以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
<原稿搬送装置200>
図1は、本発明の実施形態に係る原稿搬送装置(画像読取装置)の構成を概略的に示す部分断面図であり、図2は、図1の原稿搬送装置の主要部の構成を概略的に示す模式図である。
図1及び図2において、原稿搬送装置200は、シート取込装置101を備える。シート積載台(原稿台)1には複数枚のシートが積載(載置)されており、シート積載台1は昇降自在に構成されている。積載台駆動モータ2は、シート積載台1を昇降させる。シート検知センサ3は、シート積載台1に積載されたシートがシート取込位置にあることを検知する。シート積載検知センサ12は、シート積載台1のシート積載面1aにシートが積載されていることを検知する。
原稿ピックアップ部の一例としてのピックアップローラ4(取り込み手段)は、シート積載台1のシートをシート積載台1から送り出す。ピックアップローラ駆動モータ5は、ピックアップローラ4を回転させる。図2ではシート上面がシート取込位置にあり、ピックアップローラ4を回転させればシートの取り込みが始まる状態である。また、ピックアップローラ4はシート取込位置とシート取込位置よりも上方の退避位置とに不図示の駆動手段によって移動できる。ピックアップローラ4は、シートを取り込むときは取込位置に、取り込みが終わったら退避位置に移動する。
また、原稿ピックアップ部の一例としての給送ローラ6は、ピックアップローラ4の下流側に設けられており、給送モータ8によって、シートを搬送方向下流側に給送する方向に回転するよう駆動されている。給送ローラ6と搬送路を挟んで対向して設けられる分離ローラ7は、シートを搬送方向上流側に押し戻す方向に回転する回転力を不図示のトルクリミッタ(スリップクラッチ)を介して分離モータ9から常時受けている。給送ローラ6と分離ローラ7との間にシートが1枚存在するときは、上記トルクリミッタが伝達する、分離ローラ7がシートを上流側に押し戻す方向の回転力の上限値より、給送ローラ6によって下流側に送られるシートと分離ローラ7との間の摩擦力によってシートが下流側に給送される方向への回転力が上回り、分離ローラ7は給送ローラ6に追従して回転する(連れ回りする)。
一方、給送ローラ6と分離ローラ7との間にシートが複数枚存在するときは、分離ローラ7は、シートを上流側に押し戻す方向の回転をローラ軸から受け、最も上のシート以外が下流側に搬送されないようにする。
このように給送ローラ6のシートを下流側に給送する作用と、分離ローラ7のシートを下流側に搬送されないようにする作用とによって、シートが重なって給送ローラ6と分離ローラ7とのニップ部に送り込まれたとき、最も上のシートのみ下流側に給送され、それ以外のシートは下流側に搬送されないようにされることで、重なったシートが分離給送される。よって、給送ローラ6と分離ローラ7とは、一対の分離ローラ対42を構成する。分離ローラ対42は、搬送対象の複数の原稿を1枚ずつ分離して搬送するための原稿分離部の一例として機能する。なお、本実施形態では、分離ローラ対42を使用しているが、分離ローラ対42の代わりに分離ローラと給送ローラのどちらか一方をベルトにした、分離ベルトローラ対を使用してもよい。また、分離ローラを分離パッドに置き換え、シートに当接することで下流側へ複数枚のシートが搬送されることを防ぐようにしてもよい。
また、分離された原稿が通過する位置に重送検知センサ30を備えることで、原稿分離部によって原稿が一枚ずつに分離できているかを検知することができる。本実施形態においては重送検知センサ30として超音波の送受信部を用いた検知装置を用いており、搬送路を跨いだ送受信部間における超音波の減衰量によって重送を検知することができる。
搬送モータ10は、原稿分離後のシートを、画像読取センサ14,15(画像読取部)によって原稿の画像の読み取りが行われる画像読取位置まで搬送し、更に排出位置まで搬送するため、その他のローラ(原稿搬送部)を駆動する。また、搬送モータ10は、シートの読み取りに最適な速度や、シートの解像度等の設定に応じてシートの搬送速度を変更できるよう各ローラを駆動する。
ニップ調整モータ11は、給送ローラ6と分離ローラ7との隙間、或いは分離ローラ7に対してシートを介して給送ローラ6が圧接する圧接力を調整する。これにより、シートの厚みに適合した隙間、或いは圧接力が調整され、シートを分離することができる。
レジストクラッチ19は、搬送モータ10の回転駆動力をレジストローラ18(原稿搬送部)に伝達、又は当該伝達を遮断する。レジストローラ17,18で構成されるレジストローラ対の回転を停止することにより、給送されるシートの先端をレジストローラ対のニップ部に突き当てて、シートの斜行を補正する。
搬送ローラ20,21で構成される搬送ローラ対、搬送ローラ22,23で構成される搬送ローラ対、及び図1に示すさらに下流側のローラ対は、シートを排出積載部44に搬送する。上ガイド板40と下ガイド板41との2つのガイド板は、分離ローラ対、レジストローラ対、各搬送ローラ対及び下流側のローラ対により搬送されるシートを案内する。
レジスト前センサ32は、レジストローラ17,18で構成されるレジストローラ対の上流側に配設され、搬送されるシートを検知する。レジスト後センサ33は、レジストローラ17,18で構成されるレジストローラ対の下流側に配設され、搬送されるシートを検知する。
なお、原稿搬送装置200は、装置全体の動作を制御する制御部45を備えている。制御部45は、例えば、1つ以上のプロセッサ(CPU)で構成される。
本実施形態の原稿搬送装置200は、搬送される原稿の挙動を検出するためのセンサである光学センサ111を備えている。図1及び図2の構成例では、光学センサ111は、シート積載台1と対向する位置に配置されている。
<光学センサ111>
