〔第1の実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態に係る原稿搬送装置について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る原稿搬送装置(画像読取装置)の構成を概略的に示す部分断面図であり、図2は、図1の原稿搬送装置の主要部の構成を概略的に示す模式図である。
図1及び図2において、原稿搬送装置200は、シート取込装置101を備える。シート積載台(原稿載置台)1にはシートが複数枚積載されており、シート積載台1は昇降自在に構成されている。シート積載台駆動モータ2は、シート積載台1を昇降させる。シート検知センサ3は、シート積載台1に積載されたシートがシート取込位置にあることを検知する。シート積載検知センサ12はシート積載台1のシート積載面1aにシートが積載されているのを検知する。
原稿ピックアップ部の一例としての給送ローラ6は、給送モータ8によって、シートを搬送方向下流側に給送する方向に回転するよう駆動されている。分離ローラ7は、シートを搬送方向上流側に押し戻す方向に回転する回転力を不図示のトルクリミッタ(スリップクラッチ)を介して分離モータ9から常時受けている。給送ローラ6と分離ローラ7との間にシートが1枚存在するときは、上記トルクリミッタが伝達する分離ローラ7がシートを上流側に押し戻す方向の回転力の上限値より、給送ローラ6によって下流側に送られるシートと分離ローラ7との間の摩擦力によってシートが下流側に給送される方向への回転力が上回り、分離ローラ7は給送ローラ6に追従して回転する(連れ回りする)。
一方、給送ローラ6と分離ローラ7との間にシートが複数枚存在するときは、分離ローラ7はシートを上流側に押し戻す方向の回転をローラ軸から受け、最も上位のシート以外が下流側に搬送されないようにする。
このように給送ローラ6がシートを下流側に給送する作用と、分離ローラ7のシートを下流側に搬送されないようにする作用とによって、シートが重なって給送ローラ6と分離ローラ7とのニップ部に送り込まれたとき、最も上のシートのみ下流側に給送され、それ以外のシートは下流側に搬送されないようにされることで、重なったシートが分離給送される。よって、給送ローラ6と分離ローラ7とは、一対の分離ローラ対42(原稿分離部)を構成する。なお、本実施形態では、分離ローラ対42を使用しているが、分離ローラ対42の代わりに分離ローラと給送ローラのどちらか一方をベルトにした、分離ベルトローラ対を使用してもよい。また、分離ローラを分離パッドに置き換え、シートに当接することで下流側へ複数枚のシートが搬送されることを防ぐようにしてもよい。
搬送モータ10は、原稿分離後のシートを、画像読取センサ14、15によって原稿の画像の読み取りが行われる画像読取位置まで搬送し、更に排出位置まで搬送するため、その他のローラ(原稿搬送部)を駆動する。また、搬送モータ10は、シートの読み取りに最適な速度や、シートの解像度等の設定に応じてシートの搬送速度を変更できるよう各ローラを駆動する。
ニップ隙間調整モータ11は、給送ローラ6と分離ローラ7との隙間、或いは分離ローラ7に対してシートを介して給送ローラ6が圧接する圧接力を調整する。これにより、シートの厚みに適合した隙間、或いは圧接力が調整され、シートを分離することができる。
レジストクラッチ19は、搬送モータ10の回転駆動力をレジストローラ18(原稿搬送部)に伝達、又は当該伝達を遮断する。レジストローラ対17、18の回転を停止することにより、給送されるシートの先端をレジストローラ対17、18のニップ部に突き当てて、シートの斜行を補正する。
搬送ローラ対20、21、搬送ローラ対22、23、及び図1に示すさらに下流側のローラ対は、シートを排出積載部44に搬送する。上ガイド板40と下ガイド板41との2つのガイド板は、分離ローラ対42、レジストローラ対17、18、搬送ローラ対20、21、搬送ローラ対22、23、及び下流側のローラ対により搬送されるシートを案内する。
レジスト前センサ32は、レジストローラ対17、18の上流側に配設され、搬送されるシートを検知する。レジスト後センサ33は、レジストローラ対17、18の下流側に配設され、搬送されるシートを検知する。
ここで、図3および図4で本発明の実施形態の要部の詳細について述べる。シート積載台1と対向する位置に、搬送された原稿の挙動を検知可能な光学センサ111が実装されている基板100が、シート積載台1と平行に取り付けられている。すなわち、光学センサ111の撮像面がシート積載台1の表面(対向面)と平行になるように取り付けられている。ここで、光学センサ111にはエリアイメージセンサを使用する。本実施形態の場合には、光学センサ111の撮像面がシート積載台1の表面と平行になるようにするとは、光学センサ111が実装されている基板100がシート積載台1の表面と平行になることと同義である。
本実施形態においては、光学センサ111を撮像素子として用いて搬送される原稿の画像を取得してその画像情報に基づいて移動量を検出することで、原稿の挙動を検知する。光学センサ111は、原稿が搬送される搬送路内における撮像基準面から所定距離離れるように配置されている。撮像基準面は、撮像素子である光学センサ111と対向する、光学センサ111による撮像の基準となる面であり、本実施形態では、撮像対象物である原稿(シート)が搬送される搬送路(シート積載台1)の表面が撮像基準面として定められる。但し、原稿がシート積載台1に複数枚載置された状況においては、搬送される原稿の表面に相当する位置が撮像基準面となる。すなわち、原稿を給送するときのシート積載台1の昇降範囲における最上位の位置でのシート積載台1の表面が概ね撮像基準面と一致する。光学センサ111を撮像基準面から所定距離D離すことによって、原稿の種類や光学センサ111が配置される位置に依らずに原稿の画像を適切な間隔で取得することができる。従って、光学センサ111としては、所定距離D離れた原稿に対し撮像焦点の合うものを用いることが好ましい。本実施形態においては、所定距離Dとして20mmから30mm程度、撮像基準面から光学センサ111を離して配置している。
本実施形態においては、光学センサ111で原稿の画像を取得し、光学センサ111が実装される基板100に設けられたICによって所定の時間間隔ごとの画像(もしくは所定の移動量間隔に基づいた画像)を比較することによって移動量を判定しており、基板100に実装されるICが移動量検出部として動作している。但し、光学センサ111によって取得した画像を外部装置に送信し、外部装置上で移動量の判定を行ってもよく、その場合、外部装置を含めて移動量検出部を構成していると言える。その場合、外部装置における移動量の判定を行っている部分を含めて本実施形態における原稿搬送装置を構成していることとなる。
