分布状態が明らかになるような元素マッピング像を得る粒子の分析方法及びその粒子の分析方法の対象となる粒子を選択するための粒子の観察方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。FIB装置を用いて数10〜100nm程度まで薄片化した直径1μm以下の粒子に対し、透過型電子顕微鏡による観察を行ないながら、直径を含むような大きさの粒子で、且つその粒子の一部分が他の粒子と付着している被分析粒子を検索した。そして、EDX元素分析装置を用いて、被分析粒子と、その重なる粒子の一部が元素マッピングの視野に入るように視野を選択して、通常の数倍の分析積算回数で元素マッピングを行なうことによって、被分析粒子表面に僅かに存在する低濃度元素の分析が可能で分布状態が明らかになるような元素マッピング像が得られることを見出した。
具体的に、本発明に係る粒子の観察方法は、複数の粒子が埋包され薄片状に加工された樹脂薄片の前記粒子の観察方法であって、前記樹脂薄片に対して観察手段の観察視野内に電子線を照射し、前記樹脂の一部を除去している間に、前記観察視野内にあり、前記樹脂薄片の表裏の両面で断面加工され他の粒子と付着している被観察粒子を観察手段で観察することを特徴とする。
また、本発明に係る粒子の分析方法は、複数の粒子が埋包され薄片状に加工された樹脂薄片の前記粒子の分析方法であって、前記樹脂薄片に対して観察手段の観察視野内に電子線を照射し、前記樹脂の一部を除去している間または除去した後、前記観察視野内にあり、前記樹脂薄片の表裏の両面で断面加工され他の粒子と付着している被分析粒子を分析手段により分析することを特徴とする。
本発明では、透過型電子顕微鏡に付属するEDX元素分析装置を用いて、樹脂に埋包されており薄片化した粒子の表面に存在する低濃度元素の分析が可能で、分布状態が明らかになるような元素マッピング像を得ることができる。これにより、本発明では、粒子の表面に存在する低濃度元素であっても、元素分析及びその元素の分布状態をより正確に把握することができる。
以下に、本発明を適用した粒子の観察方法及び粒子の分析方法について詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
粒子の観察方法は、複数の粒子が埋包された樹脂片に対してFIB法により樹脂薄片を得て、樹脂薄片の観察手段の観察視野内に電子線を照射しながら、複数の粒子のうち観察手段の観察視野内にあり、樹脂薄片の両面で断面加工され且つ他の粒子に付着して担持された粒子(被観察粒子)を検索するための観察方法である。被観察粒子は、粒子の直径(粒径)とほぼ等しい大きさの像として観察できる。
そして、粒子の分析方法は、粒子の観察方法で検索した被観察粒子を含む範囲を分析領域とし、例えばエネルギー分散型X線元素分析装置で、粒子表面に存在する元素や元素分布を分析する。
以下に、樹脂に埋包した後に薄片化した直径1μm以下の微粒子の走査透過型電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線(EDX)元素分析装置による元素分析を例に挙げて説明する。
[樹脂薄片]
図1に示す樹脂薄片1は、粒子の観察及び分析方法において、観察対象となる微粒子2の表面や断面を観察するためのものである。即ち、樹脂薄片1は、複数の微粒子2及び樹脂3とからなる。
図1に示す樹脂薄片1は、粒子の観察及び分析方法において、観察対象となる微粒子2の表面や断面を観察するためのものである。即ち、樹脂薄片1は、複数の微粒子2及び樹脂3とからなる。
被観察対象の微粒子2は、金属粒子や酸化物粒子、窒化物粒子をはじめとする無機化合物粒子である。微粒子2の粒径は、特に限定されないが、走査透過電子顕微鏡で観察できるナノレベルの粒子から、走査電子顕微鏡で観察できる数十μmレベルの粒子まで幅広く適用である。
樹脂3としては、例えば、熱硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂等のエネルギーを加えると硬化する樹脂を用いることができる。エネルギーを加えると硬化する樹脂を用いるのは、エネルギーを加える前の未硬化の樹脂と粒子2を混合できるからであり、エネルギーを加えれば硬化し樹脂片になるからである。特に、熱硬化樹脂が好ましく、中でもエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、粒子となじみやすく、室温から120℃程度の温度で硬化することから取り扱いが簡便である。