次に、図3及び図4も参照して、本実施形態に係る光学センサ111について説明する。光学センサ111は、搬送される原稿の挙動を検出するためのセンサであり、本実施形態では、撮像対象物の移動量又は移動方向の検出に用いられる。例えば、光学センサ111は、原稿の搬送方向の移動量及び当該搬送方向に直交する方向の移動量の検出に用いられる。光学センサ111は、シート(原稿)の搬送方向において画像読取センサ14,15よりも上流側に配置される。これにより、原稿の搬送方向の検出をより早いタイミングで開始可能となる。つまり、原稿の挙動変化が発生した際に、光学センサ111を用いて、より早くその動きを検出することが可能である。
図3に示すように、光学センサ111が実装されている基板100が、シート積載台1と対向する位置に、シート積載台1と平行に取り付けられている。即ち、光学センサ111の撮像面がシート積載台1の表面(対向面)と平行になるように基板100が取り付けられている。ここで、光学センサ111にはエリアイメージセンサを使用する。本実施形態の場合には、光学センサ111の撮像面がシート積載台1の表面と平行になることは、光学センサ111が実装されている基板100がシート積載台1の表面と平行になることと同義である。
ここでは光学センサ111の撮像面がシート積載台1の表面と平行になる例を示したが、光学センサ111の撮像面はシート積載台1の表面と必ず平行になる必要は無く、傾いて取り付けられてもよい。つまり、光学センサ111の撮像面が搬送される原稿の挙動を検出できる範囲であれば、光学センサ111は搬送路の上流側又は下流側に傾いて取り付けられてもよい。
本実施形態においては、光学センサ111を撮像素子として用いて、搬送される原稿の画像を取得して、その画像情報に基づいて原稿の移動量を検出することで、原稿の挙動を検出する。光学センサ111は、原稿が搬送される搬送路内における撮像基準面から所定距離D離れるように配置されている。撮像基準面は、撮像素子である光学センサ111と対向する、光学センサ111による撮像の基準となる面であり、本実施形態では、撮像対象物である原稿(シート)が搬送される搬送路(シート積載台1)の表面が撮像基準面として定められる。但し、複数枚の原稿がシート積載台1に積載(載置)された状況においては、搬送される原稿の表面に相当する位置が撮像基準面となる。即ち、原稿を給送するときのシート積載台1の昇降範囲における最上位の位置でのシート積載台1の表面が概ね撮像基準面と一致する。
光学センサ111を撮像基準面から所定距離D離すことによって、原稿の種類や光学センサ111が配置される位置に依らずに原稿の画像を適切な間隔で取得することができる。したがって、光学センサ111としては、所定距離D離れた原稿に対し撮像焦点の合うものを用いることが好ましい。本実施形態においては、所定距離Dとして20mmから30mm程度、撮像基準面から光学センサ111を離して配置している。
本実施形態では、光学センサ111によって原稿の画像を所定の時間間隔で取得し、所定の時間間隔ごとの画像(もしくは所定の移動量間隔に基づいた画像)を比較することによって、原稿の移動量を判定する。原稿の移動量の判定は、例えば、光学センサ111が実装される基板100に設けられたICによって行われる。この場合、基板100に実装されるICが移動量検出部として機能する。但し、光学センサ111によって取得した画像を外部装置に送信し、外部装置上で移動量の判定を行ってもよく、その場合、外部装置を含めて移動量検出部を構成していると言える。その場合、外部装置における移動量の判定を行っている部分を含めて本実施形態における原稿搬送装置200を構成していることとなる。なお、原稿の移動量の判定は、図4(b)を用いて後述するように、光学センサ111内部で行われてもよい。
撮像対象物の移動量又は移動方向の検出(判定)は、光学センサ111によりエリアイメージを取得し、当該エリアイメージをA/D(アナログ/デジタル)変換して得られた画像を順次比較することによって行われる。本実施形態では、光学センサ111が撮像対象物の移動量又は移動方向を検出可能なセンサである(光学センサ111内部で移動量又は移動方向の検出が行われる)場合について説明する。この場合、光学センサ111が撮像対象物の移動量又は移動方向を検出可能な移動量検出部を備えている。
本実施形態では、光学センサ111内部でTG(Timing Generator)によりイメージセンサ(撮像素子)を駆動して画像信号を取得するとともに、A/D変換及び画像信号の解析を行い、撮像対象物の移動量又は移動方向を検出する構成が採用されている。具体的には、図4(b)に示すように、光学センサ111内部には、イメージセンサ、TG、AFE(Analog Front End)、及びDSP(Digital Signal Processor)を備えている(いわゆるシステム・オン・チップ(SoC)で構成されている)。光学センサ111は、TGにより駆動されるイメージセンサにより、撮像対象のエリアイメージ(画像信号)を取得し、AFEにより、取得した画像信号に対してA/D変換を実行する。更に、光学センサ111は、DSPにより、A/D変換後のデジタル画像信号に基づいて、撮像対象物の移動量を検出する。即ち、DSPが移動量検出部として機能している。
なお、別の例として、光学センサ111は画像信号の取得のみを行い、光学センサ111の外部の画像信号処理デバイス(例えば、上述のように基板100に設けられたIC)が、A/D変換及び画像信号の解析、並びに撮像対象物の移動量又は移動方向の検出を行う構成が採用されてもよい。
本実施形態では、光学センサ111による画像信号の取得は、光源部(発光素子)から撮像対象物(原稿等)に光を照射し、反射した光を受光部(イメージセンサ)が受光して光電変換することによって行われる。光学センサ111が備える光源部は、レーザ又は発光ダイオード(LED)で構成される。即ち、光学センサ111は、レーザにより赤外線レーザ光を撮像対象物に照射して、又はLEDによる発光を用いて撮像対象物に光を照射し、当該撮像対象物による反射光を受光することで、撮像対象物の表面画像を取得する。
特に、光源部にレーザ方式を用いれば、より詳細に原稿の移動量を検出可能となるため、好適である。なお、レーザ方式を用いる場合、レーザ光の波長を適切に選択することによって、搬送中の原稿のばたつきに起因した、移動量の検出精度の低下を軽減することが可能である。例えば、高さ約2mm程の搬送路内を搬送される原稿に対し、原稿の搬送面から光学センサ111までの距離Dが20mm程度である場合、約850nmの波長を有する赤外線レーザ光を用いることで、搬送中の原稿にばたつきが発生しても移動量の検出精度を維持できることが実験的に明らかとなっている。