なお、図3に示すように、シート積載台1には、搬送方向に対する幅方向の両端側にそれぞれ移動可能な規制部材51が設けられており、シートの幅方向を規制している。規制部材51を幅方向に移動して搬送する原稿の幅に合わせることによって、搬送中にシートが斜行することを防止できる。本実施形態においては、光学センサ111を規制部材51に対して取り付けてもよく、本体の外装に取り付けてもよい。
図4(a)の様に光学センサ111の前に不図示のプリズムやレンズなどの光学部材を配置し、対向する原稿に対して正対させた場合に、光学センサ111が受光する光量が最大となる様に配置する。動作上問題が無い場合には、小型化やコストを優先して、これらの光学部材を省略できる。
本発明の実施形態において、光学センサ111が原稿の移動量を検知可能なセンサである場合について説明をする。
この場合、光学センサ111が撮像対象物の移動量または移動方向を検知可能な不図示の移動量検知部を備えている。光学センサ111によりエリアイメージを取得して、不図示のA/D変換部でデジタル信号に変換して得られた画像を、移動量検知部にて順次比較しながら撮像対象物(本実施形態の場合、シート)の移動量または移動方向を検知する。
本実施形態における光学センサ111は、レーザで赤外線レーザ光を照射して、またはLEDによる発光を用いて、原稿などによる反射光を受光することで原稿の表面画像を取得するものが好ましい。特に、レーザ方式を用いれば、より詳細に原稿の移動量を検知可能となるため、好適である。なお、レーザ方式を用いる場合、レーザ光の波長を適切に選択することによって、搬送中の原稿のばたつきに起因した、移動量の検知精度の低下を軽減することが可能である。例えば、高さ約2mm程の搬送路内を搬送される原稿に対し、原稿の搬送面から光学センサ111までの距離Dが20mm程度である場合、約850nmの波長を有する赤外線レーザ光を用いることで、搬送中の原稿にばたつきが発生しても移動量の検知精度を維持できることが実験的に明らかとなっている。
本実施形態では、光学センサ111内部でTG(Timing Generator)によりイメージセンサを駆動して画像信号を取得するとともに、A/D変換ならびに画像信号を解析し、撮像対象物の移動量または移動方向を検知する構成となっている。例えば、図4(b)に示すように、光学センサ111内部にはイメージセンサ、TG、AFE(Analog Front End)、DSP(Digital Signal Processor)を備えており、TGがイメージセンサで撮像対象のイメージ画像を取得し、AFEにて取得した画像信号に対してA/D変換を実行し、デジタル画像信号に基づいてDSPにて撮像対象物の移動量を検知する(いわゆるシステム・オン・チップ(SoC)になっている)。すなわち、DSPが移動量検出部として機能している。別のケースとしては、光学センサ111は画像信号の取得のみ行い、不図示の画像信号処理デバイスが別デバイスとして存在し、この画像信号処理デバイスによってA/D変換ならびに画像信号の解析を行い、撮像対象物の移動量または移動方向を検知する構成にしてもよい。本実施形態では光学センサ111における画像信号の取得は、原稿に光を照射し、反射した光を受光部によって受光して光電変換することによって行う。
図5に光学センサ111から得られる画像に対して信号処理を実行した画像の概略図を示す。ある時刻(t=0とする)に撮像された画像に対して、特徴点として抽出した点を黒マスで表わす。ここでは例として1マス=1画素(つまり、光学センサ111の画素数は5x5=25マス)としているが、複数の画素の平均値または特定の演算を行った後に代表して1マスを形成してもよい。例として、特徴点として他のマスと比較して明るい、または暗い点を抽出する。特徴点としては、原稿表面の凹凸や傷を抽出することができる。この状態から時刻がt'だけ経過して時点で、光学センサ111が再び画像を取得して、黒マスを抽出し、黒マス(特徴点)がどの様に移動しているかを比較して、時刻0からt'までの移動量を算出する。図5の例では、右に1マス、上に1マス移動したと判定する。なお、移動量の算出は、上述したように、光学センサ111内部のDSPによって行ってもよいし、光学センサ111とは別に設けた画像信号処理デバイス内で行ってもよい。
ここで、上述したように、光学センサ111の撮像面(受光面)と原稿の表面は、互いに平行になる様に配置している。図9を用いて光学センサの特性について説明すると、本実施形態で用いる光学センサは、一般的には図9(a)に示す通り、光学センサの受光面と原稿が互いに平行になっているとき(図9(b)左側)に、受光面と原稿が傾いているとき(図9(b)右側)に比べて撮像対象である原稿の移動速度がより速い領域まで追従できる特性になっている。
次に、再び図3を使用して光学センサ111の配置の詳細について説明をする。
光学センサ111とシート積載台1間の距離Dについては、光学センサ111の撮像領域のうち、搬送方向に対する撮像範囲をL、センサの画像取得間隔時間をT、原稿搬送部の搬送速度の最大値をVとしたときに、L≧T×Vを満たす距離になる様に、距離Dを調整する。なお、以下の説明において、Lを撮像領域と表現することもある。なお、撮像領域とは、光学センサ111の撮像基準面における光学センサ111の視野角のことを示しており、撮像基準面に撮像対象(原稿)があれば、撮像領域内の画像を取得することができる。ここで言う搬送方向とは、実際に原稿(シート)が搬送される方向ではなく、装置によって搬送しようとする方向、すなわち、給送ローラや搬送ローラの回転方向に沿う方向(各ローラの軸と垂直な方向)である。なお、センサの画像取得間隔時間をTとしたが、実際には、光学センサ111が取得した画像に基づいてシートの移動量を検出する移動量検出部を有し、その移動量検出部における移動量の取得間隔がTとなればよい。すなわち、センサの画像取得間隔時間としてはTよりも短い間隔で取得しつつ、移動量検出部における移動量の検出をT間隔で行い、それ以外の取得データは無視するか、移動量検出部に対して入力自体しないものであってもよい。以下では説明上センサの画像取得間隔時間Tとして説明するが、ここで説明したことと同義であり、移動量取得間隔時間Tと読み換えればよい。
ここで、光学センサ111と光学部材を合わせた画角(視野角)が大きくなると、1回で撮像できる領域が大きくなる為に、Lは大きい値を持つことになる。また、光学センサ111はある程度の視野角を持っているため、距離Dを大きくすることによってもLは大きい値を持つことができる。
