JP7183690B2 - 試料の作製方法、清浄化方法、分析方法および電子顕微鏡用試料 - Google Patents
試料の作製方法、清浄化方法、分析方法および電子顕微鏡用試料 Download PDFInfo
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透過型電子顕微鏡にせよ走査型電子顕微鏡にせよ、前記のように微細な領域に電子線を照射し分析を行う手法である。この時、電子顕微鏡内に残留する炭化水素や試料に吸着もしくは含有する炭化水素が、照射した電子線により解離して、試料表面にカーボンの堆積異物として残るコンタミネーション(略する場合はコンタミと称する。)が発生する。
また、試料内で発生した特性X線をコンタミネーションが吸収したり、コンタミネーションからも特性X線が発生するため不要な情報が加わるといった影響により、高感度な分析をすることができなくなるおそれもある。
本発明の第1の態様は、
電子顕微鏡用試料の少なくとも一つの表面に付着した異物をイオンビームにより除去する清浄化工程を有する、試料の作製方法である。
前記試料は透過型電子顕微鏡用試料である。
前記試料は対向する二つの表面を有し、該二つの表面に対して前記清浄化工程を行う。
前記イオンビームはArビームである。
前記ArビームにおけるArイオンの加速電圧は1kV以下である。
前記表面に対して10~90°の角度で前記イオンビームを照射する。
前記角度の範囲内にて照射角度を変動させながら前記イオンビームを照射する。
前記清浄化工程を行うのは前記表面のうち少なくとも分析予定部分およびその周囲である。
前記分析予定部分およびその周囲は1×10-12m2以上の面積を有する。
電子顕微鏡用試料の表面に付着した異物をイオンビームにより除去する清浄化工程を有する、試料の清浄化方法である。
電子顕微鏡用試料の表面に付着した異物をイオンビームにより除去する清浄化工程と、
前記清浄化工程が施された部分のうち少なくとも一部を電子顕微鏡により分析する分析工程と、
を有する、試料の分析方法である。
電子顕微鏡用試料における少なくとも一つの表面の所定の部分は以下の条件を満たす、電子顕微鏡用試料である。
(条件1)少なくとも一つの表面から10nmの深さに至るまでの部分はArイオンによるダメージ層により構成される。
(条件2)表面から20nmの深さに至るまでにのみ該Arイオンによるダメージ層が存在する。
前記電子顕微鏡用試料は対向する二つの表面を有し、該二つの表面において互いに対向する各々の前記所定の部分は前記条件1および前記条件2を満たす。
前記二つの表面の間の距離であるところの前記電子顕微鏡用試料の厚さは50nm以上である。
1.試料の分析方法
1-1.準備工程
1-1-1.清浄化工程(試料の作製方法、清浄化方法)
1-2.分析工程
2.電子顕微鏡用試料
3.実施の形態に係る効果
本明細書において「~」は所定の値以上かつ所定の値以下のことを指す。
本実施形態においては、主に以下の工程を行う。
本工程においては電子顕微鏡用試料に対する分析を行うための準備を行う。本実施形態における「分析」とは電子顕微鏡(上記のSEM、TEM、そしてSTEM(走査型透過電子顕微鏡)等)を使用した定性的な観察結果に基づく分析や、定量分析などを含む。また本実施形態における「電子顕微鏡用試料」としては電子顕微鏡による分析が可能なものであれば特に限定は無いが、透過型電子顕微鏡観察(TEM)を行う場合は電子線を透過せざるを得ず、自ずとコンタミネーションの影響が大きくなるため、後述の本実施形態の効果を大いに享受できる。そのため本実施形態においては透過型電子顕微鏡用試料を例示する。
本実施形態においては本工程を行うことに特徴の一つがある。本工程においては、電子顕微鏡用試料の少なくとも一つの表面に付着した異物をイオンビームにより除去する。ここで言う「異物」とは上記の通り電子線の照射により生じるおそれのあるコンタミネーションの元となるもののことである。
ただ、試料を走査型電子顕微鏡による分析にかける場合は、電子線が出射する側の面に対して清浄化工程を行う必要はないため、どちらか一方の表面のみに清浄化工程を行い、該表面に対して走査型電子顕微鏡による分析を行っても構わない。
その一方で、前述のように集束イオンビーム装置やイオンミリングで薄片加工した試料は、加工に用いるイオンが直接当たった部位以外に、加工により発生した削りカスのような異物が再付着しており、これも電子線の照射により生じるおそれのあるコンタミネーションの原因となる。
したがって、異物の除去に用いるArビームは、薄片加工された場所以外の試料表面全体に照射するのが好ましい。特に、上記の好適例で言うところの、対向する二つの表面を有する試料において、該二つの表面の全体に対して行うのが好ましい。