なお、図1及び図2に示すように、シート積載台1には、搬送方向に対する幅方向の両端側にそれぞれ移動可能な規制部材51が設けられており、原稿(シート)の幅方向を規制している。規制部材51を幅方向に移動して、搬送する原稿の幅に合わせることによって、搬送中に原稿が斜行することを防止できる。本実施形態においては、光学センサ111は、規制部材51に対して取り付けられてもよいし、本体の外装に取り付けられてもよい。
図4(a)に示すように、光学センサ111の前に不図示のプリズムやレンズ等の光学部材(本例ではレンズ103)を配置し、対向する原稿に対して正対させる場合、光学センサ111が受光する光量が最大となるように光学部材を配置する。動作上問題が無い場合には、小型化やコストを優先して、これらの光学部材を省略できる。
図5は、光学センサ111から得られる画像に対して信号処理を実行して得られた画像の概略図を示している。図5では、ある時刻(t=0とする)に撮像された画像に対して、特徴点として抽出した点を黒マスで表している。ここでは例として1マス=1画素(つまり、光学センサ111の画素数は5×5=25マス)としているが、複数の画素の平均値又は特定の演算を行った後に代表して1マスを形成してもよい。例として、特徴点として他のマスと比較して明るい又は暗い点を抽出する。特徴点としては、原稿表面の凹凸や傷を抽出することができる。この状態から時刻がt'だけ経過して時点で、光学センサ111が再び画像を取得して、黒マス(特徴点)を抽出し、黒マス(特徴点)がどの様に移動しているかを比較して、時刻0からt'までの移動量を取得(算出)する。図5の例では、右に1マス、上に1マス移動したと判定する。なお、移動量の取得は、上述したように、光学センサ111内部のDSPにより行ってもよいし、光学センサ111とは別に設けた画像信号処理デバイスにより行ってもよい。
ここで、上述したように、光学センサ111は、光学センサ111の撮像面(受光面)と原稿の表面が互いに平行になるように配置されている。本実施形態で用いられる光学センサは、図6(a)に示すような特性を有する。図6(a)に示すように、光学センサは、一般的には、当該光学センサの受光面と原稿の表面とが互いに平行になっている場合(図6(b)左側)には、光学センサの受光面が原稿の表面に対して傾いている場合(図6(b)右側)に比べて、撮像対象である原稿の移動速度がより速い領域まで追従できる特性を有している。
<光学センサ111の配置の詳細>
次に、再び図3を使用して光学センサ111の配置の詳細について説明をする。
光学センサ111とシート積載台1間の距離Dについては、光学センサ111の撮像領域のうち、搬送方向に対する撮像範囲をL、センサの画像取得間隔時間をT、原稿搬送部の搬送速度の最大値をVとしたときに、L≧T×Vを満たす距離になる様に、距離Dを調整する。なお、以下の説明において、Lを撮像領域と表現することもある。なお、撮像領域とは、光学センサ111の撮像基準面における光学センサ111の視野角のことを示しており、撮像基準面に撮像対象(原稿)があれば、撮像領域内の画像を取得することができる。ここで言う搬送方向とは、実際に原稿(シート)が搬送される方向ではなく、装置によって搬送しようとする方向、即ち、給送ローラや搬送ローラの回転方向に沿う方向(各ローラの軸と垂直な方向)である。なお、センサの画像取得間隔時間をTとしたが、実際には、光学センサ111が取得した画像に基づいてシートの移動量を検出する移動量検出部を有し、その移動量検出部における移動量の取得間隔がTとなればよい。即ち、センサの画像取得間隔時間としてはTよりも短い間隔で取得しつつ、移動量検出部における移動量の検出をT間隔で行い、それ以外の取得データは無視するか、移動量検出部に対して入力自体しないものであってもよい。以下では説明上、センサの画像取得間隔時間Tとして説明するが、ここで説明したことと同義であり、移動量取得間隔時間Tと読み換えればよい。
ここで、光学センサ111と光学部材を合わせた画角(視野角)が大きくなると、1回で撮像できる領域が大きくなる為に、Lは大きい値を持つことになる。また、光学センサ111はある程度の視野角を持っているため、距離Dを大きくすることによってもLは大きい値を持つことができる。
画像取得間隔時間Tに関しては、光学センサ111が画像を取得するのに要する時間が短ければ小さい値を持つ。具体的には、光学センサ111の画像読出しクロックが早ければ、光学センサ111が画像信号を読み出す為の時間が短くなる。又は光学センサ111の画素数が小さければそれだけ画像信号を読み出す為の時間が短くなる。ただし、画素数が小さくなる場合は、前述のLの値に対しても影響を与える(小さくなる)ことがある。
前述のとおり説明した原稿の移動量検出について、移動量を検出する為に光学センサ111から得られる画像を複数平均する必要がある場合は、検出までの時間が必要になる。この場合は、画像取得間隔時間Tを移動量検出間隔時間T'に置き換えてL≧T'×Vを満たす様に光学センサ111とシート積載台1間の距離Dを調整する必要がある。
ただし、L≧T×V(又はL≧T'×V)は最低条件である為、ここではより最適な配置について言及する。例えば、図5に示した5×5画素の光学センサを用いた場合は、光学センサが1回画像を取り込むのに対して、原稿が1画素以下の変位量であれば精度の良い検出が可能となる。即ち、L≧T×V×5を満たせばよい。この関係式から、精度良く検出するための原稿搬送速度の上限値Vmaxとして、L/5Tを得る。
この上限値Vmaxでの運用が困難な場合を想定し、図7と図8を用いて別の形態について言及する。図7には、ある時刻t1と別の時刻t2(>t1)における原稿の撮像領域の重なり度合い(重複率)を模式的に表したものである。時刻t1と時刻t2とで、光学センサ111が撮像した領域のうち、両画像において重複する領域が大きければ大きいほど、前述した特徴点の数をより多く検出、追跡することができる為、移動量をより正確に検出できる。この場合、図7中のαL(αは撮像領域の重なり度合いを示し、α<1)を用いて、αL≧T×Vを満たすように光学センサ111を配置し、搬送速度Vを設定する。即ち、この関係式から原稿搬送速度の上限値Vmaxとして、αL/Tを得る。
