JP2018115086A - カーボンナノチューブ集合体及びカーボンナノチューブ線材 - Google Patents

カーボンナノチューブ集合体及びカーボンナノチューブ線材 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のカーボンナノチューブ集合体と比較して更なる低抵抗化を実現することができ、電気的特性を向上させることができるカーボンナノチューブ集合体を提供する。【解決手段】CNT線材1は、1層以上の層構造を有する複数のCNT集合体11で構成されており、これらCNT集合体11の複数が撚り合わされてなる。CNT集合体11は、複数のCNT11a,11a,・・・が纏められた束状体である。CNT集合体11を構成するCNTの個数に対する、2層又は3層構造を有するCNTの個数の和の比率が50%以上である。また、CNT集合体11において、上記2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのCNT間の最近接距離の平均値が、0.24nm〜0.334nmである。【選択図】図1

Description

本発明は、複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体、及びカーボンナノチューブ集合体を束ねてなるカーボンナノチューブ線材に関する。
従来、自動車や産業機器などの様々な分野における電力線や信号線として、一又は複数の線材からなる芯線と、該芯線を被覆する絶縁被覆とからなる電線が用いられている。芯線を構成する線材の材料としては、通常、電気特性の観点から銅又は銅合金が使用されるが、近年、軽量化の観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が提案されている。例えば、アルミニウムの比重は銅の比重の約1/3、アルミニウムの導電率は銅の導電率の約2/3(純銅を100%IACSの基準とした場合、純アルミニウムは約66%IACS)であり、アルミニウム線材に、銅線材と同じ電流を流すためには、アルミニウム線材の断面積を、銅の線材の断面積の約1.5倍と大きくする必要があるが、そのように断面積を大きくしたアルミニウム線材を用いたとしても、アルミニウム線材の質量は、純銅の線材の質量の半分程度であることから、アルミニウム線材を使用することは、軽量化の観点から有利である。
上記のような背景のもと、昨今では、自動車、産業機器等の高性能化・高機能化が進められており、これに伴い、各種電気機器、制御機器などの配設数が増加するとともに、これら機器に使用される電気配線体の配線数も増加する傾向にある。また、その一方で、環境対応のために自動車等の移動体の燃費を向上させるため、線材の軽量化が強く望まれている。
こうした更なる軽量化を達成するための新たな手段の一つとして、カーボンナノチューブを線材として活用する技術が新たに提案されている。カーボンナノチューブは、六角形格子の網目構造を有する筒状体の単層、あるいは略同軸で配された多層で構成される3次元網目構造体であり、軽量であると共に、導電性、電流容量、弾性、機械的強度等の特性に優れるため、電力線や信号線に使用されている金属に代替する材料として注目されている。
カーボンナノチューブの比重は、銅の比重の約1/5(アルミニウムの約1/2)であり、また、カーボンナノチューブ単体は、銅(抵抗率1.68×10−6Ω・cm)よりも高導電性を示す。したがって理論的には、複数のカーボンナノチューブを撚り合わせてカーボンナノチューブ集合体を形成すれば、更なる軽量化、高導電率の実現が可能となる。しかしながら、nm単位のカーボンナノチューブを撚り合わせて、μm〜mm単位のカーボンナノチューブ集合体を作製した場合、カーボンナノチューブ間の接触抵抗や内部欠陥形成が要因となり、線材全体の抵抗値が増大してしまうという問題があることから、カーボンナノチューブをそのまま線材として使用することが困難であった。
そこで、カーボンナノチューブ集合体の導電性を向上させる方法の一つとして、構成単位であるカーボンナノチューブの網目構造(カイラリティ)を制御し、カーボンナノチューブにドーピング処理を施す方法が提案されている。
例えば、2層及び多層のカーボンナノチューブに、少なくとも1種のドーパントを用いてドーピング処理を施す方法がある。本方法では、カーボンナノチューブを形成する際、或いはカーボンナノチューブ線材を形成した後に、スパッタリング、噴霧、浸漬あるいは気相導入によりドーピング処理を施し、ヨウ素、銀、塩素、臭素、フッ素、金、銅、アルミニウム、ナトリウム、鉄、アンチモン、ヒ素、あるいはこれらの組み合わせを含むドーパントを有するカーボンナノチューブ線材を作製する。これにより、高い比導電率、低い抵抗率、高い導体許容電流、および熱安定性などの電気的特性を得ることができるとされている(例えば、特許文献1)。
特表2014−517797号公報
しかしながら、上記特許文献においては、2層のカーボンナノチューブにヨウ素をドーピングしたカーボンナノチューブ集合体で抵抗率1.55×10−5Ω・cmが得られることが開示されているにとどまる。すなわち、銅の抵抗率1.68×10−6Ω・cmやアルミニウムの抵抗率2.65×10−6Ω・cmと比較すると、上記カーボンナノチューブ集合体の抵抗率は一桁以上も高く、銅やアルミニウムに代替する線材として十分とは言えない。また、各産業分野における高性能化・高機能化が急速且つ飛躍的に進歩することが予測されることから、更なる低抵抗率の実現が求められている。
本発明の目的は、従来のカーボンナノチューブ集合体と比較して更なる低抵抗化を実現することができ、電気的特性を向上させることができるカーボンナノチューブ集合体、カーボンナノチューブ複合材料及びカーボンナノチューブ線材を提供することにある。
すなわち、上記課題は以下の発明により達成される。
(1)1層以上の層構造を有する複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体であって、