画像取得間隔時間Tに関しては、光学センサ111が画像を取得するのに要する時間が短ければ小さい値を持つ。具体的には、光学センサ111の画像読出しクロックが早ければ、光学センサ111が画像信号を読み出す為の時間が短くなる。または光学センサ111の画素数が小さければそれだけ画像信号を読み出す為の時間が短くなる。ただし、画素数が小さくなる場合は、前述のLの値に対しても影響を与える(小さくなる)。
前述の通り説明した原稿の移動量検知について、移動量を検知する為に光学センサ111から得られる画像を複数平均する必要がある場合は、検知までの時間が必要になる。この場合は、画像取得間隔時間Tを移動量検知間隔時間T'に置き換えてL≧T'x×Vを満たす様に光学センサ111とシート積載台1間の距離Dを調整する必要がある。
ただし、L≧T×V(またはL≧T'×V)は最低条件である為、本発明ではより最適な配置について言及する。例えば、図5に示した5×5画素の光学センサを用いた場合は、光学センサが1回画像を取り込むのに対して、原稿が1画素以下の変位量であれば極めて精度の良い検知が可能となる。すなわち、L≧T×V×5を満たせばよい。この関係式から、精度良く検知するための原稿搬送速度の上限値Vmaxとして、L/5Tを得る。
この上限値Vmaxでの運用が困難な場合を想定し、図10と図11を用いて別の形態について言及する。図10には、ある時刻t1と別の時刻t2(>t1)における原稿の撮像領域の重なり度合い(重複率)を模式的に表したものである。時刻t1と時刻t2とで、光学センサ111が撮像した領域のうち、両画像において重複する領域が大きければ大きいほど、前述した特徴点の数をより多く検出、追跡することができる為、移動量をより正確に検知できる。この場合、図10中のαL(αは撮像領域の重なり度合いを示し、α<1)を用いて、αL≧T×Vを満たすように光学センサ111を配置し、搬送速度Vを設定する。すなわち、この関係式から原稿搬送速度の上限値Vmaxとして、αL/Tを得る。
図11に示す通り、撮像領域の重なり度合いを上昇させていくと光学センサの検知精度は上昇する特性を示す。検知アルゴリズムとして所定の撮像領域の重なり度合いα1で検知精度が飽和するように構成した場合には、撮像領域の重なり度合いがα1となるようにVmaxを設定すればよい。
一例として、移動量の検知精度をある程度の高さとするために、撮像画素として重複エリアαLがN以上となることが好ましいとする。この場合、光学センサとして、搬送方向に対する画素数がLとすると、搬送方向の画素としてαL重複するようにすればよく、この場合、L−V×T≧N(=αL)となる。したがって、この場合には、V≦(L−N)/Tを満たすように搬送速度を設定することによって、精度良く移動量を検出することができる。具体的な例としては、図5に示す光学センサを用いた場合、重複エリアが4画素分以上(α=4/5=0.8)となればよいとすると、V≦(5−4)/T=1/Tとなるように搬送速度Vを設定すればよい。
本実施形態においては、図11に示すように、重なり度合いがα1=0.8となる辺りから検知精度が飽和気味に上昇してくるが、移動量の検知自体は画像取得間隔時間ごとに行っており、必ずしも連続して検知に成功する必要はない。概ね移動量を検知できている程度すなわち重なり度合いが第1閾値としてのα1となる程度の搬送速度に設定することで、搬送のスループットを向上できる。本実施形態においては、α=α1=0.6(重複率60%)に設定した場合に良好に検出が可能であるとともに処理部への負荷を抑えることができており、その場合、N=αL=0.6×5=3.0であるから、V≦2/Tとなる。
なお、上記は一例であり、使用する光学センサによって検知精度の特性は異なるが、検知精度が飽和し始める辺り、あるいは若干飽和するような撮像領域の重なり度合いα1を設定するのが好ましく、本実施形態においてはα=0.6となっているが、前後しても構わない。
搬送速度Vに関しては、原稿搬送装置が原稿を搬送する速度であるので、原稿搬送開始から所定の速度に到達するまで、段階的に(あるいは、モータの種類によっては無段階的に)速度が上昇することになる。逆に原稿の搬送停止時には、所定の速度から停止状態(V=0)に向けてやはり段階的に(または無段階的に)速度が低下する。
上述した搬送速度Vの設定値としては、原稿搬送開始後に、搬送速度が所定の速度に到達した時点での速度V1が上記の関係式を満たすようにしておくことで、立ち上がりや立下りにおいて速度がV1よりも遅い場合でも、光学センサの検知精度が低下することはなく、好適に移動量を検知することができる。
ここで、例えば、装置にスペースの余裕が無ければ、画角の大きな光学部材を光学センサ111の前に配置し、搬送方向に対する撮像領域Lを大きくすることが考えられる。この構成によって、より大きな搬送速度Vに対応できることになる。
または、搬送速度Vの変化に連動して、光学センサ111の画像取得間隔時間Tを変化させてもよい。ターゲットとなる撮像重なり領域(αL)を決め、搬送速度Vが変化しても、撮像重なり領域が常に一定となるように画像取得間隔時間Tを前述のTGが制御する。この制御を行うことで、搬送速度Vが変化しても、光学センサの検知精度が常に一定となる。
同様に、本実施形態において、上述したように搬送速度Vを設定する代わりに、画像取得間隔時間Tを調整することで、撮像領域の重なり度合いαが所定の値となるように調整してもよい。重なり度合いαがα1となるようにすれば効率よく光学センサの検知精度を向上することができるが、これに限られず、ある程度の重なり度合いαを保てるような画像取得間隔時間Tとなっていればよい。
光学センサの出力としては、所定の画像取得間隔時間Tで出力を処理するICなどに対して出力してもよいが、以下には別の例を示す。
例えば、光学センサにおける移動量の検知量が所定の値を上回ると移動量を出力する光学センサを使用した場合に、A4原稿の搬送として、150枚/分の搬送を行う場合について示す。原稿間隔距離を考慮しても搬送速度Vは1000mm/秒前後となる。この場合、画像取得間隔時間Tの一例として、光学センサの解像度が1500cpi、すなわち1インチ当たり1500カウントの出力を行う設定とすれば、1カウント当たり1/1500インチ、つまり0.017mm程の移動があると1カウントの出力を行うものである。搬送速度V=1000mm/秒に対しては、1秒当たり1000/0.017≒60000カウント、すなわち、1/60000秒で1カウント出力される。
光学センサとしては、図9(a)に示すように、所定の搬送速度以上になると、設定された解像度の性能を発揮できなくなる特性がある(検知精度が下がる)。これに対し、原稿搬送装置として設定可能な搬送速度に対して同等の検知精度を発揮できるように、解像度の設定値として1500cpi程度にすることによって、実際に使用される搬送速度V=1000mm/秒程の条件に対しては、解像度を下げずに、検知精度を一定に保ったまま使用することができる。特に、図9(b)で説明したように、原稿の表面と光学センサの撮像面が平行となるように配置すること(図9(b)左側)によって、設定された解像度の性能を発揮しやすくなる、すなわち、搬送速度を速くしても設定された解像度の性能を維持することができ、光学センサの検知精度を維持することができる。