図8に示すとおり、撮像領域の重なり度合いを上昇させていくと光学センサの検出精度は上昇する特性を示す。検出アルゴリズムとして所定の撮像領域の重なり度合いα1で検出精度が飽和するように構成した場合には、撮像領域の重なり度合いがα1となるようにVmaxを設定すればよい。
一例として、移動量の検出精度をある程度の高さとするために、撮像画素として重複エリアαLがN以上となることが好ましいとする。この場合、光学センサとして、搬送方向に対する画素数がLとすると、搬送方向の画素としてαL重複するようにすればよく、この場合、L-V×T≧N(=αL)となる。したがって、この場合には、V≦(L-N)/Tを満たすように搬送速度を設定することによって、精度良く移動量を検出することができる。具体的な例としては、図5に示す光学センサを用いた場合、重複エリアが4画素分以上(α=4/5=0.8)となればよいとすると、V≦(5-4)/T=1/Tとなるように搬送速度Vを設定すればよい。
本実施形態においては、図8に示すように、重なり度合いがα1=0.8となる辺りから検出精度が飽和気味に上昇してくるが、移動量の検出自体は画像取得間隔時間ごとに行っており、必ずしも連続して検出に成功する必要はない。概ね移動量を検出できている程度、即ち重なり度合いが第1閾値としてのα1となる程度の搬送速度に設定することで、搬送のスループットを向上できる。本実施形態においては、α=α1=0.6(重複率60%)に設定した場合に良好に検出が可能であるとともに処理部への負荷を抑えることができており、その場合、N=αL=0.6×5=3.0であるから、V≦2/Tとなる。
なお、上記は一例であり、使用する光学センサによって検出精度の特性は異なるが、検出精度が飽和し始める辺り、あるいは若干飽和するような撮像領域の重なり度合いα1を設定するのが好ましく、本実施形態においてはα=0.6となっているが、前後しても構わない。
搬送速度Vに関しては、原稿搬送装置が原稿を搬送する速度であるので、原稿搬送開始から所定の速度に到達するまで、段階的に(あるいは、モータの種類によっては無段階的に)速度が上昇することになる。逆に原稿の搬送停止時には、所定の速度から停止状態(V=0)に向けてやはり段階的に(又は無段階的に)速度が低下する。
上述した搬送速度Vの設定値としては、原稿搬送開始後に、搬送速度が所定の速度に到達した時点での速度V1が上記の関係式を満たすようにしておくことで、立ち上がりや立下りにおいて速度がV1よりも遅い場合でも、光学センサの検出精度が低下することはなく、好適に移動量を検出することができる。
ここで、例えば、装置にスペースの余裕が無ければ、画角の大きな光学部材を光学センサ111の前に配置し、搬送方向に対する撮像領域Lを大きくすることが考えられる。この構成によって、より大きな搬送速度Vに対応できることになる。
又は、搬送速度Vの変化に連動して、光学センサ111の画像取得間隔時間Tを変化させてもよい。ターゲットとなる撮像重なり領域(αL)を決め、搬送速度Vが変化しても、撮像重なり領域が常に一定となるように画像取得間隔時間Tを前述のTGが制御する。この制御を行うことで、搬送速度Vが変化しても、光学センサの検出精度が常に一定となる。
同様に、本実施形態において、上述したように搬送速度Vを設定する代わりに、画像取得間隔時間Tを調整することで、撮像領域の重なり度合いαが所定の値となるように調整してもよい。重なり度合いαがα1となるようにすれば効率よく光学センサの検出精度を向上することができるが、これに限られず、ある程度の重なり度合いαを保てるような画像取得間隔時間Tとなっていればよい。
光学センサの出力としては、所定の画像取得間隔時間Tで出力を処理するIC等に対して出力してもよいが、以下には別の例を示す。
例えば、光学センサにおける移動量の検出量が所定の値を上回ると移動量を出力する光学センサを使用した場合に、A4原稿の搬送として、150枚/分の搬送を行う場合について示す。原稿間隔距離を考慮しても搬送速度Vは1000mm/秒前後となる。この場合、画像取得間隔時間Tの一例として、光学センサの解像度が1500cpi、即ち1インチ当たり1500カウントの出力を行う設定とすれば、1カウント当たり1/1500インチ、つまり0.017mm程の移動があると1カウントの出力を行うものである。搬送速度V=1000mm/秒に対しては、1秒当たり1000/0.017≒60000カウント、即ち、1/60000秒で1カウント出力される。
光学センサとしては、図6(a)に示すように、所定の搬送速度以上になると、設定された解像度の性能を発揮できなくなる特性がある(検出精度が下がる)。これに対し、原稿搬送装置として設定可能な搬送速度に対して同等の検出精度を発揮できるように、解像度の設定値として1500cpi程度にすることによって、実際に使用される搬送速度V=1000mm/秒程の条件に対しては、解像度を下げずに、検出精度を一定に保ったまま使用することができる。特に、図6(b)を用いて説明したように、原稿の表面と光学センサの撮像面が平行となるように配置すること(図6(b)左側)によって、設定された解像度の性能を発揮しやすくなる、即ち、搬送速度を速くしても設定された解像度の性能を維持することができ、光学センサの検出精度を維持することができる。
また、光学センサとしては解像度として5000cpiやそれ以上となるものもあり、解像度を上げれば光学センサの検出精度は向上するが、その分光学センサを高速に動作させる必要があり、光学センサ内部の動作クロック周波数を上げることになるので、光学センサの出力を処理するIC等にかかる負荷や消費電力も増えることとなる。ここで示すような原稿の搬送状態を検出することを考えると、解像度を1500cpi程度とすることによって、搬送速度として要求される100枚/分程度の搬送速度Vに対しては十分な検出精度を確保することができ、処理にかかる負荷等を抑えることができる。