前記カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの個数に対する、2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの個数の和の比率が50%以上であり、
前記カーボンナノチューブ集合体において、前記2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのカーボンナノチューブ間の最近接距離の平均値が、0.24nm〜0.334nmであることを特徴とする、カーボンナノチューブ集合体。
(2)1層以上の層構造を有する複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体であって、
前記カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの個数に対する、2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの個数の和の比率が50%以上であり、
前記カーボンナノチューブ集合体における格子定数が、2.24nm〜2.34nmであることを特徴とする、カーボンナノチューブ集合体。
(3)前記カーボンナノチューブ集合体の幅方向断面において、当該カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの面積に対する、前記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであるカーボンナノチューブが占める面積の比率Rが、75%以上であることを特徴とする、上記(1)又は(2)記載のカーボンナノチューブ集合体。
(4)前記カーボンナノチューブ集合体の長手方向断面において、前記カーボンナノチューブ集合体の長手方向中央部における、当該カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの面積に対する、前記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであるカーボンナノチューブが占める面積の比率RL1と、前記カーボンナノチューブ集合体の長手方向端部における、当該カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの面積に対する、前記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであるカーボンナノチューブが占める面積の比率RL2との平均値が、75%以上であることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体。
(5)前記2つのカーボンナノチューブ間の最近接距離の平均値が0.24nm〜0.31nmであることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体。
(6)前記2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの最外層の幅寸法が、1.0nm〜2.5nmであることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体。
(7)前記2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの最外層の幅寸法が、1.25nm〜2.25nmであることを特徴とする、上記(6)記載のカーボンナノチューブ集合体。
(8)前記カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの個数に対する、2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの個数の和の比率が75%以上であることを特徴とする、上記(1)又は(2)記載のカーボンナノチューブ集合体。
(9)前記2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの幅方向断面において、前記カーボンナノチューブの平均半径に対する、前記カーボンナノチューブの内接円と外接円とに基づいて算出される当該カーボンナノチューブの真円度の比率が、0よりも大きく且つ20%以下であることを特徴とする、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体。
(10)前記2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの幅方向断面形状が多角形であることを特徴とする、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体。
(11)前記多角形は、四角形、五角形及び六角形のうちから選択されたいずれかであることを特徴とする、上記(10)記載のカーボンナノチューブ集合体。
(12)前記多角形を構成する複数の頂部の少なくとも1つが曲率を有することを特徴とする、上記(10)又は(11)記載のカーボンナノチューブ集合体。
(13)上記(1)〜(12)のいずれかに記載のカーボンナノチューブ集合体の複数が束ねられてなるカーボンナノチューブ線材。
本発明によれば、従来のカーボンナノチューブ集合体と比較して更なる低抵抗化を実現し、電気的特性を向上させることができる。