また、光学センサとしては解像度として5000cpiやそれ以上となるものもあり、解像度を上げれば光学センサの検知精度は向上するが、その分光学センサを高速に動作させる必要があり、光学センサ内部の動作クロック周波数を上げることになるので、光学センサの出力を処理するIC等にかかる負荷や消費電力も増えることとなる。ここで示すような原稿の搬送状態を検知することを考えると、解像度を1500cpi程度とすることによって、搬送速度として要求される100枚/分程度の搬送速度Vに対しては十分な検知精度を確保することができ、処理にかかる負荷などを抑えることができる。
本実施形態による構成によれば、1つの光学センサで原稿の搬送状態を検知可能である為に、装置の大型化やコストアップをすることなく装置を提供できる。
〔第2の実施形態〕
概略図は第1の実施形態と同様である。従って、図1から図3を用いて本実施形態の詳細について第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
本実施形態においては、装置本体における給送ローラ6と分離ローラ7よりも搬送路の上流側に光学センサ111を配置している。この位置に配置すれば、原稿の搬送を開始してからすぐに搬送の不良が起きた場合に、光学センサ111にて早期に不良の発生を検知できる。また、給送ローラ6に近い位置であるため、小さい原稿に対しても良好に原稿の移動を検知できる。
ここで言う搬送の不良とは、原稿搬送部(例えば給送ローラ6)にて原稿が搬送された時点で原稿が斜行して搬送されたり、分離ローラ7に対してステープルなどによって綴じられた原稿が搬送されて、分離する作用が働くものの実際には原稿の分離ができない状況を指す。
いずれのケースにおいても、搬送の不良が起きた状態で原稿の搬送を続けると、原稿を損傷することになってしまうため、本実施形態のように給送ローラ6及び分離ローラ7よりも搬送路の上流側に光学センサ111を配置して、搬送の不良を早期に検知して搬送制御を行うことによって、原稿の損傷を防止することができる。具体的には、搬送の不良を検知した場合に、原稿搬送部による搬送を停止または減速するなどの制御を行う。加えて、搬送の不良を検知したことを報知して使用者に通知してもよい。
本実施形態による構成によれば、1つの光学センサで原稿の搬送状態を検知可能であり、かつ原稿が装置本体内に給送され、幅方向に規制されてからの搬送状態も検知できる構成になっている。その為、付加的な処理を実行することなく原稿の搬送状態を検知可能な為に、処理時間を増大させることがない。
よって、装置の大型化やコストアップをすることなく、処理時間についても不要に増加しない装置を提供できる。
〔第3の実施形態〕
概略図は第1の実施形態と同様である。従って、図1から図3を用いて本実施形態の詳細について第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
本実施形態においては、図4(a)の様に光学センサ111が受光する光量を増加させる目的で光源部102を設ける。なお、本実施形態においては、光学センサ111とは別のデバイスとして光源部102を設けたが、光学センサ111と光源部102が1つのデバイスになった構成でもよい。
ユニットとして発光部と受光部とが組み込まれた光学センサ111とは別に、より詳しくは、光学センサ111からの照射方向とは別の方向から光を照射可能なように配置された光源部102によって発光された光が、原稿部表面で反射する。この反射光が光学センサ111に入射することにより、光学センサは原稿表面部を撮像する。より効率良く光学センサの前にレンズ103を配置して光を集光させる構成にしてもよい。
本実施形態による構成によれば、1つの光学センサで原稿の搬送状態を検知可能である為に、装置の大型化やコストアップすることなく装置を提供できる。
〔第4の実施形態〕
まず、第4の実施形態に係る原稿搬送装置について説明する。図6は、本実施形態に係る原稿搬送装置の構成を概略的に示す部分断面図であり、図7は、図6の原稿搬送装置の主要部の構成を概略的に示す模式図である。
基本的構成は第1の実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
原稿ピックアップ部の一例としてのピックアップローラ4(取り込み手段)は、シート積載台1のシートをシート積載台1から送り出す。ピックアップローラ駆動モータ5は、ピックアップローラ4を回転させる。図7ではシート上面がシート取込位置にあり、ピックアップローラ4を回転させればシートの取り込みが始まる状態である。また、ピックアップローラ4はシート取込位置とシート取込位置よりも上方の退避位置とに不図示の駆動手段によって移動できる。ピックアップローラ4はシートを取り込むときは取込位置に、取り込みが終わったら退避位置に移動する。
ここで、図8にて本実施形態の要部詳細図を示す。ピックアップローラ4とピックアップローラ駆動モータ5、給送ローラ6とニップ隙間調整モータ11、最後に分離ローラ7と分離モータ9で構成される給紙ユニット部113の搬送路からの高さhよりも低い位置に、光学センサ111を配置しており、給紙部の構成にて、筐体の高さ方向のサイズに影響を与えること無く光学センサ111を配置可能となる。図18及び図19を用いて、光学センサ111の配置方法の詳細について説明する。図18は、原稿搬送装置を給紙面に正対する形で見たときに、光学センサ111とピックアップローラ4と分離ローラ7を抽出した図である。本実施形態においては、ピックアップローラ4を保持している部材が延出し、光学センサ111を保持する。図19は、図18の構成物に関するA−A'断面図であり、その他の実施形態で図15を用いて後述するように、光学センサ111がケース体112によって覆われている例を示している。光学センサ111の検知領域を最大限に拡大することを目的として、光学センサ111はピックアップローラ4を撮像しない向きに配置して、原稿のみ撮像する構成にするのが望ましい(撮像領域の一部にでも原稿以外の領域があると、移動量または移動方向を検知する為の情報量が少なくなり、検知精度を低下させる要因になる)。