樹脂薄片1の作製手順は、微粒子2と液状樹脂の混合物をガラス板などの平坦な面に塗布し、液状の樹脂を硬化させて、ガラス板から板状の樹脂片を取り外す樹脂片作製工程と、樹脂片をFIBにより薄片化加工して樹脂薄片1を得る薄片化加工工程を有する。
樹脂片作製工程では、微粒子2と液状樹脂の配合割合は適宜選択できるが、電子顕微鏡などで観察される粒子(以下、被観察粒子2ともいう)が他の微粒子2に付着して担持されるように微粒子2間での凝集する配合割合であればよい。
薄片化加工工程では、樹脂片に対してFIB法のGaイオンビームを図1の保護膜4とは略直角の方向から照射して薄片化加工を行う。すなわち図1の薄片化加工工程では、樹脂片の厚み方向、即ち樹脂片の両面(樹脂薄片1の両面5、6に相当する面側)に対して平行な1方向にGaイオンビームを照射することで、樹脂片を薄片化加工する。薄片化加工工程では、Gaイオンビームにより、樹脂片のGaイオンビームの照射方向に平行な両面5、6が研磨される。なお、樹脂片のうちGaイオンビームに対向する面には、タングステン保護膜4を蒸着し、Gaイオンビームにより除去されないようにする。この薄片化加工工程では、樹脂に埋包された微粒子2が断面加工される。
また、樹脂薄片1の厚みは、微粒子2の粒径によらず数10nm〜100nmに加工される。微粒子2の粒径が大きければ、樹脂薄片1の両面5、6で断面加工された微粒子2に遭遇する確率は上がる。
[微粒子の観察]
粒子の観察方法は、上述のようにして得られた樹脂薄片1を透過電子顕微鏡又は走査透過電子顕微鏡で微粒子2の観察を行う。粒子の観察方法は、後の粒子分析で対象となる微粒子2(以下、被分析粒子2ともいう)を探索するための観察である。探索する微粒子2は、微粒子2のちょうど中央付近、即ち直径を含む大きさであり且つ他の微粒子2と付着している微粒子2である。
粒子の観察方法は、上述のようにして得られた樹脂薄片1を透過電子顕微鏡又は走査透過電子顕微鏡で微粒子2の観察を行う。粒子の観察方法は、後の粒子分析で対象となる微粒子2(以下、被分析粒子2ともいう)を探索するための観察である。探索する微粒子2は、微粒子2のちょうど中央付近、即ち直径を含む大きさであり且つ他の微粒子2と付着している微粒子2である。
このような微粒子2は、明視野走査透過電子顕微鏡法(STEM:Scanning transmission electron microscope)又は高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HAADF−STEM:high-angle annular dark-field scanning transmission electron microscopy)で得られた透過像で観察を行った場合、厚みがやや厚く、微粒子2の中央と外側で厚みによるコントラスト差が小さくなっていることから判断できる。また、二次電子像観察を行なうことによって、樹脂薄片1の表面に露出している微粒子2の断面径を測定できる。したがって、二次電子線観察による表面に露出した微粒子2の粒子径と、透過像から得られた微粒子2の粒子径の差がほとんど無いことを確認することによって、被分析粒子2(被観察粒子2)を選択することができる。STEMやHAADF−STEMによる観察は、被分析粒子2への元素マッピングに要する時間よりも短い。STEMやHAADF−STEMによる観察中の樹脂薄片1の被観察粒子2の周囲の樹脂の除去は、被分析粒子2の分析時よりも少ない。
このように直径を含む大きさの微粒子2(図2中の微粒子B)を後にエネルギー分散型X線分析装置等で分析することで、図2中の直径を含まない微粒子AやCと比べて、微粒子2の厚み方向(図2中X方向)に存在する元素の濃度を高めることが可能となるため、微粒子Bの表面に存在する元素をより正確に分析できるようになる。
また、被分析粒子2は、1つの粒子が単独で存在しているのではなく、その被分析粒子2の少なくとも一部が他の微粒子2と付着しているものを選択する。このように他の微粒子2と付着している微粒子2を分析対象として選択することで、被分析粒子2を他の微粒子2が担持しつつ、エポキシ樹脂等の樹脂3が長時間、電子線照射に曝され、樹脂3が蒸発した際にも、被分析粒子2が他の微粒子2に保持され、その位置を変えることなく分析することが可能である。
[粒子の分析]
粒子の分析方法では、以上のようにして検索して選んだ被分析粒子2について、走査透過電子顕微鏡付属のエネルギー分散型X線分光(EDX)元素分析装置を用いて、被分析粒子2の表面に存在する元素の分析を行う。