本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の構成を概略的に示す図であり、(a)及び(b)は、カーボンナノチューブ線材の斜視図と電子顕微鏡画像、(c)及び(d)は、カーボンナノチューブの束の斜視図とその電子顕微鏡画像、(e)及び(f)は、カーボンナノチューブの束を構成するカーボンナノチューブの斜視図とその電子顕微鏡画像を示す。 図1(e)のカーボンナノチューブの部分拡大斜視図である。 (a)及び(b)は、本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合体を構成する複数のカーボンナノチューブの層数分布を示すグラフである。 本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合体を構成する複数のカーボンナノチューブの最外層の幅寸法分布を示すグラフである。 本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合体における2つのカーボンナノチューブ間の最近接距離分布を示すグラフである。 本実施形態に係るカーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの一例を示す幅方向断面図である。 (a)〜(c)は、図6のカーボンナノチューブの変形例を示す幅方向断面図である。 浮遊触媒気相成長法によりカーボンナノチューブを製造する製造装置の一例を示す図である。 実施例で製造されたカーボンナノチューブ集合体の幅方向断面を示す電子顕微鏡画像である。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)〜(f)は、本発明の実施形態に係るカーボンナノチューブ線材の構成を概略的に示す図である。なお、図1におけるカーボンナノチューブ線材は、その一例を示すものであり、本発明に係る各構成の形状、寸法等は、図1のものに限られないものとする。
本実施形態に係るカーボンナノチューブ線材1(以下、CNT線材という)は、図1(a)及び(b)に示すように、1層以上の層構造を有する複数のカーボンナノチューブの束11,11,・・・(以下、CNTの束、あるいはCNT集合体という)で構成されており、これらCNTの束11の複数が撚り合わされてなる。CNT線材1の外径は、0.01〜1mmである。
CNTの束11は、図1(c)及び(d)の拡大図で示すように、複数のカーボンナノチューブ11a,11a,・・・(以下、CNTという)が纏められた束状体となっており、これら複数のCNTの軸方向がほぼ揃って配されている。
また、CNTの束11を構成するCNT11aは、単層構造又は複層構造を有する筒状体であり、それぞれSWNT(single-walled nanotube)、MWNT(multi-walled nanotube)と呼ばれる。図1(c)〜(f)では便宜上、2層構造を有するCNTのみを記載しているが、実際には、3層構造を有するCNTが多数存在する。単層構造又は4層以上の層構造を有するCNTはCNTの束11に含まれてもよいが、2層又は3層構造を有するCNTに比べて少量である。
CNT11aは、図2に示すように、六角形格子の網目構造を有する2つの筒状体T1,T2(以下、単に「層」ともいう)が略同軸で配された3次元網目構造体となっており、DWNT(Double-walled nanotube)と呼ばれる。構成単位である六角形格子は、その頂点に炭素原子が配された六員環であり、他の六員環と隣接してこれらが連続的に結合している。
CNT11aの性質は、上記のような筒状体のカイラリティ(chirality)に依存する。カイラリティは、アームチェア型、ジグザグ型、及びそれ以外のカイラル型に大別され、アームチェア型は金属性、カイラル型は半導体性、ジグザグ型はその中間の挙動を示す。よってCNTの導電性はいずれのカイラリティを有するかによって大きく異なり、CNT集合体の導電性を向上させるには、金属性の挙動を示すアームチェア型のCNTの割合を増大させることが重要とされてきた。一方、半導体性を有するカイラル型のCNTに電子供与性もしくは電子受容性を持つ物質(異種元素)をドープすることにより、金属的挙動を示すことが分かっている。また、一般的な金属では、異種元素をドープすることによって金属内部での伝導電子の散乱が起こって導電性が低下するが、これと同様に、金属性CNTに異種元素をドープした場合には、導電性の低下を引き起こす。
このように、金属性CNT及び半導体性CNTへのドーピング効果は、導電性の観点からはトレードオフの関係にあると言えることから、理論的には金属性CNTと半導体性CNTとを別個に作製し、半導体性CNTにのみドーピング処理を施した後、これらを組み合わせることが望ましい。しかし、現状の製法技術では金属性CNTと半導体性CNTとを選択的に作り分けることは困難であり、金属性CNTと半導体性CNTが混在した状態で作製される。このため、金属性CNTと半導体性CNTの混合物からなるCNT線材の導電性を向上させるには、異種元素・分子によるドーピング処理が効果的となるCNT構造を選択することが不可欠となる。
そこで本実施形態では、低抵抗率のCNT集合体を得るために、ドーピング処理の効果を最大限に引き出すことができる層数を有するCNTが所定比率となるように構成し、且つ、CNT集合体を構成するCNTの総数に対する半導体性CNTの個数の割合を最適化する。なお、本実施形態においてCNT集合体へのドーピングは必須でなく、ドーピングを行わない構成であってもよい。
<CNT集合体を構成する複数のCNTの個数に対する、2層又は3層構造を有するCNTの個数の和の比率が50%以上であること>
本実施形態では、複数のCNT11a,11a,・・・を束ねて構成されるCNT集合体11において、複数のCNT11a、11a,・・・の個数に対する、2層又は3層構造を有するCNTの個数の和の比率が50%以上であり、好ましくは75%である。CNT集合体11を構成するCNTの層数を測定した結果の一例を図3のグラフに示す。同図において、CNT集合体11を構成するCNTの総数(23個)に対し、2層構造を有するCNTの個数(3個)と3層構造を有するCNTの個数(17個)との和の割合が87.0%(=20/23×100)である。すなわち、一のCNT集合体を構成する全CNTの総数をNTOTAL、上記全CNTのうち2層構造を有するCNT(2)の数の和をNCNT(2)、上記全CNTのうち3層構造を有するCNT(3)の数の和をNCNT(3)としたとき、下記式(1)で表すことができる。
(NCNT(2)+NCNT(3))/NTOTAL×100(%)≧50(%) ・・・(1)