また、光源側を回転させて照射角度を変動させながらイオンビームを照射してもよいし、試料側を回転させて照射角度を変動させながらイオンビームを照射してもよい。
本工程においては、清浄化工程が施された部分のうち少なくとも一部(分析予定部分)を電子顕微鏡により分析する。以下、一具体例を挙げるが、本工程は電子顕微鏡を用いた分析であれば公知の手法を採用すればよく、特に限定は無い。
本実施形態においては上記の試料作製方法により作製された電子顕微鏡用試料においても本発明の技術的思想が反映されている。以下、説明する。
本実施形態に係る電子顕微鏡用試料における少なくとも一つの表面の所定の部分は以下の条件を満たす。
(条件1)少なくとも一つの表面から10nmの深さに至るまでの部分はArイオンによるダメージ層により構成される。
(条件2)表面から20nmの深さに至るまでにのみ該Arイオンによるダメージ層が存在する。
本実施形態によれば、試料や装置を加熱したりプラズマ処理したりする必要がないため
試料の変質を抑制できる。しかも、試料表面のコンタミネーションの発生を抑制し、電子顕微鏡による分析を精度良く行うことが可能となる。
市販の2液硬化性エポキシ樹脂を硬化し、日立ハイテクノロジーズ社製集束イオン加工装置 FB-2100を用いて透過型電子顕微鏡用の薄片試料(厚さ:50nm以上100nm未満、大きさ:10μm×10μm)を作製した。
実施例1において、GENTLEMILLに挿入し、Arイオンを照射して集束イオン加工装置で薄片表面に残留した炭化水素を除去処理していない以外は、実施例1と同様にHAADF像を取得し(図4)、コンタミネーションが生成するか否かを評価した。
先に挙げた図1(シミュレーション計算結果)に対応する透過型電子顕微鏡の写真を図5に示す。図5は、Arビームを透過型電子顕微鏡用試料としてのSi基板に照射した際の該試料内部断面における透過型電子顕微鏡の写真である。本例においては、加速電圧を 2kVに設定し、入射角度を15°に設定したことを除けば、実施例1と同様の作業を行った。
(条件1)少なくとも一つの表面から10nmの深さに至るまでの部分はArイオンのダメージ層により構成される。
(条件2)表面から20nmの深さに至るまでにのみ該Arイオンによるダメージ層が存在する。
の条件をいずれも満たしていた。
Claims (10)
- 電子顕微鏡用試料の少なくとも一つの表面に付着した異物をイオンビームにより除去する清浄化工程を有し、
前記清浄化工程では、前記一つの表面に対して10~90°の角度の範囲内にて照射角度を変動させながら、前記一つの表面に対して前記イオンビームを照射する、試料の作製方法。 - 前記試料は透過型電子顕微鏡用試料である、請求項1に記載の試料の作製方法。
- 前記試料は対向する二つの表面を有し、該二つの表面に対して前記清浄化工程を行う、請求項2に記載の試料の作製方法。
- 前記イオンビームはArビームである、請求項1~3のいずれかに記載の試料の作製方法。
- 前記ArビームにおけるArイオンの加速電圧は1kV以下である、請求項4に記載の試料の作製方法。
- 前記清浄化工程は、光源側を回転させて前記照射角度を変動させながら前記イオンビームを照射する、または、前記試料側を回転させて照射角度を変動させながらイオンビームを照射する、請求項1~5のいずれかに記載の試料の作製方法。
- 前記清浄化工程を行うのは前記表面のうち少なくとも分析予定部分およびその周囲である、請求項1~6のいずれかに記載の試料の作製方法。
- 前記分析予定部分およびその周囲は1×10-12m2以上の面積を有する、請求項7に記載の試料の作製方法。
- 電子顕微鏡用試料の表面に付着した異物をイオンビームにより除去する清浄化工程を有し、
前記清浄化工程では、対向する二つの表面を有する前記電子顕微鏡用試料の一つの表面に対して10~90°の角度の範囲内にて照射角度を変動させながら、前記一つの表面に対して前記イオンビームを照射する、試料の清浄化方法。 - 電子顕微鏡用試料の表面に付着した異物をイオンビームにより除去する清浄化工程と、
前記清浄化工程が施された部分のうち少なくとも一部を電子顕微鏡により分析する分析工程と、
を有し、
前記清浄化工程では、対向する二つの表面を有する前記電子顕微鏡用試料の一つの表面に対して10~90°の角度の範囲内にて照射角度を変動させながら、前記一つの表面に対して前記イオンビームを照射する、試料の分析方法。
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