上述のような原稿搬送装置200の構成によれば、1つの光学センサ111で原稿の搬送状態を検出可能である為に、装置の大型化やコストアップをすることなく装置を提供できる。また、本実施形態においては、図4(a)に示すように、光学センサ111が受光する光量を増加させる目的で光源部102を設けている。なお、本実施形態においては、光学センサ111とは別のデバイスとして光源部102を設けたが、光学センサ111と光源部102が1つのデバイスになった構成でもよい。
<光学センサ111の構成>
図9は、本実施形態に係る原稿搬送装置200における光学センサ111の構成例を概略的に示す部分断面図であり、モールド部材及び透光板で周囲が覆われた光学センサ111の構成例を示している。
以下では、シート積載台1と対向する位置(図1乃至図3)ではなく、図9に示すように、搬送路900の途中の、搬送ローラ901と搬送ローラ902との間の位置に、光学センサ111が配置される場合について説明する。例えば、搬送ローラ901は、給送ローラ6又は分離ローラ7であってもよい。この場合、図9は、位置関係を示すための概略図であり、光学センサ111は、実際には搬送ローラ901に比べてもっと小さいことが想定される。
図9の例では、光学センサ111は、基板100に対して実装されており、例えば赤外線レーザ光を出力する発光素子(レーザ光源)と、発光素子が出力した光の反射光を受光する受光素子とを含むセンサ素子で構成される。発光素子及び受光素子は、光学センサ111上で隣接した位置に配置されている。図9に示すモールド部材112a,112b及び透光板112cは、光学センサ111の周囲を覆っているケース体112の一部を構成している。モールド部材112a,112bは、基板100に対して垂直な壁を形成している。透光板112cは、モールド部材112a,112bの基板100側の端部とは反対側の端部に接続されている。図9の配置では、透光板112cが、基板100の表面又は上述の撮像基準面に対して傾斜を有するように、モールド部材112bが形成する壁はモールド部材112aが形成する壁よりも長くなっている。
透光板112cは、光学センサ111の発光素子から出力されて原稿へ向かう光を透過させる。透光板112cを透過して原稿で反射した光は、透光板112cを透過して、光学センサ111の受光素子によって受光される。このような光学センサ111の構成によって、紙粉が直に光学センサ111に付着することを防止できるとともに、紙粉が特徴点として誤って抽出されることを防止できる。なお、光学センサ111(発光素子)が照射する光の波長は850nm程の近赤外線領域の光を用いるのが好ましく、透光板112cとしては、その帯域の光を透過可能なフィルタを用いることが好ましい。
図9(a)では、ケース体112を構成する壁(モールド部材)112a,112bのうち、長い壁112bが、シートの搬送方向における上流側に配置され、短い壁112aが、シートの搬送方向における下流側に配置されている。この配置は、ケース体112の外部から内部に向かう外光の影響を抑えるために効果がある。なお、図9(b)に示すように、短い壁112aが、シートの搬送方向における上流側に配置され、長い壁112bが、シートの搬送方向における下流側に配置されてもよい。この配置は、例えば、搬送ローラ901よりも、下流側に配置された搬送ローラ902の回転数が早い場合(即ち、搬送ローラ902によって紙粉が飛びやすい場合)に、搬送ローラ902によって生じる紙粉の影響を抑えるために効果がある。
<光学センサ111と他の光学センサとの近接配置>
次に、図10乃至図14を参照して、本実施形態に係る、光学センサ111と他の光学センサとを近接して配置する場合の光学センサ111の構成例について説明する。
原稿搬送装置200には、光学センサ111だけでなく別の光学センサが搭載(実装)される場合がある。例えば、上記の実施形態で説明したシート検知センサ3、レジスト前センサ32、及びレジスト後センサ33は、光学センサ111とは別の光学センサの一例である。これらのセンサ群は、装置の小型化やコストの抑制のために、同じ基板に実装される場合がある。ここでは、光学センサ111を、他の光学センサと同じ基板に実装する例について説明する。
図10は、複数の光学センサが同じ基板に実装された場合の基板の構成例を示す平面図である。図10の例では、基板100には、光学センサ111の他に、レジスト前センサ32と、センサ群の制御用のMCU(マイクロコントローラユニット)120とが実装されている。レジスト前センサ32は、発光素子32a及び受光素子32bで構成されている。なお、基板100には、光学センサ111の他に、レジスト前センサ32以外のセンサが実装されてもよいし、複数の光学センサが実装されてもよい。
光学センサは、アナログ信号を扱う場合が多く、それによりノイズに弱くなる傾向がある。本実施形態では、このようなノイズの影響を最小限にするために、センサ群(光学センサ111及びレジスト前センサ32)を、当該センサ群を制御する制御回路(制御IC)であるMCU120と同じ基板に実装している。具体的には、アナログ信号を出力する構成を有する光学センサをレジスト前センサ32として用いた場合の原稿の検出精度の低下を防ぐために、MCU120とレジスト前センサ32とを同じ基板に実装している。
1つの基板100上にセンサ群を配置する場合、基板100の面積を小さくするほど、光学センサ間の距離を近くせざるを得なくなる。この場合、1つの光学センサの発光素子から出力された光が他の光学センサの受光素子によって受光され、当該他の光学センサに誤動作が生じる可能性がある。
図11は、光学センサ111及び他の光学センサ(本例ではレジスト前センサ32)の光の分光特性の例を示している。光学センサ111は、上述のように、波長が850nm程の近赤外線領域の光を用いるのが好ましい。一方、レジスト前センサ32として使用される光学センサも、波長が800~950nm程の赤外線領域の光を用いる場合がある。この場合、光学センサ111とは異なる種類の光学センサをレジスト前センサ32として使用したとしても、図11に示すように、双方の光学センサが使用する波長が近くなりうる。その結果、双方の光学センサ(本例では、光学センサ111とレジスト前センサ32)のうちの一方のセンサから出力された光が他方のセンサによって受光される(即ち、干渉が生じる)ことで、当該他方のセンサに誤動作が生じる可能性がある。