2層又は3層構造のような層数が少ないCNTは、それより層数の多いCNTよりも比較的導電性が高い。また、ドーパントは、CNTの最内層の内部、もしくは複数のCNTで形成されるCNT間の隙間に導入される。一般的なCNTの層間距離はグラファイトの層間距離である0.335nmと同等であり、多層CNTの場合その層間にドーパントが入り込むことはサイズ的に困難である。このことからドーピング効果はCNTの内部および外部にドーパントが導入されることで発現するが、多層CNTの場合は最外層および最内層に接していない内部に位置するチューブのドープ効果が発現しにくくなる。以上のような理由により、複層構造のCNTにそれぞれドーピング処理を施した際には、2層又は3層構造を有するCNTでのドーピング効果が最も高い。また、ドーパントは、強い求電子性もしくは求核性を示す、反応性の高い試薬であることが多い。単層構造のCNTは多層よりも剛性が弱く、耐薬品性に劣るためにドーピング処理を施すと、CNT自体の構造が破壊されることがある。よって本発明ではCNT集合体に含まれる2層又は3層構造を有するCNTの個数に着目する。また、2層又は3層構造のCNTの個数の和の比率が50%未満であると、単層構造或いは4層以上の複層構造を有するCNTの比率が高くなり、CNT集合体全体としてドーピング効果が小さくなり、高導電率が得られない。よって、2層又は3層構造のCNTの個数の和の比率を上記範囲内の値とする。
<2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのCNT間の最近接距離が0.24nm〜0.334nmであること>
本実施形態では、CNT集合体11において、上記2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのCNT間の最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであり、好ましくは0.24nm〜0.31nmである。上記2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのCNT間の最近接距離の平均値が0.24nm未満であると、CNTの断面形状の変化が大きくなり、チューブ形状の維持が困難となり、上記最近接距離が0.335nmを超えると、CNT間距離が長くなり、電気伝導の効率が低下する。一方、上記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであると、CNT集合体11の幅方向断面におけるCNT−CNT間のネットワークに影響を及ぼし、バンドギャップが金属的な性質を有し、接触抵抗が低下することで、導電性を向上することができる。よって、2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのCNT間の最近接距離を上記範囲内の値とする。
また上記では、2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのCNT間の最近接距離の平均値を規定することによってCNT集合体11の構造を規定しているが、第一原理計算に基づく格子定数を規定することによってCNT集合体11の構造を規定してもよい。第一原理計算のシミュレーションでは、CNT集合体11、すなわちCNT11aの束状態における格子定数を変化させたときに状態密度(DOS:density of state)や電子軌道がどのように変化するかを確認することが可能である。
そこで本実施形態では、CNT集合体11の径方向断面における炭素原子の格子定数が2.24nm〜2.33nmであるのが好ましい。格子定数が上記範囲内の値であると、CNT集合体11を構成する複数のCNT11aの径方向断面形状が多角形、好ましくは略六角形或いは六角形となり、隣接するCNTとの間にspライクな結合が生じ、CNT−CNT間で電子が移動し易くなり、CNT−CNT間の低抵抗化を実現することが可能である。よってCNT集合体11の格子定数を上記範囲内の値とする。
好ましくは、上記2層又は3層構造を有するCNTの最外層の幅寸法が、1.5nm〜2.5nmである。CNT集合体11を構成するCNTの最外層の幅寸法を測定した結果の一例を図4のグラフに示す。同図において、CNT集合体11を構成する複数のCNT(200個)について、各CNTにおける各層(第1層〜第4層)の幅寸法を測定すると、第1層の幅寸法は0.5nm〜1.25nm、第2層の幅寸法は1.0nm〜1.75nm、第3層の幅寸法は1.5nm〜2.5nm、第4層の幅寸法は2.0nm〜2.75nmの範囲で分布している。特に、第2層の幅寸法は1.25nm〜1.75nmの範囲で最も多く存在し、第3層の幅寸法は1.75nm〜2.25nmの範囲で最も多く存在していることが分かる。
図3に示したように、本実施形態のCNT集合体11では、2層又は3層構造を有するCNTの比率が高いため、CNT集合体11から任意のCNTを選択した場合、そのCNTの最外層の殆どが2層目又は3層目である。よってCNT集合体11において2層又は3層構造を有するCNTの最外層の幅寸法は、好ましくは1.0nm〜2.5nmであり、より好ましくは1.25nm〜2.25nmである。また、CNT集合体11を構成する2層又は3層構造を有するCNTの個数に対する、上記1.0nm〜2.5nmの範囲内の最外層を有する2層又は3層構造を有するCNTの個数の和の比率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。
また、好ましくは、CNT集合体11の幅方向断面において、当該CNT集合体11を構成するCNTの面積に対する、上記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであるCNTが占める面積の比率Rが、75%以上である。この比率Rが75%以上であると、CNT集合体11の幅方向における導電性をほぼ一様に向上することができ、CNT集合体11の幅方向断面における面内方向の低抵抗化を実現することが可能となる。