但し、光学センサ111の周囲を覆っているケース体112の壁面のうち、給紙面との距離が短い方の壁面が上流側に配置される向きに光学センサ111を配置する図19の向きに対し、その反対、すなわち、ケース体112の壁面のうち、給紙面との距離が短い方の壁面が下流側に配置される向きに光学センサ111を配置するようにしたときにも、光学センサ111の検知領域に原稿のみが含まれるように構成できる場合には、ピックアップローラ4や分離ローラ7における紙粉の発生を考慮して、給紙面との距離が短い方の壁面が下流側に配置される向きに光学センサ111を配置するようにするのが好ましい。このように配置すれば、光学センサ111に対向する面(図15の透光面112c)に対する紙粉の付着を低減することができる。
ここで、シート積載台1に載置された原稿束を連続して1枚ずつ給紙する場合を想定し、次に給紙ユニット部113へと搬送される原稿の位置について説明する。図8において、本来であれば一点鎖線の位置にある原稿が、直前の原稿が搬送されるときに、直線の原稿と次の原稿の表面間に生じる摩擦力によって、載置された位置よりも給紙ユニット部113側に移動することがある(点線の位置)。その場合、光学センサ111が撮像する領域内(第1の実施形態の撮像領域Lに相当する領域内)に原稿搬送装置が搬送可能な最小サイズの原稿の少なくとも一部が撮像されていれば、全ての原稿種に対して、光学センサ111により搬送の不良を検知可能である。
図8においては、点線で示す位置にある最小サイズの原稿、すなわち、先行する原稿との摩擦によって給紙ユニット部113内部へ進入して搬送路に先端が当接する位置にある最小サイズの原稿の後端が、光学センサ111の撮像領域L内に含まれる位置に光学センサ111を配置している。最小サイズの原稿としては、装置によって異なるが、名刺サイズなどが挙げられ、その場合、光学センサ111はピックアップローラ4に近接した位置に配置され、場合によっては給紙ユニット部113内部に設けられてもよい。
すなわち、シート積載台1に載置された原稿束を搬送路の上流に設けられた原稿給紙口に連続搬送するときに、複数の原稿が同時に通過可能な位置、図8においては点線で示す用紙の後端を撮像可能な位置に設けることで、搬送する原稿の後端を撮像して後端検出が可能となる。なお、本実施形態においては、原稿の後端の検知としては、先行する原稿の後端が次の原稿に対して影を形成することによって、出力が変動することを利用している。
具体的な光学センサ111の配置としては、シート積載台1におけるシートが積載される位置の先端よりもわずかに上流である。つまり、シート積載台1先端側でシート積載台1と対向する位置である。また、光学センサ111を、ピックアップローラ4や給送ローラ6を有する給紙ユニット部113の高さよりも低く配置することで、装置本体の大型化を抑えることができる。
本実施形態の構成によれば、1つの光学センサで原稿の搬送状態を検知可能であり、かつ原稿が規制されてからの搬送状態を検知する構成になっている。その為、付加的な処理を実行することなく原稿の搬送状態を検知可能な為に、処理時間を増大させることがない。
よって、装置の大型化やコストアップすることなく、処理時間についても不要に増加しない装置を提供できる。
〔第5の実施形態〕
本発明の第5の実施形態に係る原稿搬送装置について説明する。
本実施形態に係る原稿搬送装置においては、原稿を1枚ずつ分離して給紙する原稿分離部を有しており、その原稿分離部に対して搬送方向と直交する方向(搬送路の幅方向)において、原稿分離部を挟むようにして2つの金属検知センサを配置している。
この金属検知センサは、複数の原稿を固定するためのステープルなどの金属によって形成されたものを検出することができるように配置されている。
本実施形態においては、幅方向の両端側は、この金属検知センサによってステープルなどの金属検知を行い、分離ローラ、給送ローラによって構成される原稿分離部と搬送方向で重なる位置に、光学センサ111を設けることによって構成されている。具体的な光学センサ111の配置としては、原稿分離部を覆うように設けられる装置本体の外装部分における原稿分離部と重なる位置に設けられ、一例としては、外装を凸状に形成することでその内部に配置される。すなわち、原稿分離部よりも上流側に光学センサ111が配置される。
この構成によれば、搬送路の幅方向に関しては金属検知センサによってステープル等の金属検知を行い、搬送路の幅方向中央部分においては、上記実施形態1から4などで説明した光学センサ111によってステープル等の金属検知を行うことができる。つまり、最小限の構成によって、搬送路の幅方向に対するステープル等の金属検知と、実施形態1から4で説明したような光学センサ111による原稿の搬送状態の検出とを両立できる。
また、例えば、原稿分離部よりも上流側に配置した光学センサ111によって、搬送の異常を検知した場合に、原稿の先端が原稿分離部の手前まで到達するように搬送速度を減速して搬送し、原稿分離部の両側に配置された金属検知センサによって金属の有無を検知してもよい。このように構成することによって、搬送不良の原因を特定することができ、例えば、ユーザへの報知部を有する場合や、接続される情報処理装置の表示画面上において搬送不良の要因を報知することで、使用者への注意喚起を促すことができる。
〔その他の実施形態〕
次に、上述の実施形態に係る光学センサ111の種々の応用例について説明する。なお、原稿搬送装置200の基本的構成は、第1の実施形態と同様(又は、ピックアップローラ4を備える場合には、第4の実施形態と同様)である。
(シートのしわ検知)
上述の実施形態に係る光学センサ111は、搬送されるシート(原稿)の表面状態の検知に利用できる。ここでは、光学センサ111を、シートに生じたしわの検知に利用する例について説明する。
光学センサ111による移動量検知の対象となるシートにしわが生じている場合、当該シートのしわ部分における光の反射に起因して、光学センサ111によって得られる画像から抽出される(図5の例に示されるような)特徴点の数が多くなる。このため、このような特徴点の数に基づいて、搬送されるシートのしわを検知することが可能である。例えば、画像取得間隔時間Tごとに光学センサ111によって得られる画像から、所定の閾値以上の数の特徴点が一定時間継続して抽出された場合に、シートのしわを検知したと判定してもよい。
光学センサ111を利用したしわの検知結果に基づいて、画像読取センサ14、15による原稿画像の読み取りを制御してもよい。ここで、上述の実施形態に係る原稿搬送装置200(画像読取装置)は、シートの搬送路において光学センサ111の下流側の位置(例えば、搬送ローラ対20、21と搬送ローラ対22、23との間の位置)に、画像読取センサ14、15を備えている。画像読取センサ14、15は、それぞれ、搬送されるシートの表面及び裏面の原稿画像を読み取るために用いられる。画像読取センサ14(以下、画像読取センサ15も同様。)は、例えば、シートに対して異なる2方向(搬送方向上流側および下流側の2方向など)から光を照射するための2つの光源(発光素子)と、照射した光の反射光を受光する受光素子とで構成される。このような画像読取センサ14を使用して、2方向からシートに光を照射することで、画像読取センサ14による読み取り画像から、シートのしわを消去することが可能である。