<光学センサ間の干渉防止構成>
本実施形態では、同じ基板100に実装される光学センサ111と他の光学センサ(本例では、レジスト前センサ32)との間で上述のような干渉が生じるのを防ぐための、基板100を覆うケース体(ハウジング)の構成例について説明する。
図12は、光学センサ111及び他の光学センサであるレジスト前センサ32を含むモジュールの構成例を示す斜視図である。レジスト前センサ32は、発光素子32a及び受光素子32bで構成され、発光素子32aから出力した光の反射光を受光素子32bで受光し、当該反射光の受光量に対応する信号を受光素子32bから出力する。なお、レジスト前センサ32には他の構成を有するセンサが用いられてもよい。
図12に示すように、基板100にケース体130が取り付けられている。ケース体130は、図9に示すケース体112の機能と光学センサ間の遮光機構とが一体化した構成を有する。ケース体130の一部を構成するモールド部材130a及び透光板130dは、図9に示すケース体112に相当する部分であり、基板100上に実装された光学センサ111の周囲を覆っている。モールド部材130aは、基板100上の光学センサ111を囲む壁を形成している。透光板130dは、モールド部材130aによって囲まれた空間を塞ぐように、光学センサ111と対向する位置に設けられている。この構成により、ケース体112と同様、紙粉が直に光学センサ111に付着することを防止できるとともに、紙粉が特徴点として誤って抽出されることを防止できる。このケース体112を基板100に対して固定することによって、光学センサ111とレジスト前センサ32を覆うことができる。
ケース体130は、モールド部材130aに隣接して配置されたモールド部材130cを備える。モールド部材130cは、レジスト前センサ32(発光素子32a及び受光素子32b)を配置するための配置面を形成している。当該配置面は、モールド部材130aから側方に伸びており、レジスト前センサ32を配置可能な広さを有する。なお、モールド部材130cの内部は空洞であってもよい。また、モールド部材130cは、モールド部材130aと一体的に形成されてもよいし、板状の部材を結合して形成されてもよい。モールド部材130aの、モールド部材130cと隣接する部分は、後述するように、レジスト前センサ32と光学センサ111との間の隔壁130eを形成している。なお、レジスト前センサ32の発光素子32aと受光素子32bとは、基板100に実装され、モールド部材130cの配置面に設けられた貫通穴を貫通することで当該配置面に配置されていても良い。
図12に示すように、隔壁130e(第1遮光壁)は、光学センサ111と、レジスト前センサ32の発光素子32a及び受光素子32bとの間を仕切るように、光学センサ111とレジスト前センサ32との間に位置付けられる。これにより、隔壁130eは、光学センサ111とレジスト前センサ32とのうちの一方のセンサの発光素子から出力された光が他方のセンサに入射しないように遮光するための遮光壁として設けられる。例えば、隔壁130aは、レジスト前センサ32の発光素子32aから出力(照射)された光が(透光板130dを通して)光学センサ111によって受光されるのを防ぐための遮光壁として機能する。
隔壁130eは、基板100の表面からの高さとして、発光素子32aからの光を遮光するために十分な高さを有するよう、透光板130dが設けられた高さを上回る高さ(即ち、透光板130dの最も高い部分が配置される高さを上回る高さ)を有するように形成されている。また、隔壁130eに隣接する、モールド部材130aの一部である側面(発光素子32a及び受光素子32bの配列方向に直交する方向に沿った側面)も、光学センサ111に不要な光が入射することを防ぐために、隔壁130eと同程度の高さを有するように形成されている。
このような構成により、レジスト前センサ32の発光素子32aから出力された光が光学センサ111に入射することを防止しながら、レジスト前センサ32の位置決めを行うことができる。また、発光素子32aから出力されて導光体(図示せず)を通り、受光素子32bへ入射する光の一部が、光学センサ111に入射することを防止できる。
ケース体130は、モールド部材130a上に、モールド部材130aから側方に突き出した、発光素子32aと受光素子32bとの間の隔壁を形成するモールド部材130b(第2遮光壁)を備える。モールド部材130bは、モールド部材130aの一部である隔壁130eから連なって(隔壁130eと接するように)形成されている。このモールド部材130bは、発光素子32aから出力された光が受光素子32bに直接入射することを防ぐための遮光壁として設けられている。
モールド部材130a,130b,130cは、一体的に形成(即ち、1つのモールド部材で構成)されている。これは、光学センサ111及びレジスト前センサ32を実装した基板100の面積が比較的狭くてもセンサ間の干渉を防止しながらそれらのセンサを動作させるために有効である。
このように、本実施形態に係るケース体130は、光学センサ111への不要な光の入射を防ぎながら、光学センサ111と一緒に基板100上に配置されるレジスト前センサ32から光学センサ111への干渉を防ぐための遮光壁を形成している。
次に、図12に示すモジュールを、搬送ローラ901と搬送ローラ902との間に配置する例について説明する。図13(a)は、原稿搬送装置200を上部から見たときの、図12に示すモジュール及び搬送ローラ901,902の配置例を示す平面図である。本実施形態では、搬送ローラ901を保持している部材が延出し、光学センサ111及びレジスト前センサ32が搭載される基板100とケース体130とを保持する。原稿(シート)の搬送方向の上流側に配置された搬送ローラ901は、例えば、給送ローラ6又は分離ローラ7である。下流側に配置された搬送ローラ902は、例えば、レジストローラ17又は18である。