より好ましくは、CNT集合体11の長手方向断面において、上記CNT集合体11の長手方向中央部における、当該CNT集合体11を構成するCNTの面積に対する、上記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであるCNTが占める面積の比率RL1と、CNT集合体11の長手方向端部における、当該CNT集合体11を構成するCNTの面積に対する、上記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであるCNTが占める面積の比率RL2との平均値{(RL1+RL2)/2}が、75%以上である。比率RL1と比率RL2の平均値が75%以上であると、CNT集合体11の長手方向における導電性をほぼ一様に向上することができ、CNT集合体11の長手方向断面における面内方向の低抵抗化を実現することが可能となる。
図5は、CNT集合体11を構成する一のCNT内での層間距離と、各層間距離に対応するCNTの個数比率との関係を示すグラフである。
同図に示すように、CNT集合体11を構成する複数のCNTのうち、2層構造を有するCNTは、層間距離0.325nm〜0.35nm、0.45nm〜0.475nm、及び0.525nm〜0.55nmの範囲に少数分布している。3層以上の構造を有するCNTは、層間距離0.55nm以下の範囲に分布し、特に層間距離が0.275nm〜0.325nmの範囲に多く分布し、更には0.30nm〜0.325nmの範囲に最も多く分布しているのが分かる。複層からなるCNTの導電性には、内層(第2層、第3層等)の導電性が大きな影響を与えることから、CNT集合体11において層間距離が0.275nm〜0.325nmの範囲となるCNTが数多く存在することで、各CNTにおいて外層から内層への電子の移動を促進することができ、CNTの導電性を向上させることができると推察される。
また、ナノカーボンの一種であるグラファイトは、各層間がファンデルワールス力で結合した複層構造からなる結晶であり、その層間距離は0.335nmである。一方、本実施形態における上記最近接距離は、グラファイトの層間距離よりも小さいため、グラファイトよりも高い導電性を実現することが可能となり、低抵抗化を実現することができる。
図6は、CNT集合体11を構成する複数のCNTの構成を示す幅方向断面図である。本図では便宜上、3層構造を有するCNTを例に挙げて説明し、炭素原子の配置及び数は、図示するものに限られない。
本実施形態におけるCNT11aの幅方向断面形状は多角形である。例えば、図6に示すように、CNT11a−1の幅方向断面形状は六角形である。このとき、互いに隣接する2つのCNT11a−1間の最近接距離Lの平均値は、0.24nm〜0.344nmである。このようにCNT集合体11における2層又は3層構造を有するCNTの幅方向断面形状が多角形であるのは、複数のCNTが密に充填されることによって歪みが生じているためである。また、幅方向断面の面内方向において、CNT集合体11の密な充填によって各CNTに対してほぼ一様な外力が生じることから、空間構造として最も安定的な形状である六角形が多いと推察される。CNT11aの幅方向断面形状が六角形であると、CNT−CNT間の最近接距離で対向する最外層面積が増大し、導電性を向上することが可能となる。
但し、CNT11aの幅方向断面形状は、六角形に限らず、図7(a)に示すように四角形であってもよいし、図7(b)に示すように五角形であってもよい。すなわち、上記多角形は、四角形、五角形及び六角形のうちから選択されたいずれかであってもよい。図7(a)においてCNT11a−2の幅方向断面形状が五角形であるとき、互いに隣接する2つのCNT11a−2間の最近接距離L2の平均値は、0.24nm〜0.344nmである。また、図7(b)においてCNT11a−3の幅方向断面形状が五角形であるときも、互いに隣接する2つのCNT11a−3間の最近接距離L3の平均値は、0.24nm〜0.344nmである。
このように、2層又は3層構造を有するCNTの幅方向断面形状は、上述のように六角形が多いが、当該CNTの配置や外力の大きさ・方向等の要因により、四角形又は五角形が存在する場合がある。また、図示しないが、互いに隣接する2つのCNTの幅方向断面形状の一方が六角形、他方が五角形であるなど、隣接する2つのCNTの幅方向断面形状が互いに異なる多角形である場合もある。このような場合でも、CNT−CNT間の最近接距離の平均値が上記範囲内であれば導電性を向上することが可能となる。
また、2層又は3層構造を有するCNTの幅方向断面形状が角丸多角形であり、多角形を構成する複数の頂部が曲率を有していてもよい。例えば、図7(c)に示すように、CNT11a−4の幅方向断面において、六角形を構成する6つの頂部が曲率を有していてもよい。このように六角形の頂部が角部(図6参照)ではなく曲部を有するのは、エネルギー的に安定なためと推察される。但し、図7(c)の形状に限らず、六角形を構成する6つの頂部の少なくとも1つが曲率を有していてもよいし、上記多角形を構成する複数の頂部の少なくとも1つが曲率を有していてもよい。
また、上記ではCNTの幅方向断面が基本的に多角形であることを前提としているが、微視的にはCNTの幅方向断面が基本的に丸形であることを前提としてアプローチする方が適切である場合もある。その場合、CNTに生じている上記歪みの度合いを規定するために、JIS B 0621に準拠した真円度を用いてもよい。この真円度とは、円形形体の幾何学的に等しい円からの狂いの大きさをいい、円形形体を2つの同心の幾何学的円で挟んだときの同心2円の間隔(距離)が最小となる場合の2円の半径差である。
本実施形態では、2層又は3層構造を有するCNTの幅方向断面において、2層又は3層構造を有するCNTの平均半径に対する、CNTの内接円と外接円とに基づいて算出される当該CNTの真円度の比率が、0よりも大きく且つ20%以下、好ましくは9%以上18%以下であり、より好ましくは9%以上〜15%以下である。真円度/平均半径の比率が0である場合にはCNTの幅方向断面形状が真円であり、良好な導電性を得ることができず、一方真円度/平均半径の比率が20%を超える場合、CNTの幅方向断面形状が歪み過ぎることから、良好な導電性を得ることができない。よって、CNTの内接円と外接円とに基づいて算出されるCNTの真円度を上記範囲内の値とする。