このため、例えば、光学センサ111の出力に基づいてしわが検知されていない場合には、2つの光源の片方のみからシートへ光を照射する片側照射を行い、しわが検知された場合には、2つの光源の両方からシートへ光を照射する両側照射を行うよう、画像読取センサ14を制御してもよい。また、両側照射を行う場合に、しわの消去の効果をより高めるために、2つの光源の光量を増加させるよう、画像読取センサ14を制御してもよいし、片側照射であって、光源の光量を増加させるよう、画像読取センサ14を制御してもよい。
(シートの異常搬送検知)
上述の実施形態では、原稿搬送装置200に1つの光学センサ111が設けられる例を示しているが、2つ以上の光学センサ111が設けられてもよい。原稿搬送装置200が2つ以上の光学センサ111を備える場合、シートの異常搬送の検知にそれらのセンサを利用することが可能である。ここでは、異常搬送の検知例として、水平方向の回転の検知、及び重送の検知について説明する。
第1の例では、2つの光学センサ111を、シート(原稿)の搬送方向と直交する方向(幅方向)においてそれぞれ異なる位置に配置し、それら2つの光学センサによってシートの移動量を個別に検知する。この場合、それぞれの光学センサによって得られた2つの移動量の差分を求めることによって、搬送中のシートに水平方向の回転が生じているか否かを判定できる。具体的には、2つの移動量に差分が生じていなければ、シートに回転が生じていないと判定し、差分が生じていれば、シートに回転が生じていると判定する。
第2の例では、搬送されるシートの上側及び下側に、シート(原稿)を介して(シートの厚み方向で)互いに対向するように2つの光学センサ111を配置し、それら2つの光学センサによってシートの移動量を個別に検知する。この場合に、複数枚のシートが重なった状態で搬送される重送が発生すると、2つの光学センサ111によってそれぞれ異なる移動量が検知される。これは、重なった状態で搬送される上側のシートと下側のシートとが異なる速度で移動するためである。このため、2つの光学センサ111によって検知される移動量の差分に基づいて、重送が発生しているか否かを判定できる。例えば、ステープルなどによって複数の紙が留められている場合には、上側のシートと下側のシートとの間に大きな移動量の差が現れるため、ステープルなどの検知が可能となる。
また、2つの光学センサ111は、シートの搬送路において給送ローラ6及び分離ローラ7の上流側の位置(例えば、図6及び図7のピックアップローラ4の直前又は直後の位置)に配置されることが好ましい。その場合、シートの先端が給送ローラ6及び分離ローラ7に到達してシートの分離が行われる前に、重送を検知することが可能になる。なお、2つの光学センサ111は、互いに対向する位置ではなく、ずらした位置に配置されてもよい。この場合、重送の検知だけでなく、例えば、上述のようなシートの回転の検知も同時に行うことが可能になる。
(シートの跳ね上がり検知)
上述の実施形態に係る光学センサ111を、搬送されるシート(原稿)の跳ね上がりの検知に利用する例について説明する。
図12は、搬送される原稿の状態と、当該原稿が一定の速度で搬送されている場合に光学センサ111によって検知される移動量との関係の例を示す図である。図12(a)に示すように、原稿に跳ね上がりが生じていない場合、光学センサ111によって検知される移動量は、シート積載台1に積載されたシートが移動を開始すると、検知される移動量はほぼ単調に増加し、シートの移動速度(搬送速度)が安定すると、検知される移動量はほぼ一定となる。その後、搬送されるシートが光学センサ111の撮像領域から外れ始めると、検知される移動量はほぼ単調に減少し、当該シートが撮像領域を外れると、検知される移動量は0となる。
一方、図12(b)に示すように、原稿に跳ね上がりが生じている場合、光学センサ111と原稿の表面との距離が変化することに起因して、光学センサ111によって検知される移動量に急激な変化が生じる。このため、図12(b)に示すような移動量の変化を検知(即ち、移動量の時間波形の異常を検知)することによって、シートの跳ね上がりを検知できる。実際には、図12(b)に示すように、移動量の急激な変化が繰り返すように現れる。
(付箋検知及び重送判定制御)
上述の実施形態に係る光学センサ111を、搬送されるシート(原稿)に貼付された付箋の検知に利用する例について説明する。また、付箋の検知結果を重送判定の制御に利用する例について説明する。
光学センサ111による移動量検知の対象となるシートに付箋が貼付されている場合、シート上の付箋が貼付されていない部分と付箋が貼付された部分とで、光学センサ111によって得られる画像から抽出される特徴量(特徴点の数)が変化する。このため、このような特徴量の違いに基づいて、搬送されるシートに貼付された付箋を検知することが可能である。
例えば、画像取得間隔時間Tごとに光学センサ111によって得られる画像から、光学センサ111の撮像領域を分割した領域ごとに局所的な特徴量を抽出する。更に、画像取得間隔時間Tごとに抽出した、各領域の特徴量の時間的な変化に基づいて、シート上で付箋が貼付された領域を特定することによって、付箋の検知を行う。なお、光学センサ111の撮像領域を分割せずに特徴量を抽出して、時間変化に基づいて付箋が貼付された領域を特定してもよい。
また、上述のように、光学センサ111を利用した付箋の検知結果を利用して、重送検知センサを用いた重送判定を制御してもよい。ここで、上述の実施形態に係る原稿搬送装置200(画像読取装置)は、シートの搬送路において給送ローラ6及び分離ローラ7の下流側の位置に、重送検知センサ30を備えている。重送検知センサ30として超音波センサを用いた場合、比較的高い精度でシートの重送を検知できることが知られている。しかし、シートに貼付された付箋に起因して、重送検知センサ30を用いた重送判定(シートの重送が生じているか否かの判定)に誤差が生じる可能性がある。
本例では、上述のような重送判定の誤差が生じることを防止するために、シートに貼付された付箋が通過する位置に配置された重送検知センサ30が重送判定に用いられないようにする。図13は、シートの搬送路における重送検知センサ30の配置例と、付箋の検知結果に基づく重送判定の制御例を示す図であり、シートの搬送方向と直交する方向においてそれぞれ異なる位置に、3つの重送検知センサ30a、30b、30cが配置されている。また、それに対応してそれぞれの重送検知センサの上流側に、複数の光学センサ111が配置されている。図13の例では、シートの搬送中に、重送検知センサ30a、30b、30cのうちで重送検知センサ30cの位置を当該シート上の付箋が通過することになる。