また、図13(b)は、図13(a)に示す構成におけるA-A'断面図である。本例では、光学センサ111及びレジスト前センサ32は、ケース体130によって覆われている。ケース体130の一部を構成するモールド部材130a及び透光板130dは、図9(b)に示しているケース体112の形状を保った状態で、光学センサ111を覆っている。隔壁130eにより、レジスト前センサ32から出力されて光学センサ111へ向かう光の遮光を実現している。また、モールド部材130cにより、レジスト前センサ32から出力されて光学センサ111へ直接向かう光を遮光しつつ、当該センサの位置決めを行うことを可能にしている。
なお、光学センサ111と一緒に基板100に実装される他の光学センサは、レジスト前センサ32以外の光学センサであってもよい。また、基板100には、光学センサ111と一緒に複数の光学センサが実装されてもよい。
<原稿検出処理>
上述の図12及び図13に示す構成例によれば、原稿搬送装置200内の搬送路900上で、レジスト前センサ32と光学センサ111とを近接して配置することが可能である。この場合、以下で説明するように、これら2つの光学センサを利用して、搬送路900上の原稿(シート)の有無だけでなく、OHPシート等の透明度の高い原稿(シート)を判別することが可能である。この判別結果に基づいて、画像読み取りセンサ14,15による原稿の読み取りにより得られた画像データに対して、透明度の高い原稿に適した画像処理を行うことが可能になる。なお、以下の例では、搬送ローラ901を給送ローラ6又は分離ローラ7で構成し、搬送ローラ902をレジストローラ17又は18で構成する。
ここで、レジスト前センサ32を利用した原稿の有無の検出は、以下のように行うことが可能である。具体的には、MCU120は、発光素子32aから光を出力させ、受光素子32bからの、受光量に対応する出力値をモニタリングし、当該出力値と所定の閾値との比較結果に基づいて、原稿の有無を検出する。具体的には、本実施形態においては、発光素子32aから照射された光が、搬送路を跨いで対向する位置に設けられた導光体によって導光され、再び搬送路を跨いで返ってきた光を受光素子32bが受光することによって検出しており、発光素子32aから出力された光が照射される領域に原稿が存在する場合、原稿によって光が遮られるため受光素子32bの受光量が小さくなる。このような受光素子32bの受光量の変化に基づいて、原稿の有無を検出できる。例えば、受光素子32bが、受光量が大きいほど出力値が小さくなる出力特性を有する場合、MCU120は、受光量が閾値以上であれば、原稿有りと判定し、受光量が閾値未満であれば、原稿無しと判定する。
しかし、原稿の透明度が高い(原稿が透明性を有する)場合、発光素子32aから出力された光が原稿によって十分に遮られず、受光素子32bの受光量が小さくならない。このため、発光素子32aから出力された光を透明度の高い原稿に照射した場合、上述の閾値の設定に依存して、受光素子32bの出力値から原稿無しという判定結果が得られる。本例では、このようなレジスト前センサ32の特性と、近接して配置された光学センサ111とを利用して、透明度の高い原稿の判別を行う。
上述のように、光学センサ111は、撮像素子が取得した撮像画像に基づいて、当該画像から抽出した特徴点を用いて原稿の移動量を検出する。光学センサ111を用いると、透明度の高い原稿についても、原稿表面の細かい傷等を特徴点として検出することができ、原稿を検出可能である。このため、透明度の高い原稿について、レジスト前センサ32によって検出されないように上述の閾値を設定することにより、光学センサ111を用いた透明度の高い原稿の判別が可能になる。
図14は、本実施形態に係る原稿搬送装置200における、透明度の高い原稿の判別を含む原稿検出処理の手順を示すフローチャートである。図14の各ステップの処理は、例えば、MCU120によって実行され得る。あるいは、制御部45に含まれる1つ以上のCPUが、記憶装置(図示せず)に格納された制御プログラムを読み出して実行することによって原稿搬送装置200において実現されてもよい。以下の原稿検出処理において、MCU120は、レジスト前センサ32による原稿の検出結果と、光学センサ111による原稿の移動量の検出結果とに基づいて、当該原稿が、透明度が高い原稿であるか否かを判定する。
まず、MCU120は、S1401で、発光素子32aを発光させて光を出力させ、S1402で、受光素子32bからの出力値を取得する。その後、S1403で、MCU120は、取得した出力値が閾値以上であるか否かを判定し、出力値が閾値以上である場合には、S1404へ処理を進める。S1404で、MCU120は、原稿有りとの判定結果を出力し、処理を終了する。一方、MCU120は、取得した出力値が閾値未満である場合(即ち、レジスト前センサ32からの出力値に基づいて、原稿無しとの判定結果が得られた場合)には、S1403からS1405へ処理を進める。
S1405で、MCU120は、光学センサ111により原稿が検出されたか否か(即ち、原稿の移動が検出されたか否か)を判定する。MCU120は、光学センサ111により原稿が検出されていない場合には、S1406へ処理を進め、原稿無しとの判定結果を出力し、処理を終了する。一方、MCU120は、光学センサ111により原稿が検出された場合には、S1405からS1407へ処理を進め、透明度が高い原稿を検出したことを示す判定結果を出力し、処理を終了する。このように、MCU120は、レジスト前センサ32によって原稿が検出されず(S1403で「NO」)、かつ、光学センサ111により原稿の移動が検出された場合に(S1405で「YES」)、透明度が高い原稿であると判定する。