<カーボンナノチューブ集合体の製造方法>
本実施形態のCNT集合体は、以下の方法で製造される。先ず、浮遊触媒気相成長(CCVD)法により、炭素源に触媒及び反応促進剤を含む混合物を供給して、複数のCNTを生成する。このとき、炭素源には六員環を有する飽和炭化水素、触媒には鉄などの金属触媒、反応促進剤には硫黄化合物をそれぞれ用いることができる。また本実施形態では、キャリアガス流量の増加に伴ってSWNTの割合が減少する点を考慮し、原料組成及び噴霧条件を調整して2層又は3層構造を有するCNTの比率を高める。
また、CNTの最外層の幅寸法が1.5nm〜2.5nmとなるように触媒である鉄の大きさを調整するため、原料は噴霧によりミスト粒径が20μm前後となるよう反応炉に供給を行う。その後、複数のCNTの束を撚り合わせて、CNT集合体を作製する。
その後、2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのCNT間の最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmとなるように、後処理工程を加える。CNT集合体に酸処理を施すことで、残留した鉄触媒を除去する。CCVDによって得られるCNT集合体中には、触媒やアモルファスカーボンなどが多量に含まれており、これらを除去する高純度化プロセスによってCNT集合体の本来の特性を得ることができる。本実施形態では、上記工程にて得られたCNTを大気下、所定温度で加熱し、加熱後のCNTを強酸にて高純度化する。これを複数回繰り返すことにより、複数のCNTの束で構成されるCNT集合体を得る。
次いで、必要に応じて、酸処理後のCNT集合体にドーピング処理を施す。ドーパントは外周側からCNTに注入されるため、CNTが複層(MWNT)である場合には、より外周側に位置する層が優先的にドープされ、内部の層はドープされ難い。そこで本実施形態では、1層〜3層のドーピング量が多く、4層目以降ではドーピング量が少なくなるとの推察に基づき、2層又は3層構造を有するCNTの個数比率が50%以上とすることにより、CNT集合体全体のドーピング量を増大させることができ、優れたドーピング効果が得られる。本ドーピング処理により、CNT集合体と1又は複数のドーパントとからなるCNT複合材料が製造される。
ドーパントとしては、例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)からなる群から選択された1又は複数の材料を選択することができる。
<カーボンナノチューブ集合体の電気的特性>
上記製法にて得られた本実施形態のCNT集合体では、抵抗率が3.2×10−5Ω・cm以下、好ましくは9.6×10−6Ω・cm以下である。この抵抗率は、上記従来技術における最小の抵抗率1.55×10−5Ω・cmよりも小さく、本実施形態のCNT集合体を銅あるいはアルミニウム線材に代わる線材として使用すれば、銅やアルミニウムと同等の抵抗率を維持しつつ、軽量化を実現することができる。
上述したように、本実施形態によれば、CNT集合体11を構成するCNTの個数に対する、2層又は3層構造を有するCNTの個数の和の比率が50%以上であり、CNT集合体11において、上記2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのCNT間の最近接距離の平均値が、0.24nm〜0.334nmであるので、従来のCNT集合体と比較して、更なる低抵抗化を実現することができる。また、ドーパントを含有せずにCNT集合体の低抵抗化を実現することができるので、ドーピング処理を施さず簡便な製造工程にて電気的特性を向上させたCNT集合体を提供することができる。更に、CNT集合体11にドーピング処理を施す場合には、CNT集合体11において、ドーピング処理の効果を最大限に引き出すことができる層数(2層又は3層)を有するCNTが50%以上となるように構成されるので、CNT集合体11にドーピング処理を施した場合に更なる低抵抗化を実現することができる。
以上、本発明の実施形態に係るCNT集合体及びCNT線材について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、上記実施形態のCNT集合体又はCNT複合材料が束ねられてなるCNT線材と、該CNT線材の外周を被覆する被覆層とを備えるCNT被覆電線を構成してもよい。特に、本実施形態のCNT集合体及びCNT複合材料は、電力や信号を伝送するための電線用線材の材料として好適であり、四輪自動車などの移動体に搭載される電線用線材の材料としてより好適である。金属電線よりも軽量になり燃費の向上が期待されるためである。
また、上記CNT被覆電線を少なくとも1つを有するワイヤハーネスを構成してもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。なお本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
浮遊触媒気相成長(CCVD)法を用い、図8に示すようなCNT製造装置にて、電気炉21によって1300℃に加熱された、内径φ60mm、長さ1600mmのアルミナ管22内部に、炭素源であるデカヒドロナフタレン、触媒であるフェロセン、及び反応促進剤であるチオフェンを、体積比率にてそれぞれ100:4:1で含む原料溶液Lを、スプレー噴霧により供給した。キャリアガスGは、水素を9.5L/minで供給した。得られたCNTを回収機23にてシート状に回収し、これを巻いて撚りをかけることによりCNT集合体を製造した。次に、得られたCNT集合体を、大気下において500℃に加熱し、さらに酸処理を行う工程を複数回施すことによって高純度化を行ってCNT集合体を得た。
(実施例2〜4)
実施例2について、CCVDにおけるデカヒドロナフタレン、フェロセン及びチオフェンの原料比率を100:1:0.01に変えたこと以外は実施例1と同様の方法でCNT集合体を作製した。