そこで、光学センサ111を利用して付箋の検知を行い、検知した付箋が通過することになる重送検知センサ30cを特定し、当該重送検知センサ30cを用いた重送判定を行うことを禁止する。この場合、シートの搬送中に付箋が通過することがない位置に配置された重送検知センサ30a、30bを用いて重送判定が行われる。これにより、上述のような重送判定の誤差が生じることを防止できる。
なお、一つの重送検知センサに対して複数の光学センサ111を上流側に配置してもよい。一例として、重送検知センサ30aの検知領域は原稿の搬送方向と直交する方向(幅方向)において約1cmとなっている。その重送検知センサ30aを幅方向の中央付近に配置して、シートの重送を検知している。本実施形態における光学センサ111は、重送検知センサ30aの上流側において、重送検知センサ30aと重なる位置に、2つの光学センサ111を幅方向に並べて配置している。光学センサ111の撮像領域としては、約0.6mm四方となっており、非常に狭い領域であるため、重送検知センサ30aの検知領域に対して両端から約3mm程度の箇所にそれぞれを配置することが好ましい。そうすることによって、付箋が重送検知センサ30aを通過するかどうかを検知可能になるとともに、付箋以外にも何らか特徴量が変化したことを検知できる。特徴量の変化を検出することに対しては、シートが切り替わった場合と区別するために、後述のシートの後端検知を用いることが好ましい。シートの後端を検知していないのに特徴量が変化した場合に、原稿に何かが貼付してあることを良好に検出できる。
(シートの後端検知)
上述の実施形態に係る光学センサ111を、搬送されるシート(原稿)の後端の検知に利用する例について説明する。図14は、光学センサ111によって画像取得間隔時間Tごとに検知される、シートの搬送方向及び搬送方向と直交する方向の移動量の時間変化の例を示す図であり、光学センサ111の構成や配置等の、光学センサ111の設定が異なる2つの例を示している。
図14(a)の例では、シートの搬送方向の移動量については、図12(a)の例と同様に変化している。なお、搬送方向と直交する方向については、当該方向へシートは移動しないため、検知される移動量が0の状態が継続する。
図14(b)の例では、シートの搬送方向の移動量については、図12(a)及び図14(a)の例と同様に変化している。一方、搬送方向と直交する方向の移動量については、シートの後端が光学センサ111の撮像領域から外れる(即ち、撮像領域の端部を通過する)際に変化が検知されている。この移動量の変化は、光学センサ111の設定に依存して、シートの影が光学センサ111によって撮像されることに起因している。このような移動量の変化を、シートの後端の検知に利用することが可能である。即ち、光学センサ111によって得られる、シートの搬送方向と直交する方向の移動量に、特定の変化が生じたタイミングを、シートの後端が撮像領域の端部を通過したタイミングとして特定することで、シートの後端の検出が可能である。
このようなシートの後端の検知結果をシートの搬送制御に利用してもよい。一例として、シートの後端の検知結果に基づいて、シート積載台1に積載されたシートを搬送方向下流側へ送り出すピックアップローラ4の動作を制御する例について説明する。例えば、光学センサ111を用いてシートの後端を検知したことに応じて、ピックアップローラ4を退避位置から取込位置へ移動させることで、次のシートの送り出しを開始してもよい。これにより、レジスト前センサ32によるシート先端の検知に応じて、ピックアップローラ4の位置を制御する必要が無くなり、レジスト前センサ32を省くことが可能になる。即ち、光学センサ111を、レジスト前センサ32として兼用することが可能になる。
(シートの搬送速度の検知)
上述の実施形態に係る光学センサ111を用いてシート(原稿)の搬送速度を検知し、検知した搬送速度に基づくフィードバック制御を行う例について説明する。
原稿搬送装置200内の搬送ローラが正常に動作している場合には、搬送ローラを駆動するモータの回転速度と、光学センサ111を用いて検知される搬送速度とは一致する。一方、モータの回転速度と、光学センサ111を用いて検知される搬送速度との間にずれが生じた場合、搬送ローラの回転状態に異常が生じている(例えば、搬送ローラが消耗して滑っている)可能性がある。
そこで、光学センサ111によって得られる、シートの移動量に基づいて、当該シートの搬送速度を検知し、検知された搬送速度とモータの回転速度とを比較することで、搬送ローラの回転状態を判定してもよい。また、搬送ローラに異常が生じていると判定した場合に、当該搬送ローラの交換を促す通知をユーザに対して行ってもよい。これにより、搬送ローラの回転状態の判定のためにエンコーダ等を設ける必要がなくなり、より簡易に搬送ローラの回転状態を判定することが可能になる。
(紙粉防止用の構成例)
原稿搬送装置200の筐体内で発生した紙粉が光学センサ111に付着すると、光学センサ111によって撮像された画像から紙粉が特徴点として誤って抽出される可能性がある。このような紙粉が光学センサ111に付着することを防止するために、光を遮蔽するモールド部材と光を透過させる透光板(フィルタ)とで覆われるように光学センサ111を構成する例について説明する。
図15は、モールド部材及び透光板で周囲が覆われた光学センサ111の構成例を示す断面図である。図15の例では、光学センサ111は、基板100に対して実装されており、例えば赤外線レーザ光を出力する発光素子(レーザ光源)と、発光素子が出力した光の反射光を受光する受光素子とを含むセンサ素子で構成される。発光素子及び受光素子は、光学センサ111上で隣接した位置に配置されている。図15に示すモールド部材112a、112b及び透光板112cは、光学センサ111の周囲を覆っているケース体112の一部を構成している。モールド部材112a、112bは、基板100に対して垂直な壁を形成している。透光板112cは、モールド部材112a、112bの基板100側の端部とは反対側の端部に接続されている。図15の配置では、透光板112cが、基板100の表面又は上述の撮像基準面に対して傾斜を有するように、モールド部材112bが形成する壁はモールド部材112aが形成する壁よりも長くなっている。