上述した例では、レジスト前センサ32と光学センサ111とを組み合わせた原稿検出処理について説明したが、レジスト前センサ32以外の光学センサを用いることも可能である。また、原稿の移動量を検出するための光学センサ111を、レジスト前センサ32の代わりに使用することが可能である。即ち、透明度の高い原稿であるか否かによらず、レジスト前センサ32の代わりに光学センサ111を用いて、検出された移動量に基づいて原稿の有無の判定することが可能である。なお、図13、14に示すような配置である場合には、レジスト前センサ32と光学センサ111とが隣接して配置されているため、レジスト前センサ32によって原稿が検出されなかった際に即座に光学センサ111による原稿の検出を行うことができる。さらに、レジスト前センサ32と光学センサ111とが搬送方向において横に並んで配置されていることが好ましい。一方、レジスト前センサ32と光学センサ111とがある程度離れている場合には、その間隔を原稿が搬送される時間を搬送速度から逆算し、その時間だけ光学センサ111による検出を待ってから実行しても良い。
<具体的な構成例>
次に、図15を参照して、基板100に実装された光学センサ111及びレジスト前センサ32とケース体130の、より具体的な構成例について説明する。図15(a)は、原稿搬送装置200の搬送路における基板100及びケース体130の配置例を示す底面図である。
図15(a)において、搬送路を形成する板金140は、図1及び図2に示す上ガイド板40の一部を構成する。搬送ローラ902は、図1及び図2に示すレジストローラ17に対応する。板金140の上部に基板100及びケース体130が配置されている。図15(b)は、板金140の上部に配置された、図15(a)に示す基板100、ケース体130、及び基板100上のセンサ群の配置例を示している。図15(c)は、図15(a)に示す構成におけるB-B'断面図である。
図15の例では、基板100上には、原稿の搬送方向と直交する方向に沿って並べられた4つのレジスト前センサ32と、重送検知センサ30(送信部)と、光学センサ111とが実装されている。重送検知センサ30及び4つのレジスト前センサ32は、それぞれ、板金140に設けられた開口部に位置合わせされる。なお、図15に示す構成では、図1及び図2と異なり、重送検知センサ30よりも搬送方向の上流側にレジスト前センサ32が配置されている。
図15に示す構成では、図12及び図13に示す構成と同様、レジスト前センサ32と光学センサ111とが近接して配置される。これらのセンサ間で、一方のセンサの発光素子から出力された光が他方のセンサの受光素子へ入射することを防ぐために(即ち、センサ間の干渉を防ぐために)、図15(c)に示すように、ケース体130に隔壁130eが形成されている。
隔壁130eは、レジスト前センサ32の発光素子32aから光学センサ111側へ向かう光が遮光されるように、レジスト前センサ32と光学センサ111との間に形成されている。とりわけ、本例では、隔壁130eは、当該隔壁の端部(先端)が板金140に突き当たるように形成されている。これにより、隔壁130eと板金140との間の隙間を光が通過しないように当該隙間が塞がれて、遮光効果を高められる。即ち、レジスト前センサ32と光学センサ111との間の干渉の防止効果を高められる。また、図15(c)に示すように、板金140の(隔壁130eと接する部分の)端部140aが、原稿の搬送方向において、隔壁130eとオーバラップするように基板100(光学センサ111)の方向へ曲げられている。これにより、レジスト前センサ32と光学センサ111との間の干渉の防止効果を更に高められる。
図15の例では、光学センサ111は、図13の例と同様、原稿の搬送方向において搬送ローラ902と隣接している。光学センサ111と対向する位置には、搬送ローラ902によって生じる紙粉が直に光学センサ111に付着することを防止するための透光板130d(フィルタ)が配置されている。ケース体130には、透光板130dが搬送方向において基板100の表面(又は上述の撮像基準面)に対して傾斜を有するように、光学センサ111とレジスト前センサ32とを仕切る側壁と、光学センサ111と搬送ローラ902とを仕切る側壁とが形成されている。
とりわけ、透光板130dは、基板100の表面からの高さが、原稿の搬送方向において搬送ローラ902に近づくほど高くなる傾斜を有するように配置されている。即ち、基板100からの透光板130dの高さが、搬送方向においてレジスト前センサ32側よりも搬送ローラ902側の方が高くなるように、透光板130dが傾斜している。これにより、搬送方向における下流側に配置された搬送ローラ902によって生じる紙粉が透光板130dに付着することを防止する効果を高めることが可能である。即ち、透光板130dに付着した紙粉が光学センサ111による原稿の検出精度に影響することを防止できる。
以上説明したように、本実施形態の原稿搬送装置200は、基板100に実装された光学センサ111及びレジスト前センサ32と、基板100を覆うケース体130とを備える。光学センサ111は、発光素子を有し、搬送路を搬送される原稿で反射した光を受光して光電変換を行うことで、原稿の移動量の検出に用いられる画像を取得する。レジスト前センサ32は、発光素子32aを有し、搬送路を搬送される原稿を、発光素子32aから出力された光により検出する。ケース体130は、光学センサ111とレジスト前センサ32との間に位置付けられる、当該2つのセンサのうちの一方のセンサの発光素子から出力された光が他方のセンサに入射しないように遮光するための隔壁130eを有する。このように、光学センサ111及びレジスト前センサ32が実装された基板100を覆うケース体130に隔壁130eを形成することで、近接して配置された光学センサ間(光学センサ111とレジスト前センサ32との間)の干渉を防止することが可能になる。
なお、上述の実施形態の変形例として、光学センサ111とレジスト前センサ32との間に、重送検知センサ30(又はそれを囲むケース(図示せず))を配置することで、重送検知センサ30を遮光壁として機能させてもよい。具体的には、図15(a)及び(b)において、重送検知センサ30に対して(透光板130dと重なった位置にある)光学センサ111とは反対側の位置に、レジスト前センサ32を配置する。これにより、重送検知センサ30を、光学センサ111とレジスト前センサ32との間の遮光壁として機能させてもよい。
以上、本発明の原稿搬送装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をすることができる。