実施例3について、得られたCNT集合体を、大気下において500℃に加熱し、さらに酸処理を行う工程数を減らし、更に酸処理時間を短くすること以外は、実施例1と同様の方法でCNT集合体を作製した。
実施例4について、CCVDにおけるデカヒドロナフタレン、フェロセン及びチオフェンの原料比率を100:1:0.01に変え、得られたCNT集合体を、大気下において500℃に加熱し、酸処理を行う工程数と酸処理時間を短縮した以外は実施例1と同様の方法でCNT集合体を作製した。
次に、下記の方法にてCNT集合体の構造、特性を測定、評価した。
(a)CNT集合体の構造
上記条件により生成したCNT集合体の断面の一部を、図9に示すように透過型電子顕微鏡で観察及び解析し、200個のCNTを対象として、CNT集合体を構成するCNTの個数に対する、2層又は3層構造を有するCNTの個数の比率、CNT−CNT間の最近接距離の平均値、及び2層又は3層構造を有するCNTの最外層直径及びその比率を測定した。
(b)格子定数
各実施例で得られたCNT集合体について、ソフトウェア「Quantum Espresso」を用い、第一原理計算によってそれぞれ格子定数を求めた。
(c)真円度/平均半径の比率の算出
JIS B 0621に準拠し、2層又は3層構造を有するCNTの幅方向断面において、CNTの仮想内接円と仮想外接円とに基づいてCNTの真円度を算出すると共に、CNTの平均半径を算出し、真円度/平均半径の比率を求めた。
(d)CNT集合体の抵抗率測定
抵抗測定機(ケースレー社製、装置名「DMM2000」)にCNT集合体を接続し、4端子法により抵抗測定を実施した。抵抗率は、r=RA/L(R:抵抗、A:CNT集合体の断面積、L:測定長さ)の計算式に基づいて抵抗率を算出した。
(比較例1〜2)
比較例1について、CCVDの原料比率を100:0.1:0.0001に変えた以外は実施例1と同様の方法でCNT集合体を作製した。また、比較例2について、CCVDの原料比率を100:0.1:0.0001に変え、得られたCNT集合体を、大気下において500℃に加熱し、酸処理を行う工程数と酸処理時間を短縮した以外は実施例1と同様の方法でCNT集合体を作製した。そして、比較例1〜2で得られたCNT集合体を構成するCNTの個数に対する、2層又は3層構造を有するCNTの個数の比率、CNT−CNT間の最近接距離の平均値、2層又は3層構造を有するCNTの最外層直径及び比率、真円度/平均半径の比率、及び抵抗率を、実施例と同様方法にて測定した。
上記実施例1〜4及び比較例1〜2の測定、算出結果を、表1に示す。
表1に示すように、実施例1では、2層又は3層構造を有するCNTが91%含まれており、2層又は3層構造を有するCNT−CNT間の最近接距離の平均値は0.275nmであった。また、2層又は3層構造を有するCNTの最外層直径は1.75nm〜2.25nmの範囲内でありその比率は85%、真円度/平均半径の比率は9〜13%であった。このときの抵抗率は7.8×10−6となり、従来と比べて、ドーパントを用いること無く低い抵抗率が得られた。
実施例2では、2層又は3層構造を有するCNTが89%含まれており、2層又は3層構造を有するCNT−CNT間の最近接距離の平均値は0.278nmであった。また、2層又は3層構造を有するCNTの最外層直径は1.5nm〜2.5nmの範囲内でありその比率は79%、真円度/平均半径の比率は1〜5%であった。このときの抵抗率は9.6×10−6Ω・cmとなり、従来と比べて、ドーパントを用いること無く低い抵抗率が得られた。但し、CNTの最外層直径が実施例1よりもばらつきがあることから、抵抗率が実施例1よりも大きくなることが分かった。
実施例3では、2層又は3層構造を有するCNTが88%含まれており、2層又は3層構造を有するCNT−CNT間の最近接距離の平均値は0.314nmであった。また、2層又は3層構造を有するCNTの最外層直径は1.75nm〜2.25nmの範囲内でありその比率は81%、真円度/平均半径の比率は2〜6%であった。このときの抵抗率は1.5×10−5Ω・cmとなり、従来と比べて、ドーパントを用いること無く低い抵抗率が得られた。但し、CNTの最外層直径が実施例1と同等であるものの、CNT−CNT間の最近接距離の平均値が実施例2よりも大きいことから、抵抗率が実施例2よりも大きくなることが分かった。
実施例4では、2層又は3層構造を有するCNTが75%含まれており、2層又は3層構造を有するCNT−CNT間の最近接距離の平均値は0.333nmであった。また、2層又は3層構造を有するCNTの最外層直径は1.5nm〜2.5nmの範囲内でありその比率は76%、真円度/平均半径の比率は1〜5%であった。このときの抵抗率は3.2×10−5Ω・cmとなり、従来と比べて、ドーパントを用いること無く低い抵抗率が得られた。但し、2層又は3層構造を有するCNTが実施例3よりも少なく、CNTの最外層直径が実施例3よりもばらつきがあることから、抵抗率が実施例3よりも大きくなることが分かった。
一方、比較例1では、2層又は3層構造を有するCNTは76%含まれており、本発明の範囲内であるものの、2層又は3層構造を有するCNT−CNT間の最近接距離の平均値は0.335nmであり、本発明の範囲外となった。このときの抵抗率は6.7×10−5Ω・cmであり、実施例1〜4に対して劣った。
比較例2では、2層又は3層構造を有するCNTは49%しか含まれておらず、本発明の範囲外であり、また、2層又は3層構造を有するCNT−CNT間の最近接距離の平均値は0.340nmであり、本発明の範囲外となった。このときの抵抗率は8.5×10−5Ω・cmであり、実施例1〜4に対して劣った。
よって、CNT集合体において2層又は3層構造を有するCNTが75%以上、特に90%以上含まれており、且つ2層又は3層構造を有するCNT−CNT間の最近接距離の平均値が0.275nm〜0.333nm以下であると、従来のCNT集合体と比較して、低抵抗化及び高導電化を実現できることが分かった。また、CNT集合体において2層又は3層構造を有するCNTの比率、及び2層又は3層構造を有するCNT−CNT間の最近接距離の平均値がほぼ同等である場合、真円度/平均半径の比率が高いか、或いは2層又は3層構造を有するCNTの最外層直径のばらつきが小さいと、更なる低抵抗化及び高導電化を実現できることが分かった。