粒子の分析方法では、以上のようにして検索して選んだ被分析粒子2について、走査透過電子顕微鏡付属のエネルギー分散型X線分光(EDX)元素分析装置を用いて、被分析粒子2の表面に存在する元素の分析を行う。
被分析粒子2を分析している間は、分析視野には電子線が照射され、被分析粒子2の周囲の樹脂3が蒸発し除去され続ける。最終的に樹脂3が完全に除去され、樹脂3が除去された後も分析が継続することがある。
粒子の分析方法では、図3に示すように、樹脂薄片1の表裏の両面5、6で断面加工され且つ他の微粒子2に付着している被分析粒子2と、他の微粒子2の一部が含むようにマッピングを行い、元素分析を行う。その結果、図4に示すように、EDX元素分析装置のマッピングによる被分析粒子2の2次元画像が得られる。
粒子の分析方法では、上述した粒子の観察方法にて選択した被分析粒子2について、EDX元素分析装置にて検出された元素ピーク情報から元素分布を色分けされ、2次元画像で表され、微粒子2であっても元素分布に視覚的な違いが表れ、元素分析を行うことができる。
以上の粒子の観察方法及び分析方法によれば、直径1μm以下のような微粒子2であっても、その微粒子2の表面に存在する低濃度の元素の分布状態及び元素分析を適切に行うことができる。
上述では、粒子の観察を走査透過電子顕微鏡で行い、粒子の分析をエネルギー分散型X線分光元素分析装置で行うことを説明したが、他の分析機器でも粒子の観察方法や粒子の分析方法に用いることができる。例えば、粒子の分析方法では、EDX元素分析装置に代えて、エネルギー分散電子エネルギー損失分光法(EELS)であっても分析できる。更に、上述した粒子の観察方法及び分析方法では、直径1μm以下の微粒子2について説明したが、粒子の大きさは限定されず、1μmよりも大きい粒子であっても、粒子表面に存在する元素の分布状態及び元素分析を行うことができる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(樹脂薄片の作製)
樹脂薄片の作製は、まず、スライドガラス表面の両端付近にフッ素樹脂テープ(日東電工株式会社製、ニトフロン粘着テープ)を貼り、その上にエポキシ樹脂(gatan製、G−2 Epoxy)を1滴滴下し、平均粒子径が0.2〜0.3μm程度の金属粉末試料をスパチュラ1杯程度掬って、エポキシ樹脂と均一に混合した。
(樹脂薄片の作製)
樹脂薄片の作製は、まず、スライドガラス表面の両端付近にフッ素樹脂テープ(日東電工株式会社製、ニトフロン粘着テープ)を貼り、その上にエポキシ樹脂(gatan製、G−2 Epoxy)を1滴滴下し、平均粒子径が0.2〜0.3μm程度の金属粉末試料をスパチュラ1杯程度掬って、エポキシ樹脂と均一に混合した。
次に、120℃に設定したホットプレート上にスライドガラスを運搬し、ホットプレート上でエポキシ樹脂を硬化させた。硬化終了後、ホットプレート上から樹脂片を移動して樹脂片を冷却した。その後、樹脂片表面の導通を確保する為、Ptコーター(日本電子株式会社製)を用いてPtを蒸着し、FIB装置(日立株式会社製、FB−2100)内に挿入した。
次に、挿入後は形状を確認し、樹脂片の両面(図1中の樹脂薄片1の両面5、6に相当する面側)に対して平行な1方向にGaイオンビームを照射することで、樹脂片を薄片化加工して、樹脂薄片を得た。また、樹脂薄片のGaイオンビームの照射方向に対向する面にはタングステンを蒸着し保護膜とした。
(電子顕微鏡による観察、並びに元素分析)
FIBで薄片化加工した樹脂薄片を、走査透過電子顕微鏡(STEM、日立株式会社製、HD−2300A)を用いて、樹脂薄片中の粒子を観察し、元素分析する粒子の視野を選択するための探索を実施した。
FIBで薄片化加工した樹脂薄片を、走査透過電子顕微鏡(STEM、日立株式会社製、HD−2300A)を用いて、樹脂薄片中の粒子を観察し、元素分析する粒子の視野を選択するための探索を実施した。
その際、被観察粒子としては、粒子の略中央付近が薄片化されている粒子を探索した。被観察粒子の探索は、二次電子像とHAADF−STEMによるZコントラスト像(原子量によるコントラスト像)の画像に基づいて、直径を含む大きさで且つ他の微粒子と付着している粒子を探索した。
このような条件を満たす被観察粒子を決定した後、走査透過電子顕微鏡付属のEDX元素分析装置(EDAX社製、Genesis)を用いて表面に存在する元素のマッピングを実施した。
検出されるX線強度に対して、デッドタイムが最大でも50%となるように適切な時定数を選択して、被観察粒子及び被観察粒子を担持する粒子以外の粒子はなるべく分析視野に入らないように倍率を調整して分析を実施した。