透光板112cは、光学センサ111の発光素子から出力されて原稿へ向かう光を透過させる。透光板112cを透過して原稿で反射した光は、透光板112cを透過して、光学センサ111の受光素子によって受光される。このような光学センサ111の構成によって、紙粉が直に光学センサ111に付着することを防止できるとともに、紙粉が特徴点として誤って抽出されることを防止できる。なお、光学センサ111(発光素子)が照射する光の波長は850nm程の近赤外線領域の光を用いるのが好ましく、透光板112cとしては、その帯域の光を透過可能なフィルタを用いることが好ましい。また、透光板112cで反射光が生じた場合に備えて透光板112cの反射率r1よりも低い反射率r2(r1>r2)を有する材料をモールド部材112a、112bに採用してもよい。これにより、モールド部材112a、112bの内壁で反射して光学センサ111へ向かう余分な反射光を効果的に低減することが可能になる。これは、上述のように、光学センサ111に入射する反射光に起因した、シート(原稿)の移動量の誤検知に対する対策となる。
ケース体112に周囲が覆われた光学センサ111(図15)は、図1乃至図3に示すようにシート積載台1と対向する位置に配置されるのではなく、搬送路の途中に配置されてもよい。図15(a)は、シートの搬送路1600の途中における光学センサ111の配置例を示しており、搬送路1600の途中の、搬送ローラ1601と搬送ローラ1602との間の位置に、光学センサ111が配置されている。例えば、搬送ローラ1601、1602は、それぞれ給送ローラ6及びレジストローラ17でありうる。
図15(a)では、ケース体112を構成する壁(モールド部材)112a、112bのうち、長い壁112bが、シートの搬送方向における上流側に配置され、短い壁112aが、シートの搬送方向における下流側に配置されている。この配置は、ケース体112の外部から内部に向かう外光の影響を抑えるために効果がある。なお、図15(b)に示すように、短い壁112aが、シートの搬送方向における上流側に配置され、長い壁112bが、シートの搬送方向における下流側に配置されてもよい。この配置は、例えば、搬送ローラ1601よりも、下流側に配置された搬送ローラ1602の方が回転数が早いために、搬送ローラ1602によって紙粉が飛びやすい場合に、そのような紙粉の影響を抑えるために効果がある。
なお、ケース体112を構成する壁112a、112bは、図16に示すように、画像読取装置(原稿搬送装置200)の筐体を構成する樹脂で形成されてもよい。また、上述した配置と同様、図16(a)に示すように、長い壁112bがシートの搬送方向の上流側に配置されてもよいし、図16(b)に示すように、短い壁112aがシートの搬送方向の上流側に配置されてもよい。
また、ケース体112を構成する壁112a、112bの長さが等しい(即ち、基板100の表面と平行に透光板112cが配置されている)場合には、図17に示すように、基板100、光学センサ111及びケース体112から成るモジュールを、それ自体が上述の撮像基準面(例えば、搬送路1600の表面)に対して傾斜を有するように、配置してもよい。この場合、図17(a)に示すように、透光板112cが、搬送方向の上流側において撮像基準面に近く、下流側において撮像基準面から遠くなるように、撮像基準面に対してモジュールを傾斜させてもよい。これにより、図15(a)を用いて上述した配置と同様、ケース体112の外部から内部に向かう外光の影響を抑えることが可能になる。また、図17(b)に示すように、透光板112cが、搬送方向の上流側において撮像基準面から遠く、下流側において撮像基準面に近くなるように、撮像基準面に対してモジュールを傾斜させてもよい。これにより、図15(b)を用いて上述した配置と同様、下流側に配置された搬送ローラ1602の回転に起因した紙粉の影響を抑えることが可能になる。
また、光学センサ111の解像度を1500cpiとすると、図18に示すように、光学センサ111よりも搬送方向における下流側に配置される画像読取センサ(図18に示す実施形態においては画像読取センサ14、15)のうち、上流側に配置される方の画像読取センサ(図18においては画像読取センサ14)の読取位置Pと光学センサ111との距離L2に対し、搬送ローラ20等によって搬送される速度V2と光学センサ111における画像取得間隔時間Tとが、T×3000≦L2/V2の関係を満たすように配置することによって、光学センサ111によって取得した移動量に基づいて、画像読取センサ14、15に対する制御を切り替えることが可能となり、好ましい。
また、光学センサ111から原稿分離部(給送ローラ6および分離ローラ7)までの距離L3に対して、ピックアップローラ4によって搬送される搬送速度V3と光学センサ111における画像取得間隔時間Tが、T×1500≦L3/V3の関係を満たすように配置することで、原稿分離部に対して原稿が突入する前に、精度よく光学センサ111による移動量の検出を行うことができる。一例としては、上記実施形態において説明したように、ピックアップローラ4に対して上流側に光学センサ111を配置することによって、十分に移動量を検出する時間(搬送距離)を稼ぐことができ、好適である。なお、本実施形態においては、光学センサ111を保持するケース体112を、画像読取装置200の筐体201から一部が突出するように設けており、そのケース体112内部に光学センサ111が実装される光学センサ基板100を固定することで、ピックアップローラ4からさらに上流側に光学センサ111を固定している。
以上説明した本発明の実施形態の中で、撮像領域における搬送方向に対する範囲をLとしたが、光学センサ111の取り付け角度に拘らず、図20に示すように、撮像領域に対して搬送方向の長さを比較した際に最大となる長さがLとなる。このLに対して各実施形態で説明したような搬送速度等との関係が成り立つようにすることによって、原稿が斜めに搬送された場合でも良好に移動量の検出を行うことができる。図20は、光学センサ111による撮像領域を上方から見た図であり、図20(a)には撮像領域が楕円のものを示しており、搬送方向において最も長い部分の長さがLとなる。図20(b)には撮像領域が矩形のものを示しており、上記実施形態で説明したものと同様である。上記実施形態では5×5の画素を有するもので説明したが、必ずしも搬送方向とそれと直交する幅方向との画素数が一致していなくてもよい。図20(b)の場合、搬送方向の長さは幅方向のどこでも等しく、Lとなっている。図20(c)は、図20(b)に示した撮像領域が矩形となるものを角度θ傾いて取り付けた場合を示している。このθは取り付け時の誤差を含んでおり、その場合θは5度程度に収まることになる。よって、基本的には図20(b)の状態で取り付けたことを想定してLを設定すればよいが、意図的に取り付ける場合などには、センサとしての撮像領域に対してcosθで除算した値を用いるなどしてLを設定すればよい。
以上、本発明の原稿搬送装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をすることができる。