1 CNT線材
11 CNT集合体
11a CNT
11a−1 CNT
11a−2 CNT
11a−3 CNT
11a−4 CNT
T1 筒状体
T2 筒状体
L1,L2,L3 最近接距離
21 電気炉
22 アルミナ管
23 回収機

Claims (13)

  1. 1層以上の層構造を有する複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体であって、
    前記カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの個数に対する、2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの個数の和の比率が50%以上であり、
    前記カーボンナノチューブ集合体において、前記2層又は3層構造を有し且つ互いに隣接する2つのカーボンナノチューブ間の最近接距離の平均値が、0.24nm〜0.334nmであることを特徴とする、カーボンナノチューブ集合体。
  2. 1層以上の層構造を有する複数のカーボンナノチューブで構成されるカーボンナノチューブ集合体であって、
    前記カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの個数に対する、2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの個数の和の比率が50%以上であり、
    前記カーボンナノチューブ集合体における格子定数が、2.24nm〜2.33nmであることを特徴とする、カーボンナノチューブ集合体。
  3. 前記カーボンナノチューブ集合体の幅方向断面において、当該カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの面積に対する、前記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであるカーボンナノチューブが占める面積の比率Rが、75%以上であることを特徴とする、請求項1又は2記載のカーボンナノチューブ集合体。
  4. 前記カーボンナノチューブ集合体の長手方向断面において、前記カーボンナノチューブ集合体の長手方向中央部における、当該カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの面積に対する、前記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであるカーボンナノチューブが占める面積の比率RL1と、前記カーボンナノチューブ集合体の長手方向端部における、当該カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの面積に対する、前記最近接距離の平均値が0.24nm〜0.334nmであるカーボンナノチューブが占める面積の比率RL2との平均値が、75%以上であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合体。
  5. 前記2つのカーボンナノチューブ間の最近接距離の平均値が0.24nm〜0.31nmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合体。
  6. 前記2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの最外層の幅寸法が、1.0nm〜2.5nmであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合体。
  7. 前記2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの最外層の幅寸法が、1.25nm〜2.25nmであることを特徴とする、請求項6記載のカーボンナノチューブ集合体。
  8. 前記カーボンナノチューブ集合体を構成するカーボンナノチューブの個数に対する、2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの個数の和の比率が75%以上であることを特徴とする、請求項1又は2記載のカーボンナノチューブ集合体。
  9. 前記2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの幅方向断面において、前記2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの平均半径に対する、前記カーボンナノチューブの内接円と外接円とに基づいて算出される当該カーボンナノチューブの真円度の比率が、0よりも大きく且つ20%以下であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合体。
  10. 前記2層又は3層構造を有するカーボンナノチューブの幅方向断面形状が多角形であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合体。
  11. 前記多角形は、四角形、五角形及び六角形のうちから選択されたいずれかであることを特徴とする、請求項10記載のカーボンナノチューブ集合体。
  12. 前記多角形を構成する複数の頂部の少なくとも1つが曲率を有することを特徴とする、請求項10又は11記載のカーボンナノチューブ集合体。
  13. 請求項1〜12のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ集合体の複数が束ねられてなるカーボンナノチューブ線材。
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