通常の元素マッピングは、各ピクセルのスペクトルを256回積算して得られたピークから元素マップを作成するが、実施例1では通常の3倍程度の750回の積算を行なった後に、強度によるマッピング像を得た。
なお、EDX元素分析装置によるマッピング中は、分析視野には電子線が照射されていた。
256回程度の積算回数では、被観察粒子の表面に元素が存在している様子が明瞭ではなかったが、積算回数が500回を超えたあたりから徐々に被観察粒子の表面に、分析目的の元素のコントラストが見られるようになった。それと同時に、エポキシ樹脂部分の蒸発が発生し、被観察粒子の周囲には穴が空いたが、被観察粒子は他の粒子に保持されて、その位置は変化することなく、ドリフト補正も通常に動作したまま、被観察粒子の表面に非常に明瞭な目的元素の層が均一に存在していることが確認できる元素マッピング像が得られた。
したがって、実施例1では、粒子の表面の元素の分析及び分布をより正確に行うことができる良好な結果が得られた。
(比較例1)
比較例1では、粒子を薄片化せず、粒子の試料をエタノールに分散させた状態でメッシュを用いて粒子を掬い上げ、EDX元素分析装置による分析に供したこと以外は、実施例1と同様にして分析を行った。その結果、比較例1では、粒子が非常に大きいことから、粒子から多量の特性X線及び連続X線が発生し、EDX元素分析装置による分析を行うのに適切な範囲にX線強度が入らなかった。
比較例1では、粒子を薄片化せず、粒子の試料をエタノールに分散させた状態でメッシュを用いて粒子を掬い上げ、EDX元素分析装置による分析に供したこと以外は、実施例1と同様にして分析を行った。その結果、比較例1では、粒子が非常に大きいことから、粒子から多量の特性X線及び連続X線が発生し、EDX元素分析装置による分析を行うのに適切な範囲にX線強度が入らなかった。
(比較例2)
比較例2では、薄くなっている粒子、即ち直径を含まない粒子(図2中の微粒子C)を分析に供したこと以外は、実施例1と同様にして粒子表面の分析を行った。その結果、積算回数が500回程度になった際に、他の粒子に付着していることによって、粒子自体は移動せずに存在していたものの、粒子の厚みが薄く、得られた画像においてコントラストが元々弱かったことから、ドリフト補正機能が正常に動作しなくなり、積算を継続することが困難となった。
比較例2では、薄くなっている粒子、即ち直径を含まない粒子(図2中の微粒子C)を分析に供したこと以外は、実施例1と同様にして粒子表面の分析を行った。その結果、積算回数が500回程度になった際に、他の粒子に付着していることによって、粒子自体は移動せずに存在していたものの、粒子の厚みが薄く、得られた画像においてコントラストが元々弱かったことから、ドリフト補正機能が正常に動作しなくなり、積算を継続することが困難となった。
1 樹脂薄片、2 微粒子、3 樹脂、4 保護膜、5、6 両面
Claims (5)
- 複数の粒子が埋包され薄片状に加工された樹脂薄片の前記粒子の観察方法であって、
前記樹脂薄片に対して観察手段の観察視野内に電子線を照射し、前記樹脂の一部を除去している間に、前記観察視野内にあり、前記樹脂薄片の表裏の両面で断面加工され且つ他の粒子と付着している被観察粒子を前記観察手段で観察することを特徴とする粒子の観察方法。 - 前記観察手段は、透過電子顕微鏡または走査透過電子顕微鏡であることを特徴とする請求項1に記載の粒子の観察方法。
- 複数の粒子が埋包され薄片状に加工された樹脂薄片の前記粒子の分析方法であって、
前記樹脂薄片に対して観察手段の観察視野内に電子線を照射し、前記樹脂の一部を除去している間または除去した後に、前記観察視野内にあり、前記樹脂薄片の表裏の両面で断面加工され且つ他の粒子と付着している被分析粒子を分析手段により分析することを特徴とする粒子の分析方法。 - 前記分析手段は、エネルギー分散型X線分析装置又はエネルギー分散電子エネルギー損失分光器であることを特徴とする請求項3に記載の粒子の分析方法。
- 前記観察手段は、透過電子顕微鏡または走査透過電子顕微鏡であることを特徴とする請求項3または4に記載の粒子の分析方法。
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JP2018081092A (ja) * | 2016-11-08 | 2018-05-24 | 住友金属鉱山株式会社 | 鉱物粒子の表面分析方法 |
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